特許第6023876号(P6023876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6023876核融合パワーロケットエンジンから高比推力および適度な推力を発生する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023876
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】核融合パワーロケットエンジンから高比推力および適度な推力を発生する方法
(51)【国際特許分類】
   F03H 1/00 20060101AFI20161027BHJP
   H05H 1/10 20060101ALI20161027BHJP
   H05H 1/54 20060101ALI20161027BHJP
   G21B 1/05 20060101ALN20161027BHJP
【FI】
   F03H1/00 A
   H05H1/10
   H05H1/54
   !G21B1/00 A
【請求項の数】27
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-511736(P2015-511736)
(86)(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公表番号】特表2016-503474(P2016-503474A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】US2013040520
(87)【国際公開番号】WO2014031190
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2015年12月1日
(31)【優先権主張番号】61/645,459
(32)【優先日】2012年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514287007
【氏名又は名称】プリンストン サテライト システムズ,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】506201943
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ プリンストン ユニヴァシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,サミュエル,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ペイジャー,グレイ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】パルスゼック,マイケル,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラージン,ヨセフ,シュムエル
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0254520(US,A1)
【文献】 米国特許第6334302(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03H 1/00
H05H 1/10
H05H 1/54
G21B 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核融合燃料から成る定常プラズマを備えるためのリアクタチャンバと、
前記定常プラズマ中の核融合反応から正味電力を生成するために前記プラズマを十分なレベルに加熱し、前記プラズマのイオンエネルギーを増大させるための加熱システムと、
前記リアクタチャンバに対して同軸に位置し、前記定常プラズマを閉じ込めるのに十分な磁気を生成し、スクレイプオフ層への核融合生成物の急速な減少を促進する複数の磁石と、
前記核融合反応の前記電力の出力を維持するための前記核融合燃料の追加量を噴射する燃料噴射システムと、
前記リアクタチャンバ内で低温推進剤を加熱して高温推進プラズマに変換するためのスクレイプオフ層の端部にあるガスボックスと、
前記スクレイプオフ層の質量を増大させるために前記ガスボックスに低温ガス推進剤を噴射する推進剤噴射システムと、
推力を発生するために前記ガスボックスから遠位の前記リアクタチャンバの端部の外へ前記スクレイプオフ層上で前記高温プラズマを誘導するための磁気ノズルと、
放出された推進剤を十分に方向づけられた流れに沿ってロケットエンジンの磁場から切り離す推進剤脱離システムと、を有する、推力増大を伴う核融合を採用するロケットエンジンを備えるシステム。
【請求項2】
前記核融合燃料は、重水素およびヘリウム3を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の磁石は、前記プラズマと連結して磁場反転配位において磁場を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記磁石は、超電導磁気コイルである、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記磁石は、永久磁石である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記燃料噴射システムは、中性ビームである、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記推進剤は、重水素である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記推進剤は、水素である、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つのエネルギー変換システムをさらに有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記加熱システムは、ラジオ周波数電磁コイルによって生成されたラジオ周波数磁界回転奇数パリティを使用する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
核融合から生成される放射線を減衰および偏向させるシールドをさらに有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記リアクタチャンバは、ラジオ周波数に対して透過性を有する真空容器である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ガスボックスは、前記スクレイプオフ層の厚さを制御する可変サイズのオリフィスを有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
核融合燃料から成る定常プラズマを備えるためのリアクタチャンバと、前記リアクタチャンバと同軸に位置する複数の磁石と、加熱システムと、燃料噴射システムと、前記リアクタチャンバの一端においてガスボックスに連結する推進剤噴射システムと、前記ガスボックスより遠位の前記リアクタチャンバの端部に位置する磁気ノズルと、を有する核融合ロケットエンジンの推力を増大するための方法であって、
前記燃料噴射システムによって前記リアクタチャンバに前記核融合燃料を噴射する工程と、
燃料としての前記プラズマがイオン化および加熱されて正味電力を生成するプラズマ中において持続的な核融合反応が発生するように前記加熱システムによって加熱する工程と、
前記プラズマを閉じ込め、スクレイプオフ層への核融合生成物の迅速な損失を促進するための磁界を前記磁石によって形成する工程と、
前記推進噴射システムによって低温推進剤を前記ガスボックスへ噴射する工程と、
前記リアクタチャンバ中で加熱して前記スクレイプオフ層の質量を増大させるために、前記スクレイプオフ層を通って流れ、前記核融合生成物によって加熱して高温推進プラズマに変換するための前記低温推進剤を前記ガスボックスに導入する工程と、
前記磁気ノズルを介して前記高温推進プラズマおよび前記核融合生成物を前記リアクタチャンバから放出する工程と、
方向づけられた流れに沿って放出された前記推進剤を前記ロケットエンジンの磁場から切り離す工程と、を有する方法。
【請求項15】
前記核融合燃料は、重水素およびヘリウム3を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プラズマと連結して磁場反転配位において前記複数の磁石によって磁場を生成する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の磁石は、超電導磁気コイルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の磁石は、永久磁石である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記核融合燃料は、中性ビームによって噴射される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記推進剤は、重水素である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記推進剤は、水素である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記核融合生成物から電気へエネルギーを変換する工程をさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記加熱する工程は、ラジオ周波数電磁コイルによって生成されたラジオ周波数磁界回転奇数パリティによって行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エネルギーを変換する工程は、ラジオ周波数電磁コイルを使用する前記ラジオ周波数スペクトル中の電磁気放射線を捕捉することによって行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記核融合反応から生成される前記放射線をシールド材料によって減衰および偏向する工程をさらに有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ラジオ周波数による前記加熱する工程は、前記リアクタチャンバとして当該周波数に対して透過性を有する真空容器を使用する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記スクレイプオフ層の厚さを制御する工程は、前記ガスボックスに形成された可変サイズのオリフィスによって行われる、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、特許協力条約に基づく国際出願であり、2012年5月10日に出願された米国仮出願第61/645459号に対して、優先権を主張し、その全てが本明細書に参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、核融合リアクタからの推力を発生するための方法および装置に関し、特に、プラズマ物理学の分野に関するものであり。
【0003】
(連邦政府支援の研究開発に関する声明)
本発明は、エネルギー省によって授与された授与番号DE−AC02−09CH11466の下で政府の支援を受けてなされた。本発明において、政府は一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
多くの核融合リアクタが、重水素、トリチウム、ヘリウムなどの原子の粒子の融合からロケットの推進のための推力を発生するために提案されている。
【0005】
核融合反応器は、磁気閉じ込めを利用するものと慣性閉じ込めを利用するものに大きく分類することができる。前者の場合は、磁石外部のコイルによる磁場またはプラズマによって生成された電流は、高温のプラズマを閉じ込め、定常融合またはパルス融合を可能する。慣性閉じ込めでは、対照的に、外部粒子ビームまたはレーザは、パルス融合を生成するための反応物を圧縮する。
【0006】
多数の核融合リアクタの構造として、トカマク、双極子、磁気ミラー、ステラレータ、シータピンチ、または磁場反転配位(FRC)を有する宇宙船の推進方法が提案されている。FRCの1つの利点は、プラズマ圧力に対する磁気圧力の高い比率であり、これは同等の強度のトカマクに比べて磁気質量を必要とすることを意味する。この質量の節約はロケットの設計上、極めて重要である。宇宙での推進のためのFRCのさらなる利点は、その単純な、円筒状の磁石の形状とそのナチュラルダイバータにある。これによって、核融合生成物は、推進力を発生するために直接使用することができ、スラスタエンジンの小型化を可能にする。
【0007】
米国特許出願公開第2008/0093506号は、ガスをチャンバ内に注入してイオン化し、電磁石を用いて加速する電気推進システムを開示している。他のイオンスラスタ構成が開示されている。これらのスラスタは、ガスと熱をイオン化し、形成されたプラズマを加速するために、電気、磁気、または電磁場を生成するための電力を生成する別のシステムを必要とする。
【0008】
米国特許第6334302号は、磁気ノズルの前後にある2つの別個のRF加熱セクションに電力を供給するための2つの別個のRF発生器を使用するプラズマスラスタの比推力を制御する方法を開示している。RF発生器の電力源については記載されていない。米国特許第4815279号および第4893470号に開示されているように推力はプラズマ流れに中性ガスを添加することによって制御される。
【0009】
欧州特許第1856702号は、発電のために核融合生成物の半分を使用し、直接推力のために残りの半分を使用することによって電源と推力生産の両方を兼ね備えたp−11B燃料FRCを開示している。前者のエネルギーは、逆サイクロトロン変換器を使用して捕捉される一方で、後者の粒子は、磁気ノズルを介して方向づけられ、放出される。この設計における推進剤の放出速度は、核融合生成物および推力に発散される電力のわずか50%の速度である。
【0010】
サイドインジェクションと呼ばれる推力を変えるためのシステムは、米国特許第3325103号に開示されている。主ノズルを介して推力ベクトルを偏向するために、高速のインジェクション、鉛筆サイズ流体が主推力へ流れ巻き込まれる。このシステムは、化学ロケットのために提案され、流れの偏向を介して推力ベクトル制御の目的のために制限されている。
【0011】
中性ビーム入射は、米国特許第4480185号に開示されている。プロセスは、イオン化粒子、この場合は重水素を有し、ガスクラウド中に加速され、電荷が中和されたビームに変換される。
【0012】
テラーら(Fusion Technology 22、8(1992))は、宇宙船の推進のためにD−Heを反応させた双極子核融合リアクタを開示している。装置は大きく、1GW以上の電力を必要とする。地球上で不足しているHeを1ヶ月以上かけてエンジンに燃料として供給する。リアクタの中央平面近くの環状リングから導入されたガスから成る推進剤は、低電界領域での中和器領域の磁力線に沿って、イオン化されプラズマエッジから放出され、電荷交換中和部による双極子の磁場からイオンの分離が行われる。推進剤インジェクション領域から中和器領域への磁界の減少は、大半のイオンエネルギーの軸方向への移動に起因する。プラズマエッジのパラメータは、推力および比推力のわずかな制御を可能にする輸送速度および安定性基準によって決定される。イオン化と電荷交換エネルギーと粒子損失によって非効率性が生じる可能性がある。
【0013】
スラウ(第49回AIAA航空宇宙科学会議(2001))において、宇宙船の推進のためのいくつかのD−T燃料FRC核融合リアクタが開示されている。FRCは、おそらくシータピンチ方式によって形成され、おそらくライナーを内破あるいは狭窄経路を通過することにより、圧縮される。圧縮は、燃料の急速な燃焼(融合)が発生するような値においてプラズマの温度および密度の増加を引き起こす。加熱されたFRCプラズモイドはその後、狭窄経路から出現することによって拡大し、加速する。ライナーもまた拡大するFRCプラズモイドにより加速され、推力に寄与する。繰り返しパルスは、時間平均数十MWの電力を供給することができる。
【0014】
カーペンターとブレナン(Acta Astronautica 44、(1999)471)は、D−TまたはD−Heのいずれかを燃料とするミラーマシンの核融合リアクタを開示している。全長80mのロケットエンジンは、核融合出力の約4GWを生成する(4GWには多量のHe燃料が必要であり、3000億ドル以上の費用がかかる。)。水素推進剤は、プラズマハローに添加される。どのように推進剤を加熱するか、あるいは11kNの推力を発生するためにどのように比推力を制御するかについては言及されていない。排気流の中和は、上述した電力および粒子中の非効率性を伴いながら、排気ノズルの拡大領域における電荷交換によって提供される。融合領域は、放熱の必要性を低減し、一方で80%の推力およびサブシステムのための利用可能な電力を低減しながら、空間への放射の直接損失を可能にするために、比較的開放されている。すべてのミラーマシンのように、推力によって核融合出力の半分が間違った方向に流れるので、電気を製造するためのダイレクトコンバーター上に落下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
核融合推進のために過去にされた提案には多くの欠点があった。慣性閉じ込めおよび最も一般的な磁気閉じ込めの構成(すなわちトカマクとステラレータ)は非直線的な形状を有し、正味電力を発生させるために非常に大きなものでなければならない。D−TまたはD−Dを使用するリニアリアクタは、多くの中性子を生み出すので多くのシールドを必要とし、たとえシールドがあったとしてもプラズマの近くに位置するリアクタチャンバ、磁石、その他の必須の構成要素は特に、破損したり、寿命が短くなったりする傾向がある。イオンスラスタを使用する電気推進は、非常に高い比推力を生み出すが、推力は非常に低く、長いミッション時間をもたらす。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、D−He燃料FRCを使用した連続核融合反応から高推力および所望の比推力を生成し、制御するためのシステムおよび方法である。結果として、比較的小さなロケットエンジンは、惑星系全体およびそれを越える宇宙船のミッションを可能にする従来技術の開発、試験および操作にかかる費用を削減できる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
推力増大を伴う核融合を採用するロケットエンジンシステムが開示されている。エンジンシステムは、核融合燃料から成る定常プラズマを備えるためのリアクタチャンバと、定常プラズマ中に核融合反応を生成するためにプラズマを加熱し、プラズマのイオンエネルギーを増大させるための加熱システムと、を有する。複数の磁石は、リアクタチャンバと同軸に位置し、定常プラズマを閉じ込める磁場を生成し、スクレイプオフ層への核融合生成物の急速な減少を促進する。燃料噴射システムには、プラズマ中の核融合反応の電力の出力を維持するための核融合燃料の追加量を噴射する工程も組み込まれている。推進剤噴射システムは、リアクタチャンバに流入し、そこで加熱されて高温推進プラズマになる低温プラズマを生成するためのスクレイプオフ層の一端にあるガスボックスに低温ガス推進剤を噴射する。推進剤は、スクレイプオフ層の質量を増大させるために使用される。ガスボックスからリアクタチャンバの他端の外へスクレイプオフ層上で高温プラズマを誘導するための磁気ノズルは、推力を発生する。推進剤脱離システムによって、放出された推進剤を十分に方向づけられた流れに沿ってロケットエンジンの磁場から切り離すことができる。
【0018】
上述の核融合ロケットエンジンの推力を増大するための方法は、燃料噴射システムによってリアクタチャンバに核融合燃料を噴射し、加熱システムによって加熱し、正味電力を生成するプラズマ中において持続的な核融合反応が発生するように燃料としてのプラズマは、イオン化される。磁石は、プラズマを閉じ込め、スクレイプオフ層への核融合生成物の迅速な損失を促進するための磁界を形成するために使用される。推進噴射システムは、ガスボックスへスクレイプオフ層の質量を増加させるための高温推進プラズマに変換される低温推進剤を噴射し、高温推進プラズマはリアクタチャンバを通って流れ、核融合生成物によって加熱されることを特徴とする。最終的に、高温推進プラズマおよび核融合生成物は、磁気ノズルを介してリアクタチャンバから放出される。放出された推進剤粒子は、十分に方向づけられた流れに沿ってロケットエンジンの磁場から脱離される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、FRC推進システムのための磁場の構成の一例である。
図2図2は、中性ビーム入射のための技術の一例である。
図3図3は、推力増大およびロケット推進のために設計された核融合リアクタの構成の一例である。
図4図4は、推力増大のためのスクレイプオフ層の加熱する工程である。
図5図5は、エネルギー変換のために、核融合から放射線を捕捉するための熱交換器である。
図6図6は、電荷交換を用いたプラズマ脱離方法である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明において、本発明の完全な理解を提供する説明のために特定の数、材料および構成を示す。しかしながら、当業者にとって本発明は、これらの特定の詳細なしに実施できることは明らかである。いくつかの例において、開示されたシナリオを不明瞭にしない周知の特徴は、省略または簡略化することができる。また、本明細書において、「1つの実施形態」や「一実施形態」との記述は、その実施形態に関して記載される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における「一実施形態において」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているとは限らない。
【0021】
この説明の過程において、本発明を説明する異なる図面において同一の符号は、同一の構成要素を識別するために用いられる。
【0022】
核融合反応では、軽核は一時的に結合し、その後膨大な量の運動エネルギーを有する重粒子を備える高速反応生成物を生成するために破断する。この核融合プロセスは、正に帯電した原子核に反発するクーロン力を克服するように、5−500keV(58−5,800百万K)の温度において急速に起こる。反応性(すなわち、核融合の速度)は、イオン温度とプラズマ密度の関数である。
【0023】
実用的なリアクタの最も重要な核融合反応を以下に示す。
【0024】
【数1】
【0025】
ここで、Dは、重水素であり、Tは、トリチウムであり、αは、ヘリウムの原子核であり、nは、中性子であり、pは、陽子であり、HeおよびHeは、それぞれヘリウム3およびヘリウム4である。各生成物に関する運動エネルギーは括弧内に示す。
【0026】
D−T反応は、中性子におけるエネルギーの大半を生成する。これは、従来のボイラーや核分裂リアクタのように、電気エネルギーは、作動流体を加熱するための中性子線によってのみ生成することができることを意味する。作動流体の温度制限によって、転換は約30%の効率しか得られない。D−T燃料混合物の利点は、わずか5−10keV(1keVは、1160万Kであり、有用な温度の単位である)の最も低いイオン温度において正味電力を生成することである。しかしながら、中性子束がリアクタの構成要素の電気的、機械的、および熱的特性を劣化させ、放射性物質の多くを残すので、この反応で遊離したエネルギッシュな中性子線は、リアクタの構造に重大な脅威を表す。地球上の発電用リアクタにおいて、これらのエネルギッシュな中性子線の大半は、トリチウムなどの希少材料を増殖するために使用される。したがって、D−T燃料混合物は、放射線被害、原料の放射化、および燃料の入手性という重大な課題を提起する。D−Tリアクタを実行するには、中性子線からリアクタの構成要素や人員を保護するために数メートル相当のシールドだけでなく、核物質やトリチウムの増殖の十分な研究と開発が必要である。
【0027】
D−D核融合反応は、大量の重水素によってトリチウムを増殖する必要がなくなるので、非常に魅力的である。さらに、生成された中性子は、D−Tによるものに比べて、単位生成エネルギー当たりの数が少なくエネルギーが低い。D−D核融合の娘生成物を選択的に処理すること(融合する前にプラズマからTを除去し、迅速かつ崩壊形成されたHeを燃焼し、He触媒によるD−D核融合と呼ばれる技術)によって、中性子生成はD−Tレベルの単位生成エネルギー当たりにおいて10%に減少させることができる。
【0028】
D−He反応は、直接的に比較的少ない数の中性子を生成し、増殖のために何も必要としないため、無中性子と呼ばれる。帯電した反応生成物からのエネルギーは、D−Tよりもはるかに高い効率で、直接電力に変換される。しかしながら、より高いイオンエネルギーや50−100keVの温度が、D−Tと同じ反応度に達するために必要とされる。D−D反応およびD−He反応は、D−D副反応を認め、それはD−Heリアクタにおいて中性子の唯一の発生源である。この中性子発生を減少させるための周知の方法は、D−Heの反応物質の濃度比を例えば、1:1から1:9へ低くすることである。100keVのイオン温度の熱プラズマ中で、Tアッシュを速やかに取り除くことによって、D−Tの単位生成エネルギー当たりにおいて中性子生成を2.6%から0.5%に減少させることができる。これによって、1m下にある必要があった中性子遮蔽のレベルを低下させる。しかしながら、D濃度を低くすると4.5倍も電力密度を減少させ、経済的に悪影響を及ぼすことになる。この中性子発生経路を抑制する方法は、国際特許出願PCT/US13/33767の明細書に開示されており、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0029】
すべての核融合燃料の中では、D−Heは正味電力を発生させる間の中性子の生成が少ないので、本明細書に記載されている用途に好適である。様々な推進剤は、重水素と水素を含む推力増大のために使用することができる。
【0030】
プラズマは、リアクタチャンバ内に形成され、プラズマ半径の約1/10で、イオンジャイロ半径を収容するのに十分小さくすることができ、ほとんどが軌道を取り囲む軸を有する。これによって、チルトモードに対するプラズマの安定性を促進する。ラジオ周波数磁界発生コイルのような加熱システムは、核融合反応が起こるように、プラズマのイオンエネルギーを上昇させることができる。リアクタチャンバと同軸に複数の個別の磁石を配置することによって、コルゲート軸方向磁場はまた、不安定なチルトモードに対して介在するように形成されている。
【0031】
磁気閉じ込め方式は、永久磁石と磁気コイルのいずれかを用いることができる。十分な電力の核融合プラズマを備えるほどの十分な大きさを有する一方で、効果的に加熱され、核融合生成物を迅速にスクレイプオフ層に移動できる程度に小さくなるように、磁石は、プラズマのサイズを制御する。スクレイプオフ層は内部のクローズド磁力線を有する磁気閉じ込め核融合装置の典型的な構成要素であり、推力増大のこのシステムにとって極めて重要である。それは、トカマク、ステラレータ、逆磁場ピンチ、スフェロマック、および磁場反転配位(FRC)において見出されている。
【0032】
図1に示すように、FRCは、準トロイダル、クローズド磁場を形成し、磁気閉じ込め装置をほぼ近軸にリアクタチャンバが存在する開放端磁力線に単純に接続する。セパラトリクス10は、クローズド磁力線領域12とスクレイプオフ層(SOL)を有する開放端磁場領域14とを分割する。プラズマを貫通するように、外部ラジオ周波数電磁コイルによって生成された磁界回転奇数パリティ(すなわち反平行)(RMF)のような加熱方法を可能にしながら、磁気コイル16を保全する離散磁束が磁気圧力を提供する。O点ヌル線20を中心としたトロイダル電流18は、クローズド磁力線領域12の軸周りに形成される。
【0033】
ペレット、ガス膨張剤、クラスタ、および中性ビーム入射を含む燃焼室内に燃料を導入するために燃料噴射の様々な手段を用いることができる。図2は、タイトでエネルギッシュな中性子ビーム、DおよびHeを燃焼室の中心に供給するために使用される中性ビーム入射を示している。中性ビームは、プラズマ形成ボックス24および電荷交換ボックス26に水素または重水素のような原料ガス推進剤22を噴射することによって形成される。プラズマ形成ボックス24内で、原料ガス推進剤22は、弱イオン化される。イオン化されたイオンは、イオン抽出グリッド30を通って放出され、その後イオンビーム28を形成するために高電圧イオン加速グリッド32を通って加速される。イオンビーム28は、電荷交換ボックス26に入り、ここで電子は中性ビーム34を形成する原料ガス推進剤22によって形成されるガスから渡される。中性ビーム34は、燃焼室内に注入される。
【0034】
図3は、推力増大用に構成されたFRCを示している。核融合燃料36は、リアクタチャンバ37の中心付近に噴射される。核融合は、プラズマが加熱されるクローズド磁力線領域38で達成される。この構成において、FRCの成形および加熱は、磁気コイル42を保全するアクティブ40でパッシブな磁束およびRMFの逆平行のコンポーネントを形成するラジオ周波数コイル44によって達成される。推力増大は、重水素または水素を(オープン磁力線48上の)ガスボックス46へ圧送することによって達成され、ここでイオン化される。
【0035】
低温プラズマは、オープン磁力線に沿って流れ、ボックスを出て、SOL50を通る。低温プラズマ密度およびSOLにおける温度は、ガスボックス46に導入されるガスの比率によって制御される。さらに制御は、ガスボックスの開口部に取り付けられた可変サイズのオリフィス52を拡張および収縮することによって達成される。FRCの中央面54付近では、例えばプラズマ電子などのSOLプラズマ粒子が反応生成物の運動エネルギーによって加熱される。トリチウム、重水素、および/または水素プラズマを含む低温核融合生成物は、開放端磁場領域46に沿って流れ、磁気ノズル56を介してエンジンの外へ放出される。
【0036】
推力制御は、様々な方法によって達成することができる。電力Pは、P=0.5TUのように排気速度Uを乗じた推力Tに正比例するので、推力は与えられた電力において排気速度と交換することができる。反応生成物は、高エネルギーである。例えば、D−Heの製品が推進のために直接使用された場合、それらは25,000km/sの排気速度を生成する。しかしながら、このような場合には、推力対電力の比は、kWあたり1/12500ニュートンである。この比は改善でき、ガスボックス46に導入された低温推進剤の量によって注意深く制御することができる。推力を制御する別の方法は、スクレイプオフ層の厚さを変化させることができるガスボックスの可変サイズのオリフィス52を通過させることである。最後に、異なる推進剤を使用することによって、質量および排気速度を変更する。例えば、重水素推進剤は、水素よりも低い排気速度を有する。
【0037】
推力増大の実際のメカニズムは、図4にFRCの断面の一つの可能な構成として示されている。RMFアンテナ58は、コアプラズマ60の中の低中性子生成物との融合の高電力密度を生成する。超電導磁気コイル62や永久磁石によって生成されたサイズおよび磁界は、最初の軌道上のSOL64を通過する融合反応生成物の90%以上である。ここで、その速度を増加する高温プラズマ66とエネルギーを交換する。さらに、FRCの表面積対体積比は大きく、真空容器68のリアクタチャンバのウォールにおける中性子電力負荷密度および部品劣化を低減する。しかしながら、制動放射、シンクロトロン、および中性子からいくらかの放射物は発生し、シールド70によって吸収させてもよい。
【0038】
図5にはFRCウォールの他の構成が示されている。リアクタチャンバ72を保護するための複数の手法が示されている。中性子74は、磁場の影響を受けず、D−D副反応から直接放出されるが、リアクタの構造、磁石、アンテナおよび特に高感度電子機器に著しい損害を与える。中性子遮蔽76は、一般的に、水素、水、ヘリウム、ホウ素、ベリリウムのような小さい原子番号を有する材料から構築される。制動放射および放射光はかなり広いスペクトルを有するが、前者は主にX線として、後者はマイクロ波として放出される。マイクロ波78は、低放射率80で表面によって単純に反射される。すなわち光沢である。原子媒質質量材料は、X線82を吸収することができ、エネルギー変換84のための熱交換器で材料を加熱する。
【0039】
磁力線は、最終的に方向を逆にし、ロケットのノーズに戻るため、有用な推力を生み出すためには、推進剤はロケットエンジンの磁力線から切り離す必要がある。脱離はプロセスの数に関連してもたらされ、そのうち1つが図6に示されている。中性原子86は磁力線88に結合されていないので、ある一般的な方法としては、それらに電子を付着することによって、イオン90を中和することができる。これはガスボックス92の電荷交換を使用して、中性ビームが生成されるのと同じ方法で簡易に放射再結合によって行うことができる。別の脱離方法としては、ジャイロ半径が大幅にロケットサイズを超えるような高速に加速することによって、イオンを非磁化することができる。最後に、存在する推進剤のプラズマ圧力は、磁場エネルギー密度を超える点まで増加させることができる。膨張プラズマは、磁場エネルギー密度に対するプラズマ圧力の比率は当然に磁気ノズルからの距離が増加するとともに増加する。最終的には、磁場から自分自身を引き離すために、プラズマの全体に流れる「ブロブ」を引き起こす。
【0040】
上術のように、従来の核融合エンジンの重大な欠点は、高い比推力を提供するにもかかわらず、比較的低い推力を提供することである。上述したシステムは、核融合プラズマ周りのスクレイプオフ層へ原料ガス推進剤の噴射することにより推力を増大することによって、この欠点を克服する。増大された推進能力を有するこの核融合エンジンは、従来のシステムよりも実質的に小さいリアクタ用いて実現される。これによって、より長いミッション継続時間に至る反応を持続するために必要なヘリウム3燃料の量を減少させる。最終的に、上述の推力増大システムは、効率向上につながる増大プロセスのより正確な制御を提供する。
【0041】
本明細書において特定の実施形態を参照して発明を説明してきたが、これらの実施形態は開示された発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、様々な変形を上述において説明した実施形態に加えることが可能であり、他の構成は、添付の特許請求の範囲によって定義される開示された発明の概念および特許請求の範囲から逸脱することなく考案され得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6