(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023938
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】レゾルバ構造
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
G01D5/20 110B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-275301(P2012-275301)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-119364(P2014-119364A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和之
【審査官】
平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−295763(JP,A)
【文献】
特開2009−168493(JP,A)
【文献】
特開2013−221904(JP,A)
【文献】
特開2013−223388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
G01B 7/00−7/34
H02K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度間隔で外方へ突出する複数の突出磁極(3)を有する輪状ステータ体(1)と、前記各突出磁極(3)に巻回されたステータ巻線(4)と、前記各突出磁極(3)の外側に配設され、かつ、回転自在な輪状ロータ体(20)と、前記輪状ロータ体(20)に設けられ弧状に曲折する複数の弧状開口(20A)と、前記輪状ロータ体(20)の内周壁(20B)に形成された1個もしくは複数の凹部(21)と、からなり、前記輪状ステータ体(1)外のモータ(11)からの磁束の前記輪状ロータ体(20)内への侵入を前記弧状開口(20A)により防止するようにしたレゾルバ構造において、
前記弧状開口(20A)の長手方向(A)に対する短手方向(B)に沿う幅(W)は、前記弧状開口(20A)の両端の第1、第2端部(20Aa,20Ab)の近傍位置までは変わらず、前記輪状ロータ体(20)の近傍位置に前記モータ(11)のモータコイル(12)が位置するように構成したことを特徴とするレゾルバ構造。
【請求項2】
前記弧状開口(20A)は、前記輪状ロータ体(20)の円周を90度毎に4分割してなる第1〜第4 90度領域(14〜17)内に各1個のみ設けられていることを特徴とする請求項1記載のレゾルバ構造。
【請求項3】
前記弧状開口(20A)は、前記輪状ロータ体(20)の円周を120度毎に3分割してなる第1〜第3 120度領域(30〜32)内に各1個のみ設けられていることを特徴とする請求項1記載のレゾルバ構造。
【請求項4】
前記弧状開口(20A)は、前記輪状ロータ体(20)の円周を180度毎に2分割してなる第1〜第2 180度領域(40〜41)内に各1個のみ設けられていることを特徴とする請求項1記載のレゾルバ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ構造に関し、特に、輪状ステータ体の各突出磁極の外側に回転自在に配設された輪状ロータ体に複数の弧状開口を設け、輪状ロータ体の外側からの漏れ磁束が輪状ロータ体の内部へ侵入することを防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたレゾルバ構造としては、例えば、特許文献1に開示された構成を
図5及び
図6として挙げることができる。
すなわち、
図5において符号1で示されるものは輪状ステータ体であり、この輪状ステータ体1の内周部1aには、内方へ向けて突出する複数の突出磁極3が所定の角度間隔で形成され、各突出磁極3にはステータ巻線4が巻回して設けられている。
【0003】
前記輪状ステータ体1の前記突出磁極3の外側位置には、複数の長孔からなるボルト固定用穴5が設けられており、前記輪状ステータ体1を、図示しないモータの一端、エンジンの回転体の一端等に対してボルトを用いて取付け、前記輪状ステータ体1の円周方向の位置決めを行う際には、前記ボルトに対してボルト固定用穴5の回動範囲内において回動させることにより、位置決めを行うように構成されていた。
また、文献名を開示していないが、
図7に示されるように前記ボルト固定用穴を有しない輪状ステータ体1も用いられていた。
【0004】
また、前述の従来構成は何れもインナロータ型の場合であるが、文献名を開示していない
図8及び
図9のアウタロータ型の従来構成も採用されている。
すなわち、
図8において、輪状ステータ体1の外周には所定の角度間隔で複数の突出磁極3が外側へ向けて設けられ、各突出磁極3にはステータ巻線4が巻回されている。
前記各突出磁極3の外側位置には、輪状ロータ体20が図示しない回転体に接続されて回転自在に配設されている。
前記輪状ロータ体20の内周壁20Bは真円ではなく、複数の曲折状の凹部21を有する円形状に形成されている。
【0005】
従って、前述の
図8のアウタロータ型のレゾルバ構造10Aにおいては、前記輪状ロータ体20の内周壁20Bに前記凹部21が複数形成されているため、前記輪状ロータ体20が回転すると、前記各突出磁極3と輪状ロータ体20の内周壁20Bとの間のギャップGが前記凹部21に対応する位置で最大となり、前記凹部21が形成されていない位置で最小となるように構成されている。
従って、前記輪状ロータ体20の回転に応じて前記ギャップGの変化による周知のギャップパーミアンスの変化により、
図8の構成の場合には、四個の凹部21による周知の4X(Xは軸倍角)のレゾルバ出力信号を得ることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,838,804B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のレゾルバ構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、
図5はインナロータ型のレゾルバ構造であるが、このレゾルバ構造を
図6の
ようにモータ11の近傍位置に配設した場合、モータ11のモータコイル12からの漏れ磁束13が輪状ステータ体1の外縁から突出磁極3に侵入し、前記レゾルバ出力信号を取り出す時の外乱の要因となり、検出精度の低下となっていた。
また、
図8及び
図9で示されるレゾルバ構造の場合も、輪状ロータ体20に孔等が何ら形成されていないため、
図9のように、輪状ロータ体20の近傍位置にモータ11を配設した場合、モータコイル12の漏れ磁束13は、輪状ロータ体20の外縁から内側に侵入し、各突出磁極3のステータ巻線4に外乱として作用し、検出精度の低下となることもあった。
そのため、レゾルバの取付位置とモータの取付位置の関係を、車輌の設計段階から考慮しなければならず、車輌設計の自由度が大きく阻害されることになっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるレゾルバ構造は、所定角度間隔で外方へ突出する複数の突出磁極を有する輪状ステータ体と、前記各突出磁極に巻回されたステータ巻線と、前記各突出磁極の外側に配設され、かつ、回転自在な輪状ロータ体と、前記輪状ロータ体に設けられ弧状に曲折する複数の弧状開口と、前記輪状ロータ体の内周壁に形成された1個もしくは複数の凹部と、からなり、前記輪状ステータ体外
のモータからの磁束の前記輪状ロータ体内への侵入を前記弧状開口により防止するようにした構成
において、前記弧状開口の長手方向に対する短手方向に沿う幅は、前記弧状開口の両端の第1、第2端部の近傍位置までは変わらず、前記輪状ロータ体の近傍位置に前記モータのモータコイルが位置するようにした構成であり、また、前記弧状開口は、前記輪状ロータ体の円周を90度毎に4分割してなる第1〜第4
90度領域内に各1個のみ設けられている構成であり、また、前記弧状開口は、前記輪状ロータ体の円周を120度毎に3分割してなる第1〜第3
120度領域内に各1個のみ設けられている構成であり、また、前記弧状開口は、前記輪状ロータ体の円周を180度毎に2分割してなる第1〜第2
180度領域内に各1個のみ設けられている構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるレゾルバ構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、所定角度間隔で外方へ突出する複数の突出磁極を有する輪状ステータ体と、前記各突出磁極に巻回されたステータ巻線と、前記各突出磁極の外側に配設され、かつ、回転自在な輪状ロータ体と、前記輪状ロータ体に設けられ弧状に曲折する複数の弧状開口と、前記輪状ロータ体の内周壁に形成された1個もしくは複数の凹部と、からなり、前記輪状ステータ体外
のモータからの磁束の前記輪状ロータ体内への侵入を前記弧状開口により防止するように構成したことにより、モータ等の漏れ磁束に近い位置にレゾルバを配置してもモータ等から受ける磁束を低減することができ、車輛等のレイアウト設計の自由度を広げることができる。
また、前記弧状開口は、前記輪状ロータ体の円周を90度毎に4分割してなる第1〜第4
90度領域内に各1個のみ設けられていることにより、4個の弧状開口の位置に合わせてモータ等の配列位置を自由に決めることができる。
また、前記弧状開口は、前記輪状ロータ体の円周を120度毎に3分割してなる第1〜第3
120度領域内に各1個のみ設けられていることにより、3個の弧状開口の位置に合わせてモータ等の配列位置を自由に決めることができる。
また、前記弧状開口は、前記輪状ロータ体の円周を180度毎に2分割してなる第1〜第2
180度領域内に各1個のみ設けられていることにより、ステータ体の円周のほぼ全てに弧状開口が形成されているため、レゾルバとモータ等とのレイアウト設計の自由度を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるレゾルバ構造を示す平面図である。
【
図2】
図1のレゾルバ構造とモータの漏れ磁束との関係を示す説明図である。
【
図5】従来のインナロータ型の輪状ステータ体を示す平面図である。
【
図6】
図5の輪状ステータ体とモータの漏れ磁束との関係を示す説明図である。
【
図7】
図5の他の従来例を示す輪状ステータ体の平面図である。
【
図8】従来のアウタロータ型のレゾルバ構造を示す平面図である。
【
図9】
図8のレゾルバ構造とモータの漏れ磁束との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、輪状ステータ体の各突出磁極の外側に回転自在に配設された輪状ロータ体に複数の弧状開口を設け、輪状ロータ体の外側からの漏れ磁束が輪状ロータ体の内部へ侵入することを防止するようにしたレゾルバ構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバ構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは全体形状が真円の輪状をなす輪状ステータ体であり、この輪状ステータ体1の外周部1bには、外側へ向けて半径方向に突出する複数の突出磁極3が所定の角度間隔で形成されている。
前記各突出磁極3には、周知の励磁巻線と出力巻線とからなるステータ巻線4が巻回されている。
【0013】
前記各突出磁極3の外側に配設され、かつ、回転自在に板状の輪状ロータ体20が設けられており、前記輪状ロータ体20には、弧状をなす4個の弧状開口20Aが形成されている。
前記各弧状開口20Aは、前記輪状ロータ体20の円周を90度毎に4分割してなる第1〜第4
90度領域14,15,16,17内に各1個のみ設けられている。
【0014】
前記輪状ロータ体20の内周壁20Bには4個の凹部21が所定の角度間隔、すなわち、90度間隔で形成されており、前記各凹部21は前記各弧状開口20A間の開口が形成されていない領域である非弧状開口部22に対応して形成されている。
【0015】
前記各凹部21は、前記各突出磁極3の外端3aとの間の第1ギャップG
1が前記凹部21以外の内周壁2と各突出磁極3の外端3aとの間の第2ギャップG
2よりも大であり、この第1ギャップG
1における輪状ロータ体20と突出磁極3とによる磁気的結合度は、前記第1ギャップG
1以外の前記内周壁20Bと前記突出磁極3とによる磁気的結合度よりも小である。
従って、前述の
図1のレゾルバ構造10Aにおいて、前記輪状ロータ体20が図示しない装置の回転部材に接続されて回転した場合、前述の4個の凹部21を用いた4X(Xは軸倍角)の周知のレゾルバ出力信号を前記各突出磁極3の各ステータ巻線4のうちの出力巻線(図示せず)を介して得ることができる。
【0016】
前述の
図1のように構成されたレゾルバ構造10Aを、例えば、自動車等のエンジンルーム内に装着し、このレゾルバ構造10Aの前記輪状ロータ体20の近傍位置にモータ11のモータコイル12が位置する場合、このモータコイル12が前記弧状開口20Aに対応する外側に配設されているため、
図2で示されるように、モータコイル12からの漏れ磁束13は前記弧状開口20Aの存在により、輪状ロータ体20内への侵入が防止され、外乱によるレゾルバ出力信号の振れを防止することができる。
尚、前記弧状開口20Aの長手方向に対する短手方向Bに沿う幅Wは、前記弧状開口20Aの両端の第1、第2端部20Aa,20Abの近傍位置までは変わらないように形成されている。
【0017】
図3のレゾルバ構造10Aは、
図1のレゾルバ構造10Aの他の形態を示すもので
図1では、前記弧状開口20Aが90度領域毎に形成されていたが、
図3では前記弧状開口20Aが第1〜第3
120度領域30,31,32毎に1個のみ形成されていることにより、前記弧状開口20Aの角度幅を90度から120度へ大幅に拡大することにより、レゾルバ構造10Aに対するモータ11の取付け設計の自由度を大幅に向上させることができる。
【0018】
図4のレゾルバ構造10Aは、
図1のレゾルバ構造10Aの他の形態を示すもので、
図1及び
図3では、前記弧状開口20Aが90度及び120度領域毎に形成されていたが、
図4では前記弧状開口20Aが第1、第2
180度領域40,41毎に1個のみ形成されていることにより、前記弧状開口20Aの角度幅が大幅に拡大し、レゾルバ構造10Aに対するモータ11の取付けの自由度を大幅に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるレゾルバ構造は、輪状ロータ体に形成された弧状開口により、外部からの漏れ磁束の輪状ロータ体の内部への侵入を防止することができ、レゾルバ構造に対するモータの配置構成の自由度を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 輪状ステータ体
1b 外周部
2 内周壁
3 突出磁極
4 ステータ巻線
10A レゾルバ構造
14〜17 第1〜第490度領域
20 輪状ロータ体
20A 弧状開口
21 凹部
22 非弧状開口部
30〜32 第1〜第3120度領域
40,41 第1、第2180度領域
G
1,G
2 第1、第2ギャップ