特許第6023519号(P6023519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023519
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】鉄道車両用の駆動台車
(51)【国際特許分類】
   B61C 9/38 20060101AFI20161027BHJP
   B61F 5/52 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   B61C9/38 C
   B61F5/52
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-195816(P2012-195816)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-51151(P2014-51151A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 武宏
(72)【発明者】
【氏名】中尾 俊一
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04444120(US,A)
【文献】 特開平10−217963(JP,A)
【文献】 特表2002−534312(JP,A)
【文献】 特開平04−337150(JP,A)
【文献】 実開昭58−171765(JP,U)
【文献】 特開2001−018796(JP,A)
【文献】 特開2000−016286(JP,A)
【文献】 特開平09−240477(JP,A)
【文献】 米国特許第04388872(US,A)
【文献】 特開平09−030418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 9/38 − 9/52
B61F 5/52
B60K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの車軸及び前記車軸の左右両側に夫々設けられた一対の車輪を有する輪軸と、
前記車軸に接続された1つの減速機と、
前記減速機に接続され、走行動力を発生する一対の電動機と、を備え、
前記減速機は、前記車軸の軸線方向の中心位置を前後方向に通る中心線上に配置されており、前記一対の電動機は、前記減速機左右両側から挟んでいる、鉄道車両用の駆動台車。
【請求項2】
前記一対の電動機は、前記減速機の左右両側に固定されて前記減速機に支持されている、請求項1に記載の鉄道車両用の駆動台車。
【請求項3】
前記輪軸及び前記減速機は、前後に一対設けられ、
前記台車は、前側の前記減速機と後側の前記減速機との間に設けられた横ばりと、前記減速機を前記横ばりに支持させるための支持部材と、を更に備え、
前記支持部材は、前記中心線上に配置されている、請求項1又は2に記載の鉄道車両用の駆動台車。
【請求項4】
前記支持部材は、前記横ばりを跨いで前後方向に延在しており、
前記支持部材の前部及び後部は、前側の前記減速機及び後側の前記減速機をそれぞれ支持し、前記支持部材の中央部は、前記横ばりに支持されている、請求項3に記載の鉄道車両用の駆動台車。
【請求項5】
車軸及び前記車軸の左右両側に夫々設けられた車輪を有する輪軸と、
前記車軸に接続された減速機と、
前記減速機に接続され、走行動力を発生する一対の電動機と、を備え、
前記減速機は、前記車軸の軸線方向の中心位置を前後方向に通る中心線上に配置されており、前記一対の電動機は、前記減速機の左右両側に夫々配置され、
前記輪軸及び前記減速機は、前後に一対設けられ、
前側の前記減速機には、前フレーム部が後方に延出して設けられ、
後側の前記減速機には、後フレーム部が前方に延出して設けられ、
前記前フレーム部の後部には、第1端部及び第2端部が設けられ、
前記後フレーム部の前部には、第3端部及び第4端部が設けられ、
前記第1端部が前記第3端部の上方に位置し、前記第2端部が前記第4端部の下方に位置する、鉄道車両用の駆動台車。
【請求項6】
前記第1及び第2端部と、第3及び第4端部は、前記中心線に対して左右対称に配置されている、請求項5に記載の鉄道車両用の駆動台車。
【請求項7】
前記第1端部と前記第3端部との間、及び、前記第2端部と前記第4端部との間に介設されたゴム板を更に備えている、請求項5又は6に記載の鉄道車両用の駆動台車。
【請求項8】
前記車軸を回転自在に支持する軸受が収容された軸箱と、
前記軸箱の上方で前後方向に延在する側ばりと、
前記軸箱と前記側ばりとの間に介設された軸箱支持装置と、
前記第1〜第4端部によって挟まれた横部材と、
前記横部材に前記側ばりを連結するための連結部材と、を更に備え、
前記前フレーム部及び前記後フレーム部は、前記横部材が前後方向に所定以上に移動するのを妨げる規制面を有している、請求項5乃至7のいずれかに記載の鉄道車両用の駆動台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及び減速機を備えた鉄道車両用の駆動台車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用台車には、駆動源を備えた駆動台車と駆動源を備えない非駆動台車とがある。従来の駆動台車では、車軸と台車枠の横ばりとの間の空間において電動機及び減速機が横に並べて配置されており、電動機からの回転動力が減速機を介して車軸に伝達される(例えば、特許文献1参照)。電動機は横ばりに固定されており、減速機は車軸に接続され且つ横ばりに相対変位可能に支持されている。車軸と台車枠との間には軸バネが介設されており、車両走行中に車軸が横ばりに対して相対変位しうるため、電動機はフレキシブルカップリングを介して減速機に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−17399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道車両用の駆動台車では、車軸と横ばりとの間の限られた空間に電動機及び減速機を収めるために、電動機と減速機とを横並びに配置しているので、一般的に、減速機は一方の車輪に近づけて配置し、電動機は他方側の車輪に近づけて配置される。しかし、車軸に接続される減速機は車幅方向一方に偏って配置され、台車枠に固定される電動機が車幅方向他方に偏って配置されており、平面視では減速機及び電動機は点対称に配置されている。よって、台車に生じる荷重の左右バランスは均等ではないとともに、電動機の回転慣性力も台車全体で見て左右に均等とはならない。
【0005】
そこで本発明は、簡易な構造でありながら、鉄道車両の走行時における台車のバランスを向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄道車両用の駆動台車は、車軸及び前記車軸の左右両側に夫々設けられた車輪を有する輪軸と、前記車軸に接続された減速機と、前記減速機に接続され、走行動力を発生する一対の電動機と、を備え、前記減速機は、前記車軸の軸線方向の中心位置を前後方向に通る中心線上に配置されており、前記一対の電動機は、前記減速機の左右両側に夫々配置されている。
【0007】
前記構成によれば、車軸に接続される減速機が台車の車幅方向の中央部分に配置され、その左右両側に形成された空間に一対の電動機が夫々配置されているため、荷重が左右にバランス良く発生するとともに、1つの減速機に接続された一対の電動機が減速機の左右両側に分かれて配置されているので、回転慣性力が左右にバランス良く発生する。したがって、鉄道車両の走行時における台車のバランスを好適に向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、簡易な構造でありながら、鉄道車両の走行時における台車のバランスを好適に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る鉄道車両用の駆動台車を示す平面図である。
図2図1に示す駆動台車の側面図である。
図3図1のIII−III線断面図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5】第2実施形態に係る駆動台車を示す図3相当の図面である。
図6】第3実施形態に係る鉄道車両用の駆動台車を示す平面図である。
図7図6の要部拡大図である。
図8図6に示す駆動台車のVIII−VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両用の駆動台車1を示す平面図である。図2は、図1に示す駆動台車1の側面図である。図1及び2に示すように、本実施形態の鉄道車両用の駆動台車1は、前後及び左右が対称に構成されている。駆動台車1は、空気バネ2を介して車体50を支持するための台車枠3を備えている。台車枠3は、左右両側において前後方向に延びる一対の側ばり4と、左右の側ばり4の前後方向中央部を連結するように左右方向に延びる横ばり5とを有しており、平面視でH形状を呈している。
【0012】
横ばり5の前方及び後方には、それぞれ輪軸6が配置されている。輪軸6は、左右方向に沿って延びた車軸7と、その車軸7の左右両側に夫々設けられた車輪8とを有している。車軸7の左右方向の両端部には、車輪8よりも左右方向外側にて車軸7を回転自在に支持する軸受9が設けられ、その軸受9は軸箱10に収容されている。側ばり4の前後方向の端部4aと軸箱10との間には、コイルバネ(軸バネ)からなる軸箱支持装置11が介設されている。軸箱10からは一体的に台車中央に向けて前後方向に軸ばり12が延びており、その軸ばり12の端部がゴムブッシュ13等を介して側ばり4に弾性的に連結されている。即ち、台車1は、いわゆる軸ばり式の軸箱支持装置を備えている。なお、この軸箱支持装置については、軸ばり式以外の他の方式を用いてもよい。
【0013】
車軸7には減速機20が接続されており、減速機20には一対の電動機21,22が接続されている。減速機20は、小径の入力ギア20bと、入力ギア20bに噛合する大径の出力ギア20cと、入力ギア20b及び出力ギア20cを収容するケーシング20aとを備えている。出力ギア20cは、車軸7と共回転するように車軸7に固定されており、入力ギア20bは、出力ギア20cよりも台車中央側に設けられている。電動機21,22は、ケーシング21a,22aを備え、そのケーシング21a,22a内に公知のロータ及びステータ(図示せず)が収容されている。ケーシング21a,22aからは前記ロータに固定された出力軸21b,22bの端部が突出しており、その出力軸21b,22bの端部が減速機20の入力ギア20bと共回転するように入力ギア20bに接続されている。出力軸21b,22b、入力ギア20b及び出力ギア20cの夫々の回転軸線は、車軸7の軸線と平行である。
【0014】
減速機20は、車軸7の軸線方向の中心位置を前後方向に通る中心線C上に配置されている。そして、減速機20の入力ギア20b及び出力ギア20cが、駆動台車1の車幅方向における中心に配置された状態で前後に並んでいる。本実施形態では、減速機20の車幅方向中心と台車1の車幅方向中心とが一致している。一対の電動機21,22は、減速機20の左右両側において左右対称に配置されている。即ち、それら電動機21,22の各出力軸21b、22bは、同軸上に配置されている。電動機21,22のケーシング21a,22aは、減速機20のケーシング20aの左右側面に対してそれぞれ固定具(例えば、ボルト等)によって固定されている。このように、減速機20と電動機21,22とは、互いに固定されて相対変位しないため、出力軸21b,22bと入力ギア20bとは、フレキシブルカップリングを介することなく直接的に接続されている。
【0015】
横ばり5は、前側(図1中の左側)の減速機20と後側(図1中の右側)の減速機20との間に配置されている。前側の減速機20と後側の減速機20とは、支持部材23によって横ばり5に支持されている。支持部材23は、前述した中心線C上に配置されており、横ばり5を跨いで前後方向に延在している。
【0016】
図3は、図1のIII−III線断面図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。図3及び4に示すように、支持部材23は、横ばり5を跨いで前後方向に延びる支持バーであり、金属又は繊維強化樹脂等からなる。支持部材23の中央部は、介装材28を介して横ばり5に上方から載置されている。即ち、支持部材23の中央部23aは、横ばり5に対して上下方向に固定されない状態で横ばり5によって下方から支持されている。介装材28は、横ばり5及び支持部材23よりも硬度が低い材料(例えば、ゴム等)からなる。支持部材23の前側及び後側の端部23bは、前側の減速機20及び後側の減速機20をそれぞれ支持している。
【0017】
支持部材23の端部23bは、内周面が円筒形状で車幅方向両側が開口する筒状部となっている(以下、端部23bは筒状部とも言う)。筒状部23bの内部空間には、ゴムブッシュ26を介して心棒25が挿通されている。心棒25は、円柱部25aと、円柱部25aの左右方向の両側に設けられた一対の円錐状のフランジ部25bと、一対のフランジ部25bの両側面から左右方向外側に向けて突出した突起部25cとを有している。ゴムブッシュ26は、円筒部26aと、円筒部26aの左右方向の両側に設けられた一対の円錐状のフランジ部26bとを有し、心棒25に外嵌されている。減速機20の上部には、左右一対のブラケット部27が上方に向かって突設されており、そのブラケット部27には嵌合穴27aが形成されている。そして、心棒25の突起部25cが、ブラケット部27の嵌合穴27aに嵌合されている。即ち、減速機20と支持部材23とは、心棒25及びゴムブッシュ26を用いた弾性結合部24により連結されている。特に、軌道の不整等により車軸に捩れが生じると、前側及び後側の減速機20の支持部材23による支持位置が左右方向に移動しようとするが、弾性結合部24により、かかる左右動を吸収することができ、軌道の不整等による車軸の捩れによる影響を抑えることができる。
【0018】
以上に説明した構成によれば、車軸7に接続される減速機20が台車1の車幅方向の中央部分に配置され、その左右両側に形成された空間に一対の電動機21,22が夫々配置されているため、荷重が左右にバランス良く発生するとともに、1つの減速機20に接続された一対の電動機21,22が減速機20の左右両側に分かれて配置されているので、回転慣性力が左右にバランス良く発生する。したがって、鉄道車両の走行時における台車1のバランスを好適に向上させることができる。また、一対の電動機21,22が減速機20の左右両側に夫々固定されているため、電動機21,22を減速機20に固定してフレキシブルカップリングを不要にしながらも、電動機21,22の自重によって減速機20に掛かる負荷が減速機20の片側に偏ることを防止できる。しかも、減速機20を横ばり5に支持させるための支持部材23も台車1の車幅方向の中央部分に配置されるため、全体として車幅方向の台車バランスをより良好にできる。
【0019】
また、支持部材23は、その中央部23aが横ばり5に支持されるように横ばり5を前後方向に跨いでおり、支持部材23により前後それぞれの減速機20が共通して支持されるので、部品点数が削減され、支持機構を簡素化することができる。そして、支持部材23は横ばり5に完全に固定されるのではなく、横ばり5に上から載せられた簡素なものであるため、台車枠3に生じる捩れ力などが、支持部材23と横ばり5との間で伝達され難く、台車1の強度対策を簡素にすることが可能となる。また、前後の減速機20を支持部材23を介して互いに連結しても、前側の減速機20と後側の減速機20との間の相対位置変化は、ゴムブッシュ26により吸収することができ、スムーズな走行を実現することができる。さらに、減速機20のブラケット部27は上方に突出しており、減速機20の重量によりブラケット部27に掛かる荷重が、ブラケット部27が側方に突出したときのような剪断力にはならず、強度を向上させることができる。
【0020】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る駆動台車を示す図3相当の図面である。図5に示すように、本実施形態では、前側の減速機20と後側の減速機20とを連結する支持部材123が、横ばり5の下方を通過している。横ばり5には、下方に向けて突出した受け部130が設けられ、受け部130には、前後方向に貫通した挿通孔130aが形成されている。バー状の支持部材123は、その挿通孔130aを通過することで、受け部130を介して横ばり5に支持されている。減速機20の前後方向における台車中央側の側面には、ブラケット部127が突設されており、支持部材123は、第1実施形態の弾性結合部24と同様の構造によってブラケット部127に接続されている。また、支持部材123による前後の減速機20の支持位置は、前後の車軸7の軸心を前後方向に通る水平線上にあるので、軌道の不整等による車軸の捩れによる影響を抑えることができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0021】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係る鉄道車両用の駆動台車201を示す平面図である。図7は、図6の要部拡大図である。図8は、図6に示す鉄道車両用の駆動台車201のVIII−VIII線断面図である。なお、図8では、連結部材255の図示を省略している。図6〜8に示すように、駆動台車201は、車軸7に接続される減速機251,252が台車201の車幅方向の中央部分に配置され、その左右両側に形成された空間に一対の電動機21,22が夫々配置され、それら電動機21,22が減速機251,252の左右両側に夫々固定されている。
【0022】
前側の減速機251は、入力ギア20b及び出力ギア20cを収容するギアケース部251aと、ギアケース部251aから後方に延出した前フレーム部251bとを有している。後側の減速機252は、入力ギア20b及び出力ギア20cを収容するギアケース部252aと、ギアケース部252aから前方に延出した後フレーム部252bとを有している。前フレーム部251bの後部251c及び後フレーム部252bの前部252cは、互いに対向するように配置され、それぞれ4つに分岐した形状となっている。
【0023】
詳しくは、図7に示すように、前フレーム部251bの後部251cは、左右一対の第1端部251dと、それら第1端部251dよりも車幅方向内側に配置された左右一対の第2端部251eとを有している。一対の第1端部251d及び一対の第2端部251eは、中心線C(図6参照)を挟むようにして中心線Cに対して左右対称に配置されている。後フレーム部252bの前部252cは、左右一対の第3端部252dと、それら第3端部252dよりも車幅方向内側に配置された左右一対の第4端部252eとを有している。一対の第3端部252d及び一対の第4端部252eは、中心線C(図6参照)を挟むようにして中心線Cに対して左右対称に配置されている。前フレーム部251bの第1端部251dは、後フレーム部252bの第3端部252dに上方から重ねられ、前フレーム部251bの第2端部251eは、後フレーム部252bの第4端部252eに下方から重ねられている。
【0024】
図7及び8に示すように、第1端部251dは、前フレーム部251bの後部251cのうち上側から後方に向けて水平方向に突出している。第2端部251eは、前フレーム部251bの後部251cのうち下側から後方に向けて水平方向に突出している。第3端部252dは、後フレーム部252bの後部252cのうち下側から前方に向けて水平方向に突出している。第4端部252eは、後フレーム部252bの前部252cのうち上側から前方に向けて水平方向に突出している。このようにして、第1端部251d及び第4端部252eは、車軸7の軸心を前後方向に通る水平線Hの上側に配置され、第2端部251e及び第3端部252dは、水平線Hの下側に配置されている。
【0025】
第1端部251dと第3端部252dとの間、及び、第2端部251eと第4端部252eとの間には、剛板(例えば、金属板)で形成された横部材254及びその横部材254を上下から挟んだゴム板256が挿入される。また、前フレーム部251bの後部251cには、後フレーム部252bの第3端部252d及び第4端部252eの端面と水平方向に対向する規制面251fが形成されている。後フレーム部252bの前部252cには、前フレーム部251bの第1端部251d及び第2端部251eの端面と水平方向に対向する規制面252fが形成されている。第1〜第4端部251d,251e,252d,252eの端面と規制面251f,252fとの間には、クリアランスが設けられている。そして、横部材254は、前側の規制面251fと後側の規制面252fとの間に配置されており、横部材254が前後方向に所定以上に移動することが規制面251f,252fにより規制されている。
【0026】
側ばり204(図6参照)は、第1実施形態の軸箱10と同様の軸箱(図示せず)の上方で前後方向に延在し、第1実施形態の軸箱支持装置11と同様の軸箱支持装置(図示せず)を介して軸箱10に接続されている。第1〜第4端部251d,251e,252d,252eによって挟まれた横部材254は、連結部材255を介して側ばり204に連結されている。1つの側ばり204あたりに一対の連結部材255が接続されており、その一対の連結部材255は、角度をもって前後対称に配置されている。横部材254は、その左右の端部に連結部材255の一端部に接続するためのブラケット部254aを有している。側ばり204は、連結部材255の他端部に接続するためのブラケット部257を有している。
【0027】
連結部材255は、軸部260aと、軸部260aの両端部に設けた一対の筒状部260bと、筒状部260bにゴムブッシュ(図示せず)を介して挿入された心棒261,262とを備えている。そして、連結部材255の一端部の心棒261が、横部材254のブラケット部254aの嵌合穴に嵌合され、連結部材255の他端部の心棒262が、側ばり204のブラケット部257の嵌合穴に嵌合される。即ち、連結部材255の両端部には、側ばり204から横部材254に伝達される力を弾性吸収する弾性結合部240を形成し、その構造は第1実施形態の弾性結合部24と同様である。
【0028】
以上に説明した構成によれば、後フレーム部252の第3端部252dに対する前フレーム部251bの第1端部251dの重ね方と、後フレーム部252bの第4端部252eに対する前フレーム部251bの第2端部252eの重ね方とが、上下逆である。よって、第1〜第4端部251d,251e,252d,252eが互いに干渉し、各減速機20及び各フレーム部251,252が自重により車軸7回りに回転する動きを妨げることができる。よって、簡素な構造としながらも減速機20を好適に支持することが可能となる。
【0029】
また、第1〜第4端部251d,251e,252d,252eは、中心線Cに対して左右対称に配置されているので、第1〜第4端部251d,251e,252d,252eが互いに干渉して生じる力が左右対称となり、車両の曲線走行時などの台車バランスを良好にすることができる。さらに、第1端部251dと第3端部252dとの間、及び、第2端部251eと第4端部252eとの間には、ゴム板256が挟まれているため、前後の減速機20の間の相対振動を好適に吸収することができるとともに、互いに干渉する第1〜第4端部251d,251e,252d,252eを保護することができる。
【0030】
さらに、第1端部251d及び第4端部252eが、車軸7の軸心を前後方向に通る水平線Hの上側に配置され、第2端部251e及び第3端部252dが、水平線Hの下側に配置されることで、第1〜第4端部251d,251e,252d,252eが水平線Hを挟むように設けられるので、軌道の不整等により車軸が捩れた場合であっても、第1〜第4端部が交差する箇所において、これらが分解することなく、構造上の安定化を図ることができる。また、第1〜第4端部が交差する箇所にはゴム板256を設けているので、軌道の不整等による車軸の捩れによる影響を吸収することができる。
【0031】
さらに、側ばり204と横部材254とを連結部材255で連結し、その連結部材255は弾性結合部240を有しているため、台車1の左右いずれか一方の側ばり204から左右いずれか他方の側ばり204へ伝達される荷重が弾性結合部240により吸収され、台車1に生じる捩れ力を抑制することができる。
【0032】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成を他の実施形態に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明に係る鉄道車両用台車は、車両走行時における台車のバランスを好適に向上させる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できる鉄道車両に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0034】
1,201 駆動台車
4,204 側ばり
5 横ばり
6 輪軸
7 車軸
8 車輪
9 軸受
10 軸箱
11 軸箱支持装置
20,251,252 減速機
21,22 電動機
23 支持部材
251b 前フレーム部
252b 後フレーム部
251d 第1端部
251e 第2端部
251f,252f 規制面
252d 第3端部
252e 第4端部
254 横部材
255 連結部材
256 ゴム板
C 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8