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特許6023851無線通信システム、送信電力制御方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6023851
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】無線通信システム、送信電力制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/34 20090101AFI20161027BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20161027BHJP
   H04W 88/12 20090101ALI20161027BHJP
   H04W 52/18 20090101ALI20161027BHJP
【FI】
   H04W52/34
   H04W84/12
   H04W88/12
   H04W52/18
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-105697(P2015-105697)
(22)【出願日】2015年5月25日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 哲平
【審査官】 阿部 圭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−304194(JP,A)
【文献】 特開2011−019109(JP,A)
【文献】 特表2010−512065(JP,A)
【文献】 特開2012−120063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末を自装置のネットワークに収容するアクセスポイントと、前記アクセスポイントを管理するアクセスポイント管理装置と、を備える無線通信システムであって、
前記アクセスポイントは、
無線端末が送信する電波に関する電波情報を取得する電波情報取得部と、
前記電波情報取得部により取得された前記電波情報に基づいて、所定の統計期間における統計を示す統計情報を取得する統計情報取得部と、
を備え、
前記アクセスポイント管理装置は、
前記アクセスポイントから前記統計情報を収集する統計情報収集部と、
前記統計情報収集部により取得された前記統計情報に基づいて、前記アクセスポイントの送信電力を制御するアクセスポイント制御部と、
を備え、
前記アクセスポイント制御部は、前記統計情報を取得する対象となる統計期間において、同一チャネルでの通信量が所定の閾値以上であるアクセスポイントを、送信電力を変更する対象として選択する、
無線通信システム。
【請求項2】
前記アクセスポイント制御部は、前記アクセスポイントの送信電力を変更することにより、前記アクセスポイントと通信ができなくなる無線端末が存在しない場合に、前記アクセスポイントの送信電力を変更する、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記アクセスポイント制御部は、前記アクセスポイントの送信電力を変更することにより、前記アクセスポイントと通信ができなくなる無線端末が、他のアクセスポイントに接続可能である場合に、前記アクセスポイントの送信電力を変更する、
請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記アクセスポイント制御部は、無線の干渉状況が所定の閾値以上である場合に、前記アクセスポイントの送信電力を変更する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
無線端末を自装置のネットワークに収容するアクセスポイントと、前記アクセスポイントを管理するアクセスポイント管理装置と、を備える無線通信システムが行う送信電力制御方法であって、
前記アクセスポイントが、
無線端末が送信する電波に関する電波情報を取得する電波情報取得ステップと、
前記電波情報取得ステップにおいて取得された前記電波情報に基づいて、所定の統計期間における統計を示す統計情報を取得する統計情報取得ステップと、
前記アクセスポイント管理装置が、
前記アクセスポイントから前記統計情報を収集する統計情報収集ステップと、
前記統計情報収集ステップにおいて取得された前記統計情報に基づいて、前記アクセスポイントの送信電力を制御するアクセスポイント制御ステップと、
を有し、
前記アクセスポイント制御ステップにおいて、前記統計情報を取得する対象となる統計期間において、同一チャネルでの通信量が所定の閾値以上であるアクセスポイントを、送信電力を変更する対象として選択する、
送信電力制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信システムにおけるアクセスポイント管理装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項7】
無線端末を自装置のネットワークに収容するアクセスポイントと、前記アクセスポイントを管理するアクセスポイント管理装置と、を備える無線通信システムであって、
前記アクセスポイントは、
無線端末が送信する電波に関する電波情報を取得する電波情報取得部と、
前記電波情報取得部により取得された前記電波情報に基づいて、所定の統計期間における統計を示す統計情報を取得する統計情報取得部と、
を備え、
前記アクセスポイント管理装置は、
前記アクセスポイントから前記統計情報を収集する統計情報収集部と、
前記統計情報収集部により取得された前記統計情報に基づいて、前記アクセスポイントの送信電力を制御するアクセスポイント制御部と、
を備え、
前記アクセスポイント制御部は、前記アクセスポイントの送信電力を変更することにより前記アクセスポイントと通信ができなくなる無線端末が存在しかつ前記無線端末が接続可能な他のアクセスポイントが存在せずかつ前記無線端末の無線の干渉状況が所定の閾値以上である場合においてアクセスポイントの送信電力を変更する、
無線通信システム。
【請求項8】
無線端末を自装置のネットワークに収容するアクセスポイントと、前記アクセスポイントを管理するアクセスポイント管理装置と、を備える無線通信システムが行う送信電力制御方法であって、
前記アクセスポイントが、
無線端末が送信する電波に関する電波情報を取得する電波情報取得ステップと、
前記電波情報取得ステップにおいて取得された前記電波情報に基づいて、所定の統計期間における統計を示す統計情報を取得する統計情報取得ステップと、
前記アクセスポイント管理装置が、
前記アクセスポイントから前記統計情報を収集する統計情報収集ステップと、
前記統計情報収集ステップにおいて取得された前記統計情報に基づいて、前記アクセスポイントの送信電力を制御するアクセスポイント制御ステップと、
を有し、
前記アクセスポイント制御ステップにおいて、前記アクセスポイントの送信電力を変更することにより前記アクセスポイントと通信ができなくなる無線端末が存在しかつ前記無線端末が接続可能な他のアクセスポイントが存在せずかつ前記無線端末の無線の干渉状況が所定の閾値以上である場合においてアクセスポイントの送信電力を変更する、送信電力制御方法。
【請求項9】
請求項7に記載の無線通信システムにおけるアクセスポイント管理装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線の送信電力を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末の普及により無線LAN(Local Area Network)の利用が拡大している。そのため、単位空間当たりのアクセスポイントの数が増大し、無線電波の干渉が問題となっている。無線端末やアクセスポイントの無線通信が干渉すると、通信のスループットが低下する可能性がある。そのため、このような干渉が発生しないように、無線の送信電力を調整する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、アクセスポイントが他のアクセスポイントの有無に応じて送信電力を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−37555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、アクセスポイントの無線範囲に存在する無線端末への影響が考慮されておらず、アクセスポイントの送信電力を制御することによって無線端末の通信に悪影響を与えてしまう可能性があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、無線端末の通信に与える悪影響を抑制しつつ、アクセスポイントの無線の送信電力を制御することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、無線端末を自装置のネットワークに収容するアクセスポイントと、前記アクセスポイントを管理するアクセスポイント管理装置と、を備える無線通信システムであって、前記アクセスポイントは、無線端末が送信する電波に関する電波情報を取得する電波情報取得部と、前記電波情報取得部により取得された前記電波情報に基づいて、所定の統計期間における統計を示す統計情報を取得する統計情報取得部と、を備え、前記アクセスポイント管理装置は、前記アクセスポイントから前記統計情報を収集する統計情報収集部と、前記統計情報収集部により取得された前記統計情報に基づいて、前記アクセスポイントの送信電力を制御するアクセスポイント制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様は、上記の無線通信システムであって、前記アクセスポイント制御部は、前記統計情報を取得する対象となる統計期間において、同一チャネルでの通信量が所定の閾値以上であるアクセスポイントを、送信電力を変更する対象として選択する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の無線通信システムであって、前記アクセスポイント制御部は、前記アクセスポイントの送信電力を変更することにより、前記アクセスポイントと通信ができなくなる無線端末が存在しない場合に、前記アクセスポイントの送信電力を変更する。
【0009】
本発明の一態様は、上記の無線通信システムであって、前記アクセスポイント制御部は、前記アクセスポイントの送信電力を変更することにより、前記アクセスポイントと通信ができなくなる無線端末が、他のアクセスポイントに接続可能である場合に、前記アクセスポイントの送信電力を変更する。
【0010】
本発明の一態様は、上記の無線通信システムであって、前記アクセスポイント制御部は、無線の干渉状況が所定の閾値以上である場合に、前記アクセスポイントの送信電力を変更する。
【0011】
本発明の一態様は、無線端末を自装置のネットワークに収容するアクセスポイントと、前記アクセスポイントを管理するアクセスポイント管理装置と、を備える無線通信システムが行う送信電力制御方法であって、前記アクセスポイントが、無線端末が送信する電波に関する電波情報を取得する電波情報取得ステップと、前記電波情報取得ステップにおいて取得された前記電波情報に基づいて、所定の統計期間における統計を示す統計情報を取得する統計情報取得ステップと、前記アクセスポイント管理装置が、前記アクセスポイントから前記統計情報を収集する統計情報収集ステップと、前記統計情報収集ステップにおいて取得された前記統計情報に基づいて、前記アクセスポイントの送信電力を制御するアクセスポイント制御ステップと、を有する。
【0012】
本発明の一態様は、請求項1に記載の無線通信システムにおけるアクセスポイントとして機能するコンピュータに対して、無線端末が送信する電波に関する電波情報を取得する電波情報取得ステップと、前記電波情報取得ステップにおいて取得された前記電波情報に基づいて、所定の統計期間における統計を示す統計情報を取得する統計情報取得ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0013】
本発明の一態様は、無線通信システムにおいて、アクセスポイントを管理するアクセスポイント管理装置として機能するコンピュータに対して、無線端末が送信する電波に関する電波情報に基づいて取得される、所定の統計期間における前記電波に関する統計を示す統計情報を前記アクセスポイントから収集する統計情報収集ステップと、前記統計情報収集ステップにおいて取得された前記統計情報に基づいて、前記アクセスポイントの送信電力を制御するアクセスポイント制御ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、無線端末の通信に与える悪影響を抑制しつつ、アクセスポイントの無線の送信電力を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の無線LANシステム1のシステム構成を示すシステム構成図である。
図2】実施形態の無線LANシステム1におけるAP2及びWLC3の機能構成を示す機能ブロック図である。
図3】電波情報、統計情報及び設定情報の具体例を示す図である。
図4】AP管理情報、統計情報及び相関情報の具体例を示す図である。
図5】実施形態の無線LANシステム1において、WLC3がAP2から統計情報を取得する処理の流れを示すシーケンス図である。
図6】実施形態の無線LANシステム1において、WLC3がAP2の出力強度を制御する処理の流れを示すシーケンス図である。
図7】出力強度決定処理の流れを示すフローチャートである。
図8】AP2に帰属するSTA4の通信量を受信電波強度ごとに示した図である。
図9】干渉の有無によるフレームロス率の変動の具体例を示す図である。
図10】AP2の出力強度と無線範囲との関係の具体例を示す図である。
図11】実施形態の無線LANシステム1において、WLC3が各AP2の送信電力を制御するイメージを示す概略図である。
図12】WLC3の制御対象となるAP2の具体例を示す図である。
図13】送信電力の制御を行う方法の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、実施形態の無線LANシステム1のシステム構成を示すシステム構成図である。
図1の無線LANシステム1(無線通信システム)は、例えば、無線端末に対してインターネット接続が可能な公衆無線LANサービスを提供する。無線LANシステム1は、AP2−1〜AP2−3と、WLC3(アクセスポイント管理装置)と、を備える。AP2−1〜AP2−3は、無線端末を無線LANシステム1のネットワークに収容するアクセスポイントである。図1の例は、無線端末としてのSTA4−1〜STA4−3が、それぞれ、AP2−1〜AP2−3に帰属している様子を示している。AP2−1〜AP2−3は、DHCPサーバとしての機能を備えており、自装置に帰属する無線端末に対してIPアドレスを割り当てる。STA4−1〜STA4−3はAP2−1〜AP2−3によって割り当てられたIPアドレスを自装置に設定することによって、インターネット5へのアクセスが可能となる。また、WLC3は、AP2−1〜AP2−3を制御する無線LANコントローラである。WLC3は、AP2−1〜AP2−3から必要な情報を適宜収集し、収集した情報に基づいてAP2−1〜AP2−3を制御する。
【0017】
なお、図1におけるSTA4−1〜STA4−3は、AP2−1〜AP2−3の無線範囲に位置すれば、どのAPに対しても帰属可能である。また、無線LANシステム1が備えるAPの数は図1と異なる数であってもよい。また、無線LANシステム1に接続するSTAの数は図1と異なる数であってもよい。
【0018】
なお、以下では、説明を簡単にするため、特に区別しない限りにおいては、AP2−1〜AP2−3をAP2と記載する。同様に、STA4−1〜STA4−3をSTA4と記載する。
【0019】
図2は、実施形態の無線LANシステム1におけるAP2及びWLC3の機能構成を示す機能ブロック図である。
まず、AP2の機能構成について説明する。
AP2は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、APプログラムを実行する。AP2は、APプログラムの実行によって第1通信部21、第2通信部22、通信制御部23、電波情報取得部24、統計情報取得部25、設定情報取得部26及び記憶部27を備える装置として機能する。なお、AP2の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。APプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。APプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0020】
第1通信部21は、無線LAN通信インターフェースを用いて構成される。第1通信部21は、無線通信範囲内に位置するSTA4と通信する。第1通信部21は、記憶部27に記憶された設定情報に基づいて、送信する電波の強度を調整する。
第2通信部22は、LAN通信インターフェースを用いて構成される。第2通信部22は、WLC3と通信する。
【0021】
通信制御部23は、アクセスポイントとしての基本的な機能を実現する機能部であり、自装置の通信に関する制御を行う。具体的には、通信制御部23は、自装置に帰属するSTA4の認証処理やパケットの送受信処理、パケットの中継処理などの処理を行う。
【0022】
電波情報取得部24は、STA4が送信した電波に関する情報を示す電波情報を取得する。具体的には、電波情報取得部24は、STA4によって送信された電波の受信電波強度と、受信された信号に含まれる各種情報に基づいて電波情報を取得する。電波情報取得部24は、受信電波強度を第1通信部21から取得する。電波情報取得部24は、取得した電波情報を記憶部27に保存する。
【0023】
統計情報取得部25は、電波情報取得部24によって取得された電波情報に基づいて、各STA4から送信される電波の受信状況を示す統計情報を取得する。具体的には、統計情報取得部25は、各STA4の電波情報について所定の期間(以下、「統計期間」という。)ごとの統計を取ることにより統計情報を取得する。統計情報取得部25は、取得した統計情報を記憶部27に保存する。また、統計情報取得部25は、取得した統計情報をWLC3に送信する。
【0024】
設定情報取得部26は、自装置の送信電力に関する設定を示す設定情報をWLC3から取得する。送信電力に関する設定とは、具体的には、自装置が出力する電波の強度(以下、「出力強度」という。)の設定である。設定情報取得部26は、取得した設定情報を記憶部27に保存することで、設定情報を自装置に適用する。
【0025】
記憶部27は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部27は、電波情報取得部24によって取得された電波情報、自装置の設定情報及び受信電波の統計を示す統計情報を記憶する。電波情報、設定情報及び統計情報の具体例を次の図3に示す。
【0026】
図3は、電波情報、統計情報及び設定情報の具体例を示す図である。
図3(a)は、電波情報の具体例を示す電波情報テーブル271である。電波情報テーブル271は、STA4から送信された電波の受信時刻ごとに電波情報レコードを有する。電波情報レコードは、受信時刻、MAC(Media Access Control)アドレス(STA)、受信電波強度、チャネル及びエラーフレームの各項目を持つ。MACアドレス(STA)は、受信された電波を送信したSTA4のMACアドレスを表す。受信電波強度は、STA4から送信された電波の受信強度を表す。チャネルは、受信した電波が送信された無線通信帯域のチャネルを表す。エラーフレームは、受信されたフレームがエラーフレームであるか否かを表す。図3(a)の例では、“0”の値がエラーフレームでないことを示し、“1”の値がエラーフレームであることを示している。電波情報レコードは、電波が受信されるごとに電波情報取得部24によって生成され、電波情報テーブル271に登録される。
【0027】
図3(b)は、統計情報の具体例を示す統計情報テーブル272である。統計情報テーブル272は、統計期間ごとに統計情報レコードを有する。統計情報レコードは、統計期間、STAのMACアドレス、チャネル、受信電波強度、通信量及びフレームロス率の各項目を有する。MACアドレス(STA)及びチャネルの各項目は、電波情報レコードの同名に対応する。受信電波強度統計は、統計期間の各電波情報における受信電波強度の統計値を表す。例えば、受信電波強度統計の値には、統計期間の各電波情報における受信電波強度の平均値、最大値又は最低値などの統計値が用いられる。通信量は、統計期間における各STA4の通信量の統計値を表す。通信量は、各電波情報に示される通信におけるフレーム(以下、「受信フレーム」という。)のサイズに基づいて算出される。通信量の値には、受信フレームのサイズの合計値や平均値などの統計値が用いられる。フレームロス率は、統計期間における通信において受信フレームがエラーフレームとなった割合を表す。
【0028】
上述したように、統計情報レコードは、統計期間における各電波情報レコードに基づいて、MACアドレス(STA)、チャネル及び受信電波強度統計の組み合わせごとに算出される通信量、フレームロス率の統計値を含む。統計情報レコードは、所定のタイミングで統計情報取得部25により生成され、統計情報テーブル272に登録される。
【0029】
図3(c)は、設定情報の具体例を示す設定情報テーブル273である。設定情報テーブル273は、1つの設定情報レコードを有する。設定情報レコードは、MACアドレス(AP)、出力設定及び統計期間の各項目を持つ。MACアドレス(AP)は、自装置のMACアドレスを表す。出力設定は、自装置に設定された電波の出力強度を表す。統計期間は、統計情報を取得する対象となる期間を表す。設定情報レコードは、設定情報取得部26によって生成される。設定情報レコードは、設定情報取得部26が設定情報を取得したタイミングで登録又は更新される。
【0030】
次に、WLC3の機能構成について説明する。
WLC3は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、WLCプログラムを実行する。WLC3は、WLCプログラムの実行によって通信部31、統計情報収集部32、AP制御部33(アクセスポイント制御部)及び記憶部34を備える装置として機能する。なお、WLC3の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。WLCプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。WLCプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0031】
通信部31は、LAN通信インターフェースを用いて構成される。通信部31は、WLC3と通信する。
【0032】
統計情報収集部32は、各AP2から統計情報を収集する。統計情報収集部32は、収集した各AP2の統計情報を記憶部34に保存する。
【0033】
AP制御部33は、統計情報と相関情報とに基づいて、各AP2の電波の出力強度を決定する。相関情報は、AP2の電波の出力強度と通信可能なSTA4から送信される電波の受信電波強度との相関を示す情報である。相関情報は、予め記憶部34に記憶されている。AP制御部33は、各AP2について決定した出力強度を示す設定情報を、それぞれ対応するAP2に送信する。
【0034】
記憶部34は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部34は、統計情報収集部32によって収集された各AP2の統計情報と、各AP2の管理情報であるAP管理情報と、相関情報と、を記憶する。AP管理情報、統計情報及び相関情報の具体例を次の図4に示す。
【0035】
図4は、AP管理情報、統計情報及び相関情報の具体例を示す図である。
図4(a)は、AP管理情報の具体例を示すAP管理情報テーブル341である。AP管理情報テーブル341は、MACアドレス(AP)ごとにAP管理情報レコードを有する。AP管理情報レコードは、MACアドレス(AP)、管理グループID及び統計情報取得タイミングの各項目を持つ。MACアドレス(AP)は、各AP2のMACアドレスを表す。管理グループIDは、管理グループの識別情報を表す。管理グループは、各AP2の電波の出力特性に基づいて分類されるグループである。例えば、管理グループは、AP2を機種やモデルごとに分類したグループである。統計情報取得タイミングは、AP2に統計情報の取得を実行させるタイミングを表す。AP管理情報レコードは、管理対象のAP2について予めAP管理情報テーブル341に登録される。AP管理情報テーブル341は、管理対象のAP2の追加又は削除に応じて、WLC3の管理者によって更新される。
【0036】
図4(b)は、統計情報の具体例を示す統計情報収集テーブル342である。統計情報収集テーブル342は、統計期間ごとに統計情報収集レコードを有する。統計情報収集レコードは、統計情報レコードと同様の各項目と、MACアドレス(AP)とを持つ。統計情報収集レコードは、統計情報収集部32によって生成され、登録される。統計情報収集部32は、収集した統計情報と、収集元のAP2のMACアドレスとに基づいて、統計情報収集レコードを生成する。
【0037】
図4(c)は、相関情報の具体例を示す相関情報テーブル343である。相関情報テーブル343は、管理グループIDごとに相関情報レコードを有する。相関情報レコードは、管理グループID、変更前出力強度、変更後出力強度及び通信可能電波強度の各項目を持つ。管理グループIDは、AP管理情報レコードの管理グループIDに対応する。変更前出力強度は、当該管理グループIDに属するAP2の変更前の出力強度を表す。同様に、変更後出力強度は、変更後の出力強度を表す。本実施形態では、最大出力強度を100%とした百分率で出力強度を表している。通信可能電波強度は、AP2の出力強度が、変更前出力強度の値から変更後出力強度の値に変更された場合に、通信を維持することができるSTA4の受信電波強度を表す。図4(c)の例は、AP2の出力強度が100%から50%に変更された場合、−70dBm以上の強度で受信可能なSTA4が通信を維持できることを示している。相関情報レコードは、管理対称のAP2の管理グループごとに予め相関情報テーブル343に登録される。相関情報テーブル343は、管理グループの追加又は削除に応じて、WLC3の管理者によって更新される。
【0038】
なお以下では、説明を簡単にするため、図4(c)の統計情報収集テーブル342における統計期間“2015年2月1日09:00〜2015年2月1日15:00”を第1統計期間と称する。また、統計期間“2015年2月1日15:00−2015年2月1日18:00”を第2統計期間と称する。また、統計期間“2015年2月1日18:00−2015年2月1日21:00”を第3統計期間と称する。
【0039】
同様に、以下では、図4(c)の統計情報収集テーブル342において、MACアドレス“ap:00:00:00:00:01”を持つAP2を第1APと称する。また、MACアドレス“ap:00:00:00:00:02”を持つAP2を第2APと称する。また、MACアドレス“ap:00:00:00:00:03”を持つAP2を第3APと称する。
【0040】
図5は、実施形態の無線LANシステム1において、WLC3がAP2から統計情報を取得する処理の流れを示すシーケンス図である。
まず、AP2は、STA4から送信される電波に基づいて電波情報を取得する。AP2は、取得した電波情報を蓄積する(ステップS101)。具体的には、第1通信部21がSTA4から送信される電波を受信する。第1通信部21は、受信した電波を電気信号(以下、「受信信号」という。)に変換する。第1通信部21は、受信電波の変換によって生成した受信信号と、受信信号の受信電波強度とを電波情報取得部24に出力する。電波情報取得部24は、第1通信部21から出力された受信信号と、受信信号の受信電波強度とに基づいて電波情報を取得する。電波情報取得部24は、取得した電波情報に基づいて電波情報レコードを生成する。電波情報取得部24は、生成した電波情報レコードを電波情報テーブル271に登録する。AP2は、STA4から送信された電波を受信するごとに上記処理を行うことによって電波情報を蓄積する。
【0041】
次に、AP2は、蓄積した電波情報に基づいて統計情報を取得する(ステップS102)。具体的には、統計情報取得部25が、自装置に予め設定された統計期間について電波情報の統計を取ることにより統計情報が取得される。例えば、統計情報取得部25は、電波情報テーブル271を参照し、受信時刻が統計期間に含まれる電波情報レコードを選択する。統計情報取得部25は、選択した電波情報レコードの各値に基づいて、受信電波強度の統計値(受信電波強度統計)を算出する。統計情報取得部25は、算出した受信電波強度統計に対応する電波情報に基づいて、通信量及びエラーフレームに関する統計値を、STA4及びチャネルの組み合わせごとに算出する。統計情報取得部25は、算出した各統計値に基づいて統計情報レコードを生成する。統計情報取得部25は、生成した統計情報レコードを統計情報テーブル272に登録する。
【0042】
なお、上記の統計期間は、設定情報取得部26が、WLC3から送信される設定情報を設定情報テーブル273に登録することによりAP2に設定される。統計情報取得部25は、設定情報テーブル273を参照し、統計期間が終了したタイミングで統計情報の取得を行う。
【0043】
次に、AP2は、取得した統計情報をWLC3に送信する(ステップS103)。WLC3は、AP2から送信された統計情報を受信する(ステップS104)。WLC3は、受信した統計情報を自装置の記憶部34に保存する(ステップS105)。具体的には、統計情報収集部32が、受信された統計情報を通信部31から取得する。統計情報収集部32は、取得した統計情報に基づいて統計情報レコードを生成する。統計情報収集部32は、生成した統計情報レコードを統計情報収集テーブル342に登録する。このようにして、WLC3は、管理対象となる全てのAP2から統計情報を収集する。
【0044】
図6は、実施形態の無線LANシステム1において、WLC3がAP2の出力強度を制御する処理の流れを示すシーケンス図である。
まず、WLC3は、各AP2から収集した統計情報に基づいて出力強度決定処理を行う(ステップS201)。WLC3は、出力強度決定処理を行うことにより各AP2に設定する電波の出力強度を決定する。
【0045】
図7は、出力強度決定処理の流れを示すフローチャートである。
まず、AP2は、出力強度の制御が必要となるAP2(以下、「制御対象」という。)を抽出する(ステップS301)。具体的には、AP2のAP制御部33が、各AP2から収集された統計情報に基づいて、電波干渉が大きいと推定されるAP2を抽出する。例えば、AP制御部33は、同時間帯における同一チャネルでの通信量が大きいAP2を制御対象として抽出する。
【0046】
例えば、統計情報が図4(c)の例のように取得されている状況において、抽出の対象となる統計期間(以下、「対象期間」という。)が第1統計期間である場合、AP制御部33は、同一チャネルでの通信量が多い第1AP及び第2APを制御対象のAP2として抽出する。なお、第1統計期間においては、第4APも第1AP及び第2APと同様に通信量が多い。しかしながら、第4APは、第1AP及び第2APと異なるチャネルで通信し、当該チャネルにおいて他に通信量の多いAP2が存在しない。そのため、この場合、AP制御部33は、第4APを制御対象から除外する。なお、通信量の大小は、所定の閾値に基づいて判断されてもよいし、各AP2の通信量の平均値や偏差値等の統計値に基づいて判断されてもよい。また、通信量の大小は、各AP2の通信量の和に基づいて判断されてもよいし、STA4ごとの通信量に基づいて判断されてもよい。
【0047】
次に、AP制御部33は、ステップS301において抽出された制御対象のAP2について、各AP2に設定する出力強度を決定する(ステップS302)。具体的には、AP制御部33は、受信電波強度ごとの通信量に基づいて各AP2の制御後の出力強度を決定する。AP制御部33は、例えば、次のような方法によって、各AP2の出力強度を決定する。
【0048】
図8は、AP2に帰属するSTA4の通信量を受信電波強度ごとに示した図である。
図8(a)及び図8(b)は、ステップS301において、制御対象として抽出されたAP2に関する通信量を示す。図8(a)及び図8(b)の横軸は受信電波強度統計を表し、縦軸は横軸が示す受信電波強度統計ごとの通信量の総和(以下、「総通信量」という。)を表す。一般に、受信電波強度はAP2とSTA4との間の距離が長くなるほど弱まる。そのため、AP2が受信した電波の強度は、その電波を発したSTA4とAP2との間の距離に対応するとみなすことができる。ここでは、説明の便宜のため、図8(a)に対応するAPをAP2(a)と記載し、図8(b)に対応するAPをAP2(b)と記載する。
【0049】
AP制御部33は、総通信量が所定の閾値を越える範囲の受信電波強度統計に基づいて、当該AP2の制御後の無線範囲を決定する。図8の例では、図中の破線が総通信量の閾値を表している。例えば、図8の例の場合、AP制御部33は、AP2(a)の制御後の無線範囲をR〜Rの受信電波強度に対応する範囲として決定する。同様に、AP制御部33は、AP2(b)の制御後の無線範囲をR〜Rの受信電波強度に対応する範囲として決定する。
【0050】
そして、AP制御部33は、相関情報テーブル343を参照し、各AP2について決定した制御後の無線範囲に対応する変更後出力強度の値を取得する。AP制御部33は、このようにして取得した変更後出力強度を各AP2の制御後の出力強度として決定する。
【0051】
図7の説明に戻る。AP制御部33は、制御対象の各AP2について制御後の出力強度を決定すると、次に、出力強度の変更によって通信不可となるSTA4が存在するか否かを判定する(ステップS303)。具体的には、AP制御部33は、統計情報収集テーブル342を参照し、制御対象のAP2のMACアドレスを持つ統計情報収集レコードのうち、受信電波強度統計の値に、ステップS302において決定した変更後の出力強度に対応する通信可能電波強度よりも弱い受信電波強度の値を持つレコードを選択する。AP制御部33は、このような統計情報収集レコードが選択された場合、出力強度の変更によって通信不可となるSTA4が存在すると判断する。一方、このような統計情報収集レコードが選択されなかった場合、AP制御部33は、出力強度の変更によって通信不可となるSTA4が存在しないと判断する。
【0052】
出力強度の変更によって通信不可となるSTA4が存在しないと判定した場合(ステップS303−NO)、AP制御部33は、当該AP2について決定した出力強度を示す設定情報を出力する(ステップS304)。一方、出力強度の変更によって通信不可となるSTA4が存在すると判定した場合(ステップS303−YES)、AP制御部33は、当該STA4が接続可能なAP2が他に存在するか否かを判定する(ステップS305)。具体的には、AP制御部33は、統計情報収集テーブル342を参照し、当該STA4から送信される信号を受信したAP2の統計情報収集レコードを選択する。AP制御部33は、このような統計情報収集レコードが選択された場合、当該STA4が接続可能なAP2が他に存在すると判断する。一方、このような統計情報収集レコードが選択されなかった場合、AP制御部33は、当該STA4が接続可能なAP2が他に存在しないと判断する。なお、AP制御部33は、上記の判断に加えて、制御対象のAP2と他の接続可能なAP2とのSSIDや認証キー、暗号化方式等が同じである場合に、STA4が他のAP2に接続可能であると判断してもよい。
【0053】
当該STA4が接続可能なAP2が他に存在すると判定した場合(ステップS305−YES)、AP制御部33は、ステップS304に進み、当該AP2について決定した出力強度を示す設定情報を出力する。一方、当該STA4が接続可能なAP2が他に存在しないと判定した場合(ステップS305−NO)、AP制御部33は、電波の干渉が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS306)。具体的には、AP制御部33は、統計情報収集テーブル342を参照し、統計情報収集レコードが示すフレームロス率に基づいて、電波の干渉状況を判断する。
【0054】
図9は、干渉の有無によるフレームロス率の変動の具体例を示す図である。
図9において、横軸は無線電波の送信帯域を表し、縦軸はフレームロス率を表す。系列1は、無線干渉がある場合のフレームロス率の変動を表し、系列2は、無線干渉がない場合のフレームロス率の変動を表す。図9から分かるように、無線が干渉する状況においては、フレームロス率が概ね50%を超える。そのため、WLC3は、例えば、フレームロス率の50%を目安として、無線干渉の有無を判断してもよい。AP制御部33は、当該AP2の統計情報収集レコードのうち、フレームロス率の値に所定の閾値以上の値を持つ統計情報収集レコードを選択する。AP制御部33は、このような統計情報収集レコードが選択された場合、電波の干渉が閾値以上であると判断する。一方、このような統計情報収集レコードが選択されなかった場合、AP制御部33は、電波の干渉は閾値未満であると判断する。
【0055】
電波の干渉が閾値以上であると判断した場合(ステップS306−YES)、AP制御部33は、ステップS304に進み、当該AP2について決定した出力強度を示す設定情報を出力する。一方、電波の干渉が閾値未満であると判断した場合(ステップS306−NO)、AP制御部33は、設定情報を出力せずに、出力強度決定処理を終了する。
【0056】
図6の説明に戻る。WLC3は、ステップS201の出力強度決定処理において出力された各AP2の設定情報に基づいて、現在の出力設定から変更のあるAP2を選択する(ステップS202)。WLC3は、選択したAP2のそれぞれに、対応する設定情報を送信する(ステップS203)。
【0057】
AP2は、WLC3から送信された設定情報を受信する(ステップS204)。AP2は、受信した設定情報に基づいて、自装置の出力設定を更新する(ステップS205)。具体的には、設定情報取得部26が設定情報テーブル273を更新することにより、AP2は、自装置の出力設定を更新する。
【0058】
このように構成された実施形態の無線LANシステム1では、各AP2が受信した電波に関する統計情報を取得し、WLC3は、AP2から収集した統計情報に基づいて、各AP2の送信電力を制御する。このような構成を備えることにより、実施形態の無線LANシステム1は、無線端末の通信に与える悪影響を抑制しつつ、アクセスポイントの無線の送信電力を制御することができる技術を提供することが可能となる。また、このような制御を行うことによって、実施形態の無線LANシステム1は、STA4に機能追加を行うことなく、AP2の無線範囲を制御することが可能となる。具体的には、実施形態の無線LANシステム1により、以下のような制御が可能となる。
【0059】
図10は、AP2の出力強度と無線範囲との関係の具体例を示す図である。
図10において、AP2−1は、無線範囲100−1に示される範囲での無線通信が可能な出力設定で動作している。同様に、AP2−2は、無線範囲100−2に示される範囲での無線通信が可能な出力設定で動作している。無線範囲100−1及び100−2にはSTA4−1〜4−8が存在しており、それぞれのSTA4は、図中の矢印が示すAP2に帰属している。すなわち、STA4−1〜4−4はAP2−1に、STA4−5〜4−8はAP2−2に帰属している。なお、STA4−6は、無線範囲100−2の境界付近に位置し、AP2−2に帰属する他のSTA4と比べて、AP2−2によって受信される電波の強度が弱い。
【0060】
このような状況にあるAP2−2が制御対象として抽出された場合、実施形態のWLC3は、例えばAP2−2の無線範囲が無線範囲100−3となるようにAP2−2の出力強度を制御する。このような出力強度の制御により、AP2−2とSTA4との間の電波の干渉が低減され、無線通信の品質の劣化を抑制することが可能となる。そして、実施形態のWLC3は、このような制御を無制限に行うのではなく、STA4の通信に与える悪影響を抑制しつつAP2−2の送信電力を制御する。例えば、図10の例では、AP2−2の出力強度が弱められた場合、STA4−6が通信不可となる可能性がある。そのため、WLC3は、STA4−6がAP2−2に代えて帰属することのできるAP2(例えば図中のAP2−1)が存在する場合にのみAP2−2の出力強度を変更する。また、WLC3は、同時間帯及び同一チャネルにおける通信量が多い場合であっても、フレームロス率が高くない場合にはあえて出力強度を変更しないという制御も可能である。このような制御を行うことによって、WLC3は、STA4の通信に与える悪影響を抑制しつつ、無線電波の干渉を抑制することができる。
【0061】
図11は、実施形態の無線LANシステム1において、WLC3が各AP2の送信電力を制御するイメージを示す概略図である。
本実施形態の無線LANシステム1では、WLC3が各AP2から収集する統計情報に基づいて各AP2の送信電力を制御する。そのため、実施形態の無線LANシステム1では、あるAP2(図のAP2−1)が周囲のAP2(図のAP2−2〜AP2−6)から検出されない状況であっても、検出されないAP2の電波状況を考慮して周囲のAP2の送信電力を制御することが可能となる。
【0062】
図12は、WLC3の制御対象となるAP2の具体例を示す図である。
図12において、横軸はSTA4とAP2との間の距離を表し、縦軸は横軸が示す距離に応じた受信電波強度を表す。直線200−1は、AP2の出力強度を低下させる前において、あるSTA4が送信する電波の受信電波強度を表す。同様に、直線200−2は、AP2の出力強度を低下させた後において、当該STA4が送信する電波の受信電波強度を表す。また、図12における符号201が示す領域は、STA4とAP2とが通信できない範囲を表す。この場合、区間202の範囲に存在するSTA4は、当該AP2の出力強度を低下させることにより通信ができなくなる。実施形態のWLC3は、このようなSTA4が存在する場合、当該AP2を制御対象外とする判断を行うことができる。このような判断を行うことにより、実施形態の無線LANシステム1は、無線端末の通信に与える悪影響を抑制しつつ、アクセスポイントの無線の送信電力を制御することができる。
【0063】
<変形例>
図13は、送信電力の制御を行う方法の変形例を示す概略図である。
図13が示すように、WLC3は、AP2の送信電力の制御を時間帯に応じて制御してもよい。例えば、図13の例では、AP2−1は日中の時間帯に使用される。また、AP2−2は、夜間の時間帯に使用される。AP2−1及びAP2−2は、無線範囲が互いに干渉する可能性のある位置にある。このような場合、AP2−1及びAP2−2は、互いに無線が干渉する可能性の位置にあっても、使用される時間帯が異なるため、干渉が小さいと考えられる。そのため、この場合、WLC3は、AP2−1及びAP2−2を、あえて制御対象としない判断を行ってもよい。
【0064】
なお、WLC3がAP2の送信電力を制御するタイミングは、任意のタイミングであってよい。例えば、WLC3は、AP2の送信電力の制御を、統計情報の収集タイミングに合わせて実施してもよいし、定期的に実施してもよい。また、送信電力の制御に用いる統計情報は、最新の統計情報であってもよいし、過去の統計情報が用いられてもよい。例えば、WLC3は、制御タイミングを含む過去の統計期間における統計情報を用いてもよい。また、WLC3は、過去の統計情報の平均値や最大値又は最小値等の統計値を用いてもよい。
【0065】
上述した実施形態におけるAP2又はWLC3をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0066】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、複数のアクセスポイントで構成される無線通信システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…無線LANシステム, 2…AP(Access Point:アクセスポイント), 21…第1通信部, 22…第2通信部, 23…通信制御部, 24…電波情報取得部, 25…統計情報取得部, 26…設定情報取得部, 27…記憶部, 271…電波情報テーブル, 272…統計情報テーブル, 273…設定情報テーブル, 3…WLC(Wireless LAN Controller), 31…通信部, 32…統計情報収集部, 33…制御部, 34…記憶部, 341…管理情報テーブル, 342…統計情報収集テーブル, 343…相関情報テーブル, 4…STA(Station:無線端末), 5…インターネット, 100−1、100−2、100−3…無線範囲, 200−1、200−2…受信電波強度を示す直線, 201…STAとAPとが通信できない受信電波強度を示す領域, 202…APの出力強度を低下させることによりSTAが通信できなくなる区間
【要約】
【課題】無線端末の通信に与える悪影響を抑制しつつ、アクセスポイントの無線の送信電力を制御することができる技術を提供すること。
【解決手段】実施形態の無線通信システムは、無線端末を自装置のネットワークに収容するアクセスポイントと、前記アクセスポイントを管理するアクセスポイント管理装置と、を備える無線通信システムであって、前記アクセスポイントは、無線端末が送信する電波に関する電波情報を取得する電波情報取得部と、前記電波情報取得部により取得された前記電波情報に基づいて、所定の統計期間における統計を示す統計情報を取得する統計情報取得部と、を備え、前記アクセスポイント管理装置は、前記アクセスポイントから前記統計情報を収集する統計情報収集部と、前記統計情報収集部により取得された前記統計情報に基づいて、前記アクセスポイントの送信電力を制御するアクセスポイント制御部と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13