【実施例】
【0020】
図5に示す試験装置を用いて、摩耗粒子としてアルミナ粉末を添加したスラリーを、循環線速2m/sで、1000時間循環させて、セラミックフィルタの摩耗再現試験を行った。なお、層流範囲は、レイノルズ数を2310とすると、流速(m/s)=2310×動粘性係数(m
2/s)÷内径(m)で計算され、10%アルミナスラリーでは、内径3mmの場合には流速14m/s、内径4mmの場合には11m/sとなり、前記の循環線速2m/sは、レイノルズ数による層流範囲内にある。すなわち、この循環線速を守れば、セラミックフィルタの原液流入孔の入口部で発生する縮流の渦は、後段で整流化されていく。
【0021】
スラリーは、粒度20μmのアルミナ粒子を、水に対して10wt%添加して調整したものを使用し、1000時間の循環後、セラミックフィルタの断面観察により磨耗状況を確認した。内部の磨耗評価は、下記の手法によって行った。
(1)端面から、2mm単位でセラミックフィルタを研磨し、各位置における断面写真を撮影。
(2)拡大した写真から、穴の長辺と短辺を測定して平均値を算出し、30個の穴の平均値をその深さ断面の磨耗深さとする。
(3)磨耗量(mm
2)=循環前の断面積 − 1000時間の循環後の断面積
【0022】
図5に示す試験装置において、セラミックフィルタは、円筒状のケーシング10に収容されている。原液として使用するスラリーは原液タンク13からポンプ14で圧送され、ケーシングの下部からセラミックフィルタの原液流入孔内に流入し、ケーシングの上部のから排出される。この間に原液流入孔の内表面に形成されたろ過膜によってろ過が行われ、ろ過液は多孔質のセラミックフィルタの内部を通じて外周側へ流れ、ケーシングの側面に接続されたろ過液排出口から取り出される。なおケーシング10の上部のから排出された原液は再び原液タンク13へ返送され、クロスフローろ過が行われる。
【0023】
(試験A)
アルミナを原料としたφ30mm、φ3mmの原液流入孔を37個形成した長さ1mの基材(FS−15(日本ガイシ))の内周壁面には、0.5μm相当の孔径を有するろ過膜(膜厚200μm)を形成した。ろ過膜形成後のセラミックフィルタを、100mm長さに切断し、流動浸漬用ナイロン11(デュポン社)を用いて、耐摩耗機能層6を形成した。
【0024】
耐摩耗機能層6の形成は、前記のセラミックフィルタを乾燥炉にて250℃で30分間予熱した後、このセラミックフィルタの端面を、ナイロン11を充填した流動槽に10秒浸漬し、流動槽から取り出したセラミックフィルタを200℃の乾燥炉で15分保持することにより行った。流動槽への浸漬深さを制御することで耐摩耗機能層6の形成距離を制御することができる。
【0025】
本試験では、耐摩耗機能層6を形成しないもの(比較例1)の他、原液流入孔3の入口部から、1.5mm(比較例2)、3mm(
比較例11)、6mm(実施例2)、9mm(実施例3)、15mm(実施例4)の範囲に、各々、耐摩耗機能層6を形成した、計6種のセラミックフィルタを用意して、上記の摩耗再現試験を行った。
【0026】
図6には、摩耗再現試験の結果を図示している。
図6に示すように、原液流入孔の入口部から、原液流入孔の口径(φ3mm)の
2倍以上の長さの範囲に渡って、原液流入孔の内表面に耐摩耗機能層を備えた実施例
2〜4では、何れも、比較例1、2と比べて、磨耗量が顕著に抑制された。特に、原液流入孔の入口部から、原液流入孔の口径(φ3mm)の3倍以上の範囲に渡って、原液流入孔の内表面に耐摩耗機能層を備えた実施例3、4では、摩耗が完全に抑制された。
【0027】
(試験B)
アルミナを原料としたφ30mm、φ4mmの原液流入孔を19個形成した長さ1mの基材(FS−15C(日本ガイシ))の内周壁面には、1.0μm相当の孔径を有するろ過膜(膜厚150μm)を形成した。ろ過膜形成後のセラミックフィルタを、100mm長さに切断し、PTAポリテトラフルオロエチレンを用いて、耐摩耗機能層6を形成した。
【0028】
耐摩耗機能層6の形成は、PTAポリテトラフルオロエチレン粉末をイソプロピルアルコールに対して5%添加して混合液を作成した後、この混合液に前記のセラミックフィルタの端面を浸漬し、浸漬後のセラミックフィルタを350℃の乾燥炉で30分保持することにより行った。混合液への浸漬深さを制御することで耐摩耗機能層6の形成距離を制御することができる。
【0029】
本試験では、耐摩耗機能層6を形成しないもの(比較例3)の他、原液流入孔3の入口部から、2mm(比較例4)、4mm(
比較例12)、8mm(実施例6)の範囲に、各々、耐摩耗機能層6を形成した、計4種のセラミックフィルタを用意して、上記の摩耗再現試験を行った。
【0030】
図7には、摩耗再現試験の結果を図示している。
図7に示すように、原液流入孔の入口部から、原液流入孔の口径(φ4mm)の
2倍以上の長さの範囲に渡って、原液流入孔の内表面に耐摩耗機能層を備えた実施例6では、何れも、比較例3、4、
12と比べて、磨耗量が顕著に抑制された。特に、原液流入孔の入口部から、原液流入孔の口径(φ4mm)の2倍の範囲に渡って、原液流入孔の内表面に耐摩耗機能層を備えた実施例6では、摩耗が完全に抑制された。
【0031】
(試験C)
アルミナを原料としたφ30mm、φ3mmの原液流入孔を37個形成した長さ1mの基材(FS−15(日本ガイシ))の内周壁面には、0.5μm相当の孔径を有するろ過膜(膜厚200μm)を形成した。ろ過膜形成後のセラミックフィルタを、100mm長さに切断し、ガラスフリットSG−3(日本フリット製)を用いて、耐摩耗機能層6を形成した。
【0032】
耐摩耗機能層6の形成は、ガラスフリット30に対し水100を加えボールミルにて粉砕し平均粒度1μmのガラススラリーを作成し、このガラススラリーに、前記のセラミックフィルタの端面を浸漬し、浸漬後のセラミックフィルタを80℃で5時間乾燥後 900℃で2時間焼成することにより行った。ガラススラリーへの浸漬深さを制御することで耐摩耗機能層6の形成距離を制御することができる。
【0033】
本試験では、耐摩耗機能層6を形成しないもの(比較例5)の他、原液流入孔3の入口部から、1.5mm(比較例6)、3mm(
比較例13)、6mm(実施例8)、9mm(実施例9)、15mm(実施例10)の範囲に、各々、耐摩耗機能層6を形成した、計6種のセラミックフィルタを用意して、上記の摩耗再現試験を行った。
【0034】
図8には、摩耗再現試験の結果を図示している。
図8に示すように、原液流入孔の入口部から、原液流入孔の口径(φ3mm)の
2倍以上の長さの範囲に渡って、原液流入孔の内表面に耐摩耗機能層を備えた実施例
8〜10では、何れも、比較例5、6、
13と比べて、磨耗量が顕著に抑制された。特に、原液流入孔の入口部から、原液流入孔の口径(φ3mm)の3倍以上の範囲に渡って、原液流入孔の内表面に耐摩耗機能層を備えた実施例9、10では、摩耗が完全に抑制された。