(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023822
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】切削工具およびその切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20161027BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
B23B27/16 Z
B23B27/14 C
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-560518(P2014-560518)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公表番号】特表2015-509449(P2015-509449A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】IL2013050118
(87)【国際公開番号】WO2013132479
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】13/413,387
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト,ギル
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−071110(JP,A)
【文献】
特開2006−255883(JP,A)
【文献】
米国特許第7201545(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14 − 27/16
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面の割出し可能な切削インサート(30)であって、
反対側にある菱形の上面および下面(32、34)、およびそれらの間に延びる周囲側面(36)であって、4つの逃げ面(42)によって分離された交互の鈍角コーナー面および鋭角コーナー面(38、40)を有する周囲側面(36)と、
前記上面および下面(32、34)を通過する中心軸(A1)であって、その周りで前記切削インサート(30)が割出し可能である中心軸(A1)と、
前記上面(32)と前記2つの鋭角コーナー面(40)のそれぞれとの交差部分に形成されたノーズ切刃(44)と
を含み、
前記下面(34)が、
ベース表面(46)と、
前記ベース表面(46)から突出する中央ボス(48)および正確に2つの係合隆起部(50)とを含み、前記中央ボス(48)が、隆起したボス端面(52)を有し、各係合隆起部(50)が、V字型断面を形成する一対の平行に延びる隆起部側面(54)を含み、
各係合隆起部(50)が前記2つの鋭角コーナー面(40)の1つと交差し、かつ前記中央ボス(48)と交差するように前記鋭角コーナー面(40)から前記中心軸(A1)に向かって延び、前記ベース表面(46)が少なくとも2つの分離されたベースサブ表面(56)に分割される、片面の割出し可能な切削インサート(30)。
【請求項2】
各係合隆起部(50)の前記一対の隆起部側面(54)が鈍角の係合角度(α)を形成する、請求項1に記載の切削インサート(30)。
【請求項3】
前記ベース表面(46)がベース面(P1)を定め、
前記中央ボス(48)が前記ベース面(P1)から第1の距離D1だけ突出し、前記2つの係合隆起部(50)がそれぞれ、前記ベース面(P1)から第2の距離D2だけ突出し、
D1はD2に等しい、請求項1または2に記載の切削インサート(30)。
【請求項4】
各係合隆起部(50)が、隆起部側面(54)の各対を離間する中間面(58)を含み、
前記ボス端面(52)および前記2つの中間面(58)が同一平面上にあり、かつ連続している、請求項3に記載の切削インサート(30)。
【請求項5】
各中間面(58)が中間幅Wを有し、
WがD2の半分より大きく、D2より小さい、請求項4に記載の切削インサート(30)。
【請求項6】
前記切削インサート(30)が、前記中心軸(A1)の周りで二回回転対称を呈する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の切削インサート(30)。
【請求項7】
長手面(P2)が前記中心軸(A1)を含み、かつ前記2つのノーズ切刃(44)を二等分し、
前記切削インサート(30)が前記長手面(P2)の周りで鏡面対称を呈する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の切削インサート(30)。
【請求項8】
通し穴(76)が前記中心軸(A1)と同軸に延び、かつ前記上面(32)および前記ボス端面(52)の両方に開口する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の切削インサート(30)。
【請求項9】
前記ベース表面(46)が、正確に2つの同一のベースサブ表面(56)を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の切削インサート(30)。
【請求項10】
工具ホルダ(22)であって、
前端部(28)にインサート受入ポケット(26)を備えた主要本体(24)を含み、前記インサート受入ポケット(26)が座面(60)を含み、前記座面(60)が、単一の係合溝(64)が埋め込まれて形成された床面(62)と、前記床面(62)から突出する正確に2つの分離された支持段(66)とを有し、
前記係合溝(64)が、V字型断面を形成する一対の平行に延びる溝側面(68)を含み、
前記2つの支持段(66)のそれぞれが、隆起した支持面(70)を有し、
前記2つの支持面(70)が同一平面上にあり、かつ前記係合溝(64)の後方に完全に位置付けられる、工具ホルダ(22)。
【請求項11】
前記インサート受入ポケット(26)が、前記2つの支持面(70)よりも前記係合溝(64)から離れて完全に位置付けられた正確に2つの当接壁(86)を有する当接ショルダ部分(84)を前記座面(60)の後方に含み、
前記工具ホルダ(22)の上面図において、前記2つの当接壁(86)が前方方向に広がる、請求項10に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項12】
前記インサート受入ポケット(26)が、片面の割出し可能な切削インサート(30)を取外し可能に固定するように構成された、請求項10または11に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項13】
ポケット二等分面(P3)が前記係合溝(64)を長手方向に二等分し、
前記座面(60)が、前記ポケット二等分面(P3)の周りで鏡面対称を呈する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項14】
前記一対の平行に延びる溝側面(68)が、前記2つの支持面(70)よりも前記ポケット二等分面(P3)に近接して完全に位置づけられる、請求項13に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項15】
前端部(28)にインサート受入ポケット(26)が形成された主要本体(24)を有する工具ホルダ(22)と、前記インサート受入ポケット(26)に取外し可能に固定された切削インサート(30)とを含む切削工具(20)であって、
前記インサート受入ポケット(26)が、
単一の係合溝(64)が埋め込まれて形成された床面(62)と、前記床面(62)から突出する2つの分離された支持段(66)とを有する座面(60)を含み、
前記係合溝(64)が、V字型断面を形成する一対の平行に延びる溝側面(68)を含み、および前記2つの支持段(66)のそれぞれが、隆起した支持面(70)を有し、
前記2つの支持面(70)が同一平面上にあり、
前記切削インサート(30)が、
反対側にある菱形の上面および下面(32、34)、およびそれらの間に延びる周囲側面(36)であって、4つの逃げ面(42)によって分離された交互の鈍角コーナー面および鋭角コーナー面(38、40)を有する周囲側面(36)と、
前記上面および下面(32、34)を通過する中心軸(A1)であって、その周りで前記切削インサート(30)が割出し可能である中心軸(A1)と、
前記上面(32)と前記2つの鋭角コーナー面(40)のそれぞれとの交差部分に形成されたノーズ切刃(44)と
を含み、
前記下面(34)がベース表面(46)を含み、および前記ベース表面(46)から突出する正確に2つの係合隆起部(50)を含み、
各係合隆起部(50)が、V字型断面を形成する一対の平行に延びる隆起部側面(54)を含み、各係合隆起部(50)が前記2つの鋭角コーナー面(40)の1つと交差し、かつ前記鋭角コーナー面(40)から前記中心軸(A1)に向かって延び、
前記切削インサート(30)の前記下面(34)が、
稼働する前記ノーズ切刃(44)に最も近接して位置付けられた前記係合隆起部(50)の前記一対の隆起部側面(54)が、前記単一の係合溝(64)の対応する前記一対の溝側面(68)と接触し、
前記稼働するノーズ切刃(44)より非稼働ノーズ切刃(44)に近接して完全に位置付けられた前記ベース表面(46)が、2つの支持領域(72)で前記2つの隆起した支持面(70)と接触すること
のみによって、前記インサート受入ポケット(26)の前記座面(60)に対して締め付けられる、切削工具(20)。
【請求項16】
隆起したボス端面(52)を有する中央ボス(48)が前記ベース表面(46)から突出し、各係合隆起部(50)が前記中央ボス(48)と交差し、
前記ベース表面(46)が少なくとも2つの分離されたベースサブ表面(56)に分割され、前記2つの支持領域(72)が、前記少なくとも2つのベースサブ表面(56)の2つに位置付けられる、請求項15に記載の切削工具(20)。
【請求項17】
各係合隆起部(50)が、隆起部側面(54)の各対を離間する中間面(58)を含み、
前記ボス端面(52)および前記2つの中間面(58)が同一平面上にあり、かつ連続しており、
前記稼働するノーズ切刃(44)に最も近接して位置付けられた前記係合隆起部(50)の前記中間面(58)が、前記係合溝(64)のどの表面とも当接しない、請求項16に記載の切削工具(20)。
【請求項18】
通し穴(76)が前記中心軸(A1)と同軸に延び、かつ前記上面(32)および前記ボス端面(52)の両方に開口し、
前記通し穴(76)に位置付けられた締付ねじ(78)が、前記座面(60)のねじ穴(80)にねじ係合され、
前記通し穴(76)および前記ねじ穴(80)が、互いに偏心した関係にある、請求項16又は17に記載の切削工具(20)。
【請求項19】
前記インサート受入ポケット(26)が、正確に2つの当接壁(86)を有する当接ショルダ部分(84)を前記座面(60)の後方に含み、
前記切削インサート(30)の前記周囲側面(36)が、
前記非稼働ノーズ切刃(44)に最も近接して位置付けられた前記2つの逃げ面(42)のそれぞれが、前記2つの当接壁(86)の異なる1つと接触すること
のみによって、前記インサート受入ポケット(26)の前記当接ショルダ(84)に対して締め付けられる、請求項15〜18のいずれか一項に記載の切削工具(20)。
【請求項20】
前記2つの支持領域(72)がそれぞれ、前記非稼働ノーズ切刃(44)に最も近接して位置付けられた前記2つの逃げ面(42)の異なる1つによって境界を定められる、請求項15〜19のいずれか一項に記載の切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、金属切削工程、特に旋削作業を行う金属切削工程で使用するための切削工具および切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
旋削作業で使用される切削工具の分野において、工具ホルダのインサート受入ポケットに取外し可能に固定される切削インサートの多くの例がある。いくつかの例ではこれら切削工具は、切削インサートおよびインサート受入ポケットの協働面が、突起と窪みによって形成されるように構成される。他の例ではこれら切削工具は、切削インサートおよびインサート受入ポケットの協働面が、雄型および雌型嵌合要素によって形成されるように構成される。
【0003】
米国特許第7,201,545号は、ホルダ、シムおよび割出し可能な切削インサートを有する切削工具を開示している。シムは、実質的に平行な上側および下側を備えた実質的菱形を有し、ホルダのポケットに取り付けられる。切削インサートは、シムと同様に実質的菱形を有し、シムに取り付けられ、それにより切削インサートの下側の6つの突起のうち3つがシムの上側の2つの支持面と「能動的」に当接し、シムの上側の2つの窪みが他の3つの「受動的」な窪みに間隙を提供する。切削インサートを180°で割り出すことによって3つの「能動的」な突起は「受動的」になり、その逆もまた同様に起きる。
【0004】
米国特許第7,387,474号は、インサート座部を備えたホルダと、その中に取り付けられる菱形基本形状を有する割出し可能な切削インサートとを有する切削工具を開示している。インサート座部は、互いに90°で配向されかつT字構造を形成する細長い隆起部の形態の2つの雄型係合部分を有する。切削インサートの底側は2組の雌型係合部分を含み、各組は互いに90°で配向された2つの細長い溝を有する。切削インサートの各割出し位置において、1つの組が2つの細長い隆起部と能動的に係合し、他の組は非活動状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改良された切削工具を提供することが本発明の目的である。
【0006】
高いレベルの締付け安定性と横切削力抵抗性とを有する工具ホルダに取外し可能に固定された割出し可能な切削インサートを有する改良された切削工具を提供することも、本発明の目的である。
【0007】
本質的に剛性でありかつ正確な割出し可能な切削インサートを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0008】
効率的に製造できる工具ホルダを提供することが、本発明のなおもさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明によれば、片面の割出し可能な切削インサートが提供され、片面の割出し可能な切削インサートは、
反対側にある菱形の上面および下面と、それらの間に延びる周囲側面であって、4つの逃げ面によって分離された交互の鈍角コーナー面および鋭角コーナー面を有する周囲側面と、
上面および下面を通過する中心軸であって、その周りで切削インサートが割出し可能である中心軸と、
上面と2つの鋭角コーナー面のそれぞれとの交差部分に形成されたノーズ切刃と
を含み、
下面が
ベース表面、および
ベース表面から突出する中央ボスおよび正確に2つの係合隆起部を含み、中央ボスが、隆起したボス端面を有し、各係合隆起部が、V字型断面を形成する一対の平行に延びる隆起部側面を含み、
各係合隆起部が2つの鋭角コーナー面の1つと交差し、中央ボスと交差するように鋭角コーナー面から中心軸に向かって延び、ベース表面は少なくとも2つの分離されたベースサブ表面に分割される。
【0010】
また本発明によれば、工具ホルダが提供され、工具ホルダは、
前端部にインサート受入ポケットを備えた主要本体を含み、インサート受入ポケットが座面を含み、座面が、単一の係合溝が埋め込まれて形成された床面と、床面から突出する正確に2つの分離された支持段とを有し、
係合溝が、V字型断面を形成する一対の平行に延びる溝側面を含み、
2つの支持段のそれぞれが、隆起した支持面を有し、
2つの支持面は同一平面上にあり、かつ係合溝の後方に完全に位置付けられている。
【0011】
さらに本発明によれば、切削工具が提供され、切削工具は、
前端部にインサート受入ポケットが形成された主要本体を有する工具ホルダと、インサート受入ポケットに取外し可能に固定された切削インサートとを含み、
インサート受入ポケットが、
単一の係合溝が埋め込まれて形成された床面と、床面から突出する2つの分離された支持段とを有する座面を含み、
係合溝が、V字型断面を形成する一対の平行に延びる溝側面を含み、および2つの支持段のそれぞれが、隆起した支持面を有し、
2つの支持面が同一平面上にあり、
切削インサートが、
反対側にある菱形の上面および下面と、それらの間に延びる周囲側面であって、4つの逃げ面によって分離された交互の鈍角コーナー面および鋭角コーナー面を有する周囲側面と、
上面および下面を通過する中心軸であって、その周りで切削インサートが割出し可能である中心軸と、
上面と2つの鋭角コーナー面のそれぞれとの交差部分に形成されたノーズ切刃と
を含み、
下面がベース表面を含み、およびベース表面から突出する正確に2つの係合隆起部を含み、
各係合隆起部が、V字型断面を形成する一対の平行に延びる隆起部側面を含み、各係合隆起部が2つの鋭角コーナー面の1つと交差し、かつ鋭角コーナー面から中心軸に向かって延び、
切削インサートの下面は、
稼働するノーズ切刃に最も近接して位置付けられた係合隆起部の一対の隆起部側面が、単一の係合溝の対応する一対の溝側面と接触し、
稼働するノーズ切刃より非稼働ノーズ切刃に近接して完全に位置付けられたベース表面が、2つの支持領域で2つの隆起した支持面と接触すること
のみによって、インサート受入ポケットの座面に対して締め付けられる。
【0012】
図面の簡単な説明
より深い理解のため、次に本発明を、添付図面を参照して単に例によって記載する。図面中、鎖線は、部材を部分的に見るために切り取られた境界線を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による切削工具の斜視図である。
【
図2】
図1に示される切削工具の分解斜視図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による切削工具の底面図である。
【
図4】
図3に示される切削インサートの側面図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による工具ホルダの上面図である。
【
図6】線VI−VIに沿って取られた
図5に示される工具ホルダの断面図である。
【
図7】締付ねじが取り外された
図1に示される切削工具の上面図である。
【
図8】線VIII−VIIIに沿って取られた
図7に示される切削工具の切断図である。
【
図9】線IX−IXに沿って取られた
図7に示される切削工具の切断図である。
【
図10】線X−Xに沿って取られた
図7に示される切削工具の切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、前端部28にインサート受入ポケット26が形成された主要本体24を有する工具ホルダ22と、インサート受入ポケット26に取外し可能に固定された片面の割出し可能な切削インサート30とを含む切削工具20に関する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、
図1および2に示されるように、切削工具20は、主要本体24の前端部28から延びるホルダシャンク82を有する旋削工具の形態であり得る。
【0016】
同じく本発明のいくつかの実施形態では、工具ホルダ22は、機械加工された鋼から製造可能であり、切削インサート30は、炭化タングステンなどの超硬合金を成形プレスし、焼結することによって好ましくは製造可能であり、またコーティングまたは非コーティング可能である。
【0017】
本発明によれば、
図3および4に示されるように、切削インサート30は、反対側にある菱形の上面および下面32、34と、それらの間に延びる周囲側面36とを有し、周囲側面36は、4つの逃げ面42によって分離された交互の鈍角コーナー面および鋭角コーナー面38、40を有する。
【0018】
ノーズ切刃44は、上面32と2つの鋭角コーナー面40のそれぞれとの交差部分に形成される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、切削インサート30は、「正」と記載される場合があり、このとき4つの逃げ面42は上面32から離れる方向において内側に傾けられている。
【0020】
また、本発明のいくつかの実施形態では、4つの逃げ面42は平坦であり得る。
【0021】
本発明によれば、
図3および4に示されるように、下面34はベース表面46を含み、中心軸A1が上面および下面32、34を通過し、切削インサート30は中心軸A1の周りで割出し可能である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、
図4に示されるように、ベース表面46はベース面P1を定義し得、中心軸A1はベース面P1に対して垂直であり得る。
【0023】
また、本発明のいくつかの実施形態では、
図3に示されるように、切削インサート30は、中心軸A1の周りで二回回転対称を呈し得る。
【0024】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、
図3に示されるように、菱形上面および下面32、34の長手に沿って延びる長手方向面P2が中心軸A1を含み、かつ2つの鋭角コーナー面40および2つのノーズ切刃44を二等分し得る。切削インサート30は長手面P2の周りで鏡面対称を呈し得る。
【0025】
同じく
図3で分かるように、菱形上面および下面の幅に沿って延びる横断面P4もまた中心軸A1を含み、かつ2つの鈍角コーナー面38を二等分し得る。従って、長手面P2および横断面P4は互いに垂直であり、中心軸A1で交差し得る。切削インサート30は面P2に加えて横断面P4の周りで鏡面対称を呈し得る。
【0026】
本発明によれば、
図3および4に示されるように、正確に2つの係合隆起部50がベース表面46から突出し、各係合隆起部50は、V字型断面を形成する一対の平行に延びる隆起部側面54を含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、
図8および10に示されるように、各係合隆起部50の一対の隆起部側面54は、鈍角の係合角度αを形成し得る。係合角度αは、90〜150°の好ましい範囲を有する。
【0028】
本発明の他の実施形態(不図示)では、各係合隆起部50の一対の隆起部側面54の2つの表面構成要素は、外側に凸状であり得る。
【0029】
本発明によれば、
図3および4に示されるように、各係合隆起部50は、2つの鋭角コーナー面40の1つと交差し、そこから中心軸A1に向かって延びる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、
図3および4に示されるように、中央ボス48がベース表面46から突出し得、中央ボス48は隆起したボス端面52を有し得、および各係合隆起部50は中央ボス48と交差し得、それによりベース表面46を、互いに連通しない少なくとも2つの分離されたベースサブ表面56に分割する。
【0031】
2つの鋭角コーナー面40は2つの最も遠くに離間されたコーナー面を示し、および2つの係合隆起部50は中央ボス48と融合して、これら2つの最も遠くに離間されたコーナー面40間に延びる単一構造部材を形成することは認識されよう。この単一構造部材により切削インサート30の剛性が改善され、その結果、切削インサート30の焼結工程によりもたらされる変形および誤差が最小限に低減される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、
図3に示されるように、ベース表面46は、正確に2つの同一のベースサブ表面56を有し得る。
【0033】
また本発明のいくつかの実施形態では、
図4に示されるように、中央ボス48はベース面P1から第1の距離D1だけ突出し得、2つの係合隆起部50はそれぞれベース面P1から第2の距離D2だけ突出し得、D1はD2に等しい。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「V字型」の使用は、(断面で見たとき)「V」字型を形成しかつ頂点で交差する一対の側面に限定されず、一対の側面を離間する追加表面も説明することを認識されたい。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、
図3および4に示されるように、各係合隆起部50は、隆起部側面54の各対を離間する中間面58を含み得、中央ボス48のボス端面52および2つの中間面58は、同一平面でありかつ連続的であり得る。従って、用語「V字型」は、隆起部側面54の各対を離間するそのような中間面58を有する各係合隆起部50のことを指している。
【0036】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、
図3に示されるように、各中間面58は中間幅Wを有し得、WはD2の半分より大きく、D2より小さい。
【0037】
第2の距離D2の半分より大きい中間幅Wによって、有利にコンパクトかつ頑丈な外形が各係合隆起部50に提供されることは認識されよう。
【0038】
第2の距離D2未満の中間幅Wによって、隆起部側面54の各対が各鋭角コーナー面40の近接領域以内まで延ばされ、従って稼働の際に関連のノーズ切刃44に良好な支持が提供されることも同じく認識されよう。
【0039】
本発明によれば、
図5および6に示されるように、インサート受入ポケット26は座面60を含み、座面60は、単一の係合溝64が埋め込まれて形成されかつ2つの分離された支持段66が突出する床面62を有する。
【0040】
係合溝64は、V字型断面を形成する一対の平行に延びる溝側面68を含み、2つの支持段66のそれぞれは隆起した支持面70を有する。
【0041】
図8に示されるように、一対の溝側面68のV字型断面は、稼働中のノーズ切刃44に最も近接して位置する係合隆起部50の隆起部側面54のV字型断面と一致する。しかしながら、稼働中のノーズ切刃44に最も近接して位置する係合隆起部50の中間面58は、係合溝64のどの表面とも当接しない。
【0042】
2つの支持面70は同一平面上にあり、係合溝64の後方に完全に位置付けられる。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「後方」および「後方に」の使用は、工具ホルダの前端部28から工具ホルダの主要本体24に向かう方向のことを指していることは認識されよう。この方向は
図5および7では右に向かっている。
【0044】
1つより多い係合溝または隆起部を備えた代替構造と対照的に、単一の係合溝64および2つの同一平面上支持面70を備えて構成された座面60によって、インサート受入ポケット26をより効率的に製造することが可能になることも同じく認識されよう。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、
図5に示されるように、ポケット二等分面P3が係合溝64を長手方向において二等分し得、座面60はポケット二等分面P3の周りで鏡面対称を呈し得る。
【0046】
また、本発明のいくつかの実施形態では、
図5に示されるように、一対の溝側面68は、2つの支持面70が位置付けられるよりもポケット二等分面P3に近接して完全に位置付けられ得る。
【0047】
本発明によれば、
図7〜10に示されるように、切削インサート30の下面34は、
稼働するノーズ切刃44に最も近接して位置付けられた係合隆起部50の一対の隆起部側面54が単一の係合溝64の一対の溝側面68と接触し、
稼働するノーズ切刃44より非稼働ノーズ切刃44に近接して完全に位置付けられたベース表面46が2つの支持領域72で2つの隆起した支持面70と接触すること
のみによって、インサート受入ポケット26の座面60に対して締め付けられる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、
図2に示されるように、2つの支持領域72は、2つのベースサブ表面56上に位置付けられ得る。
【0049】
また、本発明のいくつかの実施形態では、
図5および6に示されるように、床面62は中央凹部74を含み得る。
【0050】
図9に示されるように、中央凹部74は、中央ボス48とインサート受入ポケット26との間に間隙を提供し得、および
図10に示されるように、中央凹部74は、非稼働係合隆起部50とインサート受入ポケット26との間に間隙を提供し得る。
【0051】
また、本発明のいくつかの実施形態では、
図2および10に示されるように、切削インサート30の2つの支持領域72のそれぞれは、非稼働ノーズ切刃44に最も近接して位置付けられた2つの逃げ面42の異なる1つによって境界を定められ得る。
【0052】
切削インサート30の下面34は仮想三角形の3つの角地点でインサート受入ポケット26の座面60に対して効果的に締め付けられ、そこで中心軸A1は、高い締付安定性レベルを達成するために、締付力が適用され得る最適地点を定める実質的中心箇所で仮想三角形と交差することは認識されよう。
【0053】
また、2つの係合隆起部50に関連する隆起部側面54と、V字型断面を有する単一係合溝64に関連する溝側面68とによって、切削インサート30は各割出し位置において、高いレベルの横切削力抵抗性を有する。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、
図3および4に示されるように、通し穴76が中心軸A1と同軸に延在し、かつ切削インサート30の上面32およびボス端面52の両方に開口し得る。
【0055】
また、本発明のいくつかの実施形態では、
図1および2に示されるように、締付ねじ78が通し穴76に位置付けられ、かつ締付力を適用するために座面60のねじ穴80にねじ係合され得る。
【0056】
本発明の他の実施形態(不図示)では、通し穴76は上面32だけに開口し得、代替締付部材が通し穴76と係合して締付力を適用し得る。
【0057】
上に記載した利点に加えて、中央ボス48と融合する2つの係合隆起部50によって形成された単一の構造部材によって提供される切削インサート30の改良された剛性によって、締付および切削作業の間、切削インサート30の破壊性または変形性も有利に低減されることは認識されよう。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、
図5および6に示されるように、インサート受入ポケット26は、2つの支持面70より係合溝64から離れて完全に位置付けられた正確に2つの当接壁86を有する当接ショルダ部分84を座面60の後方に含み得る。
図5に示されるように、工具ホルダ22の上面図において、2つの当接壁86は前方方向に広がり得る。
【0059】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「前方」の使用は、後方方向と反対の方向のことを指していることは認識されよう。前方方向は
図5および7では左に向かっている。
【0060】
また、本発明のいくつかの実施形態では、
図7に示されるように、通し穴76およびねじ穴80は互いに偏心した関係にあり得、その結果、締付力の成分を後方へ向けることができる。
【0061】
図1、2および7に示されるように、切削インサート30の下面34がインサート受入ポケット26の座面60に対して締め付けられる間、切削インサート30の周囲側面36は、
非稼働ノーズ切刃44に最も近接して位置付けられた2つの逃げ面42のそれぞれが、2つの当接壁86の異なる1つと接触すること
のみによって、インサート受入ポケット26の当接ショルダ部分84に対して同時に締め付けられ得る。
【0062】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、
図7に示されるように、長手面P2およびポケット二等分面P2、P3は同一平面上にあり得る。