(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記飛しょう体は推進装置を備えており、当該推進装置が、噴射ノズルから噴射物質を噴射するロケットモータ、または、回転翼によって推力を得るプロペラもしくはダクトファンであることを特徴とする、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の飛しょう体の誘導システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0023】
(参考の形態)
[飛しょう体の誘導システムの構成]
本発明の参考の形態に係る飛しょう体の誘導システム(以下、適宜「誘導システム」と略す。)の具体的な構成の一例について、
図1および
図2(a)を参照して具体的に説明する。本参考の形態に係る誘導システムは、
図1に示すように、飛しょう体10、照準装置20Aおよび誘導装置30から少なくとも構成されている。
【0024】
飛しょう体10は、推進方向を制御可能に飛しょうするものであり、本参考の形態では、ロケットモータ11、飛しょう体制御部12、発光部13、および誘導指令受信部14を備えている。飛しょう体10の具体的な構成は特に限定されないが、一般的には、柱状または棒状の外形を有し、後端側にロケットモータ11が設けられる誘導弾を挙げることができる。当該誘導弾は、必要に応じて外部に突出する翼部を備えていてもよいし、ロケットモータ11以外の推進機構、あるいは種々のセンサ等を備えていてもよい。ロケットモータ11は、噴射ノズルから噴射物質を噴射して飛しょう体10を飛しょうさせるものであれば特に限定されず、公知のものを好適に用いることができる。
【0025】
飛しょう体制御部12は、公知のマイクロコントローラ等で構成され、後述する誘導指令に基づいて飛しょう体10の飛しょう動作等を制御する。発光部13は、
図1には具体的に示さないが、飛しょう体10の後端部に設けられ、飛しょう中に光を発する。この光は、照準装置20Aにより受光されることで、誘導装置30での誘導に利用される。本参考の形態では、例えば赤外線発光装置が用いられるが、特に限定されない。誘導指令受信部14は、誘導装置30から送信される誘導指令を受信するものであり、公知の受信器が用いられる。
【0026】
照準装置20Aは、
図2(a)に示すように、射手40が飛しょう体10を観察しながら目標50を照準するものであり、本参考の形態では、カメラ部21および視線計測部22を備えている。カメラ部21は、
図1において破線で示すように、少なくとも飛しょう体10の発光部13から発せられる光を受光し、飛しょう体10の飛しょう方向を検出する。また、カメラ部21は、目標50を照準するために用いられてもよい。カメラ部21の具体的な構成は特に限定されず、従来のCLOS方式のように光電変換機能を有するアナログ素子(フォトダイオード等)を用いて発光部13の位置を特定する手段、あるいは、固体撮像素子(CCD)等を用いた公知のデジタル撮像装置等を好適に用いることができる。視線計測部22は、
図2(a)に示すように、射手40の視線を計測するものであり、公知の視線計測装置が用いられる。なお、照準装置20Aは、カメラ部21および視線計測部22以外で公知の種々の構成を備えているが、その説明は省略する。
【0027】
誘導装置30は、
図1および
図2(a)に示すように、誘導指令を生成して飛しょう体10に送信することにより、当該飛しょう体10を目標50に向かって誘導するものであり、本参考の形態では、誘導指令生成部31および誘導指令送信部32を備えている。
図1に示すように、誘導指令生成部31には、照準装置20Aのカメラ部21から飛しょう体10の飛しょう方向が入力されるとともに、視線計測部22から射手40の視線方向が入力される。
【0028】
誘導指令生成部31は、飛しょう体10の飛しょう方向を射手40の視線方向に近接させるように、誘導指令を生成する。誘導指令生成部31は、誘導装置30が備える公知のマイクロプロセッサ(
図1には図示せず)が、予め記憶されているプログラムに従って動作することにより実現される機能構成であってもよいし、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等により構成される論理回路等であってもよい。
【0029】
誘導指令送信部32は、誘導指令生成部31で生成された誘導指令を飛しょう体10の誘導指令受信部14に送信するものであり、公知の送信器が用いられる。なお、誘導装置30は、誘導指令生成部31および誘導指令送信部32以外で公知の種々の構成を備えているが、その説明は省略する。
【0030】
照準装置20Aおよび誘導装置30は、
図1には示さないが、公知のケーブル等により接続されている。これにより、照準装置20Aのカメラ部21および視線計測部22から誘導装置30の誘導指令生成部31に、飛しょう方向および視線方向のデータが入力される。また、
図1には示さないが、本参考の形態に係る誘導システムは飛しょう体10の発射装置も含んでいる。誘導装置30はこの発射装置に一体的に設けられてもよいが、照準装置20Aは射手40が携帯可能に設けられていることが望ましい。
【0031】
また、誘導装置30の誘導指令送信部32と飛しょう体10の誘導指令受信部14とは、無線または有線で通信可能に接続されている。無線の場合には、誘導指令送信部32および誘導指令受信部14は、それぞれ公知の無線通信機が用いられる。有線の場合には、誘導装置30が公知のケーブルを介して誘導指令送信部32および誘導指令受信部14の間で誘導指令が送受信される。ケーブルは、通常、飛しょう体10のリール部材に巻き取られており、飛しょう体10の飛しょうに伴ってリール部材から引き出される。
【0032】
[飛しょう体の誘導方法]
前記構成の誘導システムによる飛しょう体10の誘導方法の一例について、
図1、
図2(a)に加えて
図2(b)を参照して具体的に説明する。
【0033】
図2(a)に示すように、射手40は、飛しょう体10の到達先である目標50を目視しており、そのときの視線方向De(図中破線)は照準装置20A(
図2(a)には符号を付さず)の視線計測部22により計測される。また、照準装置20Aのカメラ部21は、飛しょう体10の発光部13(
図2(a)には図示せず)から発せられる光を受光することにより、飛しょう体10の飛しょう方向Df(図中点線)を検出する。本参考の形態では、これら視線方向Deおよび飛しょう方向Dfは、カメラ部21の位置を基準として水平に設定される線である基準線L0に対する角度として検出される。なお、図中一点鎖線はカメラ部21の照準線Laである。
【0034】
具体的には、まず、射手40(すなわち照準装置20A)を基準として、飛しょう体10の進行方向をX軸とし、射手40を基準として鉛直方向をZ軸とした場合、カメラ部21の位置を基準点として座標(X,Z)=(0,0)に設定すると、この基準点(カメラ部21の位置)から水平方向に延伸する直線が基準線L0となる。そして、目標50の位置を座標(X,Z)=(X
T ,Z
T )に設定し、飛しょう中の飛しょう体10の位置を座標(X,Z)=(X
M ,Z
M )と設定する。
【0035】
ここで、飛しょう体10の進行方向は常にプラスに設定できるが、目標50の位置は、カメラ部21よりも高い場合もあれば低い場合もある。なお、
図2(a)では、目標50および飛しょう体10がいずれもカメラ部21よりも低い位置に示されているが、これは模式的な図示であり、目標50および飛しょう体10の実際の高さ(Z軸方向)を反映するものではない。また、カメラ部21は、
図2(a)では、射手40の頭部に近接するように示されているが、これも模式的な図示であり、カメラ部21の位置が必ずしも射手40の頭部に固定されるわけではなく、カメラ部21は、射手40の頭部に隣接する位置に設けられればよい。さらに
図2(a)では、上下方向の誘導を表しているが、左右方向の誘導にも本発明が適用できることは言うまでもない。
【0036】
カメラ部21は、飛しょう方向Dfが基準線L0に対してなす目視線角である飛しょう角σ
M を取得可能となっている。飛しょう方向Dfは、
図2(a)に示すように、射手40の位置(すなわちカメラ部21の座標(0,0))と飛しょう中の飛しょう体10の位置(座標(X
M ,Z
M ))とを結ぶ直線の向きに相当する。また前述したように飛しょう体10からは発光部13から光が発せられ、これがカメラ部21で受光可能となっている。それゆえ、カメラ部21は、飛しょう体10の位置座標から飛しょう方向Dfに対応する直線を取得し、この直線と基準線L0とで形成される角度を、飛しょう角σ
M として算出すればよい(σ
M =tan
-1 (Z
M /X
M ) ≒Z
M /X
M )。
【0037】
目標50は基本的に射手40が目視する対象であるので、カメラ部21で常にその実体を撮像しなくても、視線計測部22により射手40の視線を計測すれば、視線方向Deにより照準を合わせることができる。視線計測部22は、
図2(a)に示すように、計測された視線方向Deが基準線L0に対してなす目視線角である射手視線角σ
T を算出する(σ
T =tan
-1 (Z
T /X
T ) ≒Z
T /X
T )。これにより、目標50の位置と基準点(カメラ部21)とを結ぶ直線と、基準線L0とで形成される角度を実質的に取得することができる。
【0038】
なお、カメラ部21は、本参考の形態では、画角の中で最も明るい点(すなわち飛しょう体10の発光部13)となる位置を検出し、この位置の縦方向および横方向の角度を飛しょう方向Dfとして取得してから飛しょう角σ
M を算出している。しかしながら、カメラ部21の構成はこれに限定されず、例えば、カメラ部21が画像を取得する構成であれば、公知の画像処理機能により、飛しょう体10の位置座標から飛しょう方向Dfに対応する直線を取得し、この直線と基準線L0とで形成される角度を、飛しょう角σ
M として算出すればよい。
【0039】
このようにして取得された飛しょう角σ
M および射手視線角σ
T は、誘導装置30に入力され、誘導装置30の誘導指令生成部31(
図2(a)には図示せず)は、これらの角度の差分である誤差角εを算出する。そして、この誤差角εを小さくするように、すなわち、飛しょう方向Dfと視線方向Deとが近接(最終的には、略一致するように)誘導指令を生成する。
【0040】
図2(a)における向かって左側には、カメラ部21で撮像された画面を模式的に示しており、カメラ部21による照準線Laがレチクル21aに相当し、
図2(a)において飛しょう体10と目標50との位置のずれは誤差角εに相当する。
図2(a)では、目標50の画像はレチクル21aよりも下方に位置しているので、カメラ部21は目標50を照準していない。しかしながら、射手40が視線を目標50に向け続けることで、誤差角εを小さくすることができる。それゆえ、飛しょう体10は目標50に向かって誘導される。
【0041】
ここで、誘導指令生成部31(および飛しょう体制御部12)による具体的な誘導指令としては特に限定されないが、
図2(b)に示すように、公知のPID制御を利用して誤差角εから算出される加速度指令A
ZCを好ましい一例として挙げることができる。
図2(b)では、誘導指令生成部31での誘導指令(加速度指令A
ZC)の生成と、飛しょう体制御部12での飛しょう制御とを模式的に示している。
【0042】
まず、前述したように、照準装置20A(
図2(b)には図示せず)から誘導指令生成部31に対して射手視線角σ
T および飛しょう角σ
M が入力される。
図2(b)に示すブロック図では、加え合わせ点31aにおいて射手視線角σ
T の入力がプラス符号で示され、飛しょう角σ
M の入力がマイナス符号で示される。なお、飛しょう角σ
M は、出力側から引き出されるフィードバック経路から入力される。これにより、射手視線角σ
T と飛しょう角σ
M との差分である誤差角εが算出される。
【0043】
誘導指令生成部31では、PID制御ブロック31bで示すように、算出した誤差角εから誘導指令である加速度指令A
ZCをPID制御により生成する。なお、PID制御ブロック31bにおけるK
P は比例項、K
D ・sは微分項、K
I /sは積分項を示し、sは微分記号を示す変換子である。生成した加速度指令A
ZCは、誘導指令送信部32および誘導指令受信部14を介して飛しょう体10に送信される(
図2(b)のブロック矢印)。
【0044】
飛しょう体10の飛しょう体制御部12では、運動モデルブロック12aで示すように、当該飛しょう体10の運動モデルに基づき、加速度指令A
ZCに基づいて飛しょう体10には加速度A
Z が発生する。なお、ここでは説明の簡略化のため、運動モデルブロック12aでは飛しょう体の運動を一次遅れ系(τはシステム時定数を示す)で模擬しているが、実際の飛しょう体ではもっと複雑な伝達関数となるが、それでもPID制御ブロック31bの適切なチューニングによって本発明への適用が可能である。
【0045】
飛しょう体10に発生した加速度A
Z はZ位置算出ブロック12bで示すように二回積分によって、飛しょう体10のZ座標の位置(Z
M )となり、さらにこのZ位置から飛しょう角算出ブロック12cで示すように飛しょう体10のX座標の位置(X
M )で除することで飛しょう角σ
M となる。したがって、飛しょう体制御部12はPID制御ブロック31bによって誤差角εがゼロになるように、言い換えれば、この飛しょう角σ
M が射手視線角σ
T に近づくように飛しょう体10を制御するので、その結果、飛しょう体10は目標50に近づくように誘導される。
【0046】
なお、射手40が目標50から急に視線を外してしまい、すぐに元に戻す状況はあり得るが、この場合には、射手視線角σ
T が急に変化して元に戻ることになる。それゆえ、誘導指令生成部31では、フィルタにより射手視線角σ
T のパルス状の急激な変化を除外したり、射手視線角σ
T の変化量にしきい値を設けてこれを超える場合には、直前の値をそのまま利用したりすればよい。
【0047】
このように、本発明では、射手40の視線方向Deを実質的に目視線(LOS)とみなして、飛しょう方向Dfを視線方向Deに近接させるように飛しょう体10を誘導している。それゆえ、射手40は目標50を目視するだけで、実質的に飛しょう体10を目視線上に飛しょうさせることが可能となる。したがって、射手40は、飛しょう体10を視線追尾することが可能となるので、三脚等の重厚な装備で照準装置20Aを用いることなく、半自動誘導を行うことができる。その結果、特に飛しょう体10がポータブル型の発射装置で発射されるタイプであれば、その携帯性をより向上することができる。
【0048】
また、一般にCLOS方式で誘導される飛しょう体は、シーカを備える必要がないため、煙幕または発光等といった各種の妨害手段あるいは使用環境に由来する誘導の阻害に耐性を有することが知られているが、本発明においては、CLOS方式において、射手40が目標50を直接認識しながら飛しょう体10を誘導することができるため、さまざまな誘導の阻害に対してより一層良好な耐性を発揮することが可能となる。また、シーカ等の複雑で高価な機器を搭載する必要がないため、飛しょう体10の構成そのものを簡素化かつ低コスト化することが可能となる。
【0049】
さらに、従来の一般的なポータブル型の無誘導ロケット等と比較して、射手40は、重厚な照準装置等を用いて発射前に精密に照準する必要がない。そのため、照準から発射までの操作時間(リアクションタイム)を大幅に低減することが可能となる。それゆえ、照準操作が簡素化できるだけでなく飛しょう体10を迅速に発射することも可能となるので、当該誘導システムの操作性および運用性をより一層向上することができる。
【0050】
[変形例]
本参考の形態では、前記飛しょう体として、噴射ノズルから噴射物質を噴射するロケットモータ11を備える構成を例示しているが、本発明はこれに限定されず、公知の各種推進装置により飛しょうするものであればよい。例えば、他の飛しょう体の例としては、回転翼によって推力を得るプロペラもしくはダクトファンを備える構成を挙げることができる。
【0051】
あるいは飛しょう体10としては、推進装置を備えない構成であってもよい。すなわち、本発明における飛しょう体10は、推力により飛しょうする構成だけでなく、滑空して飛しょうする構成も含まれる。このような構成の飛しょう体10は推進装置が無くても操舵翼を備えていれば、滑空している限り本参考の形態で説明した通りの誘導が可能である。滑空して飛しょうするタイプの飛しょう体10としては、例えば、グライダー、誘導爆発体等が挙げられる。このように、本発明における飛しょう体10は、推進方向を制御可能に飛しょうするものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
【0052】
また、本参考の形態では、誘導装置30の誘導指令生成部31は、基準線L0に対して射手40の視線方向Deがなす角度である射手視線角σ
T を算出し、この射手視線角σ
T と飛しょう体10の飛しょう角σ
M との差分である誤差角εを小さくする加速度指令A
ZCを、誘導指令として生成している。しかしながら本発明はこの構成に限定されず、誘導指令とした他のデータを生成して飛しょう体10を誘導してもよい。例えば、飛しょう体10および目標50のそれぞれの座標を利用して誘導指令を生成してもよい。
【0053】
また、本参考の形態では、飛しょう体10の後端部に発光部13が設けられており、照準装置20Aは、発光部13からの光を受光して飛しょう方向Dfを検出しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、ミリ波、超短波等の光以外の電磁波を検出することで飛しょう方向Dfを検出してもよい。また、飛しょう体10が備える各種センサ(例えば、ジャイロスコープ等)の検出値を利用して飛しょう方向Dfを算出する構成であってもよい。この場合、飛しょう体10から検出値を送信する送信部が別途設けられていればよい。
【0054】
また、飛しょう体10から光以外の電磁波を受信したり、センサ等の検出値を受信したりする場合には、照準装置20Aは、カメラ部21に代えて電波を受信するアンテナ部、検出値を送受信する通信機等を備えていればよい。したがって、本発明における照準装置20Aは、飛しょう中の飛しょう体10の飛しょう方向Dfを検出可能とする飛しょう方向検出部を備えていればよく、飛しょう方向検出部としては、カメラ部21であってもよいしアンテナ部であってもよいし通信機等であってもよい。
【0055】
また、本参考の形態では、飛しょう方向検出部であるカメラ部21で飛しょう角σ
M を算出し、視線計測部22で射手視線角σ
T を算出しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、照準装置20Aが図示されない目視線角算出部を備えており、カメラ部21および視線計測部22から入力されるデータから飛しょう角σ
M および射手視線角σ
T を算出し、これら算出結果を誘導指令生成部31に入力する構成であってもよい。あるいは、前記目視線角算出部は、飛しょう角σ
M および射手視線角σ
T を算出するのではなく、直接誤差角εを算出する構成であってもよい。さらには、飛しょう角σ
M および射手視線角σ
T は誘導指令生成部31で算出されてもよい。
【0056】
なお、本発明においては、射手40は、瞬間的に視線をそらすような場合を除いて常に目標50を目視することになる。それゆえ、射手40の視線を視線計測部22で計測していれば、精密に照準しなくても飛しょう体10を好適に誘導することができる。したがって、カメラ部21は飛しょう体10からの光を受光できるものであればよく、照準のために目標50を撮像する必要はない。それゆえ、照準装置20Aには、カメラ部21で撮像された画像を表示する表示部は備えていなくてもよい。もちろん、必要に応じて照準装置20Aがフラットパネルディスプレイ等の公知の表示部を備えていてよいことはいうまでもない。
【0057】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る飛しょう体の誘導システムは、基本的な構成は前記参考の形態に係る誘導システムと同様であるが、誘導装置30の誘導指令生成部31では、生成した誘導指令を視線方向Deに向けて補正する点が異なっている。以下、本実施の形態に係る誘導システムの一例について、
図3(a),(b)を参照して具体的に説明する。
【0058】
図3(a)に示すように、本実施の形態に係る誘導システムは、前記参考の形態に係る誘導システムと同様に、飛しょう体10を目標50に向かって誘導するが、前記参考の形態と異なる点は、目標50が図中ブロック矢印Mの方向に移動していることにある。すなわち、飛しょう体10は、停止している目標50ではなく移動中の目標50に向かって飛しょうする。そのため、状況によっては飛しょう体10が、その発射時の目標50の位置まで到達したときには、目標50が既に移動済みであってその位置に存在しない場合もあり得る。
【0059】
そこで、本実施の形態では、
図3(b)に示すように、PID制御ブロック31bで生成した加速度指令A
ZC(
図3(b)には図示せず)に、視線補正ゲインブロック31cで示される補正値Kを加え合わせ点31dで加える補正を行う。補正値Kは、射手視線角σ
T に基づいて加速度指令A
ZCを補正するための値であり、加速度指令A
ZCに目標50の移動距離を見越した値を付与するものである。それゆえ、この補正値Kを加速度指令A
ZCに加えたものは補正加速度指令A
ZCC として生成され、飛しょう体10に送信される。これにより、飛しょう体10に送信される誘導指令には、目標50の移動距離を見越して移動方向に誘導位置をずらした角度である見越し角(lead angle)が与えられる。それゆえ、目標50が移動している場合であっても、飛しょう体10を目標50に到達させやすくすることができる。
【0060】
このように、本実施の形態では、誘導指令生成部31は、生成した前記誘導指令を視線方向Deに向けて補正する構成となっており、具体的には、射手視線角σ
T を用いて誤差角εを補正することで得られる補正加速度指令A
ZCC を生成する構成となっている。それゆえ、移動している目標50に良好に飛しょう体10を誘導させることができるので、飛しょう体10の誘導精度をより一層向上させることができる。
【0061】
(実施の形態2)
[飛しょう体の誘導システムの構成]
本実施の形態2に係る飛しょう体の誘導システムは、基本的な構成は前記参考の形態または実施の形態1に係る誘導システムと同様であるが、照準装置20Bがモーションセンサをさらに備えており、カメラ部21を射手40の頭部に固定可能になっている点が異なっている。以下、本実施の形態に係る誘導システムの一例について、
図4および
図5(a)を参照して具体的に説明する。
【0062】
図4および
図5(a)に示すように、本実施の形態に係る誘導システムは、基本的に前記参考の形態の誘導システムと同様の構成を有しているが、照準装置20Bはモーションセンサ23を備えているとともに、頭部取付部材24により射手40の頭部に取り付け可能に構成されている。モーションセンサ23は、本実施の形態では、公知の三次元加速度センサ等により構成されており、射手40の頭部に固定された照準装置20Bの動きを検出して誘導装置30の誘導指令生成部31に入力する。なお、
図5(a)では、説明の便宜上、カメラ部21、視線計測部22、およびモーションセンサ23から誘導装置30へのデータの入力を1つの矢印で図示している。
【0063】
本実施の形態では、頭部取付部材24は、
図5(a)に模式的に示すように、射手40が頭部に被るヘルメット、当該ヘルメットに取り付けられるベルト部材、当該ベルト部材に取り付けられ、カメラ部21およびモーションセンサ23を固定可能とする固定部材等から構成されているが、これに限定されない。
【0064】
また本実施の形態では、モーションセンサ23はカメラ部21に一体化されていればよく、例えば、独立したモーションセンサ23がカメラ部21の外部に固定される構成であってもよいし、モーションセンサ23がカメラ部21に内蔵されえている構成であってもよい。さらに、カメラ部21、モーションセンサ23および視線計測部22が全て一体化されて射手40の頭部に取り付け可能に構成されてもよい。この場合、照準装置20Bの携帯性がより向上する。
【0065】
[飛しょう体の誘導方法]
前記構成の誘導システムにより飛しょう体10の誘導方法の一例について、
図4、
図5(a)に加えて
図5(b)を参照して具体的に説明する。
【0066】
本実施の形態の誘導方法は、前記実施の形態1に係る誘導システムの誘導方法と同様であり、目標50がブロック矢印M方向に移動している場合に、見越し角を与えるように加速度指令A
ZC(
図5(b)には図示せず)を補正して補正加速度指令A
ZCC を生成して、飛しょう体10に送信する。ここで、本実施の形態では、射手40の頭部に取り付けられたカメラ部21の動きをモーションセンサ23で検出することができるので、
図5(a)に示すように、射手40の首の動きは、基準線L0に対してカメラ部21の照準線Laがなす角度であるカメラ振れ角σ
C としてモーションセンサ23で検出されて誘導指令生成部31に入力される。
【0067】
さらに、視線計測部22で計測される視線方向Deとカメラ部21の照準線Laとの差分は、カメラ部21に対する射手40の視線の動きである。それゆえ、この視線の動きに対応する角度をモーションセンサ23および視線計測部22の検出結果から得ることができる。具体的には、誘導指令生成部31は、照準線Laに対して視線方向Deがなす角度である視線ずれ角ε
C を照準装置20Bの検出結果から算出することができる。
【0068】
そして、
図5(a)に示すように、カメラ振れ角σ
C と視線ずれ角ε
C との和であるσ
TC(説明の便宜上、射手視線角σ
T と区別するために「射手動作角」と称する。)は、実質的に、射手視線角σ
T と同じであるとみなすことができる。それゆえ、
図5(b)に示すように、前記実施の形態1における視線補正ゲインブロック31c(射手視線角σ
T で補正)の代わりに、射手動作角σ
TCで補正する動作補正ゲインブロック23aで加速度指令A
ZCを補正する。
【0069】
このように、本実施の形態では、照準装置20Bのうち少なくともカメラ部21が射手40の頭部に取り付けられ、さらにカメラ部21の動き(すなわち射手40の頭部の動き)を検出可能とするモーションセンサ23を備えている。それゆえ、誘導装置30の誘導指令生成部31では、モーションセンサ23で検出されるカメラ部21(あるいは照準装置20B)の動きを用いて誘導指令を補正することができる。
【0070】
特に本実施の形態では、誘導指令生成部31は、基準線L0に対してカメラ部21の照準線Laがなす角度(カメラ振れ角σ
C )と、この照準線Laに対して視線方向Deがなす角度(視線ずれ角ε
C )と、の和を補正角度(射手動作角σ
TC)として算出し、この補正角度を誤差角εに加算して補正加速度指令A
ZCC を生成している。これにより、射手40が目標50を目視するだけで、頭部の動きと視線の動きとから見越し角を含む誘導指令を生成することができるので、飛しょう体10を高精度かつ容易に誘導することができる。
【0071】
しかも、カメラ部21、視線計測部22およびモーションセンサ23といった照準装置20Bの要部構成(あるいは照準装置20Bそのもの)を頭部に取り付けることになるので、照準装置20Bの携帯性が向上し、それゆえ誘導システム全体の携帯性をより一層向上することができる。さらに、誘導装置30も射手40の身体の一部に装着可能となっていたり、図示しない発射装置に一体的に設けられたりすれば、携帯性をさらに一層向上することができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、モーションセンサ23はカメラ振れ角σ
C を算出し、誘導指令生成部31が視線ずれ角ε
C を算出しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、照準装置20Bが図示されない目視線角算出部を備えており、モーションセンサ23および視線計測部22から入力されるデータからカメラ振れ角σ
C および視線ずれ角ε
C を算出し、これら算出結果を誘導指令生成部31に入力する構成であってもよい。
【0073】
[変形例]
本実施の形態では、前記参考の形態または実施の形態1における射手視線角σ
T を、射手動作角σ
TC(σ
TC=σ
C +ε
C )として取得して飛しょう体10の誘導に用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、カメラ部21の照準線Laを実質的に目視線(LOS)とみなしてもよい。この場合、視線計測部22は特に必要なくなる。この変形例について、
図6(a),(b)を参照して具体的に説明する。
【0074】
図6(a)に示すように、照準装置20Cは、視線計測部22を備えず、カメラ部21とモーションセンサ23と表示部25とを備えており、カメラ部21およびモーションセンサ23からの検出値を誘導指令生成部31に入力可能となっている。なお、
図6(a)では、飛しょう体10、目標50等の記載は省略している。この構成では、照準装置20Cは、射手40の頭部を動かすことのみで、目標50を照準することが可能な構成となっている。
【0075】
このときの誘導方法は、基本的に前記参考の形態と同様であるが(
図2(b)参照)、誤差角ε
A は、飛しょう角σ
M とカメラ振れ角σ
C (照準線Laのなす角)と差分となる。それゆえ、誘導指令生成部31は、飛しょう方向Dfを照準線Laの方向に近接させる誘導指令を生成して、飛しょう体10に送信すればよいことになる。
図6(b)に示すように、照準装置20Cは、例えばヘッドマウントディスプレイ等の表示部25を備えているので、射手40が図中ブロック矢印Nの方向(うなずく方向)に頭部を移動させれば、図中向かって左側の模式画面に示すように、表示部25では、照準線Laに対応するレチクル21aが下側の目標50に向かって移動するように表示される。したがって、射手40は、頭部を動かすだけで目標50を照準することができる。
【0076】
このように、本実施の形態においては、誘導指令生成部31は、飛しょう方向Dfを照準装置20C(カメラ部21)の照準線La方向に近接させる誘導指令を生成可能に構成されてもよい。この場合、視線方向Deの計測は不要であるので、
図6(a)に示すように、照準装置20Cは視線計測部22を備えていない構成であってもよい。
【0077】
なお、本発明は前記参考の形態または前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。