【0014】
以下、本明細書で開示する技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
(特徴1) 電子走行層はGaNで形成されており、電子走行層はAlGaNで形成されている。
(特徴2) 絶縁層はSiO
2層で形成されている。SiO
2層は電子走行層を形成するAlGaNのGaがSiO
2層中に移動する温度領域で形成する。
(特徴3) ソース電極とp型層間の距離<ドレイン電極とp型層間の距離であり、ソース電極とp型層の間の絶縁層は全域で正に帯電しており、ドレイン電極とp型層の間の絶縁層は、ドレイン電極側では正に帯電し、p型層側では正に帯電していない。
(特徴4)電子走行層にGaNを用い、電子供給層にInとAlの少なくとも一方とGaを含む窒化物半導体であってGaNより大きなバンドギャップを持つ窒化物半導体を用いる。すなわち、電子走行層にIn
x1Al
y1Ga
1−x1−y1N(0≦x1<1,0≦y1<1,0<1−x1−y1<1)を用いる。
(特徴5)電子走行層にGaNを用い、電子供給層にAlとGaを含む窒化物半導体であってGaNより大きなバンドギャップを持つ窒化物半導体を用いる。すなわち、電子走行層にIn
x1Al
y1Ga
1−x1−y1N(0≦x1<1,0<y1<1,0<1−x1−y1<1)を用いる。
【実施例】
【0015】
図1は、第1実施例の半導体装置(ノーマリオフ型の電界効果トランジスタ)の断面図であり、基板2上にバッファ層4が結晶成長し、バッファ層4上にi型のGaN層6が結晶成長し、i型のGaN層6上にi型のAl
y1Ga
1−y1N層8(0<y1<1)が結晶成長している。本実施例では、y1=0.18であり、その膜圧は20nmである。Alを含まないGaN層6上にAlを含むAlGaN層8が結晶成長しているヘテロ接合界面では、前者のバンドギャップよりも後者のバンドギャップが広いことから、GaN層6のヘテロ接合界面に面した領域に2次元電子ガスが生成される。本実施例では、2次元電子ガスが生じるGaN層6を電子走行層といい、2次元電子ガスを生成するAlGaN層8を電子供給層という。電子供給層8の表面上にソース電極10とドレイン電極20が形成されている。ソース電極10とドレイン電極20は、相互に離れた位置に形成されている。ソース電極10とヘテロ接合界面の間に介在する範囲の電子供給層8と、ドレイン電極20とヘテロ接合界面の間に介在する範囲の電子供給層8は、例えば電極10,20を形成する金属が拡散するなどして低抵抗となっている。
【0016】
電子供給層8の表面であってソース電極10とドレイン電極20の間に位置する範囲にp型のAl
y2Ga
1−y2N層16(0<y2<1、以下ではp型層16という)が形成されており、その表面にゲート電極14が形成されている。ゲート電極14は金属で形成されている。
【0017】
電子供給層8の表面にp型層16が形成されていると、ゲート電極14に電圧を印加しない間は、p型層16と電子供給層8の界面から電子供給層8を経て電子走行層6に向けて空乏層が広がり、p型層16に対向する範囲のヘテロ接合面が空乏化し、2次元電子ガスが消失する。2次元電子ガスによってソース電極10とドレイン電極20の間を導通させることができず、ソース・ドレイン間が高抵抗となる。ゲート電極14に正電圧を印加すると、p型層16から伸びる空乏層が消失し、2次元電子ガスが復活し、2次元電子ガスによってソース電極10とドレイン電極20の間が導通し、ソース・ドレイン間が低抵抗となる。電子走行層6がi型であることから、電子の移動度が高く、ソース電極10とドレイン電極20の間が低抵抗となる。
図1の半導体装置は、ノーマリオフの特性に調整されている電界効果トランジスタである。
【0018】
図1において、参照番号12はソース電極10とp型層16間に露出する電子供給層8の表面を被覆している絶縁層であり、参照番号18はドレイン電極20とp型層16間に露出する電子供給層8の表面を被覆している絶縁層である。絶縁層12,18には正電荷が固定されている。すなわち正に帯電している。
絶縁層12,18が正に帯電しているために、絶縁層12,18に対向する範囲のヘテロ接合界面に電子が吸引され、絶縁層12,18に対向する範囲のヘテロ接合界面に生じている2次元電子ガスの濃度が高い。そのために、ヘテロ接合界面のソース電極10とp型層16間の抵抗が低く、ヘテロ接合界面のドレイン電極20とp型層16間の抵抗が低い。ゲート電極に正電圧を印加したときのソース電極10とドレイン電極20間の抵抗(オン抵抗)が低い。
【0019】
p型層16は下記の方法で製造される。最初に、電子供給層8の表面上の広い範囲にp型広域層を形成する。次に、
図1のp型層16とソース電極10の間、ならびに、
図1のp型層16とドレイン電極20の間ではp型広域層をエッチングして除去する。その結果
図1に示すp型層16が形成される。
図1に示すp型層16とソース電極10の間、ならびに、
図1に示すp型層16とドレイン電極20の間でp型広域層をエッチングすると、
図1に示すp型層16とソース電極10の間、ならびに、
図1に示すp型層16とドレイン電極20の間で露出する電子供給層8の表面にエッチングダメージが加えられる。そのエッチングダメージは、ヘテロ接合界面に生じる2次元電子ガスの濃度を減少させてしまう。
図1の半導体装置では、エッチングダメージによる2次元電子ガス濃度の減少効果を、正に帯電した絶縁層12,18による2次元電子ガス濃度の上昇効果によって補償することができ、オン抵抗を低下させることが可能となる。
図1の半導体装置は、正に帯電した絶縁層12,18によって2次元電子ガスの濃度を上昇させる効果と、電子が走行する電子走行層6がi型であることが相まって、オン抵抗が非常に低い。
【0020】
(第2実施例)
図2に示すように、ドレイン電極20とp型層16の間に露出する電子供給層8の一部の領域を正に帯電した絶縁層18bで被覆し、他の領域は、正に帯電しない絶縁層18aで被覆してもよい。この場合は、ドレイン電極20側を正電荷が固定された絶縁層18bで被覆し、p型層16側を正電荷が固定されていない絶縁層18aで被覆する。
この場合、正に帯電した絶縁層18bで被覆されているドレイン電極20側ではオン抵抗が低下する。それに対し、ゲート電極14の近傍では、オフ時にゲート電極14側からドレイン電極20側に向かって伸びる空乏層中の電界が大きく緩和され、高耐圧と低抵抗を実現する。
図2では、ソース電極10とp型層16の距離<ドレイン電極20とp型層16の距離の関係にあり、ドレイン電極側でのみ、一部領域を正に帯電した絶縁層で被覆する技術を適用する。この技術をソース電極側に利用することもできる。
【0021】
(第3実施例)
図3に示すように、電子供給層8aを形成するAlGaNのAl濃度を薄くすることによって閾値電圧を高く設定することができる。誤作動防止に有用である。
その反面、Al濃度を薄くすると、例えばAl
y1Ga
1−y1Nのy1を0.1以下にすると、ヘテロ接合界面に生じる2次元電子ガスの濃度が低下し、オン抵抗が上昇する。本実施例は、この問題に対処するものであり、正に帯電した絶縁層12,18でオン抵抗を下げる。本技術は、電子供給層8aを形成するAlGaNのAl濃度を薄くして閾値電圧を高く設定する場合に特に有用である。
【0022】
(第4実施例)
図4は第4実施例を示し、絶縁層12c,18cに、Gaイオンが分散して混入しているSiO
2層を用いる。Gaイオンは正電荷を帯びており、絶縁層12c,18cは正に帯電している。このSiO2層は、電子供給層8の表面に熱CVD法によってSiO
2を堆積することで形成される。熱CVD法の実施温度を高めていくと、電子供給層8に含まれていたGaがSiO
2内に移動する量が増えていく。必要な電荷量に相当するGaが移動する温度で熱CVD法を実施することで、正に帯電した絶縁層12c,18cを形成することができる。プラズマCVD法によっても、Gaイオンが分散して存在しているSiO
2層を形成することができる。正イオンを含まない絶縁層に、例えばNa正イオンあるいはGa正イオンを注入してもよい。NaイオンやGaイオン等は、絶縁層中で移動しづらく、正電荷が固定されている絶縁層となる。
【0023】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。