(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記設定注入量に対応するモータ回転量に前記第1のモータ回転量を加えたモータ回転量を前記エンコーダにより検出したとき、前記モータを逆回転させる、
請求項2に記載の薬剤注入装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
1 実施の形態1
1−1 構成
図1から
図4は、本実施の形態に係る薬剤注入装置100の一例を示す。
図1および
図2に示すように、薬剤注入装置100は、本体ケース1と、本体ケース1の一端側に設けられたシリンジ装着部2(シリンジ装着部の一例)と、本体ケース1の他端側に設けられた表示部3とを備える。薬剤注入装置100は更に、同他端側に設けられた、電源ボタン4、薬剤注入ボタン5(第2のモード起動スイッチの一例)、および設定ボタン7を有する。なお、図示されたボタンの数、位置、形状、大きさなどは一例であってこれに限定されるものではない。
【0013】
本体ケース1のシリンジ装着部2は、
図3、
図4に示す如く、シリンジカバー8が装着されるように構成されている。つまり、シリンジ装着部2には、シリンジカバー8内に収納されたシリンジ9が装着されるように構成されている。
シリンジ9は、先端側に注射針装着部10(注射針装着部の一例)、後端側にガスケット11(弾性部材の一例)を有する円筒状となっており、その内部には、各種病気に対する薬剤12が充填されている。
【0014】
また、本体ケース1内には、
図4に示すように、シリンジ装着部2に装着されたシリンジ9のガスケット11を注射針装着部10側に押圧するプランジャ13(プランジャの一例)と、このプランジャ13を送りねじ13aを介して駆動するモータ14(モータの一例)と、このモータ14の回転数(モータ回転量の一例)を検出するエンコーダ15(エンコーダの一例)と、モータ14に流れる電流を検出する電流検出センサ16(
図5参照)(電流検出センサの一例)と、これら電流検出センサ16、エンコーダ15などに接続された制御部17(
図5参照)(制御部の一例)と、この制御部17に接続されたメモリ18(
図5参照)と、を備えている。
【0015】
図5は、本実施の形態に係る薬剤注入装置100の制御ブロック図である。薬剤注入装置100は、制御部17を有する。制御部17は、
図5に示す各部の機能を実行するため所定のプログラムを実行するプロセッサ(例えば、CPU)などから構成される中央演算部171を含む。制御部17はまた、プランジャ移動距離検知部173や温度検知部175等の機能を含む。プランジャ移動距離検知部173は、後述するエンコーダ15により検出されるモータ回転数からプランジャの移動距離を算出する。温度検知部175は、温度センサ24により検知されたシリンジ9の周囲温度を判定する。なお、本実施の形態に係る薬剤注入装置100は、温度センサ24や温度検知部175を備えていなくともよい。
【0016】
制御部17に接続されたメモリ18は、制御部17により実行されるプログラムや同プログラムを実行することにより処理されるデータなどを格納する。
本実施の形態においては、シリンジ装着部2にシリンジ9が装着されたか否かを検出するシリンジ検出スイッチ19(
図5参照)も設けられ、制御部17に接続されている。また、モータ14は、モータドライブ回路20を介して制御部17に接続されている。制御部17は更に、表示部3、電源ボタン4、薬剤注入ボタン5、設定ボタン7、電流検出センサ16、シリンジ検出スイッチ19、およびサウンダ21に接続されている。また、制御部17は、電池や所定の電源回路により構成される電源22に接続され、薬剤注入装置100に対する電源供給を制御する。
【0017】
1−2 動作
本実施の形態に係る薬剤注入装置100の特徴点は、制御部17が注入量初期設定モードと薬剤注入動作モードとの制御を行うことである。
1−2−1 注入量初期設定モード
まず、注入量初期設定モードについて、主に
図6(S601〜S603)および
図7を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
この注入量初期設定モードに入る前に、まず、シリンジ9をシリンジカバー8内に収納させた状態で、
図4に示す如くシリンジ装着部2に装着する。なお、
図4においては、シリンジ9の注射針装着部10に注射針23が装着された状態となっているが、この注入量初期設定モードにおいては、注射針装着部10に注射針23を装着しない。
シリンジ9がシリンジ装着部2に装着されると、シリンジ検出スイッチ19がシリンジ9の装着の検出を行い、制御部17は、シリンジ検出スイッチ19の検出の有無を判定する
(S601)。
【0019】
この時すでに、電源ボタン4がON状態とされているので、制御部17は、シリンジ検出スイッチ19による検出がないと判定すると、表示部3に「シリンジを取り付けて下さい」と表示させる(S602)。
一方、シリンジ9の適切な装着が行われシリンジ検出スイッチ19による検出を有りと判定すると、制御部17は、注入量初期設定処理を行う(S603)。
【0020】
(注入量初期設定処理)
この注入量初期設定処理は、
図7に示すように実行される。
図7における電流上限値Imaxは、メモリ18に事前に記憶されており、制御部17はこの電流上限値Imaxを読み出す(S701)。
次に、制御部17は、モータ14を駆動し、送りねじ13a、プランジャ13を介してガスケット11を注射針装着部10側に押圧する(S702)。
【0021】
そして、そのときのモータ14の回転数は、エンコーダ15で検出され、またそのときのモータ電流Iは電流検出センサ16によって検出される(S703)。
電流検出センサ16によってモータ電流IがImax以上になったことが検出されると(S704)、制御部17はモータ14の駆動を停止する。得られた特性(例えば
図9に示す特性A)のデータは、[I, N
0(I)]テーブルとしてメモリ18に保存される(S705)。ここで、Iはモータ電流を示し、N
0(I)はモータ電流Iの時のエンコーダパルス数(第1のモータ回転量の一例)を示す。
【0022】
その後、制御部17は、モータ14を逆回転させ、プランジャ13を元の位置に戻す(S706)。
この時、シリンジ9の注射針装着部10には注射針23が装着されていないので、上述したように、プランジャ13でガスケット11を押圧しても、シリンジ9内の薬剤12は圧縮されず、ガスケット11のみが注射針装着部10方向に圧縮される。従って、上記特性A取得後に、モータ14を逆回転させてプランジャ13を元の位置に戻せば、圧縮されていたガスケット11も
図4の如く、元の状態に復帰する。
【0023】
1−2−2 薬剤注入動作モード
次に、注入量初期設定モードが完了した後に行われる薬剤注入動作モードについて、主に
図6(S604〜S609)および
図8を参照しながら説明する。
制御部17は、表示部3に注射針23を装着し、設定ボタン7を押すことをユーザに促す情報を表示する(S604)。
【0024】
そして、注射針23が装着され、ユーザにより設定ボタン7が押されると(S605)、制御部17は、
図1、
図2、
図4に示すように注射針23を穿刺して薬剤注入ボタン5を押すことをユーザに促す情報を表示部3に表示させる(S606)。
そして、ユーザにより薬剤注入ボタン5が押されると、
図8の注入処理(S607)に移行する。この結果、
図8に示す薬剤注入動作モードに移行することとなる。
【0025】
メモリ18には、薬剤12の目標投与量である設定注入量に対応するモータ14の回転数に相当するエンコーダパルス数が予め設定され、その値が記録されている。本実施の形態においては、薬剤12の設定注入量に対応するエンコーダパルス数をN
Rとする(第3のモータ回転量の一例)。このN
Rは、例えば、次式により求められる。
(数式1)
N
R =P
0*R*V/(L*A)
P
0:モータ1回転あたりのパルス数
R:ギアドモーター減速比
L:送りねじピッチ
A:シリンジ断面積
V:設定注入量
制御部17は、メモリ18から設定注入量に対応するエンコーダパルス数N
Rを取得する(S801)。なお、S801においては、制御部17は、所定のプログラムにより得られた設定注入量からエンコーダパルス数を算出するようにしてもよい。
【0026】
次に、制御部17は、モータ14を駆動し、送りねじ13a、プランジャ13を介してガスケット11を注射針装着部10側に押圧する(S802)。
そして、その時のモータ14の回転数は、エンコーダ15で検出され、またモータ電流は電流検出センサ16によって検出される(S803)。この結果、制御部17は、所定の特性(例えば
図9に示す特性B)を得る。なお、この特性Bを得ている間も、エンコーダ15および電流検出センサ16によって継続してこの薬剤注入動作モードにおけるモータ14の回転数(N)とモータ電流I(N)(第2のモータ回転量の一例)を検出する。
【0027】
一方、制御部17は、このモータ電流I(N)に対応する電流が流れた特性Aにおけるモータ回転数、つまりエンコーダパルス数N
0(I(N))をメモリ18から読み出す(S804)。
そして、エンコーダパルス数(N)―エンコーダパルス数N
0(I(N))が、上述した回転数(N
R)よりも小さい間は、継続的にモータ14を駆動する(
図8のS803〜S805)。
【0028】
そして、エンコーダパルス数(N)―エンコーダパルス数N
0(I(N))が、上述したエンコーダパルス数(NR)を越えると、薬剤の注入を停止し、モータ14をガスケット11の変形量に相当する分、すなわちN
0(I(N))だけ逆回転させる(
図8のS806)。
本実施の形態は、モータ電流が同じであっても、注入量初期設定モードと薬剤注入動作モードで、モータ14の回転数が異なることに着目したものである。具体的には、注入量初期設定モードにおいては、上述の如くシリンジ9に注射針23が装着されていないので、プランジャ13によってガスケット11を圧縮するためだけに必要となったモータ電流、つまりガスケット11の変形量に相当するモータ電流を検出する。これに対して、薬剤注入動作モードでは、シリンジ9に注射針23が装着されているので、ガスケット11を圧縮するだけではなく、更にシリンジ9内の薬剤12を押し出して注入するのに必要な圧力に使用されるモータ電流を検出したものである。このことは、同一のモータ電流に対し、注入量初期設定モード時のエンコーダパルス数N
0(I(N))と薬剤注入動作モードのエンコーダパルス数Nとの差が、薬剤12の設定注入量に対応したエンコーダパルス数(N
R)になったときが目標注入量に相当するということである。
【0029】
そこで、本実施の形態では、
図7のS701〜S705を実行し、これにより高い圧力で薬剤12を注入するときでも、設定した量だけ薬剤を注入することができるようにしたものである。
そして、この適量の薬剤注入が完了すると、制御部17は、モータ14をN
0(I(N))分だけ逆回転させ、プランジャ13を戻す(
図8のS806)。前述の通り、このときのエンコーダパルス数N
0(I(N))は、薬剤注入完了時のガスケット11の圧縮量に相当するので、プランジャ13をこれだけ戻すことにより圧縮されたガスケット11がもとの形状に復帰する。なお、モータ14をN
0(I(N))よりも大なる回転数逆回転させても差し支えないが、この場合ガスケット11とプランジャ13が離れるので、次回の動作時に戻し過ぎた分を空送りする必要がある。
【0030】
その後、制御部17は、抜針することをユーザに促す情報を表示部3に表示させ(S608)、その後表示部3に薬剤残量を表示して(S609)、電源をオフとする。
1−3 効果
本実施の形態においては、薬剤注入装置100は、先端側に注射針23を装着する注射針装着部10後端側にガスケット11を有し、薬剤
12を内包するシリンジ9を装着するシリンジ装着部2と、同シリンジ装着部2に装着されシリンジ9内のガスケット11を注射針装着部10側に押圧するプランジャ13と、同プランジャ13を駆動するモータ14と、同モータ14の回転数を検出するエンコーダ15と、同エンコーダ15に接続されモータ14の駆動を制御する制御部17と、を備える。制御部17は、エンコーダ15により検出された、プランジャ13によるガスケット11の変形量に相当するモータ回転数、つまりエンコーダパルス数N
0を取得し、同モータ回転
数に応じて、薬剤12の注入時のモータの回転を制御する。これにより、ガスケット11の変形量を考慮した薬剤注入が行え、その結果として、適切な圧力により薬剤を注入することができるようになる。
【0031】
すなわち、ガスケット11は一般的に多数個取りの金型を用いて作製されるため、その形状寸法にはばらつきがあり、かつガスケット11に用いられるゴム材料は温度によって硬度が変化する。従ってガスケット11のプランジャ13による変形特性は個々のシリンジ9による個体差があり、使用時の周囲温度によっても変化する。本実施の形態に係る薬剤注入装置100は、薬剤注入の前に実際のモータ14の回転数、つまりガスケット11の変形量のみに相当するモータ14の回転量とその電流値を測定してガスケット11の変形特性を取得し、この変形特性に基づいて薬剤注入時のモータ回転量を決める。この結果、ガスケット11の寸法ばらつきや硬度変化をも相殺することができ、高い精度での薬剤注入を可能とするものである。
【0032】
1−4 変形例
(1)
上記実施の形態においては、制御部17は、シリンジ9の装着を検知した後自動的に注入量初期設定モードに移行していたが、これに限定されない。
図10に示すように、注入量初期設定ボタン6(第1のモード起動スイッチの一例)を設け、ユーザの操作により注入量初期設定モードに移行するようにしてもよい。この場合、例えば、シリンジ検出スイッチ19による検出を有りと判定した後(
図6のS601)、制御部17は、表示部3に注入量初期設定ボタン6を押すことをユーザに促す情報を表示する。そして、ユーザにより注入量初期設定ボタン6が押されると、注入量初期設定モード(
図6のS603)に移行する。
【0033】
(2)
上記実施の形態においては、薬剤を注入するごとに注入量初期設定動作を行うが、これに限定されない。
ガスケット11の材料の温度特性が十分小さい場合などは、薬剤注入ごとではなく、シリンジ9が最初に装着されたときのみ注入量初期設定モードを実行し、次回以降の薬剤注入時にはこのとき取得した特性を使用するようにしてもよい。この場合、例えば、制御部17は、
図6に示すシリンジ装着検出(S601)後、
図11に示すような判定処理を行うようにしてもよい。制御部17は、装着されたシリンジ9に付された識別情報IDiを所定の読取り手段を介して取得する(S1101)。次に制御部17は、先のシリンジ装着時に所得しメモリに予め記憶されたシリンジ9の識別情報ID_mの値と、取得した識別情報IDiとを比較する(S1102)。この比較の結果、一致していれば注入量初期設定モードを実行せずに薬剤注入動作モード(
図6のS604〜)に移行する。一方、一致していなければシリンジ9は最初に装着されたものであるため、その識別情報をID_mとして記憶する(S1103)と共に、注入量初期設定モード(
図6のS603)に移行する。
【0034】
(3)
シリンジ9が最初に装着されたときに注入量初期設定モードを実行する場合、更にシリンジ9の周囲温度に応じて次回以降の注入量初期設定モードを実行するかどうかを判断するようにしてもよい。この場合、例えば、
図12に示すような処理を行う。制御部17は、装着されたシリンジ9に付された識別情報IDiを所定の読取り手段を介して取得する(S1201)。次に制御部17は、メモリに予め記憶されたシリンジの識別情報ID_mの値と取得した識別情報IDiとを比較する(S1202)。この比較の結果、一致していなければシリンジ9は最初に装着されたものであるため、その識別情報IDiをID_mとして記憶する(S1203)。そして、制御部17の温度検知部175は、温度センサ24の出力からシリンジ9の周囲温度TEMPiを検出し(S1204)、TEMP
_preとしてメモリに記憶する(S1205)。そして、制御部17は、注入量初期設定モード(
図6のS603〜)を実行する。一方、S1202の比較の結果、一致していれば当該シリンジ9は2回目以降の装着と判断され、更に次の動作を行う。制御部17の温度検知部175は、温度センサ24の出力から現在のシリンジ9の周囲温度TEMPiを検出し(S1206)、メモリに記憶されたTEMP
_preの値、すなわち前回の注入量初期設定動作時のシリンジ9の周囲温度を読み出す(S1207)。そして、制御部17は、検出したTEMPiと読み出したTEMP
_preの値との差が、所定の閾値TEMP_th以内かどうかを判断する(S1208)。所定の閾値TEMP_thを超える場合は、温度変化によりガスケット11の変形特性が変化している可能性が高いため、TEMP
_preとしてTEMPiを記憶(S1205)後、注入量初期設定モード(
図6のS603〜)を実行する。一方、S1208においてTEMPiとTEMP
_preの値との差が所定の閾値TEMP_th以内と判断された場合は、TEMP
_preとしてTEMPiを記憶(S1209)後、薬剤注入動作モード(
図6のS604〜)を実行し、先に取得済みのガスケット11の変形特性による注入量設定データを使用する。
【0035】
(4)
更に、予め取得したガスケット11の変形特性の温度依存性データを用いてもよい。この場合、例えば、ガスケット11の変形特性の温度依存性データを予め実験的に取得し記憶しておく。上記
図12に示す例と同様に、制御部17は、シリンジ9が最初に装着されたときは注入量初期設定モードを実行して温度センサ24の出力から注入量初期設定動作時のシリンジ9の周囲温度を取得し、次回以降の薬剤注入時に再度シリンジ9の周囲温度を取得し、前回の注入量初期設定動作時のシリンジ9の周囲温度との差を求める。制御部17は、その温度差と記憶された温度依存性データとから、先に取得済みのガスケット11の変形特性の注入量設定データを補正し、その補正後の注入量設定データを用いて薬剤注入動作モードを実行するようにしてもよい。
【0036】
2 実施の形態2
図13は、本発明の実施の形態2に係る薬剤注入装置100の動作を示す。なお、薬剤注入装置の構成は上記実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
2−1 動作
本実施の形態においては、注入量初期設定モードを2度実行するものである。すなわち、シリンジ9の長期間の保存などによりガスケット11がシリンジ9の内壁面に固着してしまった場合等には、注入量初期設定モードにおいても、プランジャ13をスムーズに圧縮することが出来なくなる場合ある。具体的には、以下の通りである。
【0037】
実施の形態1と同様に、制御部17は、シリンジ9の適切な装着が行われシリンジ検出スイッチ19による検出を有りと判定すると注入量設定データの取得処理を行う(
図6のS601〜S603)。
制御部17はメモリ18に事前に記憶されている電流上限値Imaxを読み出す(S1301)。
【0038】
次に、制御部17は、モータ14を駆動し、送りねじ13a、プランジャ13を介してガスケット11を注射針装着部10側に押圧する(S1302)。
そして、その時のモータ14の回転数は、エンコーダ15で検出され、またそのときのモータ電流Iは電流検出センサ16によって検出される(S1303)。
電流検出センサ16によってモータ電流IがImax以上になったことが検出されると(S1304)、制御部17は、モータ14を逆回転させてプランジャ13を元の位置に戻す。この結果、圧縮されていたガスケット11も
図4の如く、元の状態に復帰する(S1305)。
【0039】
次いで、制御部17は、モータ14を再び駆動し、送りねじ13a、プランジャ13を介してガスケット11を注射針装着部10側に押圧する(S1306)。
そして、そのときのモータ14の回転数は、エンコーダ15で検出され、またそのときのモータ電流Iは電流検出センサ16によって検出される(S1307)。
電流検出センサ16によってモータ電流IがImax以上になったことが検出されると(S1308)、制御部17はモータ14の駆動を停止する。得られた特性(例えば
図9に示す特性A)のデータは、[I , N
0(I)] テーブルとしてメモリ18に保存される(S1309)。
【0040】
その後、制御部17は、モータ14を逆回転させ、プランジャ13を元の位置に戻す(S1310)。
その後、実施の形態1と同様に、薬剤注入動作モードの動作を開始する。
2−2 効果
以上のように、本実施の形態においては、注入量初期設定モードにおけるプランジャ13の移動を2回行ってから特性データを取得するため、ガスケット11のシリンジ9内壁面への固着を解消するため、特性データの精度を向上させることができる。よって、薬剤の注入を適切に行うことができる。
【0041】
2−3 変形例
なお、本実施の形態においては、注入量初期設定モードを2度実行するとしたが、これに限定されない。シリンジ9の保存期間の長さなどに応じて、3度以上実行してもよい。
また、本実施の形態においても、シリンジ9が最初に装着されたときのみ注入量初期設定モードを実行するようにしてもよい。
【0042】
3 実施の形態3
実施の形態3について、
図14〜
図17を参照しながら説明する。なお、薬剤注入装置100の構成は上記実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
3−1 動作
薬剤注入装置100による薬剤注入動作モードにおいて、薬剤注入動作を完了した後モータ14を逆回転させてプランジャ13を元の位置に戻す場合、薬剤の目標注入量と実際の注入量とに誤差(以下、注入量誤差と呼ぶ)が生じる場合がある。
【0043】
図14に示すように、例えば、薬剤の設定注入量が81.9μLであるとき、81.9μLに相当するモータ回転量、つまりエンコーダパルス量は10135パルスとする(例えば、数式1より)。また、ガスケット11の変形量に相当するエンコーダパルス数N
0(I(N))を3910パルスとする。N
R=10135として薬剤注入動作を実行すると、(N)−N
0(I(N))がN
R(=10135)に達したとき、すなわち、N=14045のときにモータ14を反転させ、N
0(I(N))=3910パルス分モータ14を逆回転させる。この結果、モータ14は初期位置からN
R=10135パルスの位置で停止する。ここで、(N)−N
0(I(N))がN
R(=10135)に達した時点で目標注入量の81.9μLが投与されていると推定される。しかし、モータ14が3910パルス分逆回転して停止するまでの間においてもガスケットの変形により高圧になったシリンジから薬剤が出続けることがある。よって、モータ14の逆回転中に出た液量が過剰に投与されることがある。実際に前記条件にて薬剤注入動作を実行したときの過剰注入量は4.8μLであった。
【0044】
図15は、薬剤の目標注入量と注入量誤差(つまり過剰注入量または不足注入量)との関係を示すグラフである。同図に示すように、目標注入量が小さいときは目標注入量と注入量誤差とは比例関係であり、目標注入量が大きくなると注入量誤差は一定値となる。これは、注入量がある程度大きくなると、ガスケットの変形が飽和し、変形量が一定となるためである。
【0045】
図15に示す目標注入量と注入量誤差の相関関係(以下、補正誤差データと称する)から、目標注入量が81.9μLのときの注入量誤差は+5.2465μLである。よって、
図14に示すように、目標注入量81.9μLから注入量誤差+5.2465μLを引いた76.6535μLを仮の目標注入量として設定する。この仮の目標注入量に相当するモータ回転量(ここでは9486パルス)をN
Rとして設定し、薬剤注入動作モードを実行する。この結果、N−N
0(I(N))がN
R(=9486パルス)に達した時点で仮の目標注入量である76.6535μLの薬剤が投与されることになる。その後、モータ14が逆回転して初期位置から10135パルスの位置まで戻って停止するまでに投与される5.2465μLを加えた総注入量が目標注入量の81.9μL(図示例ではその近似値)となる。
【0046】
図16は、本実施の形態に係る薬剤注入装置100による、設定注入量に対応するエンコーダパルス数
NRの算出処理を示す。
まず、制御部17は、薬剤の設定注入量Viを取得する(S1601)。
次に、制御部17は、予めメモリ18に記憶された補正誤差データ(
図15)を読み出し、設定注入量Viに対応する注入量誤差Vcを取得する(S1602)。
【0047】
次いで、制御部17は、設定注入量V=Vi−Vcとして、薬剤の設定注入量を補正する(S1603).
上記設定注入量Vを用いて、設定注入量に対応するエンコーダパルス数N
Rを算出する(S1604)。なお、エンコーダパルス数N
Rの算出においては、例えば上記数式1を用いる。
【0048】
次いで、制御部17は、算出したエンコーダパルス数N
Rをメモリ18に格納する(S1605)。薬剤注入装置100は、この算出したエンコーダパルス数N
Rに用いて、薬剤注入動作(
図8)を実行する。
3−2 効果
上記実施の形態においては、薬剤の設定注入量を予め記憶した補正誤差データにより補正することにより、薬剤注入動作を完了した後モータ14を逆回転させる間に生じる薬剤の注入量の誤差を防ぐことができる。よって、より精度の高い薬剤注入を実現できる。
【0049】
図17は、上記実施の形態による設定注入量の補正の結果、目標注入量に対する注入量誤差(過剰投与または投与不足)を示す。同図に示すように、薬剤の注入量の誤差は、目標注入量に関わらず0の近似値になっている。
3−3 変形例
上記実施の形態3においては、薬剤の目標注入量と注入量補正誤差との関係に応じて薬剤の設定注入量を補正したが、これに限定されない。
【0050】
図18は、
最終電流値(モータ14が逆回転する直前の電流値)と注入量誤差との関係(以下、補正誤差データと呼ぶ)を示す。同図に示すように、最終電流値と注入量誤差は一定の比例関係がある。この関係に基づき、薬剤の設定注入量を補正する。この場合、
図18に示す補正誤差データを予めメモリ18に記憶させておき、
図16に示す処理フローと同様に薬剤の設定注入量を補正し、補正した設定注入量に対応するエンコーダパルス数N
Rを、例えば上記数式1により算出する。
【0051】
図19は、上記変形例による設定注入量の補正の結果、最終電流値に対する注入量誤差(過剰投与または投与不足)を示す。同図に示すように、薬剤の注入量の誤差は、最終電流値に関わらず0の近似値になっている。
4 その他実施の形態
上記実施の形態に係る薬剤注入装置100においては、プランジャ13によって押圧されるゴム部材であるガスケット11をシリンジ9内に設けているが、これに限定されず、シリンジ内に薬剤を密閉し得る材料で且つ押圧により変形可能な弾性部材であればよい。
【0052】
また、上記実施形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。