(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状のケース本体とケース本体の両端を閉塞する一対のサイドパネルとを備えたケースと、上記ケース内に回転自在に挿通されるシャフトと、上記シャフトの外周に設けられるとともに上記ケース本体および上記各サイドパネルに摺接して上記ケース内を一方室と他方室とに区画するベーンと、上記ベーンの上記各サイドパネルに対向する軸方向端と上記ケース本体に対向する先端とに設けたコ字状のシール溝と、上記シール溝内に収容されて上記各サイドパネルおよび上記ケース本体に摺接して上記ベーンと上記ケースとの間をシールするシール部材とを備えたロータリダンパにおいて、
上記シール部材は、一方のサイドパネルと上記ケース本体の両方に摺接する第一ゴムシール部と、他方のサイドパネルと上記ケース本体の両方に摺接する第二ゴムシール部と、上記第一ゴムシール部と上記第二ゴムシール部との間に配置されて上記ケース本体に摺接するフッ素樹脂製の先端樹脂シール部とを備え、
上記先端樹脂シール部の両端に凹部或いは凸部を設け、上記第一ゴムシール部の端部および上記第二ゴムシール部の端部に凸部或いは凹部を設け、上記先端樹脂シール部の両端が第一ゴムシール部の端部および上記第二ゴムシール部の端部に嵌合される
ことを特徴とするロータリダンパ。
上記シール部材は、一方のサイドパネルのみに摺接するフッ素樹脂製の一方側サイド樹脂シール部と、他方のサイドパネルのみに摺接するフッ素樹脂製の他方側サイド樹脂シール部とを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリダンパ。
上記シール部材は、シール溝に挿入されるコ字状であってゴム製のバックアップ部を備え、上記第一ゴムシール部と上記第二ゴムシール部が上記バックアップ部に設けられ、上記先端樹脂シール部が上記バックアップ部に積層される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のロータリダンパ。
上記一方側サイド樹脂シール部の端部に凹部或いは凸部を設け、上記第一ゴムシール部の端部に凸部或いは凹部を設け、上記一方側サイド樹脂シール部の端部が上記第一ゴムシール部の端部に嵌合され、上記他方側サイド樹脂シール部の端部に凹部或いは凸部を設け、上記第二ゴムシール部の端部に凸部或いは凹部を設け、上記他方側サイド樹脂シール部の端部が上記第二ゴムシール部の端部に嵌合される
ことを特徴とする請求項2、請求項3、請求項2を引用する請求項4または請求項5のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1から
図3に示すように、一実施の形態におけるロータリダンパDは、ケース1と、ケース1内に回転自在に挿通されるシャフト5と、当該シャフト5の外周に設けられるとともにケース1内を一方室R1と他方室R2とに区画するベーン6と、当該ベーン6に設けたシール溝7と、当該シール溝7内に収容されてベーン6とケース1との間をシールするシール部材8とを備えて構成されている。そして、このロータリダンパDは、シャフト5をケース1に対して周方向へ回転させると、このシャフト5の回転を抑制する減衰力を発揮する。
【0014】
以下、このロータリダンパDの各部について詳細に説明する。まず、ケース1は、詳細には後述するが、筒状のケース本体2と、ケース本体2の軸方向両端となる
図1中左右端に積層されてケース本体2を閉塞するサイドパネル3,4とを備えて構成され、ケース本体2とサイドパネル3,4で閉空間が形成されている。また、シャフト5は、サイドパネル3,4の反ケース側に積層されるベアリングキャップ9,10に回転自在に軸支されていて、ケース1内に回転自在に挿通されている。シャフト5の外周に設けたベーン6,6は、ケース1内に収容されて、上記ケース1内、すなわち、上記空間内を一方室R1と他方室R2とに区画している。
【0015】
シャフト5は、内部に中空部5aを持つ筒状とされており、先端外周に設けられて図示しない継手等への連結を可能とするセレーション5bと、外径が他部よりも大径とされる拡径部5cと、当該拡径部5cの外周であって周方向に180度の位相差をもって設けた一対のベーン6,6と、拡径部5cのベーン6,6間の側部から開口して中空部5aに通じる四つの通孔5d,5e,5f,5gとを備えている。なお、上記したところでは、図外の継手等への連結のためにセレーション5bを設けているが、接続方法はこれに限定されない。
【0016】
シャフト5の
図1中左端には、有底筒状のキャップ30が螺着されている。このキャップ30は、シャフト5の左端を閉塞しており、底部を貫通する螺子孔30aを備えている。また、螺子孔30aには、弁31が螺着されている。そして、シャフト5内には、つまり、中空部5aには、摺動隔壁32が摺動自在に挿入されている。この摺動隔壁32は、中空部5a内であって当該摺動隔壁32よりも
図1中左方側に気室Gを区画していて、中空部5a内を軸方向である
図1中左右方向へ移動することで気室Gの容積を増減できるようになっている。この気室Gには、弁31を介して外部から気体を充填することができるようになっている。
【0017】
さらに、シャフト5内である中空部5aの摺動隔壁32より
図1中右方には、減衰バルブVが収容されている。減衰バルブVは、中空部5a内に挿入されて当該中空部5a内に一方室R1に連通される一方側バルブ室Aと他方室R2に連通される他方側バルブ室Bとを画成する隔壁部材33と、隔壁部材33の他方側バルブ室B側に設けられる一方側リーフバルブ34と、隔壁部材33の一方側バルブ室A側に設けられる他方側リーフバルブ35と、これらを一体化するロッド36とを備えて構成されている。
【0018】
また、ロッド36には、中空部5aの内周に嵌合する仕切部材37が装着されるとともに、減衰バルブVを中空部5a内の所定位置に固定するためのホルダ部材38が装着されている。
【0019】
中空部5a内の仕切部材37よりも
図1中左方側の空間は、上記摺動隔壁32によって、液室Lと気室Gとに区画されている。また、仕切部材37とホルダ部材38との間に隔壁部材33が配置され、この隔壁部材33によって一方側バルブ室Aと他方側バルブ室Bが画成される。この場合、仕切部材37と隔壁部材33の間にこれら仕切部材37と隔壁部材33によって中空部5a内に一方側バルブ室Aが形成され、隔壁部材33とホルダ部材38の間にこれら隔壁部材33とホルダ部材38によって中空部5a内に他方側バルブ室Bが形成される。一方側バルブ室Aは、通孔5d,5eを介して一方室R1に連通されている。他方側バルブ室Bは、通孔5f,5gを介して他方室R2に連通されている。また、仕切部材37には、オリフィス孔37aが設けられていて、一方側バルブ室Aが液室Lに連通されており、詳しくは後述するが、一方側バルブ室Aが一方室R1と他方側バルブ室Bを介して他方室R2に連通されており、一方室R1と他方室R2内の液体の温度変化による体積変化を補償することができるようになっている。
【0020】
隔壁部材33は、環状であってロッド36の外周に装着されており、一方側バルブ室Aと他方側バルブ室Bとを連通する一方側ポート33aと他方側ポート33bとを備えている。一方側リーフバルブ34は、ロッド36の外周に装着されていて、一方側ポート33aの
図1中右端側開口を開閉するようになっており、一方側バルブ室Aの圧力が他方側バルブ室Bの圧力を上回り両者の差圧が開弁圧に達すると撓んで一方側ポート33aを開放し液体の通過を許容しつつ、この液体の流れに抵抗を与える。他方側リーフバルブ35は、ロッド36の外周に装着されていて、他方側ポート33bの
図1中左端側開口を開閉するようになっており、他方側バルブ室Bの圧力が一方側バルブ室Aの圧力を上回り両者の差圧が開弁圧に達すると撓んで他方側ポート33bを開放し液体の通過を許容しつつ、この液体の流れに抵抗を与える。
【0021】
なお、一方側リーフバルブ34および他方側リーフバルブ35は、ともに、環状板を複数枚積層して構成される積層リーフバルブとされているが、環状板の枚数は任意であり、ロータリダンパDに望まれる減衰特性によっては、一枚の環状板のみで構成されてもよい。また、一方側リーフバルブ34および他方側リーフバルブ35の代わりに、たとえば、ポペット弁やニードル弁といった弁体を利用することも可能であるし、オリフィスやチョークと言った弁体を必要としないバルブとしてもよい。
【0022】
ロッド36は、筒状であって基端にフランジ36aを備え、先端外周に螺子部
が設けられている。そして、このロッド36の外周に、仕切部材37、他方側リーフバルブ35、隔壁部材33、一方側リーフバルブ34およびホルダ部材38を組み付けるとともに、ロッド36の先端の螺子部
にバルブナット39を螺着すると、ロッド36の外周に組み付けられて各部材はフランジ36aとバルブナット39とで挟持されてロッド36と一体化されて固定される。
【0023】
このように減衰バルブVを構成する部材はロッド36に固定されてアッセンブリ化されると、中空部5aの
図1中右端側からロッド36の基端を中空部5aの内方へ向けて挿入され、ホルダ部材38の
図1中左端が中空部5aの内周に螺着される外周螺子ナット40によってシャフト5に固定されることにより、アセンブリ化された減衰バルブVの構成部材および仕切部材37がシャフト5に固定される。
【0024】
ケース1は、筒状であって内部に作動室Rを形成するケース本体2と、ケース本体2の
図1中左端を閉塞するサイドパネル3と、ケース本体2の
図1中右端を閉塞するサイドパネル4とを備えて構成されている。
【0025】
ケース本体2は、
図1中左端側に設けた複数の螺子孔21と、ケース本体2の
図1中右端側に設けた複数の螺子孔22とを備えて構成されている。また、サイドパネル3は、円板状とされており、ケース本体2に設けた螺子孔21に符合する位置に設けたボルト挿通孔3aと、中央に設けたシャフト5の挿通を許容するシャフト挿通孔
3bとを備えており、サイドパネル4もまた、円板状とされていて、ケース本体2に設けた螺子孔22に符合する位置に設けたボルト挿通孔4aと、中央に設けたシャフト5の挿通を許容するシャフト挿通孔4bとを備えている。
【0026】
さらに、サイドパネル3の
図1中左方である反ケース側には、シャフト5の
図1中左方側を回転自在に軸支するベアリングキャップ9が積層され、サイドパネル4の
図1中右方である反ケース側には、シャフト5の
図1中右方側を回転自在に軸支するベアリングキャップ10が積層されている。
【0027】
ベアリングキャップ9は、筒状のシャフト挿通部9aと、シャフト挿通部9aの外周に設けたフランジ部9bと、当該フランジ部9bの外周側であってケース本体2の螺子孔21に符合する位置に設けたボルト挿通孔9cとを備えており、シャフト挿通部9aの内周には、シャフト5の
図1中左端側に摺接してシャフト5の外周をシールする環状のUパッキン13と環状のダストシール14と、シャフト5の外周に摺接してシャフト5の回転をガイドするブッシュ15とがそれぞれ装着されている。他方、ベアリングキャップ10は、有底筒状のシャフト挿通部10aと、シャフト挿通部10aの外周に設けたフランジ部10bと、当該フランジ部10bの外周側であってケース本体2の螺子孔
22に符合する位置に設けたボルト挿通孔10cとを備えており、シャフト挿通部10aの内周には、シャフト
5の
図1中
右端側に摺接してシャフト
5の外周をシールする環状のUパッキン16と、シャフト5の外周に摺接してシャフト5の回転をガイドするブッシュ17とが装着されている。
【0028】
そして、サイドパネル3とベアリングキャップ9をケース本体2に積層しつつボルト挿通孔3a,9cに通したボルト25を螺子孔21に螺着することで、サイドパネル3およびベアリングキャップ9がケース本体2に一体化される。また、サイドパネル4とベアリングキャップ10をケース本体2に積層しつつボルト挿通孔4a,10cに通したボルト26を螺子孔22に螺着することで、サイドパネル4およびベアリングキャップ10がケース本体2に一体化される。
【0029】
なお、サイドパネル3,4は、この実施の形態におけるロータリダンパDにあっては、ベーン6に摺接してベアリングキャップ9,10を保護する機能も果たしており、耐摩耗性の観点から、サイドパネル3,4のベーン側面を耐摩耗性に優れる材料で作るとよく、具体的には、たとえば、サイドパネル3,4の全体を高硬度の材料で形成してもよいし、サイドパネル3,4のベーン6と接触する表面(摺動面)にメッキや、ダイヤモンドライクカーボン皮膜を形成したり、表面にガス軟窒化処理、熱処理やシリコン添付処理を施したりして、表面の耐摩耗性を高くするようにしてもよい。また、サイドパネル3,4にベアリングキャップ9,10を別部品とせずに、一部品としてケース本体2に積層してケース1を構成するようにしてもよい。この場合、
ベアリングキャップ9,10は、サイドパネル3,4によって保護されているので、たとえば、アルミニウムといった軽量な材料で形成され、これによりロータリダンパDの全体重量を軽減している。
【0030】
そして、ケース本体2に上述のようにしてサイドパネル3,4、ベアリングキャップ9,10を取り付けると、ケース本体2内は密閉されて、ケース1内に二つの扇状の作動室Rが形成される。また、シャフト5に設けたベーン6の先端は、ケース1におけるケース本体2の内周に摺接し、二つの作動室Rは、このベーン6によって、それぞれ、部屋C1と部屋C2とに区画され、たとえば、作動油等の液体が封入される。なお、ケース1のケース本体2の
図1中左右端には、作動室Rの外周を取り巻くOリング27,28が装着されていて、ケース本体2とサイドパネル3,4との間がシールされ、作動室Rが密閉される。
【0031】
部屋C1は、
図2では、シャフト1の軸から見てベーン6の左側に区画され、部屋C2は、シャフト5の軸から見てベーン6の右側に区画されており、シャフト5が
図2中で時計回りに回転する場合、ベーン6によって各部屋C1が拡大されるとともに各部屋C2が縮小され、反対に、シャフト5が
図2中で反時計回りに回転する場合、ベーン6によって各部屋C1が縮小されるとともに各部屋C2が拡大されるようになっている。
【0032】
そして、シャフト5の回転に伴って容積がともに拡大或いは縮小される部屋C1同士をシャフト5の通孔5d,5eおよび一方側バルブ室Aを介して連通してこれらを一方室R1とし、同じく、シャフト5の回転に伴って容積がともに拡大或いは縮小される部屋C2同士をシャフト5の通孔5f,5gおよび他方側バルブ室Bを介して連通してこれらを他方室R2としてある。これら一方室R1と他方室R2は上述したところから理解できるように、ベーン6によって区画される。また、通孔5d,5e,5f,5gの開口位置は、シャフト5が回転しても一方室R1同士が通孔5d,5eによって連通状態に維持されようベーン6の付根に設けてあり、通孔5f,5gの開口位置もまた、シャフト5が回転しても他方室R2同士が連通孔5f,5gによって連通状態に維持されるようベーン6の付根に設けてある。
【0033】
各ベーン6は、この実施の形態では、シャフト5から径方向へ突出するように設けてあり、ケース本体2の内周に対向する先端
が円弧状とされていて、この先端
に設けたシャフト軸線に沿って設けた先端溝7aと、一方のサイドパネル3に対向する軸方向端(シャフト5の軸方向から見た端部)である
図1中における左端
にシャフト5の径方向に沿って設けた端部溝7bと、他方のサイドパネル4に対向する軸方向端(シャフト5の軸方向から見た端部)である
図1中における右端
にシャフト5の径方向に沿って設けた端部溝7cを備えている。先端溝7aおよび端部溝7b,7cは、それぞれ隣同士連通されており、一つのコ字状のシール溝7を形成しており、よって、各ベーン6は、シール溝7を備えている。
【0034】
このシール溝7内には、各サイドパネル3,4およびケース本体2に摺接してベーン6とケース1との間をシールするシール部材8が収容されている。シール部材8は、
図3および
図4に示すように、この場合、一方のサイドパネル3とケース本体2の両方に摺接する第一ゴムシール部81と、他方のサイドパネル4とケース本体2の両方に摺接する第二ゴムシール部82と、第一ゴムシール部81と第二ゴムシール部82との間に配置されてケース本体2に摺接するフッ素樹脂製の先端樹脂シール部83と、一方のサイドパネル3のみに摺接するフッ素樹脂製の一方側サイド樹脂シール部84と、他方のサイドパネル4のみに摺接するフッ素樹脂製の他方側サイド樹脂シール部85と、シール溝7の最深部に挿入されるコ字状であってゴム製のバックアップ部86とを備えて構成されている。
【0035】
第一ゴムシール部81は、
図3に示すように、L字状とされており、先端溝7aと端部溝7bの角部に収容されていて、ゴム製であって一方のサイドパネル3とケース本体2の双方に摺接するとともに、弾性に優れるためこれらの境の隅部分にも密着することができ、一方のサイドパネル3およびケース本体2の両者とベーン6と
の間を密にシールすることができる。また、第一ゴムシール部81の両端には、凹部81a,81bが設けられている。
【0036】
第二ゴムシール部82も、
図3に示すように、L字状とされており、先端溝7aと端部溝7bの角部に収容されていて、ゴム製であって他方のサイドパネル4とケース本体2の双方に摺接するとともに、弾性に優れるためこれらの境の隅部分にも密着することができ、他方のサイドパネル4およびケース本体2の両者とベーン6と
の間を密にシールすることができる。また、第二ゴムシール部82の両端には、凹部82a,82bが設けられている。
【0037】
先端樹脂シール部83は、フッ素樹脂で形成されており、自己潤滑性に富むので、ケース本体2の内周に摺接しても、ケース本体2との間で生じる摩擦力が小さくなり、ケース本体2とベーン6との間をシールしつつもベーン6の揺動を邪魔することが無い。この先端樹脂シール部83は、シール溝7の先端溝7aに収容され、両端に凸部83a,83bを備えていて、第一ゴムシール部81の凹部81aに凸部83a
が嵌合することで第一ゴムシール部81と連結され、第二ゴムシール部82の凹部82aに凸部83b
が嵌合することで第二ゴムシール部82と連結される。そのため、先端樹脂シール部83と第一ゴムシール部81の繋ぎ目および先端樹脂シール部83と第二ゴムシール部82の繋ぎ目に隙間が生
じず、先端樹脂シール部83と第一ゴムシール部81の繋ぎ目および先端樹脂シール部83と第二ゴムシール部82の繋ぎ目で一方室R1と他方室R2とが連通されてしまうことがないようになっている。先端樹脂シール部83側に凹部を設け、第一ゴムシール部81と第二ゴムシール部82に凸部を設けて嵌合するようにしてもよい。また、凸部83a,83bと凹部81a,82aの形状は互いに嵌合可能な形状であればよく、凸部および凹部の数も任意に設定できる。
【0038】
一方側サイド樹脂シール部84は、フッ素樹脂で形成されており、自己潤滑性に富むので、一方のサイドパネル3の内周に摺接しても、サイドパネル3との間で生じる摩擦力が小さくなり、サイドパネル3とベーン6との間をシールしつつもベーン6の揺動を邪魔することが無い。この一方側サイド樹脂シール部84は、シール溝7の端部溝7bに収容され、第一ゴムシー
ル部側端に凸部84aを備えていて、第一ゴムシール部81の凹部81bに凸部84a
が嵌合することで第一ゴムシール部81と連結され、第一ゴムシール部81との繋ぎ目で一方室R1と他方室R2とが連通されてしまうことがないようになっている。一方側サイド樹脂シール部84に凹部を設け、第一ゴムシール部81に凸部を設けて嵌合してもよい。また、凸部84aと凹部81bの形状は互いに嵌合可能な形状であればよい。
【0039】
他方側サイド樹脂シール部85は、フッ素樹脂で形成されており、自己潤滑性に富むので、他方のサイドパネル4の内周に摺接しても、サイドパネル4との間で生じる摩擦力が小さくなり、サイドパネル4とベーン6との間をシールしつつもベーン6の揺動を邪魔することが無い。この他方側サイド樹脂シール部85は、シール溝7の端部溝7cに収容され、第二ゴムシー
ル部側端に凸部85aを備えていて、第二ゴムシール部82の凹部82bに凸部85a
が嵌合することで第二ゴムシール部82と連結され、第二ゴムシール部82との繋ぎ目で一方室R1と他方室R2とが連通されてしまうことがないようになっている。他方側サイド樹脂シール部85に凹部を設け、第二ゴムシール部82に凸部を設けて嵌合してもよい。また、凸部85aと凹部82bの形状は互いに嵌合可能な形状であればよく、凸部および凹部の数も任意に設定できる。
【0040】
バックアップ部86は、ゴム製であって、シール溝7における先端溝7aに収容される中央部86aと、この中央部86aの両端に連なって端部溝7b,7cに収容される末端部86b,86cとを備えてコ字状とされていて、両角部である中央部86aと末端部86bの境部および中央部86aと末端部86cの境部に、それぞれ第一ゴムシール部81と第二ゴムシール部82が一体に設けられている。そして、バックアップ部86の第一ゴムシール部81と第二ゴムシール部82との間、つまり、中央部86aに先端樹脂シール部83が積層され、バックアップ部86の末端部86bに一方側サイド樹脂シール部84が積層され、バックアップ部86の末端部86cに他方側サイド樹脂シール部85が積層されている。
【0041】
よって、バックアップ部86は、第一ゴムシール部81と第二ゴムシール部82を保持する機能と、先端樹脂シール部83をケース本体2へ向けて押しつけ、一方側サイド樹脂シール部84を一方のサイドパネル3へ向けて押しつけ、さらには他方側サイド樹脂シール部85を他方のサイドパネル4へ向けて押しつける附勢機能している。したがって、このバックアップ部86を設けることによって、フッ素樹脂で形成された先端樹脂シール部83がケース本体2に密着し、一方側サイド樹脂シール部84が一方のサイドパネル3に密着し、他方側サイド樹脂シール部85が他方のサイドパネル4に密着して、効果的にベーン6とケース1との間をシールすることができる。なお、バックアップ部86は、このようにシール部材8のシール性を向上させる効果をもたらすが、第一ゴムシール部81、第二ゴムシール部82、先端樹脂シール部83、一方側サイド樹脂シール部84および他方側サイド樹脂シール部85が上記のように嵌合されて一体化されればバックアップ部86を省略することも可能である。
【0042】
また、一方のサイドパネル3および他方のサイドパネル4とシール部材8の摺動摩擦の低減を図るため、一方側サイド樹脂シール部84および他方側サイド樹脂シール部85を設けていたが、第一ゴムシール部81および第二ゴムシール部82における摺動摩擦の大きさが問題にならなければ、
図5に示した
ロータリダンパDの
一変形例のシール部材8のように、一方側サイド樹脂シール部84および他方側サイド樹脂シール部85を廃止して、第一ゴムシール部81を延長して端部溝7bの全長に亘って収容し、一方のサイドパネル3とベーン6との間のシールをこの第一ゴムシール部81のみで行い、第二ゴムシール部82を延長して端部溝7cの全長に亘って収容し、他方のサイドパネル4とベーン6との間のシールをこの第二ゴムシール部82のみで行うようにすることも可能である。
【0043】
さらに、
図6に示したロータリダンパDの他の変形例のシール部材8のように、
一方側サイド樹脂シール部84の反第一ゴムシール部側にゴム製の一方側端ゴムシール部87を設け、他方側サイド樹脂シール部85の反第二ゴムシール部側にゴム製の他方側端ゴムシール部88を設けるようにしてもよい。この場合、バックアップ部86を設けるのであれば一方側端ゴムシール部87および他方側端ゴムシール部88をバックアップ部86に一体化するようにすればよい。また、一方側端ゴムシール部87に凹部87aを設け、一方側サイド樹脂シール部84に凸部84bを設けて、両者を嵌合して両者の繋ぎ目に隙間を生じさせないようにし、他方側端ゴムシール部88に凹部88aを設け、他方側サイド樹脂シール部85に凸部85bを設けて、両者を嵌合して両者の繋ぎ目に隙間を生じさせないようにするとシール性の向上につながる。一方側サイド樹脂シール部84および他方側サイド樹脂シール部85に凹部を設け、一方側端ゴムシール部87および他方側端ゴムシール部88に凸部を設けて嵌合してもよいし、凸部と凹部の形状は互いに嵌合可能な形状であればよく、凸部および凹部の数も任意に設定できる。
【0044】
またさらには、
図7に示したロータリダンパDの別の変形例のシール部材8のように、先端樹脂シール部83のバックアップ部側端に凸部83cを設け、バックアップ部86の先端樹脂シール部側端、つまり、中央部86aの先端樹脂シール部側端に凹部86dを設け、両者を嵌合させてバックアップ部86と先端樹脂シール部83との間に隙間が生じないようにして、より一層のシール性の向上を図ってもよい。逆に、先端樹脂シール部83のバックアップ部側端に凹部を設け、バックアップ部86の先端樹脂シール部側端に凸部を設けるようにしてもよい。同様に、図示はしないが、一方側サイド樹脂シール部84と他方側サイド樹脂シール部85のバックアップ部側端に凸部および凹部の一方を設け、バックアップ部86の一方側サイド樹脂シール部側端および他方側サイド樹脂シール部側端に凸部および凹部の他方を設けて嵌合するようにしてもよい。なお、凸部と凹部の形状は嵌合可能であればよく、その設置数は任意に設定することができる。
【0045】
加えて、
図8に示したロータリダンパDのさらに別の変形例に示すように、シール溝7にシール部材8とともに、コ字状のバックアッププレート19,19を収容するようにしてもよい。この場合、バックアッププレート19,19でシール部材8を両側から挟みこまれるので、先端樹脂シール部83、一方側サイド樹脂シール部84および他方側サイド樹脂シール部85がシール溝7から脱落してしまうことを防止することができる。
【0046】
戻って、ケース1のケース本体2の内周であってシャフト5の拡径部5cの外周に摺接する部位とケース本体2の左右端にかけてコ字状のシール29が装着されている。また、サイドパネル3の内周には、シャフト挿通孔3bの内壁とシャフト5の拡径部5cの双方に摺接して、サイドパネル3とシャフト5との間をシールするサイドシール11が設けられており、さらに、サイドパネル4の内周には、シャフト挿通孔4bの内壁とシャフト5の拡径部5cの双方に摺接して、サイドパネル4とシャフト5との間をシールするサイドシール12が設けられている。
【0047】
そして、シール29、ベーン6に設けたシール部材8、サイドシール11,12、Oリング27,28で一方室R1と他方室R2とが減衰バルブVを介さずに互いに連通することがないようにシールされている。
【0048】
つづいて、上記のように構成されたロータリダンパDの作動について説明する。シャフト5が
図2中反時計回りに回転して、ベーン6が一方室R1を圧縮すると、一方室R1内の圧力が上昇して一方側リーフバルブ34が撓んで一方側ポート33aを開放するので、一方室R1から押し出される液体は、一方側バルブ室A、一方側ポート33aおよび他方側バルブ室Bを介して他方室R2へ流入する。そして、液体が一方側ポート33aを通過する際に、液体の流れに一方側リーフバルブ34が抵抗を与えることで一方室R1と他方室R2の圧力に差圧を生じせしめることで、ロータリダンパDは、シャフト5の上記回転を抑制する減衰力を発揮する。反対に、シャフト5が
図2中時計回りに回転して、ベーン6が他方室R2を圧縮すると、他方室R2内の圧力が上昇して他方側リーフバルブ35が撓んで他方側ポート33bを開放するので、他方室R2から押し出される液体は、他方側バルブ室B、他方側ポート33bおよび一方側バルブ室Aを介して一方室R1へ流入する。そして、液体が他方側ポート33bを通過する際に、液体の流れに他方側リーフバルブ35が抵抗を与えることで他方室R2と一方室R1の圧力に差圧を生じせしめることで、ロータリダンパDは、シャフト5の上記回転を抑制する減衰力を発揮する。
【0049】
また、ロータリダンパD内の液体の温度変化によって液体の体積が変化する場合、摺動隔壁32が中空部5a内で軸方向へ移動して気室Gの容積を増減させることで、上記液体の体積変化を補償するようになっており、この場合、補償手段は、中空部5a内に摺動自在に挿入される摺動隔壁32と、この摺動隔壁32で画成する気室Gおよび液室Lとで構成されている。より詳細には、液体の体積変化が生じる場合、一方室R1、他方室R2、一方側バルブ室Aおよび他方側バルブ室B内で体積が変化した分、液体が過剰となるか不足するため、摺動隔壁32が体積変化見合いで中空部
5a内を移動することで、液体が過剰となる場合には過剰分の液体が一方室R1、他方室R2、一方側バルブ室Aおよび他方側バルブ室Bから液室Lに排出され、液体が不足する場合には、不足分の液体が液室Lから一方室R1、他方室R2、一方側バルブ室Aおよび他方側バルブ室Bへ供給されることになる。なお、気室G内の圧力は、液室Lを介して一方室R1、他方室R2、一方側バルブ室Aおよび他方側バルブ室Bへ伝播するので、気室G内の圧力を高くすることで液体の見掛け上の剛性が高くなって、ロータリダンパDは、応答性よく減衰力を発揮することができる。
【0050】
そして、このロータリダンパDにあっては、シャフト5が回転してベーン6がケース1に対して移動する際に、シール部材8がケース1の内周に摺接することになるが、シール部材8がケース1との摩擦力を低減する先端樹脂シール部83を備えているので、シャフト5の回転を阻害することが無い。また、ケース本体2と一方のサイドパネル3との隅部には第一ゴムシール部81が密着してケース本体2および一方のサイドパネル3とベーン6との間がシールされ、ケース本体2と他方のサイドパネル4との隅部には第二ゴムシール部82が密着してケース本体2および他方のサイドパネル4とベーン6との間がシールされるので、一方室R1と他方室R2とがシール部材8とケース1との間を介して連通されることが無く高いシール性も確保することが可能となっている。よって、本発明のロータリダンパDによれば、シール性を損なわずシャフト回転時における摩擦力を低減することができるのである。
【0051】
また、一方側サイド樹脂シール部84と他方側サイド樹脂シール部85を設けることにより、第一ゴムシール部81と第二ゴムシール部82のケース1への接触長さを減少させることができ、さらなる摩擦力の低減を図ることができ、シャフト5のより一層円滑な回転運動を保証することができる。
【0052】
なお、上記したところでは、シャフト5内に減衰バルブVを設ける構造を採用しているが、これに限定されるものではない。また、ベーン6の設置数についても特に上記説明した設置数に限定されない。
【0053】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。