(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6023909
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】扇風機およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
F04D 27/00 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
F04D27/00 W
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-90286(P2016-90286)
(22)【出願日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年4月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514200718
【氏名又は名称】株式会社CMC
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信雄
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5834157(JP,B1)
【文献】
特開2016−011597(JP,A)
【文献】
特開平06−280788(JP,A)
【文献】
実開平05−052295(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根と、
前記羽根を回転させるための羽根用モータと、
前記羽根を上下首振りさせるための首振りモータと、
前記羽根を左右首振りさせるための左右首振りモータと、
を有し、
前記上下首振りモータおよび前記左右首振りモータが基準位置にて停止する扇風機の運転を制御する方法において、
前記上下首振りモータが、上下方向の基準位置を通過した時点から、上下首振り運転を停止する信号を認識するまでの第1の運転時間(tx)を記憶する、および/または、前記左右首振りモータが、左右方向の基準位置を通過した時点から、左右首振り運転を停止する信号を認識するまでの第2の運転時間(ty)を記憶し、
次回以降の運転時に、前記記憶した第1の運転時間(tx)および/または第2の運転時間(ty)を読み出す要求があった場合、前記上下首振りモータを上下方向の基準位置から前記第1の運転時間(tx)だけ運転する、および/または、前記左右首振りモータを左右方向の基準位置から前記第2の運転時間(ty)だけ運転する、
方法。
【請求項2】
前記上下方向の基準位置は、上下方向正面の位置であり、
前記左右方向の基準位置は、左右方向正面の位置である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準位置を通過した時点は、首振り運転を開始した時点である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法を実行する扇風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇風機モードおよびサーキュレータモードの両方で使用可能な扇風機およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の扇風機は、上下首振り運転または左右首振り運転の一方による通常の扇風機モードの他に、上下首振り運転および左右首振り運転の両方を組み合わせたサーキュレータモードで動作することができる。サーキュレータモードでは、部屋の空気を撹拌(循環)し、夏の冷房効率および冬の暖房効率を向上させることができる。
例えば、出願人は、扇風機モードおよびサーキュレータモードの両方で使用可能な扇風機において、羽根が上下方向および/または左右方向の所定の方向(例えば、上下方向正面かつ左右方向正面)を向いた状態で停止する扇風機を提案した(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5702020号公報
【特許文献2】特許第5836523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した扇風機では、首振りモータが基準位置において(例えば、羽根が上下方向正面かつ左右方向正面を向いた状態で)停止するため、例えば、仰角40°で首振りせずに使用するユーザの場合、運転開始時に毎回、上下首振り運転をしばらく行い、羽根を仰角40°に設定する必要があった。
そこで、本発明では、首振り角度を記憶し、次回以降の運転時に、記憶された首振り角度に自動で設定される扇風機およびその制御方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
本発明は、羽根と、
前記羽根を回転させるための羽根用モータと、
前記羽根を首振りさせるための首振りモータと、
を有し、前記首振りモータが基準位置にて停止する扇風機の運転を制御する方法において、
前記首振りモータが、前記基準位置を通過した時点から、首振り運転を停止する信号を認識するまでの運転時間(tx、ty)を記憶し、
次回以降の運転時に、前記記憶した運転時間(tx、ty)に基づき、前記首振りモータを運転する。
【0006】
前記首振りモータは、前記羽根を上下首振りさせるための上下首振りモータおよび前記羽根を左右首振りさせるための左右首振りモータを含み、
前記上下首振りモータが、上下方向の基準位置を通過した時点から、上下首振り運転を停止する信号を認識するまでの第1の運転時間(tx)を記憶する、および/または、前記左右首振りモータが、左右方向の基準位置を通過した時点から、左右首振り運転を停止する信号を認識するまでの第2の運転時間(ty)を記憶し、
次回以降の運転時に、前記記憶した第1の運転時間(tx)および/または第2の運転時間(ty)を読み出す要求があった場合、前記上下首振りモータを前記第1の運転時間(tx)だけ運転する、および/または、前記左右首振りモータを前記第2の運転時間(ty)だけ運転する、
ことが好ましい。
【0007】
前記上下方向の基準位置は、上下方向正面の位置であり、
前記左右方向の基準位置は、左右方向正面の位置である、
ことが好ましい。
【0008】
前記基準位置を通過した時点は、首振り運転を開始した時点である、
ことが好ましい。
【0009】
本発明は、上述した方法を実行する扇風機である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の扇風機の上下首振り運転を示す図である。
【
図2】本発明の扇風機の操作パネルの一例を示す図である。
【
図3】本発明の扇風機の首振り角度を記憶するフローチャートである。
【
図4】運転時間txを記憶するステップを説明するための図である。
【
図5】本発明の扇風機の運転を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の扇風機の制御回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す本発明の扇風機100は、羽根と、羽根を回転させるための羽根用モータと、羽根を上下首振りさせるための上下首振りモータと、羽根を左右首振りさせるための左右首振りモータと、羽根の高さを調節するために上下にスライドするスライドパイプと、スライドパイプに接続された支柱と、支柱に接続されたベースと、ベースに設けられ、扇風機100の動作を制御するための表示・操作パネルと、を有する。
扇風機100は、X方向に対して下方向に約10°(俯角10°)と、上方向に約90°(仰角90°)と、の間で上下首振りモータにより上下首振り運転をすることができる。また、図示を省略するが、左右に約90°(−90°から+90°の間)で左右首振りモータにより左右首振り運転をすることができる。
なお、上下方向および左右方向の首振り運転の角度は、この角度に制限されるものではない。
【0012】
図2に、本発明の扇風機100の操作パネル50の一例を示す。なお、図示例では、ベースに設けられた操作パネル50について説明するが、操作パネルは、リモコンに設けることもできる。
操作パネル50は、扇風機機能部とサーキュレータ機能部と共通機能部とに分かれている。
扇風機機能部には、扇風機100の電源をON/OFFするための入/切ボタン(A1)、羽根を上下方向に首振り運転させる上下首振りボタン(B1)、羽根を左右方向に首振り運転させる左右首振りボタン(C1)、風量をランダムに変更するリズム風ボタン(E1)が配置されている。
サーキュレータ機能部には、扇風機100の電源をON/OFFするための入/切ボタン(A2)、羽根を上下方向に首振り運転させる上下首振りボタン(B2)、羽根を左右方向に首振り運転させる左右首振りボタン(C2)、羽根を上下方向および左右方向に同時に首振り運転させる3D(攪拌)ボタン(D2)が配置されている。
共通機能部には、扇風機モードおよびサーキュレータモードに共通の機能のための操作ボタンとして、タイマー調節のための入タイマーボタン(F)および切タイマーボタン(G)、風量を段階的に調節するための風量ボタン(H)、首振り角度を記憶させるための快適風ロックボタン(J)が配置されている。
また、各ボタンの横にはLEDが配置されている。例えば、快適風ロックボタン(J)が押された場合には、快適風ロックLED(LED_J)が点灯する。
【0013】
図3は、本発明の扇風機100において、首振り角度を記憶する快適風ロックルーチンを示すフローチャートである。最初、扇風機100は、上下首振り運転をしている。
ステップS1において、上下首振りボタン(B1またはB2)が押されたか否かを判定する。上下首振りボタン(B1またはB2)が押され、上下首振り運転を停止する信号を認識すると、ステップS2において、上下首振りモータがOFFになる。
ステップS3において、運転時間txおよび首振り方向を記憶部に記憶する。
図4を用いて、ステップS3を説明する。扇風機100は、時間4t0の間に、仰角0°→仰角90°→仰角0°→俯角10°→仰角0°を1周期として上下首振り運転をしている。時点p0において、上下首振りモータが上下方向正面(仰角0°、基準位置)を通過する。時点p0から、運転時間tx(tx<4t0)が経過した時点pにおいて、上下首振りモータを停止するために、上下首振りボタン(B1またはB2)が押される。ここで、上下方向正面の位置を通過した時点p0から、上下首振り運転を停止する信号を認識する時点pまでの運転時間(tx)および首振り方向(下方向)を記憶する。
なお、羽根が上下方向正面(仰角0°)かつ左右方向正面を向いて停止している(電源OFF)状態から、上下首振り運転を開始し、1周期が経過する前に、上下首振りボタン(B1またはB2)が押され、上下首振り運転を停止した場合、txは、運転開始時からの運転時間を表す。初期値はtx=0である。
【0014】
再び、
図3のフローチャートに戻り、ステップS4において、快適風ロックボタン(J)が押されたか否かを判定する。快適風ロックボタン(J)が押されたことを認識すると、ステップS5において、上下首振りモータおよび左右首振りモータの両方がOFFの場合、ステップS6において、快適風ロックLED(LED_J)が点灯する。
なお、詳細な説明は省略するが、左右首振り運転をしている際にも同様に、左右首振りモータが左右方向正面を通過した時点(または運転開始時)から左右首振りボタン(C1またはC2)が押された時点、すなわち、左右首振り運転を停止する信号を認識するまでの運転時間ty(ty<4t0)および首振り方向を記憶部に記憶する。
【0015】
図5は、本発明の扇風機100の運転を示すフローチャートである。
ステップS1において、入/切ボタン(A1またはA2)が押され、「入」信号を認識すると、ステップS2において、快適風ロックLED(LED_J)が点灯しているか否かを判定する。
ステップS2において、快適風ロックLED(LED_J)が点灯している場合(Y)、記憶している運転時間tx、tyを読み出す要求があったと判定し、ステップS3において、上下首振りモータの運転時間tx(第1の運転時間)および左右首振りモータの運転時間ty(第2の運転時間)を記憶部から読み出す。
ステップS4において、0<txの場合、ステップS5において、上下首振りモータをONにして、上下首振りモータを時間txだけ運転し、上下首振りモータをOFFにする。
ステップS6において、0<tyの場合、ステップS7において、左右首振りモータをONにして、左右首振りモータを時間tyだけ運転し、左右首振りモータをOFFにする。
ここで、上下首振りモータおよび左右首振りモータの位置は、
図3および
図4において説明したように、快適風ロックボタン(J)が押された時点の角度に設定される。
ステップS11において、羽根用モータがONになる。
ステップS2において、快適風ロックLED(LED_J)が点灯していない場合(N)、ステップS8において、上下首振りボタン(B1またはB2)が押されると上下首振り運転ルーチンに移行し、ステップS9において、左右首振りボタン(C1またはC2)が押されると左右首振り運転ルーチンに移行し、ステップS10において、3Dボタン(D2)が押されると3D首振り運転ルーチンに移行する。いずれのボタンも押されないと(ステップS8、S9、S10においてN)、ステップS11において、羽根用モータがONになる。
本発明では、首振り角度が記憶され、次回以降の運転時に、記憶された首振り角度に自動で設定されるため、運転開始時に毎回、首振り運転をしばらく行う、という作業が不要となり、利便性が向上した。
【0016】
快適風ロックLED(LED_J)が点灯している際に、快適風ロックボタン(J)が押されて快適風ロックLED(LED_J)が消灯すると、記憶されていた運転時間tx、tyはクリアされる(tx=ty=0になる)。
快適風ロックLED(LED_J)が点灯している際には、上下首振りボタン(B1またはB2)、左右首振りボタン(C1またはC2)、3Dボタン(D2)が押されても、これらの操作は受け付けられない。すなわち、快適風ロックLED(LED_J)が消灯し、記憶されていた運転時間tx、tyがクリアされた状態でのみ、首振り運転操作が受け付けられる。
【0017】
図6に、本発明の扇風機100の制御回路のブロック図を示す。
コントローラは、羽根用モータの制御部、上下首振りモータの制御部、左右首振りモータの制御部および記憶部を有する。コントローラには、表示・操作部および電源供給部が接続されている。表示・操作部には、操作パネル50のボタン(A1〜J)が配置されている。
【0018】
本発明の扇風機100は、運転開始時には、羽根が上下方向正面かつ左右方向正面を向いた状態であることを前提としている。それゆえ、ユーザが羽根の向きを手動で移動し、羽根が上下方向正面かつ左右方向正面を向いていない状態で首振り運転が開始され、かつ、運転時間が1周期(4t0)を経過する前に首振り運転が停止された場合に、快適風ロックボタン(J)が押されても、次回の運転時に、希望した首振り角度には設定されない。羽根が上下方向正面かつ左右方向正面を向いていない状態で首振り運転が開始された場合は、運転時間が1周期(4t0)を経過した後に、首振り運転を停止し、快適風ロックボタン(J)を押す必要がある(特許文献1、2参照)。
【符号の説明】
【0019】
50 操作パネル
100 扇風機
【要約】
【課題】首振り角度を記憶し、次回以降の運転時に、記憶された首振り角度に自動で設定される扇風機およびその制御方法を提案する。
【解決手段】羽根と、羽根を回転させるための羽根用モータと、羽根を首振りさせるための首振りモータと、を有し、首振りモータが基準位置にて停止する扇風機の運転を制御する方法において、首振りモータが、基準位置を通過した時点から、首振り運転を停止する信号を認識するまでの運転時間(tx、ty)を記憶し、次回以降の運転時に、記憶した運転時間(tx、ty)に基づき、首振りモータを運転する。
【選択図】
図5