特許第6023770号(P6023770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6023770アリピプラゾール無水物B形結晶の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023770
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】アリピプラゾール無水物B形結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/22 20060101AFI20161027BHJP
   A61K 31/496 20060101ALN20161027BHJP
   A61P 25/18 20060101ALN20161027BHJP
【FI】
   C07D215/22
   !A61K31/496
   !A61P25/18
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-202777(P2014-202777)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-69349(P2016-69349A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135760
【氏名又は名称】株式会社パーマケム・アジア
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(74)【代理人】
【識別番号】100094488
【弁理士】
【氏名又は名称】平石 利子
(72)【発明者】
【氏名】大脇 圭司
(72)【発明者】
【氏名】北畠 道和
(72)【発明者】
【氏名】横越 清範
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−212852(JP,A)
【文献】 特表2014−518197(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077134(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 215/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θ=11.0°、16.6°、19.3°、20.3°及び22.1°にピークを示す粉末X線回折スペクトルを有するアリピプラゾール無水物B形結晶を製造する方法であって、
2θ=16.3°、21.8°、22.2°、23.3°及び24.5°においてピークを示す粉末X線回折スペクトルを有し、
融点が148±3℃、
カールフィッシャー容量滴定方式により測定された水分含有量が0.05〜0.30%であるアリピプラゾールの無水物結晶を、
ベンジルアルコールと酢酸アミルとを、重量比でベンジルアルコール:酢酸アミル=1:10〜1:30となるように混合した混合溶媒に溶解し、再結晶することを含んでなるアリピプラゾール無水物B形結晶の製造方法。
【請求項2】
前記混合溶媒への溶解後、析出した結晶を50〜110℃で乾燥することを特徴とする請求項1に記載のアリピプラゾール無水物B形結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合失調症等の治療に用いられるアリピプラゾール無水物B形の結晶を工業的に容易かつ安全に、しかも高純度のものを高収率で製造することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリピプラゾール(7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロカルボスチリル)は、精神疾患の統合失調症に有用な薬剤である。
その無水物(以下、「アリピプラゾール無水物」とも言う)の結晶は、使用する溶媒やその反応条件等によって様々な晶癖を示し、例えば、特許文献1,2には、I形,II形,B形,C形,D形,E形,F形,G形が開示されている。
【0003】
中でも、アリピプラゾール無水物のB形結晶に関しては、上記特許文献1に、その製造方法が記載されている。
この製造方法は、その〔請求項1〕に記載の理化学的性質を示すアリピプラゾール水和物を粒径50μm以下まで粉砕することで得た「アリピプラゾール水和物A」を、高温かつ長時間(90〜125℃で3〜50時間。具体的には、加熱温度が100℃であれば、加熱時間は約24時間;加熱温度が120℃であれば、加熱時間は約3時間;等)加熱し、緩やかに脱水することで、急激な脱水が原因で起こる凝集現象などを回避したものである。
しかし、この「粒径50μm以下のアリピプラゾール水和物A」を加熱する製造方法は、当該水和物Aを得る工程が煩雑なうえ、高温下での加熱作業は危険が伴うばかりか、製造に要するエネルギーが大きい、製造に要する時間が長いなどの問題があった。
【0004】
他方、特許文献3には、特定のXRDパターンを有するアリピプラゾール結晶質形態IIと、他のアリピプラゾール結晶質形態との混合物が開示されている。
しかし、このような混晶を医薬品として利用する可能性は極めて低いことはもとより、前述の特許文献1の段落〔0008〕にも記載されているように、II形結晶を、工業的規模で再現性よく、かつ高純度で単離すること自体が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3760264号公報
【特許文献2】特許第3750023号公報
【特許文献3】特開2013−237682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況に鑑み、アリピプラゾール無水物のB形結晶を工業的に容易かつ安全な操作で、しかも毒性の強い溶媒を使用せず、他の結晶形との混晶になることなく高い純度で製造するための方法を提供することを課題とする。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、種々検討を行ったところ、アリピプラゾールの無水物結晶を、ベンジルアルコールおよび酢酸アミルの混合溶媒にて晶析させれば、再結晶程度の簡便な方法にて、他の結晶形が混入することなく無水物B形結晶が単独で得られ、しかも、このB形結晶は長期に亘り水和物に変化し難いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、2θ=11.0°、16.6°、19.3°、20.3°及び22.1°にピークを示す粉末X線回折スペクトルを有するアリピプラゾール無水物B形結晶を製造する方法であって、
2θ=16.3°、21.8°、22.2°、23.3°及び24.5°においてピークを示す粉末X線回折スペクトルを有し、
融点が148±3℃、
カールフィッシャー容量滴定方式により測定された水分含有量が0.05〜0.30%であるアリピプラゾールの無水物結晶を、
ベンジルアルコールと酢酸アミルとの混合溶媒に溶解し、再結晶することを含んでなるアリピプラゾール無水物B形結晶の製造方法を要旨とする。
【0009】
ベンジルアルコールと酢酸アミルは、難揮発性で、毒性が低く、しかも安価で、入手および取扱いが容易な有機溶剤である。
本発明は、無限に存在する有機溶剤の中から、このようなベンジルアルコールと酢酸アミルを選定することで、吸湿性が低いなどの優れた諸特性を有するアリピプラゾール無水物B形結晶の製造において、煩雑な操作を必要とすることなく、乾燥の低温化・短縮化を実現したものである。
また、本発明では、ベンジルアルコールと酢酸アミルとの混合溶媒の混合比(重量比)が、ベンジルアルコール:酢酸アミル=1:10〜1:30であることが好ましく、この混合溶媒への溶解後、析出した結晶を50〜110℃で乾燥することがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法で得られるアリピプラゾール無水物のB形結晶は、従来公知の製造方法に比べて乾燥をより簡便に(低温かつ短時間で)行うことができ、しかも長期に亘って低吸湿性に優れたものなので、抗精神病薬などの医薬品として、統合失調症や自閉症患者の癇癪等の治療に好適に使用することができる。
また、本発明によれば、このB形結晶を、ベンジルアルコールと酢酸アミルの混合溶媒を使用するという独創的な結晶化方法によって、従来の製法に比して、高純度、高収率にて工業的に容易かつ安全に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】参考例1で得たアリピプラゾール無水物II形結晶の粉末X線回折図である。
図2】実施例1で得たアリピプラゾール無水物B形結晶の粉末X線回折図である。
図3】実施例1で得たアリピプラゾール無水物B形結晶のIR分析結果を示す図である。
図4】実施例2で得たアリピプラゾール無水物B形結晶の粉末X線回折図である。
図5】実施例3で得たアリピプラゾール無水物B形結晶の粉末X線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の製造方法は、アリピプラゾールの無水物結晶を、ベンジルアルコールと酢酸アミルとの混合溶媒(以下「混合溶媒」とも言う)にて再結晶することを含んでなる。
【0013】
上記アリピプラゾールの無水物結晶としては、図1に示すような2θ=16.3°、21.8°、22.2°、23.3°及び24.5°に特徴的なピークを示す粉末X線回折スペクトルを有し、融点が148±3℃、カールフィッシャー容量滴定方式により測定された水分含有量が0.05〜0.30%(好ましくは、0.05〜0.25%)であるものを用いる。例えば、アリピプラゾール無水物II形結晶などが好適である。
アリピプラゾール無水物II形結晶は、常法により合成してもよく、一般に市販されているものをそのまま用いてもよい。なお、本発明では、前述の従来技術(特許文献1に記載のB形結晶の製造方法)とは異なり、該II形結晶の粒径を小さくする粉砕工程は要しない。
【0014】
このときの混合溶媒の使用量は、特に限定されないが、アリピプラゾール無水物II形結晶重量(g)に対して、12〜35倍容量(ミリリットル)《以下、ミリリットルをmLと記す》(例えば、アリピプラゾール無水物II形結晶1gに対して、混合溶媒12〜35mL)が好ましく、より好ましくは18〜19倍容量(mL)である。
アリピプラゾール無水物II形結晶を混合溶媒に完全に溶解させるために、70〜90℃、好ましくは80℃程度に加温した後、該溶液を0〜30℃にまで冷却し、結晶を析出させる。
このとき、70〜90℃に加温した段階で、活性炭を加えてから撹拌し、温時濾過しておくことが好ましい。また、30〜50℃にまで冷却した段階で、溶液中に種晶を添加してもよい。
【0015】
上記混合溶媒におけるベンジルアルコールと酢酸アミルとの混合比は、ベンジルアルコール1重量部に対し、酢酸アミルは10〜30重量部が好ましく、より好ましくは15〜18重量部である。
ベンジルアルコールに対する酢酸アミルの割合が、これより大きすぎると、得られるB形結晶の収率が減少することがある。これより小さすぎると、他の結晶形が混入する虞がある。
【0016】
析出した結晶を濾別し、50〜110℃にて2〜24時間、常圧ないし減圧(30〜60Pa程度)下で乾燥させ、アリピプラゾール無水物のB形結晶を得ることができる。ベンジルアルコールも酢酸アミルも、比較的高沸点の溶媒であることから、好ましい乾燥条件としては、80〜90℃にて2〜10時間である。
このとき、乾燥を行う前に、本発明の目的(B形結晶を高純度、高収率で得る等)を良好に達成し、また混晶(B形以外の結晶形の混入)の回避を図るうえで、濾取した結晶を、メタノールなどの低級アルコールで洗浄することが好ましい。
このように、本発明では、前述の従来技術のような原料の粉砕工程はもとより、高温かつ長時間の乾燥工程をも必要としないので、工業的製造に極めて有益である。
【0017】
本発明の製造方法にて得られるB形結晶の形状は、白色の粉末状であり、2θ=11.0°、16.6°、19.3°、20.3°及び22.1°にピークを示す粉末X線回折スペクトルを有する。
また、上記B形結晶の融点は、140.5±2℃、カールフィッシャー容量滴定方式により測定された水分含有量は、0.05〜0.30%であることが好ましい。
【0018】
以上のように、本発明では、アリピプラゾールの無水物結晶を、ベンジルアルコールと酢酸アミルとの混合溶媒に溶解させ、再結晶化することによって、工業的に容易に(短時間で)かつ安全にアリピプラゾール無水物のB形結晶を製造することができる。
なお、本発明による製造方法は、いかなる方法で製造されたアリピプラゾールの無水物結晶に適用することができる。望ましくは、アリピプラゾール無水物の粗結晶をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させてから、エタノールを加えて析出させる方法により得られたアリピプラゾール無水物II形結晶に適用することである。
【実施例】
【0019】
〔参考例1〕
本発明の製造方法で用いるアリピプラゾール無水物≪7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロカルボスチリルの無水物≫のII形結晶を以下のようにして合成した。
【0020】
第1ステップ:
7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルの合成;
7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロカルボスチリル82g(0.5モル)にアセトニトリル408gを加え、これに、炭酸カリウム水溶液(炭酸カリウム69g(0.5モル)を水204gに溶解した溶液)を加えた後、さらに、1,4−ジブロモブタン324g(1.5モル)を加え、6時間還流反応させた。
この反応溶液を、減圧濃縮し、残留物に2−プロパノール408gを加え、10℃以下で1時間撹拌した後、水204gを加え、10℃以下で1時間撹拌し結晶化させて濾過した。
得られた結晶を80℃で乾燥し、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリル109g(収率:73.3%)を得た。
【0021】
第2ステップ:
アリピプラゾール無水物≪7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロカルボスチリルの無水物≫の粗結晶の合成;
第1ステップで得た7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリル109g(0.37モル)に、ヨウ化ナトリウム82g(0.55モル)とアセトニトリル1088gを加えて撹拌し、70℃に加温した。
次いで、1−(2,3−ジクロロフェニル)ピペラジン塩酸塩92g(0.33モル)、アセトニトリル816g、トリエチルアミン185g(1.83モル)を加え、30分間還流反応させた。
この反応溶液を、減圧濃縮し、残留物に水2177gを加え、冷却し、析出した結晶を濾取し、乾燥して149gの結晶を得た。
この結晶のうち、148gに、ジクロロメタン1110gを加え、室温下で1時間撹拌した後、不純物を濾別した。この濾液を、減圧濃縮し、残留物にメタノール2590gを加えて、1時間還流下懸洗し、冷却後、析出した結晶を濾取した。
得られた結晶を80℃で乾燥し、アリピプラゾール無水物の粗結晶80g(収率:54.5%、水分含有量:0.14%)を得た。
【0022】
第3ステップ:
アリピプラゾール無水物≪7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロカルボスチリルの無水物≫のII形結晶の合成;
第2ステップで得たアリピプラゾール無水物の粗結晶80g(0.18モル)に、N,N−ジメチルホルムアミド150gを加え、50〜60℃に加温して溶解させた。
次いで、活性炭8gと、50〜60℃に加温したエタノール128gとを加え、50〜60℃を維持したまま30分間撹拌した後、温時濾過した。
この濾液を5℃に冷却し、析出した結晶を濾取し、メタノール128gで洗浄した。
上記第3ステップの操作を、もう1回繰り返して得た結晶を、減圧下、80℃にて5時間乾燥し、淡黄白色ないし白色のアリピプラゾール無水物のII形結晶50g(収率:62.5%、純度:99.85%(HPLC,面積百分率))を得た。
得られたII形結晶のX線回折、融点測定、水分含有量測定を行った。結果を下に示す。
【0023】
・X線回折
X線測定装置((株)リガク製 商品名"Mini Flxe II")を使用し、Niフィルタにより4°/分のスキャンスピードで測定を行った。
この結果は、図1の通り、2θ=16.3°、21.8°、22.2°、23.3°及び24.5°において特徴的なピークを示すものであった。
【0024】
・融点測定
融点測定器(BUCHI社製 商品名"B−545")を使用して行った。この結果は、次の通りであった;
融点:148.5℃
【0025】
・水分含有量測定
カールフィッシャー法の容量滴定方式に準じて、自動水分測定装置(Metrohm社製 商品名"787 KF Titrino")を使用して行った。この結果は、次の通りであった;
水分含有量:0.18%
【0026】
〔実施例1〕
参考例1の第3ステップにて得たアリピプラゾール無水物のII形結晶50gに、ベンジルアルコール52gと酢酸アミル874gとを加えて、80℃に加熱し、活性炭2.5gを加えて15分撹拌した後、温時濾過した。
この濾液を20℃に冷却し、析出した結晶を濾取し、メタノール200gで洗浄した。
洗浄後の結晶を、80℃にて、常圧で3時間乾燥させ、白色のアリピプラゾール無水物のB形結晶36g(収率:72%、純度:99.91%(HPLC,面積百分率))を得た。
得られた結晶のX線回折、融点測定、水分含有量測定、IR分析を行った。結果を下に示す。
【0027】
・X線回折
参考例1の場合と同様にして行った。
この結果は、図2の通り、2θ=11.0°、16.6°、19.3°、20.3°及び22.1°において特徴的なピークを示すものであった。
・融点測定
参考例1の場合と同様にして行った。この結果は、次の通りであった;
融点:139.9℃
・水分含有量測定
参考例1の場合と同様にして行った。この結果は、次の通りであった;
水分含有量:0.10%
【0028】
・IR分析
赤外分光分析装置(サーモ社製 商品名"NICOLET380")を使用し、KBr法にて測定を行った。
この結果は、図3の通り、2945cm-1、2812cm-1、1678cm-1、1627cm-1、1448cm-1、1377cm-1、1173cm-1、960cm-1、及び779cm-1に特徴的な吸収が認められた。
【0029】
〔実施例2〜3,比較例9
実施例1におけるベンジルアルコールと酢酸アミルとの混合溶媒の混合比を表1に示すとおりに代える以外は、実施例1の場合と同様にして行い、白色のアリピプラゾール無水物のB形結晶を得た。得られた各B形結晶の重量(g)と収率(%)を、表1に併せて示す。
上記実験において、30g以上の結晶の析出が確認された実施例2,3について、各結晶のX線回折および融点測定を、実施例1の場合と同様にして行った(なお、微量の結晶しか得られなかった比較については、X線回折および融点の測定が実質的にできなかった)。X線回折の結果は、図4,5に、融点の結果は、表1に、それぞれ示す。
【0030】
〔実施例
実施例1における洗浄後の結晶を、105℃(実施例)あるいは50℃(実施例)にて乾燥させた以外は、実施例1の場合と同様にして行い、白色のアリピプラゾール無水物のB形結晶を得た。得られた各B形結晶の重量(g)と収率(%)を、表1に示す。
実施例で得られた結晶のX線回折および融点測定を、実施例1の場合と同様にして行った。
実施例のX線回折については、図2と同様の結果であった。融点の結果については、表1に併せて示す。
【0031】
【表1】
【0032】
〔比較例1〜8〕
実施例1におけるベンジルアルコールと酢酸アミルとの混合溶媒を表2に示す溶媒に代える以外は、実施例1の場合と同様にして行い、比較例1〜8の白色の結晶を得た。得られた各白色の結晶の重量(g)と収率(%)を、表2に併せて示す。
上記実験において、30g以上の結晶の析出が確認された比較例2〜8について、各結晶の融点測定を、実施例1の場合と同様にして行った(なお、微量の結晶しか得られなかった比較例1については、融点の測定が実質的にできなかった)。
結果は、表2のとおりであり、いずれもB形結晶は得られなかった。
【0033】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、アリピプラゾール無水物のB形結晶を、従来公知の製造方法に比べ、工業的により容易な操作で、しかも毒性の強い溶媒を使用することなく製造することができる。
そして、本発明の製造方法により得られるアリピプラゾール無水物のB形結晶は、乾燥を速やかに行うことができ、かつ長期に亘り吸湿性の低い結晶である。したがって、統合失調症や自閉症患者の癇癪などの治療薬として好適に使用することができるものである。
図1
図2
図3
図4
図5