(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セラミックス−金属接合体は、半導体プロセスにおいてウエハーを吸着固定するのに使用する静電チャック、又は、半導体プロセスにおいて反応ガスをチャンバー容器に分散供給するのに使用するシャワーヘッドである、
請求項1又は2に記載のセラミックス−金属接合体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の静電チャックは、80℃以上の高温使用時に接合材からガスが発生し、プレートと接合材との間や支持台と接合材との間に気泡が生成し、この気泡によりプレートと支持台との間の接触面積が低下したり接着性にバラツキが生じたりすることがあり、吸着しているウエハーの均熱性が悪化することがあった。また、プレートにヒーターを埋め込んでウエハーの温度を一定に保つよう制御することがあるが、気泡の発生による熱伝達量の変化により、温度制御が困難になることがあった。こうした問題は、静電チャックと同様の構造をもつ部品、つまりセラミックス−金属接合体においても発生する。静電チャックと類似の構造をもつ部品としては、例えばシャワーヘッドなどが挙げられる。シャワーヘッドとは、半導体加工プロセスの一つの工程であるプラズマ処理装置において、反応ガスをチャンバー容器に分散供給するのに使用される部品である。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、セラミックス−金属接合体のプレートと支持台との間の接触面積の低下や接着性のバラツキを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセラミックス−金属接合体の製法は、セラミックス製のプレートと金属製の支持台とを樹脂を主成分とする接合シートで接合することによりセラミックス−金属接合体を製造する方法であって、前記接合シートをあらかじめ大気中、不活性ガス中または真空中で加熱して前記接合シート中の揮発成分を減らすプリベイク工程と、前記プレートと前記支持台と前記接合シートとを減圧した気密バッグに入れ、前記プレートと前記支持台との間に前記接合シートを配置してオートクレーブ中で圧力を掛けながら前記プリベイク工程よりも低い温度で加熱接合する接合工程と、を含むものである。
【0007】
この製法では、接合シートをあらかじめ加熱して接合シート中の揮発成分を減らしてからプレートと支持台と接合シートとを減圧した気密バッグに入れ、プレートと支持台との間に接合シートを配置してオートクレーブ中で加圧しながら接合するため、得られたセラミックス−金属接合体を高温で使用した場合でも、接合シートからガスが発生せず、プレートと接合材との間や支持台と接合材との間に気泡が生成しない。その結果、プレートと支持台との間の接触面積が低下したり接着性にバラツキが生じたりすることがなくなる。
【0008】
ここで、プレートとしては、例えば炭化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムなどのセラミックスからなるものが挙げられる。支持台としては、例えばアルミニウム製やシリコン製のもののほか、多孔質セラミックスからなる母材に金属を含浸させて得られる金属基複合材製のものなどが挙げられる。接合シートとしては、例えばアクリル樹脂製やシリコーン樹脂製のものなどが挙げられる。プリベイク工程で加熱するときの条件は、接合シートの材質に応じて適宜設定すればよい。具体的には、接合シートの材質ごとに雰囲気ガス、真空度、加熱温度及び加熱時間がプレートと支持台との接合界面に与える影響を事前に実験で調べ、接合界面に影響がなく高温に加熱しても接合シートから気泡が発生しない数値範囲を設定すればよい。プリベイク工程における雰囲気としては、大気よりも不活性ガス、さらには真空中の方が、より高温で使用したときでも接合界面に剥がれや気泡が発生することのないセラミックス−金属接合体を得ることができる。また、接合シートは、厚さが0.1〜0.3mmであることが好ましく、金属フィラー(例えばアルミニウム)を含んでいることが好ましい。接合工程では、オートクレーブで加圧加熱処理することで十分な接着強度を得ることができる。
【0009】
本発明のセラミックス−金属接合体の製法において、前記プリベイク工程では、前記接合シートを前記支持台に貼り付け、前記接合シートを貼り付けた支持台を加熱して前記接合シート中の揮発成分を減らしてもよいし、あるいは、前記接合シートを前記プレートに貼り付け、前記接合シートを貼り付けたプレートを加熱して前記接合シート中の揮発成分を減らしてもよい。こうすれば、新たな治具を用いることなく本発明の製法を適用することができる。
【0010】
本発明のセラミックス−金属接合体の製法において、前記プリベイク工程では、前記セラミックス−金属接合体の前記接合シートと同形状の穴をくりぬいた板であるフレームと前記接合シートになる大判シートとを用意し、前記大判シートが前記フレームの穴を塞ぐように前記大判シートを前記フレームに貼り付け、前記大判シートを貼り付けたフレームを加熱して前記大判シートの揮発成分を減らしてもよい。こうすれば、接合シートを支持台に貼り付けたあと加熱したり接合シートをプレートに貼り付けたあと加熱したりして揮発成分を減らす場合に比べて、プリベイク工程での加熱時間を短くすることができる。これは、前2者ではシートの片面から揮発成分が揮発するのに対して、後者ではシートの両面から揮発成分が揮発するためである。
【0011】
本発明のセラミックス−金属接合体の製法において、前記樹脂はアクリル樹脂であり、プリベイク工程での加熱条件は、大気中で120〜130℃で15〜30時間としてもよい。大気の代わりに窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気1気圧とするのが好ましい。さらに真空雰囲気2000Pa以下(好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下)、120〜130℃で15〜30時間としてもよい。接合工程の接合条件としては、被接合体を耐熱性の樹脂バッグに入れ、樹脂バッグ内を脱気した上で樹脂バッグをシールし、このバッグごと被接合体をオートクレーブ中で加圧加熱処理により接合してもよい。加圧加熱接合条件はプリベイク工程の温度より低い温度、例えば100℃で10〜20MPaの圧力で行うのが好ましい。こうすれば、アクリル樹脂製の接合シートを用いた場合において、接合界面に剥がれや気泡が発生することのないセラミックス−金属接合体を得ることができる。ここで、プリベイク工程における加熱温度が120℃未満だと、得られた接合体を高温で使用したときに接合界面に気泡が発生するため好ましくなく、130℃を超えると、接合シートが変質して接着性が低下するため好ましくない。また、プリベイク工程における加熱時間が15時間未満だと、得られた接合体を高温で使用したときに接合界面に気泡が発生するおそれがあるため好ましくなく、30時間を超えると、得られる接合体の性能は問題ないが、必要以上に時間が長くなり生産性が低下するため好ましくない。
【0012】
本発明のセラミックス−金属接合体の製法において、前記樹脂はシリコーン樹脂であり、プリベイク工程での加熱条件は、大気中で140〜170℃で15〜30時間としてもよい。大気の代わりに窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気1気圧とするのが好ましい。さらには真空中2000Pa以下(好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下)、140〜170℃で15〜30時間としてもよい。接合工程の接合条件としては、被接合体を耐熱性の樹脂バッグに入れ、樹脂バッグ内を脱気した上で樹脂バッグをシールし、このバッグごと被接合体をオートクレーブ中で加圧加熱処理により接合してもよい。加圧加熱接合条件はプリベイク工程の温度より10〜30℃低い温度、例えば120〜140℃で10〜20MPaの圧力で行うのが好ましい。こうすれば、シリコーン樹脂製の接合シートを用いた場合において、接合界面に剥がれや気泡が発生することのないセラミックス−金属接合体を得ることができる。ここで、プリベイク工程における加熱温度が140℃未満だと、得られた接合体を高温で使用したときに接合界面に気泡が発生するため好ましくなく、170℃を超えると、接合シートが変質して接着性が低下するため好ましくない。また、プリベイク工程における加熱時間が15時間未満だと、得られた接合体を高温で使用したときに接合界面に気泡が発生するおそれがあるため好ましくなく、30時間を超えると、得られる接合体の性能は問題ないが、必要以上に時間が長くなり生産性が低下するため好ましくない。
【0013】
本発明のセラミックス−金属接合体の製法において、前記セラミックス−金属接合体は、半導体プロセスにおいてウエハーを吸着固定するのに使用する静電チャックであってもよいし、半導体プロセスにおいて反応ガスをチャンバー容器に流し込むのに使用するシャワーヘッドであってもよい。
【0014】
本発明のセラミックス−金属接合体は、セラミックス製のプレートと金属製の支持台とを樹脂からなる接合シートで接合した接合体であって、120℃,100Paの真空環境下で300時間加熱した場合の前記接合シートの重量変化が50μg/cm
2(ここで単位は接合面平方センチあたり)以下のものであるか、その場合の前記プレートと前記接合シートとの接合界面及び前記支持台と前記接合シートとの接合界面に気泡が発生しないものである。
【0015】
このセラミックス−金属接合体は、本発明のセラミックス−金属接合体の製法によって得ることができるが、製造時に接合シートの揮発成分が低減したことにより、高温下に晒しても接合シートの重量変化はわずかしか起こらない。
【0016】
本発明のセラミックス−金属接合体は、半導体プロセスにおいてウエハーを吸着固定するのに使用する静電チャックであってもよいし、半導体プロセスにおいて反応ガスをチャンバー容器に流し込むのに使用するシャワーヘッドであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
図1は静電チャック20及びシャワーヘッド60を含むプラズマ処理装置10の構成の概略を示す断面図である。
【0019】
プラズマ処理装置10は、
図1に示すように、内圧を調整可能な金属製(例えばアルミニウム合金製)のチャンバー12の内部に、静電チャック20とシャワーヘッド60とが設置されている。
【0020】
チャンバー12は、ガス供給路14から反応ガスをシャワーヘッド60に供給可能であると共に、排気通路16に接続された真空ポンプによってチャンバー12の内圧を所定の真空度まで減圧可能である。
【0021】
静電チャック20は、プラズマ処理を施すシリコン製のウエハーWを吸着可能なプレート22と、このプレート22の裏面に配置された支持台としての冷却板28と、プレート22と冷却板28とを接合する接合シート32とを備えている。
【0022】
プレート22は、外周に段差を備えたセラミックス製の円盤部材であり、ウエハー載置面23の外径がウエハーWの外径よりも小さい。このプレート22は、静電電極24と抵抗加熱素子26とを内蔵している。静電電極24は、図示しない外部電源により直流電圧を印加可能な平面状の電極である。この静電電極24に直流電圧が印加されると、ウエハーWはクーロン力又はジョンソン・ラーベック力によりウエハー載置面23に吸着固定され、直流電圧の印加を解除すると、ウエハーWのウエハー載置面23への吸着固定が解除される。抵抗加熱素子26は、プレート22の全面にわたって配線されるように例えば一筆書きの要領でパターン形成され、電圧を印加すると発熱してウエハーWを加熱する。抵抗加熱素子26には、冷却板28の裏面から抵抗加熱素子26の一端及び他端にそれぞれ到達する棒状端子(図示せず)によって電圧を印加可能である。このプレート22をアルミナで形成した場合には、体積抵抗率が高いためクーロン型の静電チャックとして機能し、窒化アルミニウムで形成した場合には、アルミナよりも体積抵抗率が低いためジョンソン・ラーベック型の静電チャックとして機能する。
【0023】
冷却板28は、外周に段差を備えたアルミニウム製の円盤部材であり、プレート22と対向する上面の外径がプレート22の下面の外径と一致している。この冷却板28は、図示しない外部冷却装置で冷却された冷媒(例えば水)が循環する冷媒通路30を有している。この冷媒通路30は、冷却板28の全面にわたって冷媒が通過するように例えば一筆書きの要領で形成されている。また、冷却板28は、チャンバー12の底面に図示しないボルトにより固定されている。これにより、静電チャック20の全体がチャンバー12内に固定されている。なお、冷却板28の外周に設けられた段差には、図示しない保護リングを配置してもよい。保護リングは、ウエハーWと接触しないように形成され、ウエハーWのプラズマ処理時に冷却板28をプラズマから保護するためのものであり、必要に応じて交換が可能である。保護リングの材質としては、石英、アルミナ、金属シリコン等が使用できる。
【0024】
接合シート32は、プレート22と冷却板28とを接合する層であり、外径がプレート22の下面の外径や冷却板28の上面の外径と一致している。この接合シート32は、後述するプリベイク処理を施したあと、プレート22と冷却板28とで挟んだ状態で気密バッグに入れてバッグ内を減圧して真空パックし、オートクレーブに気密バッグごと入れて加圧加熱条件で処理されたものである。接合シート32としては、アクリル樹脂製のものやシリコーン樹脂製のものが好ましい。また、接合シート32の厚みは100〜300μmが好ましい。
【0025】
シャワーヘッド60は、反応ガスをチャンバー12に分散供給するのに利用されるセラミックス製で円盤状のプレート62と、プラズマを発生させるための上部電極として機能する円錐台形状の金属電極板64と、プレート62と金属電極板64とを接合する接合シート66とを備えている。このシャワーヘッド60は、プレート62、接合シート66及び金属電極板64を上下方向に貫通する多数の小穴60aを備えている。金属電極板64は、シースヒーター65を内蔵している。このシースヒーター65は、金属電極板64の全面にわたって一筆書きの要領で形成されている。接合シート66は、後述するプリベイク処理を施したあと、プレート62と金属電極板64とで挟んだ状態で真空パックし、オートクレーブに入れて加圧加熱条件で処理されたものである。接合シート66としては、アクリル樹脂製のものやシリコーン樹脂製のものが好ましい。こうしたシャワーヘッド60は、チャンバー12に取り付けられた冷却板68に金属電極板64の上面が接触するように配置・固定されている。この冷却板68は、図示しない外部冷却装置で冷却された冷媒(例えば水)が循環する冷媒通路72を有している。また、冷却板68は、チャンバー12に接続されたガス供給路14からガス溜め76を介して供給される反応ガスを分配通路74を介してシャワーヘッド60の小穴60aに供給するように構成されている。
【0026】
次に、こうして構成されたプラズマ処理装置10の使用例について説明する。まず、冷媒通路30,72に図示しない外部冷却装置で所定温度(例えば25℃)に冷却された冷媒を循環させる。続いて、ウエハーWをプレート22のウエハー載置面23に載置する。そして、チャンバー12内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、静電電極24に直流電圧をかけてクーロン力又はジョンソン・ラベック力を発生させ、ウエハーWをウエハー載置面23に吸着固定する。次に、チャンバー12内を所定圧力(例えば数10〜数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー12内のシャワーヘッド60の金属電極板64と静電チャック20の静電電極24との間に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる。なお、静電電極24には静電気力を発生させるための直流電圧と高周波電圧の両方が印加されるものとしたが、高周波電圧は静電電極24の代わりに冷却板28に印加されるものとしてもよい。そして、発生したプラズマによってウエハーWの表面がエッチングされる。このとき、抵抗加熱素子26に供給する電力量を調節したり、冷却板28の冷媒通路30に循環させる冷媒の流量を調節したりすることにより、ウエハーWの温度が一定になるように制御する。また、シースヒーター65に供給する電力量を調節したり、冷却板68の冷媒通路72に循環させる冷媒の流量を調節したりすることにより、シャワーヘッド60の温度が一定になるように制御する。
【0027】
次に、静電チャック20の製造手順について説明する。
図2は静電チャック20の第1の製造手順を示す説明図、
図3は静電チャック20の第2の製造手順を示す説明図、
図4及び
図5は静電チャック20の第3の製造手順を示す説明図である。
【0028】
はじめに、
図2の説明図にしたがって第1の製造手順を説明する。まず、プレート22と、冷却板28と、樹脂製で両面粘着性の接合シート32とを用意する(
図2(a)参照)。接合シート32は、プレート22の下面や冷却板28の上面と同じ形状のものを用意する。次に、冷却板28の上面に接合シート32を貼り付ける(
図2(b)参照)。そして、接合シート32を貼り付けた冷却板28を乾燥機内に設置し、大気雰囲気中、もしくは乾燥機内の大気を窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスに置換して、もしくは乾燥機内圧力を2000Pa以下(好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下)に減圧し、その状態でプリベイク処理を行う(
図2(c)参照)。プリベイク処理では、接合シート32がアクリル樹脂製の場合には、120〜130℃で15〜30時間処理し、その後乾燥機中で自然冷却する。このときの温度履歴の一例を
図6に示す。一方、接合シート32がシリコーン樹脂製の場合には、140〜170℃で15〜30時間処理し、その後乾燥機真空中で自然冷却する。このときの温度履歴の一例を
図7に示す。こうしたプリベイク処理により、接合シート32中の揮発成分が低減する。プリベイク処理後、冷却板28に貼り付けられた接合シート32の上面にプレート22の下面が一致するように積層し(
図2(d)参照)、それを耐熱樹脂バッグ中に入れたあとオートクレーブに入れ、プリベイク処理の温度より10〜30℃低い温度で、10〜20MPaの加圧加熱下で3〜6時間処理することにより、プレート22が接合シート32を挟んで冷却板28と密着して接合され、静電チャック20を得る(
図2(e)参照)。
【0029】
次に、
図3の説明図にしたがって第2の製造手順を説明する。まず、プレート22と、冷却板28と、樹脂製で両面粘着性の接合シート32とを用意する(
図3(a)参照)。接合シート32は、第1の製造手順と同様のものを用意する。次に、プレート22の下面に接合シート32を貼り付ける(
図3(b)参照)。そして、接合シート32を貼り付けたプレート22を乾燥機内に設置し、大気雰囲気中で、もしくは乾燥機内の大気を窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスに置換して、もしくは乾燥機内圧力を2000Pa以下(好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下)に減圧し、その状態でプリベイク処理を行う(
図3(c)参照)。プリベイク処理は、第1の製造手順と同じ条件で行う。これにより、接合シート32中の揮発成分が低減する。プリベイク処理後、プレート22に貼り付けられた接合シート32の下面に冷却板28の上面が一致するように積層し(
図3(d)参照)、それを耐熱樹脂バッグ中に入れたあとオートクレーブに入れ、加圧加熱下で数時間処理することにより、静電チャック20を得る(
図3(e)参照)。
【0030】
次に、
図4及び
図5の説明図にしたがって第3の製造手順を説明する。まず、接合シート32と同形状の穴70aをくりぬいた板であるフレーム70と、樹脂製で両面粘着性の大判シート31とを用意する(
図4(a)参照)。大判シート31は、プレート22の下面や冷却板28の上面よりも大きな形状のものを用意する。次に、大判シート31がフレーム70の穴70aを塞ぐように大判シート31をフレーム70に貼り付ける(
図4(b)参照)。そして、大判シート31を貼り付けたフレーム70を乾燥機内に設置し、大気雰囲気中で、もしくは乾燥機内の大気を窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスに置換して、もしくは乾燥機内圧力を2000Pa以下(好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下)に減圧し、その状態でプリベイク処理を行う(
図4(c)参照)。プリベイク処理は、第1の製造手順と同じ条件で行う。但し、大判シート31は両面から揮発成分が揮発するため、第1及び第2の製造手順に比べて処理時間を短くしてもよい。これにより、大判シート31中の揮発成分が低減する。続いて、プレート22と冷却板28とを用意し(
図5(a)参照)、大判シート31のうちフレーム70の穴70aを塞いでいる部分をプレート22と冷却板28とで挟み込む(
図5(b)参照)。そして、大判シート31を冷却板28の外縁に沿って切断することで大判シート31を接合シート32とし(
図5(c)参照)、それを耐熱樹脂バッグ中に入れたあとオートクレーブに入れ、加圧加熱下で数時間処理することにより、静電チャック20を得る(
図5(d)参照)。
【0031】
第1〜第3の製造手順によって得られた静電チャック20を120℃、100Paの真空環境下で300時間加熱したところ、接合シート1平方センチメートルあたりの重量変化が25μg/cm
2(ここで単位は接合面平方センチあたり)以下であり、プレート22と接合シート32との接合界面や冷却板28と接合シート32との接合界面には気泡は発生しなかった。
【0032】
次に、シャワーヘッド60の製造手順について説明する。シャワーヘッド60は、静電チャック20の第1〜第3の製造手順に準じて製造することができる。
【0033】
はじめに、シャワーヘッド60を、静電チャック20の第1の製造手順(
図2参照)に準じて製造する場合について説明する。まず、セラミックス製のプレート62と、金属電極板64と、樹脂製で両面粘着性の接合シート66とを用意する。接合シート66は、接合シート32と同様のものである。プレート62,金属電極板64及び接合シート66には、あらかじめ小穴60aに対応する位置に穴を開けておく。次に、金属電極板64に接合シート66を穴の位置が一致するようにして貼り付ける。そして、接合シート66を貼り付けた金属電極板64を乾燥機内に設置し、大気雰囲気中で、もしくは乾燥機内の大気を窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスに置換して、もしくは乾燥機内圧力を2000Pa以下(好ましくは10Pa以下、より好ましくは0.1Pa以下)に減圧し、その状態で上述したプリベイク処理を行う。プリベイク処理により、接合シート66中の揮発成分が低減する。プリベイク処理後、金属電極板64に貼り付けられた接合シート66にプレート62を穴が一致するようにして積層し、それを耐熱樹脂バッグ中に入れたあと樹脂バッグ内を減圧してバッグを気密にシールし、バッグごと被接合体をオートクレーブに入れ、プリベイク処理の温度より10〜30℃低い温度で、10〜20MPaの加圧加熱下で3〜6時間処理することにより、シャワーヘッド60を得る。
【0034】
次に、シャワーヘッド60を、静電チャック20の第2の製造手順(
図3参照)に準じて製造する場合について説明する。まず、プレート62と、金属電極板64と、樹脂製で両面粘着性の接合シート66とを用意する。接合シート66は、接合シート32と同様のものである。プレート62,金属電極板64及び接合シート66には、あらかじめ小穴60aに対応する位置に穴を開けておく。次に、プレート62に接合シート66を穴の位置が一致するようにして貼り付ける。そして、接合シート66を貼り付けたプレート62を乾燥機内に設置し、大気雰囲気中で、もしくは乾燥機内の大気を窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスに置換して、もしくは乾燥機内圧力を2000Pa以下(好ましくは10Pa以下、より好ましくは0.1Pa以下)に減圧し、その状態で上述したプリベイク処理を行う。プリベイク処理により、接合シート66中の揮発成分が低減する。プリベイク処理後、プレート62に貼り付けられた接合シート66に金属電極板64を穴が一致するようにして積層し、それを耐熱樹脂バッグ中に入れたあとオートクレーブに入れ、加圧加熱下で数時間処理することにより、シャワーヘッド60を得る。
照)。
【0035】
次に、シャワーヘッド60を、静電チャック20の第3の製造手順(
図4及び
図5参照)に準じて製造する場合について説明する。まず、接合シート66と同形状の穴をくりぬいた板であるフレームと、樹脂製で両面粘着性の大判シート(接合シート66よりも大きな形状のシート)とを用意する。なお、大判シートには、小穴60aに相当する位置に穴を開けておく。次に、大判シートがフレームの穴を塞ぐように大判シートをフレームに貼り付ける。そして、大判シートを貼り付けたフレームを乾燥機内に設置し、大気雰囲気中で、もしくは乾燥機内の大気を窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスに置換して、もしくは乾燥機内圧力を2000Pa以下(好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下)に減圧し、その状態で上述したプリベイク処理を行う。但し、処理時間は第1及び第2の製造手順に比べて短くしてもよい。これにより、大判シート中の揮発成分が低減する。続いて、プレート62と金属電極板64とを用意し、大判シートのうちフレームの穴を塞いでいる部分をプレート62と金属電極板64とで挟み込む。このとき、それぞれに設けた穴の位置が一致するようにする。そして、大判シートを金属電極板64の外縁に沿って切断することで大判シートを接合シート66とし、それを耐熱樹脂バッグ中に入れたあとオートクレーブに入れ、加圧加熱下で数時間処理することにより、シャワーヘッド60を得る。
【0036】
以上詳述した本実施形態の静電チャック20やシャワーヘッド60の製法によれば、プレート22と冷却板28との接触面積やプレート62と金属電極板64との接触面積が低下したり接触面の接着強度にバラツキが生じたりすることがなくなる。具体的には、静電チャック20についていえば、接合シート32をあらかじめ真空中で加熱して接合シート32中の揮発成分を減らしてからプレート22と冷却板28とを加圧加熱処理により接合するため、得られた静電チャック20を高温で使用した場合でも、接合シート32からガスが発生せず、プレート22と接合シート32との間や冷却板28と接合シート32との間に気泡が生成しない。その結果、プレート22と冷却板28との間の接触面積が低下したり接着性にバラツキが生じたりすることがなくなり、吸着しているウエハーWの均熱性が良好になる。また、ウエハーWの温度を一定に制御するにあたり、抵抗加熱素子26に供給する電力が安定化するため、温度制御が容易になる。これらの効果は、シャワーヘッド60においても同様に得られる。なお、静電チャック20の場合には、更に、発生したガスがプレート22の表面に付着することがないため、ウエハーWの吸着・脱着の応答性を良好に保つことができる。
【0037】
また、静電チャック20の第1及び第2の製造手順では、プリベイク処理時に接合シート32の片面から揮発成分が揮発していくのに対して、第3の製造手順では、大判シート31の両面から揮発成分が揮発していくため、短時間でプリベイク処理を終了することができる。この点は、シャワーヘッド60においても同様である。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、静電チャック20としてプレート22に抵抗加熱素子26を埋め込んだものを採用したが、この抵抗加熱素子26を省略してもよい。また、シャワーヘッド60として金属電極板64にシースヒーター65を埋設したものを採用したが、このシースヒーター65を省略してもよい。
【0040】
上述した実施形態では、接合シート32,66としてアクリル樹脂製のものやシリコーン樹脂製のものを例示し、それらのプリベイク処理の条件を詳説したが、他の樹脂で作製したものを用いてもよい。その場合には、その樹脂に合ったプリベイク処理の条件(処理温度や処理時間など)を前もって実験により決定すればよい。具体的には、実施例の欄で説明するように、処理温度と処理時間と接合界面の様子(剥がれの有無など)との関係を調べたうえで決定すればよい。
【実施例】
【0041】
[参考例]
アクリル樹脂製の接合シートより発生するガス成分を、ダイナミックヘッドスペース−ガスクロマトグラフ−質量分析(DHS−GC−MS)により分析した。具体的には、アクリル樹脂製の接合シートをチャンバーに設置し、そのチャンバー内を高真空状態とした。続いて、チャンバー内を所定温度(60℃、80℃、100℃、120℃)に加熱し、その状態でキャリアガスを流量500mL/minで流し、発生したガスを吸着剤に捕集し濃縮したあと、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)でガス成分を分析した。なお、質量分析装置のイオン化方式は、電子衝撃法(EI法;70eV)を採用した。分析結果を示すチャートを
図8に示す。
図8から、この接合シートから発生したガス成分は主に炭化水素化合物であることがわかる。
【0042】
[実施例1]
静電チャック20の一例として、φ297mm、厚み3mmのアルミナ製のプレート22と、φ297mm、厚み18mmのAl製の冷却板28とを、厚み0.15mmのアクリル樹脂製の接合シート32により接着したものを製造した。この静電チャック20を上述した第1の製造手順に準じて製造した。具体的には、Al製の冷却板28に接合シート66を貼り付けた後にプリベイク処理を行った。プリベイク処理は、10Pa以下に減圧された専用の炉の中で、32℃/hrの速度で昇温させ、120℃になったところで温度を一定にし、20時間キープした。その後は4℃/hrの速度で降温させた。その後、接合シート66を貼り付けた冷却板28とプレート22とを接合した。具体的には、位置を合わせてこれらを仮接合した後、両者を耐熱性の樹脂バッグに入れ、樹脂バッグ内を1000Pa以下に脱気した上で樹脂バッグをシールした。次に、このバッグごと仮接合体をオートクレーブ中で加圧加熱処理により接合した。加圧加熱接合条件は100℃で14MPaの気圧下で4時間行った。
【0043】
[比較例1]
実施例1の静電チャック20を、従来法により作製した。具体的には、実施例1のプリベイク処理を実施しなかった点を除いては、実施例1と同様の手順により静電チャック20を作製した。
【0044】
[実施例1,比較例1の効果確認]
実施例1と比較例1の静電チャック20をそれぞれ
図1に示すようにチャンバー12内に設置し、効果確認試験を行った。静電チャック20の冷却板28の冷媒通路30には、45℃の冷却水を一定量流し、プレート22に埋設された抵抗加熱素子26に電力を供給することで、プレート22の表面温度が所定温度(実施例1は90℃、比較例1は80℃)になるように、抵抗加熱素子26に供給する電力を制御した。プレート22の表面温度は、プレート22の中心に熱電対を接触させて測定した。その結果、制御開始から100時間経過後、比較例1では電力が20%近く降下したのに対し、実施例1では所定温度が高いにも係わらず電力が1%程度しか低下しなかった。そのときの様子を
図9に示す。こうした電力の変化は、接合界面に気泡が発生し、プレート22と冷却板28の間の熱伝達が小さくなるように変化していることを意味する。すなわち、チャンバー中で同一の電力を供給した場合、接合界面に気泡が発生した部分でプレート22の表面温度が大きくなるように変化することとなる。さらに、気泡が面内で不均一に発生し、プレート22の表面温度分布が変化することとなる。プレート22の表面の温度もしくは温度分布が変わるとプラズマ中の反応種が大きく変化し、例えば、エッチング工程でウエハー面内のエッチング速度のバラツキが生じ、デバイスの歩留まりが悪くなる。
【0045】
以上を確認するために、実施例1と比較例1の静電チャック20を表面温度が65℃になるように抵抗加熱素子26に供給する電力を制御し、それぞれの静電チャック表面の温度分布を測定した。実施例1は最高温度66.2℃、最低温度62.5℃、平均温度64.6℃、温度範囲(=最高温度−最低温度)3.7℃であり、比較例1は最高温度66.3℃、最低温度62.7℃、平均温度64.8℃、温度範囲(=最高温度−最低温度)3.6℃であり、実施例1と比較例1で差異はなかった。その後、制御開始から300時間経過した後のプレート22の表面温度分布を調べたところ、実施例1では最高温度66.4℃、最低温度62.5℃、平均温度64.8℃、温度範囲(=最高温度−最低温度)3.9℃であったのに対し、比較例1では、最高温度67.7℃、最低温度62.3℃、平均温度65.1℃、温度範囲5.4℃であった。この結果から、比較例1に比べて実施例1の方がプレート22の均熱性が安定していることがわかる。
【0046】
[実施例2]
シャワーヘッド60の一例として、φ430mm、厚み4mmのSiC製のプレート62と、一面がφ430mmで他面がφ450mmの外周テーパー形状で厚みが20mmのAl製の金属電極板64とからなり、これらが厚み0.25mmのシリコン樹脂製の接合シート66により接着されたものを製造した。小穴60aは、φ0.1mmであり、隣り合う間隔が4mmとなるようにした。このシャワーヘッド60を上述した第2の製造手順に準じて製造した。具体的には、SiC製のプレート62に接合シート66を貼り付けた後にプリベイク処理を行った。プリベイク処理は、10Pa以下に減圧された専用の炉の中で、プレート62を10℃/hrの速度で昇温させ、150℃になったところで温度を一定にし、20時間キープした。その後は5℃/hrの速度で降温させた。その後、接合シート66を貼り付けたプレート62と金属電極板64とを接合した。具体的には、位置を合わせてこれらを仮接合した後、両者を耐熱性の樹脂バッグに入れ、樹脂バッグ内を1000Pa以下に脱気した上で樹脂バッグをシールした。次に、このバッグごと仮接合体をオートクレーブ中で加圧加熱処理により接合した。加圧加熱接合条件は100℃で14atmの気圧下で5時間行った。
【0047】
[比較例2]
実施例2のシャワーヘッド60を、従来法により作製した。具体的には、実施例2のプリベイク処理を実施しなかった点を除いては、実施例2と同様の手順によりシャワーヘッド60を作製した。
【0048】
[実施例2,比較例2の効果の確認]
実施例2と比較例2のシャワーヘッド60をそれぞれ
図1に示すチャンバー12内に入れ、効果確認試験を行った。シャワーヘッド60は、チャンバー12に取り付けられた冷却板68に金属電極板64の上面が接触するように配置・固定した。次に冷却板68の冷媒通路72に60℃の冷却水を一定量流し、金属電極板64に埋設されたシースヒーター65に電力を供給することで、シャワーヘッド60のプレートの表面温度が90℃になるように、シースヒーター65に供給する電力を制御した。なお、プレートの表面温度はプレート表面に熱電対をセラミックボンドで固定して測定し温度制御に用いた。その結果、制御開始から70時間経過後、比較例2では電力が8%降下したのに対し、実施例2では電力が3%程度しか低下しなかった。そのときの様子を
図10に示す。こうした電力の変化は、シャワーヘッド60のプレート62の表面における温度が大きく変化していることを意味する。すなわち、プラズマからの入熱がプレート62の表面の温度が変わるとプラズマ中の反応種が大きく変化し、例えば、エッチング工程でウエハー面内のエッチング速度のバラツキが生じ、デバイスの歩留まりが悪くなる。実際、比較例2ではエッチング工程の歩留まり(生産総数に対する合格品数の百分率)が88%だったのに対し、実施例2では歩留まりが99%以上であった。
【0049】
[アクリル樹脂製シートのプリベイク条件の検討]
静電チャックのプレートを模擬した透明ガラスにアクリル樹脂製で両面粘着性のある接合シートの片面を貼り付けた。接合シートの他面を暴露したまま、真空乾燥機内に設置し、乾燥機内圧力を10Pa以下(7〜8Pa)に減圧した。続いて、プリベイク処理を行った。すなわち、この圧力を保ちつつ、下記表1に示す処理温度、処理時間で加熱した。プリベイク処理終了後、透明ガラスに貼り付けられた接合シートの上に冷却板を模擬した透明ガラスを載せ、仮接着して耐熱樹脂バッグ中に入れた。そして、耐熱樹脂バッグ中の空気を1000Pa以下に脱気し、そのバッグをシールして気密にしたのちオートクレーブ炉に入れ、100℃、14atmで5時間加熱して一対の透明ガラスを接合シートで接合したガラス−ガラス接合体を得た。ここで、ガラスと接合シートとの接合界面における接着性を観察した。その結果を表1に示す。表1に示すように、プリベイク処理時の温度が110〜130℃では良好に接着していたが、140℃では剥がれなどが発生しており接着性は不良であった。
【0050】
【表1】
【0051】
次に、上記のようにして得られたガラス−ガラス接合体を、120℃、100Paで300時間加熱し、ガラスと接合シートとの接合界面の欠陥の有無(気泡の有無)を調べた(評価試験)。その結果を下記表2に示す。また、透明ガラスの代わりにAl板を用いてAl板−Al板接合体をガラス−ガラス接合体の製法に準じて作製し、熱伝導率の変化を調べた。その結果を下記表3に示す。なお、熱伝導率は、熱流計法(JIS−A1412,ASTM−C518,ISO8301準拠)によって測定した。また、表3の数値(%)は、Al板−Al板接合体を製造した直後の値を基準として、上述した評価試験後の値の変化の割合を求めたものである。表2及び表3の結果から、アクリル樹脂製の接合シートを用いた場合のプリベイク条件は、表4にて○で示した処理温度、処理時間が適切であるといえる。なお、プリベイク条件として処理温度110〜130℃、処理時間40時間を採用した場合にも良好な結果が得られたが、必要以上に時間が長くなり生産性が低下するというため好ましくない。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
[シリコーン樹脂製シートのプリベイク条件の検討]
静電チャックのプレートを模擬した透明ガラスにシリコーン樹脂製で両面粘着性のある接合シートの片面を貼り付けた。接合シートの他面を暴露したまま、真空乾燥機内に設置し、乾燥機内圧力を10Pa以下(7〜8Pa)に減圧した。続いて、プリベイク処理を行った。すなわち、この圧力を保ちつつ、下記表5に示す処理温度、処理時間で加熱した。プリベイク処理終了後、透明ガラスに貼り付けられた接合シートの上に冷却板を模擬した透明ガラスを載せ、仮接着して耐熱樹脂バッグ中に入れた。そして、耐熱樹脂バッグ中の空気を脱気し、そのバッグをシールして気密にしたのちオートクレーブ炉に入れ、100℃、14atmで5時間加熱して一対の透明ガラスを接合シートで接合したガラス−ガラス接合体を得た。ここで、ガラスと接合シートとの接合界面における接着性を観察した。その結果を表5に示す。表5に示すように、プリベイク処理時の温度が120〜170℃では良好に接着していたが、180℃では剥がれなどが発生しており接着性は不良であった。
【0056】
【表5】
【0057】
次に、上記のようにして得られたガラス−ガラス接合体を、120℃、100Paで300時間加熱し、ガラスと接合シートとの接合界面の欠陥の有無(気泡の有無)を調べた(評価試験)。その結果を下記表6に示す。また、透明ガラスの代わりにAl板を用いてAl板−Al板接合体をガラス−ガラス接合体の製法に準じて作製し、熱伝導率の変化を調べた。その結果を下記表7に示す。なお、熱伝導率の測定法や表7の数値(%)は既述のとおりである。表6及び表7の結果から、シリコーン樹脂製の接合シートを用いた場合のプリベイク条件は、表8にて○で示した処理温度、処理時間が適切であるといえる。なお、プリベイク条件として処理温度140〜170℃、処理時間40時間を採用した場合にも良好な結果が得られたが、必要以上に時間が長くなり生産性が低下するというため好ましくない。
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
次に、シリコーン樹脂製の接合シートを用いた場合において、ガラス−ガラス接合体を製造するにあたり、プリベイク処理時の乾燥機内圧力を0.01Paに設定し、この圧力を保ちつつ、下記表9に示す処理温度、処理時間で加熱した以外は、上述した製造手順と同じ手順によってガラス−ガラス接合体を製造した。このガラス−ガラス接合体を、160℃、100Paで300時間加熱し、ガラスと接合シートとの接合界面の欠陥の有無(気泡の有無)を調べた(評価試験)。その結果を表9に示す。表9から明らかなように、プリベイク処理を0.01Paという高真空の条件下、表8に示した適切な処理温度、処理時間で実施したガラス−ガラス接合体は、評価試験の温度が160℃という高温であっても接合界面に気泡が発生しなかった。
【0062】
【表9】
【0063】
[シリコーン樹脂製シートのプリベイク処理の雰囲気の検討]
上記[シリコーン樹脂製シートのプリベイク条件の検討]において、プリベイク処理時の乾燥機の雰囲気を大気とし、1気圧の雰囲気圧力下、170℃で30時間加熱処理した。それ以外は上記[シリコーン樹脂製シートのプリベイク条件の検討]と全く同じ条件でガラス接合体およびAl接合体を作成し、上記評価試験により評価を行った。その結果、ガラス接合体の接合界面に気泡はなく、Al接合体の熱伝導率の変化は3%であった。
【0064】
また、上記[シリコーン樹脂製シートのプリベイク条件の検討]において、プリベイク処理時の乾燥機を窒素ガスとし、窒素1気圧の雰囲気下、170℃で15時間加熱処理した。それ以外は上記[シリコーン樹脂製シートのプリベイク条件の検討]と全く同じ条件でガラス接合体およびAl接合体を作成し、上記評価試験により評価を行った。その結果、ガラス接合体の接合界面に気泡はなく、Al接合体の熱伝導率の変化は3%であった。なお、窒素の代わりにアルゴンを用いた場合でも窒素のときと全く同じ結果を得た。
【0065】
以上のことから、プリベイク処理の雰囲気としては、1気圧の大気や窒素、アルゴンでも良く、熱伝導率の変化をより少なくするためには、真空中でプリベイク処理するのがより好ましい。
【0066】
本出願は、2009年2月20日に出願された米国特許出願第61/154000号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容全てが本明細書に含まれる。