(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
治療用モノクローナル抗体処置を受けている被験体において抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を増大させるための組合わせ物であって、該組合わせ物は、治療用モノクローナル抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を含み、ここで、該ADCCエンハンサー分子が、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、組合わせ物。
前記治療用モノクローナル抗体が、治療用抗CD20モノクローナル抗体、治療用抗Her2モノクローナル抗体、または治療用抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項1に記載の組合わせ物。
前記被験体がFcγR多型またはKRAS変異を有するか、前記被験体が、治療用抗体処置に対して不応答性であると以前に同定された被験体であるか、または前記被験体がADCC機能障害を有する、請求項1に記載の組合わせ物。
前記ADCCエンハンサー分子が、前記治療用抗体の投与の前に、該治療用抗体の投与と同時に、または該治療用抗体の投与の後に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組合わせ物。
{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミド、ならびに、セツキシマブおよびパニツムマブからなる群より選択される治療用抗体を含有する組合わせ物であって、
ここで、該{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドは、治療用モノクローナル抗体処置を受けている被験体において抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を増大させる方法において使用するためのものであり、該被験体においてADCCを増大するのに十分な量である、
組合わせ物。
{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミド、ならびに、セツキシマブおよびパニツムマブからなる群より選択される1つ以上の治療用モノクローナル抗体を含むキットであって、
ここで、該{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドは、治療用モノクローナル抗体処置を受けている被験体において抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を増大させる方法において使用するためのものであり、該被験体においてADCCを増大するのに十分な量である、
キット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
モノクローナル抗体の治療上の有効性を改善するさらなる必要性が存在する。抗体のエフェクター機能を増強する、例えば抗体のADCCおよび/またはCDC機能を増強することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
関連技術の上記説明を含む本記載全体を通して、ありとあらゆる米国特許を含む、本明細書で記述されるありとあらゆる公的に利用可能な資料は、それらの全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。関連技術の上記説明は、いかなる意味においても、係属中の米国特許出願を含む、その中で記述される資料のいずれかが本開示の実施形態に対する先行技術であることの承認とはみなされない。さらに、記述される生成物、方法および/または装置に関連するいかなる不都合についての本明細書の記述も、開示される実施形態を限定することを意図されない。実際に、本開示の実施形態は、記述される不都合に煩わされることなく記述される生成物、方法および/または装置の特定の特徴を含み得る。
【0012】
開示の概要
本開示は、癌および免疫細胞媒介性疾患または障害などの細胞性疾患の処置において治療用抗体のADCC活性を増強する方法に関する。一般に、治療用抗体のADCC活性は、式I:
【0013】
【化1】
[式中、
Yは、C(=O)R8で置換されたアリール環であり、上記アリール環は、F、Cl、CF
3、CF
3O−、HCF
2O−、C
1〜C
6アルキル、C
1〜C
6ヘテロアルキルおよびArO−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じてさらに置換されており;
R1、R3およびR4は、H、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
1〜C
6ヘテロアルキル、C
3〜C
6シクロアルキル、C
3〜C
6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、CH
3OCH
2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO
2R7、SR6 4 SO
2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されているか;
またはR3およびR4は、それらが結合している原子と共に飽和または部分不飽和C
3〜C
6炭素環式環を形成し、上記炭素環式環は、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、CH
3OCH
2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO
2R7、SR6およびSO
2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されており;
R2およびR8は、H、OR6、NR6R7、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
1〜C
6ヘテロアルキル、C
3〜C
6シクロアルキル、C
3〜C
6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、CH
3OCH
2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO
2R7、SR6およびSO
2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されており;
R5a、R5bおよびR5cは、H、F、Cl、Br、I、OMe、CH
3、CH
2F、CHF
2およびCF
3から独立して選択され;そして
R6およびR7は、H、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
1〜C
6ヘテロアルキル、C
3〜C
6シクロアルキル、C
3〜C
6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、O−アルキル、NH
2、−C(=O)アルキル、C(=O)H、C(=O)OH、C(=O)Oアルキル、 OC(=O)H、OC(=O)アルキル、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、(C
1〜C
6アルキル)
2アミノCH
3OCH
2O−およびアルキル−OC(=O)CH=CH−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されているか;
またはR6およびR7は、それらが結合している原子と共に、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択される飽和または部分不飽和複素環式環を形成し、上記複素環式環は、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NH
2、−C(=O)アルキル、C(=O)H、C(=O)OH、C(=O)Oアルキル、OC(=O)H、OC(=O)アルキル、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、(C
1〜C
6アルキル)
2アミノCH
3OCH
2O−およびアルキル−OC(=O)CH=CH−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されている]
を有するADCCエンハンサー分子と治療用抗体との同時投与によって増強され得る。
【0014】
本発明はまた、式Iに従う化合物の代謝産物、溶媒和物、互変異性体または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0015】
例えば、R2はOR6である。
【0016】
例えば、R6は、エチルなどのC
1〜C
6アルキルである。
【0017】
例えば、本発明は、R2がNR6R7である、式Iの化合物に関する。
【0018】
例えば、本発明は、R2がNR6R7であり、かつR6およびR7が、H、C
1〜C
6アルキルおよびC
1〜C
6ヘテロアルキルから独立して選択される、例えばR6およびR7がH、エチル、プロピルまたはCH
2CH
2OCH
3などである、式Iの化合物に関する。
【0019】
例えば、本発明は、Yがフェニルである、式Iの化合物に関する。
【0020】
例えば、本発明は、R8が、OR6、NR6R7、ならびに3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキルから選択される、式Iの化合物に関する。
【0021】
例えば、本発明は、R8が、5または6個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキルである、式Iの化合物に関する。例えば、R8はピロリジンである。
【0022】
例えば、本発明は、R6およびR7が、HおよびC
1〜C
6アルキルから独立して選択される、式Iの化合物に関する。
【0023】
例えば、本発明は、Yが、
【0024】
【化2】
である、式Iの化合物に関する。
【0025】
本発明の一部の化合物において、R1、R3、R4、R5a、R5bおよびR5cの各々は水素である。
【0026】
例えば、本発明は、
(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシレート;
(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−(4−(メトキシカルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシレート;
(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−(4−(メチルカルバモイル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシレート;
(1E,4E)−2−アミノ−N,N−ジプロピル−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキサミド
および薬学的に許容され得るその塩から選択される化合物に関する。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子は、以下のような化学構造:
【0028】
【化3】
を有する、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである。
【0029】
ADCCエンハンサー分子は、抗体のエフェクター活性を増強するまたは改善する。したがって、抗原結合活性にかかわらず、本発明の方法は、抗体によって発揮されるエフェクター活性を増強することにより、その抗体の治療効果を増大させることができる。ADCCエンハンサー分子は、NK細胞またはCD56
+細胞を直接または間接的に活性化することによりADCCを改善し得る。加えて、より大きな比率の活性化NK細胞を有することは、低親和性Fc受容体を有する一部の患者群で認められる低いADCCを克服するのに役立ち得る。
【0030】
ADCCの能力を有する治療用MAbが好ましい。これらには、抗CD20のリツキシマブ(Rituxan(登録商標))、抗Her2のトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、抗EGFRのセツキシマブ(Erbitux(登録商標))および抗EGFRパニツムマブ(Vectibix(登録商標))が含まれる。
【0031】
一部の実施形態によれば、治療用モノクローナル抗体による処置を受けている被験体においてADCCを増大させるための方法が提供される。一部の実施形態では、上記方法は、治療有効量の治療用抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を被験体に投与する工程を含む。あるいは、本発明の方法は、治療有効量の治療用抗体、ADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤を被験体に投与する工程を含む。
【0032】
一部の実施形態によれば、NK感受性標的細胞の死滅を増強するための方法が提供される。一部の実施形態では、上記方法は、治療有効量の治療用抗体およびNK感受性標的細胞の死滅を増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を被験体に投与する工程を含む。
【0033】
一部の実施形態によれば、NK細胞またはCD56
+細胞のエフェクター活性を増強するための方法が提供される。一部の実施形態では、上記方法は、治療有効量の治療用抗体およびNK細胞またはCD56
+細胞のエフェクター活性を増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を被験体に投与する工程を含む。
【0034】
一部の実施形態によれば、患者の細胞においてADCCを増強するための方法が提供される。一部の実施形態では、上記方法は、治療有効量の治療用抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を被験体に投与する工程を含む。被験体は、モノクローナル抗体が対象とする腫瘍抗原を低いレベルしか発現しないため、または該被験体のFc受容体においてモノクローナル抗体に対する親和性を低下させる一塩基多型を有するため、別段MAb療法の良好な治療候補であるとは限らない。
【0035】
一部の実施形態によれば、モノクローナル抗体の治療有効性を増強させるための方法が提供される。一部の実施形態によれば、治療用モノクローナル抗体の効率を増大させるための方法が提供される。一部の実施形態では、上記方法は、治療有効量の治療用抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を被験体に投与する工程を含む。あるいは、本発明の方法は、治療有効量の治療用抗体、ADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤を被験体に投与する工程を含む。
【0036】
一部の実施形態によれば、治療用抗ErbB2モノクローナル抗体の臨床的有効性を増大させるための方法であって、治療用抗ErbB2モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。あるいは、本発明の方法は、治療用抗ErbB2モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む。好ましい実施形態では、抗ErbB2モノクローナル抗体はトラスツズマブである。
【0037】
一部の実施形態によれば、乳癌を処置するための方法であって、治療用抗ErbB2モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。あるいは、本発明の方法は、治療用抗ErbB2モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む。好ましい実施形態では、抗ErbB2モノクローナル抗体はトラスツズマブである。
【0038】
一部の実施形態によれば、治療用抗CD20モノクローナル抗体の臨床的有効性を増大させるための方法であって、治療用抗CD20モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。好ましい実施形態では、抗CD20モノクローナル抗体はリツキシマブである。
【0039】
一部の実施形態によれば、B細胞障害を処置するための方法であって、治療用抗CD20モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。好ましい実施形態では、抗CD20モノクローナル抗体はリツキシマブである。一部の実施形態では、B細胞障害はリンパ腫、白血病または関節リウマチである。
【0040】
一部の実施形態によれば、治療用抗EGFRモノクローナル抗体の臨床的有効性を増大させるための方法であって、治療用抗EGFRモノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。本発明の方法はまた、治療用抗EGFRモノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む。好ましい実施形態では、抗EGFRモノクローナル抗体は、パニツムマブ、セツキシマブ、ネシツムマブまたはザルツムマブである。
【0041】
一部の実施形態によれば、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫を処置するための方法であって、治療用抗EGFRモノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。一部の実施形態によれば、EGFRを発現する頭頸部癌を処置するための方法であって、治療用抗EGFRモノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。本発明はまた、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫を処置する方法であって、治療用抗EGFRモノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を包含する。一部の実施形態によれば、EGFRを発現する頭頸部癌を処置するための方法であって、治療用抗EGFRモノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法も提供される。好ましい実施形態では、抗EGFRモノクローナル抗体は、パニツムマブ、セツキシマブ、ネシツムマブまたはザルツムマブである。
【0042】
一部の実施形態によれば、KRAS変異体結腸直腸癌を処置するための方法であって、治療用モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。好ましい実施形態では、治療用モノクローナル抗体はパニツムマブまたはセツキシマブである。
【0043】
一部の実施形態によれば、癌を処置するための方法であって、治療有効量の治療用抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。本発明はまた、癌を処置する方法であって、治療有効量の治療用抗体、ADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を包含する。
【0044】
一部の実施形態によれば、B細胞性悪性疾患またはB細胞障害を処置するための方法であって、治療有効量の治療用抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。
【0045】
一部の実施形態によれば、自己免疫障害を処置するための方法であって、治療有効量の治療用抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。一部の実施形態では、自己免疫障害は関節リウマチである。
【0046】
一部の実施形態によれば、被験体における腫瘍再発を回避するための方法であって、治療有効量の治療用抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。
【0047】
一部の実施形態では、治療用抗体は、マウス、ヒトまたは非ヒト霊長動物IgG1またはIgG3 Fc部分を有する。一部の実施形態では、治療用抗体は、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体またはそのフラグメントである。
【0048】
本発明では、適切な治療レジメンを、それを必要とする被験体のために選択するための方法であって、アミノ酸位置158におけるFcgR3aのSNPを決定する工程を含み、ここで、FcgR3aのアミノ酸位置158のホモ接合バリンにより、その被験体が、FcgR3aのアミノ酸位置158にホモ接合バリンを有さない被験体よりも上記治療レジメンに対してより応答性であると予測されることが示される、方法が提供される。
【0049】
本発明では、適切な治療レジメンを、それを必要とする被験体のために選択するための方法であって、アミノ酸位置131におけるFcgR2aのSNPを決定する工程を含み、ここで、FcgR2aのアミノ酸位置131のホモ接合ヒスチジンにより、その被験体が、FcgR2aのアミノ酸位置131にホモ接合ヒスチジンを有さない被験体よりも上記治療レジメンに対してより応答性であると予測されることが示される、方法が提供される。
【0050】
本発明は、液体または凍結乾燥ADCCエンハンサー分子、必要に応じて治療用抗体、および/または1つ以上の化学療法剤が入った1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
治療用モノクローナル抗体処置を受けている被験体において抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を増大させる方法であって、治療用モノクローナル抗体およびADCCを増大させるのに十分な量のADCCエンハンサー分子を該被験体に投与する工程を含み、ここで、該ADCCエンハンサー分子が、構造:
【化8】
[式中、Yは、C(=O)R8で置換されたアリール環であり、該アリール環は、F、Cl、CF3、CF3O−、HCF2O−、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヘテロアルキルおよびArO−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じてさらに置換されており;
R1、R3およびR4は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ヘテロアルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C1〜C6アルキル)アミノ、CH3OCH2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO2R7、SR6 4 SO2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されているか;
またはR3およびR4は、それらが結合している原子と共に飽和または部分不飽和C3〜C6炭素環式環を形成し、ここで、該炭素環式環は、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C1〜C6アルキル)アミノ、CH3OCH2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO2R7、SR6およびSO2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されており;
R2およびR8は、H、OR6、NR6R7、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ヘテロアルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C1〜C6アルキル)アミノ、CH3OCH2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO2R7、SR6およびSO2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されており;
R5a、R5bおよびR5cは、H、F、Cl、Br、I、OMe、CH3、CH2F、CHF2およびCF3から独立して選択され;そして
R6およびR7は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ヘテロアルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、O−アルキル、NH2、−C(=O)アルキル、C(=O)H、C(=O)OH、C(=O)Oアルキル、 OC(=O)H、OC(=O)アルキル、(C1〜C6アルキル)アミノ、(C1〜C6アルキル)2アミノCH3OCH2O−およびアルキル−OC(=O)CH=CH−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されているか;
またはR6およびR7は、それらが結合している原子と共に、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択される飽和または部分不飽和複素環式環を形成し、ここで、該複素環式環は、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NH2、−C(=O)アルキル、C(=O)H、C(=O)OH、C(=O)Oアルキル、OC(=O)H、OC(=O)アルキル、(C1〜C6アルキル)アミノ、(C1〜C6アルキル)2アミノCH3OCH2O−およびアルキル−OC(=O)CH=CH−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されている]
によって表される、方法。
(項目2)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記治療用モノクローナル抗体が、治療用抗CD20モノクローナル抗体、治療用抗Her2モノクローナル抗体、または治療用抗EGFRモノクローナル抗体である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記治療用モノクローナル抗体が、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブまたはパニツムマブである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記被験体に治療有効量の1つ以上の化学療法剤を投与する工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記被験体がFcγR多型またはKRAS変異を有する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記被験体が、治療用抗体処置に対して不応答性であると以前に同定されたことがある、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記被験体がADCC機能障害を有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記ADCCエンハンサー分子を治療用抗体の投与の前に、治療用抗体の投与と同時に、治療用抗体の投与の後に投与する、項目1に記載の方法。
(項目10)
治療用抗ErbB2モノクローナル抗体の臨床的有効性を増大させる方法であって、該治療用抗ErbB2モノクローナル抗体をADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法。
(項目11)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記抗ErbB2モノクローナル抗体がトラスツズマブである、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記被験体に治療有効量の1つ以上の化学療法剤を投与する工程をさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
乳癌を処置する方法であって、治療用抗ErbB2モノクローナル抗体をADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法。
(項目15)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記モノクローナル抗体がトラスツズマブである、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記被験体に治療有効量の1つ以上の化学療法剤を投与する工程をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
治療用抗CD20モノクローナル抗体の臨床的有効性を増大させる方法であって、該治療用抗CD20モノクローナル抗体をADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法。
(項目19)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記抗CD20モノクローナル抗体がリツキシマブである、項目18に記載の方法。
(項目21)
B細胞障害を処置する方法であって、治療用抗CD20モノクローナル抗体をADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法。
(項目22)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記抗CD20モノクローナル抗体がリツキシマブである、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記B細胞障害がリンパ腫、白血病または関節リウマチである、項目21に記載の方法。
(項目25)
治療用抗EGFRモノクローナル抗体の臨床的有効性を増大させる方法であって、該治療用抗EGFRモノクローナル抗体をADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法。
(項目26)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記抗EGFRモノクローナル抗体がセツキシマブである、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記被験体に治療有効量の1つ以上の化学療法剤を投与する工程をさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記抗EGFRモノクローナルがパニツムマブである、項目25に記載の方法。
(項目30)
前記被験体がKRAS変異を有する、項目25に記載の方法。
(項目31)
EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫を処置する方法であって、治療用抗EGFRモノクローナル抗体をADCC分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法。
(項目32)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記抗EGFRモノクローナルがセツキシマブである、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記被験体に治療有効量の1つ以上の化学療法剤を投与する工程をさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記抗EGFRモノクローナルがパニツムマブである、項目31に記載の方法。
(項目36)
EGFRを発現する頭頸部癌を処置する方法であって、治療用抗EGFRモノクローナル抗体をADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法。
(項目37)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記抗EGFRモノクローナル抗体がセツキシマブである、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記被験体に治療有効量の1つ以上の化学療法剤を投与する工程をさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目40)
KRAS変異体癌を処置する方法であって、治療用モノクローナル抗体をADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法。
(項目41)
前記ADCCエンハンサー分子が{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記治療用モノクローナルがセツキシマブである、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記治療用モノクローナルがパニツムマブである、項目40に記載の方法。
(項目44)
前記KRAS変異体癌が結腸直腸癌である、項目40に記載の方法。
(項目45)
ADCCエンハンサー分子および治療用抗体を含有する組成物。
(項目46)
前記ADCCエンハンサー分子が2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである、項目45に記載の組成物。
(項目47)
前記治療用抗体が、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブおよびパニツムマブからなる群より選択される、項目45に記載の組成物。
(項目48)
{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを含むキット。
(項目49)
リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブおよびパニツムマブからなる群より選択される1つ以上の治療用モノクローナル抗体をさらに含む、項目32に記載のキット。
(項目50)
1つ以上の化学療法剤をさらに含む、項目33に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明の詳細な説明
本発明は、ADCCエンハンサー分子が抗体の抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)活性を増大させるという発見に基づく。したがって、本発明は、治療用モノクローナル抗体およびADCCエンハンサー分子である、以下のような式I:
【0053】
【化4】
[式中、
Yは、C(=O)R8で置換されたアリール環であり、上記アリール環は、F、Cl、CF
3、CF
3O−、HCF
2O−、C
1〜C
6アルキル、C
1〜C
6ヘテロアルキルおよびArO−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じてさらに置換されており;
R1、R3およびR4は、H、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
1〜C
6ヘテロアルキル、C
3〜C
6シクロアルキル、C
3〜C
6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、CH
3OCH
2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO
2R7、SR6およびSO
2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されているか;
またはR3およびR4は、それらが結合している原子と共に飽和または部分不飽和C
3〜C
6炭素環式環を形成し、上記炭素環式環は、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、CH
3OCH
2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO
2R7、SR6およびSO
2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されており;
R2およびR8は、H、OR6、NR6R7、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
1〜C
6ヘテロアルキル、C
3〜C
6シクロアルキル、C
3〜C
6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NR6R7、C(=O)R6、C(=O)OR6、OC(=O)R6、C(=O)NR6R7、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、CH
3OCH
2O−、R6OC(=O)CH=CH−、NR6SO
2R7、SR6およびSO
2R6から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されており;
R5a、R5bおよびR5cは、H、F、Cl、Br、I、OMe、CH
3、CH
2F、CHF
2およびCF
3から独立して選択され;そして
R6およびR7は、H、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
1〜C
6ヘテロアルキル、C
3〜C
6シクロアルキル、C
3〜C
6シクロアルケニル、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキル、アリールならびに5〜7員ヘテロアリールから独立して選択され、上記アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、O−アルキル、NH
2、−C(=O)アルキル、C(=O)H、C(=O)OH、C(=O)Oアルキル、 OC(=O)H、OC(=O)アルキル、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、(C
1〜C
6アルキル)
2アミノCH
3OCH
2O−およびアルキル−OC(=O)CH=CH−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されているか;
またはR6およびR7は、それらが結合している原子と共に、3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択される飽和または部分不飽和複素環式環を形成し、上記複素環式環は、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、F、Cl、Br、I、CN、OR6、NH
2、−C(=O)アルキル、C(=O)H、C(=O)OH、C(=O)Oアルキル、OC(=O)H、OC(=O)アルキル、(C
1〜C
6アルキル)アミノ、(C
1〜C
6アルキル)
2アミノCH
3OCH
2O−およびアルキル−OC(=O)CH=CH−から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換されている]
を有する化合物を投与することにより、癌および免疫細胞媒介性疾患または障害などの細胞性疾患を処置する方法を提供する。
【0054】
本発明はまた、式Iに従う化合物の代謝産物、溶媒和物、互変異性体または薬学的に許容され得る塩に関する。
【0056】
例えば、R6は、エチルなどのC
1〜C
6アルキルである。
【0057】
例えば、本発明は、R2がNR6R7である、式Iの化合物に関する。
【0058】
例えば、本発明は、R2がNR6R7であり、かつR6およびR7が、H、C
1〜C
6アルキルおよびC
1〜C
6ヘテロアルキルから独立して選択される、例えばR6およびR7がH、エチル、プロピルまたはCH
2CH
2OCH
3などである、式Iの化合物に関する。
【0059】
例えば、本発明は、Yがフェニルである、式Iの化合物に関する。
【0060】
例えば、本発明は、R8が、OR6、NR6R7、ならびに3〜8個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキルから選択される、式Iの化合物に関する。
【0061】
例えば、本発明は、R8が、5または6個の環原子を有し、そのうち1個の原子が窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロシクロアルキルである、式Iの化合物に関する。例えば、R8はピロリジンである。
【0062】
例えば、本発明は、R6およびR7が、HおよびC
1〜C
6アルキルから独立して選択される、式Iの化合物に関する。
【0064】
【化5】
である、式Iの化合物に関する。
【0065】
本発明の一部の化合物において、R1、R3、R4、R5a、R5bおよびR5cの各々は水素である。
【0066】
例えば、本発明は、
(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシレート;
(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−(4−(メトキシカルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシレート;
(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−(4−(メチルカルバモイル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシレート;
(1E,4E)−2−アミノ−N,N−ジプロピル−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキサミド
および薬学的に許容され得るその塩から選択される化合物に関する。他の適切なADCCエンハンサーは、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開公報第WO2007/024612号に記載されている。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子は、以下のような化学構造:
【0068】
【化6】
を有する{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドである。
【0069】
ADCCエンハンサー分子は、抗体のエフェクター活性を増強するまたは改善する。したがって、抗原結合活性にかかわらず、本発明の方法は、抗体によって発揮されるエフェクター活性を増強することにより、その抗体の治療効果を増大させることができる。したがって、本発明の方法は、一般に、抗体エフェクター活性の増強が望ましい任意の障害の症状を、それを必要とする被験体において処置するまたは緩和するために有用である。ADCCエンハンサー分子は、NK細胞またはCD56
+細胞を直接または間接的に活性化することによりADCCを改善し得る。加えて、より大きな比率の活性化NK細胞を有することは、低親和性Fc受容体を有する一部の患者群で認められる低いADCCを克服するのに役立ち得る。
【0070】
それを必要とする被験体とは、KRAS変異もしくはFcγR多型を有すると同定された、または以前に治療用抗体処置に対して不応答性であると同定された、またはADCC機能障害を有する癌被験体を含む。
【0071】
別の実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子は1つ以上の治療用抗体と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、抗体は、癌および他の細胞性疾患に対するインビボでの治療および/または予防用途を有する。
【0072】
特定の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、1つ以上の治療用抗体の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に投与される。1つの実施形態では、ADCCエンハンサー分子は1つ以上の治療用抗体と共に処方される。別の実施形態では、1つ以上の治療用抗体は別の薬学的組成物中で投与される。この実施形態に従って、1つ以上の治療用抗体は、ADCCエンハンサー分子を投与するために使用されるのと同じかまたは異なる投与経路によって被験体に投与され得る。
【0073】
別の態様では、本発明は、癌細胞を死滅させるためにある量の本発明のADCCエンハンサー分子を治療用モノクローナル抗体と組み合わせて投与する工程を含む、癌細胞を死滅させるための方法を提供する。治療用モノクローナル抗体の種類は、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびトラスツズマブを含むが、これらに限定されない。
【0074】
治療用抗体
本発明の文脈の範囲内で、「治療用抗体(単数または複数)」という用語は、より具体的には患者において標的細胞を枯渇させるように機能する任意の抗体を表す。そのような標的細胞の具体的な例には、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、同種異系細胞、癌、アレルギー、自己免疫疾患、同種異系反応に関与する病的免疫応答性細胞(例えばBリンパ球、Tリンパ球、抗原提示細胞等)が含まれる。本発明の文脈の範囲内で最も好ましい標的細胞は、腫瘍細胞およびウイルス感染細胞である。治療用抗体は、例えば、特に抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)による、細胞傷害作用または細胞溶解を媒介し得る。
【0075】
ADCCは、IgGのFc部分についての白血球受容体(FcγR)を必要とし、その機能は、IgG感作抗原を、FcγRを担持する細胞傷害性細胞に結びつけ、細胞活性化機構を始動させることである。この作用機構はヒトにおいてインビボでは証明されていないが、そのような標的細胞を枯渇させる治療用抗体の効力を説明し得る。したがって、治療用抗体は免疫複合体を形成することができる。例えば、免疫複合体は、治療用抗体によって被覆された腫瘍標的であり得る。治療用抗体は、ポリクローナルまたは、好ましくはモノクローナルであり得る。それらはハイブリドーマによって、または所望の可変ドメインおよび定常ドメインを発現するように工学的に作製された組換え細胞によって産生され得る。治療用抗体は、一本鎖抗体または抗原特異性および低ヒンジ領域を保持する他の抗体誘導体またはその改変体であり得る。これらは多機能性抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、そのフラグメントまたは改変体であり得る。上記フラグメントまたはその誘導体は、好ましくはFabフラグメント、Fab’
2フラグメント、CDRおよびScFvから選択される。治療用抗体は表面抗原、例えば膜抗原に特異的である。最も好ましい治療用抗体は、CD20、CD52、ErbB2(またはHER2/Neu)、CD33、CD22、CD25、MUC−1、CEA、KDR、αVβ33などの腫瘍抗原(例えば腫瘍細胞によって特異的に発現される分子)、特にリンパ腫抗原(例えばCD20)に特異的である。治療用抗体は、好ましくはヒトまたは非ヒト霊長動物IgG1またはIgG3 Fc部分、より好ましくはヒトIgG1を有する。
【0076】
本発明の治療用抗体の典型的な例は、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびトラスツズマブである。そのような抗体は、ヒト被験体における使用に関して承認されている臨床プロトコールに従って使用し得る。治療用抗体のさらなる具体例としては、例えばアレムツズマブ、エプラツズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ラベツズマブ、セビルマブ(seviumab)、ツブリマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、オマリズマブ、エファリズマブ(efalizuab)、ナタリズマブおよびクレノリキシマブが含まれる。当業者は、他の治療用抗体が本発明の方法において有用であることを認識する。
【0077】
一部の実施形態では、治療用抗体の用量は、好ましくは200〜600mg/m
2である。これは、200mg/m
2、250mg/m
2、300mg/m
2、350mg/m
2、400mg/m
2、450mg/m
2、500mg/m
2、600mg/m
2およびその間の点を含む。好ましくは、治療用抗体は静脈内注入によって(例えば30分間、45分間、60分間、90分間または120分間注入として)投与される。例えば、治療用抗体の用量は、120分間の静脈内注入(例えば最大注入速度10mg/分)として投与される400mg/m
2であり得る。
【0078】
一部の実施形態では、治療用抗体の用量は、好ましくは1〜10mg/kgである。これは、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kgおよびその間の点を含む。好ましくは、治療用抗体は静脈内注入によって(例えば30分間、45分間、60分間、90分間または120分間注入として)投与される。例えば、治療用抗体の用量は、30分間、60分間または90分間の静脈内注入として投与される6mg/kgであり得る。
【0079】
ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)
一部の実施形態では、治療用抗体は抗EGFR(上皮増殖因子受容体)モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はヒトまたはヒト化抗EGFRモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はキメラ抗EGFRモノクローナル抗体である。好ましくは、モノクローナル抗体は、キメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体および上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)である。
【0080】
セツキシマブは、転移性結腸直腸癌および頭頸部癌の処置のために本発明のADCCエンハンサーと組み合わせて使用され得る。結腸直腸癌は、小腸より下の腸管(すなわち盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸およびS状結腸を含む大腸(結腸)ならびに直腸)の細胞の癌を特徴とする医学的状態として結腸直腸癌を定義する、広く受け入れられている医学的定義を含む。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫の処置のためにセツキシマブと組み合わせて使用される。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、イリノテカンに基づく化学療法に不応性の患者において、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫の処置のためにセツキシマブと組み合わせて使用される。
【0081】
頭頸部は複数の器官の集合であり、頭頸部癌の原発巣は、副鼻腔、上咽頭、口腔咽頭部、口腔、下咽頭、喉頭および唾液腺を含む。頭頸部癌は、身体の頭部または頸部領域の癌を含む。大部分の頭頸部癌は扁平上皮癌腫であるが、一部は外向発育性(exophilic)または内向発育性(endophilic)であり得る。頭頸部癌の例には、唇、口腔(口)、舌、咽喉、気管、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭、甲状腺、唾液腺および頸部のリンパ節等が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、頭頸部の局所的または限局性に進行した扁平上皮癌腫の処置のためにセツキシマブと組み合わせて使用される。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、白金に基づく療法後に進行する頭頸部の再発性または転移性扁平上皮癌腫の処置のためにセツキシマブと組み合わせて使用される。
【0083】
一部の実施形態によれば、本発明は、転移性結腸直腸癌または頭頸部癌の処置においてセツキシマブの有効性を増大させる方法を提供する。したがって、一部の実施形態は、セツキシマブの臨床的有効性を増大させるための方法であって、セツキシマブを本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0084】
セツキシマブの用量は、好ましくは200〜600mg/m
2である。これは、200mg/m
2、250mg/m
2、300mg/m
2、350mg/m
2、400mg/m
2、450mg/m
2、500mg/m
2、600mg/m
2およびその間の点を含む。好ましくは、セツキシマブは静脈内注入によって(例えば30分間、45分間、60分間、90分間または120分間注入として)投与される。例えば、セツキシマブの用量は、120分間の静脈内注入(例えば最大注入速度10mg/分)として投与される400mg/m
2であり得る。
【0085】
セツキシマブは、より高い初期用量、続いてより低いその後の用量で投与され得る。投与の頻度は、好ましくは週1回である。例えば、120分間の静脈内注入(例えば最大注入速度10mg/分)として投与される400mg/m
2のセツキシマブの初期用量に続いて、その後の週1回の用量は、疾患の進行または許容され得ない毒性に至るまで、60分間にわたって注入される(例えば最大注入速度10mg/分)250mg/m
2であり得る。
【0086】
HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)
一部の実施形態では、治療用抗体は抗ErbB2(HER2/neu)モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はヒトまたはヒト化抗ErbB2モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はキメラ抗ErbB2モノクローナル抗体である。
【0087】
一部の実施形態では、治療用抗体は、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2/neu受容体)に干渉するヒト化モノクローナル抗体、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)である。HER2/neu受容体は、上皮増殖因子受容体ファミリーとしてより一般的に知られる、ErbBタンパク質ファミリーのメンバーである。トラスツズマブは、過剰活性なHER2受容体の作用を逆転させる。
【0088】
一部の実施形態では、トラスツズマブは、乳癌の処置のために本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、その腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌を有する患者の処置のためにセツキシマブと組み合わせて使用される。
【0089】
一部の実施形態によれば、本発明は、乳癌の処置においてトラスツズマブの有効性を増大させる方法を提供する。したがって、一部の実施形態は、トラスツズマブの臨床的有効性を増大させるための方法であって、トラスツズマブを本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0090】
トラスツズマブの用量は、好ましくは1〜10mg/kgである。これは、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kgおよびその間の点を含む。好ましくは、トラスツズマブは静脈内注入によって(例えば30分間、45分間、60分間、90分間または120分間注入として)投与される。例えば、トラスツズマブの用量は、30分間、60分間または90分間の静脈内注入として投与される6mg/kgであり得る。
【0091】
トラスツズマブは、より高い初期用量、続いてより低いその後の用量または維持用量で投与され得る。投与の頻度は、好ましくは週1回である。例えば、90分間の静脈内注入として投与される4mg/kgのトラスツズマブの初期用量に続いて、その後の週1回の用量は、疾患の進行または許容され得ない毒性に至るまで、30分間にわたって注入される2mg/kgであり得る。
【0092】
RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)
一部の実施形態では、治療用抗体は抗CD20モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はヒトまたはヒト化抗CD20モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はキメラ抗CD20モノクローナル抗体である。
【0093】
好ましくは、タンパク質CD20に対するモノクローナル抗体はRITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)である。したがって、一部の実施形態は、トラスツズマブの臨床的有効性を増大させるための方法であって、トラスツズマブを本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0094】
リツキシマブは、リンパ腫、白血病および一部の自己免疫障害(例えば関節リウマチ)などのB細胞障害の処置のために本発明のADCCエンハンサーと組み合わせて使用され得る。
【0095】
リツキシマブは、その表面にCD20を有する正常B細胞および悪性B細胞の両方を破壊する。リツキシマブは、多過ぎるB細胞、過剰活性B細胞または機能不全B細胞を有することを特徴とする疾患を処置するために本発明のADCCエンハンサーと組み合わせて使用され得る。一部の実施形態によれば、本発明は、リンパ腫、白血病および一部の自己免疫障害(例えば関節リウマチ)などのB細胞障害の処置においてリツキシマブの有効性を増大させる方法を提供する。したがって、一部の実施形態は、リツキシマブの臨床的有効性を増大させる方法であって、リツキシマブを本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0096】
一部の実施形態では、リツキシマブは、白血病およびリンパ腫などの血液系腫瘍を処置するために本発明のADCCエンハンサーと組み合わせて使用され得る。
【0097】
リツキシマブは、特発性自己免疫性溶血性貧血、赤芽球ろう、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、エヴァンズ症候群、脈管炎(例えばヴェーゲナー肉芽腫症)、水疱性皮膚障害(例えば天疱瘡、類天疱瘡)、1型糖尿病、シェーグレン症候群およびドヴィック病を含むがこれらに限定されない、自己免疫疾患を処置するために本発明のADCCエンハンサーと組み合わせて使用され得る。
【0098】
一部の実施形態によれば、リツキシマブは、血液系悪性疾患を処置するために本発明のADCCエンハンサーと組み合わせて使用され得る。そのような血液系悪性疾患には、例えば、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病および慢性リンパ性白血病が含まれる。そのような処置は、例えば、動物モデルまたはヒトにおいて腫瘍退縮を生じさせる。腫瘍退縮は、例えば、癌細胞を死滅させることを含み得る。
【0099】
したがって、1つの態様では、本発明は、ある量のリツキシマブおよび造血癌の癌細胞を死滅させるために有効な量の本発明のADCCエンハンサーを投与する工程を含む、癌細胞を死滅させるための方法を提供する。造血癌の種類としては、B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
一部の実施形態では、リツキシマブは、再発性または難治性、低悪性度または濾胞性、CD20陽性、B細胞性非ホジキンリンパ腫を有する患者の処置のために本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて投与される。
【0101】
一部の実施形態では、リツキシマブは、CVP化学療法を併用した、濾胞性、CD20陽性、B細胞性非ホジキンリンパ腫の再優良の(first−line)処置のために本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて投与される。
【0102】
一部の実施形態では、リツキシマブは、関節リウマチの処置のために本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて投与される。上記の組合せにメトトレキサートをさらに加えてもよい。したがって、一部の実施形態では、リツキシマブは、中等度から重度の活動性関節リウマチを有する成人患者において徴候および症状を軽減するために本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、そしてメトトレキサートと組み合わせて投与される。一部の実施形態では、リツキシマブは、1つ以上のTNF拮抗物質療法に対する応答が不十分であった、中等度から重度の活動性関節リウマチを有する成人患者において徴候および症状を軽減するために本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、そしてメトトレキサートと組み合わせて投与される。
【0103】
リツキシマブの用量は、好ましくは200〜1200mg/m
2である。これは、200mg/m
2、250mg/m
2、300mg/m
2、350mg/m
2、375mg/m
2、400mg/m
2、450mg/m
2、500mg/m
2、600mg/m
2、700mg/m
2、800mg/m
2、900mg/m
2、1000mg/m
2、1100mg/m
2、1200mg/m
2およびその間の点を含む。好ましくは、リツキシマブは静脈内注入によって(例えば30分間、45分間、60分間、90分間または120分間注入として)投与される。例えば、リツキシマブの用量は、120分間の静脈内注入として、好ましくは4時間以内に投与される375mg/m
2であり得る。
【0104】
リツキシマブの投与の頻度は、好ましくは週1回または月1回であり、疾患の進行または許容され得ない毒性に至るまで継続し得る。一部の実施形態では、リツキシマブの2〜16用量が投与される(例えば2、4、6、8、10、12、14、16用量)。一部の実施形態では、リツキシマブは、375mg/m
2の静脈内注入で週1回、4または8用量にわたって与えられる。一部の実施形態では、リツキシマブの投与は、6か月ごとに4用量、16用量までである。一部の実施形態では、リツキシマブは、2週間の間隔を置いて2回の1000mg静脈内注入として与えられる。
【0105】
VECTIBIX(登録商標)(パニツムマブ)
一部の実施形態では、治療用抗体はVectibix(登録商標)(パニツムマブ)である。Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)は、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)に特異的に結合する組換えヒトIgG2κモノクローナル抗体である。Vectibix(登録商標)は、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンを含む化学療法レジメンの下でまたは上記化学療法レジメン後に疾患の進行を有する、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫の処置のために単剤として適応される。
【0106】
一部の実施形態によれば、本発明は、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫の処置においてパニツムマブの有効性を増大させる方法を提供する。したがって、一部の実施形態は、パニツムマブの臨床的有効性を増大させるための方法であって、パニツムマブを本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。他の実施形態は、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫の処置においてパニツムマブの臨床的有効性を増大させるための方法であって、パニツムマブを本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0107】
一部の実施形態では、パニツムマブは、転移性結腸直腸癌腫の処置のために本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、パニツムマブは、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカン化学療法レジメンの下でまたは上記化学療法レジメン後に疾患の進行を有する転移性結腸直腸癌腫の処置のために本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて投与される。
【0108】
パニツムマブの用量は、好ましくは1〜10mg/kgである。これは、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、10mg/kgおよびその間の点を含む。好ましくは、パニツムマブは静脈内注入によって(例えば30分間、45分間、60分間、90分間または120分間注入として)投与される。例えば、パニツムマブの用量は、30分間、60分間または90分間の静脈内注入として投与される4mg/kgであり得る。1000mgより高い用量は、90分間かけて投与すべきである。投与の頻度は7〜21日ごとに1回(例えば10、14、18日ごとに1回等)であり得る。投与の頻度は、好ましくは14日ごとに1回である。
【0109】
パニツムマブは、より高い初期用量、続いてより低いその後の用量または維持用量で投与され得る。例えば、90分間の静脈内注入として投与される6mg/kgのパニツムマブの初期用量に続いて、その後の週1回の用量は、疾患の進行または許容され得ない毒性に至るまで、30分間にわたって注入される2〜4mg/kgであり得る。
【0110】
治療用抗体および化学療法剤との併用
特定の実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子は、1つ以上の治療用抗体および1つ以上の化学療法剤と組み合わせて投与される。「化学療法剤」とは、作用機構に関わらず、癌の処置において有用な化合物である。化学療法剤には、以下の群の化合物:細胞傷害性抗生物質、代謝拮抗物質、抗有糸分裂薬、アルキル化剤、白金含有化合物、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、タキサン類、ヌクレオシド類似体、植物アルカロイド類および毒素ならびにその合成誘導体が含まれるが、これらに限定されない。以下は、これらの群の中の特定の化合物の非限定的な例である。アルキル化剤には、シクロホスファミド、イフォスファミド、トロフォスファミドおよびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU)などのニトロソ尿素;ブスルファンおよびトレオスルファンなどのアルキルスルホネート;ならびにダカルバジンなどのトリアゼンが含まれる。白金含有化合物には、シスプラチン、カルボプラチン、アロプラチンおよびオキサリプラチンが含まれる。植物アルカロイド類には、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどのビンカアルカロイド;ならびにパクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキソイドが含まれる。DNAトポイソメラーゼ阻害剤には、エトポシド、テニポシド、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、カンプトテシンおよびクリスナトールなどのエピポドフィリン;ならびにマイトマイシンCなどのマイトマイシンが含まれる。抗葉酸薬には、メトトレキサートおよびトリメトレキサートなどのDHFR阻害剤;ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、ヒドロキシ尿素およびEICARなどのIMPデヒドロゲナーゼ阻害剤;ならびにデフェロキサミンなどのリボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤が含まれる。ピリミジン類似体には、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、ドキシフルリジンおよびラルチトレキセド(ratitrexed)などのウラシル類似体;ならびにシタラビン(araC)、シトシンアラビノシドおよびフルダラビンなどのシトシン類似体が含まれる。プリン類似体には、メルカプトプリンおよびチオグアニンが含まれる。DNA代謝拮抗物質には、3−HP、2’−デオキシ−5−フルオロウリジン、5−HP、α−TGDR、アフィジコリングリシネート、ara−C、5−アザ−2’−デオキシシチジン、β−TGDR、シクロシチジン、グアナゾール、イノシングリコジアルデヒド、マセベシンIIおよびピラゾロイミダゾールが含まれる。抗有糸分裂薬には、アロコルヒチン、ハリコンドリンB、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドルスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、チオコルヒチンおよびトリチルシステインが含まれる。
【0111】
本発明のADCCエンハンサー分子と共に使用するための化学療法剤の他の例には、イソプレニル化阻害剤;1−メチル−4−フェニルピリジニウムイオンなどのドーパミン作動性神経毒;スタウロスポリンなどの細胞周期阻害剤;アクチノマイシンDおよびダクチノマイシンなどのアクチノマイシン類;ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2およびペプロマイシンなどのブレオマイシン類;ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシンおよびミトザントロンなどのアントラサイクリン類;ベラパミルなどのMDR阻害剤;ならびにタプシガルギンなどのCa
2+ATPアーゼ阻害剤が含まれる。
【0112】
1つの実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、以下のもの:IFNα、IL−2、ダカルバジン(Bayer)、テモゾロミド(Schering)、タモキシフェン(AZ)、カルムスチン(BMS)、メルファラン(GSK)、プロカルバジン(Sigma−Tau)、ビンブラスチン、カルボプラチン、シスプラチン、タキソール、シクロホスファミド、ドキソルビシン(doxorubin)、Rituxan(Genentech/Roche)、Herceptin(Genentech/Roche)、Gleevec、Iressa(AZ)、Avastin(Genentech/Roche)、Erbitux(ImClone/Merck KGaA)またはTarceva(Genentech/Roche)の1つ以上と組み合わせて投与される。
【0113】
別の実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子は、以下のもの:カリケアマイシンおよびエスペラマイシンなどのエンジイン;デュオカルマイシン、メトトレキサート、ドキソルビシン、メルファラン、クロラムブシル、Ara−C、ビンデシン、マイトマイシンC、シスプラチナム、エトポシド、ブレオマイシンならびに5−フルオロウラシルの1つ以上と組み合わせて投与される。
【0114】
本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて使用できる適切な毒素および化学療法剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Ed.(Mack Publishing Co.1995)、およびGoodman and Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics,7th Ed.(MacMillan Publishing Co.1985)に記載されている。他の適切な毒素および/または化学療法剤は当業者に公知である。
【0115】
特定の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、1つ以上の化学療法剤の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に投与される。1つの実施形態では、ADCCエンハンサー分子は1つ以上の化学療法剤と共に処方される。別の実施形態では、1つ以上の化学療法剤は別の薬学的組成物中で投与される。この実施形態に従って、1つ以上の化学療法剤は、ADCCエンハンサー分子を投与するために使用されるのと同じかまたは異なる投与経路によって被験体に投与され得る。
【0116】
ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)
頭頸部癌
一部の実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子は、1つ以上の化学療法剤および治療用抗体の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に使用される。治療用抗体は抗EGFR(上皮増殖因子受容体)モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はヒトまたはヒト化抗EGFRモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はキメラ抗EGFRモノクローナル抗体である。好ましくは、モノクローナル抗体は、キメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体および上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)である。
【0117】
セツキシマブは、頭頸部癌の処置のために本発明のADCCエンハンサーおよび1つ以上の化学療法剤と組み合わせて使用され得る。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、頭頸部の局所的または限局性に進行した扁平上皮癌腫の処置のために1つ以上の化学療法剤およびセツキシマブの投与の前に、投与と同時に、または投与の後に使用される。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、白金に基づく療法後に進行する頭頸部の再発性または転移性扁平上皮癌腫の処置のために1つ以上の化学療法剤およびセツキシマブの投与の前に、投与と同時に、または投与の後に使用される。
【0118】
一部の実施形態によれば、本発明は、頭頸部癌の処置においてセツキシマブの有効性を増大させる方法を提供する。したがって、一部の実施形態は、セツキシマブの臨床的有効性を増大させる方法であって、セツキシマブを1つ以上の化学療法剤および本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0119】
結腸直腸癌
セツキシマブは、転移性結腸直腸癌の処置のために本発明のADCCエンハンサーおよび1つ以上の化学療法剤と組み合わせて使用され得る。結腸直腸癌は、小腸より下の腸管(すなわち盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸およびS状結腸を含む大腸(結腸)ならびに直腸)の細胞の癌を特徴とする医学的状態として結腸直腸癌を定義する、広く受け入れられている医学的定義を含む。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫の処置のためにセツキシマブおよび1つ以上の化学療法剤の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に使用される。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、イリノテカンに基づく化学療法に不応性の患者において、EGFRを発現する転移性結腸直腸癌腫の処置のためにセツキシマブおよび1つ以上の化学療法剤の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に使用される。
【0120】
本発明はまた、転移性結腸直腸癌の処置においてセツキシマブの有効性を増大させる方法を提供する。したがって、一部の実施形態は、セツキシマブの臨床的有効性を増大させる方法であって、セツキシマブを1つ以上の化学療法剤および本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0121】
HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)
トラスツズマブは、本発明のADCCエンハンサーおよび1つ以上の化学療法剤と共に使用され得る。一部の実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子は、1つ以上の化学療法剤および治療用抗体の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に使用される。治療用抗体は抗ErbB2(HER2/neu)モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はヒトまたはヒト化抗ErbB2モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、治療用抗体はキメラ抗ErbB2モノクローナル抗体である。
【0122】
一部の実施形態では、治療用抗体は、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2/neu受容体)に干渉するヒト化モノクローナル抗体、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)である。HER2/neu受容体は、上皮増殖因子受容体ファミリーとしてより一般的に知られる、ErbBタンパク質ファミリーのメンバーである。トラスツズマブは、過剰活性なHER2受容体の作用を逆転させる。
【0123】
一部の実施形態では、トラスツズマブは、乳癌の処置のために本発明のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、その腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌を有する患者の処置のためにセツキシマブおよび1つ以上の化学療法剤の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に使用される。
【0124】
一部の実施形態によれば、本発明は、乳癌の処置においてトラスツズマブの有効性を増大させる方法を提供する。したがって、一部の実施形態は、トラスツズマブの臨床的有効性を増大させる方法であって、トラスツズマブを本発明のADCCエンハンサー分子および1つ以上の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0125】
固形腫瘍
一部の実施形態によれば、固形腫瘍の成長(例えば乳房腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫、腎腫瘍、結腸腫瘍、子宮頸部腫瘍の成長)および/または転移を制御するための方法であって、有効量の本発明の化合物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法が提供される。一部の実施形態では、被験体は哺乳動物である。一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0126】
「腫瘍」という用語は、良性(例えば、転移を形成せず、隣接する正常組織を破壊しない腫瘍)または悪性/癌(例えば、周囲の組織に浸潤し、通常は転移を生じることができ、除去が試みられた後に再発することがあり、適切に処置されなければ宿主の死亡を引き起こす可能性がある腫瘍)であり得る、新生物成長を表すために使用される。本明細書で使用される場合、「腫瘍」、「腫瘍成長」または「腫瘍組織」という用語は交換可能に使用することができ、細胞の制御されない進行性増殖から生じる、生理的機能を果たさない組織の異常成長を指す。
【0127】
血液系癌
血液系癌は、血液、骨髄またはリンパ節を冒す種類の癌である。上記の3つは免疫系を介して密接に結びついているので、3つのうちの1つを冒す疾患はしばしばその他にも同様に影響を及ぼす。血液系癌は、2つの主要血球系統:骨髄性細胞系およびリンパ性細胞系のいずれかに由来し得る。骨髄性細胞系は、通常は顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージおよび肥満細胞を産生し、リンパ性細胞系は、B細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞を産生する。リンパ腫、リンパ性白血病および骨髄腫はリンパ系に由来し、一方、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群ならびに骨髄増殖性疾患は骨髄系起源である。
【0128】
本発明の組成物を使用して処置または改善し得る血液系癌には、非ホジキンリンパ腫(例えば小リンパ球性リンパ腫、濾胞性中心細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁層リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫および腸管T細胞リンパ腫)、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病ならびに多発性骨髄腫を含む形質細胞新生物が含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
本発明は、血液系癌を処置するまたは改善する方法であって、有効量の本発明の化合物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0130】
KRAS変異体癌
KRAS癌原遺伝子はK−ras Gタンパク質をコードする。この癌原遺伝子は、哺乳動物ras遺伝子ファミリー由来のKirsten ras癌遺伝子ホモログである。単一アミノ酸置換、特に単一ヌクレオチド置換が活性化変異(actrivating mutation)の原因である。変異体KRASタンパク質は、肺腺癌、粘液性腺腫、膵臓の腺管癌腫および結腸直腸癌腫を含む様々な悪性疾患に関係する。いくつかの生殖細胞系列KRAS変異は、ヌーナン症候群および心臓・顔・皮膚症候群に関連することが認められている。体細胞KRAS変異は、白血病、結腸癌、膵癌および肺癌において高い率で認められる。KRAS変異を有する患者は、結腸直腸癌および肺癌などの癌の処置において一部の治療用抗体に対する非常に低い応答が予測される。
【0131】
本発明はまた、KRAS変異体癌の処置において治療用モノクローナル抗体の臨床的有効性を増大させるための方法であって、治療用モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。治療用抗体は、例えば、パニツムマブまたはセツキシマブである。それを必要とする被験体とは、KRAS変異を有すると同定されたまたは以前に治療用抗体処置に対して不応答性であると同定された癌被験体を含む。KRAS変異を有する被験体は、ピロ配列決定、すなわちヌクレオチド伸長配列決定、遺伝子型決定、リボヌクレアーゼ、変性勾配ゲル電気泳動、カルボジイミド、化学的開裂、一本鎖高次構造多型、ヘテロ二本鎖および配列決定(Oginoら、Journal of Molecular Diagnostics,7:413−421,2005)などの当分野で公知の方法によって同定される。
【0132】
KRAS変異体結腸直腸癌
KRAS癌原遺伝子は、EGFRを含む多くの増殖因子受容体の下流に位置するRas/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路において決定的に重要な役割を果たし、結腸直腸癌(CRC)の発癌に関与する、K−ras Gタンパク質をコードする。活性化EGFRによるK−rasの動員は、細胞表面から核までのセリン−トレオニンキナーゼのカスケードの活性化の原因となる。KRAS変異(エクソン2、コドン12および13における)はCRC患者の3分の1超に存在し、サイクリンD1合成を誘導することにより、細胞増殖のための最も重要な経路の1つであるRas/MAPK経路の活性化を導く。その結果として、KRAS変異の存在下では、K−rasタンパク質の上流で作用する抗EGFRモノクローナル抗体(セツキシマブまたはパニツムマブ)によってこの経路の活性化を顕著に阻害することができない。KRAS変異はまた、肺腺癌、粘液性腺腫および膵臓の腺管癌腫を含む他の悪性疾患にも関係する。
【0133】
KRAS変異体肺癌
肺癌は、現在もなお米国における癌による死亡の主要原因であり、2006年には米国で162,000例の死亡を引き起こすと予想される。受容体チロシンキナーゼである上皮増殖因子受容体(EGFR)は、非小細胞肺癌(NSCLC)の大部分で発現される。NSCLCの20%〜30%、主として腺癌(30%)および喫煙者で起こるKRAS変異は、EGFR特異的チロシンキナーゼ阻害剤に対する応答不良に関連することが報告されている。KRAS変異体NSCLCを有する患者は、EGFRのチロシンキナーゼドメインを標的とする低分子阻害剤、エルロチニブ(Tarceva,OSI−774;OSI Pharmaceuticals)および化学療法で処置した場合、より不良の臨床転帰を示した。
【0134】
FcγR遺伝子多型
本発明はまた、FcγR多型を有する被験体などの、ADCC機能障害を有する被験体において、治療用モノクローナル抗体を本発明のADCCエンハンサー分子と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与することにより、治療用モノクローナル抗体の臨床的有効性を増大させるための方法を提供する。それを必要とする被験体とは、FcγR3a−V158FおよびFcγR2a−H131RなどのFcγR多型を有すると同定された、または以前に治療用抗体処置に対して不応答性であると同定された被験体を含む。FcγR多型を有する被験体は、当分野で公知の方法、例えば動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション法(DASH)、マイクロプレートアレイ対角線ゲル電気泳動法(MADGE)、ピロ配列決定、オリゴヌクレオチド特異的ライゲーション、TaqManシステムならびにAffymetrix SNPチップなどの様々なDNA「チップ」技術によって同定される。これらの方法は、典型的にはPCRによる、標的遺伝子領域の増幅を必要とする。侵襲的切断とそれに続く質量分析または固定化パドロックプローブおよびローリンサークル増幅法による小さなシグナル分子の生成に基づく、さらなる他の新たに開発される方法は、最終的にPCRの必要性を排除すると考えられる。
【0135】
FcγR3a−V158F
rs396991は、IgGのFcフラグメント低親和性IIIa受容体(CD16a)FcγR3a遺伝子におけるSNPである。rs396991(T)はフェニルアラニン(F)対立遺伝子をコードし、改変体バリン(V)をコードする(G)対立遺伝子を有する。本発明では、適切な治療レジメンを、それを必要とする被験体のために選択するための方法であって、アミノ酸位置158におけるFcγR3aのSNPを決定する工程を含み、ここで、FcγR3aのアミノ酸位置158のホモ接合バリンにより、その被験体がFcγR3aのアミノ酸位置158にホモ接合バリンを有さない被験体よりも上記治療レジメンに対してより応答性であると予測されることが示される、方法が提供される。
【0136】
FcγR2a−H131R
rs1801274は、IgGのFcフラグメントIIa受容体(CD32)FcγR2a遺伝子におけるSNPである。FcγRIIa遺伝子のエクソン4の131位のSNP(rs1801274)131G>A(またはH131R)は、ヒスチジンによるアルギニンの置換を導く。本発明では、適切な治療レジメンを、それを必要とする被験体のために選択するための方法であって、アミノ酸位置131におけるFcγR2aのSNPを決定する工程を含み、ここで、FcγR2aのアミノ酸位置131のホモ接合ヒスチジンにより、その被験体がFcγR2aのアミノ酸位置131にホモ接合ヒスチジンを有さない被験体よりも上記治療レジメンに対してより応答性であると予測されることが示される、方法が提供される。
【0137】
ADCCエンハンサー分子の投与
本発明のADCCエンハンサー分子は、好ましくは注射用に、最も好ましくは皮下注射による注射用に処方される。特定の実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子は、皮内、経皮、皮下または筋肉内経路による投与用に処方される。1つの実施形態では、ADCCエンハンサー分子は静脈内投与用に処方される。しかし、ADCCエンハンサー分子は、例として、鼻(例えばエアロゾルによる)、口腔(例えば舌下)、局所(すなわち皮膚および/または気道表面を含む粘膜表面のいずれかによる投与)、髄腔内、関節内、胸膜内(intraplural)、大脳内、動脈内、腹腔内、経口、リンパ内、鼻腔内、経直腸または経膣投与、局所カテーテルを介した灌流による、または直接的病巣内注射による投与を含む、任意の適切な投与経路用に処方され得る。
【0138】
本発明の処方物は、意図される用途のために有効な量のADCCエンハンサー分子を含有する。特定の投薬量はまた、患者の年齢、性別、種および/または状態を含む多くの他の因子に基づいて選択される。有効量はまた、インビトロ試験系または動物モデルから誘導される用量反応曲線から推定することができる。
【0139】
特定の実施形態では、ADCCエンハンサー分子の用量はmg/kg体重の単位で測定される。他の実施形態では、用量はmg/kg除脂肪体重(すなわち体重−体脂肪含有量)の単位で測定される。他の実施形態では、用量はmg/m
2体表面積の単位で測定される。他の実施形態では、用量は、患者に投与される用量あたりのmg単位で測定される。用量の任意の測定を本発明の組成物および方法と共に使用することができ、投薬量単位を当分野で標準的な手段によって変換することができる。
【0140】
一部の実施形態では、ADCCエンハンサー分子の用量は0.1〜10mg/m
2(例えば0.1〜3.9mg/m
2、0.1〜1mg/m
2、0.1〜2mg/m
2、0.1〜4mg/m
2、2〜4mg/m
2、2〜6mg/m
2、2〜8mg/m
2)である。これは、0.003mg/m
2、0.1mg/m
2、1mg/m
2、2mg/m
2、3mg/m
2、4mg/m
2、5mg/m
2、6mg/m
2、7mg/m
2、8mg/m
2およびその間の点を含む。投与の頻度は、好ましくは7〜21日ごとに1回(例えば7、10、14、18、21日ごとに1回)である。一部の実施形態では、投与の頻度は、好ましくは7〜21日ごとに1回、2回または3回(例えば7、10、14、18、21日ごとに1回)である。ADCCエンハンサー分子は、疾患の進行または許容され得ない毒性に至るまで与えられ得る。一部の実施形態では、2〜20用量(例えば2、4、6、8、10、12、14、16、18、20用量)が与えられる。好ましい投与経路は皮下である。
【0141】
本発明の方法において使用できる投薬レジメンの例には、毎日、週3回(間欠的)、週1回または14日ごとが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、投薬レジメンには、月1回の投薬または6〜8週間ごとの投薬が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、本発明のADCCエンハンサー分子処方物は、被験体、好ましくはヒト被験体において癌または感染性疾患の処置のために適切な処置様式と組み合わせて週1回または2週間に1回、皮下注射によって投与される。
【0142】
ADCCエンハンサー分子の例示的な用量は、被験体のキログラム当たりのミリグラム量を含む。1つの実施形態では、用量は、約0.02〜10mg/kg体重または約0.04〜5mg/kg体重である。具体的な実施形態では、投薬量は、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kg被験体体重である。
【0143】
癌または感染性疾患を処置するための方法の特定の実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、約0.02〜10mg/kg被験体体重または約0.04〜5mg/kg被験体体重の用量で被験体に投与される。詳細な実施形態では、ADCCエンハンサー分子は、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kg被験体体重の用量で投与される。あるさらなる実施形態では、ADCCエンハンサー分子処方物は、週1回または2週間に1回の頻度で被験体に投与される。具体的な実施形態では、1日量は、少なくとも0.05mg、0.50mg、1.0mg、5.0mg、10mg、15mg、20mg、30mgまたは少なくとも50mgである。
【0144】
皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外または静脈内投与についての推奨される投薬量は、約0.02〜10mg/kg体重/日の範囲である。局所投与についての適切な用量は、投与面積に応じて約0.001mg〜約50mg/kg体重/日の範囲である。当業者は、維持レジメンと比較して初期処置に関しては一般に投薬量がより高いおよび/または投与頻度がより高いことを認識する。
【0145】
キット
本発明は、液体または凍結乾燥されたADCCエンハンサー分子を充填した1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。好ましい実施形態では、液体または凍結乾燥処方物は無菌である。1つの実施形態では、キットは、1つ以上の容器中に、ADCCエンハンサー分子の液体または凍結乾燥処方物および癌またはB細胞障害の処置のために有用な1つ以上の他の予防薬または治療薬を含む。1つ以上の他の予防薬または治療薬は、ADCCエンハンサー分子と同じ容器中に存在し得るかまたは1つ以上の他の容器中に存在し得る。好ましくは、ADCCエンハンサー分子は、約0.5mg/ml〜約50mg/ml、約1mg/ml〜約40mg/mlまたは約2mg/ml〜約15mg/mlの濃度で処方され、処方物は皮内、経皮、皮下または筋肉内経路による投与に適する。あるいは、ADCCエンハンサー分子は静脈内投与用に処方される。ADCCエンハンサー分子はまた、例として、鼻(例えばエアロゾルによる)、口腔(例えば舌下)、局所(すなわち皮膚および/または気道表面を含む粘膜表面のいずれかによる投与)、髄腔内、関節内、胸膜内、大脳内、動脈内、腹腔内、経口、リンパ内、鼻腔内、経直腸または経膣投与、局所カテーテルを介した灌流による、または直接的病巣内注射による投与を含む、任意の適切な投与経路用に処方され得る。好ましくは、キットは、単位剤形のADCCエンハンサー分子を含む。最も好ましくは、単位剤形は、処置される被験体の体重kg当たり約0.02〜10mgまたは約0.04〜5mgの単位用量を提供するのに適した形態である。
【0146】
特定の実施形態では、キットは、1つ以上の治療用モノクローナル抗体、例えばリツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、エプラツズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ラベツズマブ、セビルマブ、ツブリマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブおよびクレノリキシマブをさらに含むが、これらに限定されない。キットはまた、1つ以上の化学療法剤も含み得る。本発明のキットは、癌の処置における使用(例えば本発明の液体処方物を単独でまたは別の予防薬もしくは治療薬と組み合わせて使用する)のための指示、ならびに副作用および1つ以上の投与経路についての投薬量情報をさらに含む。必要に応じて、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって定められた形態の通知がそのような容器(複数可)に付随し、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売の政府機関による承認を反映する。
【0147】
組成物
また、ADCCエンハンサー分子および治療用抗体を含有する組成物も本発明に含まれる。治療用抗体は、例えばリツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、エプラツズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ラベツズマブ、セビルマブ、ツブリマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブまたはクレノリキシマブであるが、これらに限定されない。
【0148】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。紛争の場合は、定義を含め本明細書が優先する。加えて、材料、方法および例は単なる説明であり、限定を意図するものではない。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記載および特許請求の範囲から明らかである。
【0149】
「投与」、「投与する」、「同時投与」または「同時投与する」という用語は、活性物質の同時投与と逐次投与の両方を指す。
【0150】
本発明の文脈の範囲内で「被験体」または「患者」は、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。被験体は雄性または雌性であり得る。
【0151】
本明細書で使用される場合、「ADCC活性」は、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、活性化マクロファージ等のようなエフェクター細胞の表面に存在するFc受容体に抗体のFc領域が結合することを介してエフェクター細胞を活性化することにより、標的細胞(例えば腫瘍細胞)に損傷を与える活性を指す。本発明の抗体の活性にはADCC活性が含まれる。ADCC活性の測定および抗腫瘍実験は、当分野で公知の任意のアッセイを用いることによって実施することができる。
【0152】
「抗体依存性細胞性細胞傷害を増強する」、「ADCCを増強する」(例えば細胞に言及して)、または「ADCCを増大させる」という用語は、治療用抗体およびADCCエンハンサー分子と接触した場合、治療用抗体単独との接触における同じ細胞の細胞死滅と比較して、細胞溶解の何らかの測定可能な増大を含むことが意図されている。例えば、細胞溶解の増大は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、325%、400%または500%であり得る。
【0153】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一結合特異性および親和性を示す。
【0154】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指すことが意図されている。さらに、抗体が定常領域を含む場合は、定常領域もヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によってまたはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。
【0155】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一結合特異性を示す抗体を指す。1つの実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。本明細書で使用される場合、「ヒトモノクローナル抗体」という用語はまた、組換え手段によって調製される、発現される、作製されるまたは単離されるすべてのヒト抗体、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルである動物(例えばマウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体(以下でさらに説明する)、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製された、発現された、作製されたまたは単離された抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域とCDR領域がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。特定の実施形態では、しかし、そのような組換えヒト抗体をインビトロ変異誘発(または、ヒトIg配列に関してトランスジェニックである動物が使用される場合は、インビボ体細胞変異誘発)に供することができ、したがって、組換え抗体のV
HおよびV
L領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列V
HおよびV
L配列に由来し、かつ関連するが、インビボでのヒト抗体生殖細胞系列レパートリ内に天然には存在しない場合がある配列である。
【0156】
「ヒト化抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を指すことが意図されている。さらなるフレームワーク領域の改変をヒトフレームワーク配列内で行い得る。
【0157】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列がある1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指すことが意図されている。
【0158】
「変異した遺伝子」または「変異」または「機能的変異」または「変異体」は、変異した遺伝子を有さない被験体と比べて変異した遺伝子を有する被験体の表現型を変化させることができる、遺伝子の対立遺伝子形態を指す。変異によって引き起こされる変化した表現型は、特定の作用物質によって修正または補償することができる。被験体が変化した表現型を有するためにこの変異に関してホモ接合でなければならない場合、その変異は劣性であると言われる。変異した遺伝子の1つのコピーが被験体の表現型を変化させるのに十分である場合、その変異は優性であると言われる。被験体が1コピーの変異した遺伝子を有し、ホモ接合被験体のものとヘテロ接合被験体のものとの中間(その遺伝子に関して)である表現型を有する場合、その変異は相互優性であると言われる。
【0159】
「多型」という用語は、2つ以上の形態の遺伝子またはその部分(例えば対立遺伝子改変体)の共存を指す。少なくとも2つの異なる形態、すなわち2つの異なるヌクレオチド配列が存在する遺伝子の部分は、「遺伝子の多型領域」と称される。遺伝子の多型領域の特定の遺伝子配列が対立遺伝子である。多型領域は、異なる対立遺伝子ではその同一性が異なる、単一ヌクレオチドであり得る。多型領域はまた、数ヌクレオチド長であり得る。
【0160】
「野生型対立遺伝子」という用語は、被験体において2コピーで存在する場合、野生型表現型を生じさせる遺伝子の対立遺伝子を指す。ある遺伝子におけるある種のヌクレオチド変化は、ヌクレオチド変化を有する2コピーの遺伝子を有する被験体の表現型に影響を及ぼさないことがあるので、特定の遺伝子のいくつかの異なる野生型対立遺伝子が存在し得る。
【0161】
本開示全体を通して使用される場合、単数形態の「1つ(a)」または「1つ(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに別のことを示していない限り、複数の言及を包含する。したがって、例えば、「1つの組成物」への言及は、複数のそのような組成物ならびに単一組成物を含み、また「1つの治療薬」への言及は、1つ以上の治療薬および/または薬剤ならびに当業者に公知のその等価物への言及である、等々である。したがって、例えば、「1つの宿主細胞」への言及は、複数のそのような宿主細胞を含み、また「1つの抗体」への言及は、1つ以上の抗体および当業者に公知のその等価物への言及である、等々である。さらに、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と共に使用される場合の「1つ(a)」または「1つ(an)」という語の使用は、「1つ(one)」を意味するが、また「1つ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多い」の意味とも一致する。
【0162】
本出願全体を通して、「約(about)」という用語は、ある値が、その値を決定するために使用されているデバイスまたは方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0163】
特許請求の範囲における「または(or)」という用語の使用は、どれか一方だけを指すことが明白に示されていない限りまたはどれか一方が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、どれか一方だけならびに「および/または」を指すという定義を支持する。
【0164】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの任意の形態の「含む(comprising)」)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの任意の形態の「有する(having)」)、「包含する(including)」(ならびに「包含する(includes)」および「包含する(include)」などの任意の形態の「包含する(including)」)または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの任意の形態の「含有する(containing)」)という語は、包括的または非制限的であり、付加的な、列挙されない要素または方法段階を除外しない。
【0165】
「有効量」という用語は、癌または細胞性疾患に罹患している動物、好ましくはヒトにおいて所望の抗癌作用、抗腫瘍作用または抗疾患作用を提供するのに十分な量を指す。所望の抗腫瘍作用には、限定されることなく、腫瘍成長の調節(例えば腫瘍成長の遅延)、腫瘍の大きさまたは転移の調節、特定の抗癌剤に関連する毒性および副作用の軽減、癌の臨床的障害または症状の改善または最小化、そのような処置の不在下で本来ならば予想される生存期間を超えて被験体の生存期間を延長させること、ならびに投与前にいかなる腫瘍形成も有さない動物における腫瘍成長の防止、すなわち予防的投与が含まれる。
【実施例】
【0166】
本発明の様々な実施形態の活性に実質的に影響を及ぼさない修正も、本明細書で提供される本発明の定義内で提供されることが理解される。したがって、以下の実施例は本発明を説明することを意図されるが、本発明を限定することは意図されない。特許請求される本発明を、その具体的な実施形態を参照して詳細に記載したが、様々な変更および修正を、特許請求される本発明の精神および範囲から逸脱することなくその本発明に行い得ることは当業者に明らかである。したがって、例えば、当業者は、通常の実験だけを用いて、本明細書に記載する特定の物質および手順に対する数多くの等価物を認識するまたは確認することができる。そのような等価物は本発明の範囲内であるとみなされ、以下の特許請求の範囲に包含される。
【実施例1】
【0167】
NK活性および遺伝的に抵抗性の集団におけるADCCを含むADCCを増強することによる、モノクローナル抗体療法の治療的有効性の増強
ADCCエンハンサー{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを含有する皮下処方物を実験のために使用した。{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドの構造は以下のとおりである:
【0168】
【化7】
PBMCの刺激:ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll(商標)密度勾配遠心分離によって単離し、2%熱不活化FBSを含むRPMIに再懸濁した。100万〜300万細胞/mLの濃度のPBMCを、加湿したCO
2インキュベータ内で10〜500nM ADCCエンハンサーと共に18〜72時間インキュベートした。活性化したPBMCを、次に、NKおよびADCCアッセイにおけるエフェクター細胞として使用した。
【0169】
NKおよびADCCアッセイ:ADCCエンハンサーで活性化したPBMCを、モノクローナル抗体で被覆したNK感受性標的細胞系K562または様々な腫瘍細胞の死滅を増強する能力に関して試験した。標的細胞を、暗い加湿CO
2インキュベータにおいて37℃で1時間、蛍光染料Calcein AMで標識した。標識した標的(2×10
5細胞/mL)を、次に、5μg/mLの濃度のHerceptin、RituxanおよびErbituxなどのモノクローナル抗体と共に4℃で30分間インキュベートし、その後非結合抗体を洗い流した。活性化したエフェクター細胞および標識した標的細胞を、暗い加湿CO
2インキュベータにおいてHBSS+Ca/Mg+5%FBSを含むアッセイ緩衝液中37℃で4時間、96ウエル組織培養プレートでインキュベートした。エフェクター細胞対標的細胞の比率(E:T比)は、例えば1:3〜1:100まで様々であった。インキュベーション終了のときに、細胞を遠心分離によってペレット化し、100μLの上清を96ウエル平底黒色プレート(Microfluor 1 Black Flat Bottom Microtiter Plates−Thermo/Fisher No.7605)に移した。蛍光マクロタイタープレートリーダーで蛍光を定量化した。特異的溶解%を、(試料蛍光−自発蛍光)×100/(100%蛍光−自発蛍光)として計算した。100%蛍光は、標識した標的細胞および0.1%Tween−20またはTriton X−100などの界面活性剤を含むウエルから決定した。自発蛍光は、アッセイ緩衝液および標的細胞を含むがエフェクター細胞を含まないウエルから決定した。
【0170】
結果
NK細胞の溶解機能がADCCエンハンサーによって増大されるかどうかを決定するため、一連の細胞傷害性試験を実施した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をADCCエンハンサーで刺激し、その後NK感受性標的細胞K562を溶解する能力に関して試験した。
図1に示すように、ADCCエンハンサーはK562標的細胞の溶解を用量依存的様式で増強した。緩衝液対照と共にインキュベートしたPBMCエフェクター細胞は標的細胞の20%未満しか溶解しなかったが、167nM ADCCエンハンサーで刺激しておいたPBMCは標的細胞の45%までを死滅させ、500nM ADCCエンハンサーで刺激しておいたPBMCは標的細胞の90%超を溶解した。
【0171】
NK感受性標的の直接溶解に加えて、ADCCエンハンサーで刺激したPBMCは抗体依存性細胞性細胞傷害を増強した。
図2に示すように、ADCCエンハンサーは、B細胞リンパ腫細胞系HS−SultanのRituxan媒介性ADCCを増強した。Rituxanで被覆したHS−Sultan細胞を刺激していないPBMCと共にインキュベートした場合、細胞死滅は、エフェクター細胞:標的細胞比(E:T比)の範囲にわたって9%〜約40%に及んだ。これに対し、Rituxanで被覆した標的細胞をADCCエンハンサーによって活性化しておいたPBMCと共にインキュベートした場合は、細胞死滅は80および90%と高かった。ADCCの増強は用量依存的であり、E:T比が上昇すると共に増大した。
【0172】
低レベルの腫瘍抗原しか発現しない一部の患者については、ADCCは効果がより低い。
図3に示すように、ADCCエンハンサーは、Herceptinで被覆した、高レベルのHer2neu腫瘍抗原を発現する乳癌細胞系SKBR3およびより低レベルの腫瘍抗原を発現する乳癌細胞系MDA−MB−231の両方からの標的細胞の溶解を増強した。Herceptinで被覆した細胞を刺激していないPBMCと共にインキュベートした場合、細胞死滅は、SKBR3細胞系では40%と高かったが、MDA−MB−231細胞系では15%未満(less that 15%)に過ぎなかった。ADCCエンハンサーによるPBMCの活性化は、両細胞系においてHerceptin媒介性ADCCを増強し、SKBR3標的の80%超(greater that 80%)およびMDA−MB−231標的の約40〜60%を死滅させた。応答は、エフェクター細胞を刺激するために使用したADCCエンハンサーの濃度およびエフェクター細胞:標的細胞の比率に依存した。
【実施例2】
【0173】
FcγRの多型および癌の処置
ADCCは、特異的受容体を介してモノクローナル抗体のFc部分に会合する、NK細胞を含む免疫エフェクター細胞を通して媒介される。FcRγ3aの158位およびFcRγ2aの131位などのこれらの受容体における一塩基多型を有する患者は、おそらく上記モノクローナル抗体に対する上記受容体のより低い親和性に起因するADCC不良から、臨床的予後がより不良である。これまでの試験は、IgG1に対するFcγR3A分子の親和性を変化させるFcγR3A分子の多型(158F/V)が、癌の処置において使用される一部のモノクローナル抗体(mAb)で認められる臨床効力を決定する重要な因子であることを見出した。この共通の多型がベースラインの抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)応答および/または本発明のADCCエンハンサー分子(化合物VTX−2337)に対する応答に影響を及ぼすかどうかを決定するため、ドナーからのPBMCを、それぞれFおよびVアイソフォームをコードする2つの対立遺伝子に関して遺伝子型決定し、インビトロで試験した。本発明者らは、FFまたはFV表現型を有する10名のドナーおよびVV表現型を有する5名のドナーを含む、15名のドナーからの刺激していないPBMCまたはVTX−2337で刺激したPBMCを使用してリツキシマブ媒介性ADCCを分析した。
【0174】
健常ドナーから血液を採取し、Ficoll勾配を用いてPBMCを単離した。PBMCを加湿5%CO
2インキュベータにおいて37℃で48時間、500nM VTX−2337の存在下で培養することにより、PBMCを活性化した。活性化PBMCを、次に、100:1の比率で負荷したリツキシマブ被覆HS−Sultan細胞と共に4時間インキュベートした。HS−Sultan細胞からの蛍光染料Calcein AMの放出を測定することによって溶解を測定した。
【0175】
図4に示すように、高親和性の遺伝子型を有する患者からの細胞におけるベースラインのADCCは約30%であり、その一方、親和性のより低い遺伝子型を有する患者からの細胞におけるベースラインのADCCは10%であった。ADCCエンハンサーでのPBMCの刺激は両方の患者においてADCCを増強した。低親和性の遺伝子型を有する患者では、ADCCは10%から30%に増大した。したがって、そのADCCエンハンサーは不良遺伝子型を「救済」し、ADCCを野生型遺伝子型のベースラインレベルまで増大させた。
【0176】
図5は、FFまたはFVドナーがVV表現型を有する個体よりも有意に低いリツキシマブ媒介性ADCC活性を有することを示す(FF/FVについては20.5±2.5%の特異的溶解、これに対しVVについては31.7±2.9%の特異的溶解、p=0.017)。PBMCを、標的腫瘍細胞と混合する前にVTX−2337で刺激した場合、生じるADCCのレベルは、FF/FV群およびVV群の両方で有意に増強された。ADCCは、低親和性FF/FV群では20.5±2.5%から40.0±4.1%に(p=0.0007)、および高親和性VV群では31.7±2.9%から55.5±2.6%に(p=0.0003)増強された。FF/FVドナーからの刺激したPBMCとVVドナーからの刺激していないPBMCの間に有意差はなく、このことは、VTX−2337の存在が、低親和性SNPを有するドナーからのADCCを、通常は高親和性ドナーからのPBMCによってのみ達成されるレベルまで増強し得ることを示している。