特許第6023742号(P6023742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023742
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】正帯電性静電潜像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20161027BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   G03G9/08 351
   G03G9/08 374
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-83046(P2014-83046)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-203772(P2015-203772A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年3月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】高綱 徹
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−054455(JP,A)
【文献】 特開2012−068497(JP,A)
【文献】 特開平09−325512(JP,A)
【文献】 特開2013−140235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトナー粒子を含む正帯電性静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを有し、
前記外添剤は、酸化アルミニウム粒子と、前記酸化アルミニウム粒子の表面に形成されたコート層とを有し、
前記コート層は含窒素樹脂を含み、
前記外添剤の体積抵抗値は1.0×108Ω・cm以上1.0×1011Ω・cm以下である、正帯電性静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
前記含窒素樹脂は熱硬化性樹脂である、請求項1に記載の正帯電性静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
前記含窒素樹脂はメラミン樹脂である、請求項に記載の正帯電性静電潜像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用トナーに関し、特に、外添剤を有するトナー粒子を含む正帯電性静電潜像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電潜像現像用トナーを用いて画像を形成する方法の例としては、電子写真法が挙げられる。電子写真法では、帯電させた感光体ドラムの表面を露光して、感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する。続けて、静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する。続けて、形成されたトナー像を記録媒体に転写する。これにより、記録媒体に画像が形成される。
【0003】
トナーに流動性を付与するため、又はトナーの帯電量を最適化するため、又はトナーのクリーニング性を向上させるために、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させた静電潜像現像用トナーが知られている。トナー母粒子は、結着樹脂と内添剤(着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性材料の少なくとも1つ)とを含む。外添剤は、無機材料(例えば、シリカ又は酸化チタン)から構成されることが多い。
【0004】
しかし、シリカ又は酸化チタンのような無機材料の微粉末は負に帯電する傾向がある。このため、こうした無機材料の微粉末を正帯電性のトナーに用いる場合には、粉末(各粒子)の表面に正帯電性の極性基を導入することが提案されている。例えば特許文献1には、外添剤の表面がアミノ基含有化合物で処理されたトナーが開示されている。また、特許文献2には、アルキルトリアルコキシシランで表面処理された酸化チタンと、アンモニウム変性ポリシロキサンで処理されたシリカとを有する微粒子を含むトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/114502号
【特許文献2】特開平10−104869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたトナーは、ストレスがかかると帯電量が大きく変化し易い。また、周囲環境の変化によってトナー粒子の帯電量が変動し易い。
【0007】
また、特許文献2に記載されたトナーでは、高画像濃度の画像を形成する時に、トナーの帯電不良に起因してかぶりが生じやすい。かぶりは、感光体ドラムの表面において画像データが無いためにトナーが付着しないはずの箇所(感光体白紙部)にトナー(逆チャージトナー)が付着することで、逆チャージトナーが感光体白紙部を現像し、感光体ドラムから記録媒体に転写された画像の、本来白くなるべき部分が黒くなる現象である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低画像濃度の画像の形成を長期にわたって行った後に高画像濃度の画像を連続して形成した場合であっても、帯電性が低下しにくく、形成した画像にかぶりが生じにくい正帯電性静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。また、本発明は、環境が変動しても帯電性が変化しにくい正帯電性静電潜像現像用トナーを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る正帯電性静電潜像現像用トナーは、複数のトナー粒子を含む。前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを有する。前記外添剤は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子の表面に形成されたコート層とを有する。前記コート層は含窒素樹脂を含む。前記金属酸化物粒子の金属イオンの電気陰性度が11以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低画像濃度の画像の形成を長期にわたって行った後に高画像濃度の画像を連続して形成した場合であっても、帯電性が低下しにくく、形成した画像にかぶりが生じにくい正帯電性静電潜像現像用トナーを提供することが可能になる。また、本発明によれば、この効果に加えて又はこの効果に代えて、環境が変動しても帯電性が変化しにくい正帯電性静電潜像現像用トナーを提供することが可能になるという効果が奏される場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態に係るトナーは、静電荷像現像用トナーである。本実施形態のトナーは、多数の粒子(以下、トナー粒子と記載する)から構成される粉体である。本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性のトナーとして、電子写真装置(画像形成装置)で用いることができる。
【0013】
電子写真装置では、トナーを含む現像剤を用いて静電荷像を現像する。詳しくは、感光体上に静電潜像を形成する。続けて、帯電したトナーを静電潜像に付着させて、感光体上にトナー像を形成する。続けて、付着したトナーを転写ベルトに転写した後、さらに転写ベルト上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して記録媒体に定着させる。これにより、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
【0014】
以下、本実施形態に係るトナー(特にトナー粒子)の構成について説明する。
【0015】
トナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを有する。トナー母粒子は、結着樹脂を含む。また、トナー母粒子は、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤の少なくとも1つ)を含有していてもよい。また、トナー母粒子の表面には外添剤が付着している。なお、トナー粒子の構成は上記に限られない。トナー粒子は、カプセル化されていてもよい。カプセル化されたトナー粒子(カプセルトナー)は、結着樹脂及び内添剤を含むコアと、コアの表面に形成された樹脂層(シェル層)とを有する。
【0016】
以下、トナー母粒子(結着樹脂及び内添剤)、及び外添剤について、順に説明する。
【0017】
<トナー母粒子>
[結着樹脂]
結着樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。結着樹脂として熱可塑性樹脂を用いることで、トナーの定着性が向上する。結着樹脂としての熱可塑性樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、又はスチレン−ブタジエン樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。1種の熱可塑性樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
結着樹脂としてスチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂の少なくとも一方を用いたトナーは、帯電性、結着樹脂中の着色剤の分散性、及び記録媒体に対する定着性に優れる。以下、スチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂について説明する。
【0019】
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体である。スチレン系モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。アクリル系モノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、又はメタクリル酸iso−ブチルが挙げられる。
【0020】
ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコールと2価又は3価以上のカルボン酸とを縮重合又は共縮重合することで得られる。
【0021】
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる2価アルコールの例としては、ジオール類又はビスフェノール類が挙げられる。ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAが挙げられる。
【0022】
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0023】
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、又はアルキルコハク酸もしくはアルケニルコハク酸(n−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸)が挙げられる。
【0024】
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
【0025】
上記2価又は3価以上のカルボン酸は、エステル形成性の誘導体(例えば、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル)として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。
【0026】
結着樹脂は、熱可塑性樹脂のみからなってもよいし、熱可塑性樹脂に加えて架橋剤(例えば、熱硬化性樹脂)を含んでいてもよい。結着樹脂中に架橋構造を導入することで、トナーの高い定着性を維持しながら、トナーの保存安定性、形態保持性、及び/又は耐久性を向上させることが可能になる。熱可塑性樹脂に添加する熱硬化性樹脂の好適な例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、又はシアネート樹脂が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂及びシアネート系樹脂がそれぞれ、結着樹脂として特に適している。1種の熱硬化性樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上の熱硬化性樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
結着樹脂の軟化点(Tm)は、80℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上140℃以下であることがより好ましい。
【0028】
結着樹脂のTmは、例えば高架式フローテスターを用いて測定できる。より具体的には、高架式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(結着樹脂)をセットし、所定の条件で結着樹脂を溶融流出させる。そして、結着樹脂の、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブを測定する。得られたS字カーブから結着樹脂のTmを読み取ることができる。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が(S1+S2)/2となる温度が、測定試料(結着樹脂)のTmに相当する。
【0029】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上65℃以下であることが好ましく、50℃以上60℃以下であることがより好ましい。結着樹脂のガラス転移点(Tg)が50℃以上65℃以下であれば、トナーの高い定着性を維持しながら、トナーの保存安定性、形態保持性、又は耐久性を向上させることが可能になる。
【0030】
結着樹脂のTgは、例えば示差走査熱量計を用いて測定できる。より具体的には、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて試料(結着樹脂)の吸熱曲線を測定することで、得られた吸熱曲線における比熱の変化点から結着樹脂のTgを求めることができる。
【0031】
[着色剤]
トナーの色に合わせて顔料又は染料を着色剤として用いることができる。着色剤の使用量は、100質量部の結着樹脂に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
トナー母粒子は、黒色着色剤を含んでいてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色した着色剤を用いてもよい。
【0033】
トナー母粒子は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
【0034】
イエロー着色剤は、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリルアミド化合物から構成されることが好ましい。イエロー着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが挙げられる。
【0035】
マゼンタ着色剤は、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物から構成されることが好ましい。マゼンタ着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が挙げられる。
【0036】
シアン着色剤は、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物から構成されることが好ましい。シアン着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0037】
[離型剤]
離型剤は、例えばトナーの定着性及び/又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、100質量部の結着樹脂に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0038】
離型剤の好適な例としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、又はベトロラクタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスが挙げられる。
【0039】
[電荷制御剤]
電荷制御剤は、例えばトナーの帯電安定性、帯電立ち上がり特性、及び/又は耐久性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標になる。
【0040】
正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、又はキノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、又はアジンディーブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、又はニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、又はニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム又はデシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が挙げられる。迅速な立ち上がり性を得るためには、ニグロシン化合物が特に好ましい。上記正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、及びカルボキシル基の少なくとも1つを有する樹脂(例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、又はポリエステル系樹脂)も、正帯電性の電荷制御剤として使用できる。帯電量を所望の値に容易に調節するためには、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系共重合樹脂が特に好ましい。4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系共重合樹脂の合成においてスチレン単位と共重合させるアクリル系コモノマーの好適な例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、又は(メタ)アクリル酸iso−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。1種の樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上の樹脂を組み合わせて使用してもよい。樹脂の分子量は任意である。
【0042】
4級アンモニウム塩の例としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が挙げられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、又はジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルメタクリルアミドが挙げられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。さらに、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系共重合樹脂を合成する際(重合時)には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、又はN−メチロール(メタ)アクリルアミドのようなヒドロキシ基含有重合性モノマーを、上記4級アンモニウム塩の材料と併用してもよい。
【0043】
<外添剤>
外添剤は、例えばトナー粒子の流動性及び/又は取扱性を向上させる目的で使用される。外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。また、外添剤の粒子径は0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0044】
本実施形態のトナーでは、外添剤が、金属酸化物粒子と、金属酸化物粒子の表面に形成されたコート層とを有する。金属酸化物粒子は、コート層で被覆されている。また、本実施形態のトナーでは、コート層が含窒素樹脂を含む。コート層が含窒素樹脂を含むことで、コート層が金属酸化物粒子に強固に付着し易くなったり、外添剤の帯電性を適正に保ち易くなったりする。また、コート層に含窒素樹脂を含ませることで、高い硬度を有するコート層が得られ易くなる。なお、含窒素樹脂は、その化学構造中に窒素原子を含む樹脂である。
【0045】
外添剤の帯電性を適正に保つ(帯電不足と過剰なチャージアップとの両方を抑制する)ためには、金属酸化物粒子の金属イオンの電気陰性度が、11以下であることが好ましく、6以上11以下であることがより好ましく、8以上10.5以下であることがより好ましい。なお、金属酸化物粒子の金属元素の電気陰性度をχ、金属酸化物粒子の金属イオンの価数をZとすると、金属酸化物粒子の金属イオンの電気陰性度χiは「χi=χ(1+2Z)」で表される。例えば、酸化アルミニウム粒子のアルミニウムイオン(3価)の電気陰性度は10.5(=1.5×(1+2×3))である。また、酸化チタン粒子のチタンイオン(4価)の電気陰性度は13.5(=1.5×(1+2×4))である。また、酸化亜鉛粒子の亜鉛イオン(2価)の電気陰性度は8.0(=1.6×(1+2×2))である。
【0046】
金属酸化物粒子の好適な例としては、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、又は酸化亜鉛が挙げられる。1種の金属酸化物粒子を単独で使用してもよいし、2種以上の金属酸化物粒子を組み合わせて使用してもよい。また、金属酸化物粒子と他の無機粒子(例えば、シリカ粒子)とを併用してもよいし、金属酸化物粒子と有機粒子とを併用してもよい。
【0047】
外添剤の帯電性を適正に保つためには、外添剤の体積抵抗値が1.0×108Ω・cm以上1.0×1011Ω・cm以下であることが好ましい。
【0048】
コート層に含まれる含窒素樹脂は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。コート層に含まれる含窒素樹脂の好適な例としては、アミノ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アニリン樹脂、グアナミン樹脂、又はポリウレタン樹脂が挙げられる。中でも、メラミン樹脂又は尿素樹脂を用いることが好ましい。コート層がメラミン樹脂又は尿素樹脂を含む場合には、コート層と金属酸化物粒子との間の接着性が長期にわたって高く維持され易い。
【0049】
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとを重縮合させることで得られる。また、尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとを重縮合させることで得られる。メラミン樹脂は、例えば次のような方法で生成できる。
【0050】
まず、メラミンとホルムアルデヒドとを付加反応させる。これにより、メラミン樹脂の前駆体(メチロールメラミン)が得られる。続けて、メチロールメラミン同士を縮合反応(架橋反応)させる。これにより、一のメチロールメラミンのアミノ基が他のメチロールメラミンのアミノ基及びメチレン基を介して結合される。その結果、メラミン樹脂が得られる。なお、上記方法において、メラミンに代えて尿素を使用すれば、尿素樹脂を生成できる。
【0051】
コート層に含まれる樹脂のうち、80質量%以上の樹脂が含窒素樹脂であることが好ましく、90質量%以上の樹脂が含窒素樹脂であることがより好ましく、100質量%の樹脂が含窒素樹脂であることがさらに好ましい。
【0052】
<トナーの製造方法>
[トナー母粒子の作製]
トナー母粒子の作製方法の好適な例としては、粉砕法又は凝集法が挙げられる。
【0053】
粉砕法の一例では、まず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を混合する。続けて、得られた混合物を1軸又は2軸の押出機のような溶融混練装置を用いて溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。これにより、トナー母粒子が得られる。
【0054】
凝集法の一例では、まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各微粒子を水性媒体中で凝集させる。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。これにより、トナー母粒子が得られる。
【0055】
[外添]
外添方法の好適な例としては、トナー母粒子に外添剤が埋め込まれないような条件で、ヘンシェルミキサー又はナウターミキサーのような混合機を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
【0056】
(外添剤の作製方法)
以下、外添剤の作製方法の一例(反応法)について説明する。なお、効率的に外添剤を形成するためには、多数の外添剤を同時に形成することが好ましい。
【0057】
まず、pHが調整された金属酸化物粒子の分散液(金属酸化物粒子が分散している液)にコート層の材料(例えば、モノマー又はプレポリマー)を添加する。続けて、分散液を攪拌しながら加熱して、分散液中のコート層の材料を全て反応させる。その後、分散液を常温まで冷却する。これにより、外添剤の分散液が得られる。外添剤は、金属酸化物粒子と、金属酸化物粒子の表面に形成されたコート層とを有する。
【0058】
メラミン樹脂又は尿素樹脂を含むコート層を形成する場合には、コート層を形成する前に、金属酸化物粒子の分散液のpHを、2以上6以下に調整することが好ましく、3以上4以下に調整することがより好ましい。分散液のpHを中性(pH7)よりも酸性側に調整することで、コート層の形成を促進することが可能になる。
【0059】
メラミン樹脂又は尿素樹脂を含むコート層を形成する場合には、コート層を形成する際の、金属酸化物粒子の分散液の温度を60℃以上100℃以下にすることが好ましい。分散液の温度を60℃以上100℃以下にすることで、コート層の形成を促進することが可能になる。
【0060】
外添剤の分散液を固液分離(例えば、濾過)することで、液から外添剤を取り出すことができる。必要に応じて、液から取り出された外添剤を、例えば水を用いて洗浄することが好ましい。外添剤の洗浄方法の好適な例としては、次の2つの方法が挙げられる。第1の方法は、外添剤の分散液を濾過してウェットケーキ状の外添剤を回収し、得られたウェットケーキ状の外添剤を水を用いて洗浄する方法である。第2の方法は、分散液中で外添剤を沈降させ、分散液の上澄み液を水と置換し、置換後に分散液中の外添剤を水に再分散させる方法である。
【0061】
また、必要に応じて、上記洗浄工程の後に外添剤を乾燥することが好ましい。外添剤の乾燥方法の好適な例としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、又は減圧乾燥機のような乾燥機を用いる方法が挙げられる。
【0062】
上記作製方法(反応法)により得られた外添剤を粉砕して、外添剤を微粒子化してもよい。外添剤の粉砕方法の好適な例としては、連続式表面改質装置、気流式粉砕装置、又は機械式粉砕装置のような粉砕装置を用いる方法が挙げられる。
【0063】
[2成分現像剤]
本実施形態のトナーをキャリアと混合して2成分現像剤を作製してもよい。2成分現像剤の作製方法の好適な例としては、ボールミルのような混合装置を用いてトナーとキャリアとを混合する方法が挙げられる。
【0064】
2成分現像剤を作製する場合、キャリアとして磁性キャリアを用いることが好ましい。キャリアの好適な例としては、キャリア芯材が樹脂で被覆されたキャリアが挙げられる。
【0065】
キャリア芯材の例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、もしくはコバルトのような金属の粒子、又はこれらの材料とマンガン、亜鉛、もしくはアルミニウムのような金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金又は鉄−コバルト合金のような鉄合金の粒子;酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、又はニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子;リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、又はロッシェル塩のような高誘電率物質の粒子が挙げられる。また、上記粒子を樹脂中に分散させた樹脂キャリアを、キャリア芯材として用いてもよい。
【0066】
キャリア芯材を被覆する樹脂の例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、又はポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、又はアミノ樹脂が挙げられる。1種の樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上の樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。キャリアの粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定できる。
【0068】
2成分現像剤におけるトナーの含有量は、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量が、3質量%以上20質量%以下であれば、2成分現像剤を用いて高い画像濃度の画像を形成し易くなる。また、トナーの帯電不良が生じにくくなる。その結果、画像形成装置内部の汚染を抑制できる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例によって限定されない。
【0070】
表1に、本発明の実施例又は比較例に係るトナーA〜F(それぞれ正帯電性静電潜像現像用トナー)を示す。
【0071】
【表1】
【0072】
トナーA〜Fではそれぞれ、表2に示す外添剤Pa〜Pfを外添剤として用いた。
【0073】
【表2】
【0074】
<トナーAの製造方法>
[トナー母粒子の作製]
混合機(日本コークス工業株式会社製「ヘンシェルミキサー」)を用いて、結着樹脂100質量部に対して着色剤4質量部と電荷制御剤1質量部と離型剤5質量部とを混合した。
【0075】
結着樹脂としては、酸価5.6mgKOH/g、融点120℃、ガラス転移点(Tg)56℃、数平均分子量(Mn)1500、質量平均分子量(Mw)45000のポリエステル樹脂を用いた。着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー顔料)を用いた。電荷制御剤としては、クラリアント社製の「P51」を用いた。離型剤としては、ワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)を用いた。
【0076】
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて混練した。続けて、得られた混練物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて粉砕した。続けて、得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェット」)を用いて分級した。これにより、中位径D50(体積分布基準)6.8μmのトナー母粒子(粉体)が得られた。
【0077】
[外添]
続けて、混合機(日本コークス工業株式会社製「ヘンシェルミキサー」)を用いて、100質量部のトナー母粒子と3.0質量部の外添剤Paとを混合することにより、トナー母粒子を外添処理した。これにより、外添剤Paが付着したトナー粒子を多数有するトナーA(粉体)が得られた。トナーAの製造に用いた外添剤Paは、以下に示す方法で調製した。
【0078】
(外添剤Paの調製)
常温環境下において、混合装置(プライミクス株式会社製「T.K.ハイビスディスパーミックスHM−3D−5型」)を用いて、イオン交換水500mlと50gの金属酸化物粒子aとを回転速度30rpmで30分間攪拌した。金属酸化物粒子aは、金属イオン(3価のアルミニウムイオン)の電気陰性度が10.5である親水性フュームド酸化アルミニウム微粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)Alu130」)であった。これにより、アルミナ粒子が固体状態で水性媒体中に分散した分散液(以下、アルミナ分散液と記載する)が得られた。
【0079】
続けて、得られたアルミナ分散液に0.5Nの希塩酸を添加することにより、アルミナ分散液のpHを3以上4以下に調整した。続けて、pH3以上4以下のアルミナ分散液に、コート材(コート層の材料)としての水溶性メチロールメラミン(日本カーバイド工業株式会社製「ニカレヂンS−260」)25gを投入した。続けて、上記混合装置を用いて、常温環境下においてアルミナ分散液を回転速度30rpmで5分間攪拌した。続けて、混合装置の内容物を、温度計及び攪拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコに移した。
【0080】
続けて、フラスコ内容物を回転速度90rpmで攪拌しながら35℃から65℃まで1℃/3分の速度で昇温した。攪拌には、モーター(アズワン株式会社製「アズワントルネードモーター1−5472−04」)に攪拌羽根(アズワン株式会社製「アズワン攪拌羽根R−1345型」)を取り付けた攪拌装置を用いた。
【0081】
続けて、フラスコ内容物を温度65℃(コート材の反応温度)に保ちつつ回転速度90rpmで30分間攪拌した。これにより、アルミナ粒子の表面に、含窒素樹脂(メラミン樹脂)から構成されるコート層が形成された。その結果、金属酸化物粒子(アルミナ粒子)の表面にコート層が形成された粒子(以下、コート粒子と記載する)が得られた。その後、フラスコ内容物を常温まで冷却した。その結果、コート粒子の分散液が得られた。
【0082】
続けて、ブフナー漏斗を用いて、コート粒子の分散液を吸引ろ過(固液分離)した。これにより、ウェットケーキ状のコート粒子が得られた。続けて、ウェットケーキ状のコート粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、コート粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃及びブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のコート粒子を乾燥させた。これにより、コート粒子の粗粉体が得られた。
【0083】
続けて、粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「ジェットミルI−2型」)を用いて、粉砕圧0.6MPaの条件で、乾燥したコート粒子の粗粉体を微粉砕した。その結果、外添剤Pa(微粉体)が得られた。微粉砕においては、衝突板としてセラミック製の平板を用いた。外添剤Paの体積抵抗値は5.0×1010Ω・cmであった。体積抵抗値の測定方法は、以下のとおりである。
【0084】
(体積抵抗値の測定方法)
円筒形の金属製セルに、厚みM(cm)の試料を充填し、試料の上下にそれぞれ試料に接するように電極面積S(cm2)の電極を配し、上部電極に荷重686kPa(7kgf/cm2)を加えた。この状態で電極間に電圧V0を印加し、その時に流れる電流I(A)から、式「体積抵抗率=(V0/I)×(S/M)」に基づいて体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。電極と試料との接触面積は2.26cm2、電圧V0は100Vであった。
【0085】
次に、トナーB〜Fの製造方法について説明する。なお、トナーB〜Fに関する評価方法は、特に記載していなければ、トナーAに関する評価方法と同じである。
【0086】
<トナーBの製造方法>
トナーBの製造方法は、外添剤として、外添剤Paの代わりに外添剤Pbを使用した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。外添剤Pbの調製方法は、コート材の反応温度を65℃から90℃に変更した以外は、外添剤Paの調製方法と同じであった。外添剤Pbの体積抵抗値は3.0×1012Ω・cmであった。
【0087】
<トナーCの製造方法>
トナーCの製造方法は、外添剤として、外添剤Paの代わりに外添剤Pcを使用した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。外添剤Pcの調製方法は、金属酸化物粒子aの代わりに金属酸化物粒子bを使用した以外は、外添剤Pbの調製方法と同じであった。金属酸化物粒子bは、金属イオン(2価の亜鉛イオン)の電気陰性度が8.0である酸化亜鉛微粒子(テイカ株式会社製「MZ−500」、平均一次粒子径25nm)であった。外添剤Pcの体積抵抗値は7.0×108Ω・cmであった。
【0088】
<トナーDの製造方法>
トナーDの製造方法は、外添剤として、外添剤Paの代わりに外添剤Pdを使用した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。外添剤Pdの調製方法は、金属酸化物粒子aの代わりに金属酸化物粒子cを使用した以外は、外添剤Pbの調製方法と同じであった。金属酸化物粒子cは、金属イオン(4価のチタンイオン)の電気陰性度が13.5である酸化チタン微粒子(日本アエロジル株式会社製「P90」、未処理の乾式フュームド酸化チタン)であった。外添剤Pdの体積抵抗値は6.0×108Ω・cmであった。
【0089】
<トナーEの製造方法>
トナーEの製造方法は、外添剤として、外添剤Paの代わりに外添剤Peを使用した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。
【0090】
(外添剤Peの調製)
トルエン(和光純薬工業株式会社製「トルエン一級」)500mlと、コート材としてのγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APTS)(信越化学工業株式会社製「KBE−903」)1gとを、混合装置(プライミクス株式会社製「T.K.ハイビスディスパーミックスHM−3D−5型」)に投入して、γ−APTSをトルエンに溶解させた。さらに、50gの金属酸化物粒子aを混合装置に投入して、常温環境下において、混合装置の内容物を回転速度30rpmで30分間攪拌した。続けて、混合装置の内容物を、温度計及び攪拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコに移した。
【0091】
続けて、フラスコ内容物を回転速度90rpmで攪拌しながら35℃から70℃まで1℃/3分の速度で昇温した。攪拌には、モーター(アズワン株式会社製「アズワントルネードモーター1−5472−04」)に攪拌羽根(アズワン株式会社製「アズワン攪拌羽根R−1345型」)を取り付けた攪拌装置を用いた。
【0092】
続けて、フラスコ内容物を温度70℃に保ちつつ回転速度90rpmで30分間攪拌した。続けて、ロータリーエヴァポレーターを用いて、フラスコ内容物からトルエンを留去し、フラスコ内容物から固形物を取り出した。続けて、減圧乾燥機を用いて、減圧乾燥機の温度を50℃、圧力を0.1kPaに設定し、減量しなくなるまで固形物を乾燥した。続けて、電気炉を用いて、電気炉の温度を200℃に設定し、窒素気流下において固形物を3時間熱処理した。これにより、アミノ基が導入されたアルミナ粒子(コート粒子)の粗粉体が得られた。しかし、アルミナ粒子の表面に樹脂は形成されなかった。
【0093】
続けて、粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「ジェットミルI−2型」)を用いて、粉砕圧0.6MPaの条件で、乾燥したコート粒子の粗粉体を微粉砕した。その結果、外添剤Pe(微粉体)が得られた。微粉砕においては、衝突板としてセラミック製の平板を用いた。外添剤Peの体積抵抗値は3.0×109Ω・cmであった。
【0094】
<トナーFの製造方法>
トナーFの製造方法は、外添剤として、外添剤Paの代わりに外添剤Pfを使用した以外は、トナーAの製造方法と同じであった。
【0095】
(外添剤Pfの調製)
n−ヘキサン(和光純薬工業株式会社製「n−ヘキサン一級」)500mlと、コート材としてのアミノ変性シリコンオイル(信越化学工業株式会社製「KF857」)1.0gとを、混合装置(プライミクス株式会社製「T.K.ハイビスディスパーミックスHM−3D−5型」)に投入して、アミノ変性シリコンオイルをn−ヘキサンに溶解させた。さらに、50gの金属酸化物粒子aを混合装置に投入して、常温環境下において、混合装置の内容物を回転速度30rpmで30分間攪拌した。続けて、混合装置の内容物を、温度計及び攪拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコに移した。
【0096】
続けて、フラスコ内容物を回転速度90rpmで攪拌しながら35℃から70℃まで1℃/3分の速度で昇温した。攪拌には、モーター(アズワン株式会社製「アズワントルネードモーター1−5472−04」)に攪拌羽根(アズワン株式会社製「アズワン攪拌羽根R−1345型」)を取り付けた攪拌装置を用いた。
【0097】
続けて、ロータリーエヴァポレーターを用いて、フラスコ内容物からヘキサンを留去し、フラスコ内容物から固形物を取り出した。続けて、減圧乾燥機を用いて、減圧乾燥機の温度を70℃、圧力を0.1kPaに設定し、減量しなくなるまでフラスコ内容物を乾燥した。続けて、電気炉を用いて、電気炉の温度を200℃に設定し、窒素気流下においてフラスコ内容物を3時間熱処理した。これにより、アミノ基が導入されたアルミナ粒子(コート粒子)の粗粉体が得られた。しかし、アルミナ粒子の表面に樹脂は形成されなかった。
【0098】
続けて、粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「ジェットミルI−2型」)を用いて、粉砕圧0.6MPaの条件で、乾燥したコート粒子の粗粉体を微粉砕した。その結果、外添剤Pf(微粉体)が得られた。微粉砕においては、衝突板としてセラミック製の平板を用いた。外添剤Pfの体積抵抗値は2.0×109Ω・cmであった。
【0099】
<評価方法>
各試料(トナーA〜F)の評価方法は、以下のとおりである。
【0100】
[画像形成]
(現像剤の調製)
粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」)を用いて、現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550」用キャリア)100質量部と、試料(トナー)12質量部とを、30分間混合した。これにより、2成分現像剤が得られた。
【0101】
(評価機)
評価機として、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550」)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機のシアン用の現像器に投入し、試料(補充用のトナー)を評価機のシアン用のトナーコンテナに投入した。
【0102】
(画像濃度、かぶり濃度、帯電量)
常温常湿環境(温度23℃、湿度50%RH)と、高温高湿環境(温度32.5℃、湿度80%RH)と、低温低湿環境(温度10℃、湿度20%RH)との3つの環境条件の各々で、試料(トナー)を24時間放置した後、上記評価機を用いて、ソリッド画像を含むサンプル画像を記録媒体(印刷用紙)に印刷した。そして、記録媒体に形成されたソリッド画像の画像濃度(ID)と、記録媒体のかぶり濃度(FD)と、現像剤中のトナーの帯電量とを測定した。
【0103】
続けて、上記3つの環境条件の各々において、評価機を用いて印字率0.5%の所定の評価パターンを5000枚の記録媒体(印刷用紙)に印刷した。その後、上記評価機を用いて、ソリッド画像を含むサンプル画像を記録媒体(印刷用紙)に印刷し、記録媒体に形成されたソリッド画像の画像濃度(ID)と、記録媒体のかぶり濃度(FD)と、現像剤中のトナーの帯電量とを測定した。
【0104】
さらに、上記3つの環境条件の各々において、上記5000枚印刷後、評価機を用いて印字率70%の所定の評価パターンを1000枚の記録媒体(印刷用紙)に印刷した。その後、上記評価機を用いて、ソリッド画像を含むサンプル画像を記録媒体(印刷用紙)に印刷し、記録媒体に形成されたソリッド画像の画像濃度(ID)と、現像剤中のトナーの帯電量とを測定した。また、上記1000枚印刷中に、25枚印刷するごとに記録媒体のかぶり濃度(FD)を測定し、測定されたかぶり濃度(FD)のうち最も大きい値を評価値とした。
【0105】
画像濃度(ID)及びかぶり濃度(FD)の測定にはそれぞれ、マクベス反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「RD914」)を用いた。なお、かぶり濃度(FD)は、印刷後の記録媒体の非画像部(白紙部)の画像濃度(ID)からベースペーパーの画像濃度(ID)を引いた値に相当する。
【0106】
また、帯電量の測定には、QMメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)を用いた。詳しくは、QMメーターの吸引部を用いて現像剤0.10g(±0.01g)中の試料(トナー)を吸引し、吸引された試料(トナー)の量とQMメーターの表示(電荷量)とに基づいて帯電量を算出した。
【0107】
画像濃度(ID)の評価基準は次のとおりである。
◎:画像濃度(ID)が1.4以上であった。
○:画像濃度(ID)が1.3以上1.4未満であった。
△:画像濃度(ID)が1.2以上1.3未満であった。
×:画像濃度(ID)が1.2未満であった。
【0108】
かぶり濃度(FD)の評価基準は次のとおりである。
◎:かぶり濃度(FD)が0.003以下であった。
○:かぶり濃度(FD)が0.003超0.006以下であった。
△:かぶり濃度(FD)が0.006超0.010以下であった。
×:かぶり濃度(FD)が0.010超であった。
【0109】
<評価結果>
表3〜表5に、各試料(トナーA〜F)の評価結果をまとめて示す。
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
トナーA、B、及びC(実施例1〜3に係る正帯電性静電潜像現像用トナー)ではそれぞれ、外添剤が、金属酸化物粒子と、金属酸化物粒子の表面に形成されたコート層とを有していた。また、コート層は含窒素樹脂を含んでいた。また、金属酸化物粒子の金属イオンの電気陰性度は11以下であった。こうした構成を有する正帯電性静電潜像現像用トナーではそれぞれ、表3〜表5に示されるように、常温常湿環境、高温高湿環境、及び低温低湿環境のいずれの環境下においても、画像濃度(ID)が1.28以上であり、且つ、かぶり濃度(FD)が0.004以下であった。実施例1〜3に係る正帯電性静電潜像現像用トナーは、低画像濃度の画像の形成を長期にわたって行った後に高画像濃度の画像を連続して形成した場合であっても、帯電性が低下しにくく、形成した画像にかぶりが生じにくかった。また、環境が変動しても、トナーの帯電性は変化しにくかった。
【0114】
トナーA及びC(実施例1、3に係る正帯電性静電潜像現像用トナー)ではそれぞれ、外添剤の体積抵抗値が1.0×108Ω・cm以上1.0×1011Ω・cm以下であった。こうした構成を有する正帯電性静電潜像現像用トナーではそれぞれ、常温常湿環境、高温高湿環境、及び低温低湿環境のいずれの環境下においても、画像濃度(ID)が1.35以上であり、且つ、かぶり濃度(FD)が0.004以下であった。
【0115】
なお、トナー母粒子に複数種の外添剤を付着させた場合には、複数種の外添剤のうち少なくとも1つの外添剤が上記構成を有していれば、トナーの帯電性を向上させることが可能になると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明に係る正帯電性静電潜像現像用トナーは、例えば、複写機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。