特許第6023621号(P6023621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023621
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】台車の駆動アシストユニット
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/00 20060101AFI20161027BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   B62B5/00 C
   B62B3/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-64465(P2013-64465)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-189073(P2014-189073A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100157473
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】関根 伸一
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−280021(JP,A)
【文献】 実公昭43−008574(JP,Y1)
【文献】 実公昭42−018901(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
B62B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者によって台車に付与される駆動力をアシストする台車の駆動アシストユニットであって、
前記台車に対して旋回可能に連結されるユニット本体と、
前記ユニット本体に設けられ、作業者によって押圧操作されて、前記ユニット本体を介して前記台車に駆動力を入力可能な操作部と、
前記ユニット本体の前後方向に回転可能に設けられ、前記操作部の操作に応じたアシスト力が付与される駆動輪と、
前記台車から外部に突出し地面に対して垂直に設けられる連結棒に係合し、前記連結棒に対して軸方向に摺動可能な下部係合機構と、
前記下部係合機構の上方に設けられて前記連結棒に係合し、前記連結棒に対して軸方向に摺動可能な上部係合機構と、を備え
前記下部係合機構は、前記ユニット本体を前記台車に押し当てることによって前記台車に係合可能であり、
前記上部係合機構は、作業者によって係止部材が嵌められることによって前記台車に係合可能であることを特徴とする台車の駆動アシストユニット。
【請求項2】
前記上部係合機構は、
前記ユニット本体に固定され、前記連結棒の側面が当接する固定部と、
前記固定部に対して回動自在に設けられ、前記連結棒を前記固定部との間で挟持した状態で前記係止部材が嵌められることによって前記固定部に固定される可動部と、を有することを特徴とする請求項に記載の台車の駆動アシストユニット。
【請求項3】
前記下部係合機構は、
前記ユニット本体に固定され。前記連結棒が進入する凹部を有する固定部と、
前記固定部の前記凹部の一端に対して回動自在に設けられ、前記連結棒が前記凹部に進入する際に前記連結棒に押されて前記凹部を閉塞して前記連結棒を挟持するように回動する第一可動部と、
前記固定部における前記凹部の他端に対して回動自在に設けられ、前記連結棒を挟持した状態で前記第一可動部に係合して固定する第二可動部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の台車の駆動アシストユニット。
【請求項4】
前記連結棒は、前記上部係合機構が係合する位置と前記下部係合機構が係合する位置との間が前記台車に連結されることを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の台車の駆動アシストユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者によって台車に付与される駆動力をアシストする台車の駆動アシストユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場などで使用される台車に重量のある荷物が載せられると、作業者は運搬開始時に大きな力で台車を押す必要があるため、重労働となっていた。
【0003】
特許文献1には、連結部材を介して台車を駆動する駆動装置を備える電動台車が開示されている。この電動台車では、駆動装置は、一端が台車に対して水平軸回りに揺動自在に連結される連結部材を介して台車に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−126900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電動台車では、例えば、段差を乗り越える場合には、駆動装置が台車の後端部を支点として上下方向に円弧状の動きをする。そのため、駆動装置に対する作業者の姿勢が変化するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、作業者の姿勢を変化させないで台車の駆動をアシスト可能な台車の駆動アシストユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、作業者によって台車に付与される駆動力をアシストする台車の駆動アシストユニットであって、前記台車に対して旋回可能に連結されるユニット本体と、前記ユニット本体に設けられ、作業者によって押圧操作されて、前記ユニット本体を介して前記台車に駆動力を入力可能な操作部と、前記ユニット本体の前後方向に回転可能に設けられ、前記操作部の操作に応じたアシスト力が付与される駆動輪と、前記台車から外部に突出し地面に対して垂直に設けられる連結棒に係合し、前記連結棒に対して軸方向に摺動可能な下部係合機構と、前記下部係合機構の上方に設けられて前記連結棒に係合し、前記連結棒に対して軸方向に摺動可能な上部係合機構と、を備え、前記下部係合機構は、前記ユニット本体を前記台車に押し当てることによって前記台車に係合可能であり、前記上部係合機構は、作業者によって係止部材が嵌められることによって前記台車に係合可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、台車から外部に突出し地面に対して垂直に設けられる連結棒に、上部係合機構と下部係合機構とが、軸方向に摺動可能に係合する。よって、台車の駆動アシストユニットは、連結棒に対する上部係合機構と下部係合機構との摺動によって、台車に対する上下動が可能である。そのため、例えば、段差を乗り越える場合には、台車の駆動アシストユニットは、姿勢が変化せずに上下に移動するだけである。したがって、作業者の姿勢を変化させないで台車の駆動をアシストすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る台車の駆動アシストユニットと台車との斜視図である。
図2図1における側面図である。
図3図1における背面図である。
図4図1における平面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る台車の駆動アシストユニットの斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る台車の駆動アシストユニットの内部構造を示す斜視図である。
図7図5における側面図である。
図8図5におけるA部の拡大図であり、上部係合機構が連結棒に係合していない状態を示す図である。
図9図5におけるA部の拡大図であり、上部係合機構が連結棒に係合した状態を示す図である。
図10図5におけるB部の拡大図であり、下部係合機構が連結棒に係合していない状態を示す図である。
図11図5におけるB部の拡大図であり、下部係合機構が連結棒に係合した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る台車の駆動アシストユニット(以下、単に「アシストユニット」と称する。)100について説明する。
【0011】
まず、図1から図4を参照して、アシストユニット100が連結される台車1について説明する。
【0012】
台車1は、例えば工場などにて、重量物を運搬するのに使用される。図1に示すように、台車1は、矩形に形成される荷台2と、荷台2の外周の四辺から上方に向けて立設される立設部3と、荷台2の四つの角部を各々支持する四つの車輪4とを有するカゴ台車である。台車1は、車輪4の回転によって移動可能である。
【0013】
台車1は、搭載された荷物を運搬可能なものであればよいため、カゴ台車に限定されない。台車1は、例えば、荷台2の一辺のみに手押しハンドルが立設される手押し台車や、作業者の操作によって荷台が昇降するハンドリフトなどであってもよい。
【0014】
荷台2には、荷物が載置される。本実施形態では、荷台2は、左右に分割されて一対設けられる矩形の板である。荷台2は、全面に設けられる矩形の一枚板であってもよい。
【0015】
車輪4は、走行時に常に進行方向を向く自在輪である。全ての車輪4を自在輪とするのではなく、例えば、アシストユニット100から離れた一対の車輪4を固定輪とし、アシストユニット100に近い一対の車輪4のみを自在輪としてもよい。このようにアシストユニットから離れた一対の車輪4を固定輪とすることで、台車1の直進性が向上する。
【0016】
台車1には、荷台2の一辺の立設部3に、アシストユニット100を連結するための連結部材5が取り付けられる。
【0017】
連結部材5は、立設部3に固定されるブラケット6と、ブラケット6の自由端に設けられる連結棒7とを有する。
【0018】
ブラケット6は、立設部3に溶接される。溶接に代えて、ボルト締結によってブラケット6を取り付けてもよい。ブラケット6を立設部3にボルト締結する場合には、連結部材5を台車1に容易に取り付けることが可能である。また、ブラケット6をボルト締結できればよいため、既存の様々な形状の台車に連結部材5を取り付けて、アシストユニット100を連結することが可能である。
【0019】
連結棒7は、台車1からブラケット6の長さだけ外部に突出して設けられる円筒状の棒材である。連結棒7は、地面に対して垂直に設けられる。連結棒7は、後述する上部フック機構11が係合する位置と下部フック機構12が係合する位置との間がブラケット6を介して台車1に連結される。連結棒7には、アシストユニット100が取り付けられる。連結棒7は、円筒状ではなく円形断面を有する中実丸棒であってもよい。
【0020】
次に、図5から図7を参照して、アシストユニット100について説明する。
【0021】
アシストユニット100は、作業者によって台車1に付与される駆動力をアシストするものである。アシストユニット100は、台車1に対して旋回可能に連結されるユニット本体10と、作業者によって押圧操作されて、ユニット本体10を介して台車1に駆動力を入力可能な操作部としての操作ハンドル20と、ユニット本体10に前後方向にのみ回転可能に設けられ、操作ハンドル20の操作に応じたアシスト力が付与される駆動輪30とを備える。
【0022】
ユニット本体10は、縦長のボックス状に形成され、駆動輪30によって支持される。ユニット本体10は、連結棒7に係合する上部係合機構としての上部フック機構11及び下部係合機構としての下部フック機構12を有する。また、ユニット本体10には、アシストユニット100が台車1に連結された状態では接地しない補助輪13(図6及び図7参照)が設けられる。
【0023】
上部フック機構11は、作業者が手動で連結棒7に係合させるものである。一方、下部フック機構12は、アシストユニット100を台車1に押し当てるだけで、ワンタッチで連結棒7に係合可能なものである。アシストユニット100は、上部フック機構11と下部フック機構12とが連結棒7を保持することによって台車1に連結される。上部フック機構11及び下部フック機構12については、後で図8から図11を参照して詳細に説明する。
【0024】
補助輪13は、駆動輪30から前後方向に離間して設けられ、駆動輪30と同じ方向にのみ回転可能な固定輪である。補助輪13は、アシストユニット100を台車1から取り外して単体で移動させる場合に接地させて使用するものである。具体的には、作業者は、台車1から取り外したアシストユニット100を前後に傾けて補助輪13を接地させ、一対の駆動輪30と補助輪13との三輪が接地した状態でアシストユニット100を移動させることができる。よって、アシストユニット100の単体での安定した移動が可能である。
【0025】
なお、単一の駆動輪30が設けられる場合には、補助輪13は一対設けられる。これにより、一対の駆動輪30が設けられる場合と同様に、三輪が接地することで、アシストユニット100の単体での安定した移動が可能である。
【0026】
操作ハンドル20は、ユニット本体10に設けられ、作業者によって押圧操作されるハンドルである。操作ハンドル20は、ユニット本体10の左右方向に水平に延設される棒材である。操作ハンドル20は、その左右をユニット本体10上方に連結される。これにより、作業者が操作ハンドル20を操作することによって入力される駆動力が、ユニット本体10を介して台車1に伝達される。
【0027】
駆動輪30は、ユニット本体10の前後方向に向かって転舵不能に設けられる。駆動輪30は、ユニット本体10の左右に間隔をあけて一対設けられる。駆動輪30は、ユニット本体10の旋回中心を挟んで左右に並べて設けられる。本実施の形態では、駆動輪30は一対設けられるが、これに代えて、単一の駆動輪30を設けてもよい。
【0028】
また、図6に示すように、アシストユニット100は、操作ハンドル20から入力される駆動トルクを検出するトルク検出部としてのトルクセンサ21と、トルクセンサ21によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を駆動輪30に付与する電動モータ40と、トルクセンサ21によって検出された駆動トルクに応じて電動モータ40を制御するコントローラ50と、電源装置としてのバッテリ60とを備える。
【0029】
トルクセンサ21とコントローラ50とバッテリ60と電動モータ40とは、ユニット本体10内に上から順に縦に並べて配置される。これにより、アシストユニット100をコンパクトな形状とすることができる。
【0030】
トルクセンサ21は、ユニット本体10内に一対設けられて、ユニット本体10の左右二箇所の各々に入力される駆動トルクを検出する。トルクセンサ21は、コントローラ50に電気的に接続され、検出した駆動トルクに応じた電気信号をコントローラ50に出力する。
【0031】
トルクセンサ21は、操作ハンドル20とユニット本体10とを連結して操作ハンドル20から入力される駆動力によって捩れるとともに駆動力をユニット本体10に伝達するトーションバー(図示省略)と、トーションバーの捩れに応じた電気信号を出力するポテンショメータ(図示省略)とを備え、トーションバーの捩れに基づいて駆動トルクを検出する。トーションバーを変更することで、その他の部材を変更することなく、台車1の積載荷重などに応じて作業者による操作感覚を変更することも可能である。
【0032】
電動モータ40は、コントローラ50に電気的に接続され、コントローラ50から入力される電気信号に応じて回転する。電動モータ40は、一対設けられて、各々の駆動輪30に独立してアシスト力を付与する。
【0033】
電動モータ40は、その回転軸が地面に対して垂直な方向を向くように配設される。電動モータ40は、一対の駆動輪30の各々の外側に設けられる。これにより、一対の駆動輪30の間隔を小さくすることができる。よって、駆動輪30の回転半径が小さくなるため、作業者がアシストユニット100を回転させるために必要なモーメントを小さくすることができる。したがって、作業者によるアシストユニット100の取り回しが容易となる。
【0034】
駆動輪30と電動モータ40との間には、電動モータ40の回転を減速するとともに回転方向を変換して駆動輪30に伝達する変速機としてのウォーム変速機41が設けられる。
【0035】
コントローラ50は、ユニット本体10に搭載される。コントローラ50は、アシストユニット100の制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによってアシストユニット100の制御が実現される。
【0036】
コントローラ50は、左右のトルクセンサ21によって検出された各々の駆動トルクに応じて左右各々の電動モータ40を制御し、左右の駆動輪30にアシスト力を付与する。具体的には、コントローラ50は、左側のトルクセンサ21によって検出された駆動トルクに応じて左側の電動モータ40を制御し、右側のトルクセンサ21によって検出された駆動トルクに応じて右側の電動モータ40を制御する。これにより、アシストユニット100を前進または後退させるとともに、直進、旋回、曲折させるアシスト力が付与される。
【0037】
バッテリ60は、ユニット本体10に搭載される。バッテリ60は、コントローラ50を駆動し、コントローラ50による制御に基づいて電動モータ40に直流電源を供給する電池である。
【0038】
次に、図8から図11を参照して、上部フック機構11及び下部フック機構12について説明する。
【0039】
上部フック機構11は、下部フック機構12の上方に設けられる。上部フック機構11は、連結棒7に対して軸方向に摺動可能に係合する。上部フック機構11は、作業者によって係止部材としてのピン16が嵌められることによって連結棒7を介して台車1に係合可能である。
【0040】
上部フック機構11は、図8に示すように、ユニット本体10に固定され連結棒7の側面が当接する固定部14と、固定部14に対して回動自在に設けられ、連結棒7を固定部14との間で挟持した状態でピン16が嵌められることによって固定部14に固定される可動部15と、作業者によって嵌められるピン16とを有する。
【0041】
固定部14は、基端14aがユニット本体10に取り付けられ、ユニット本体10から突出して設けられるプレートである。固定部14は、上下に平行に並べて一対設けられる。固定部14の自由端14bには、連結棒7の外形に対応する形状に形成される円弧部14dを有する凹部14cが形成される。
【0042】
固定部14は、凹部14cの一端に形成され可動部15が回動自在に取り付けられる貫通孔14eと、凹部14cの他端に形成され可動部15が固定部14との間で連結棒7を挟持した状態でピン16を挿通可能な貫通孔14fとを有する。
【0043】
可動部15は、固定部14の貫通孔14eに基端15aが回動自在に取り付けられるプレートである。可動部15は、一対の固定部14の間に位置する。可動部15には、固定部14との間で連結棒7を挟持した状態で固定部14の凹部14cと対向するように形成され、連結棒7の外形に対応する形状に形成される円弧部15dを有する凹部15cが形成される。
【0044】
可動部15の自由端15bには、固定部14との間で連結棒7を挟持した状態で固定部14の貫通孔14eと同軸となる貫通孔15fが形成される。
【0045】
ピン16は、貫通孔14f及び貫通孔15fに挿通する軸部16aと、軸部16aと比較して大径に形成される頭部16bとを有する。軸部16aは、貫通孔14f及び貫通孔15fと比較して小径に形成され、頭部16bは、貫通孔14f及び貫通孔15fと比較して大径に形成される。
【0046】
ピン16は、図9に示すように、固定部14と可動部15との間で連結棒7を挟持した状態で、貫通孔14f及び貫通孔15fとの上方から軸部16aが挿通される。これにより、可動部15が固定部14に対して回動不能に固定される。ピン16は、頭部16bが上側の固定部14と当接することで、軸方向の位置が規定される。
【0047】
一方、ピン16が貫通孔14f及び貫通孔15fから上方に引き抜かれると、図8に示すように、可動部15が固定部14に対して回動可能となる。
【0048】
下部フック機構12は、上部フック機構11の下方に設けられる。下部フック機構12は、連結棒7に対して軸方向に摺動可能に係合する。下部フック機構12は、ユニット本体10を台車1に押し当てることによって連結棒7を介して台車1に係合可能である。
【0049】
下部フック機構12は、図10に示すように、ユニット本体10に固定され連結棒7が進入する凹部24cを有する固定部24と、固定部24の自由端24bにおける凹部24cの一端に対して回動自在に設けられる第一可動部25と、固定部24の自由端24bにおける凹部24cの他端に対して回動自在に設けられる第二可動部26と、ユニット本体10から外側に突出して設けられ作業者によって操作される解除レバー27とを有する。
【0050】
固定部24は、基端24aがユニット本体10に取り付けられ、ユニット本体10から突出して設けられるプレートである。固定部24は、上下に平行に並べて一対設けられる。固定部24の自由端24bには、連結棒7の外形に対応する形状に形成される円弧部24dを有する凹部24cが形成される。
【0051】
固定部24は、凹部24cの一端に形成され第一可動部25が回動自在に取り付けられる貫通孔24fと、凹部24cの他端に形成され第二可動部26が回動自在に取り付けられる貫通孔24eとを有する。
【0052】
第一可動部25は、固定部24の貫通孔24fに回動自在に取り付けられるプレートである。第一可動部25は、一対の固定部24の間に位置する。第一可動部25は、連結棒7が凹部24cに進入する際に連結棒7に押されて凹部24cを閉塞して連結棒7を挟持するように回動する。
【0053】
第一可動部25には、連結棒7の外形に対応する形状に形成される円弧部25dを有し、連結棒7が凹部24cに進入する際に連結棒7と摺接する凹部25cと、第二可動部26と係合する係合部25aとが形成される。
【0054】
第一可動部25は、連結棒7が凹部24cに進入する際には、凹部25cに連結棒7が当接した状態で、連結棒7によって押されて回動する。これにより、凹部25cが凹部24cと同軸上に位置して、連結棒7は、固定部24と第一可動部25とによって挟持されることとなる。
【0055】
係合部25aは、第一可動部25が回動する際には、第二可動部26の挟持部26cに摺接する。係合部25aは、第一可動部25が回動して凹部25cが凹部24cと同軸上に位置した状態では、第二可動部26の係合突起部26aによって係止される。これにより、第一可動部25が回動不能に固定される。
【0056】
第二可動部26は、固定部24の貫通孔24eに回動自在に取り付けられるプレートである。第二可動部26は、一対の固定部24の間に位置する。第二可動部26は、連結棒7を挟持した状態で第一可動部25に係合して固定する係合突起部26aと、連結棒7を凹部25cとの間で挟持する挟持部26cとを有する。
【0057】
係合突起部26aは、連結棒7が凹部24cに進入する際には、第一可動部25の係合部25aによって押される。そして、第二可動部26が回動すると、第一可動部25の係合部25aが係合突起部26aを乗り越えることとなる。これにより、係合突起部26aは、係合部25aを係止して第一可動部25を固定する(図11に示す状態)。
【0058】
解除レバー27は、第二可動部26と一体に設けられる。解除レバー27は、下部フック機構12の連結棒7への係合を解除する際に、作業者によって操作される。
【0059】
作業者によって解除レバー27がユニット本体10から離間する方向に操作されると、第二可動部26が解除レバー27と一体に回動して、係合突起部26aと係合部25aとの係合が解除される。これにより、第一可動部25の固定は解除されて回動可能となり、連結棒7を固定部24の凹部24cから離間させることが可能となる。
【0060】
以上のように、アシストユニット100のユニット本体10を台車1に押し当てると、下部フック機構12が連結棒7を介して台車1に係合する。そして、作業者によって上部フック機構11のピン16が嵌められると、上部フック機構11が連結棒7を介して台車1に係合する。上部フック機構11は、下部フック機構12の上方に設けられ、比較的高い位置に位置する。そのため、作業者によるピン16を嵌める操作が容易である。したがって、アシストユニット100と台車1との連結を容易にすることができる。
【0061】
また、例えば、下部フック機構12の解除レバー27が外部の障害物との接触によって作業者の意に反して操作され、下部フック機構12の連結棒7への係合が解除されたような場合であっても、上部フック機構11の連結棒7への係合は維持される。このように、上部フック機構11と下部フック機構12とを異なる構造としたため、アシストユニット100の台車1への連結を確実に行うことができる。
【0062】
次に、図1から図4を参照して、アシストユニット100の作用について説明する。
【0063】
まず、アシストユニット100を介して台車1を真っ直ぐ前進又は後退させる場合について説明する。ここでは、アシストユニット100が台車1を押す場合を前進といい、台車1を牽引する場合を後退という。
【0064】
作業者が操作ハンドル20を両手で平行に押した場合には、アシストユニット100は、台車1を真っ直ぐ前進させることとなる。この場合、操作ハンドル20が押されることによってユニット本体10に入力される駆動力は操作ハンドル20の左右両端で略同一である。よって、左右のトルクセンサ21によって検出される駆動トルクは、略同一となる。
【0065】
左右のトルクセンサ21が同一の駆動トルクを検出すると、コントローラ50は、左右の電動モータ40から左右の駆動輪30に同一のアシスト力を付与するように指令する。これにより、左右の駆動輪30には、同一のアシスト力が付与される。
【0066】
したがって、アシストユニット100は、台車1に対して旋回せずに同じ方向を向いたまま、作業者によって付与される駆動力に電動モータ40のアシスト力が付与されて台車1を真っ直ぐ前進させることができる。
【0067】
このとき、上部フック機構11と下部フック機構12とは、台車1から外部に突出し地面に対して垂直に設けられる連結棒7に、軸方向に摺動可能に係合する。よって、アシストユニット100は、連結棒7に対する上部フック機構11と下部フック機構12との摺動によって、台車1に対する上下動が可能である。そのため、例えば、段差を乗り越える場合には、アシストユニット100は、姿勢が変化せずに上下に移動するだけである。したがって、作業者の姿勢を変化させないで台車1の駆動をアシストすることができる。
【0068】
なお、台車1を真っ直ぐ後退させる場合には、操作ハンドル20が押される方向が逆になり、電動モータ40の回転方向が逆になるだけで、その他の作用は真っ直ぐ前進する場合と同様である。
【0069】
次に、アシストユニット100を介して台車1を旋回走行させる場合について説明する。
【0070】
作業者が操作ハンドル20を押す左右の力を相違させた場合には、アシストユニット100は、左又は右に旋回走行することとなる。このとき、左右の駆動輪30に付与されるアシスト力は、左右の電動モータ40で相違する。
【0071】
具体的には、例えば台車1を左方向に旋回させる場合、作業者が右手で操作ハンドル20を押す力は、左手で操作ハンドル20を押す力と比較して大きくなる。よって、右側のトルクセンサ21が検出する駆動トルクは、左側のトルクセンサ21が検出する駆動トルクと比較して大きくなる。
【0072】
コントローラ50は、右側の電動モータ40から駆動輪30に付与するアシスト力が、左側の電動モータ40から駆動輪30に付与するアシスト力と比較して大きくなるように指令する。これにより、右側の駆動輪30に付与されるアシスト力は、左側の駆動輪30に付与されるアシスト力と比較して大きくなる。
【0073】
よって、アシストユニット100は、台車1に対して旋回した状態となる。このように、アシストユニット100は、台車1を前進又は後退させるアシスト力だけでなく、台車1を旋回させるためのモーメントも付与することができる。したがって、アシストユニット100は、作業者によって付与される駆動力に電動モータ40のアシスト力が付与されて台車1を旋回走行させることができる。
【0074】
このときもまた、前進時及び後退時と同様に、アシストユニット100は、連結棒7に対する上部フック機構11と下部フック機構12との摺動によって、台車1に対する上下動が可能である。そのため、例えば、段差を乗り越える場合には、アシストユニット100は、姿勢が変化せずに上下に移動するだけである。したがって、作業者の姿勢を変化させないで台車1の駆動をアシストすることができる。
【0075】
ユニット本体10は台車1に対して旋回可能に連結されている。また、駆動輪30は、ユニット本体10に前後方向にのみ回転可能に設けられている。よって、駆動輪30は、ユニット本体10に対して旋回しないため、駆動輪30を旋回させる機構が不要である。したがって、台車1のアシストユニット100の構造を簡素化することができる。
【0076】
また、台車1に重量物が搭載された場合には、作業者の操作に基づいてアシストユニット100からアシスト力を付与して台車1を移動させることができる。一方、台車1に搭載された荷物が軽い場合や空荷の場合には、アシストユニット100からアシスト力を付与することなく作業者による駆動力のみで台車1を移動させることができる。
【0077】
なお、左右のトルクセンサ21は、駆動トルクを無段階に検出可能であるため、作業者が操作ハンドル20を押圧操作する力に応じてアシスト力の大きさをコントロールすることができる。
【0078】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0079】
上部フック機構11と下部フック機構12とは、台車1から外部に突出し地面に対して垂直に設けられる連結棒7に、軸方向に摺動可能に係合する。よって、アシストユニット100は、連結棒7に対する上部フック機構11と下部フック機構12との摺動によって、台車1に対する上下動が可能である。そのため、例えば、段差を乗り越える場合には、アシストユニット100は、姿勢が変化せずに上下に移動するだけである。したがって、作業者の姿勢を変化させないで台車1の駆動をアシストすることができる。
【0080】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0081】
100 アシストユニット
1 台車
5 連結部材
7 連結棒
10 ユニット本体
11 上部フック機構(上部係合機構)
12 下部フック機構(下部係合機構)
14 固定部
15 可動部
16 ピン(係止部材)
20 操作ハンドル(操作部)
24 固定部
24c 凹部
25 第一可動部
26 第二可動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11