(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の変速機においては、潤滑油を揚液するオイルポンプの動力は、変速機のメーンシャフト又はモータにより得ることとされている。また、特許文献2、3のポンプを駆動するためには、作動流体を気化させるためのエネルギが要求される。
【0005】
本発明は、液体の搬送に要するエネルギを低く抑えることができる液体搬送装置、及び変速機のエネルギロスを抑制することができる変速機用潤滑装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の液体搬送装置は、被搬送液体を搬送する搬送路を形成する主管と、前記主管内で直列に配置された一対の逆止弁と、前記主管における前記一対の逆止弁の間に接続され、少なくとも前記主管との接続側の一部に前記被搬送液体が充たされた分岐管と、前記分岐管における前記主管との接続側とは反対側に設けられ、適用される車両で発生する無効なエネルギを用いて、前記分岐管内の被搬送液体に振動流を生じさせる振動流発生部と、を備えている。
【0007】
第1態様の液体搬送装置では、分岐管内の被搬送液体に振動流が生じると、主管における一対の逆止弁間に被搬送液体が押し込まれるタイミングでは、搬送方向下流側の逆止弁が開き、被搬送液体が吐出される。一方、主管における一対の逆止弁間から被搬送液体が排出されるタイミングでは、搬送方向上流側の逆止弁が開き、被搬送液体が吸入される。
【0008】
ここで、本液体搬送装置では、振動流発生部において、車両で発生する無効なエネルギを用いて駆動流体の振動流を生じさせる。このため、振動流発生部が専用のエネルギ源からのエネルギで作動される場合と比較して、該振動流発生部に与えるべきエネルギを小さく抑えることができる。
【0009】
このように、
第1態様の液体搬送装置では、液体の搬送に要するエネルギを低く抑えることができる。なお、車両で発生する無効なエネルギとしては、廃棄(外部放出)されるべき熱エネルギ、吸収又は減衰されるべき振動エネルギ、積極的に吸収又は減衰されることはないが車両の機能に寄与しない振動エネルギや運動エネルギ等を挙げることができる。
【0010】
第2態様の液体搬送装置は、
第1態様の液体搬送装置において、前記振動流発生部は、前記分岐管における前記主管との接続側とは反対側に連通された連通部内で液相の駆動流体を蒸発させる蒸発部と、前記分岐管内で気相の駆動流体を凝縮させる凝縮部とを含んで構成されている。
【0011】
第2態様の液体搬送装置では、蒸発部で蒸発(膨張)された駆動流体が凝縮部で凝縮(収縮)されることで、駆動流体の振動流が生じる。この駆動流
体の振動流によって被搬送液体にも振動流が生じ、主管での被搬送液体の搬送が行われる。この構成では、無効なエネルギとして、例えば蒸発部において廃棄される熱エネルギを用いることができる。
【0012】
第3態様の液体搬送装置は、
第2態様の液体搬送装置において、前記駆動流体は、前記被搬送液体よりも沸点が低い流体である。
【0013】
第3態様の液体搬送装置では、駆動流体が被搬送液体とは異なる流体とされ、かつ駆動流体の沸点が被搬送液体の沸点よりも低いため、被搬送液体の組成等の制約を受けることなく、駆動流体に振動流を生じさせることができる。すなわち、振動流発生部において利用するエネルギの状態(温度など)に応じて駆動流体の種類(沸点)を設定することで、被搬送液体の組成(性状)に拘らず、該被搬送液体の良好な搬送性能を得ることが可能となる。
【0014】
第4態様の液体搬送装置は、
第2又は第3態様の液体搬送装置において、前記分岐管内における前記駆動流体と前記被搬送液体との間にシール液体を介在させた。
【0015】
第4態様の液体搬送装置では、シール液体によって、駆動流体と被搬送液体との接触(混合や溶解)を抑制する。このため、駆動流体が主管を搬送される被搬送液体に影響を与えること防止又は効果的に抑制される。
【0016】
第5態様の発明に係る液体搬送装置は、
第1態様の液体搬送装置において、前記振動流発生部は、前記分岐管に連通されると共に駆動流体が充たされ、かつ伸縮することで容積変化可能に構成された伸縮容器と、機械的な振動を前記伸縮容器の伸縮に変換する変換機構と、を含んで構成されている。
【0017】
第5態様の液体搬送装置では、変換機構が機械的振動を伸縮容器の伸縮に変換すると、該伸縮容器内の駆動流体が分岐管に出入して振動流が生じる。この駆動流
体の振動流によって被搬送液体にも振動流が生じ、主管での被搬送液体の搬送が行われる。この構成では、無効なエネルギとして、例えば振動流発生部において吸収又は減衰されるべき振動エネルギを用いることができる。
【0018】
第6態様の液体搬送装置は、
第1態様の液体搬送装置において、前記振動流発生部は、前記分岐管に連通されると共に駆動流体が充たされ、かつ圧縮荷重を受けて容積が縮小されると共に圧縮荷重の除去により容積が復元する伸縮容器を含んで構成されている。
【0019】
第6態様の液体搬送装置では、伸縮容器が圧縮力を受けると該伸縮容器内の駆動流体が分岐管に押し出され、圧縮力から解放されると復元する伸縮容器に分岐管内の駆動流体が吸い込まれ、これにより駆動流体の振動流が生じる。この駆動流体
の振動流によって被搬送液体にも振動流が生じ、主管での被搬送液体の搬送が行われる。この構成では、無効なエネルギとして、例えば振動流発生部において液体等の運動(振動)エネルギを用いることができる。
【0020】
第7態様の変速機用潤滑装置は
、変速機内の下部に設けられ、変速要素が接触しない範囲で潤滑油を溜める油溜り部と、供給された潤滑油を前記変速機の上部で前記変速要素に向けて案内する油案内部材と、一端が前記油溜り部に浸されると共に他端が前記油案内部材上の空間で開口された前記主管と、前記変速機内の潤滑油の熱で前記駆動流体を蒸発させる蒸発部と、前記変速機の外側で前記分岐管内の駆動流体を凝縮させる凝縮部とを含んで、前記被搬送液体として前記潤滑油を搬送するように構成された
第2〜第4態様の何れか
一態様の液体搬送装置と、を備えている。
【0021】
第7態様の変速機用潤滑装置では、作動部においては変速機内の潤滑油の熱で駆動流体が蒸発され、凝縮部においては変速機外で空気や冷却液等との熱交換で駆動流体が凝縮される。これにより、分岐管内の被搬送液体に駆動流体の振動流が伝わり、変速機内の油溜り部から油案内部に潤滑油が搬送される。油案内部に搬送された潤滑油は、変速要素に上部から供給され、変速要素の潤滑に伴って昇温されて油溜り部に戻る。これにより、本変速機用潤滑装置では、変速機の動力や外部動力(有効なエネルギ)を利用してポンプを駆動することなく、潤滑油を搬送することができる。
【0022】
このように、
第7態様の変速機用潤滑装置では、変速機のエネルギロスを抑制することができる。
【0023】
第8態様の変速機用潤滑装置は、変速機内の下部に設けられ、変速要素が接触しない範囲で潤滑油を溜める油溜り部と、供給された潤滑油を前記変速機の上部で前記変速要素に向けて案内する油案内部材と、一端が前記油溜り部に浸されると共に他端が前記油案内部材上で開口された前記主管と、前記車両を構成する振動要素の振動を前記伸縮容器の伸縮に変換する前記変換機構とを含んで、前記被搬送液体として前記潤滑油を搬送するように構成された
第5態様の液体搬送装置と、を備えている。
【0024】
第8態様の変速機用潤滑装置では、例えば駆動系の支持装置や懸架装置等の車両の振動が変換機構によって伸縮要素の伸縮に変換される。これにより、分岐管内の被搬送液体に駆動流体の振動流が伝わり、変速機内の油溜り部から油案内部に潤滑油が搬送される。油案内部に搬送された潤滑油は、変速要素に上部から供給されて油溜り部に戻る。これにより、本変速機用潤滑装置では、変速機の動力や外部動力(有効なエネルギ)を利用してポンプを駆動することなく、潤滑油を搬送することができる。
【0025】
このように、
第8態様の変速機用潤滑装置では、変速機のエネルギロスを抑制することができる。
【0026】
第9態様の変速機用潤滑装置は、変速機内の下部に設けられ、変速要素が接触しない範囲で潤滑油を溜める油溜り部と、供給された潤滑油を前記変速機の上部で前記変速要素に向けて案内する油案内部材と、一端が前記油溜り部に浸されると共に他端が前記油案内部材上で開口された前記主管と、前記油溜り部内の潤滑油の移動によって圧縮される前記伸縮容器とを含んで、前記被搬送液体として前記潤滑油を搬送するように構成された
第6態様の液体搬送装置と、を備えている。
【0027】
第9態様の変速機用潤滑装置では、油溜り部内の潤滑油に振動や揺れが生じて伸縮容器が圧縮されると駆動流体が分岐管に押し出され、伸縮容器が復元すると駆動流体が伸縮容器に吸い込まれる。これにより、分岐管内の被搬送液体に駆動流体の振動流が伝わり、変速機内の油溜り部から油案内部に潤滑油が搬送される。油案内部に搬送された潤滑油は、変速要素に上部から供給されて油溜り部に戻る。これにより、本変速機用潤滑装置では、変速機の動力や外部動力(有効なエネルギ)を利用してポンプを駆動することなく、潤滑油を搬送することができる。
【0028】
このように、
第9態様の変速機用潤滑装置では、変速機のエネルギロスを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明に係る液体搬送装置は、液体の搬送に要するエネルギを低く抑えることができる。また、本発明に係る変速機用潤滑装置は、ドライサンプによって撹拌損失を低減し、かつ変速機のエネルギロスを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において、「第2の実施形態」とあるのは「参考例」と、「第3の実施形態」とあるのは「第2の実施形態」と、それぞれ読み替えるものとする。
先ず、第1〜第3の実施形態に係る液体搬送装置10、20、30に共通する基本構成であるポンプ本体部40について説明する。次いで、液体搬送装置10、20、30について、変速機用潤滑装置100、200、300への適用例と共に説明することとする。
【0032】
図1には、ポンプ本体部40の概略全体構成が示されている。この
図1に示される如く、ポンプ本体部40は、主管42を備えている。主管42の一端42Aは、被搬送液体Lcが貯留された液貯留部(
図1での図示例ではタンク44)内で被搬送液体Lcに浸されている。主管42の他端42Bは、図示しない被搬送液体Lcの排出空間を成す受け部にて開放されている。主管42は、一端42Aから他端42Bに向けて被搬送液体Lcが搬送される搬送路を形成している。
【0033】
主管42の中間部には、一対の逆止弁(一方向弁)46、48が被搬送液体Lcの流れ方向に間隔を空けて直列に配置されている。各逆止弁46、48は、上流側(一端42A側)から下流側(他端42B)側への被搬送液体の流れを許容し、下流側(他端42B)から上流側(一端42A側)への被搬送液体の流れを禁止する構成とされている。
【0034】
また、主管42における一対の逆止弁46、48間である被接続部42Cには、分岐管(合流管)50の一端50Aが接続されている。分岐管50の他端は、後述する振動流発生部52に接続されている。分岐管50における主管42との境界部を含む該主管42側の少なくとも一部には、被搬送液体Lcが充たされている。
【0035】
より具体的には、分岐管50内における被搬送液体の充填範囲は、振動流発生部52の非作動状態で、少なくとも振動流発生部52によって発生する振動流の振幅Ac(被搬送液体Lcの往復ストローク)以上の長さAL(>Ac)の範囲とされている。換言すれば、振動流の主管42との境界からの距離が振幅Acを超える範囲で分岐管50に充たされている液体は、その組成に依らず駆動流体(後述)とみなすことができる。すなわち、駆動流体Ldは、被搬送液体Lcと同じ組成の流体(液体)であっても良く、被搬送液体Lcとは異なる組成(種類、特性)の流体であっても良い。
【0036】
振動流発生部52は、駆動流体Ldの振動流を発生する構成とされている。この駆動流体の振動流が分岐管50内で被搬送液体Lcに伝達されて、該分岐管50内の被搬送液体Lcにも振動流が生じるようになっている。振動流発生部52は、駆動流体Ldの振動流を生じるエネルギ源として、変速機用潤滑装置100、200、300が適用される車両としての自動車で生じる無効なエネルギを利用(回収)する構成とされている。具体例は各実施形態において後述するが、自動車で発生する無効なエネルギには、変速機用潤滑装置100、200、300自体で発生する無効なエネルギ、変速機用潤滑装置100等とは別の部分で発生する無効なエネルギが含まれる。このような無効なエネルギとしては、廃棄(車両外部へ放出)されるべき熱エネルギ、吸収又は減衰されるべき固体振動のエネルギ、積極的に吸収又は減衰されることはないが車両の機能に寄与しない液体の運動(振動)エネルギ等を例示することができる。なお、振動流の発生メカニズムについては、変速機用潤滑装置100、200、300の構成と共に後述する。
【0037】
ポンプ本体部40は、駆動流体Ldの振動流によって分岐管50における一対の逆止弁46、48間に被搬送液体Lcが押し込まれるタイミングでは主管の他端42B側の逆止弁48が開き、被搬送液体Lcが他端42B側に吐出されるようになっている。一方、主管42における一対の逆止弁46、48間から被搬送液体Lcが排出されるタイミングでは主管の一端42A側の逆止弁46が開き、液貯留部から被搬送液体Lcが吸入されるようになっている。
【0038】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る液体搬送装置10、及び該液体搬送装置10が適用された変速機用潤滑装置100について、
図2に基づいて説明する。
【0039】
図2には、変速機用潤滑装置100を備えた変速機TMの概略構成が示されている。変速機TMは、ハウジング104と、該ハウジング104内に設けられた変速要素としての歯車列106とを含んで構成されている。ハウジング104内の底部は、潤滑油Lbが溜まる油溜り部104Aとされている。一方、ハウジング104内における歯車列106の上方には、油案内部材としてのキャッチタンク108が設けられている。
【0040】
キャッチタンク108は、液体搬送装置10によって後述する如く搬送された潤滑油Lbを受け入れ、歯車列106の上方で一時的に保持し、オーバフローした潤滑油Lbを歯車列106上から落下供給する構成とされている。換言すれば、キャッチタンク108は、潤滑油Lbを歯車列106に向けて落下されるように案内する構成とされている。以上により、変速機TMは、キャッチタンク108をオイルタンクとするドライサンプ式の潤滑構造を採用している。なお、循環する潤滑油Lbの量及びキャッチタンク108の容量は、油溜り部104A内の潤滑油Lbが歯車列106に接触しない(巻き上げられないように)ように設定されている。
【0041】
変速機用潤滑装置100は、油溜り部104Aと、キャッチタンク108と、潤滑油Lbを被搬送液体として油溜り部104Aからキャッチタンク108へ搬送する液体搬送装置10とを主要部として構成されている。また、変速機用潤滑装置100を構成する液体搬送装置10は、ポンプ本体部40に、振動流発生部52の具体例である廃熱利用式振動流発生器110を適用して構成されている。
【0042】
廃熱利用式振動流発生器110は、油溜り部104A内に配置された蒸発部112と、ハウジング104の外側に配置された凝縮部114とを備えている。蒸発部112内は、本発明における連通路に相当し、駆動流体Ldが充たされている。蒸発部112は、内部に充たされた駆動流体Ldを、油溜り部104A内の潤滑油との熱交換(加熱)によって蒸発(気化、膨張)させる熱交換器として機能する構成である。
【0043】
凝縮部114は、蒸発部112と連通された分岐管50内の駆動流体Ldと雰囲気との熱交換(冷却)によって、蒸発部112で蒸発された駆動流体を凝縮(液化)させる構成とされている。凝縮部114は、分岐管50とは独立した容器等の流路形成部材を備えて構成されても良いが、そのような構成においても内部(の流路)は本発明における「分岐管」に相当する。
【0044】
以上説明した廃熱利用式振動流発生器110は、蒸発部112において潤滑油Lbとの熱交換で駆動流体Ldを蒸発(膨張)させ、これにより凝縮部114に至った気相の駆動流体Ldを凝縮させる。これにより、駆動流体Ldは、分岐管50内で膨張、収縮を繰り返し、振動流を生じる。この振動流が被搬送液体である潤滑油Lbに伝達され、潤滑油Lbは駆動流体Ldが膨張するタイミングでキャッチタンク108上に吐出され、潤滑油Lbは駆動流体Ldが収縮するタイミングで油溜り部104Aから吸い上げられるようになっている。
【0045】
したがって、変速機用潤滑装置100では、液体搬送装置10が搬送した潤滑油Lbを排出空間であるハウジング104内空間で、キャッチタンク108上に吐出するようになっている。すなわち、液体搬送装置10は、単一空間である(気相の圧力が略一定の)ハウジング104内の下部から上部に潤滑油Lbを搬送する構成とされている。このため、液体搬送装置10は、油溜り部104Aとキャッチタンク108との間の揚液能力(液頭)は要求されるものの、キャッチタンク108への吐出圧は要求されない構成とされている。
【0046】
ここで、このような揚液用途の場合、主管42における被接続部42Cから他端42Bまでの長さをH1、主管42における被接続部42Cから一端42Aまでの長さをH2とすると、H1>H2とされる。すなわち、吸い込み側の流路抵抗D2が吐出側の流路抵抗D1よりも大とされることで、潤滑油Lbが途切れることなく搬送される構成となっている。
【0047】
なお、主管42には、該主管42内を搬送される潤滑油Lbを冷却するオイルクーラ116が設けられている。すなわち、歯車列106を潤滑した後の潤滑油Lbは、冷却されるべき対象であり、該潤滑油Lbが油溜り部104Aにて蒸発部112に供給する熱は、雰囲気中(又は図示しない冷却系統の冷却液)に廃棄される熱エネルギとされる。
【0048】
また、変速機用潤滑装置100が適用された変速機TMでは、潤滑油Lbは、液体のままで潤滑機能を果たし、液体のままで循環される。一方、駆動流体Ldには、蒸発部112での蒸発、凝縮部114での凝縮による振動流の発生すなわち潤滑油Lbとは異なる特性が要求される。このため、この実施形態では、駆動流体Ldとして、被搬送液体Lcである潤滑油Lbとは異なる流体が用いられている。
【0049】
より具体的には、駆動流体Ldは、変速機TMの定常作動状態での油溜り部104A中の潤滑油Lbの温度(例えば、80℃〜140℃)よりも沸点が低い揮発性液体とされている。なお、この揮発性流体は、変速機TMの定常作動状態でのハウジング104外(例えばエンジンコンパートメント内)の雰囲気温度(例えば、20℃〜50℃)よりも沸点が高いものとされる。このような揮発性液体としては、例えば水、エタノール、ヘキサン、住友3M(株)製のフロリナートFC72(沸点56℃)などを用いることができる。
【0050】
また、この実施形態では、潤滑油Lbと駆動流体Ldとの間にシール液体Lsが介在されている。シール液体Lsとしては、被搬送液体である潤滑油Lb(鉱油又は合成油)及び揮発性液体である駆動流体Ldの双方に対し溶液化、エマルション化しない液体が用いられる。これにより、シール液体Lsは、潤滑油Lbと駆動流体Ldとの接触を防ぐシール材として機能する。なお、駆動流体Ldとして上記した住友3M(株)製のフロリナートFC72を用いた場合には、該フロリナートFC72に駆動流体Ldとシール液体Lsとを兼ねることができる。
【0051】
この実施形態では、シール液体Lsとして、潤滑油Lb及び駆動流体Ldよりも比重の高い液体が用いられている。これにより、シール液体Lsは、廃熱利用式振動流発生器110の非作動時には分岐管50内における低所に移動し易くなっている。この実施形態では、分岐管50をV字状(又はU字状)の形状とすることで、シール液体Lsが保持される低所が形成されている。なお、分岐管50は、駆動流体Ldの振動流のストロークの範囲内で常にシール液体Lsが潤滑油Lb、駆動流体Ldに対して低所に位置される配管形状とされることが好ましい。
【0052】
シール液体Lsの具体例としては、フッ素系液体(一例として住友3M(株)製のフロリナート)やフッ素オイル(一例としてダイキン工業(株)製のデムナム)等を挙げることができる。これらのフッ素系液体やフッ素オイルは、上記した比重の要件、及び潤滑油Lb(無極性の液体)及び水やアルコール等の極性を有する駆動流体Ldの双方に対し相溶性がないとの要件を満たすことが確かめられている。
【0053】
また、変速機用潤滑装置100は、分岐管50に設けられたエネルギアキュムレータ118をさらに備えている。エネルギアキュムレータ118は、一端が分岐管50に連通されると共に他端が閉じられたベローズ部材として構成されている。エネルギアキュムレータ118は、駆動流体Ldが膨張するタイミングで該駆動流体Ldの一部が内部に流入されることで、駆動流体Ldの運動エネルギの一部を弾性エネルギとして蓄えるようになっている。一方、エネルギアキュムレータ118は、駆動流体Ldが収縮するタイミングで蓄えた弾性エネルギを内部の駆動流体Ldの運動エネルギとして解放し、該駆動流体Ldの蒸発部112への戻りを促進するようになっている。
【0054】
なお、エネルギアキュムレータ118としては、金属ベローズやゴムベローズを用いて構成することができる。また、エネルギアキュムレータ118として、ダイヤフラムやばね付勢されたピストンなどによって内部がガス相と流体との相に仕切られた構造のものを用いて構成することができる。すなわち、エネルギアキュムレータ118としては、駆動流体Ldの運動エネルギの一部を弾性エネルギとして蓄え、これを駆動流体Ldの運動エネルギとして解放可能な弾性要素(加振要素)であれば良い。
【0055】
さらに、変速機用潤滑装置100は、蒸発部112に設けられた安全弁120を備えている。安全弁120は、蒸発部112内の圧力が所定値以上になると開放される構成とされている。これにより、蒸発部112内が高圧になった場合(例えば駆動流体Ldが全て蒸発したドライアウトの場合等)に、該蒸発部112内の圧力が解放され、液相の駆動流体Ldの蒸発部112への戻りが許容されるようになっている。なお、安全弁120の吹出し側は、分岐管50に接続されている。これにより、蒸発部112で膨張された気相の駆動流体Ldが分岐管50内で凝縮されて回収される構成である。
【0056】
また、変速機用潤滑装置100は、上記の通り主管42における吸い込み側の流路抵抗D2が吐出側の流路抵抗D1よりも小である(D2<D1)。このため、駆動流体Ldの膨張による潤滑油Lbの吐出時よりも駆動流体Ldの収縮による潤滑油Lbの吸い込み時の方が分岐管50内での被搬送液体の流れが促進され、駆動流体Ldの蒸発部112への戻りが促進される構成とされている。
【0057】
(第1の実施形態の作用)
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0058】
上記構成の液体搬送装置10、変速機用潤滑装置100では、変速機TMが作動されている状態で、蒸発部112内の駆動流体Ldが油溜り部104A内の潤滑油Lbとの熱交換によって蒸発される。これにより膨張した気相の駆動流体Ldは、分岐管50内の潤滑油Lbを押し出す。潤滑油Lbは、キャッチタンク108側の逆止弁48を開放させつつ、該キャッチタンク108に吐出される。
【0059】
また、凝縮部114に至った気相の駆動流体Ldは、ハウジング104の外側の雰囲気との熱交換によって冷却、凝縮される。これにより、分岐管50内は負圧となり、油溜り部104A側の逆止弁46が開放されて、該油溜り部104Aから潤滑油Lbが吸い込まれる。
【0060】
このように、廃熱利用式振動流発生器110は、潤滑油Lbと雰囲気との温度差によって、駆動流体Ldの膨張、収縮に伴う該駆動流体Ldの振動流を発生する。これにより、上記した潤滑油Lbの吸い込み、吐出が交互に繰り返され、潤滑油Lbは変速機TMを含む循環経路を循環される。
【0061】
ここで、本液体搬送装置10、変速機用潤滑装置100では、振動流発生部として廃熱利用式振動流発生器110を備えている。このため、例えばエンジンの軸力を利用してオイルポンプを作動させる比較例や、電動モータにてオイルポンプを作動させる比較例のように、有効エネルギを用いることなく、潤滑油Lbの循環を行うことができる。すなわち、変速機用潤滑装置100が適用されない上記各比較例ではオイルクーラ116にて廃棄(雰囲気中に放熱)されるべき潤滑油Lbの熱を、蒸発部112にて有効利用することで、該潤滑油Lbの循環に要するエネルギが賄われる。
【0062】
このように、第1の実施形態に係る液体搬送装置10では、潤滑油Lbの搬送に要するエネルギを低く抑えることができる。第1の実施形態に係る変速機用潤滑装置100では、ドライサンプによって撹拌損失を低減し、かつ変速機TM又は変速機TMが適用された車両のエネルギロスを抑制することができる。
【0063】
また、液体搬送装置10、変速機用潤滑装置100では、蒸発、凝縮を繰り返す駆動流体Ldとして、液体のまま利用、循環される潤滑油Lbとは異なる揮発性液体が用いられている。例えば駆動流体として潤滑油Lbを用いた(分岐管50、蒸発部112を潤滑油Lbで充たした)比較例では、油溜り部104Aの潤滑油Lbの熱では駆動流体を蒸発し得ない。これに対して、駆動流体Ldとして揮発性液体を用いる廃熱利用式振動流発生器110は、駆動流体Ldを潤滑油Lbの熱を有効利用して蒸発させて、該駆動流体の振動流を発生させることができる。しかも、駆動流体との熱交換によって潤滑油Lbが冷却されるので、オイルクーラ116を小型化又は不要化することが可能となる。
【0064】
さらに、液体搬送装置10、変速機用潤滑装置100では、潤滑油Lbと駆動流体Ldとの間にシール液体Lsが介在されている。このため、潤滑油Lbと駆動流体Ldとの接触に伴う溶液化やエマルジョン化が防止又は効果的に抑制される。また、被搬送液体Lcである潤滑油Lbとの相溶性など考慮せずに駆動流体Ldを選択することができ、該駆動流体Ldの選択(設計)自由度が高い。
【0065】
しかも、シール液体Lsを分岐管50内のシール材として用いているため、例えば固体のピストン等をシール材として用いる構成と比較して、低抵抗でシール機能を果たすことができ、振動流の減衰が抑制される。したがって、廃熱を利用した液体搬送装置10(ポンプ本体部40)において効率的に潤滑油Lbの搬送(揚液)を行うことができる。
【0066】
なお、第1の実施形態に係る液体搬送装置10、変速機用潤滑装置100では、廃熱利用式振動流発生器110の熱源として変速機TM自体の潤滑油Lbの熱を利用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、廃熱利用式振動流発生器110が内燃機関などの駆動源の排熱を利用する構成としても良い。この場合、例えば駆動源の冷却水系統又は排気ガス系統に蒸発部112を配置することができる。
【0067】
[他の実施形態]
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記した第1の実施形態又は前での構成と基本的に同一の部品、部分については、上記した第1の実施形態又は前での構成と同一の符号を付して説明省略する。また、第2、第3の実施形態を示す
図3、
図4においては、変速機TMの全体構成の図示を省略する。
【0068】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る液体搬送装置20、及び該液体搬送装置20が適用された変速機用潤滑装置200について、
図3に基づいて説明する。
【0069】
図3(A)には、液体搬送装置20及び変速機用潤滑装置200の概略構成が示されている。この図に示される如く、液体搬送装置20、変速機用潤滑装置200は、振動流発生部52として、廃熱利用式振動流発生器110に代えて、固体振動利用式振動流発生器210を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0070】
固体振動利用式振動流発生器210は、被支持体Sを車体Bに支持するための支持構造部211に設けられている。被支持体Sは、適用された自動車のエンジンや変速機TM自体とされており、車体Bに対し振動(固体振動)する構造物とされている。被支持体Sは、伸縮容器212以外の部分で図示しないマウント部材にて車体Bに対する振動が許容されるように支持されている。すなわち、被支持体Sの振動エネルギは、吸収(減衰)されるべき無効なエネルギとされている。また、このように車体Bと被支持体Sとの間に伸縮容器212を介在させた支持構造部211が本発明における変換機構に相当する。
【0071】
伸縮容器212は、例えば金属ベローズ等にて構成され、一端が被支持体Sに固定されると共に他端が車体Bに固定されており、車体Bに対する被支持体Sの接離に伴って伸縮する(容積が変化する)構成とされている。伸縮容器212は、その内部に駆動流体Ldが充たされた状態で分岐管50に接続されている。
【0072】
これにより、伸縮容器212は、圧縮されるタイミングで駆動流体Ldを押し出し、伸長されるタイミングで駆動流体Ldを吸い込むことで、被支持体Sの固体振動を駆動流体Ldの振動流に変換する構成とされている。この振動流が伝達された潤滑油Lbは、伸縮容器212が圧縮されるタイミングで潤滑油Lbがキャッチタンク108に吐出され、伸縮容器212が伸長されるタイミングで油溜り部104Aから吸い上げられるようになっている。
【0073】
この実施形態では、駆動流体Ldは、潤滑油Lb(と同組成の液体)とされている。これにより、シール液体Lsを分岐管50に導入する構成、及びシール液体Lsを保持する低所を分岐管50に形成する構成が不要とされている。なお、駆動流体Ldとして、潤滑油Lb自体ではなく、例えば潤滑油Lbの基油を用いても良く、潤滑油Lbとは異なる(種類の)液体を用いても良い。潤滑油Lbとは異なる液体を用いた結果、潤滑油Lbに悪影響を及ぼす可能性がある場合は、潤滑油Lbと駆動流体Ldとの間にシール液体Lsを配置する。また、駆動流体Ldを液相のまま利用する固体振動利用式振動流発生器210においては、エネルギアキュムレータ118や安全弁120の設置は省略されている。
【0074】
(第2の実施形態の作用)
次に、第2の実施形態の作用を説明する。
【0075】
上記構成の液体搬送装置20、変速機用潤滑装置200では、自動車のエンジンや変速機TMである被支持体Sは、その作動状態で車体Bに対し振動する。この振動によって被支持体Sと車体との間に介在された伸縮容器212は、圧縮、伸長が繰り返される。圧縮された(容積が減った)伸縮容器212から押し出された駆動流体Ldは、分岐管50内の潤滑油Lbを押し出す。潤滑油Lbは、キャッチタンク108側の逆止弁48を開放させつつ、該キャッチタンク108に吐出される。
【0076】
一方、伸長された(容積が減った)伸縮容器212に駆動流体が引き戻されると、分岐管50内は負圧となり、油溜り部104A側の逆止弁46が開放されて、該油溜り部104Aから潤滑油Lbが吸い込まれる。
【0077】
以上説明したように、固体振動利用式振動流発生器210は、吸収(減衰)されるべき無効なエネルギである被支持体Sの振動エネルギによって、駆動流体Ldの押し出し、引き戻しに伴う該駆動流体Ldの振動流を発生する。これにより、上記した潤滑油Lbの吸い込み、吐出が交互に繰り返され、潤滑油Lbは変速機TMを含む循環経路を循環される。
【0078】
したがって、液体搬送装置20、変速機用潤滑装置200では、例えばエンジンの軸力や電動モータを利用してオイルポンプを作動させる比較例のように、有効エネルギを用いることなく、潤滑油Lbの循環を行うことができる。
【0079】
このように、第2の実施形態に係る液体搬送装置20では、潤滑油Lbの搬送に要するエネルギを低く抑えることができる。第2の実施形態に係る変速機用潤滑装置200では、変速機TMが適用された自動車のエネルギロスを抑制することができる。
【0080】
また、伸縮容器212は、被支持体Sの振動に伴って、駆動流体Ldの出入りよる減衰力を発生する。したがって、伸縮容器212を備えた固体振動利用式振動流発生器210は、上記した被支持体Sの振動エネルギを吸収しつつ、駆動流体Ldの振動流を発生させることができる。さらに、金属ベローズ等より成る伸縮容器は、減衰要素としてのみならず、弾性要素として被支持体Sを支持する支持構造部の一部として機能しており、マウント部材の設置数の削減等に寄与し得る。
【0081】
(変形例)
図3(B)には、変形例に係る固体振動利用式振動流発生器220が模式的に示されている。この図に示される如く、固体振動利用式振動流発生器220は、変速機TMが適用された自動車の車輪Wを支持するためのサスペンション部221に設けられた伸縮容器222を備えている。
【0082】
伸縮容器222は、車輪W側のばね下部材Wsに固定された第1容器222Aと、車体Bに固定された第2容器222Bとが、相対変位可能に嵌合されて構成されている。これにより、伸縮容器222は、車体Bに対する車輪Wの接離に伴って第1容器222Aと第2容器222Bとが相対変位することで、伸縮(容積が変化)する構成とされている。すなわち、この変形例に係る伸縮容器222は、弾性を有しない構成とされている。なお、ばね下部材Wsと車体Bとの間には、弾性要素であるコイルばねCSが介在されている。このように、ばね下部材Wsと車体Bとの間に伸縮容器222を介在させたスペンション部221の構造が本発明における変換機構に相当する。
【0083】
伸縮容器222は、駆動流体Ldが充たされると共に、分岐管50に接続されており、車体Bに対する車輪Wの接離に伴って、駆動流体Ldの振動流を発生するようになっている。また、伸縮容器222は、駆動流体Ldの出入りよる減衰力を発生するようになっている。伸縮容器222は、図示しないショックアブソーバと共に設けられても良く、ショックアブソーバとして設けられても良い。このように、固体振動利用式振動流発生器220は、車体Bに対する車輪Wの接離(振動)に伴って発生する減衰すべき振動エネルギを利用して、駆動流体Ldの振動流に変換すると共に該振動に対する減衰力を生じるようになっている。
【0084】
以上により、変形例に係る固体振動利用式振動流発生器220を備えた液体搬送装置20、変速機用潤滑装置200を備えた構成においても、無効なエネルギを利用して潤滑油Lbの循環を行うことができる。すなわち、潤滑油Lbの搬送に要するエネルギを低く抑えることができ、また変速機TMが適用された車両のエネルギロスを抑制することができる。
【0085】
なお、第2の実施形態では、伸縮容器212が弾性を有する構成を例示したが本発明はこれに限定されない。例えば、被支持体Sと車体Bとの間に介在される伸縮容器212が伸縮容器220と同様に弾性を有しない構成とされても良い。また、ばね下部材Wsと車体Bとの間に配置される伸縮容器222が、自ら弾性を有する構成やコイルばねCSを内蔵する構成とされても良い。
【0086】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る液体搬送装置30、及び該液体搬送装置30が適用された変速機用潤滑装置300について、
図4に基づいて説明する。
【0087】
図4には、液体搬送装置30及び液体搬送装置300の概略構成が示されている。この図に示される如く、液体搬送装置30、液体搬送装置300は、振動流発生部52として、固体振動利用式振動流発生器210に代えて、液体振動利用式振動流発生器310を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0088】
液体振動利用式振動流発生器310は、伸縮容器312を備えている。伸縮容器312は、例えば金属ベローズ等にて構成され、一端が固定端312Aとされると共に他端が自由端312Bとされている。この実施形態では、伸縮容器312が変速機TMを構成するハウジング104の油溜り部104A内に配置されることで、液体振動利用式振動流発生器310が構成されている。
【0089】
すなわち、伸縮容器312は、油溜り部104A内で運動(スロッシング)した潤滑油Lbが自由端312Bに接触すると、圧縮荷重を受けて圧縮されるようになっている。また、伸縮容器312は、圧縮荷重が除去(荷重から解放)されると、自らの弾性で復元するようになっている。ここで、潤滑油Lbの運動(スロッシング)は、変速機TMの機能に寄与しない無効なエネルギとされている。
【0090】
そして、この伸縮容器312は、その内部に駆動流体Ldが充たされた状態で、固定端312A側において分岐管50に接続されている。これにより、伸縮容器312は、圧縮されるタイミングで駆動流体Ldを押し出し、伸長されるタイミングで駆動流体Ldを吸い込むことで、被支持体Sの液体振動を駆動流体Ldの振動流に変換する構成とされている。この振動流が伝達された潤滑油Lbは、伸縮容器312が圧縮されるタイミングで潤滑油Lbがキャッチタンク108に吐出され、伸縮容器312が伸長されるタイミングで油溜り部104Aから吸い上げられるようになっている。
【0091】
この実施形態では、駆動流体Ldは、潤滑油Lb(と同組成の液体)とされている。これにより、シール液体Lsを分岐管50に導入する構成、及びシール液体Lsを保持する低所を分岐管50に形成する構成が不要とされている。なお、駆動流体Ldとして、潤滑油Lb自体ではなく、例えば潤滑油Lbの基油を用いても良く、潤滑油Lbとは異なる(種類の)液体を用いても良い。潤滑油Lbとは異なる液体を用いた結果、潤滑油Lbに悪影響を及ぼす可能性がある場合は、潤滑油Lbと駆動流体Ldとの間にシール液体Lsを配置する。また、駆動流体Ldを液相のまま利用する液体振動利用式振動流発生器310においては、エネルギアキュムレータ118や安全弁120の設置は省略されている。
【0092】
(第3の実施形態の作用)
次に、第3の実施形態の作用を説明する。
【0093】
上記構成の液体搬送装置30、変速機用潤滑装置300では、変速機TMが適用された自動車の走行状態等において、該変速機TMの油溜り部104A内の潤滑油Lbが運動(スロッシング)する。この運動(潤滑油Lbの移動)によって、油溜り部104A内に配置された伸縮容器312は、圧縮、伸長が繰り返される。圧縮された(容積が減った)伸縮容器312から押し出された駆動流体Ldは、分岐管50内の潤滑油Lbを押し出す。潤滑油Lbは、キャッチタンク108側の逆止弁48を開放させつつ、該キャッチタンク108に吐出される。
【0094】
一方、伸長された(容積が減った)伸縮容器312に駆動流体が引き戻されると、分岐管50内は負圧となり、油溜り部104A側の逆止弁46が開放されて、該油溜り部104Aから潤滑油Lbが吸い込まれる。
【0095】
以上説明したように、液体振動利用式振動流発生器310は、無効なエネルギである被支持体Sの振動エネルギによって、駆動流体Ldの押し出し、引き戻しに伴う該駆動流体Ldの振動流を発生する。これにより、上記した潤滑油Lbの吸い込み、吐出が交互に繰り返され、潤滑油Lbは変速機TMを含む循環経路を循環される。
【0096】
したがって、液体搬送装置30、変速機用潤滑装置300では、例えばエンジンの軸力や電動モータを利用してオイルポンプを作動させる比較例のように、有効エネルギを用いることなく、潤滑油Lbの循環を行うことができる。
【0097】
このように、第3の実施形態に係る液体搬送装置30では、潤滑油Lbの搬送に要するエネルギを低く抑えることができる。第3の実施形態に係る変速機用潤滑装置300では、変速機TMが適用された車両のエネルギロスを抑制することができる。
【0098】
なお、第3の実施形態では、液体振動利用式振動流発生器310がハウジング104内の潤滑油Lbの液体振動を駆動流体Ldの振動流に変換する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、液体振動利用式振動流発生器310が、ウォッシャタンク内のウォッシャ液の振動や燃料タンク内の燃料の振動を駆動流体Ldの振動流に変換する構成であっても良い。
【0099】
また、本発明は、上記した各実施形態に限定されることはなく、各種変更して実施することができる。したがって、本発明の液体搬送装置等は、変速機における潤滑油の搬送用途には限られず、例えば、蒸発潜熱を奪うことによるラジエータの急冷却のための該ラジエータ外表面への散水用途等に用いることができる。この場合に利用する無効エネルギとして、上記した各エネルギの他、ラジエータ内や冷却水の循環系内における冷却水の熱を用いることも可能である。