(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸素ガスの供給量は、前記透明フィルムの幅方向における中央部分が前記透明フィルムの幅方向における両端部分より50〜90%多い請求項1に記載の無機薄膜付フィルムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
透明基板上にSiOx層や透明導電層等の無機薄膜が形成された無機薄膜付き基板は、ディスプレイや発光素子、光電変換素子、タッチパネル等の透明電極として広く用いられている。このような無機薄膜付き基板の製造方法としては、ガラスやフィルムに金属酸化物薄膜を製膜する方法が一般的であるが、特にタッチパネル用途に用いる場合には、基板にSiOx層などの光学調整層を製膜し、その上に透明電極層を製膜することが行なわれている。
【0003】
タッチパネル等の電子デバイスは、近年、薄型化及び大面積化が急速に進んでおり、薄型化達成のためにベース基板として透明フィルムが採用され始めている。透明フィルム上に無機薄膜を製膜するにはロール・トゥ・ロール法が採用されるが、その際、透明フィルムの搬送方向及びフィルムの幅方向において膜質を均一化することが必要であり、SiOx層を製膜する際にも、幅方向における膜質の均一性が求められる。
【0004】
透明フィルム上にSiOx層を製膜するには、一般に、ウエットコーティング法やドライコーティング法が採用され、ドライコーティング法(反応性スパッタリング法)の場合は、ターゲットとして、金属や金属酸化物等が用いられる。また、電源としてはDC(直流)電源やRF(高周波)電源、MF(10kHz〜100kHz程度の中波)電源などが使用される。
【0005】
上記反応性スパッタリング法で製膜する場合、キャリアガスとしてのアルゴンガスの他、反応性ガスとしての酸素ガスを導入することになり、それらガスの流量を調整することは製造現場でよく行なわれている。しかし、それらガスの導入方法と、スパッタ時に用いる電源の組み合わせまでについては、検討されていない。
【0006】
ここで、特許文献1には、SiO
2等の化合物薄膜を形成する反応性スパッタリング装置において、DC電源を用い、2つのターゲットをフィルムの搬送方向を横断するように備え、両ターゲットの間にスパッタリングガス吹き出しノズルと活性ガス噴出しノズルを設け、両ガスを共にフィルムに向けて吹き付けることにより、均質な薄膜を作製する技術が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、SiC系薄膜を製膜するスパッタリング方法において、デュアルカソードマグネトロンターゲットを用い、2つのターゲットをMF電源に接続し、酸素ガス流量をPID制御してSiC系薄膜の透過率が目標透過率になるようにした発明が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の特許文献に記載されているような方法では、スパッタリング用チャンバからの排気状態や、ターゲットの表面状態によって、フィルムの幅方向において均一な膜質を得ることができないことがあり、特許文献1のように反応性スパッタリングによるSiOxの製膜にDC電源を使用した場合、製膜時間が長くなることでアノード消失が起き異常放電が発生するため、特に、反応性スパッタリングを連続的に行う場合や、広幅なフィルム基材を用いる場合には、フィルムの幅方向において膜の均一性を維持し続けることが困難であった。
【0010】
本発明の目的は、フィルムの幅方向において膜質が均一化された無機薄膜付フィルムを提供すること、及び反応性スパッタリングにより無機薄膜付きフィルムを製造する際に、反応性ガスとターゲットの反応の均一化を高め、フィルムの幅方向において膜質を均一化できる製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、透明フィルム上にスパッタリングによってSiOx層(1.5≦x≦2.0)が積層された無機薄膜付フィルムの製造方法において、上記透明フィルムの搬送方向に上流側Siターゲット及び下流側Siターゲットを離間して設け、上記上流側Siターゲット及び下流側SiターゲットをMF電源に接続し、上記スパッタリング時のキャリアガスとしてのアルゴンガスは、上記上流側Siターゲットの上流端側から上記下流側Siターゲット側に向かって流すと共に、上記下流側Siターゲットの下流端側から上記上流側Siターゲット側に向かって供給し、上記スパッタリング時の反応性ガスとしての酸素ガスは、上記下流側Siターゲットの下流端側から上記上流側Siターゲット側に向かってのみ供給して行う製造方法である。
【0012】
上記酸素ガスの供給量は、上記透明フィルムの幅方向における中央部分が上記透明フィルムの幅方向における両端部分より50〜90%多いことが好ましい。
また、本発明の別の態様は、透明フィルム上にスパッタリングによってSiOx層(1.5≦x≦2.0)が積層された無機薄膜付フィルムの製造装置において、上記透明フィルムの搬送方向に直交するように上流側Siターゲット及び下流側Siターゲットを離間して備え、上記上流側Siターゲット及び下流側Siターゲットに接続されたMF電源を備え、上記上流側Siターゲットの上流端側に、複数のガス噴出口を有し該ガス噴出口が上記下流側Siターゲット側に向けられている上流側アルゴンガス供給管を備えると共に、上記下流側Siターゲットの下流端側に、複数のガス噴出口を有し該ガス噴出口が上記上流側Siターゲット側に向けられている下流側アルゴンガス供給管を備え、上記下流側Siターゲットの下流端側に、複数のガス噴出口を有し該ガス噴出口が上記上流側Siターゲット側に向けられている酸素ガス供給管を備えたことを特徴とする無機薄膜付フィルムの製造装置である。
【0013】
その際、上記酸素ガス供給管に設けられたガス噴出口は直径0.3〜5.0mmで1〜30cmの間隔で複数設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、透明フィルム上にSiOx層(1.5≦x≦2.0)が積層された無機薄膜付フィルムにおいて、上記透明フィルムの幅が1.0〜1.7mmであり、上記無機薄膜付きフィルムの幅方向における屈折率が1.44〜1.50に収まっており、且つ、最大屈折率と最小屈折率の和に対する最大屈折率と最小屈折率の差が3%以内である無機薄膜付きフィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広幅基材に対して膜質の均一なスパッタ膜を得ることができ、例えば、フィルムの大面積化や、製造工程における歩留まり向上に寄与することが可能となる。また、本発明において、透明フィルム上にSiOx層と透明電極層を積層してタッチパネル用フィルムとして用いた場合、膜質が均一化された透明電極付きフィルムとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の無機薄膜付きフィルム製造に用いる装置の概念図であり、
図2は該フィルム製造装置のスパッタリング部分を示しており、
図3は透明フィルム基材とターゲットの位置を示す図である。
図1に示すように、連続スパッタリング装置は、隔壁1によって透明フィルム基材3の巻き出しを行うアンワインダー室5と巻き取りを行うリワインダー室7及びスパッタリング室9とに分割されており、中央には冷却ローラ11が設置されている。冷却ローラ11の内部には冷媒が通され、スパッタリング時に外表面の基材3が過度に加熱されないようになっている。また、スパッタリング室9には、透明フィルム基材3に対向して且つ基材3の移送方向に沿ってデュアルマグネトロンカソード19が設置されている。
【0018】
透明フィルム基材3は巻き出しローラ13により巻き出され、送りローラ15を経て冷却ローラ11の外周面に密着し、この状態で冷却ローラの回転に伴ってスパッタリング室9を通過して、巻き取りローラ17に巻き取られる。透明フィルム基材3としては、後述するポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフテレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂の他、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース系樹脂等を用いることができる。
【0019】
図2は、スパッタリング室9内のスパッタリング部分の詳細を示している。デュアルマグネトロンカソード19はカソード構造体21の上部にバッキングプレート23を介してターゲット25が取り付けられたものであり、カソード構造体21の内部にはマグネット27が内蔵されている。ターゲット25は基材3の幅に対応した長さを有し、基材3の幅方向と平行になるように配置され、バッキングプレート23はMF電源に接続されている。
【0020】
デュアルマグネトロンカソード19は、これを覆うシールド29によってターゲット25の表面以外の場所での放電発生が抑制される。シールド29の両側部には、アルゴンガス等のキャリアガス供給用のガス供給管31が設けられており、下流側にはキャリアガス供給管31と基材3の間に酸素ガス等の反応性ガス供給用の供給管33が設けられている。キャリアガス供給管31と反応性ガス供給管33はターゲット25の長さ全体にわたって配設され、基材3とターゲット25の間に向かってガスを噴出する小孔が一定間隔で複数設けられている。また、反応性ガス供給管33は中央部分と両端部分に分割されており、基材3の幅方向でガス導入量を調整可能となっている。
【0021】
図3は基材3とターゲットの位置を示している。冷却ローラ11の外周面に密着した基材3は、ターゲット25の表面側を通過し、搬送される。
基材3とターゲット25との距離は70〜120mm、好ましくは80〜110mmである。距離がこの範囲より大きいと製膜速度の均一性が維持できなくなり、小さいと異常放電や膜質の悪化等が生じるおそれがある。次にこのスパッタリング装置を用いて、基材3の表面にSiOx層を反応性スパッタリングの遷移モードで作製する方法について説明する。
【0022】
[SiOx層の製膜]
基材3は冷却ローラ11に密着して矢印A方向に連続的に移送される。スパッタ製膜は、製膜室内に、アルゴン等のキャリアガスおよび酸素ガスを含む反応性ガスを導入しながら行う。
【0023】
スパッタリング室の真空度は0.1〜1.0Pa程度に調整される。キャリアガス及び反応性ガスの分圧は使用するガスの種類や目的とする無機薄膜の種類等によって適宜決定される。この状態で、所定の電圧を印加して基材3上に無機薄膜を形成する。製膜時のパワー密度は、透明フィルムに過剰な熱を与えず、かつ生産性を損なわない範囲で調整され得る。パワー密度の適正値は、平板型や円筒型などのカソードの形状や大きさに依存するが、平板型カソードの場合には、2W/cm
2〜10W/cm
2程度が好ましい。
この方法で製膜されたSiOx層は後述する透明積層体を構成する誘電体層(第一透明薄膜)として用いられる。
【0024】
[スパッタリング]
スパッタリングは、反応性ガス導入下で金属ターゲットなどを用いて、所要の化合物薄膜を得るために用いられる手法である。反応性スパッタリングには、製膜速度や膜質の異なるいくつかの状態が存在するが、一般的には金属状態、化合物状態、遷移状態と呼ばれる三態がある。
【0025】
「金属状態」は、使用するターゲット表面を化合物化するには不十分な量の反応性ガスしかチャンバ内に存在しない状態である。そのため、製膜速度は非常に速く、状態としても非常に安定であるが、製膜物はほとんど未化合状態で、金属的な膜が得られる。「化合物状態」は、使用するターゲット表面全体を化合物化させるのに十分な量の反応性ガスがチャンバ内に存在し、ターゲット表面が化合物化されている状態である。そのため、製膜速度は非常に遅いが、非常に安定した製膜の可能な状態であり、製膜物は十分に化合物化されている。「遷移状態」は、使用するターゲット表面が部分的に化合物化される程度の量の反応性ガスがチャンバ内に存在している状態であり、ターゲット表面が部分的に化合物化されているため、化合物状態と金属状態との中間的な、非常に不安定な状態である。そのため、製膜速度は比較的高く、十分に化合物化された膜質から不十分に化合物化された膜質まで、条件によって得ることが出来るが、状態としては非常に不安定といえる。
【0026】
反応性スパッタリングは、例えば光学薄膜を得るために用いられ、酸化物薄膜を製膜する光学薄膜として機能する際には、膜厚や膜質の均一性が求められ、特に屈折率は無機薄膜付きフィルムの透過率やパターンの非視認性への影響が大きいため、基材の幅方向の均一性が強く求められる。
【0027】
[透明積層体の構成]
本発明の無機薄膜付フィルムは、透明フィルム基材3上に、第一透明薄膜41および第二透明薄膜42を有する。第二透明薄膜42はパターニングされていてもよい。第二薄膜42がパターニングされている場合、透明積層体は、第一透明薄膜41上に第二透明薄膜42が形成されている第二透明薄膜形成領域51と、第一透明薄膜41上に第二透明薄膜が形成されていない第二透明薄膜非形成領域52とを有する。
【0028】
以下、透明導電性フィルム実施形態について、図面を参照しながら、説明する。
図4は、透明フィルム基材3上に、透明誘電体層41、および透明電極層42を有する透明導電性フィルム100の模式断面図である。
<透明フィルム基材>
透明フィルム基材3は、少なくとも可視光領域で無色透明であるものが好ましい。透明フィルム基材の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフテレート(PBT)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂やシクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。透明フィルム基材3の厚みは特に限定されないが、10μm〜400μmが好ましく、25μm〜200μmがより好ましい。透明フィルム基材3の厚みが上記範囲であれば、耐久性と適度な柔軟性とを有し得る。そのため、透明フィルム基材上に、透明誘電体層41および透明電極層42を、巻取式スパッタリング製膜装置を用いたロール・トゥ・ロール方式により、生産性高く製膜することが可能である。透明フィルム基材3は、片面または両面にハードコート層等の機能性層(不図示)が形成されたものでもよい。
【0029】
<誘電体層(第一透明薄膜)>
透明フィルム基材3上には、第一透明薄膜として、透明誘電体層41が形成されている。透明誘電体層41の材料としては、透明性、電気特性、生産性等の観点から、無機酸化物が好適に用いられる。酸化物としては、可視光領域で無色透明であり、抵抗率が10Ω・cm以上であるものが好ましい。例えば、Si,Ge,Sn,Al,Ga,In,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Zn,Hf等の金属または半金属の酸化物が好ましく用いられる。透明誘電体層41は1層からなるものでもよく、
図4に示されるように2層以上からなるものでもよい。
【0030】
例えば、透明誘電体層41として、屈折率の異なる層を複数積層することによって、エッチングによって見えてしまうパターンの視認を抑制することができる。この場合、透明フィルム基材3の屈折率(一般に、1.4〜1.7程度)、および透明電極層42の屈折率(一般に、1.8〜2.2程度)を考慮して、透明誘電体層41の構成が決定されることが好ましい。例えば、
図4に示すように、透明誘電体層41が、透明フィルム基材3側から、中屈折率の第一誘電体層411(屈折率:n
1)、高屈折率の第二誘電体層412(屈折率:n
2)、低屈折率の第三誘電体層413(屈折率:n
3)の3層の積層構成である場合、これら3層の屈折率は、n
3<n
1<n
2の関係を満たすことが好ましい。透明電極層42の屈折率n
4は、第二誘電体層412の屈折率n
2よりも小さく、第一誘電体層411の屈折率n
1よりも大きいことが好ましい。すなわち、透明誘電体層41が3層からなる場合、透明導電性フィルムを構成する薄膜の屈折率は、n
3<n
1<n
4<n
2の関係を満たすことが好ましい。
【0031】
<透明電極層(第二透明薄膜)>
透明誘電体層41上には、第二透明薄膜として透明電極層42が形成されている。透明電極層42は導電体層であり、例えば導電性酸化物薄膜からなる。導電性酸化物としては、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン等の金属酸化物、あるいはこれらの複合金属酸化物が好ましく用いられる。導電性を高める観点から、導電性酸化物としては、複合金属酸化物が好ましく、中でも酸化インジウムを主成分とするものが好適に用いられる。
【0032】
透明電極層42は、面内の一部がエッチング等により除去され、パターニングされている。そのため、透明導電性フィルム100は、透明電極層42が除去されずに残存している導電性部(第二透明薄膜形成領域)51と、透明電極層が除去され、その下地層である透明誘電体層41が露出している非導電性部(第二透明薄膜非形成領域)52を有する。パターンは、用途等に応じて任意の形状に形成され得る。分離しているパターン51a,51b,51cのそれぞれは、分離され、互いに絶縁されていることが好ましい。
【0033】
エッチングによりパターニングが行われる場合、透明電極層42のみがエッチングされてもよく、透明電極層42と共に透明誘電体層41もエッチングされてもよい。透明誘電体層41がエッチングされる場合は、透明フィルム基材3が露出しないように、透明誘電体層41の厚み方向の一部のみがエッチングされることが好ましい。透明導電性フィルムの微小硬度と塑性変形率を所定範囲に調整する観点からは、透明電極層42のみがパターニングされていることが好ましい。
【0034】
導電性部51における透明誘電体層41と透明電極層42の膜厚の合計は、60nm〜100nmが好ましく、70nm〜90nmがより好ましい。透明誘電体層41の膜厚は、28nm〜80nmが好ましく、35nm〜70nmがより好ましい。透明電極層42の膜厚は、10nm〜32nmが好ましく、15nm〜30nmがより好ましい。
【0035】
各層の厚みが上述の範囲より小さいと、薄膜の硬度が小さくなり、強度が不足する場合がある。また、各層の厚みが上述の範囲より大きいと、薄膜の硬度が大きくなるためにパターン化の際に変形を生じたり、透明性が低下する傾向がある。透明誘電体層41の厚みが上記範囲であれば、物理的強度を確保しつつ、歪に対する追従性を付与することができる。透明電極層42の厚みが上記範囲であれば、低抵抗と高透明性とを両立することができる。透明電極層の厚みが過度に大きいと、導電性部51の硬度が大きくなる傾向があり、これに伴って導電性部51と非導電性部52との硬度の差や塑性変形率の差が大きくなり、界面での残留応力によるシワ等の変形を生じる場合がある。
【0036】
[無機薄膜付フィルム]
本発明の製造方法、製造装置で作製した無機薄膜付フィルムは、透明フィルム上にSiOx層(1.5≦x≦2.0)が積層されているが、この際の透明フィルムの幅は1.0〜1.7mであることが好ましい。また、無機薄膜付きフィルムの幅方向における屈折率は1.44〜1.50が好ましい。さらに、最大屈折率と最小屈折率の和に対する最大屈折率と最小屈折率の差として3%以内が好ましく、2%以内がより好ましく、1.5%以内が最も好ましい。
【0037】
[他の透明積層体への適用]
以上、第一透明薄膜として誘電体層、第二透明薄膜として導電体層(透明電極層)を備える透明導電性フィルムの実施形態を中心に、本発明を説明した。なお、本発明は、薄膜の硬度および塑性変形率を所定範囲とすることによって、第二透明薄膜形成部51と第二透明薄膜非形成部52とのパターン視認を抑制することができる。そのため、第一透明薄膜および第二透明薄膜の導電性の有無に関わらず、第二透明薄膜の面内の一部がエッチング等により除去し、パターニング実施する場合、各種の透明積層体に適用可能である。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
デュアルカソードマグネトロンスパッタリング装置により、製膜材料としてSiターゲットを用い、反応性ガスとして酸素ガスを用い、透明フィルム基材としてPETを用いた。反応性スパッタリングによって、幅1330mm幅のフィルム基材に対して幅1000mmでSiOx層(x≧1.5)を製膜した。
【0039】
反応性スパッタリングの条件として、アルゴンをターゲット上流側から750sccm、下流側から750sccm導入し、MF電源の出力を15kWで放電を立て、カソード電圧が酸素未導入時の63%になるように、酸素をターゲット下流側から導入した。フィルム幅方向の酸素導入比率は中央部分:両端部分が100:59となるようにした。また、この時の真空度は0.34Paであった。
【0040】
[比較例1]
反応性スパッタの条件として、アルゴンをターゲット上流側から750sccm、下流側から750sccm導入し、MF電源の出力を15kWで放電を立て、MF電源の出力が酸素未導入時の82%になるように、酸素をターゲット上流側、下流側から導入した。フィルム幅方向の酸素導入比率は、上流側おいて、中央部分:両端部分=100:59になるようにし、下流側において、中央部分:両端部分=96:58になるようにした。また、この時の真空度は0.34Paであった。
【0041】
実施例、比較例で得られたSiOx層の屈折率をエリプソメーターにて測定した。測定結果を表1および
図5に示す。表1は透明フィルム基材の各幅方向位置の屈折率とその平均値、幅方向の屈折率の分布を示したものである。
【0042】
【表1】
【0043】
表1および
図5より基材幅方向における屈折率のバラツキが低減されていることがわかる。具体的には、屈折率が1000mm幅の範囲において7.0%から1.1%に低減しており、より幅広範囲で膜質が均一化していることがわかる。
【0044】
各種ガス導入方法を鋭意検討したが、比較例に対し、実施例に挙げた方法でのみ膜質の均一化を確認した。