(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023731
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】25−ヒドロキシビタミンD2及び25−ヒドロキシビタミンD3によるビタミンD不足及び欠乏の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/592 20060101AFI20161027BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20161027BHJP
A61K 47/44 20060101ALI20161027BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20161027BHJP
A61K 9/52 20060101ALI20161027BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20161027BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
A61K31/592
A61K31/593
A61K47/44
A61K47/32
A61K9/52
A61K9/22
A61P3/02
【請求項の数】32
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-11219(P2014-11219)
(22)【出願日】2014年1月24日
(62)【分割の表示】特願2008-553520(P2008-553520)の分割
【原出願日】2007年2月2日
(65)【公開番号】特開2014-65751(P2014-65751A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年2月24日
(31)【優先権主張番号】60/764,665
(32)【優先日】2006年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509295387
【氏名又は名称】プロヴェンティヴ セラピュティックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ チャールズ ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】クローフォード キース エイチ
(72)【発明者】
【氏名】メスナー エリック ジェイ
【審査官】
平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−206524(JP,A)
【文献】
特開2002−302447(JP,A)
【文献】
特開昭58−032823(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/058235(WO,A1)
【文献】
特表2001−512418(JP,A)
【文献】
Haddad JG and Rojanasathit S,THE JOURNAL OF CLINICAL ENDOCRINOLOGY AND METABOLISM,1976年 2月,Vol.42 No.2,pp.284-290
【文献】
Tuohimaa P et al.,Both high and low levels of blood vitamin D are associated with a higher prostate cancer risk: a lon,Int J Cancer.,2004年 1月 1日,Vol.108 No.1,pp.104-108
【文献】
新・薬剤学総論,1987年 4月10日,改訂第3版,pp.262-267
【文献】
医薬品開発基礎講座XI 薬剤製造法(上),1971年 7月10日,初版,pp.117-122
【文献】
BARGER-LUX MJ et al.,OSTEOPOROSIS INTERNATIONAL,英国,1998年,Vol.8 No.3,pp.222-230
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせを、ワックス、オイル、及びグリセリドを含みかつカプセルに充填されたワックスマトリックス中に分散させて含む、持続放出経口投与製剤であって、前記ワックスマトリックスは、25-ヒドロキシビタミンD化合物の放出速度を制御して、前記持続放出経口投与製剤の投与後の25-ヒドロキシビタミンD化合物の最大血中濃度(Cmax)を、即時放出経口投与製剤で投与した同量の25-ヒドロキシビタミンD化合物についてのCmaxと比較して低下させる、持続放出経口投与製剤。
【請求項2】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせを含む持続放出経口投与製剤であって、前記持続放出経口投与製剤は、25-ヒドロキシビタミンD化合物の放出速度を制御して、前記持続放出経口投与製剤の投与後の25-ヒドロキシビタミンD化合物の最大血中濃度(Cmax)を、即時放出経口投与製剤で投与した同量の25-ヒドロキシビタミンD化合物についてのCmaxと比較して低下させる、持続放出経口投与製剤。
【請求項3】
マトリックスが、胃液における崩壊に抵抗性のコーティングで被覆されている、請求項1記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項4】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせをワックスマトリックス中に分散させて含む、請求項2記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項5】
ワックスマトリックスが、ワックスの混合物及び1以上のオイルを含む、請求項1、3又は4記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項6】
マトリックスが、グリセリドを含む脂質マトリックスである、請求項3〜5のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項7】
ワックスマトリックスが充填されたゼラチンカプセルをさらに含む、請求項1又は4〜6のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項8】
ゼラチンカプセルがハードゼラチンカプセルである、請求項7記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項9】
製剤が体温において半固体である、請求項1〜8のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項10】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせが、ポリマーで被覆された顆粒に含まれる、請求項2記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項11】
ポリマーが、メタクリル酸エステル、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸エステル及びブタジエンスチレンコポリマーからなる群から選択される不溶性ポリマーを含む、請求項10記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項12】
ポリマーがメタクリル酸エステルを含む、請求項11記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項13】
塩化メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルをさらに含む、請求項12記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項14】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせを単位用量あたりで1〜100μg含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項15】
少なくとも4時間の期間にわたって持続放出が達成される、請求項1〜14のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項16】
25-ヒドロキシビタミンD3を含む、請求項1〜15のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項17】
コレカルシフェロール又はエルゴカルシフェロールをさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項18】
コレカルシフェロールをさらに含む、請求項17記載の持続放出経口投与製剤。
【請求項19】
患者の25-ヒドロキシビタミンD不足又は欠乏、或いは、25-ヒドロキシビタミンD不足又は欠乏に関連する疾患の治療に使用するための、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせを、ワックス、オイル、及びグリセリドを含みかつカプセルに充填されたワックスマトリックス中に分散させて含む製剤であって、持続放出経口投与製剤として提供され、前記ワックスマトリックスは、25-ヒドロキシビタミンD化合物の放出速度を制御して、前記持続放出経口投与製剤の投与後の25-ヒドロキシビタミンD化合物の最大血中濃度(Cmax)を、即時放出経口投与製剤で投与した同量の25-ヒドロキシビタミンD化合物についてのCmaxと比較して低下させる、製剤。
【請求項20】
患者の25-ヒドロキシビタミンD不足又は欠乏、或いは、25-ヒドロキシビタミンD不足又は欠乏に関連する疾患の治療に使用するための、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせを含む製剤であって、持続放出経口投与製剤として提供され、前記持続放出経口投与製剤は、25-ヒドロキシビタミンD化合物の放出速度を制御して、前記持続放出経口投与製剤の投与後の25-ヒドロキシビタミンD化合物の最大血中濃度(Cmax)を、即時放出経口投与製剤で投与した同量の25-ヒドロキシビタミンD化合物についてのCmaxと比較して低下させる、製剤。
【請求項21】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせが、請求項1〜18のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤として提供される、請求項19又は20記載の製剤。
【請求項22】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせが連日投与用の持続放出経口投与製剤として提供される、請求項19〜21のいずれか1項記載の製剤。
【請求項23】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせの投与量が1日あたり1〜100μgである、請求項19〜22のいずれか1項記載の製剤。
【請求項24】
コレカルシフェロール又はエルゴカルシフェロールをさらに含む、請求項19〜23のいずれか1項記載の製剤。
【請求項25】
コレカルシフェロールをさらに含む、請求項24記載の製剤。
【請求項26】
患者の25-ヒドロキシビタミンD不足又は欠乏、或いは、25-ヒドロキシビタミンD不足又は欠乏に関連する疾患の治療に使用するための医薬品を製造するための、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせを、ワックス、オイル、及びグリセリドを含みかつカプセルに充填されたワックスマトリックス中に分散させて含む製剤の使用であって、製剤が持続放出経口投与製剤として提供され、前記ワックスマトリックスは、25-ヒドロキシビタミンD化合物の放出速度を制御して、前記持続放出経口投与製剤の投与後の25-ヒドロキシビタミンD化合物の最大血中濃度(Cmax)を、即時放出経口投与製剤で投与した同量の25-ヒドロキシビタミンD化合物についてのCmaxと比較して低下させる、使用。
【請求項27】
患者の25-ヒドロキシビタミンD不足又は欠乏、或いは、25-ヒドロキシビタミンD不足又は欠乏に関連する疾患の治療に使用するための医薬品を製造するための、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせを含む製剤の使用であって、製剤が持続放出経口投与製剤として提供され、前記持続放出経口投与製剤は、25-ヒドロキシビタミンD化合物の放出速度を制御して、前記持続放出経口投与製剤の投与後の25-ヒドロキシビタミンD化合物の最大血中濃度(Cmax)を、即時放出経口投与製剤で投与した同量の25-ヒドロキシビタミンD化合物についてのCmaxと比較して低下させる、使用。
【請求項28】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせが、請求項1〜18のいずれか1項記載の持続放出経口投与製剤として提供される、請求項26又は27記載の使用。
【請求項29】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせが連日投与用の持続放出経口投与製剤として提供される、請求項26〜28のいずれか1項記載の使用。
【請求項30】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせの投与量が1日あたり1〜100μgである、請求項26〜29のいずれか1項記載の使用。
【請求項31】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせが、コレカルシフェロール又はエルゴカルシフェロールと共に投与される、請求項26〜30のいずれか1項記載の使用。
【請求項32】
25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3、又は25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の組み合わせが、コレカルシフェロールと共に投与される、請求項31記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の治療薬の製造のための免疫サイトカインの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3(“25-ヒドロキシビタミンD”と総称される)として知られるビタミンD代謝産物は、脂溶性ステロイドプロホルモンからビタミンDホルモンまであり、それらは、血流におけるカルシウム及びリンの正常値の維持に貢献する。プロホルモン25-ヒドロキシビタミンD
2は、ビタミンD
2(エルゴカルシフェロール)から産生され及び25-ヒドロキシビタミンD
3は、主に、肝臓に存在する1以上の酵素により、ビタミンD
3(コレカルシフェロール)から産生される。2つのプロホルモンは、また、肝臓においてみられる酵素と同一又は類似する酵素を含む、ある種の細胞、例えば、腸細胞におけるビタミンD
2及びビタミンD
3(“ビタミンD”と称される)から肝臓の外部に産生され得る。
プロホルモンは、更に、腎臓において代謝されて、効力のある(potent)ホルモンとなる。プロホルモン25-ヒドロキシビタミンD
2は、代謝されて、1α, 25-ジヒドロキシビタミンD
3として知られるホルモンとなり;同様に、25-ヒドロキシビタミンD
3は、代謝されて、1α, 25-ジヒドロキシビタミンD
3(カルシトリオール)となる。これらのホルモンのプロホルモンからの産生は、また、必要な酵素を含む細胞において、腎臓の外部で生じ得る。
【0003】
ビタミンDホルモンには、細胞内ビタミンD受容体(VDR)により介在される、ヒトの健康における重要な役割がある。具体的には、ビタミンDホルモンは、小腸による食事性カルシウムの吸収及び腎臓によるカルシウムの再吸収を制御することにより、血中カルシウム濃度を調節する。過度なホルモン濃度は、一時的なものであろうと又は長期的なものであろうと、異常に高い尿中カルシウム(高カルシウム尿症)、血中カルシウム(高カルシウム血症)及び血中リン(高リン血症)を生じ得る。ビタミンDホルモンは、また、細胞分化及び増殖、副甲状腺によるPTH分泌、及び正常な骨形成及び代謝の調節に関与する。更に、ビタミンDホルモンは、筋骨格系、免疫系及びレニン・アンギオテンシン系の正常機能に必要とされる。ビタミンDホルモンの多くの他の役割が、ほとんど全てのヒト組織における細胞内VDRの実証された(documented)存在をベースとして、主張及び解明されている。
特定の組織におけるビタミンDホルモンの作用は、それらが、その組織における細胞内VDRに結合する(又はそれらを占有する)程度に依存する。プロホルモン25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3は、VDRに対する親和性が本質的に同一であり、それらは、ビタミンDホルモンのものより少なくとも100倍低いと見積もられている。結果として、生理学的濃度の25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3は、ビタミンDホルモンへの前代謝なしでの生物学的作用が、たとえあったとしても、ほんの少しである。しかしながら、通常より10〜1000倍高い超生理学的濃度の25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3は、十分に、VDRを占有して、ビタミンDホルモンと同様の作用を発揮し得る。
【0004】
血中又は細胞内プロホルモン濃度の急増は、カルシウム及びリン代謝において局所的悪影響をもたらす、過度な腎外ホルモン産生を促進し得る。それらは、また、ビタミンDからの、肝臓でのプロホルモン産生を抑制し、及び腎臓及び/他の組織におけるビタミンD及び25-ヒドロキシビタミンDの双方の異化を促進し得る。プロホルモン及びビタミンDホルモンの双方の血中濃度は、日光への暴露又は非補足的な食事(unsupplemented diet)による持続された適切なビタミンD供給を考慮すると、通常、一日を通して一定である。しかしながら、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度は、特に、ビタミンD不足によるくる病又は骨軟化症を防止するのに必要とされる最低量を大きく超える量で、現在入手可能なビタミンDのサプリメントを投与した後、顕著に上昇し得る。プロホルモンの血中濃度は、また、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3の急速静注後、顕著に上昇し得る。
25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3の産生は、ビタミンDが不足している場合、例えば、ビタミンD不足又はビタミンD欠乏(あるいはまた、ビタミンD欠乏症)などの状態におけるように、低下する。25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3の産生が低いと、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が低くなる。不適切なビタミンD供給は、保護的日焼け止め剤なしに日光へ稀に暴露され、ビタミンDの摂取が慢性的で不適切であり、又は脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンD)の腸内吸収を低減する状態を患う人において発現することが多い。最近、北半球地方に住む人のほとんどは、ビタミンDの供給が不適切であることが報告された。治療しないまま放置された、不適切なビタミンDの供給は、くる病及び骨軟化症を含む深刻な骨疾患を生じるかもしれず、及び骨粗しょう症、脊椎及び臀部の非外傷性骨折(fracture)、肥満、糖尿病、筋衰弱、免疫不全症、高血圧症、乾癬及び種々の癌を含む多くの他の疾患の発現の一因となり得る。
【0005】
全米科学アカデミーの医学研究所(IOM)は、健常人についてのビタミンDの適量摂取(AI)は、その人の年齢及び性別に依存して、一日当たり、200〜600IUの範囲にあると結論付けた(Standing Committee on the Scientific Evaluation of Dietary Reference Intakes, Dietary reference intakes: calcium, phosphorus, magnesium, vitamin D, and fluoride. Washington, DC: National Academy Press (1997))(参考文献として本件明細書に組み込まれるものとする)。ビタミンDのAIは、主に、ビタミンD不足によるくる病又は骨軟化症を防止するのに十分な血清25-ヒドロキシビタミンD濃度(即ち、≧11ng/mL)をベースとして定義された。IOMは、また、一日あたりの、ビタミンDについての許容上限摂取量(UL)を2000IUと決定したが、これは、より多くの量は、高カルシウム尿症、高カルシウム血症並びに不整脈、発作、及び全身性血管及び他の軟組織石灰化を含む関連続発症の上昇されたリスクと関連するとの証拠をベースとする。
現在入手可能な経口ビタミンDサプリメントは、最適な血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を達成及び維持するための理想からはかけ離れている。これらの製剤は、典型的には、400〜5000IUのビタミンD
3又は50000IUのビタミンD
2を含み及び消化管における迅速又は即時放出用に配合される。ビタミンDの充実のために必要とされることが多いように、慢性的高用量で投与される場合、これらの生成物には、有意であり及び深刻なものであることが多い制限があり、これらは以下に概要する。
【0006】
高用量の即時放出ビタミンDサプリメントは、血中ビタミンD濃度の顕著な急増をもたらし、それにより、以下のものが促進される:(a)貯蔵ビタミンDは25-ヒドロキシビタミンDへの後の転化のための利用性が低いので望ましくない、脂肪組織におけるビタミンDの貯蔵;(b)24-及び/又は26-ヒドロキシル化を介して、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を高めるための有用性が少ないか又はもはや全くない代謝産物へのビタミンDの異化;高カルシウム尿症、高カルシウム血症及び高リン血症(VDRへ結合する質量-作用(mass-action)を介する)の上昇されたリスクをもたらす、ビタミンDの過剰な細胞内24-又は25-ヒドロキシル化。
高用量の即時放出ビタミンDサプリメントは、また、血中及び細胞内25-ヒドロキシビタミンD濃度の急増及び急上昇をもたらし、それにより、以下のものが促進される:(a)カルシウム及びリンの恒常性の局所的異常並びに高カルシウム尿症、高カルシウム血症及び高リン血症の上昇したリスクをもたらす、一時的に過剰な腎臓での及び腎臓外でのビタミンDホルモンの産生;(b)腎臓及び他の組織における24-及び/又は26-ヒドロキシル化によるビタミンD及び25-ヒドロキシビタミンDの双方の異化;(c)ビタミンD不足又は欠乏の効果的充実を不必要に妨げる、ビタミンDプロホルモンの肝臓での産生のダウンレギュレーション;及び(d)VDRへ直接結合することにより介在するカルシウム及びリンの恒常性の局所的異常。
【0007】
更に、高用量の即時放出ビタミンDサプリメントは、例えば、十二指腸の内腔において、超生理学的で、薬理学的でさえあるビタミンD濃度をもたらし、それにより、以下のものが促進される:(a)高カルシウム尿症、高カルシウム血症及び高リン血症の危険を上昇させる、カルシウム及びリンの腸内吸収の局所的刺激並びに腸細胞における25-ヒドロキシル化;及び(b)全身バイオアベイラビリティを低減する、局所的腸細胞における24-及び26-ヒドロキシル化によるビタミンDの異化。
ULより高いビタミンD補給が幾人かにおいて必要とされることが多く;しかしながら、現在入手可能な経口ビタミンDサプリメントは、高用量の即時放出ビタミンD組成物を投与する際の問題を考慮すると、最適な濃度で血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を維持するのに適していない。
即時放出経口製剤における25-ヒドロキシビタミンD
3の投与は、ビタミンD補給の代替法として試みられた。その後中止された、このアプローチでは、現在使用されるビタミンDサプリメントのように問題が生じた。具体的には、それは、血中及び細胞内25-ヒドロキシビタミンD濃度の急増又は急上昇をもたらし、それにより、以下のものが促進された:(a)血清ビタミンD結合タンパク(DBP)からのビタミンDホルモンの競争的置換及びVDRを含む組織への、置換されたホルモンの過剰な運搬;及び(b)カルシウム及びリンの代謝における局所的異常を一緒にもたらした、一時的に過剰な腎臓での及び腎臓外でのビタミンDホルモンの産生。また、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度におけるこれらの急増は、腎臓及び他の組織における24-及び/又は26-ヒドロキシル化によるビタミンD及び25-ヒドロキシビタミンDの双方の異化、ビタミンD不足又は欠乏の効果的充実を不必要に妨げる、ビタミンDプロホルモンの肝臓での産生のダウンレギュレーション、及び、VDRへ直接結合することにより介在するカルシウム及びリンの恒常性の局所的異常を促進した。重要なことには、25-ヒドロキシビタミンD
3の即時放出は、血清DBPへ結合するよりむしろ、カイロミクロンにおける肝臓への移送を実質的に含むメカニズムを介して、その腸内吸収を促進した。カイロミクロンを介する肝臓への25-ヒドロキシビタミンDの運搬は、有意に、その異化の可能性を上昇させた。
現在入手可能な経口ビタミンDサプリメント及び先に使用されていた経口25-ヒドロキシビタミンD
3の双方で生じた問題を考慮すると、明らかに、ビタミンD補給の代替的アプローチが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、効果的及び安全に、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度(患者について>30ng/mLの25-ヒドロキシビタミンDとして定義される)に回復させ及び血中25-ヒドロキシビタミンD濃度をそのような最適濃度で維持する方法を提供する。その方法は、現在入手可能なビタミンDサプリメントでは今まで想像もつかなかった利益を受容者に提供する製剤中の十分な25-ヒドロキシビタミンD
2又は25-ヒドロキシビタミンD
3又はこれらの2つのプロホルモンの組み合わせを用いて、被検体、動物又はヒト患者に対して、経口的又は静脈内投与を行うことを含む。即ち、本発明は、血中25-ヒドロキシビタミンDの一時的急増(即ち、超生理学的濃度)の危険及び関連副作用を低減する、効果的ビタミンD補給を提供する。
本発明の実施態様においては、所定量の(an amount of)25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3が、制御放出製剤に含まれ及び治療を必要とするヒト又は動物に対して経口的に連日投与される。他の実施態様においては、所定量の25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3が、静脈内投与に適する等張無菌製剤に含まれ及び治療を必要とするヒト又は動物に対して、週に3回、漸進的に注入される。25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3のこの投与により、有意に:含まれる25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3のバイオアベイラビリティが高められ;含まれる25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の、十二指腸における望ましくない初回通過効果が低減され;25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3の血中濃度における超生理学的急増の発生が避けられ;25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度を最適濃度(患者について>30ng/mLの25-ヒドロキシビタミンDとして定義される)に回復する際の、経口投与された25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の効果が高められ;そのような最適濃度で25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度を維持する際の、経口投与された25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の効果が高められ;ビタミンD代謝における混乱(disruption)並びにPTH、カルシウム及びリンの恒常性における関連異常が低減され;及びビタミンD補給に関連する深刻な副作用、即ち、ビタミンD毒性の危険が低減される。
【0009】
ある態様においては、本発明は、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を含む安定性制御放出組成物を提供し、それが配合されると、25-ヒドロキシビタミンが、胃並びに小腸の十二指腸及び空腸を通過して、回腸に至ることが可能になる。その組成物は、効果的に、胃液における崩壊に抵抗し、及びそれが小腸の回腸に至るまで、含まれる25-ヒドロキシビタミンDの実質的放出を避け、それにより、カイロミクロンにおける肝臓への移送により実質的に介在される吸収が最小化される。開示する組成物は、回腸の管腔内及び細胞内面(aspect)に漸進的に現れ、CYP24-介在性異化を低減し及び25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度の、維持され得る最適濃度への持続的上昇を誘発する。
他の態様においては、本発明は、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を含む、漸進的静脈内投与に適する等張無菌製剤を提供し、それは、25-ヒドロキシビタミンDが胃腸管を完全にバイパス(bypass)することを可能にし、それにより、カイロミクロンにおける肝臓への移送により介在される吸収と同様に、十二指腸及び空腸における初回通過効果が排除される。
前述の簡単な説明は、一般に、本発明の主な態様を概要し及び以下に続く、より十分な詳細な説明をより一層理解する助けとしての役割を果たす。それらに関連して、本発明は、本件明細書に記載された製造方法又は詳細、化学組成又は用途には制限されないことが明確に理解されるべきである。他の製造、化学組成、使用又は適用の変化が、本発明の代替的実施態様として考慮されるべきことが明らかである。本発明の具体的適合、組成の変化及び化学的及び物理的特性の他の利点及び十分な認識が、詳細な説明の考察により得られるであろう。
また、本件明細書において使用する表現及び専門用語は、説明を目的とするものであり及び制限するものとしてみなされるべきではないことが理解される。本件明細書における“含む(including)”、“有する”及び“含む(comprising)”及びそれらの変形体を使用することにより、これ以降に挙げられる事項(item)及びそれらの同等物並びに追加事項及びそれらの同等物を包含することが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、ビタミンD補給を必要とする被検体、動物又はヒト患者に対して、十分な25-ヒドロキシビタミンD
2、25-ヒドロキシビタミンD
3又はこれらの2つのプロホルモンの組み合わせを投与して、効果的及び安全に、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度(ヒト被検体及び患者について>30ng/mLの25-ヒドロキシビタミンDとして定義される)に回復させ及びそのような最適濃度で血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を維持する方法に関する。
本件明細書において使用する以下の定義は、当業者による本発明の理解の助けに有用であり得る。
本件明細書において使用する、25-ヒドロキシビタミンDの血清又は血中濃度に関連する用語“実質的に一定”は、以下に詳細に説明されるように投与された製剤の放出特性が、単位用量での投与後の約3ng/mLより高い、25-ヒドロキシビタミンD
3又は25-ヒドロキシビタミンD
2の全血清又は血中濃度において一時的上昇を含まないべきであることを意味する。
本件明細書において使用する用語“制御放出”及び“持続放出”は、交換して使用するのが可能であり、及び25-ヒドロキシビタミンDの全血清又は血中濃度が、延長時間、例えば、4〜24時間又は更に長い時間、前投与濃度(predosing level)を越えて上昇され又は維持される速度での、投与された25-ヒドロキシビタミンDの放出を意味する。
【0011】
本件明細書において使用する用語“ビタミンD毒性”は、25-ヒドロキシビタミンDの過剰投与及び過剰に上昇した25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度で受ける副作用を意味し、吐き気、嘔吐、多尿症、高カルシウム尿症、高カルシウム血症及び高リン血症を含む。
25-ヒドロキシビタミンDの管腔内、細胞内及び血中濃度に関連する“超生理学的”は、24時間後-投与期間(a 24-hour post-dose period)での、25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3の組み合わせ濃度を意味し、それは、5ng/mLを越え、検査室測定により先の24時間にわたって観察された、一般に安定性の濃度より高い。
“ビタミンD不足及び欠乏”は、一般には、30ng/mLより低い血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を有するとして定義される(National Kidney Foundation guidelines, NKF, Am. J. Kidney Dis. 42:S1-S202 (2003)(参考文献として本件明細書に組み込まれるものとする))。
他に記載のない限り、本件明細書において使用する“25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3”は、25-ヒドロキシビタミンD
2、25-ヒドロキシビタミンD
3、又はそれらの組み合わせを包含することを意図する。
他に記載のない限り、“25-ヒドロキシビタミンD”は、25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3をまとめて意味することを意図する。例えば、アッセイされた血中25-ヒドロキシビタミンD濃度は、存在するなら、25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3の双方を含むであろう。
【0012】
また、本件明細書に記載される数値は、下位の値から上位の値までの全ての値を含み、即ち、列挙された最低値から最高値の間の数値の起こり得る全ての組み合わせが、本件明細書において明示的に定められると考慮すべきであることが明確に理解される。例えば、濃度範囲又は有益な効果範囲が、1〜50%として記載される場合、値、例えば、2〜40%、10〜30%又は1〜3%などが、本件明細書において明示的に列挙されていることが意図される。これらは、具体的に意図されるものの単なる例である。
本発明としては、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3の経口及び静脈内投与製剤を含む組成物、並びにそのような製剤を投与して、25-ヒドロキシビタミンD不足及び欠乏を治療することを、十二指腸及び空腸におけるこれらのプロホルモンの潜在的初回通過効果なしに;25-ヒドロキシビタミンD及びそれらの結果物(consequence)の管腔内、細胞内及び血中濃度における超生理学的急増なしに;投与された25-ヒドロキシビタミンDの実質的に上昇された異化を引き起こすことなしに;及びビタミンD補給に関連する深刻な副作用、即ち、ビタミンD毒性をもたらすことなしに行う方法が挙げられる。
本発明に従った経口投与が意図される制御放出組成物は、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の濃度が単位用量あたりで1〜50mcgとなるように設計され、及び延長時間にわたるヒト又は動物の消化管の回腸への25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の制御された又は実質的に一定の放出に影響を与えるような方法で製造される。その組成物により、(a)DBPにおける移送を介する25-ヒドロキシビタミンDの実質的に上昇された吸収及びカイロミクロンにおける移送を介する低減された吸収、並びに(b)24時間後-投与期間での実質的に一定の血中25-ヒドロキシビタミンD濃度の維持が確実なものとなる。カイロミクロンに対するよりむしろ循環DBPに対して優先する25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の漸進的、持続性及び直接放出を提供することにより、血中、管腔内及び細胞内25-ヒドロキシビタミンD濃度が急上昇し、即ち、超生理学的濃度及び関連する不要な異化が軽減され又は削除される。
【0013】
本発明に従った静脈内投与が意図される組成物は、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の濃度が単位用量あたりで1〜25mcgとなるように設計され、及び1〜5分間にわたる漸進的注入を可能にして、血中のDBPに直接的な、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の制御された又は実質的に一定の放出に影響を与えるような方法で製造される。その組成物により、投与された25-ヒドロキシビタミンDの完全なバイオアベイラビリティ、十二指腸及び空腸における初回通過効果の完全な排除、25-ヒドロキシビタミンDの低減された異化、並びに24時間後-投与期間での実質的に一定の血中25-ヒドロキシビタミンD濃度の維持が確実なものとなる。循環DBPに対する長期にわたる25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の漸進的、持続性及び直接放出を提供することにより、管腔内、細胞内及び更には血中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が急上昇し、即ち、超生理学的濃度が軽減され又は削除される。
本発明の組成物は、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3が、都合の良い連日の経口投与のために導入された、高度に安定性の医薬製剤を含む。開示される組成物は、ビタミンD又は25-ヒドロキシビタミンDの従来から知られた製剤と比較して、長期にわたる連続した規則正しい投与での2つの予期せぬ利益である、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度に回復させる際の卓越した効果及び卓越した安全性を伴って、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度における漸進的上昇及びその後の持続をもたらす。
【0014】
経口投与に適する25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の制御された、実質的に一定放出の製剤の製造は、多くの異なる技術に従って行うことができる。例えば、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3は、マトリックス内に、即ち、マトリックス内に慎重に選んだ比において律速成分及び賦形剤を含む独特な混合物内に分散させることができ、及びコーティング材料で包むことができる。種々のコーティング技術を利用して、医薬製剤からの25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の放出速度及び/又は部位を制御することができる。例えば、コーティングの溶解は、周囲媒体のpHにより誘発され得、及び経時的に生じるコーティングの漸進的溶解により、マトリックスが腸内環境の流体に付される。コーティングが透過性になった後、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3がマトリックスの外面から拡散する。この表面により、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3が使い果たされ、即ち、枯渇すると、基礎的貯蔵物(underlying store)が、崩壊マトリックスを通して外液へ拡散することにより枯渇され始める。
ある態様においては、本発明による製剤は、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を、回腸の内容物に付されたときに、制御された実質的に一定の放出において放出可能なように成分を留めるマトリックス内に提供する。
【0015】
25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を含有するマトリックスは、胃液における崩壊に抵抗性のコーティングで適切に被覆される。25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の、被覆された制御放出製剤は、次いで、被検体、例えば、動物又はヒト被験者及び患者に対して経口投与される。製剤は、小腸の近位部中を移動するので、腸溶性コーティングは、次第により透過性のものとなるが、適切な実施態様においては、それにより、持続性構造骨組みが、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を含有するマトリックス周辺に提供される。25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を含有するマトリックスは、有意に、透過性保護膜を通して回腸における腸液に付されるようになり、及び25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3は、次いで、マトリックスの単純拡散及び/又は遅延崩壊により漸進的に放出される。
一旦、回腸の内腔に放出されると、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3が、リンパ系に又は門脈血流に吸収され、そこで、DBPに結合し及びDBPにより運搬される。25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の大部分は、十二指腸及び空腸を越えるポイントで吸収される。小腸のこれらの近位部は、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の高い管腔内濃度に応答し得、及び、その過程において、有意量の25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3を異化し得る。実質的に、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の放出を回腸まで遅延させることにより、本件明細書に記載の医薬組成物は、実質的に、近位腸におけるこれらの潜在的初回通過効果を排除し、及び望まれていない異化作用を低減する。血流に吸収される前における投与されたビタミンDの有意な異化により、有意に、そのバイオアベイラビリティが低減される。初回通過効果の排除により、ビタミンD毒性の危険が低減される。25-ヒドロキシビタミンDの実質的に遅延された(即ち、十二指腸及び空腸を越えた)放出により、導入され及びカイロミクロンを介して小腸から吸収される25-ヒドロキシビタミンDの量が(カイロミクロン形成及び吸収が空腸において最初に生じるため)顕著に低減され及び対応して、腸壁を通して及びリンパ液又は門脈血中を循環するDBP上に直接吸収される25-ヒドロキシビタミンDの量が上昇される。
【0016】
本発明のある実施態様においては、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3の制御放出経口製剤を、一般には、以下の手順に従って製造する。十分な量の25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を、USP等級の無水エタノール(又は他の適切な溶剤)に完全に溶解し並びに適切な量及びタイプの医薬品等級の賦形剤と混合して、室温及びヒトの正常体温の双方において固体又は半固体であるマトリックスを形成する。マトリックスは、完全に又はほぼ完全に、胃での消化及び上部小腸に対して抵抗性であり、及び下部小腸において漸進的に崩壊する。
適切な製剤においては、マトリックスは、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を留め及び25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の放出を、遅延し比較的一定して、即ち、実質的に一定して、4〜8時間又はそれ以上の時間をかけて、単純拡散及び/又は漸進的崩壊により、下部小腸の管腔の内容物に対して行うことを可能にする。製剤は、更に、腸溶性コーティングを有し、該コーティングは、pHが約7.0〜8.0である水溶液において部分的に溶解し又は単純に溶解するが、それがあまりにも遅いので、25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の有意な放出が、製剤が十二指腸及び空腸を通過する後まで遅延する。
上で説明したように、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3の制御放出を提供する手段は、ワックスマトリックスシステム及びオイドラギトRS/RLシステム(独国ワイターシュタットのロームファーマ社製)を含む、約4時間以上かかる、活性成分の、知られた制御放出デリバリーシステムのいずれかより選ぶことができる。
【0017】
ワックスマトリックスシステムは、脂溶性マトリックスを提供する。ワックスマトリックスシステムでは、蜜ろう、白ろう、カチャロットワックス又は類似の組成物を利用し得る。活性成分は、腸液においてゆっくりと崩壊して、漸進的に、活性物質を放出するワックスバインダー中に分散させる。25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を含浸したワックスバインダーを、部分的に架橋したソフトゼラチンカプセル中に充填する。ワックスマトリックスシステムにより、体温で軟化し及び腸液においてゆっくりと崩壊して、活性成分を漸進的に放出するワックスバインダー中に活性成分が分散される。そのシステムは、適切には、場合によりオイルを添加してもよい、ワックスの混合物を含み、達成される融点は、体温より高いが、典型的には、ソフト及びハードゼラチンカプセルのいずれかのシェルを形成するために使用するゼラチン製剤又は腸溶性コーティングを形成するために使用する他の製剤の融点より低い。
具体的には、ある適切な実施態様において、マトリックスのために選んだワックスを溶融し及び完全に混合する。望ましい量のオイルをこの段階で添加し、次いで、十分に混合する。ろう様混合物を、次いで、その融点よりほんの少しだけ高い温度まで漸進的に冷却する。エタノール中に溶解した、望ましい量の25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を、溶融マトリックス中に均一に分配し、及びマトリックスをソフトゼラチンカプセルに充填する。充填カプセルは、アルデヒド、例えば、アセトアルデヒドを含有する溶液で、適切な時間処理して、カプセルシェル中のゼラチンを部分的に架橋させる。ゼラチンシェルは、数週間にわたり次第に架橋され及びそれにより、胃及び腸上部の内容物における溶解に対する抵抗性が高まる。正確に構成した場合、このゼラチンシェルは、経口投与後、漸進的に溶解し及び回腸に到達する時までに(十分な崩壊なしに)十分多孔性のものとなって、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3が、ワックスマトリックスから下部小腸の内容物中にゆっくりと拡散することが可能となる。
【0018】
有用な他の脂質マトリックスの例は、グリセリド、脂肪酸及びアルコール、及び脂肪酸エステルである。
他の適切な制御放出経口ドラッグデリバリーシステムは、オイドラギトRL/RSシステムであり、その中においては、活性成分、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を、寸法が25/30メッシュである顆粒に形成する。顆粒は、その後、水不溶性であるが、ゆっくりと水を透過し得る薄高分子ラッカー(thin polymeric lacquer)で均一に被覆する。被覆した顆粒は、場合により、添加剤、例えば、酸化防止剤、安定化剤、バインダー、潤滑剤及び加工助剤などと混合してもよい。混合物は、圧縮して、使用前には硬くて乾燥したタブレットにしてもよく及び更に被覆することが可能であり、又はそれは、カプセル中に注入してもよい。タブレット又はカプセルを飲み込み及びそれが水性腸液と接触した後、薄ラッカーが膨張し始め及び次第に腸液による透過が可能になる。腸液は、ラッカーコーティングをゆっくりと通過するので、及び含まれる25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3がゆっくりと放出される。タブレット又はカプセルが小腸を通過する時までに、約4〜8時間後又はそれより後に、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3が、ゆっくりとではあるが完全に放出されているであろう。従って、摂取したタブレットは、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3並びに任意の他の活性成分のストリーム(stream)を放出するであろう。
【0019】
オイドラギトシステムは、高透過性ラッカー(RL)及び低透過性ラッカー(RS)からなる。RSは、小割合の塩化メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルを有する中性膨潤性メタクリル酸エステルをベースとする水不溶性塗膜形成剤であり、第4級アンモニウム基の中性エステル基に対するモル比は約1:40である。また、RLは、小割合の塩化メタクリル酸トリメチルアンモニオエチルを有する中性メタクリル酸エステルをベースとする水不溶性膨潤性塗膜形成剤であり、第4級アンモニウム基の中性エステル基に対するモル比は約1:20である。コーティングの透過性及び薬剤放出の時間的経過は、コーティング材料RSのRLに対する割合を変動させることにより滴定することができる。オイドラギトRL/RSシステムの更なる詳細については、Rohm Tech, Inc. 195 Canal Street, Maiden, Mass., 02146から入手可能な技術刊行物を参照されたい。また、参考文献として本件明細書に組み込まれるK. Lehmann, D. Dreher “Coating of tablets and small particles with acrylic resins by fluid bed technology”, Int. J. Pharm. Tech. & Prod. Mfr. 2(r), 31-43 (1981)を参照されたい。
不溶性ポリマーの他の例としては、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸エステル及びブタジエンスチレンコポリマーなどが挙げられる。
【0020】
一旦、被覆顆粒について、タブレットへの形成又はカプセル内への注入のいずれかを行ったなら、そのタブレット又はカプセルは、pH7.0〜8.0で溶解する腸溶性コーティング材料で被覆する。そのようなpH依存性腸溶性コーティング材料の1つは、腸液においては溶解するが、胃液においては溶解しないオイドラギトL/Sである。他の腸溶性コーティング材料、例えば、胃液による溶解には抵抗性であるが、腸内エステラーゼの加水分解作用により容易に崩壊する酢酸フタル酸セルロース(CAP)を使用してもよい。
腸溶性コーティング材料及び制御放出コーティング材料の特定の選択は、4〜8時間又はそれ以上の時間にわたり制御された及び実質的に一定の放出を、その放出が製剤が回腸に到達するまで遅延されるように提供しなければならない。更に、本発明による制御放出組成物は、1日に1回投与した場合、適切には、1日に1回投与した、等しい投与量の25-ヒドロキシビタミンD
2/25-ヒドロキシビタミンD
3の即時放出組成物と比較して、実質的に一定の管腔内、細胞内及び血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を提供する。
本発明の他の実施態様においては、漸進的静脈内投与に適する、25-ヒドロキシビタミンD
2、25-ヒドロキシビタミンD
3又はそれらの組み合わせの、無菌等張製剤を製造してもよい。そのような製剤は、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3を、無水エタノール、プロピレングリコール又は他の適切な溶剤中に溶解し、及び得られた溶液を、適切な容量の注射用水中において界面活性剤、塩及び防腐剤と組み合せることにより製造する。そのような製剤は、ヘパリンロックを介して注射器からゆっくりと又は長い時間をかけて徐々に注入される多量の無菌溶液(例えば、塩水)への添加により投与することができる。
【0021】
投与形態物は、また、アジュバント、例えば、保存又は安定化アジュバントを含んでいてもよい。それらは、また、他の治療的に有益な物質を含んでいてもよく又は本件明細書及び請求の範囲において特定した2つ以上の化合物を混合物中に含んでいてもよい。
有利には、25-ヒドロキシビタミンD
2、25-ヒドロキシビタミンD
3又はそれらの組み合わせは、他の治療剤と一緒に、上記実施態様に従って、1日あたり1〜100mcgの投与量で、好ましくは、1日あたり5〜50mcgの投与量で経口又は静脈内投与することができる。本発明の化合物を他の治療剤と組み合せて投与する場合、投与する組み合わせにおける各化合物の割合は、取り組まれている具体的病状に依存するであろう。例えば、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3の経口投与を、1以上のカルシウム塩(カルシウムサプリメント又は食事に関するホスフェートバインダーとして表される)、ビスホスホネート、カルシウム擬態薬、ニコチン酸、鉄、ホスフェートバインダー、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、活性ビタミンDステロール、血糖及び高血圧コントロール剤並びに種々の抗腫瘍剤と共に行うように選択することができる。また、25-ヒドロキシビタミンD
2及び/又は25-ヒドロキシビタミンD
3の静脈内投与を、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、活性ビタミンDステロール、血糖及び高血圧コントロール剤並びに種々の抗腫瘍剤と共に行うように選択することができる。実際面では、本発明の化合物はより高い投与量で用い、そこでは、病状の治療処置が望ましい目的(end)であるが、より低い投与量を予防目的で一般的に使用し、所定のケースにおける具体的投与量は、投与する具体的化合物、治療すべき疾患、被検体の状態及び当該技術分野における当業者によりよく知られるような、薬剤活性又は被検体の応答を変え得る他の関連する医学的事実に従って調整することが理解される。
記載したデリバリーシステム中に25-ヒドロキシビタミンD
3及び25-ヒドロキシビタミンD
2の組み合わせを含ませることにより、得られる製剤が、ビタミンD
3及びビタミンD
2内分泌系の双方を支えるのに有用なものとなる。現在入手可能な経口ビタミンDサプリメント及び先に販売されていた、25-ヒドロキシビタミンD
3の経口製剤は、たった1つだけ又は他のシステムを支えるものである。
本発明を、以下の実施例により更に説明するが、それは、本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0022】
実施例1
経口投与用の制御放出製剤の1つの実施態様
精製した蜜ろう及びヤシ油を、1:1の比で組み合わせ及び均一な混合物が得られるまで連続的に混合しながら75℃に加熱した。ワックス混合物を、約45℃に冷却しながら連続的に均質化した。1:1の比での25-ヒドロキシビタミンD
2及び25-ヒドロキシビタミンD
3を無水エタノール中に溶解し及びエタノール溶液を、連続的均質化を伴って、溶融ワックス混合物に添加した。添加したエタノールの量は、1〜2v/v%の範囲内のものであった。混合を、混合物が均一になるまで継続した。均一混合物をソフトゼラチンカプセル中に充填した。カプセルを、直ちにリンスして、加工潤滑剤(processing lubricant)を除去し及びアセトアルデヒド水溶液中に簡単に含浸させて、ゼラチンシェルを架橋した。アセトアルデヒド溶液の濃度及び含浸時間は、近赤外分光光度法により測定される所望の程度の架橋が達成されるように選んだ。最終カプセルを洗浄し、乾燥し及び包装した。
【0023】
実施例2
漸進的静脈内投与用の製剤の1つの実施態様
TWEENポリソルベート20を約10〜16℃(約50〜60°F)に加熱し及び最少容量の無水エタノール中に溶解させた25-ヒドロキシビタミンD
3を連続的攪拌を伴って添加した。得られた、25-ヒドロキシビタミンD
3、無水エタノール及びTWEENポリソルベート20の均一溶液を、窒素を完全散布して、全ての溶解酸素を除去した、適切な容量の注射用水に移した。塩化ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(二塩基性及び一塩基性)及びエデト酸2ナトリウムを添加し、次いで、保護窒素雰囲気下での十分な攪拌を行って、2mLの単位容量あたりで:20mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3;<0.01%の無水エタノール;0.40%(w/v)のTWEENソルベート20;0.15%(w/v)の塩化ナトリウム;1.00%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム;0.75%(w/v)の無水第二リン酸ナトリウム;0.18%(w/v)の第一リン酸ナトリウム一水和物;及び0.11%(w/v)エデト酸2ナトリウムを含む等張均質混合物を得た。この混合物を、ろ過により殺菌し及び酸素汚染からの適切な保護を伴って、酸素ヘッドスペースが1%未満の琥珀色ガラスアンプル中に充填した。
【0024】
実施例3
犬において試験する薬物動態
20匹の雄性ビーグル犬を2つの比較群にランダムに分け及び30日間補足的ビタミンDを与えなかった。この期間の終わりに、群#1の犬の各々に、実施例1において記載したものと類似する、制御放出製剤で製造した、25mcgの25-ヒドロキシビタミンD
2を含有する単一ソフトゼラチンカプセルを与えた。他の群(群#2)の犬の各々に、中鎖脂肪酸トリグリセリド油中に溶解した、25mcgの25-ヒドロキシビタミンD
2を含有する単一即時放出ソフトゼラチンカプセルを与えた。全ての犬に、投薬前の少なくとも8時間は餌を与えなかった。犬の各々からの採血を、投薬(dose administration)から、0、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9、15、24、36及び72時間後に行った。採取した血液を25-ヒドロキシビタミンDの含有レベルについて分析し、及びデータを治療群により分析した。群#1の犬では、25-ヒドロキシビタミンDの平均血中濃度について、群#2の犬のものより、より緩やかな上昇及びより低い最大値(C
max)が観察された。しかしながら、群#1の犬では、群#1で観察されたC
maxがより低いものであったという事実にもかかわらず、群#2の犬と比較して、25-ヒドロキシビタミンD
2の平均血中濃度のより長期化した上昇が観察された。(t=0で観察した)予備投与バックグラウンド濃度について補正した、濃度曲線下平均面積(AUC)は、群#1について、25-ヒドロキシビタミンDについて実質的により高かった。これらの処置により、犬に対する、本発明の製剤中の25-ヒドロキシビタミンD
2の投与により、(中鎖脂肪酸トリグリセリド油における)即時放出用に配合した同量の25-ヒドロキシビタミンD
2を投与した後のものより、非常に高い漸進性で上昇し及び安定性がより高いままである、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が生じることが証明された。群#1における25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度について計算した、より高いAUCにより、本件明細書に記載したように配合した25-ヒドロキシビタミンD
2のバイオアベイラビリティが顕著に改良されたことが証明された。
【0025】
実施例4
健常ボランティアにおいて試験する薬物動態
18〜24才の健常な非肥満性成人16人が、11週の薬物動態学的研究の被験者となり、その中においては、被験者に、25-ヒドロキシビタミンD
2の2つの製剤を、連続的に及び二重盲式で与えた。一方の製剤(製剤#1)は、実施例1において記載したものと類似する、制御放出製剤で製造した、100mcgの25-ヒドロキシビタミンD
2を含有するソフトゼラチンカプセルであった。他方の製剤(製剤#2)は、中鎖脂肪酸トリグリセリド油中に溶解した、100mcgの25-ヒドロキシビタミンD
2を含有する、外観が同一の、即時放出ソフトゼラチンカプセルであった。試験開始前60日間及び試験終了まで継続して、被検者には、他のビタミンDサプリメントの摂取を慎んでもらった。研究の第1、3及び5日目に、全ての被験者から早朝空腹時血液サンプルを採取して、前治療基礎値を得た。第8日目の朝に、被験者から更なる空腹時血液サンプル(t=0)を採取し、被験者を、2つの治療群のうちの一方へ、ランダムに、割り当てた。双方の群に、朝食をとる前に単一試験カプセルを投与したが:一方の群には、製剤#1のカプセルを与え及び他方の群には、製剤#2のカプセルを与えた。各被験者からの血液採取を、投与から0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10、12、15、24、36、48、72及び108時間後に行った。第70日目の朝に、被検体から更なる早朝空腹時血液サンプル(t=0)を採取し及び被験者に、朝食をとる前に、他の試験製剤の単一カプセルを投与した。第70日目の朝に、被験者から更なる早朝空腹時血液サンプル(t=0)を採取し及び被検体に、朝食をとる前に他の試験製剤の単一カプセルを投与した。再び、各被験者からの血液採取を、投与から0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10、12、15、24、36、48、72及び108時間後に行った。全採取血液を、25-ヒドロキシビタミンDの含有濃度について分析し、及びそのデータを、基礎含有量の補正後に治療製剤により分析した。製剤#1では、製剤#2より、25-ヒドロキシビタミンDの平均血中濃度が緩やかに上昇し及びそのC
maxがより低いことが分かった。しかしながら、製剤#1では、また、製剤#2と比較して、観察されたC
maxがより低いという事実にもかかわらず、25-ヒドロキシビタミンD
2の平均血中濃度の上昇がより長期化した。平均AUCは、製剤#1の投与後、25-ヒドロキシビタミンDについて実質的により高かった。これらの処置により、健常成人に対する、本発明の製剤中の25-ヒドロキシビタミンD
2の投与により、(中鎖脂肪酸トリグリセリド油における)即時放出用に配合した同量の25-ヒドロキシビタミンD
2を投与した後のものより、非常に高い漸進性で上昇し及び安定性がより高いままである、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が生じることが証明された。製剤#1を投与した後における25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度について計算した、より高いAUCにより、本件明細書に記載したように配合した25-ヒドロキシビタミンD
2のバイオアベイラビリティがより高いことが証明された。
【0026】
実施例5
ビタミンD不足の健常成人男子ボランティアにおける効果研究
血清25-ヒドロキシビタミンDを最適濃度(>30ng/mL)に回復させる際の、ビタミンDの、3つの異なる製剤の効果を、ビタミンD不足であると診断された健常な非肥満性男性での23日間の研究において試験した。製剤の1つ(製剤#1)は、本発明について説明したように製造した、30mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3を含有するソフトゼラチンカプセルとした。第二製剤(製剤#2)は、中鎖脂肪酸トリグリセリド油中に溶解した、5,000 IUのエルゴカルシフェロールを含有する、外観が同一の即時放出ソフトゼラチンカプセルとした。第三製剤(製剤#3)は、中鎖脂肪酸トリグリセリド油中に溶解した、50,000 IUのコレカルシフェロールを含有する、外観がまた同一の即時放出ソフトゼラチンカプセルとした。全体で100名の健常なカフカス人(Caucasian)及びアフリカ系アメリカ人男性が、この研究の被験者となり、その全員について、年齢が30〜45才であり及び血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が15〜29ng/mL(包括的)であった。試験開始前60日間及び試験終了まで継続して、全ての被検者に、他のビタミンDサプリメントの摂取及び有意な日光暴露を避けてもらった。研究の第1及び2日目に、全ての被験者から早朝空腹時血液サンプルを採取して、血清25-ヒドロキシビタミンDの前治療基礎値を得た。第3日目の朝に、被験者から更なる空腹時血液サンプル(t=0)を採取し、被験者を、4つの治療群のうちの1つへ、ランダムに、割り当て及び朝食をとる前に単一試験カプセルを投与したが:群#1の各被験者には、製剤#1の単一カプセルを与え、並びに群2及び群3の各被験者には、製剤#2又は製剤#3の単一カプセルを、それぞれ、与えた。群#4の被験者には、適合性(matching)プラシーボカプセルを与えた。群1の各被験者には、第4〜22日目の朝に、朝食前、製剤#1の更なるカプセルを与えたが、群2、3及び4の被験者には、更なるカプセルは与えなかった。治療群は問わず、各被検者からの早朝空腹時血液サンプルの採取を、第4、5、6、10、17及び23日目(投与開始後の第1、2、3、7、14及び20日目)に行った。採取した血液の全てを25-ヒドロキシビタミンDの含有レベルについて分析し、及びデータを、基礎値の補正後に治療群により分析した。4つの全ての治療群の被験者について、平均基礎血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が、第1〜3日目に採取した空腹時血液サンプルの分析をベースとして、約16〜18ng/mLであった。群#4(コントロール群)の被験者では、研究期間中、平均血清25-ヒドロキシビタミンDは有意には変化しなかった。群1の被験者では、平均血清25-ヒドロキシビタミンDが徐々に上昇し、第23日目までに少なくとも30ng/mLに達した。それとは好対照に、群#2の被験者では、平均血清25-ヒドロキシビタミンDが、投与後(post-dosing)最初の数日間で、顕著に上昇し、25ng/mLの少し上の最大値に達し、及びその後急速に低下した。研究終了までに、血清25-ヒドロキシビタミンDは、群#2における基礎値より有意に低いものとなった。群3の被験者では、平均血清25-ヒドロキシビタミンDが、投与後の最初の2週間にわたり連続的に上昇し、その後、漸進的であるが進行的に低下した。研究終了までに、平均血清25-ヒドロキシビタミンDは30ng/mL未満となり、それは、前治療基礎値よりほんの約11ng/mLだけ高いものであった。この研究でのデータから証明されることには、本件明細書に記載したように配合した、600mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3を含み及び1日あたり30mcgの投与量で20日間投与した投与物(administration)では、低い血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度まで回復させる際の効果が、NKF及び経口ビタミン補給治療法の他の第一人者により現在推奨されるような、単回投与法で投与した、エルゴカルシフェロール又はコレカルシフェロールのいずれかを50,000 IU含む即時排出製剤のものより実質的に高い。
【0027】
実施例6
ビタミンD欠乏を示す末期腎不全患者における効果及び安全性の研究
血清25-ヒドロキシビタミンDを最適濃度(>30ng/mL)に回復させる際の静脈内25-ヒドロキシビタミンD
3の効果及び安全性についての試験を、定期的血液透析を必要とする末期腎不全(ESRD)に罹患し及びビタミンD不足と診断された患者での3ヶ月間の研究において行った。この研究で試験した製剤は、実施例2において記載したものと類似する、20mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3を含有する水性等張及び無菌溶液であった。全部で50名の健常なカフカス人、アジア人、ヒスパニック及びアフリカ系アメリカ人が、この研究の被験者となり、全員が、定期的な血液透析を少なくとも4ヶ月間受けており及び15ng/mL未満の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度を有していた。参加前に、全ての被験者から、少なくとも1週間おいて2つの早朝空腹時血液サンプルを採取して、血清カルシウム、血漿インタクト(intact)PTH及び血清25-ヒドロキシビタミンDの前治療基礎値を得た。第1日目の朝に、被験者を2つの治療群の一方にランダムに分け、及び被験者に対する試験製剤又は適合性プラシーボでの週に3回の投与を開始した。全ての投与は、定期的血液透析の期間に行い及び血液透析器から出る血液中への漸進的注入(1〜5分間かかる)により達成した。各被験者からの更なる空腹時血液サンプルの採取及び24時間蓄尿を、血清カルシウム、血漿インタクトPTH及び血清25-ヒドロキシビタミンDの測定のために年に4回行った。研究を行っている間、全ての被験者が、一日当たりの元素カルシウムの摂取量を約1,000〜1,500mgにする(必要に応じ、自己選択ダイエット及びカルシウムサプリメントによる)という栄養士の継続的指導に従った。研究の終わりに、実験室データを、治療群により及び試験製剤により、基礎値の適切な補正後に分析した。双方の群が、血清25-ヒドロキシビタミンD(10.7〜11.9ng/mLの範囲)、血漿インタクトPTH(45.3〜52.1pg/mLの範囲)及び血清カルシウム(8.72〜9.31mg/dLの範囲)についての比較可能な平均基礎値を有していた。研究の間、プラシーボ(コントロール)群においては、実験室平均値についての有意な変化は観察されなかった。25-ヒドロキシビタミンD
3を投与した治療群の被験者では、血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が、投与後の最初の3ヶ月間、進行的に上昇し、その後、定常状態濃度に達した。平均血清カルシウムは、25-ヒドロキシビタミンD
3を投与した治療群においては基礎値から有意に上昇し、及びプラシーボ群において観察されたものより有意に高かった。血清カルシウムが9.5mg/dLより高いとして定義される高カルシウム血症の発現が、稀に、双方の治療群において観察された。この研究からのデータにより、25-ヒドロキシビタミンD
3の静脈内製剤が、カルシウム及びPTH代謝に関連する、受け入れ不能な副作用を生じることなく、血清25-ヒドロキシビタミンDを上昇させる点で効果的であることが証明される。
本件明細書において記載した全ての特許文献、刊行物及び参考文献は、ここに、参考文献として完全に組み込まれるものとする。本件明細書の開示内容と組み込まれた特許文献、刊行物及び参考文献で矛盾が生じた場合には、本件明細書の開示内容が優先されるべきである。