【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の各実施例では、少なくとも1つの重合性官能基を有するフェルラ酸誘導体として以下のモノマーA〜Gを使用した。
【0054】
<モノマーA:EF−GMA>
次の化学式で示される、フェルラ酸エチルとグリシジルメタクリレートとの反応物。
【0055】
【化1】
【0056】
<モノマーB:FA−2GMA>
次の化学式で示される、フェルラ酸とグリシジルメタクリレートとの反応物。
【0057】
【化2】
【0058】
<モノマーC:EF−GMA−Ac>
次の化学式で示される、フェルラ酸エチルとグリシジルメタクリレートとの反応物であって、重合性官能基を有するフェルラ酸由来の水酸基がアセチル化されたもの。
【0059】
【化3】
【0060】
<モノマーD:FA−2GMA−Ac>
次の化学式で示される、フェルラ酸とグリシジルメタクリレートとの反応物であって、重合性官能基を有するフェルラ酸由来の水酸基がアセチル化されたもの。
【0061】
【化4】
【0062】
<モノマーE:FA−2HBAGE>
次の化学式で示される、フェルラ酸と4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルとの反応物。
【0063】
【化5】
【0064】
<モノマーF:FA−2A400>
次の化学式で示される、フェルラ酸と3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートとの反応物。
【0065】
【化6】
【0066】
<モノマーG:EF−HBAGE>
次の化学式で示される、フェルラ酸エチルと4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルとの反応物。
【0067】
【化7】
【0068】
(粒子径の測定)
以下の実施例において、粒子径の測定は、高分子微粒子を濃度0.2重量%の中性洗剤水溶液中に分散させ、超音波処理を実施した後に、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製 SALD−3100)を用いて測定した。測定に用いる屈折率の値は、1.60(実数部)、0.00(虚数部)とした。
【0069】
(実施例1)
内容量100mlのガラス製スクリュー管に、架橋性モノマーとしての9.6gのジエチレングリコールジメタクリレート(以下「2G」と略す。)と、フェルラ酸誘導体としての1.6gのモノマーA(EF−GMA)と、100mLの酢酸エチルとを入れ、攪拌して内容物を均一に溶解させ、60℃で30分加温した。
【0070】
次に、重合開始剤としての1.01gの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル(以下、「V−601」と略す)を、上記ガラス製スクリュー管に投入した。その後、当該スクリュー管を密栓し、加熱オーブン内にて60℃で保温した。重合開始剤投入後、2時間加温を継続した。
【0071】
当該スクリュー管を加熱オーブンから取り出し、内容物を孔径1μmのメンブランフィルターで濾過し、得られた固体を減圧乾燥して、8.0gの高分子微粒子(白色固体)得た。得られた高分子微粒子の粒径は2.55±0.08μmでCV値は3.0%であった。
【0072】
また、微粒子を3.00mg採取して容器に入れ、昇温速度20℃/minで、−30℃から180℃まで示差走査熱量分析を実施した際、50℃までの領域で1mW/min以上の熱の出入りは観測されなかった。このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、1:9:である。
【0073】
(実施例2)
モノマーAの替わりに2.1gのモノマ−B(FA−2GMA)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、10.7gの高分子微粒子(白色固体)を得た。なお、V−601を添加してから内容物が乳白色になるまでの時間は60分であった。得られた高分子微粒子の粒径は、0.55±0.09μmでCV値は17%であった。また実施例1と同様に示差走査熱量分析を実施した結果50℃までの領域で1mW/min以上の熱の出入りは観測されなかった。このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、1:9である。
【0074】
[アセチル化フェルラ酸誘導体]
(実施例3)
2Gの量を1.0g、酢酸エチルの量を10mL、開始剤V−601の量を0.2gとし、モノマーAの替わりに0.42gのモノマーC(EF−GMA−Ac:モノマーAの水酸基がアセチル化されたもの)を使用した以外は、実施例1と同様にして、1.1gの高分子微粒子(白色固体)を得た。なお、V−601を添加してから内容物が乳白色になるまでの時間は18分に短縮された。得られた高分子微粒子の粒径は2.45±0.07μmで、CV値は3%であった。また実施例1と同様に示差走査熱量分析を実施した結果50℃までの領域で1mW/min以上の熱の出入りは観測されなかった。このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、2:8である。
【0075】
(実施例4)
2Gの量を0.5g、酢酸エチルの量を10mL、開始剤V−601の量を0.2gとし、モノマーAの替わりに0.29gのモノマーD(FA−2GMA−Ac:モノマーBの水酸基がアセチル化されたもの)を使用した以外は、実施例1と同様にして、0.59gの高分子微粒子(白色固体)を得た。なお、V−601を添加してから内容物が乳白色になるまで要した時間は16分に短縮された。得られた高分子微粒子の粒径は1.06±0.12μmで、CV値は11%であった。
【0076】
また、実施例1と同様に、示差走査熱量分析を実施した結果50℃までの領域で1mW/min以上の熱の出入りは観測されなかった。このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、2:8である。
【0077】
[他のフェルラ酸誘導体]
(実施例5)
2Gの添加量を10.1gとし、モノマーAの替わりに1.3gのモノマーF(FA−2A400)を使用した以外は、実施例1と同様にして、7.9gの高分子微粒子(白色固体)を得た。なお、V−601を添加してから内容物が乳白色になるまでの時間は85分であった。マイクロスコープでの観察で、球形の微粒子が得られていることを確認した。また、このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、1:19である。
【0078】
(実施例6)
2Gの添加量を10.1gとし、モノマーAの替わりに0.9gのモノマーG(EF−HBAGE)を使用した以外は、実施例1と同様にして、7.5gの高分子微粒子(白色固体)を得た。なお、V−601を添加してから内容物が乳白色になるまでの時間は60分であった。マイクロスコープでの観察で、球形の微粒子が得られていることを確認した。また、このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、1:19である。
【0079】
[スケールアップ]
(実施例7)
内容量3Lのステンレス製耐圧容器に、252.5gの2G、20.0gのモノマーA(EF−GMA)、および、2100gの酢酸エチルを入れ、攪拌して内容物を均一に溶解させ、60℃の温浴で30分加温した。
【0080】
次に、25.25gのV−601を125gの酢酸エチルに溶解させたものを、上記ステンレス製耐圧容器に投入した後、当該容器を密封し、60℃の温浴に浸した。当該耐圧容器を10分毎に開封し、内容物を確認したところ、40分後に内容物は乳白色となり、その時点からさらに60分加温を継続した。
【0081】
当該耐圧容器を温浴から取り出し、内容物を孔径1μmのメンブランフィルターで濾過、得られた固体を70℃のエアオーブンで1日乾燥し、185.7gの高分子微粒子(白色固体)得た。マイクロスコープでの観察で、球形の微粒子が得られているのを確認した。このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、1:19である。
【0082】
(実施例8)
モノマーAの替わりに26.3gのモノマーB(FA−2GMA)を使用した点と、V−601を添加してから内容物が乳白色になるまで70分要し、その時点から更に120分加温を継続した点以外は、実施例5と同様にして、204.3gの高分子微粒子(白色固体)を得た。マイクロスコープでの観察で、球形の微粒子が得られているのを確認した。このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、1:19である。
【0083】
(実施例9)
モノマーAの替わりに32.5gのモノマーE(FA−2HBAGE)を使用した点と、V−601を添加してから内容物が乳白色になるまで65分要し、その時点から更に120分加温した点以外は、実施例5と同様にして、211.7gの高分子微粒子(白色固体)を得た。得られた高分子微粒子の粒径は、2.98±0.09μmでCV値は2.9%であった。また、このときのフェルラ酸誘導体と架橋性モノマーとの共重合モル比は、1:19である。
【0084】
[紫外線吸収能力の測定]
モノマーA〜Eを使用した実施例1〜4および9で得られた高分子微粒子(白色固体)について、紫外線吸収能力の確認を行った。測定は、島津製作所(株)製 UV−2550で、積分球付装置 ISR−240 Aを用いて、反射モードで行った。それぞれの測定結果を
図1〜
図5に示す。実施例1〜4および9で得られたいずれの高分子微粒子も、フェルラ酸由来部分に起因する特定波長の紫外線吸収能を有しており、紫外線吸収性の微粒子として充分機能することが確認された。
【0085】
[SEM(走査型電子顕微鏡)観察]
モノマーA〜Eを使用した実施例1〜4および9で得られた白色固体について、SEM(走査型電子顕微鏡)による観察を行った。それぞれの白色固体についてSEMにより得られた画像を
図6〜
図10に示す。実施例1〜4および9で得られたいずれの白色固体においても、微粒子の形成が確認できた。また粒子の粒径も比較的そろっているものが多く、非常に均一性の高い粒子が得られていることが明らかとなった。なお、モノマーBおよびモノマーDを用いた際に、2G及びモノマーA、Cを用いた場合より若干微粒子の粒径が小さくなる傾向がみられた。
【0086】
[動摩擦力測定]
モノマーA、B、D、Eを使用した実施例1、2、4、9で得られた白色固体(高分子微粒子)について、化粧品等に使用した場合における肌触り感の指標として、動摩擦力の測定を行った(ただし、モノマーDを使用した場合については、実施例4と仕込み組成比は同じであるが、スケールアップした条件で合成したものである)。なお、比較のために、化粧品向けに市販されている酸化チタン微粒子(ぴのあ社製、商品名:酸化チタン)と、微粒子を塗布していない基材についても同様の測定を行った。
【0087】
具体的には、独自の試験方法に従って、基材(バイオスキン)上に微粒子を充分量(20cm
2あたり0.2g)塗布し、基材とは別の直径1.5cmの円形のバイオスキンを基材上に置き、その上に50gの錘を乗せた。円形のバイオススキンの端部を引っ張ることで、50gの錘を乗せた円形のバイオスキンを基材上で移動させて、動摩擦力の測定を行った。円形のバイスキンの基材に対する移動速度は、300mm/minとした。基材(バイオスキン)および円形のバイオススキンとしては、ビューラック社製のバイオスキン(化粧品評価用人工皮膚)を用いた。得られた動摩擦力の測定結果を、表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示されるように、微粒子を塗布していない基材(バイオスキン(ブランク))の動摩擦力は0.8〜1N程度であり、これに対して、基材上に微粒子を塗布することでいずれの場合も動摩擦力が小さくなり、滑らかさが向上していることがわかる。また、実施例1、2、4および9で得られた高分子微粒子のいずれの場合においても、比較例の化粧品向けの酸化チタン微粒子と比べて動摩擦力が小さくなっており、本発明の高分子微粒子が、より肌触り感が向上した化粧品用微粒子として有用であることがわかる。
【0090】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。