(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
上記のようなインク供給装置の一例として、入力信号に基づいてインクを噴射して記録用紙などの被記録媒体に画像記録を行うインクジェット方式の画像記録装置が知られている。インクジェット方式の画像記録装置は、記録ヘッドに供給されたインクをノズルから噴射することにより、被記録媒体上に画像を記録する。
【0003】
記録ヘッドは、例えば、キャリッジに搭載されて被記録媒体に対して一定方向へ往復動される。キャリッジは、モータなどの駆動源から駆動伝達されて、ガイドシャフトやガイドレールなどに案内されて一定方向に往復動する。このキャリッジの往復動に際して、記録ヘッドから選択的にインク滴が被記録媒体へ吐出され、被記録媒体に着弾したインク滴により画像記録が行われる。
【0004】
記録ヘッドから噴射されるインクは、インクカートリッジなどに設けられ且つインクを貯留するためのインクタンクから、キャリッジに設けられた流路部材を介してキャリッジに設けられた記録ヘッドに供給され、記録ヘッドから噴射される。なお、流路部材は、インクの流路を構成する部材であり、例えば樹脂成形されている。
【0005】
インクタンクから記録ヘッドへインクを供給する方式として、チューブを用いる方式がある。チューブは、インクタンクから記録ヘッド、詳細には流路部材へインクを流通させるための流路であり、キャリッジの往復動に追従する可撓性を有する。チューブは、キャリッジがインクタンクから最も離れた位置であるときであっても、キャリッジとインクタンクとを繋ぐことが可能な長さである。そのため、チューブが移動することによって、キャリッジがインクタンクに近づく際に、チューブは湾曲される。
【0006】
インクジェット方式の画像記録装置がカラー画像を被記録媒体上に記録可能な機能を有する場合、インクタンク及びチューブは、それぞれ複数設けられる。具体的には、インクタンク及びチューブは、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インク毎に設けられる。
【0007】
複数のチューブは、並べられた状態で配管される。この際、複数のチューブが横方向(例えば水平方向)に配列されると、チューブが湾曲される際に、各チューブに付与される負荷が互いに異なる大きさとなる。これにより、チューブと繋がれているキャリッジががたつくおそれがある。また、キャリッジが移動する際に、チューブ同士が擦れることなどによって、異音が生じるおそれある。
【0008】
一方、複数のチューブが縦方向(例えば重力方向)に配列されると、チューブと流路部材との連結部分からインクが漏れた場合、上側のチューブの連結部分から漏れたインクが、下側のチューブの連結部分に付着してしまうおそれがある。この状態で、下側のチューブとサブタンクとの連結がメンテナンスなどのために解除され、その後、再び連結された場合、下側のチューブに上側のチューブのインクが入り込んでしまうおそれがある。
【0009】
また、複数のチューブが縦方向に配列されることは、以下の理由からも好ましくない。インクジェット方式の画像記録装置において、流路部材は、キャリッジの往復動による動圧を吸収するためのダンパ部を備えている。ダンパ部は、動圧を吸収するために、流路部材の体積を増減可能に構成されている。例えば、ダンパ部は、流路部材の少なくとも一面を構成するフィルムである。このようなダンパ部が流路部材に形成されている場合において、複数のチューブが横方向に配列されると、記録ヘッドに形成された複数のノズルも横方向に配列されているために、上記フィルムを各色インクで共用することができる。つまり、上記フィルムは、流路部材に形成された各色のインク流路に対して一面で済む。しかしながら、複数のチューブが縦方向に配列されると、流路部材の内部で各色のインクの流路が縦方向から横方向へ変換される必要がある。その結果、流路部材の内部における各色のインクの流路の構成が複雑になり、上記フィルムは二面以上、例えば各色について一枚必要となってしまう。
【0010】
以上説明した問題を解決するための対策として、例えば、特許文献1の
図7に記載されているように、複数のチューブを、チューブの湾曲部分において縦向きに配列し、キャリッジにおいて縦方向から横方向に配列変換してキャリッジに設けられたチューブとの接続口と接続することが考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0027】
[複合機10の概略構成]
図1及び
図2に示されるように、複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12を一体的に備え、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部11は本発明にかかるインク供給装置の一例である。
【0028】
複合機10には、下側にプリンタ部11が配置され、上側にスキャナ部12が配置されている。プリンタ部11は、主にコンピュータなどの外部情報機器と接続されて、外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙(本発明にかかる被記録媒体の一例)に画像や文字を記録する。スキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナである。
【0029】
複合機10は、高さ方向102の寸法より幅方向101及び奥行き方向103の寸法が大きい幅広薄型の概ね直方体の外形である。プリンタ部11は、正面に開口13が設けられている。開口13の内部には、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が設けられている。給紙トレイ20に収容された記録用紙が、プリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、画像記録後の記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
【0030】
複合機10の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14において、プリンタ部11及びスキャナ部12に所望の動作をさせるための所定の入力が行われる。操作パネル14は、入力を行うための複数のボタンや、複合機10の状態やエラー表示などを行うためのディプレイを有する。なお、複合機10に外部情報機器が接続されていると、外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどの通信ソフトを通じて送信される指示に基づいても、複合機10は動作する。
【0031】
[プリンタ部11]
図2に示されるように、複合機10の最も底側に給紙トレイ20が設けられている。排紙トレイ21は、給紙トレイ20の上側に配置されている。給紙トレイ20と排紙トレイ21とは、用紙搬送路23によって記録用紙が搬送可能に連続されている。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24へ搬送され、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21へ排出される。
【0032】
給紙トレイ20は上側が開口された容器形状であり、その内部空間に、記録用紙が積層状態で収容される。給紙トレイ20には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。
【0033】
排紙トレイ21は、トレイ形状であり、その上面に記録用紙が排出される。排紙トレイ21は、奥行き方向103において給紙トレイ20より装置正面側に配置されている。したがって、装置奥部側においては、給紙トレイ20の上側に排紙トレイ21は存在しない。
【0034】
給紙トレイ20の装置奥部側には、給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、不図示のモータから駆動伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に回転可能に支持されている。給紙アーム26は、給紙ローラ25側を回動先端側として回動可能であり、この回動により、給紙ローラ25が給紙トレイ20に接離する方向へ上下動する。給紙アーム26は、給紙ローラ25の重量又はバネなどに付勢されて下側へ回動されており、給紙トレイ20に収容された記録用紙の量に応じて上側へ移動する。これにより、給紙ローラ25が給紙トレイ20における最上位置の記録用紙に接触する。その状態で給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が用紙搬送路23へ送り出される。
【0035】
用紙搬送路23は、給紙トレイ20の装置奥部側から上方へ延び、続いて装置正面側へ湾曲して、複合機10の背面側から正面側へ奥行き方向103に沿って延び、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。用紙搬送路23は、画像記録ユニット24などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、装置奥部側において用紙搬送路23が湾曲している部分は、装置フレームなどに固定された外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とによって構成されている。
【0036】
画像記録ユニット24は、主として、キャリッジ38に搭載された記録ヘッド39とプラテン42とが所定間隔で対向配置されて構成されている。画像記録ユニット24の詳細な構成は後述される。
【0037】
画像記録ユニット24より搬送方向の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラが設けられている。なお、
図2においては、ピンチローラが他の部材に隠れて現れていないが、ピンチローラは搬送ローラ60の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ60は、不図示のモータから駆動伝達されて回転する。搬送ローラ60及びピンチローラは、用紙搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。
【0038】
画像記録ユニット24より搬送方向の下流側には、一対の排紙ローラ62及び拍車が設けられている。なお、
図2においては、拍車が他の部材に隠れて現れていないが、拍車は排紙ローラ62の上側に圧接状態で配置されている。排紙ローラ62は、不図示のモータから駆動伝達されて回転する。排紙ローラ62及び拍車は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。
【0039】
[画像記録ユニット24]
図2に示されるように、キャリッジ38は、インクジェット方式の記録ヘッド39を搭載する。
図3及び
図4に示されるように、記録ヘッド39には、複合機10内において記録ヘッド39と独立して配置されたインクカートリッジ32に設けられたインクタンクからインクチューブ41を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。なお、
図3及び
図4には、インクカートリッジ32及びインクカートリッジ32が装着されるカートリッジ装着部33が、一点鎖線で模式的に示されている。キャリッジ38が往復動される間に、記録ヘッド39のノズルから各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。インクカートリッジ32が本発明における貯留部に相当する。また、インクチューブ41が本発明におけるチューブに相当する。
【0040】
図3及び
図4に示されるように、用紙搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向(
図3及び
図4の上側から下側の向き)に所定距離が隔てられて、一対のガイドレール43,44が記録用紙の搬送方向と交差する方向(
図3及び
図4の左右方向、幅方向101)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部11の筐体内に設けられて、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。ガイドレール43,44を跨ぐようにしてキャリッジ38が載置され、キャリッジ38がガイドレール43,44の延出方向(
図3における左右方向、幅方向101)にスライド可能である。幅方向101が本発明における第1方向に相当する。
【0041】
ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持する。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向(
図3における上側から下側へ向かう方向、奥行き方向103)に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と交差(本実施形態では直交)する方向に摺動可能になる。つまり、キャリッジ38は、ガイドレール43,44上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と交差する方向へ往復動する。
【0042】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が設けられている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向101の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリと従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト49が張架されてなる。なお、
図3及び
図4においては、駆動プーリがキャリッジ38の下側に隠れて現れていないが、駆動プーリは用紙搬送路23の幅方向101の右端付近に配置されている。駆動プーリの軸には不図示のモータから駆動力が入力される。駆動プーリの回転により、タイミングベルト49が周運動する。
【0043】
図3及び
図4には現れていないが、キャリッジ38は、その底面側においてタイミングベルト49と連結されている。タイミングベルト49が周運動すると、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復動する。キャリッジ38に搭載された記録ヘッド39も、キャリッジ38と共に用紙搬送路23の幅方向101へ往復動する。
【0044】
図2に示されるように、用紙搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。なお、
図3及び
図4においては、プラテン42は省略されているため、プラテン42を下側から支持するフレーム40が現れている。プラテン42は、キャリッジ38が往復動する範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、プリンタ部11において使用可能な記録用紙の最大幅より十分に幅広である。プラテン42の上面に支持された記録用紙は、記録ヘッド39との距離が一定に保持される。この記録用紙に、記録ヘッド39から吐出されたインク滴が着弾する。
【0045】
なお、記録用紙において画像が記録される面は、プラテン42に支持された状態において、幅方向101及び奥行き方向103に沿って拡がっている。つまり、幅方向101へ往復動するキャリッジ38は、記録用紙の記録面に沿って移動していることになる。
【0046】
[インクチューブ41]
図3及び
図4に示されるように、各色インクを収容したインクカートリッジ32は、プリンタ部11のカートリッジ装着部33に装着されている。
【0047】
カートリッジ装着部33からキャリッジ38へは、各色インクに対応した4本のインクチューブ41が引き回されている。キャリッジ38へ引き回されたインクチューブ41は、キャリッジ38に搭載された記録ヘッド39へ各色インクを供給する。つまり、インクチューブ41においては、インクカートリッジ32から記録ヘッド39へ供給されるインクが流通される。
【0048】
図3に示されるように、インクチューブ41は、一端側がカートリッジ装着部33に接続されている。カートリッジ装着部33から幅方向101に沿って延出されたインクチューブ41は、装置前側に向けて湾曲され、装置前側においてクリップ36
(本発明にかかる第2チューブ保持部の一例)に固定されている。インクチューブ41は、クリップ36に固定された部分からキャリッジ38まで装置後側に向けて湾曲されている。詳細には、インクチューブ41は、装置後側に向けて平面視でUターンするように湾曲される。湾曲されたインクチューブ41は、幅方向101に沿って延びて、キャリッジ38に接続される。詳細には、インクチューブ41は、他端側を後述する接続部59に接続される。また、インクチューブ41は、可撓性を有する。よって、インクチューブ41は、クリップ36に固定された部分とキャリッジ38との間において、キャリッジ38の往復動に追従して撓み、姿勢変化する。
【0049】
4本のインクチューブ41は、カートリッジ装着部33からキャリッジ38の手前までにおいて、高さ方向102に沿って並べられた状態で束ねられている。4本のインクチューブ41は、キャリッジ38の内部において、高さ方向102に沿って並べられた状態から水平方向に沿って並べられた状態へ90度捩られる。捩られた4本のインクチューブ41は、接続部59に接続される。4本のインクチューブ41は、後述するチューブ保持部70において捩った状態を保持される。
【0050】
本実施形態において、4本のインクチューブ41は同形状である。詳細には、4本のインクチューブ41の断面は円形であり、各インクチューブ41の内径及び外径は同一である。もちろん、4本のインクチューブ41が同形状ではない実施形態を構成し得る。なお、各インクチューブ41の長さは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、本実施形態ではインクチューブ41は4本であるが、色数に対応して例えば6本のインクチューブ41を引き回すようにしてもよい。
【0051】
[キャリッジ38]
キャリッジ38は、キャリッジ本体30(
図5及び
図6参照)と、カバー31(
図3参照)とを有する。キャリッジ本体30は、記録ヘッド39(
図2参照)、流路部材50(
図4及び
図7参照)、ジョイント51(
図6及び
図8参照)、ヘッド制御基板52(
図4参照)、及びチューブ保持部70(
本発明にかかる第1チューブ保持部の一例、図5、
図6、及び
図8参照)を支持する。
【0052】
キャリッジ本体30は、上側が開口された略直方体形状をなしている。キャリッジ本体30の開口を覆うようにカバー31が組み付けられている。キャリッジ本体30の内部空間に、記録ヘッド39、流路部材50、ジョイント51、ヘッド制御基板52、及びチューブ保持部70が収容される。なお、以下の説明において、単に「上側」又は「下側」と称される場合は、重力が加わる向きを下向きとして表現されている。
【0053】
キャリッジ本体30の底部には、記録ヘッド39が配置されている。記録ヘッド39の下面であるノズル面は、キャリッジ本体30の下側に露出されている。これにより、ノズルからプラテン42に向けて、インク滴が吐出可能である。
【0054】
[流路部材50]
キャリッジ本体30において、記録ヘッド39の上側には流路部材50が配置されている。流路部材50は、主として流路を構成する流路部55(
図7参照)と、インクを貯留するタンク部56(
図7参照)と、インクチューブ41と接続されるジョイント51(
図6参照)とに大別される。
【0055】
流路部55は、薄平な板形状をなしている。流路部55において、各色のインクが導入される4つの導入口57が一列に並んで形成されている。各導入口57は、流路部55において上側に開口されている。また、各導入口57は、第1配列方向104に沿って並べられている。
【0056】
ここで、第1配列方向104は、
図6に示されるように、幅方向101及び奥行き方向103に対して斜めの向きである。つまり、本実施形態において、第1配列方向104は、幅方向101と交差している。また、第1配列方向104は、幅方向101及び奥行き方向103において拡がる面、つまり記録用紙の記録面と平行な仮想面105に沿った方向である。なお、本実施形態において、第1配列方向104と直交する後述の延出方向106の幅方向101に対する角度は、25度である。
【0057】
なお、第1配列方向104は、仮想面105に沿った方向であるならば、
図6に示された方向でなくてもよい。例えば、延出方向106の幅方向101に対する角度は、
図6とは異なる角度であってもよい。また、第1配列方向104は、幅方向101と交差していなくてもよい。つまり、第1配列方向104は、幅方向101と平行であってもよく、この場合、延出方向106の幅方向101に対する角度は、90度である。第1配列方向104は、本発明に係る第2方向に相当する。
【0058】
図7に破線で示されるように、流路部55には、各導入口57に対応して4本の流路58が設けられている。各流路58は、各導入口57から幅方向101へ延出され、直角に曲折されて奥行き方向103へ延出されてタンク部56へ向かっている。
【0059】
流路部材50において、流路部55の一方の面(
図7では上面)は開口されており、当該開口には、フィルムが溶着されている。流路部55の上面がシート状のフィルムであることにより、流路58の体積が増減可能となる。これにより、流路部材50は、キャリッジ38の往復動による動圧を吸収するダンパとして機能する。
【0060】
タンク部56は、4本の流路58に対応して4つの部屋に区切られている。各部屋には各色のインクが独立して貯留可能である。各部屋には各流路58からインクが流入可能である。また、各図には現れていないが、タンク部56の各部屋は記録ヘッド39と各色インクを流通可能に連結されており、タンク部56の各部屋から流出されたインクは記録ヘッド39へ流入する。以上より、流路部材50は、導入口57と記録ヘッド39との間においてインクの流路を形成する。
【0061】
流路部材50は、キャリッジ本体30に対して、流路部55とタンク部56とが奥行き方向103へ並ぶように組み付けられる。流路部55は、装置正面側となるガイドレール44側に配置され、タンク部56は、装置背面側となるガイドレール43側に配置される。
【0062】
流路部55の上側にはジョイント51(
図6参照)が配置されている。各図には現れていないが、ジョイント51の下面には、流路部材50の各導入口57と接続可能な4つの開口が形成されている。ジョイント51は、4つの開口が一列に並べられた方向が長尺な部材である。ジョイント51は、長尺な方向を第1配列方向104に沿わせた状態で、流路部材50に組み付けられる。
図7に示されるように、流路部材50には、上側へ突出する2本のピン65,66が設けられている。このピン65,66がジョイント51に挿通されることによって、流路部材50に対してジョイント51が位置決めされる。
【0063】
図6に示されるように、ジョイント51の上面側には、各インクチューブ41と接続される接続部59が設けられている。接続部59は、本発明に係る接続口に相当する。
図8に示されるように、接続部59は、4本のインクチューブ41に対応して4つが一列に並んで設けられている。接続部59は、導入口57と同様、第1配列方向104に沿って並べられている。各接続部59は、インクチューブ41の内部空間へ挿入可能な円管形状をなしている。各接続部59は、その円管形状の軸線方向が延出方向106に沿うように配置されている。ここで、延出方向106は、第1配列方向104と直交し且つ仮想面105に沿った方向である。延出方向106は、本発明に係る第4方向に相当する。
【0064】
各接続部59に各インクチューブ41がそれぞれ接続される。これにより、インクチューブ41から流路部材55を通じて記録ヘッド39へインクが流通可能となっている。
【0065】
[ヘッド制御基板52]
キャリッジ本体30において、流路部材50のタンク部56の上側にはヘッド制御基板52(
図4参照)が配置されている。ヘッド制御基板52は、記録ヘッド39の動作を制御する基板であり、記録ヘッド39と電気的に接続されている。ヘッド制御基板52は、プリント基板に各種電子素子が組み付けられたものであるが、ヘッド制御基板52の回路構成などの説明は、ここでは省略される。
【0066】
ヘッド制御基板52は、フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)53(
図4参照)によって複合機10の制御基板(不図示)と電気的に接続されている。制御基板は、複合機10の動作を制御するものである。制御基板から出力された電気信号に基づいて、ヘッド制御基板52が記録ヘッド39の動作を制御すべく駆動信号などの電気信号を出力する。
【0067】
[チューブ保持部70]
図5、
図6、及び
図8に示されるように、キャリッジ本体30において、流路部材50の流路部55の上側であって、ジョイント51に隣接する位置にはチューブ保持部70が配置されている。チューブ保持部70は、後述する第1保持部71が延出方向106において接続部59と対向するような位置に配置されている。
【0068】
チューブ保持部70は、平面視で概ね三角形の形状に各種突起74(
図6参照)などを有した形状をなしている。
図6に示されるように、チューブ保持部70は、第1保持部71と第2保持部72とを備えている。
図8に示されるように、第1保持部71は、平面視において、前述の三角形の頂点109に近い位置に形成されている。第2保持部72は、前述の三角形において、頂点109の対辺110に近い位置に形成されている。
【0069】
上述したように、各接続部59は、その円管形状の軸線方向が延出方向106に沿うように配置されている。よって、各接続部59に接続された各インクチューブ41は、延出方向106に延びた状態となる。ここで、第1保持部71は、延出方向106において接続部59と対向している。よって、第1保持部71は、延出方向106に延びた複数のインクチューブ41を受けて保持する。
【0070】
図6及び
図8に示されるように、第1保持部71は、複数の接続部59に接続された4本のインクチューブ41を、第1配列方向104に並べて個別に保持する。本実施形態では、第1保持部71は、第1配列方向104に並べて配置された4つの切り欠き75
(本発明にかかる凹部の一例)を備えている。当該切り欠き75は、入口部がインクチューブ41の外径よりも若干小さく、奥部がインクチューブ41の外径よりも若干大きく構成されている。これにより、入口部から切り欠き75へ押し込まれた各インクチューブ41は、奥部において保持される。また、切り欠き75は、延出方向106に延びている。これにより、第1保持部71に保持された各インクチューブ41は、延出方向106に沿って延びた状態となる。
【0071】
図6及び
図8に示されるように、第2保持部72は、第1保持部71から延出方向106に沿って延びた複数のインクチューブ41を、第2配列方向107に並べて一体に束ねて保持する。ここで、第2配列方向107は、
図6に示されるように、仮想面105と直交する方向、つまり高さ方向102と同じ方向である。第2配列方向107は、本発明に係る第3方向に相当する。なお、本実施形態では、第2配列方向107は仮想面105と直交しているが、第2配列方向107は仮想面105と交差してさえいれば仮想面105と直交していなくてもよい。この場合、第2配列方向107は、高さ方向102と異なる方向となる。
【0072】
図6及び
図8に示されるように、本実施形態では、第2保持部72は、2枚の板状部材で構成されている。2枚の板状部材は、第1配列方向104において相互に対向している。また、2枚の板状部材は、第1配列方向104及び第2配列方向107に延びている。また、2枚の板状部材の第2配列方向107の長さは、4本のインクチューブ41を第2配列方向107に並べて束ねた場合における4本のインクチューブ41の第2配列方向107の長さよりも若干長い。また、2枚の板状部材の第2配列方向107の両端部には突起73が設けられている。2枚の板状部材の間の間隔は、突起73
(本発明にかかる突部の一例)が設けられている部分においてインクチューブ41の外径よりも若干狭く、突起73が設けられていない部分においてインクチューブ41の外径よりも若干広く構成されている。
【0073】
上記により、突起73が設けられている部分を介して、2枚の板状部材の間に押し込まれた各インクチューブ41は、第1保持部71と第2保持部72との間で捩られることで発生する復元力が2枚の板状部材の間において受けられることで、第2配列方向107に並べられた状態で保持される。また、2枚の板状部材は、第1配列方向104にも延びているため、第2保持部72に保持された各インクチューブ41は、延出方向106に沿って延びた状態となる。各インクチューブ41は、一番上が最も第1配列方向104における奥側に接続されたインクチューブ41であって、奥から手間に向かって順に第2配列方向107の下方向に配置される。
【0074】
一方、上述したように、カートリッジ装着部33からクリップ36で止められた部分を経て湾曲されたインクチューブ41は、幅方向101に沿って延びて、キャリッジ38に接続される。つまり、幅方向101に沿って延びてきたインクチューブ41は、チューブ保持部70の第2保持部72に保持されることによって、延出方向106に方向転換される。つまり、インクチューブ41は、幅方向101に対して斜め向きにキャリッジ38内部に挿入される。
【0075】
以上より、チューブ保持部70は、複数の接続部59から延出方向106に延出された複数のインクチューブ41を受けて、当該インクチューブ41を幅方向101に沿って延出するものである。
【0076】
また、
図8に示されるように、本実施形態では、第2保持部72の第1配列方向104における位置は、複数の接続部59の中央部108と同位置である。つまり、チューブ保持部70の第2保持部72は、第1配列方向104において、複数の接続部59の中央部108と同位置で、インクチューブ41を第2配列方向107に並べて保持する。
【0077】
さらにいえば、チューブ保持部70の第1保持部71と第2保持部72とは、
図8のように平面視において平行な方向に延びていることが好ましい。なお、本実施形態では、複数の接続部59の中央部と複数の第1保持部71と第2保持部72の軸線方向が重なって一致しているが、本実施形態のような位置関係でなくてもよい。すなわち、第2保持部72の軸線方向が複数の第1保持部71のいずれかの軸線方向と一致するように対向してもよい。このとき、第2保持部72は、第1配列方向104における両端の第1保持部71と対向する位置より内側に配置されることが好ましい。また、第1保持部71と第2保持部72の軸線方向が必ずしも平行関係でなくてもよい。
【0078】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、インクチューブ41は、チューブ保持部70において、第2配列方向107から第1配列方向104に捩られる。しかし、捩られるインクチューブ41は、第1保持部71及び第2保持部72において保持される。その結果、インクチューブ41の捩れによってキャリッジ38に作用する負荷を軽減することができる。特に、インクチューブ41を捩ることで発生する応力を、第1保持部71で受けることができるので、接続部59にかかる応力を低減することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、複数のインクチューブ41は、幅方向101に対して斜め向きである延出方向106にキャリッジ38から引き出される。これにより、
図9(B)に示されるように、キャリッジ38がインクカートリッジ32からの幅方向101における距離が長くなる位置に移動された場合において、複数のインクチューブ41の延出方向106に沿って延びた部分が当該複数のインクチューブ41の湾曲部分に含まれるようになる。その結果、複数のインクチューブ41の湾曲半径R2が大きくなる。一方、複数のインクチューブ41が幅方向101にキャリッジ38から引き出されていた従来の構成では、
図9(A)に示されるように、複数のインクチューブ41の湾曲半径R1は、本構成における湾曲半径R2よりも小さくなる。そして、本構成のように、複数のインクチューブ41の湾曲半径が大きくなると、複数のインクチューブ41の湾曲によって生じてキャリッジ38にかかる負荷を小さくすることができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、第2配列方向107に並べられた複数のインクチューブ41が第1配列方向104に捩られる場合に、当該複数のインクチューブ41のうちの第2配列方向107の両端に配管された2本のインクチューブ41において生じる負荷を概ね等しくすることができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、複数のインクチューブ41が第1配列方向104において複数の接続部59の中央部108と同位置で第2配列方向107から第1配列方向104に捩られている。これにより、中央部108の第2配列方向107及び第1配列方向104の両側においてインクチューブ41の捩れによって生じる負荷を均等にすることができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、第2配列方向107と仮想面105とが直交している。この場合、複数のインクチューブ41が第2配列方向107から第1配列方向104に捩られる場合に生じる負荷を、第2配列方向107と仮想面105とが直交していない場合に比べて、小さくすることができる。