特許第6023891号(P6023891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6023891非燃焼型香味吸引器及びカプセルユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023891
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】非燃焼型香味吸引器及びカプセルユニット
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20161027BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   A24F47/00
   A61M15/06 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-539357(P2015-539357)
(86)(22)【出願日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2014075537
(87)【国際公開番号】WO2015046385
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-204177(P2013-204177)
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新川 雄史
(72)【発明者】
【氏名】松本 光史
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−68114(JP,A)
【文献】 特表2006−522672(JP,A)
【文献】 特表2003−527136(JP,A)
【文献】 国際公開第1997/48293(WO,A1)
【文献】 特開2010−104310(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0095357(US,A1)
【文献】 特表2013−516266(JP,A)
【文献】 特開平7−147965(JP,A)
【文献】 米国特許第5095921(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非吸口端から吸口端に向かって所定方向に沿って延びる形状を有する非燃焼型香味吸引器であって、
前記非吸口端を有する本体ユニットと、
前記本体ユニットに対して着脱可能に構成されるカプセルユニットとを備えており、
前記本体ユニットは、エアロゾルを発生するエアロゾル源と、燃焼を伴わずに前記エアロゾル源を霧化する霧化手段と、前記霧化手段に電力を供給する電源とを含み、
前記カプセルユニットは、前記エアロゾル源よりも前記吸口端側に設けられる固体状の香味源と、前記香味源に対して前記吸口端側に隣接するフィルタとを含み、
前記香味源の外面のうち、前記フィルタと隣接する部分を除いた部分は、通気性を有していない部材によって構成される所定膜によって被覆されており、
前記本体ユニットには、前記カプセルユニットに隣接する部分に、前記所定膜の一部を破壊するための破壊部が設けられることを特徴とする非燃焼型香味吸引器。
【請求項2】
前記所定膜は、ゼラチン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートによって構成される群の中から選択される少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の非燃焼型香味吸引器。
【請求項3】
前記フィルタの通気抵抗は、5mmAq以上、かつ、20mmAq以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非燃焼型香味吸引器。
【請求項4】
前記破壊部によって前記所定膜の一部が破壊されたときにおける前記カプセルユニットの通気抵抗は、10mmAq以上、かつ、100mmAq以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の非燃焼型香味吸引器。
【請求項5】
前記所定膜の膜厚は、0.1μm以上、かつ、0.3μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の非燃焼型香味吸引器。
【請求項6】
前記フィルタ及び前記所定膜によって区画される空間の容積は、0.6ml以上、かつ、1.5ml以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の非燃焼型香味吸引器。
【請求項7】
前記霧化手段は、燃焼を伴わずに前記エアロゾル源を加熱する熱源であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の非燃焼型香味吸引器。
【請求項8】
非吸口端から吸口端に向かって所定方向に沿って延びる形状を有する非燃焼型香味吸引器において、前記非吸口端を有しており、エアロゾルを発生するエアロゾル源と、燃焼を伴わずに前記エアロゾル源を霧化する霧化手段と、前記霧化手段に電力を供給する電源とを含む本体ユニットに対して着脱可能に構成されるカプセルユニットであって、
固体状の香味源と、
前記香味源に対して前記吸口端側に隣接するフィルタとを備え、
前記香味源の外面のうち、前記フィルタと隣接する部分を除いた部分は、通気性を有していない部材によって構成される所定膜によって被覆されることを特徴とするカプセルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非吸口端から吸口端に向かって所定方向に沿って延びる形状を有する非燃焼型香味吸引器、非燃焼型香味吸引器に用いるカプセルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼を伴わずに、香味を吸引するための非燃焼型香味吸引器が知られている。非燃焼型香味吸引器は、非吸口端から吸口端に向かって所定方向に沿って延びる形状を有する。非燃焼型香味吸引器は、エアロゾルを発生するエアロゾル源と、燃焼を伴わずにエアロゾル源を加熱する熱源と、熱源に電力を供給する電源とを有する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−506594号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の特徴は、非吸口端から吸口端に向かって所定方向に沿って延びる形状を有する非燃焼型香味吸引器であって、前記非吸口端を有する本体ユニットと、前記本体ユニットに対して着脱可能に構成されるカプセルユニットとを備え、前記本体ユニットは、エアロゾルを発生するエアロゾル源と、燃焼を伴わずに前記エアロゾル源を霧化する霧化手段と、前記霧化手段に電力を供給する電源とを含み、前記カプセルユニットは、前記エアロゾル源よりも前記吸口端側に設けられる固体状の香味源と、前記香味源に対して前記吸口端側に隣接するフィルタとを含み、前記香味源の外面のうち、前記フィルタと隣接する部分を除いた部分は、通気性を有していない部材によって構成される所定膜によって被覆され、前記本体ユニットには、前記カプセルユニットに隣接する部分に、前記所定膜の一部を破壊するための破壊部が設けられることを要旨とする。
【0005】
第2の特徴は、第1の特徴において、前記所定膜は、ゼラチン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートによって構成される群の中から選択される少なくとも一つの化合物を含むことを要旨とする。
【0006】
第3の特徴は、第1の特徴又は第2の特徴において、前記フィルタの通気抵抗は、5mmAq以上、かつ、20mmAq以下であることを要旨とする。
【0007】
第4の特徴は、第1の特徴乃至第3の特徴のいずれかにおいて、前記破壊部によって前記所定膜の一部が破壊されたときにおける前記カプセルユニットの通気抵抗は、10mmAq以上、かつ、50mmAq以下であることを要旨とする。
【0008】
第5の特徴は、第1の特徴乃至第4の特徴のいずれかにおいて、前記所定膜の膜厚は、0.1μm以上、かつ、0.3μm以下であることを要旨とする。
【0009】
第6の特徴は、第1の特徴乃至第5の特徴のいずれかにおいて、前記フィルタ及び前記所定膜によって区画される空間の容積は、0.6ml以上、かつ、1.5ml以下であることを要旨とする。
【0010】
第7の特徴は、第1の特徴乃至第6の特徴のいずれかにおいて、前記霧化手段は、燃焼を伴わずに前記エアロゾル源を加熱する熱源であることを要旨とする。
【0011】
第8の特徴は、非吸口端から吸口端に向かって所定方向に沿って延びる形状を有する非燃焼型香味吸引器において、前記非吸口端を有しており、エアロゾルを発生するエアロゾル源と、燃焼を伴わずに前記エアロゾル源を霧化する霧化手段と、前記霧化手段に電力を供給する電源とを含む本体ユニットに対して着脱可能に構成されるカプセルユニットであって、前記エアロゾル源よりも前記吸口端側に設けられる固体状の香味源と、前記香味源に対して前記吸口端側に隣接するフィルタとを備え、前記香味源の外面のうち、前記フィルタと隣接する部分を除いた部分は、通気性を有していない部材によって構成される所定膜によって被覆されることを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る非燃焼型香味吸引器100を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る霧化ユニット120を示す図である。
図3図3(a)は、第1実施形態に係る破壊部90を示す図であり、図3(b)は、変更例1に係る破壊部90を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0014】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
[実施形態の概要]
非燃焼型香味吸引器の態様として、エアロゾル源よりも吸口端側に設けられる香味源(例えば、たばこ源)及び香味源よりも吸口端側に設けられるフィルタを有する非燃焼型香味吸引器も考えられる。
【0016】
上述した構成を有する非燃焼型香味吸引器について本発明者等が検討した結果、かかる非燃焼型香味吸引器において、エアロゾル源の耐用寿命は、香味源の耐用寿命よりも長いという知見を得た。従って、かかる非燃焼型香味吸引器においては、エアロゾル源の耐用寿命が尽きていないにもかかわらずに、香味源の耐用寿命が尽きることが想定される。このようなケースを想定すると、非燃焼型香味吸引器においてエアロゾル源と香味源とが一体として形成されている場合には、香味源の耐用寿命が尽きた場合に、香味源とともにエアロゾル源を破棄しなくてはならない。
【0017】
一方で、本発明者等が検討したところ、非燃焼型香味吸引器において、フィルタの耐用寿命は、エアロゾル源の耐用寿命よりもはるかに香味源の耐用寿命に近しいことを見出した。
【0018】
また、香味源が空気に触れることによって香味源が劣化するため、非燃焼型香味吸引器を使用するときまで、香味源が空気に極力触れない状態で香味源を維持することが好ましい。
【0019】
実施形態に係る非燃焼型香味吸引器は、非吸口端から吸口端に向かって所定方向に沿って延びる形状を有する。非燃焼型香味吸引器は、前記非吸口端を有する本体ユニットと、前記本体ユニットに対して着脱可能に構成されるカプセルユニットとを備える。前記本体ユニットは、エアロゾルを発生するエアロゾル源と、燃焼を伴わずに前記エアロゾル源を霧化する霧化手段と、前記霧化手段に電力を供給する電源とを含む。前記カプセルユニットは、前記エアロゾル源よりも前記吸口端側に設けられる固体状の香味源と、前記香味源に対して前記吸口端側に隣接するフィルタとを含む。前記香味源の外面のうち、前記フィルタと隣接する部分を除いた部分は、通気性を有していない部材によって構成される所定膜によって被覆される。前記本体ユニットには、前記カプセルユニットに隣接する部分に、前記所定膜の一部を破壊するための破壊部が設けられる。
【0020】
第1に、実施形態では、フィルタの耐用寿命は、エアロゾル源の耐用寿命よりもはるかに香味源の耐用寿命に近しいという知見に基づいて、フィルタ及び香味源を含むカプセルユニットがエアロゾル源を含む本体ユニットに着脱可能に構成される。すなわち、カプセルユニットは、エアロゾル源とは別体として設けられる。これによって、非燃焼型香味吸引器を構成する各物品が無駄にならないようにすることができる。
【0021】
第2に、実施形態では、香味源の外面のうち、フィルタと隣接する部分を除いた部分は、通気性を有していない部材によって構成される所定膜によって被覆される。これによって、フィルタ及び所定膜によって区画される空間内と外気との空気の対流が抑制される。一方、非燃焼型香味吸引器の使用時に破壊部によって所定膜の一部を破壊することによって初めて、空気導入孔、エアロゾル源、香味源及び吸口端が空気的に連通するため、非燃焼型香味吸引器の使用時までフレッシュな状態で香味源を維持することができる。
【0022】
[第1実施形態]
(非燃焼型香味吸引器)
以下において、第1実施形態に係る非燃焼型香味吸引器について説明する。図1は、第1実施形態に係る非燃焼型香味吸引器100を示す図である。図2は、第1実施形態に係る霧化ユニット120を示す図である。
【0023】
第1実施形態において、非燃焼型香味吸引器100は、燃焼を伴わずに香味を吸引するため器具であり、非吸口端から吸口端に向かう方向である所定方向Aに沿って延びる形状を有する。
【0024】
図1に示すように、非燃焼型香味吸引器100は、電装ユニット110と、霧化ユニット120とを有する。電装ユニット110は、霧化ユニット120に隣接する部位に雌コネクタ111を有しており、霧化ユニット120は、電装ユニット110に隣接する部位に雄コネクタ121を有する。雌コネクタ111は、所定方向Aに直交する方向に沿って延びるらせん状の溝を有しており、雄コネクタ121は、所定方向Aに直交する方向に沿って延びるらせん状の突起を有する。雌コネクタ111及び雄コネクタ121の螺合によって、霧化ユニット120と電装ユニット110とが接続される。霧化ユニット120は、電装ユニット110に対して着脱可能に構成される。
【0025】
電装ユニット110は、電源10と、センサ20と、押しボタン30と、発光素子40と、制御回路50とを有する。
【0026】
電源10は、例えば、リチウムイオン電池である。電源10は、非燃焼型香味吸引器100の動作に必要な電力を供給する。例えば、電源10は、センサ20、発光素子40及び制御回路50に電力を供給する。また、電源10は、後述する熱源80に電力を供給する。
【0027】
センサ20は、ユーザの吸引動作によって生じる風圧を検出する。具体的には、センサ20は、霧化ユニット120に向かって空気が吸引される際に生じる負圧を検出する。センサ20は、特に限定されるものではないが、圧電素子によって構成される。
【0028】
押しボタン30は、所定方向Aに沿って吸口端側に押し込むように構成される。例えば、押しボタン30の所定操作(所定回数に亘って連続的に押し込むなどの操作)によって、非燃焼型香味吸引器100の電源がONにされる。押しボタン30の操作によって電源がONにされると、電源10から制御回路50へ電力が供給され、制御回路50を介して、センサ20及び発光素子40へ電力が供給される。ここで、熱源80への電力供給は、電源がONにされ、かつセンサ20によってユーザの吸引動作が検出された際に行われることに留意すべきである。すなわち、エアロゾルを吸引していない非パフ状態においては、熱源80への電力供給は行われない。
【0029】
或いは、押しボタン30の所定操作(押しボタン30の長押しなどの操作)によって、非燃焼型香味吸引器100の電源がOFFにされてもよい。押しボタン30の所定操作によって非燃焼型香味吸引器100の電源がOFFにされるため、非燃焼型香味吸引器100の非使用時において消費電力を減少することができる。
【0030】
なお、押しボタン30は、非燃焼型香味吸引器100の電源のON及びOFFの少なくとも一方を行うための構成であればよい。
【0031】
発光素子40は、例えば、LEDや電灯などの光源である。発光素子40は、所定方向に沿って延びる側壁に設けられる。発光素子40は、非吸口端の近傍に設けられることが好ましい。これによって、所定方向Aの軸線上において非吸口端の近傍に発光素子が設けられるケースと比べて、ユーザは、吸引動作中において、発光素子40の発光パターンを容易に視認することができる。発光素子40の発光パターンは、非燃焼型香味吸引器100の状態をユーザに通知するパターンである。
【0032】
制御回路50は、非燃焼型香味吸引器100の動作を制御する。具体的には、制御回路50は、発光素子40の発光パターンを制御し、熱源80に供給される電力を制御する。
【0033】
霧化ユニット120は、図2に示すように、保持体60と、吸収体70と、熱源80と、破壊部90とを有する。霧化ユニット120は、カプセルユニット130と、吸口ユニット140とを有する。ここで、霧化ユニット120は、外気を内部に取り込むための空気導入孔125と、雄コネクタ121を介して電装ユニット110(センサ20)に連通する空気流路122と、筒状に配置されるセラミック123とを有する。霧化ユニット120は、霧化ユニット120の外形を形成する筒状の外壁124を有する。セラミック123によって囲まれる空間は、空気流路を形成する。セラミック123は、例えば、アルミナを主成分として含む。
【0034】
保持体60は、筒状形状を有しており、エアロゾルを発生するエアロゾル源を保持する。エアロゾル源は、グリセリン又はプロピレングリコールなどの液体である。保持体60は、例えば、エアロゾル源が含浸された孔質体によって構成されている。孔質体は、例えば、樹脂ウェブである。
【0035】
なお、第1実施形態においては、上述したセラミック123が保持体60の内側に配置されており、保持体60によって保持されるエアロゾル源の揮発が抑制される。
【0036】
吸収体70は、保持体60に隣接して設けられており、エアロゾル源を保持体60から吸い上げる物質によって構成される。吸収体70は、例えば、ガラス繊維によって構成される。
【0037】
熱源80は、燃焼を伴わずにエアロゾル源を加熱する。例えば、熱源80は、吸収体70に巻き回された電熱線である。熱源80は、吸収体70によって吸い上げられたエアロゾル源を加熱する。
【0038】
破壊部90は、カプセルユニット130が装着された状態において、所定膜133の一部を破壊するための部材である。実施形態において、破壊部90は、霧化ユニット120とカプセルユニット130とを仕切るための隔壁部材126によって保持されている。隔壁部材126は、例えば、ポリアセタール樹脂である。破壊部90は、例えば、所定方向Aに沿って延びる円筒状の中空針である。中空針の先端を所定膜133に突き刺すことによって、所定膜133の一部が破壊される。また、中空針の内側空間によって霧化ユニット120とカプセルユニット130とを空気的に連通する空気流路が形成される。ここで、中空針の内部には、香味源131を構成する原料が通過しない程度の粗さを有する網目が設けられることが好ましい。網目の粗さは、例えば、80メッシュ以上200メッシュ以下である。
【0039】
このようなケースにおいて、カプセルユニット130内に中空針が侵入する深さは、1.0mm以上かつ5.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以上かつ3.0mm以下であることがさらに好ましい。これによって、所定膜133の所望部位以外の部位を破壊することがないため、所定膜133とフィルタ132とによって区画される空間に充填される香味源131の脱離を抑制することができる。また、係る空間からの中空針の離脱が抑制されるため、中空針からフィルタ132に至る適切な空気流路を好適に維持することができる。
【0040】
所定方向Aに対する垂直断面において、垂直針の断面積は、2.0mm以上かつ3.0mm以下であることが好ましい。これによって、中空針を引き抜いた際に、カプセルユニット130から香味源131が脱落することが抑制される。
【0041】
中空針の先端は、所定方向Aに対する垂直方向に対して、30°以上かつ45°以下の傾斜を有することが好ましい。
【0042】
但し、実施形態はこれに限定されるものではなく、破壊部90は、カプセルユニット130が装着された状態において、所定膜133に隣接する部位であってもよい。このような部位に対してユーザが圧力を加えることによって、所定膜133の一部が破壊されてもよい。
【0043】
カプセルユニット130は、本体ユニットに対して着脱可能に構成される。カプセルユニット130は、香味源131と、フィルタ132と、所定膜133とを有する。また、所定膜133とフィルタ132とによって区画される空間内に、香味源131が充填されている。ここで、本体ユニットとは、カプセルユニット130以外の部位によって構成されるユニットである。例えば、本体ユニットは、上述した電装ユニット110、保持体60、吸収体70及び熱源80を含む。
【0044】
香味源131は、エアロゾル源を保持する保持体60よりも吸口端側に設けられており、エアロゾル源から発生するエアロゾルとともにユーザによって吸引される香味を発生する。ここで、香味源131は、所定膜133とフィルタ132とによって区画される空間内から流出しないように、固体状の物質によって構成されることに留意すべきである。香味源131としては、刻みたばこ、たばこ原料を粒状に成形した成形体、たばこ原料をシート状に成形した成形体を用いることができる。香味源131は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、ハーブ等)によって構成されてもよい。香味源131には、メントールなどの香料が付与されていてもよい。
【0045】
なお、香味源131がたばこ原料によって構成される場合には、たばこ原料が熱源80から離れているため、たばこ原料を加熱せずに香味を吸引することが可能である。言い換えると、たばこ原料の加熱によって生じる不要物質の吸引が抑制されることに留意すべきである。
【0046】
第1実施形態において、フィルタ132及び所定膜133によって区画される空間に充填される香味源131の量は、0.15g/cc以上かつ1.00g/cc以下であることが好ましい。フィルタ132及び所定膜133によって区画される空間において香味源131が占有する体積の占有率は、50%以上かつ100%以下であることが好ましい。なお、フィルタ132及び所定膜133によって区画される空間の容積は、0.6ml以上かつ1.5ml以下であることが好ましい。これによって、カプセルユニット130を適切な大きさに保ちながら、ユーザが香味を十分に味わうことができる程度に香味源131を収容することができる。
【0047】
破壊部90によって所定膜133の一部が破壊され、霧化ユニット120とカプセルユニット130とが連通した状態において、カプセルユニット130の先端部分(被破壊部分)からフィルタ132の末端まで、1050cc/minの流量で空気を吸引した場合のカプセルユニット130の通気抵抗(圧力損失)は、全体として、10mmAq以上かつ100mmAq以下であることが好ましく、20mmAq以上かつ90mmAq以下であることがさらに好ましい。香味源131の通気抵抗を上記の好ましい範囲に設定することによって、エアロゾルが香味源131によって濾過され過ぎる事象が抑制され、効率的に香味をユーザに供給することができる。なお、1mmAqは、9.80665Paに相当するため、上記通気抵抗は、Paで表現することもできる。
【0048】
フィルタ132は、香味源131に対して吸口端側に隣接されており、通気性を有する物質によって構成される。フィルタ132は、例えば、アセテートフィルタであることが好ましい。フィルタ132は、香味源131を構成する原料が通過しない程度の粗さを有することが好ましい。
【0049】
フィルタ132の通気抵抗は、5mmAq以上かつ20mmAq以下であることが好ましい。これによって、香味源131から生じる蒸気成分を効率的に吸着しながら、エアロゾルを効率的に通過させることができ、適切な香味をユーザに供給することができる。また、ユーザに対して適切な空気の抵抗感を与えることができる。
【0050】
香味源131の質量とフィルタ132の質量との比率(質量比率)は、3:1〜20:1の範囲であることが好ましく、4:1〜6:1の範囲であることがさらに好ましい。
【0051】
所定膜133は、フィルタ132と一体として成形されており、通気性を有していない部材によって構成される。所定膜133は、香味源131の外面のうち、フィルタ132と隣接する部分を除いた部分を被覆する。所定膜133は、ゼラチン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートによって構成される群の中から選択される少なくとも一つの化合物を含む。ゼラチン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートは、通気性を有しておらず、かつ、薄膜の形成に適している。また、ゼラチン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートは、香味源131に含まれる水分に対して十分な耐性が得られる。ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートは、特に耐水性に優れる。さらに、ゼラチン、ポリプロピレン及びポリエチレンは、耐塩基性を有しているため、香味源131が塩基性成分を有する場合でも、塩基性成分によって劣化しにくい。
【0052】
所定膜133の膜厚は、0.1μm以上かつ0.3μm以下であることが好ましい。これによって、所定膜133によって香味源131を保護する機能を維持しながら、所定膜133の一部を容易に破壊することができる。
【0053】
上述したように、所定膜133は、フィルタ132と一体として成形されるが、所定膜133は、例えば、糊等によってフィルタ132に接着される。或いは、所定方向Aに対する垂直方向において、所定膜133の外形をフィルタ132の外形よりも小さく設定して、所定膜133内にフィルタ132を詰め込み、フィルタ132の膨張力によって所定膜133内にフィルタ132を嵌合してもよい。或いは、所定膜133を係合するための係合部をフィルタ132に設けてもよい。
【0054】
ここで、所定膜133の形状は、特に限定されるものではないが、所定方向Aに対する垂直断面において、凹形状を有することが好ましい。このようなケースでは、凹形状を有する所定膜133の内側に香味源131を充填した後に、香味源131が充填された所定膜133の開口をフィルタ132によって閉じる。
【0055】
所定方向Aに対する垂直断面において、所定膜133が凹形状を有する場合において、所定膜133によって囲まれる空間の断面積のうち、最大の断面積(すなわち、フィルタ132が嵌合される開口の断面積)は、25mm以上かつ80mm以下であることが好ましく、25mm以上かつ55mm以下であることがさらに好ましい。このような場合において、所定方向Aに対する垂直断面において、フィルタ132の断面積は、25mm以上かつ55mm以下であることが好ましい。所定方向Aにおけるフィルタ132の厚みは、3.0mm以上かつ7.0mm以下であることが好ましい。
【0056】
吸口ユニット140は、吸口孔141を有する。吸口孔141は、フィルタ132を露出する開口である。ユーザは、吸口孔141からエアロゾルを吸引することによって、エアロゾルとともに香味を吸引する。
【0057】
第1実施形態において、吸口ユニット140は、霧化ユニット120の外壁124に対して着脱可能に構成される。例えば、吸口ユニット140は、外壁124の内面に嵌合するように構成されたカップ形状を有する。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。吸口ユニット140は、ヒンジ等によって回動可能に外壁124に取り付けられていてもよい。
【0058】
第1実施形態において、吸口ユニット140は、カプセルユニット130と別体として設けられる。すなわち、吸口ユニット140は、本体ユニットの一部を構成する。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。吸口ユニット140は、カプセルユニット130と一体として設けられていてもよい。このような場合には、吸口ユニット140は、カプセルユニット130の一部を構成することに留意すべきである。
【0059】
(作用及び効果)
第1実施形態では、フィルタ132の耐用寿命は、保持体60によって保持されるエアロゾル源の耐用寿命よりもはるかに香味源131の耐用寿命に近しいという知見に基づいて、フィルタ132及び香味源131を含むカプセルユニット130がエアロゾル源を含む本体ユニットに着脱可能に構成される。すなわち、カプセルユニット130は、エアロゾル源を保持する保持体60とは別体として設けられる。これによって、非燃焼型香味吸引器100を構成する各物品が無駄にならないようにすることができる。
【0060】
第1実施形態では、香味源131の外面のうち、フィルタ132と隣接する部分を除いた部分は、通気性を有していない部材によって構成される所定膜133によって被覆される。これによって、フィルタ132及び所定膜133によって区画される空間内と外気との空気の対流が抑制され、非燃焼型香味吸引器100の使用時に破壊部90によって所定膜133の一部を破壊することによって初めて、空気導入孔125、エアロゾル源、香味源131及び吸口端が空気的に連通するため、非燃焼型香味吸引器の使用時までフレッシュな状態で香味源131を維持することができる。
【0061】
第1実施形態では、所定膜133は、ゼラチン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートによって構成される群の中から選択される少なくとも一つの化合物を含む。これによって、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)等によって所定膜を構成するケースと比べて、香味源131に含まれるニコチン等の成分の収着を抑制でき、溶剤に対して十分な耐性が得られ、低コストで所望の結果を実現することができる。
【0062】
[変更例1]
以下において、第1実施形態の変更例1について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0063】
具体的には、第1実施形態では、図3(a)に示すように、破壊部90は、所定方向Aに沿って延びる空洞91を有する円筒状の中空針である。ここで、空洞91は、所定方向Aに沿って破壊部90を貫通している。これによって、空洞91は、霧化ユニット120とカプセルユニット130とを空気的に連通する空気流路を形成する。言い換えると、エアロゾルは、空洞91を通ってカプセルユニット130内に導かれる。
【0064】
これに対して、変更例1では、図3(b)に示すように、破壊部90は、所定方向Aに沿って延びる空洞91及び所定方向Aと交差する方向に沿って延びる空洞92を有する。ここで、空洞92の開口部92Aは、カプセルユニット130が装着された状態において、カプセルユニット130内に位置することに留意すべきである。これによって、空洞91及び空洞92は、霧化ユニット120とカプセルユニット130とを空気的に連通する空気流路を形成する。言い換えると、エアロゾルは、空洞91及び空洞92を通ってカプセルユニット130内に導かれる。
【0065】
図3(b)に示すように、変更例1では、カプセルユニット130内に露出する空洞92の開口部92Aが破壊部90の先端ではなくて破壊部90の外周に設けられる。言い換えると、空洞91の開口部91Aが破壊部90の先端に設けられる一方で、空洞92の開口部92Aが破壊部90の外周に設けられる。従って、カプセルユニット130の所定膜133の一部を破壊部90によって破壊する際に、カプセルユニット130に充填される香味源131が空気流路(空洞91)内に入りにくく、空気流路の詰まりを抑制することができる。
【0066】
なお、図3(b)に示す例では、空洞91は、所定方向Aに沿って破壊部90を貫通していない。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。空洞91は、所定方向Aに沿って破壊部90を貫通していてもよい。
【0067】
また、上述したように、破壊部90の内部には、香味源131を構成する原料が通過しない程度の粗さを有する網目が設けられる。図3(a)に示す例では、網目は、空洞91に設けられる。図3(b)に示す例では、網目は、空洞91に設けられてもよいが、空洞92に設けられてもよい。さらに、網目は、空洞91及び空洞92の双方に設けられることが好ましい。このようなケースにおいて、空洞91に設けられる編目は、空洞91の開口部91Aに設けられることが好ましく、空洞92に設けられる編目は、空洞92の開口部92Aに設けられることが好ましい。
【0068】
ここで、空洞91及び空洞92の双方に網目が設けられることによって、空洞92に設けられる網目から香味源131を構成する原料が空洞92及び空洞91に入ってしまったとしても、空洞91に設けられた網目によって原料が吸収体70及び熱源80側に脱落しない。これによって、香味源131を構成する原料と熱源80との接触によって原料が熱分解等することを抑制することができる。また、香味源131を構成する原料と吸収体70によって吸い上げられたエアロゾル源との接触によって原料中の夾雑物が液に溶解することを抑制することができる。
【0069】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0070】
実施形態では、特に言及していないが、非燃焼型香味吸引器100は、円柱や多角柱等の柱状形状を有する。例えば、所定方向Aにおいて、電装ユニット110の長さは、70mmであり、霧化ユニット120の長さは、55mmである。
【0071】
実施形態では、香味源131は、エアロゾル源を保持する保持体60よりも吸口端側に設けられている。これは、空気流路の観点で香味源131がエアロゾル源よりも吸口端側に位置することを意味する。従って、吸口端側とは、カプセルユニット130を非燃焼型香味吸引器100に装着する前の状態において吸口端の物理的な位置に依存する概念ではなく、カプセルユニット130を非燃焼型香味吸引器100に装着して非燃焼型香味吸引器100を使用可能な状態において、空気流路の観点で判断すべき概念である。
【0072】
実施形態では、電装ユニット110が雌コネクタを有しており、霧化ユニット120が雄コネクタを有する。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。電装ユニット110が雄コネクタを有しており、霧化ユニット120が雌コネクタを有していてもよい。
【0073】
実施形態では、燃焼を伴わずにエアロゾル源を霧化する霧化手段として熱源80を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。燃焼を伴わずにエアロゾル源を霧化する霧化手段は、超音波によってエアロゾル源を霧化するユニットであってもよい。
【0074】
なお、日本国特許出願第2013−204177号(2013年9月30日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、香味源の劣化を抑制しながら、非燃焼型香味吸引器を構成する物品が無駄にならないようにすることを可能とする非燃焼型香味吸引器及びカプセルユニットを提供することができる。
図1
図2
図3