特許第6023713号(P6023713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キッセイ薬品工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023713
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】縮合へテロ環誘導体及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/048 20060101AFI20161027BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20161027BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 13/04 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C07D491/048CSP
   C07D495/04 103
   A61K31/407
   A61P43/00 123
   A61P19/06
   A61P13/12
   A61P43/00 111
   A61P13/04
   A61P19/02
【請求項の数】16
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-530058(P2013-530058)
(86)(22)【出願日】2012年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2012071330
(87)【国際公開番号】WO2013027801
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-183151(P2011-183151)
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104560
【氏名又は名称】キッセイ薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151231
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 伸子
(72)【発明者】
【氏名】清水 和夫
(72)【発明者】
【氏名】恩田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 雅人
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/022374(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/043401(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/126898(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/126901(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/113942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D487/00−491/22
C07D493/00−497/22
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、
環Uは、C6−10アリール又は5又は6員環ヘテロアリール;
mは、1〜2の整数(mが2であるとき、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい);
は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ、又はフッ素原子を有していてもよいC1−6アルキル;
環Qは、5員環へテロアリール;
nは、1〜3の整数(nが2又は3であるとき、これらのRは、互いに同一でも異なっていてもよい);
は、以下の(1)〜(8):
(1)水素原子;
(2)ハロゲン原子;
(3)水酸基;
(4)アミノ;
(5)シアノ;
(6)カルボキシ;
(7)カルバモイル;
(8)それぞれ独立して置換基群Aから選択される任意の基を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C2−7アシル、C1−6アルコキシカルボニル、C2−7アシルアミノ、C2−7アシル(C1−6アルキル)アミノ、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C1−6アルキルスルホニル(C1−6アルキル)アミノ、モノ又はジC1−6アルキルスルファモイル、C1−6アルキルチオ、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C5−8シクロアルケニル、5〜8員環へテロシクロアルケニル、C3−8シクロアルキルオキシ、C3−8シクロアルキルC1−6アルコキシ、モノ又はジC3−8シクロアルキルアミノ、C3−8シクロアルキル(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリール、5又は6員環ヘテロアリール、C6−10アリールオキシ、C6−10アリールC1−6アルコキシ、C6−10アリールアミノ、C6−10アリール(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリールカルボニル、C6−10アリールカルボニルアミノ、C6−10アリールカルボニル(C1−6アルキル)アミノ、5又は6員環ヘテロアリールオキシ、5又は6員環ヘテロアリールC1−6アルコキシ、5又は6員環ヘテロアリールアミノ又は5又は6員環ヘテロアリール(C1−6アルキル)アミノ;の何れかであり;
置換基群Aは、フッ素原子、塩素原子、水酸基、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ及びモノ又はジC1−6アルキルアミノ;である。〕で表される縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩
ここでプロドラッグは、前記(I)で表される化合物において、1以上の任意のアミノ基若しくは水酸基に、C1−6アルキル−CO−、C6−10アリール−CO−、C1−6アルキル−O−C1−6アルキレン−CO−、C1−6アルキル−OCO−C1−6アルキレン−CO−、C1−6アルキル−OCO−、C1−6アルキル−O−C1−6アルキレン−OCO−、C1−6アルキル−COO−C1−6アルキレン、C1−6アルキル−OCOO−C1−6アルキレン、C3−8シクロアルキル−OCOO−C1−6アルキレン及びアミノ酸からなる群から選択される基を有する化合物、又は1以上の任意のカルボキシ基に、C1−6アルキル、C1−6アルキル−COO−C1−6アルキレン、C1−6アルキル−OCOO−C1−6アルキレン、C3−8シクロアルキル−OCOO−C1−6アルキレン、2−ヒドロキシエチル、2−(ジメチルアミノ)エチル及び2−アミノ−2−メトキシカルボニルエチルからなる群から選択される基を有する化合物
【請求項2】
環Qが、フラン環、ピロール環又はチオフェン環である請求項1記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)で表される縮合ヘテロ環誘導体が、式(Ia)〜(Ic):
【化2】
〔式中、
Yは、硫黄原子又は酸素原子;
1aは、水素原子、フッ素原子、水酸基又はC1−6アルキル;
2a及びR2bは、それぞれ独立して、以下の(a1)〜(a3):
(a1)水素原子;
(a2)ハロゲン原子;
(a3)それぞれ置換基群Aから選択される任意の基を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C2−7アシル、C1−6アルコキシカルボニル、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C3−8シクロアルキルオキシ、モノ又はジC3−8シクロアルキルアミノ、C6−10アリール又は5又は6員環ヘテロアリール;の何れかであり;
環U及び置換基群Aは、請求項1と同じ意味;である。〕の何れかで表される化合物である、請求項2記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
Yが、硫黄原子;である請求項3記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
環Uが、ベンゼン環、ピリジン環又はチアゾール環である請求項1〜4の何れかに記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
式:
【化3】
で表される基が、式:
【化4】
〔式中、
1bは、水素原子又は水酸基;
1cは、水素原子又はメチル;である。〕の何れかで表される基である請求項5記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
式:
【化5】
で表される基が、式:
【化6】
〔式中のR1bは、請求項6と同じ意味;である。〕
で表される基である請求項6記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項8】
2a及びR2bが、それぞれ独立して以下の(b1)〜(b3):
(b1)水素原子;
(b2)ハロゲン原子;
(b3)それぞれフッ素原子を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C1−6アルコキシカルボニル、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C6−10アリール又は5又は6員環ヘテロアリール;の何れかである請求項3〜7の何れかに記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項9】
2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はフッ素原子を有していてもよいC1−6アルキル;である請求項8記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項10】
1a又はR1bが、水酸基;
2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子又はメチル;である請求項9記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項12】
高尿酸血症、痛風結節、痛風関節炎、高尿酸血症による腎障害及び尿路結石から選択される疾患の予防又は治療用である、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
高尿酸血症の予防又は治療用である、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
血清尿酸値低下薬である、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項15】
尿酸生成抑制薬である、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1〜10の何れかに記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品として有用な縮合へテロ環誘導体に関するものである。
【0002】
さらに詳しく述べれば、本発明は、キサンチンオキシダーゼ阻害活性を有し、血清尿酸値異常に起因する疾患の予防又は治療薬として有用な縮合へテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩等に関するものである。
【背景技術】
【0003】
尿酸はヒトにおける、プリン体代謝の最終産物である。多くの哺乳類では、ヒトと異なり、肝臓の尿酸酸化酵素(ウリカーゼ)により尿酸がさらにアラントインに分解され、腎臓より排泄される。ヒトにおける尿酸排泄の主な経路は腎臓であり、約2/3が尿中に排泄され、残りは糞便より排泄される。尿酸産生が過剰になったり、尿酸排泄が低下することにより高尿酸血症が起こる。高尿酸血症は、尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型及びその混合型に分類される。この高尿酸血症の分類は臨床上重要であり、治療薬の副作用軽減を考慮して、各分類における治療薬が選択されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
尿酸産生過剰型高尿酸血症では、尿中尿酸排泄量が増加しており、尿酸排泄促進薬の使用により尿中尿酸排泄量が更に増加すると、尿路結石の合併を引き起こす可能性がある。従って、原則として、尿酸産生過剰型には尿酸生成抑制薬(又は尿酸合成阻害薬とも呼ばれる、以下、「尿酸生成抑制薬」という)であるアロプリノールが使用される。
尿酸は食事由来及び内因性に産生されたプリン体より、最終的にキサンチンがキサンチンオキシダーゼによる酸化を受けて産生する。アロプリノールは、キサンチンオキシダーゼ阻害剤として開発され、医療現場で用いられている尿酸生成抑制薬である。しかしながら、アロプリノールは、高尿酸血症及びこれに起因する各種疾患への有効性が報告されている反面、中毒症候群(過敏性血管炎)、スティーブンス・ジョンソン症候群、剥脱性皮膚炎、再生不良性貧血、肝機能障害などの重篤な副作用も報告されている(例えば、非特許文献2参照)。この原因のひとつとして、アロプリノールが核酸類似構造を有し、ピリミジン代謝経路を阻害することが指摘されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0005】
一方、尿酸排泄低下型高尿酸血症では、尿酸の排泄が低下しており、尿酸と同じ機構により腎臓から排泄されるオキシプリノールを代謝物とするアロプリノールを使用すると、オキシプリノールの排泄も低下し、肝障害の頻度が増加することが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。従って、原則として、尿酸排泄低下型にはプロベネシド、ベンズブロマロン等の尿酸排泄促進薬が使用される。しかしながら、これらの尿酸排泄促進薬は胃腸障害や尿路結石などの副作用も発現する。特にベンズブロマロンは、特異体質患者の場合には、劇症肝炎を起こすこともあることが知られている(例えば、非特許文献5及び6参照)。
【0006】
このように、既存の尿酸生成抑制薬及び尿酸排泄促進薬ともに患者に対する使用制限や重篤な副作用が存在するといわれており、使いやすい高尿酸血症等の治療薬の開発が切望されている。
【0007】
尿酸は主として腎臓から排泄されるが、腎臓における尿酸の動態については、これまで腎皮質より調製した刷子縁膜小胞(BBMV)を用いた実験により研究されてきた(例えば、非特許文献7及び8参照)。ヒトにおいて尿酸は腎臓糸球体を自由に通過し、近位尿細管において尿酸の再吸収及び分泌の機構が存在することが明らかになっている(例えば、非特許文献9参照)。
【0008】
近年、ヒト腎臓尿酸トランスポーターをコードする遺伝子(SLC22A12)が同定された(例えば、非特許文献10参照)。本遺伝子によりコードされるトランスポーター(urate transporter 1、以下、「URAT1」という)はOATファミリーに属する12回膜貫通型の分子である。URAT1は腎臓に特異的にmRNAが発現し、更にヒト腎臓組織切片での近位尿細管管腔側における局在が認められた。アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた実験により、URAT1を介する尿酸の取り込みが示された。更にその尿酸取り込みは乳酸、ピラジンカルボン酸(PZA)、ニコチン酸などの有機アニオンとの交換により輸送され、尿酸排泄促進薬である、プロベネシド及びベンズブロマロンにより、URAT1を介した尿酸取り込みが阻害されることも明らかとなった。従って、膜小胞を用いた実験により予想されていた、urate/anion exchangerであることが強く示唆された。即ちURAT1が腎臓における尿酸再吸収において重要な役割を担う輸送体であることが明らかとなった(例えば、非特許文献10参照)。
【0009】
また、URAT1と疾患との関わりについても明らかとなっている。特発性腎性低尿酸血症は、腎臓における尿酸動態の異常により尿酸排泄が亢進し、血清尿酸値が低値を示す疾患である。この疾患においては、尿路結石や運動後急性腎不全の合併が多いことが知られている。この腎性低尿酸血症の原因遺伝子としてURAT1が同定された(例えば、非特許文献10参照)。以上のことからもURAT1が血清尿酸値の調節に関与していることが強く示唆される。
【0010】
従って、URAT1阻害活性作用を有する物質は、高い血清尿酸値が関与する疾患、すなわち、高尿酸血症、痛風結節、痛風関節炎、高尿酸血症による腎障害、尿路結石等の治療薬及び予防薬として有用である。
【0011】
高尿酸血症の治療に際して、尿酸生成抑制薬であるアロプリノールと尿酸排泄促進作用を有する薬剤との併用により、アロプリノール単独に比べ、より強力な血清尿酸値の低下が認められたことが報告されている(例えば、非特許文献11及び12参照)。すなわち、従来の単剤による治療で効果が十分でない場合には、尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬の併用により、より高い治療効果が期待できる。更に、尿酸排泄低下型高尿酸血症に対しては、血清尿酸値を低下させることにより尿中尿酸排泄量を減少させることができるため、尿酸排泄促進薬の単独治療による尿路結石の危険が軽減されると考えられる。また、混合型高尿酸血症に対しても、高い治療効果が期待できる。以上のように、尿酸生成抑制作用と尿酸排泄促進作用を併せ持つ薬剤は、非常に有用な高尿酸血症等の予防又は治療剤となると期待される。
【0012】
なお、キサンチンオキシダーゼ阻害作用とURAT1阻害作用とを併せ持つ化合物として、天然物のモリン(morin)が知られている(非特許文献13参照)。また、尿酸排泄促進作用を有する化合物として、ビアリール又はジアリールエーテル化合物が知られている(特許文献1参照)。
【0013】
キサンチンオキシダーゼ阻害活性を有する化合物としては、例えば、含窒素複素環化合物(例えば、特許文献2参照)、5,6−縮合へテロ環化合物である(アザ)インドール誘導体(例えば、特許文献3参照)等が知られているが、いずれの文献にも本発明のような5,5−縮合へテロ環化合物に関する記載も示唆もない。
【0014】
【特許文献1】特開2000−001431号公報
【特許文献2】国際公開2007/043401号パンフレット
【特許文献3】国際公開2008/126898号パンフレット
【0015】
【非特許文献1】谷口敦夫ほか1名、モダンフィジシャン、2004年、24巻 第8号,p.1309−1312
【非特許文献2】荻野和秀ほか2名、日本臨床、2003年、61巻増刊号1、p.197−201
【非特許文献3】Hideki Horiuchiほか6名、Life Science、2000年、66巻、21号、p.2051−2070
【非特許文献4】山中寿ほか2名、高尿酸血症と痛風、メディカルレビュー社出版、1994年、2巻、1号、p.103−111
【非特許文献5】Robert A Terkeltaub、N. Engl. J. Med.、2003年、349巻、p.1647−1655
【非特許文献6】Ming-Han H. Leeほか3名、Drug Safety、2008年、31巻、p.643−665
【非特許文献7】Francoise Roch-Ramelほか2名、Am. J. Physiol.、1994年、266巻(Renal Fluid Electrolyte Physiol. 35巻)、F797−F805
【非特許文献8】Francoise Roch-Ramelほか2名、J. Pharmacol. Exp. Ther.、1997年、280巻、p.839−845
【非特許文献9】Gim Gee Teng他2名、Drugs、2006年、66巻、p.1547−1563
【非特許文献10】Atsushi Enomotoほか18名、Nature、2002年、417巻、p.447−452
【非特許文献11】S Takahashiほか5名、Ann. Rheum. Dis.、2003年、62巻、p.572−575
【非特許文献12】M.D.Feherほか4名、Rheumatology、2003年、42巻、p.321−325
【非特許文献13】Zhifeng Yuほか2名、J. Pharmacol. Exp. Ther.、2006年、316巻、p.169−175
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、尿酸生成抑制作用を有する、血清尿酸値異常に起因する疾患の予防又は治療薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記式(I)で表される縮合へテロ環誘導体が、優れたキサンチンオキシダーゼ阻害活性を示し、血清尿酸値を顕著に低下させることから、新規な血清尿酸値異常に起因する疾患の予防又は治療薬となり得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0018】
即ち、本発明は、
〔1〕式(I):
【化1】
〔式中、
環Uは、C6−10アリール又は5又は6員環ヘテロアリール;
mは、1〜2の整数(mが2であるとき、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい);
は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ、又はフッ素原子を有していてもよいC1−6アルキル;
環Qは、5員環へテロアリール;
nは、1〜3の整数(nが2又は3であるとき、これらのRは、互いに同一でも異なっていてもよい);
は、以下の(1)〜(8):
(1)水素原子;
(2)ハロゲン原子;
(3)水酸基;
(4)アミノ;
(5)シアノ;
(6)カルボキシ;
(7)カルバモイル;
(8)それぞれ独立して置換基群Aから選択される任意の基を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C2−7アシル、C1−6アルコキシカルボニル、C2−7アシルアミノ、C2−7アシル(C1−6アルキル)アミノ、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C1−6アルキルスルホニル(C1−6アルキル)アミノ、モノ又はジC1−6アルキルスルファモイル、C1−6アルキルチオ、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C5−8シクロアルケニル、5〜8員環へテロシクロアルケニル、C3−8シクロアルキルオキシ、C3−8シクロアルキルC1−6アルコキシ、モノ又はジC3−8シクロアルキルアミノ、C3−8シクロアルキル(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリール、5又は6員環ヘテロアリール、C6−10アリールオキシ、C6−10アリールC1−6アルコキシ、C6−10アリールアミノ、C6−10アリール(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリールカルボニル、C6−10アリールカルボニルアミノ、C6−10アリールカルボニル(C1−6アルキル)アミノ、5又は6員環ヘテロアリールオキシ、5又は6員環ヘテロアリールC1−6アルコキシ、5又は6員環ヘテロアリールアミノ又は5又は6員環ヘテロアリール(C1−6アルキル)アミノ;の何れかであり;
置換基群Aは、フッ素原子、塩素原子、水酸基、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ及びモノ又はジC1−6アルキルアミノ;である。〕で表される縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
【0019】
〔2〕環Qが、フラン環、ピロール環又はチオフェン環である前記〔1〕記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
〔3〕式(I)で表される縮合ヘテロ環誘導体が、式(Ia)〜(Ic):
【化2】
〔式中、
Yは、硫黄原子又は酸素原子;
1aは、水素原子、フッ素原子、水酸基又はC1−6アルキル;
2a及びR2bは、それぞれ独立して、以下の(a1)〜(a3):
(a1)水素原子;
(a2)ハロゲン原子;
(a3)それぞれ置換基群Aから選択される任意の基を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C2−7アシル、C1−6アルコキシカルボニル、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C3−8シクロアルキルオキシ、モノ又はジC3−8シクロアルキルアミノ、C6−10アリール又は5又は6員環ヘテロアリール;の何れかであり;
環U及び置換基群Aは、前記〔1〕と同じ意味;である。〕の何れかで表される化合物である、前記〔2〕記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
【0020】
〔4〕Yが、硫黄原子;である前記〔3〕記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
〔5〕環Uが、ベンゼン環、ピリジン環又はチアゾール環である前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
〔6〕式:
【化3】
で表される基が、式:
【化4】
〔式中、
1bは、水素原子又は水酸基;
1cは、水素原子又はメチル;である。〕の何れかで表される基である前記〔5〕記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
【0021】
〔7〕式:
【化5】
で表される基が、式:
【化6】
〔式中のR1bは、前記〔6〕と同じ意味;である。〕
で表される基である前記〔6〕記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
〔8〕R2a及びR2bが、それぞれ独立して以下の(b1)〜(b3):
(b1)水素原子;
(b2)ハロゲン原子;
(b3)それぞれフッ素原子を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C1−6アルコキシカルボニル、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C6−10アリール又は5又は6員環ヘテロアリール;の何れかである前記〔3〕〜〔7〕の何れかに記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
【0022】
〔9〕R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はフッ素原子を有していてもよいC1−6アルキル;である前記〔8〕記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
〔10〕R1a又はR1bが、水酸基(なお、R1a又はR1bが水酸基とは、定義中、R1aが用いられている場合は、R1aが水酸基、R1bが用いられている場合は、R1bが水酸基であることを意味する。);
2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子又はメチル;である前記〔9〕記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩;
〔11〕前記〔1〕〜〔10〕の何れかに記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物;
【0023】
〔12〕高尿酸血症、痛風結節、痛風関節炎、高尿酸血症による腎障害及び尿路結石から選択される疾患の予防又は治療用である、前記〔11〕記載の医薬組成物;
〔13〕高尿酸血症の予防又は治療用である、前記〔12〕記載の医薬組成物;
〔14〕血清尿酸値低下薬である、前記〔12〕記載の医薬組成物;
〔15〕尿酸生成抑制薬である、前記〔12〕記載の医薬組成物;
〔16〕前記〔1〕〜〔10〕の何れかに記載の縮合ヘテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するキサンチンオキシダーゼ阻害剤;等に関するものである。
【0024】
本発明において各用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0025】
「C1−6アルキル」とは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基をいい、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられる。
「C2−6アルケニル」とは、炭素数2〜6の直鎖状又は分岐状のアルケニル基をいい、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル等が挙げられる。
「C2−6アルキニル」とは、炭素数2〜6の直鎖状又は分岐状のアルキニル基をいい、例えば、エチニル、2−プロピニル等が挙げられる。
「C1−6アルコキシ」とは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基をいい、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等が挙げられる。
「モノ又はジC1−6アルキルアミノ」とは、上記C1−6アルキルでモノ又はジ置換されたアミノ基をいう。
「C2−7アシル」とは、(C1−6アルキル)−C(O)−で表される基をいい、アセチル、プロピオニル等が挙げられる。
「C1−6アルコキシカルボニル」とは、(C1−6アルコキシ)−C(O)−で表される基をいい、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。
「C2−7アシルアミノ」とは、(C1−6アルキル)−C(O)NH−で表される基をいう。
「C2−7アシル(C1−6アルキル)アミノ」とは、上記C2−7アシルと上記C1−6アルキルで置換されたアミノ基をいう。
「モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル」とは、上記C1−6アルキルでモノ又はジ置換されたカルバモイル基をいう。
「C1−6アルキルスルホニル」とは、(C1−6アルキル)−SO−で表される基をいい、メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル、ブタンスルホニル等が挙げられる。
「C1−6アルキルスルホニルアミノ」とは、(C1−6アルキル)−SO−NH−で表される基をいい、メタンスルホニルアミノ、エタンスルホニルアミノ、プロパンスルホニルアミノ、ブタンスルホニルアミノ等が挙げられる。
「C1−6アルキルスルホニル(C1−6アルキル)アミノ」とは、上記C1−6アルキルスルホニルと上記C1−6アルキルで置換されたアミノ基をいう。
「モノ又はジC1−6アルキルスルファモイル」とは、上記C1−6アルキルでモノ又はジ置換されたスルファモイル基をいう。
「C1−6アルキルチオ」とは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキルチオ基をいい、メチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。
「C3−8シクロアルキル」とは、3〜8員環の飽和環状炭化水素基をいい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
【0026】
「3〜8員環ヘテロシクロアルキル」とは、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を1〜2個環内に含む3〜8員環のヘテロシクロアルキル基をいい、2−ピロリジニル、4−ピペリジル、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロピラニル等が挙げられる。
「C5−8シクロアルケニル」とは、5〜8員環のシクロアルケニル基をいい、シクロペンテニル、シクロへキセニル等が挙げられる。
「5〜8員環へテロシクロアルケニル」とは、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を1〜2個環内に含む5〜8員環のヘテロシクロアルケニル基をいい、2,3−ジヒドロフリル、2,5−ジヒドロフリル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラニル等が挙げられる。
「C3−8シクロアルキルオキシ」とは、(C3−8シクロアルキル)−O−で表される基をいい、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロへキシルオキシ等が挙げられる。
「C3−8シクロアルキルC1−6アルコキシ」とは、上記C3−8シクロアルキルで置換された上記C1−6アルコキシ基をいう。
「モノ又はジC3−8シクロアルキルアミノ」とは、上記C3−8シクロアルキルでモノ又はジ置換されたアミノ基をいう。
「C3−8シクロアルキル(C1−6アルキル)アミノ」とは、上記C3−8シクロアルキルと上記C1−6アルキルで置換されたアミノ基をいう。
「C6−10アリール」とは、フェニル、ナフチルをいう。
「5又は6員環へテロアリール」とは、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される任意のヘテロ原子を1〜4個環内に含む5又は6員環の芳香族複素環基をいい、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル等が挙げられる。
「5員環へテロアリール」とは、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される任意のヘテロ原子を1〜3個環内に含む5員環の芳香族複素環基をいい、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール等が挙げられる。
「C6−10アリールオキシ」とは、(C6−10アリール)−O−で表される基をいい、フェニルオキシ等が挙げられる。
【0027】
「C6−10アリールC1−6アルコキシ」とは、上記C6−10アリールで置換された上記C1−6アルコキシ基をいう。
「C6−10アリールアミノ」とは、(C6−10アリール)−NH−で表される基をいう。
「C6−10アリール(C1−6アルキル)アミノ」とは、上記C6−10アリールと上記C1−6アルキルで置換されたアミノ基をいう。
「C6−10アリールカルボニル」とは、(C6−10アリール)−C(O)−で表される基をいい、ベンゾイル基等が挙げられる。
「C6−10アリールカルボニルアミノ」とは、(C6−10アリール)−C(O)NH−で表される基をいう。
「C6−10アリールカルボニル(C1−6アルキル)アミノ」とは、上記C6−10アリールカルボニルと上記C1−6アルキルで置換されたアミノ基をいう。
「5又は6員環へテロアリールオキシ」とは、(5又は6員環へテロアリール)−O−で表される基をいう。
「5又は6員環へテロアリールC1−6アルコキシ」とは、上記5又は6員環へテロアリールで置換されたC1−6アルコキシ基をいう。
「5又は6員環へテロアリールアミノ」とは、(5又は6員環へテロアリール)−NH−で表される基をいう。
「5又は6員環へテロアリール(C1−6アルキル)アミノ」とは、上記5又は6員環へテロアリールと上記C1−6アルキルで置換されたアミノ基をいう。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子をいう。
「C1−6アルキレン」とは、上記C1−6アルキルから派生する2価の基をいう。
「フッ素原子を有していてもよい」とは、置換基として1〜5個のフッ素原子を有していてもよいことをいう。なお、フッ素原子を有していてもよい基がメチル、メトキシ、N−メチルアミノである場合は、1〜3個のフッ素原子を有していてもよいことをいう。
「置換基群Aから選択される任意の基を有していてもよい」とは、置換基群Aから選択される同一又は異なる基を1〜3個有していてもよいことをいい、無置換又は1個有するのが好ましい。但し、置換基群Aから選択される基がフッ素原子である場合は、上記、「フッ素原子を有していてもよい」と同義である。
【0028】
本発明の式(I)で表される縮合へテロ環誘導体は、例えば、以下の実施例に記載の方法もしくはそれに準じた方法、又はその他文献記載の方法もしくはそれらに準じた方法等に従い製造することもできる。尚、保護基が必要な場合は、常法(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(第4版)に記載の方法)に従い、適宜導入及び脱離の操作を組み合わせて実施することもできる。各反応の加熱には、必要に応じて、マイクロ波の照射を利用してもよい。
【0029】
本発明において使用される保護基としては、一般的に有機合成反応において用いられる各種の保護基を用いることができる。例えば、水酸基の保護基としては、p−メトキシベンジル基、ベンジル基、メトキシメチル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、アリル基等の他、2つの水酸基が隣接する場合は、イソプロピリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等を挙げることができる。チオール基の保護基としては、p−メトキシベンジル基、ベンジル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基等を挙げることができる。アミノ基の保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、トリフルオロアセチル基、アセチル基、フタロイル基等を挙げることができる。カルボキシ基の保護基としては、C1−6アルキル基、ベンジル基、tert−ブチルジメチルシリル基、アリル基等を挙げることができる。
【0030】
本発明の式(I)で表される化合物は、慣用の分離手段である分別再結晶法、クロマトグラフィーを用いた精製法、溶媒抽出法、固相抽出法等により単離精製することができる。
【0031】
本発明の式(I)で表される縮合へテロ環誘導体は、常法により、その薬理学的に許容される塩とすることができる。このような塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸との酸付加塩、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、安息香酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、リチウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩、N−メチル−D−グルカミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、2−アミノエタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルギニン、リジン、ピペラジン、コリン、ジエチルアミン、4−フェニル−シクロヘキシルアミン等の有機塩基との付加塩等を挙げることができる。
【0032】
本発明の式(I)で表される縮合へテロ環誘導体のうち、不斉炭素原子を有する化合物には、1つの不斉炭素につきそれぞれR配置の化合物及びS配置の化合物が存在するが、本発明においてはいずれの光学異性体を使用してもよく、それらの光学異性体の混合物であっても構わない。
【0033】
本発明の式(I)で表される縮合へテロ環誘導体には、種々の互変異性体が存在することがあるが、本発明の化合物にはそれらの互変異性体も含まれる。
【0034】
本発明において、プロドラッグとは、生体内において式(I)で表される化合物に変換される化合物をいう。本発明の式(I)で表される化合物のプロドラッグは、対応するハロゲン化物等のプロドラッグ化試薬を用いて、常法により、式(I)で表される化合物における水酸基、アミノ基、カルボキシ基、その他プロドラッグ化の可能な基から選択される1以上の任意の基に、常法に従い適宜プロドラッグを構成する基を導入した後、所望に応じ、適宜常法に従い単離精製することにより製造することができる(「月刊薬事 医薬品適正使用のための臨床薬物動態」,2000年3月臨時増刊号,第42巻,第4号,p.669−707、「新・ドラッグデリバリーシステム」,株式会社シーエムシー発行,2000年1月31日,p.67−173参照)。
本発明において、プロドラッグは、好ましくは、水酸基又はカルボキシ基にプロドラッグを構成する基を有する化合物であり、より好ましくは、カルボキシ基にプロドラッグを構成する基を有する化合物である。
【0035】
アミノ基において使用されるプロドラッグを構成する基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル等のC1−6アルキル−CO−;ベンゾイル等のC6−10アリール−CO−;C1−6アルキル−O−C1−6アルキレン−CO−;C1−6アルキル−OCO−C1−6アルキレン−CO−;メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル等のC1−6アルキル−OCO−;C1−6アルキル−O−C1−6アルキレン−OCO−;アセチルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、1−(アセチルオキシ)エチル、1−(ピバロイルオキシ)エチル等のC1−6アルキル−COO−C1−6アルキレン;メチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(メチルオキシカルボニルオキシ)エチル、エチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(エチルオキシカルボニルオキシ)エチル、イソプロピルオキシカルボニルオキシメチル、1−(イソプロピルオキシカルボニルオキシ)エチル、tert−ブチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(tert−ブチルオキシカルボニルオキシ)エチル等のC1−6アルキル−OCOO−C1−6アルキレン;シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル等のC3−8シクロアルキル−OCOO−C1−6アルキレン;グリシン等のアミノ酸とのエステル及びアミド;等を挙げることができる。
【0036】
水酸基において使用されるプロドラッグを構成する基としては、上記アミノ基において使用されるプロドラッグを構成する基を挙げることができ、好ましくは、C1−6アルキル−CO−;C1−6アルキル−OCOO−C1−6アルキレン;又はC3−8シクロアルキル−OCOO−C1−6アルキレンであり、より好ましくは、アセチル、1−(メチルオキシカルボニルオキシ)エチル、エチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(エチルオキシカルボニルオキシ)エチル、1−(イソプロピルオキシカルボニルオキシ)エチル又は1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチルである。
【0037】
カルボキシ基において使用されるプロドラッグを構成する基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル等のC1−6アルキル;ピバロイルオキシメチル、アセチルオキシメチル、1−(ピバロイルオキシ)エチル、1−(アセチルオキシ)エチル等のC1−6アルキル−COO−C1−6アルキレン;メチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(メチルオキシカルボニルオキシ)エチル、エチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(エチルオキシカルボニルオキシ)エチル、イソプロピルオキシカルボニルオキシメチル、1−(イソプロピルオキシカルボニルオキシ)エチル、tert−ブチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(tert−ブチルオキシカルボニルオキシ)エチル等のC1−6アルキル−OCOO−C1−6アルキレン;シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル等のC3−8シクロアルキル−OCOO−C1−6アルキレン;2−ヒドロキシエチル;2−(ジメチルアミノ)エチル;2−アミノ−2−メトキシカルボニルエチル等を挙げることができ、好ましくは、C1−6アルキル、C1−6アルキル−OCOO−C1−6アルキレン又はC3−8シクロアルキル−OCOO−C1−6アルキレンであり、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、1−(メチルオキシカルボニルオキシ)エチル、1−(エチルオキシカルボニルオキシ)エチル、1−(イソプロピルオキシカルボニルオキシ)エチル又は1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチルである。
【0038】
本発明において、薬理学的に許容される塩には、水又はエタノール等の薬理学的に許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0039】
本発明の医薬組成物は、高尿酸血症、痛風結節、痛風関節炎、高尿酸血症による腎障害、尿路結石などの高い血清尿酸値が関与する疾患の予防又は治療に有用であり、特には、高尿酸血症に有用である。
【0040】
本発明の医薬組成物を実際の予防又は治療に用いる場合、その有効成分である式(I)で表される化合物もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩の投与量は、患者の年齢、性別、体重、疾患及び治療の程度等により適宜決定されるが、例えば、経口投与の場合成人1日当たり概ね1〜2000mg、より好ましくは、10〜200mgの範囲で、非経口投与の場合成人1日当たり概ね0.5〜1000mg、より好ましくは、5〜100mgの範囲で、一回又は数回に分けて投与することができる。
【0041】
本発明の医薬組成物を実際の予防又は治療に用いる場合、用法に応じ、経口的又は非経口的に種々の剤型のものが使用されるが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤などの経口投与製剤が好ましい。
【0042】
これらの医薬組成物は、その剤形に応じ薬剤学的に公知の手法に従い、適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤などの医薬品添加物と適宜混合することにより製剤化することができる。
【0043】
例えば、散剤は、有効成分に必要に応じ、適当な賦形剤、滑沢剤などを加え、よく混和して散剤とする。例えば、錠剤は、有効成分に、適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤などを加え、常法に従い打錠して錠剤とし、さらに必要に応じ、適宜コーティングを施し、フィルムコート錠、糖衣錠、腸溶性皮錠などにする。例えば、カプセル剤は、有効成分に、適当な賦形剤、滑沢剤などを加え、よく混和した後、又は常法に従い顆粒又は細粒とした後、適当なカプセルに充填してカプセル剤とする。さらに、このような経口投与製剤の場合は予防又は治療方法に応じて、速放性もしくは徐放性製剤とすることもできる。
【0044】
本発明の式(I)で表される化合物もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩に、他の高尿酸血症治療薬又は痛風治療薬を組み合せて使用することもできる。本発明において使用できる他の高尿酸血症治療薬としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム等の尿アルカリ化薬等を挙げることもできる。また他の痛風治療薬としてはコルヒチン、又はインドメタシン、ナプロキセン、フェンブフェン、プラノプロフェン、オキサプロジン、ケトプロフェン、エトリコキシブ、テノキシカム等の非ステロイド性抗炎症薬、及びステロイド等を挙げることもできる。他の高尿酸血症治療薬又は痛風治療薬を組み合せて使用する場合、本発明の有効成分と同時に配合した単一の医薬組成物を用いてもよく、本発明の有効成分を含有する医薬組成物とは別個に製造した医薬組成物として同時に又は間隔をずらして併用してもよい。また、本発明の有効成分以外の薬剤と組み合せて使用する場合、本発明の化合物の投与量は、組み合せて使用する他の薬剤の投与量に応じて減量することができ、場合により、上記疾患の予防又は治療上相加効果以上の有利な効果を得ることや、組み合せて使用する他の薬剤の副作用を回避又は軽減させることができる。
【0045】
本発明の一つの態様として、以下、式(I)で表される縮合へテロ環誘導体において、好ましいものを例示する。それぞれ独立でも、又は任意に組み合わせてもよい。
環Qは、好ましくはフラン環、ピロール環又はチオフェン環であり、より好ましくはフラン環又はチオフェン環であり、さらにより好ましくはチオフェン環である。
式(I)で表される縮合へテロ環誘導体は、好ましくは前記式(Ia)〜(Ic)で表される化合物である。
環Uは、好ましくはベンゼン環、ピリジン環又はチアゾール環であり、より好ましくはベンゼン環又ピリジン環であり、さらにより好ましくはベンゼン環である。
は、好ましくは独立して水素原子、フッ素原子、水酸基又はC1−6アルキルであり、より好ましくは水素原子、水酸基又はメチルである。
は、以下の(1)〜(8):
(1)水素原子;
(2)ハロゲン原子;
(3)水酸基;
(4)アミノ;
(5)シアノ;
(6)カルボキシ;
(7)カルバモイル;
(8)それぞれ独立して前記置換基群Aから選択される任意の基を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C2−7アシル、C1−6アルコキシカルボニル、C2−7アシルアミノ、C2−7アシル(C1−6アルキル)アミノ、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C1−6アルキルスルホニル(C1−6アルキル)アミノ、モノ又はジC1−6アルキルスルファモイル、C1−6アルキルチオ、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C5−8シクロアルケニル、5〜8員環へテロシクロアルケニル、C3−8シクロアルキルオキシ、C3−8シクロアルキルC1−6アルコキシ、モノ又はジC3−8シクロアルキルアミノ、C3−8シクロアルキル(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリール、5又は6員環ヘテロアリール、C6−10アリールオキシ、C6−10アリールC1−6アルコキシ、C6−10アリールアミノ、C6−10アリール(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリールカルボニル、C6−10アリールカルボニルアミノ、C6−10アリールカルボニル(C1−6アルキル)アミノ、5又は6員環ヘテロアリールオキシ、5又は6員環ヘテロアリールC1−6アルコキシ、5又は6員環ヘテロアリールアミノ又は5又は6員環ヘテロアリール(C1−6アルキル)アミノ;の何れかであり;
好ましくは独立して以下の(a1)〜(a3):
(a1)水素原子;
(a2)ハロゲン原子;
(a3)それぞれ前記置換基群Aから選択される任意の基を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C2−7アシル、C1−6アルコキシカルボニル、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C3−8シクロアルキルオキシ、モノ又はジC3−8シクロアルキルアミノ、C6−10アリール又は5又は6員環ヘテロアリール;の何れかであり;
より好ましくは独立して以下の(b1)〜(b3):
(b1)水素原子;
(b2)ハロゲン原子;
(b3)それぞれフッ素原子を有していてもよい以下の基:C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、モノ又はジC1−6アルキルアミノ、C1−6アルコキシカルボニル、モノ又はジC1−6アルキルカルバモイル、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C6−10アリール又は5又は6員環ヘテロアリール;の何れかであり;
さらにより好ましくは独立して水素原子、ハロゲン原子、又はフッ素原子を有していてもよいC1−6アルキル;の何れかであり;
さらにより好ましくは独立して水素原子又はC1−6アルキルであり;
さらにより好ましくは水素原子又はメチルである。
但し、Rが環Qの窒素原子に結合している場合は、以下の何れかの基:C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−7アシル、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキルスルホニル、C3−8シクロアルキル、3〜8員環へテロシクロアルキル、C5−8シクロアルケニル、5〜8員環へテロシクロアルケニル、C6−10アリール、5又は6員環ヘテロアリール又はC6−10アリールカルボニル;である。
【0046】
また、本発明の一つの態様として、式(I)で表される縮合へテロ環誘導体は、下記一般式(IIa)で表される化合物である。
一般式(IIa):
【化7】
〔式中、好ましくは、R1bが水素原子又は水酸基;R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はフッ素原子を有していてもよいC1−6アルキル;であり;
より好ましくは、R1bが、水酸基;R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子又はメチル;である。〕
【0047】
また、本発明の一つの態様として、式(I)で表される縮合へテロ環誘導体は、下記一般式(IIb)で表される化合物である。
一般式(IIb):
【化8】
〔式中、好ましくは、R1bが水素原子又は水酸基;R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はフッ素原子を有していてもよいC1−6アルキル;であり;
より好ましくは、R1bが、水酸基;R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子又はメチル;である。〕
【0048】
また、本発明の一つの態様として、式(I)で表される縮合へテロ環誘導体は、下記一般式(IIc)で表される化合物である。
一般式(IIc):
【化9】
〔式中、好ましくは、R1bが水素原子又は水酸基;R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はフッ素原子を有していてもよいC1−6アルキル;であり;
より好ましくは、R1bが、水酸基;R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子又はメチル;である。〕
【0049】
また、本発明の別の一つの態様として、(i)環Uがベンゼン環である時、(Rは、好ましくはmが1で、Rが水酸基であるか、又はmが2で、一方のRが水酸基、他方のRがハロゲン原子であり、より好ましくはmが1で、Rが水酸基であり、
(ii)環Uがチアゾール環である時、(Rは、好ましくはmが1で、かつ、Rが水素原子又はメチルである。
これと独立して又はこれに加えて、(Rは、好ましくはnが1で、Rが水素原子、ハロゲン原子又はC1−6アルキルであるか、又はnが2で、一方のRがC1−6アルキル、他方のRが水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくはnが1で、Rが水素原子、ハロゲン原子又はC1−6アルキルであり、さらにより好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はメチルである。
【0050】
本発明の式(I)で表される縮合へテロ環誘導体において、別の好ましい態様の一つとしては、URAT1阻害活性をも有する化合物が挙げられる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の式(I)で表される縮合へテロ環誘導体は、優れたキサンチンオキシダーゼ阻害活性を発現して尿酸生成を抑制する。従って、本発明の式(I)で表される縮合へテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ又はその薬理学的に許容される塩は、血清尿酸値上昇を顕著に抑制することができ、高尿酸血症等の血清尿酸値異常に起因する疾患の予防又は治療薬として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の内容を以下の参考例、実施例及び試験例でさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。
【0053】
参考例1
2−アジド−3−(5−メチルチオフェン−2−イル)アクリル酸エチル
アジド酢酸エチル(10.6g)のメタノール(65mL)溶液に、氷冷下で20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液(27.2g)を加えた。同温で1時間撹拌した後、5−メチルチオフェン−2−カルバルデヒド(2.5g)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液及び水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=100/0−90/10)にて精製し、標記化合物(3.39g)を得た。
【0054】
参考例2
2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル
2−アジド−3−(5−メチルチオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(3.38g)をm−キシレン(30mL)に溶解させ、1時間加熱還流した。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣にヘキサンを加え懸濁洗浄した後、固体をろ取、乾燥し、標記化合物(2.56g)を得た。
【0055】
参考例3〜4
参考例2と同様の方法により、それぞれ対応する原料を用いて参考例3〜4の化合物を合成した。
【0056】
参考例5
6−ブロモ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル
2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル(1.0g)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、氷冷下でN−ブロモスクシンイミド(0.94g)を加えた。同温で1時間撹拌した後、反応混合物に水を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=97/3−76/24)にて精製し、標記化合物(0.96g)を得た。
【0057】
参考例6〜7
参考例5と同様の方法により、それぞれ対応する原料を用いて参考例6〜7の化合物を合成した。
【0058】
参考例8
6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル
6−ブロモ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル(0.96g)のN−メチルピロリドン(10mL)溶液に、シアン化亜鉛(1.17g)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.38g)を加え、マイクロウェーブ反応装置を用いて150℃で30分間撹拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した後、有機層を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(0.64g)を得た。
【0059】
参考例9〜10
参考例8と同様の方法により、それぞれ対応する原料を用いて参考例9〜10の化合物を合成した。
【0060】
参考例11
3−ブロモ−6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル
6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル(0.3g)、N−ブロモスクシンイミド(0.24g)及び酢酸(2.5mL)をクロロホルム(5.0mL)に溶解させ、室温で1時間撹拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分取した後減圧下濃縮した。得られた残渣をジエチルエーテルで懸濁洗浄して、乾燥し、標記化合物を(0.20g)を得た。
【0061】
参考例12
6−シアノ−2,3−ジメチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル
3−ブロモ−6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル(0.2g)の1,4−ジオキサン(4.0mL)溶液に、2,4,6−トリメチルボロキシン(0.64g)、ヨウ化銅(50mg)、リン酸三カリウム(0.27g)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.22g)を加え、マイクロウェーブ反応装置を用いて150℃で150分間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=76/24−55/45)にて精製し、標記化合物(0.13g)を得た。
【0062】
参考例13
6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸
6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸エチル(0.64g)のテトラヒドロフラン(8.0mL)、エタノール(4.0mL)及び水(6.0mL)の混合溶液に水酸化リチウム一水和物(1.14g)を加え、50℃で35時間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮した後、2mol/L塩酸(18mL)及び水を加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で12時間乾燥して標記化合物(0.59g)を得た。
【0063】
参考例14〜16
参考例13と同様の方法により、それぞれ対応する原料を用いて参考例14〜16の化合物を合成した。
【0064】
参考例17
6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール
6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール−5−カルボン酸(0.54g)のキノリン(10mL)溶液に銅粉末(33mg)を加え、マイクロウェーブ反応装置を用いて200℃で30分間撹拌した。反応溶液に水を加え、析出した不溶物をセライト(登録商標)によってろ過した。続いて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を1mol/L塩酸、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=74/26−53/47)にて精製し、標記化合物(0.37g)を得た。
【0065】
参考例18〜20
参考例17と同様の方法により、それぞれ対応する原料を用いて参考例18〜20の化合物を合成した。
【0066】
参考例21
4−(6−シアノ−2−メチル−チエノ[3,2−b]ピロール−4−イル)−2−メトキシメトキシ安息香酸メチル
6−シアノ−2−メチル−4H−チエノ[3,2−b]ピロール(0.37g)のトルエン(10mL)溶液に、4−ヨード−2−メトキシメトキシ安息香酸メチル(0.73g)、ヨウ化銅(43mg)、トランス−N,N−ジメチルシクロヘキサンジアミン(65mg)及び炭酸カリウム(0.66g)を加え、マイクロウェーブ反応装置を用いて170℃で20分間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=78/22−57/43)にて精製し、標記化合物(0.63g)を得た。
【0067】
参考例22〜24
参考例21と同様の方法により、それぞれ対応する原料を用いて参考例22〜24の化合物を合成した。
【0068】
参考例25
(3−ブロモチオフェン−2−イル)−アセトニトリル
3−ブロモ−2−ブロモメチルチオフェン(7.1g)及びシアン化カリウム(2.7g)をエタノール(93mL)及び水(17mL)に溶解させ、50℃で2時間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮した後、残渣に水を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=100/0−80/20)にて精製し、標記化合物(4.0g)を得た。
【0069】
実施例1
4−(6−シアノ−2−メチル−チエノ[3,2−b]ピロール−4−イル)−2−ヒドロキシ安息香酸
4−(6−シアノ−2−メチル−チエノ[3,2−b]ピロール−4−イル)−2−メトキシメトキシ安息香酸メチル(0.63g)のテトラヒドロフラン(10mL)、エタノール(5.0mL)及び水(5.0mL)の混合溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.22g)を加え、室温で4時間撹拌した。続いて反応溶液に1mol/L塩酸(10.6mL)を加え、50℃で5時間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮した後、残渣に水を加え、析出した固体をろ取し、水で洗浄した後、減圧下50℃で乾燥し、標記化合物(0.52g)を得た。
【0070】
実施例2〜4
実施例1と同様の方法により、それぞれ対応する原料を用いて実施例2〜4の化合物を合成した。
【0071】
実施例5
4−(6−シアノ−チエノ[3,2−b]ピロール−4−イル)−2−ヒドロキシ安息香酸
2−(3−ブロモチオフェン−2−イル)−アセトニトリル(1.0g)及びギ酸エチル(3.7g)のジメチルスルホキシド(5.0mL)溶液に、20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液(3.1mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液に2.5mol/L塩化水素エタノール溶液(3.6mL)を加え、続いて4−アミノサリチル酸(0.9g)を加え、50℃で5時間撹拌した。反応溶液に水を加え析出した固体をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下50℃で3時間乾燥させた。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ジクロロメタン/メタノール=87/13−78/22)にて精製し、縮合体(0.91g)を得た。
この縮合体(0.91g)のジメチルスルホキシド(4.5mL)溶液に、ヨウ化銅(47mg)、エチレングリコール(0.3g)及びリン酸三カリウム(1.1g)を加え、80℃で5時間撹拌した。反応溶液を50℃まで冷却した後、2mol/L塩酸(8.7mL)を加え、室温で1時間撹拌した。析出した固体をろ取した後、得られた固体をジメチルスルホキシド/水、1mol/L塩酸及び水で洗浄し、減圧下50℃で乾燥して標記化合物(0.45g)を得た。
【0072】
実施例6〜9
実施例5と同様の方法により、それぞれ対応する原料を用いて実施例6〜9の化合物を合成した。
【0073】
上記参考例化合物1〜25及び実施例化合物1〜9の化学構造式及びH−NMRデータを表1〜4に示す。
【0074】
表中の略号は、Ref.No.は参考例番号、Ex.No.は実施例番号、Strc.は化学構造式、Solv.はH−NMR測定溶媒、Etはエチル基、Meはメチル基、MOMOはメトキシメトキシ基を、それぞれ示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
試験例1
キサンチンオキシダーゼ阻害活性
(1)試験化合物の調製
試験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)(和光純薬社製)にて40mMの濃度になるように溶解した後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて希釈して目的の濃度になるように調製した。
(2)測定方法
キサンチンオキシダーゼ(ウシミルク由来、シグマ社製)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で0.02units/mLに調製し、96穴プレートに50μL/穴ずつ加えた。更にPBSを用いて希釈した試験化合物を50μL/穴ずつ加えた。PBSを用いて調製した200μMのキサンチン(和光純薬社製)を100μL/穴で加え、室温で10分間反応させた。290nmの条件下において、マイクロプレートリーダースペクトラマックスプラス384(モレキュラーデバイス社製)を用いて吸光度を測定した。キサンチンを加えない条件下での吸光度を0%とし、試験化合物を加えていない対照を100%として、50%抑制する試験化合物の濃度(IC50)を算出した(表5)。表中、Ex.No.は実施例番号を示す。
【0080】
【表5】
【0081】
試験例2
ヒトURAT1発現細胞を用いた尿酸輸送阻害活性
(1)使用細胞
URAT1発現HEK293細胞(ヒト URAT1 cDNAを含むベクターをトランスフェクションしたHEK293細胞)及びコントロール細胞(ベクターのみをトランスフェクションしたHEK293細胞)を使用した。
コラーゲンIコート24穴プレート(べクトンディッキンソン社製)に、URAT1発現細胞及びコントロール細胞を1〜4×10cells/穴の密度で播種し、COインキュベーター(37℃、CO:5%)中で1〜3日間培養した後、以下の尿酸輸送の測定を行った。なお、培養には9%ウシ胎児血清(Invitrogen社製)、抗生物質−抗真菌剤(Invitrogen社製)及び2 mmol/L L−グルタミンを含むDulbecco’s Modified Eagle Medium(Invitrogen社製)を用いた。
【0082】
(2)試験化合物の調製
14Cで標識された尿酸(14C尿酸)(American Radiolabeled Chemicals,Inc.製)をハンクス平衡塩溶液(HBSS)(Invitrogen社製)に溶解して、50 μMの14C尿酸を含むHBSSを調製した。試験化合物をDMSOに溶解した後、上記で作製した14C尿酸を含むHBSSで1000倍に希釈して、所定濃度の試験化合物含有14C尿酸溶液を調製した(最終DMSO濃度:0.1%)。対照として、0.1%DMSO含有14C尿酸溶液を調製した。
【0083】
(3)尿酸輸送の測定
細胞を播種したプレートから培地を除去した後、細胞にHBSS1 mLを加えた。HBSSを除去した後、細胞に新たにHBSS0.3 mLを加え、37℃で15分間インキュベーションした。HBSSを除去した後、0.1%DMSO含有14C尿酸溶液、又は試験化合物含有14C尿酸溶液0.3 mLを細胞に添加し、37℃で2分間インキュベーションした。インキュベーション後、その溶液を除去し、氷冷した0.2%BSA含有PBS 1 mLで1回、氷冷したPBS 1mLで2回細胞を洗浄した。PBSを除去した後、0.1 mol/LのNaOH水溶液 0.5 mLを各穴に加え細胞を溶解した。細胞溶解液 0.3 mLを各穴からガラスバイアルに移し、シンチレーター(Hionic−Flour、パーキンエルマー社製) 10 mLと混和し、液体シンチレーションカウンターで放射能活性を測定した。
【0084】
(4)タンパク質定量
BCA Protein Assay Kit(Pierce社製)を用いて、細胞溶解液中のタンパク質濃度を求め、さらにタンパク質量(mg/穴)を算出した。
【0085】
(5)各化合物の尿酸取り込み阻害率の算出
各穴における尿酸取り込み活性は以下の式より算出した。
尿酸取り込み活性(p mol/mg protein)=放射能活性(dpm/穴)/[タンパク質量(mg/穴)×14C尿酸を含むHBSS中の放射能活性濃度(dpm/p mol)]
阻害率は以下の式から算出した。
【0086】
阻害率(%)=[1−(B−C)/(A−C)]×100
A:0.1%DMSO存在下におけるURAT1発現HEK293細胞での尿酸取り込み活性
B:試験化合物存在下におけるURAT1発現HEK293細胞での尿酸取り込み活性
C:0.1%DMSO存在下におけるコントロール細胞での尿酸取り込み活性
【0087】
(6)結果
実施例9の化合物は、10μMの濃度において50%以上の阻害率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の式(I)で表される縮合へテロ環誘導体もしくはそのプロドラッグ、又はその薬理学的に許容される塩は、優れたキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有するので、尿酸生成抑制作用を示し、血清尿酸値を低下させることができる。それ故、本発明により、高尿酸血症、痛風結節、痛風関節炎、高尿酸血症による腎障害、尿路結石等の予防又は治療剤を提供することができる。