【実施例】
【0032】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例1:61歳の大腸癌術後の肝転移症例に対するベスタチン単独投与
61歳の末期の大腸癌患者において、術後の肝転移が認められた。そのため、高用量の5−FU系経口抗がん剤のゼローダとEGFR抗体のベクテビックスを併用投与していたが、腫瘍マーカーであるCEAのレベルは低下することなく、上昇し続けていた。
【0033】
そこで、2014年3月(Mar−14)より、ベスタチン(10mg/日)の連日単独投与を開始した。
【0034】
その結果、血小板数が低下し始め、ベスタチンの単独投与開始から2ヶ月後の2014年5月(May−14)になると、腫瘍マーカーであるCEAとCA19−9のレベルが共に低下しはじめ、治療効果・患者の状態の改善効果が認められた。
【0035】
しかしながら、当該患者の経済的な理由で2014年7月(Jul−14)にベスタチンの投与を止めたところ、再び血小板数及びCEAレベルにおいて速やかな上昇が認められ、それに伴い患者の状態が再度悪化し始めた。
【0036】
当該患者における、末梢血中のCEAレベル、血小板数、及びCA19−9レベルの測定値を
図1に示す。
実施例2:78歳の甲状腺癌術後の多発肺転移症例に対するベスタチン単独投与
78歳の甲状腺癌患者において多発肺転移が認められ、末梢血中の血小板数及び好中球数が共に増加した。2013年12月(Dec−13)には、末梢血中の好中球数とリンパ球数の比(NLR)は5を上回り、予後の不良が認められた。
【0037】
そこで、2014年3月(Mar−14)より、ベスタチン(10mg/日)の連日単独投与を開始した。
【0038】
その結果、末梢血中の血小板数及び好中球数の低下、ならびにNLRの値の低下・改善が認められた。
【0039】
当該患者における、ベスタチン単独投与前後の、末梢血中の白血球数、好中球数、リンパ球数及びNLRの測定値を下記表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例3:61歳の非小細胞肺癌術後の再発例に対するベスタチン単独投与
61歳の非小細胞肺癌患者は右上葉切除後、免疫療法を受けていたが、右頚部リンパ節腫張が認められた(2012年9月(Sep−12))。その後、末梢血中のCEAレベルの上昇が認められた。
【0042】
そこで、2014年1月(Jan−14)より、ベスタチン(10mg/日)の連日単独投与を開始した。
【0043】
その結果、末梢血中のCEAレベルの低下が認められた。
【0044】
当該患者における、末梢血中のCEAレベルの測定値を
図2に示す。
実施例4:82歳の非小細胞肺癌症例に対するベスタチンと抗がん剤(UFT)との併用投与
82歳の非小細胞肺癌患者(十二指腸癌を5年前に完治)に対し、ベスタチン(10mg/日)及びUFT(100mg/日)を1日1回、2か月間にわたって連日投与した。ここで用いられるUFTの用量は、通常用いられる量のおよそ3〜6分の1量となる極低用量である。
【0045】
その結果、投与開始からNLRの値の低下・改善が認められ(およそ5から2まで低下)、当該患者の予後の改善が見通せるに至った。
【0046】
当該患者における、NLRの測定値を
図3に示す。
実施例5:71歳の十二指腸乳頭癌の多発肝転移症例に対するベスタチンと分子標的薬(タルセバ)との併用投与
肝転移が認められた71歳の十二指腸乳頭癌患者に対し、ベスタチン(20mg/日)及びタルセバ(25mg/日)を1日1回、1か月間にわたって連日投与した。ここで用いられるタルセバの用量は、通常用いられる量のおよそ6分の1量となる極低用量である。
【0047】
その結果、投与開始から末梢血中の腫瘍マーカーについて、CEAは不変であったが、CA72−4及びNCC−ST−439の低下が認められ、治療効果・当該患者の状態の改善効果が認められた。
【0048】
当該患者における、ベスタチンとタルセバの併用投与前後の、末梢血中のCEA、CA72−4及びNCC−ST−439のレベルの測定値を下記表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
さらに、当該患者における、ベスタチンとタルセバの併用投与前後の、末梢血中のCA19−9とCRPの測定値を
図9に示す。投与開始後、腫瘍マーカーであるCA19−9とCRPの値が共に低下が認められた。さらに、肝臓における転移癌の大きさ及び数に減少が認められ(
図10)、治療効果・患者の状態の改善効果が認められた。
実施例6:77歳の腎臓肉腫症例に対するベスタチンと分子標的薬(インライタ)との併用投与
77歳の腎臓肉腫患者に対し、ベスタチン(10mg/日)及びインライタ(2mg/日)を1日1回、連日投与を開始した(2014年7月25日)。ここで用いられるインライタの用量は、通常用いられる量のおよそ5分の1量となる極低用量である。その後(2014年8月18日)、口内炎が認められたため、インライタの用量を1mg/日に、ベスタチンの用量を20mg/日に変更した。
【0051】
その結果、投与開始から血小板数とリンパ球数との比(PLR)の値の低下・改善が認められ(およそ2から1まで低下)、当該患者の予後の改善が認められた。また、両下肢の浮腫がひき始め(2014年8月23日)、終には消失した。
【0052】
当該患者における、PLRの測定値を
図4に示す。
実施例7:50歳の非小細胞肺癌症例に対するベスタチンと分子標的薬(タルセバ)との併用投与
末期で難治性の50歳の非小細胞肺癌患者(上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)に変異を有する)に対し、ベスタチン(10mg/日)及びタルセバ(50mg/日)を1日1回、連日投与した。ここで用いられるタルセバの用量は、通常用いられる量のおよそ3分の1量となる極低用量である。
【0053】
その結果、効果が得難い/期待できないとされるEGFRに変異を有する非小細胞肺癌患者において、腫瘍マーカー(CEA及びSLX)のレベルの劇的な低下が認められた。
【0054】
当該患者における、ベスタチンとタルセバの併用投与前後の、CEA及びSLXの測定値を下記表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
実施例8:57歳の非小細胞肺癌の多発骨転移症例に対するベスタチンと分子標的薬(イレッサ)との併用投与
末期で難治性の57歳の非小細胞肺癌患者(EGFRに変異を有し、胸膜炎/胸水が認められ、背骨、骨盤等への転移が認められた)に対し、2013年10月よりベスタチン(10mg/日)及びイレッサ(250mg/日)を1日1回、連日投与を開始した。
【0057】
その結果、効果が得難い/期待できないとされるEGFRに変異を有する非小細胞肺癌患者において、NLR及び炎症マーカーであるC反応性タンパク質量(CRP)の値の低下が認められた。
【0058】
当該患者における、NLR及びCRPの測定値を
図5に示す。
【0059】
また、背骨、骨盤等を含む全ての転移癌の消失が認められた(
図6:PET診断像)。
実施例9:49歳の肺腺癌の多発骨転移症例に対するベスタチンと分子標的薬(タルセバ)との併用投与
末期の49歳の肺腺癌患者(EGFRに変異を有し、背骨、骨盤等への転移が認められた)はシスプラチン・ペメトレキセド療法を受け末梢血中のCEAレベルの低下が続いていたが、上昇が認められたため(2014年6月16日)、ベスタチン(10mg/日)及びタルセバ(50mg/日)を1日1回、連日投与を開始した(2014年7月16日)。
【0060】
その結果、当該患者において、腫瘍マーカーであるCEAのレベルが低下し、かつその後の上昇が認められなかった。また投与開始後から尿pH値の上昇が認められた。
【0061】
当該患者における、末梢血中のCEAの測定値を
図7に示す。
【0062】
また、背骨、骨盤等を含む全ての転移癌の消失が認められた(
図8:PET診断像)。
実施例10:30歳の肺癌の癌性胸膜炎及び癌性心外膜炎症例に対するベスタチンと分子標的薬(ザーコリ)との併用投与
末期で難治性の30歳の非小細胞肺癌患者(EGFRに変異を有し、癌性胸膜炎及び癌性心外膜炎、ならびに頚部リンパ節・脾臓・肋骨への転移が認められた)に対し、ベスタチン(10mg/日)及びザーコリ(250mg/日)を1日1回、連日投与した。投与期間は2013年9月から2014年11月まで14ヶ月間とした。
【0063】
その結果、投与開始から腫瘍マーカーであるCEAの値の低下が認められた。当該患者における、CEAの測定値を
図11に示す。
【0064】
さらに、投与開始から9か月後(2014年5月)には癌性胸膜炎及び癌性心外膜炎の病巣の消失・縮小が認められた(
図12:胸部X線撮影像)。
実施例11:73歳の肺腺癌に対するベスタチンと分子標的薬(イレッサ)との併用投与
73歳の肺腺癌患者(EGFRに変異を有し、頚部リンパ節への転移が認められた)に対し、ベスタチン(10mg/日)を1日1回、連日投与、ならびにイレッサ(250mg/日)1週間につき4日投与した(2014年4月末より投与開始)。
【0065】
その結果、NLRの値の低下・改善及びリンパ球数の増大・改善が認められた。当該患者における、白血球、好中球、リンパ球、及びNLRの測定値を
図13に示す。また、肺病巣部の消失・縮小が認められた(
図14:胸部X線撮影像)
実施例12:71歳の肺腺癌術後の再発例に対するベスタチンと分子標的薬(タルセバ)との併用投与
71歳の肺腺癌患者(EGFRに変異を有し、2009年8月に左下葉切除及びリンパ郭清術を受け、術後抗癌剤を2か月間服用した。その後、2013年8月に再発し、2014年5月には胸水が認められた)に対し、2015年1月初旬よりベスタチン(10mg/日)及びタルセバ(50mg/日)を1日1回、連日投与した。
【0066】
その結果、投与開始から腫瘍マーカーであるCEA及びSLXの値の低下が認められ、また尿pH値の上昇が認められた。
【0067】
当該患者における、末梢血中のCEA及びSLX、ならび尿pHの測定値を
図15に示す。なお、尿pHは、癌患者の病状が悪化している場合は、酸性側に偏っているが、癌患者の病状の回復と共に、中性〜アルカリ性側に変動することが一般的に知られており、汎用されている腫瘍マーカーと同様に癌患者の病状を示すマーカーとして用いられる。
実施例13:66歳の肺腺癌の多発脳転移症例に対するベスタチンと分子標的薬(タルセバ)との併用投与
末期の66歳の肺腺癌患者(脳、リンパ節、及び骨への転移が認められた)に対し、2014年12月に全脳放射線照射せず、3D放射線照射を行い、その後、ベスタチン(10mg/日)及びタルセバ(50mg/日)を1日1回、連日投与した(2015年1月投与開始)。
【0068】
その結果、当該患者において腫瘍マーカーであるCA19−9とCEAの値の低下が認められた。当該患者における、末梢血中のCA19−9とCEAの測定値を
図16に示す。また脳転移癌の大きさ及び数に減少が認められた(
図17:頭部MRI診断像)。
実施例14:66歳の肺腺癌術後の再発、多発骨転移症例に対するベスタチンと分子標的薬(ジオトリフ)との併用投与
末期の66歳の肺腺癌患者(EGFRに変異を有し、外科手術の後に再発し、背骨等への転移が認められる)に対し、2014年8月よりベスタチン(10mg/日)及びジオトリフ(20mg/日)を1日1回、連日投与した。
【0069】
その結果、当該患者において尿pH値の上昇(アルカリ性側への変動)が認められた。当該患者における、尿pHの測定値を
図18に示す。また、背骨等の転移癌の消失が認められた(
図19:PET診断像)。
実施例15:ベスタチンと分子標的薬との組合せによる抗腫瘍効果の評価
[1]担がんマウスの作製
BALB/c nu/nuマウス(雌)の皮下にA549ヒト肺癌細胞懸濁液(5×10
6細胞/100μL PBS)を接種した。細胞移植後、腫瘍体積がおよそ117mm
3に達したマウス(細胞移植後、15日)を以下のin vivoの実験に用いた。
[2]ベスタチンとゲフィチニブの組合せによる抗腫瘍効果の評価
上記A549担がんマウスに対し、以下の用量・投与経路・スケジュールにてベスタチンとゲフィチニブをそれぞれ投与した。
【0070】
【表4】
【0071】
抗腫瘍効果は、腫瘍体積変化と体重変化について検討した。
【0072】
腫瘍体積は以下の式に基づいて算出した。
【0073】
腫瘍体積(mm
3)=(腫瘍の長辺)×(腫瘍の短辺)
2×0.5
また、腫瘍体積より腫瘍増殖阻害率(tumor growth inhibition:TGI)を以下の式に基づいて算出した。
【0074】
TGI(%)=(1−T/C)×100%(Tは処置グループにおける腫瘍体積(mm
3)、Cはコントロールグループにおける腫瘍体積(mm
3)を示す)
各グループにおける腫瘍体積の変化を
図20に示す。
【0075】
各グループにおけるTGI(%)を以下の表5に示す。P≦0.05を有意差ありと判断した。
【0076】
【表5】
【0077】
ゲフィチニブ(10mg/kg)単独で処置した場合(G2)、TGI(%)は31%(p=0.043 vsコントロール)となった。また、ベスタチン(30mg/kg)単独で処置した場合(G3)、TGI(%)は39%(p=0.006 vsコントロール)となった。
【0078】
一方、ゲフィチニブ(10mg/kg)とベスタチン(3,10,及び30mg/kg)とを組み合わせた場合(G7,G8,G9)、それぞれ単独で処置した場合(G2又はG3)と比べて比較的高いTGI(%)が得られた(それぞれ、44%,51%及び50%)。
【0079】
また、ゲフィチニブとベスタチンを併用しても、何等体重減少がないことが確認された。これは、臨床上の副作用が認められないことを示し、ゲフィチニブとベスタチンとの併用投与が、癌患者に対して副作用を伴わない優しい療法であることが示された。
【0080】
この結果より、ベスタチンとゲフィチニブとを組み合わせて投与することによって相乗的な効果を生じ、ゲフィチニブを低い用量で用いた場合においても、顕著な腫瘍増殖阻害効果が得られることが確認された。このような効果は、ベスタチンとゲフィチニブとを重量比にしておよそ1:0.3〜3にて組み合わせて投与することによって得られることが確認された。
【0081】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。