【実施例1】
【0015】
図1(a)は、実施例1に係る生体情報処理装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図1(b)は、後述する生体センサ105の模式図である。
図1(a)を参照して、生体情報処理装置100は、CPU101、RAM102、記憶装置103、表示装置104、生体センサ105、通信部106、識別情報取得部107などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。また、生体情報処理装置100は、ネットワークを介して認証サーバ200およびデータベースサーバ300に接続されている。
【0016】
CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。
【0017】
記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。本実施例に係る生体情報処理プログラムは、記憶装置103に記憶されている。表示装置104は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等であり、生体情報処理の結果などを表示する。
【0018】
生体センサ105は、ユーザの生体情報を検出するセンサであり、少なくとも3つの異なるインスタンスを検出対象とし、同一または異なるモダリティを取得する。本実施例においては、生体センサ105は、複数の指の指紋画像を指先情報として取得するとともに、手のひら画像を手のひら情報として取得する。すなわち、生体センサ105は、複数の指および手のひらという異なるインスタンスを対象とし、指紋および静脈という異なるモダリティを取得する。
【0019】
図1(b)を参照して、生体センサ105は、指先情報取得部108および手のひら情報取得部109を備える。指先情報取得部108は、光学式センサ、静電容量センサなどであり、2本以上の指の指紋画像を取得する。また、指先情報取得部108として、接触型と非接触型のどちらも使用可能である。後述する位置関係の正規化の際に位置ずれが生じないようにするために、隣接した指の組み合わせを用いることが好ましい。そこで、本実施例においては、指先情報取得部108は、人差し指、中指、および薬指の指紋画像を取得する。
【0020】
手のひら情報取得部109は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどであり、手のひら画像を取得する。本実施例においては、手のひら情報取得部109は、指の方向が判定可能な部位を含んだ手のひら画像を取得する。手のひら画像は、例えば、静脈画像、掌形画像、掌紋画像などである。手のひら情報取得部109は、近赤外線を利用することによって、手のひら画像に静脈画像を含めることができる。
【0021】
なお、指先情報取得部108および手のひら情報取得部109は、生体情報を安定的に抽出するために、互いに固定して配置されることが望ましい。また、指先の生体情報および手のひらの生体情報が同時に取得されることが望ましい。例えば、指先情報取得部108および手のひら情報取得部109は、所定の距離L内に固定して配置され、指紋画像および手のひら画像を同時に取得可能であることが望ましい。距離Lは、例えば、一般的な手のひらの大きさ内におさまる数cmから10cm程度である。
【0022】
通信部106は、例えば、LAN(Local Area Network)などへの接続インタフェースである。識別情報取得部107は、キーボード、マウスなどの入力機器である。生体情報処理装置100は、通信部106を介して、ネットワーク上の認証サーバ200およびデータベースサーバ300と通信し、情報の受け渡しをする。認証サーバ200は、CPU201、RAM202、記憶装置203、通信部204などを備える。記憶装置203は、照合プログラムを記憶している。データベースサーバ300は、記憶装置301、通信部302などを備える。
【0023】
生体情報処理装置100の記憶装置103に記憶されている生体情報処理プログラムは、実行可能にRAM102に展開される。CPU101は、RAM102に展開された生体情報処理プログラムを実行する。それにより、生体情報処理装置100による各処理が実行される。生体情報処理プログラムが実行されることによって、生体データ登録処理、生体認証処理などが実行される。生体データ登録処理は、未登録の新規ユーザ(以下、被登録ユーザと称する。)の識別情報、品質スコア、認証特徴および相対特徴(以下、登録データと総称する。)を、個人認証に係る照合処理用のデータとしてデータベースに登録する処理である。生体認証処理は、認証時に取得された識別情報、品質スコア、認証特徴および相対特徴(以下、入力データと総称する。)と登録データとの照合に基づく個人認証によって被認証ユーザを特定する処理である。本実施例においては、生体認証処理の際に、認証特徴および相対特徴の両方の特徴を用いることによって、認証時間の長大化を抑制しつつ誤認証を抑制する。
【0024】
図2は、生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。生体情報処理プログラムの実行によって、品質判定部10、指先情報正規化部20、認証特徴抽出部30、相対特徴抽出部40、登録部50、および認証結果出力部60が実現される。なお、記憶装置203に記憶されている照合プログラムの実行によって、位置合わせ基準位置算出部210および照合処理部220が実現される。
【0025】
(生体データ登録処理)
図3は、生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。
図4は、生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、
図3および
図4を参照しつつ、生体データ登録処理の一例について説明する。
【0026】
識別情報取得部107は、被登録ユーザによって入力された識別情報を取得する(ステップS1)。識別情報は、ユーザを特定する情報であり、例えば、ユーザの氏名、ニックネーム、IDなどである。次に、生体センサ105は、被登録ユーザの生体情報を取得する(ステップS2)。具体的には、指先情報取得部108が人差し指、中指および薬指の指紋画像を取得し、手のひら情報取得部109が各指の付け根位置を含んだ手のひら画像を取得する。
【0027】
次に、品質判定部10は、指先情報取得部108および手のひら情報取得部109が取得した画像の少なくとも一部を用いて品質スコアを算出する(ステップS3)。品質スコアの値が高いほど、生体の状態が良いことを意味する。本実施例においては、品質判定部10は、指先情報取得部108が取得した指紋画像から品質スコアを算出する。この場合の品質スコアは、例えば、隆線方向の訂正量に反比例する値などである。なお、隆線方向の訂正量は、値が大きいほど隆線方向が乱れており、指画像の状態が悪いことを示す性質を持つ。
【0028】
次に、認証特徴抽出部30は、指紋画像から照合処理に利用する認証特徴を抽出する(ステップS4)。指紋画像から抽出可能な認証特徴は、例えば、指紋の隆線のパターン、指紋のマニューシャの位置関係などである。指先の生体特徴として指静脈を用いる場合は、認証特徴は指静脈のパターンなどである。また、認証特徴抽出部30は、認証特徴の弁別精度を向上させるため、手のひら画像から照合処理に利用する情報を認証特徴の一部として抽出してもよい。手のひら画像から抽出可能な認証特徴は、例えば、手のひら静脈のパターンである。
【0029】
指先情報正規化部20は、複数の指の指紋画像を、所定の位置に移動させることによって正規化する(ステップS5)。指先情報正規化部20が複数の指の指紋画像を所定の位置関係に正規化することで、指画像の入力位置のばらつきを修正することができる。それにより、ばらつきの影響を受けない情報を抽出することが可能となる。
【0030】
指先情報正規化部20は、例えば、
図5のフローで正規化を行う。まず、指先情報正規化部20は、
図6のような手のひら画像中の各指の付け根付近の輪郭から、各指の方向となる直線を抽出する(ステップS11)。具体的には、指先情報正規化部20は、
図7の黒い太線で示すような、隣接する2つの指の方向を表す直線を直線R1,R2とする。次に、指先情報正規化部20は、
図8のように、2つの直線R1,R2をそれぞれ延長し、2直線のなす角度θと交点Oを求める(ステップS12)。次に、指先情報正規化部20は、
図9のように、交点Oを中心として角度θだけ一方の指紋画像を回転させる(ステップS13)。指先情報正規化部20は、回転によって得られた指紋画像の位置関係を正規化後の指紋画像とする。
【0031】
なお、正規化処理は、異なる指紋画像の相対位置を共通化することを目的としているため、必ずしも直線R1,R2を平行にする必要はない。例えば、指先情報正規化部20は、回転処理の頻度を下げて処理を効率化させるため、直線R1と直線R2とがなす角度が最も高い頻度で入力される角度となるまで指紋画像を回転させることによって正規化を行ってもよい。また、指先情報正規化部20は、回転処理の時間を削減させるため、指紋画像を回転させるのではなく認証特徴抽出部30で抽出されるマニューシャの位置や指紋中心の位置を回転させてもよい。
【0032】
再度
図4を参照して、相対特徴抽出部40は、正規化後の指紋画像から相対特徴を抽出する(ステップS6)。本実施例においては、相対特徴抽出部40は、相対特徴の座標系として、指紋中心位置を原点とし、中指の方向を一つの軸とした直交座標系を用いる。また、処理時間の短縮化を図るため、相対特徴として、指紋画像中に存在する全てのマニューシャを利用せず、原点から所定の範囲内にあるマニューシャのみを利用してもよい。さらに、相対特徴の原点として、複数の指の指紋中心位置を利用し、それぞれの指紋中心位置でマニューシャの座標値を算出してもよい。なお、指紋中心は、指紋に含まれる半円状の流れを示す点のことで、コアと呼ばれることもある。渦を巻いた指紋においては、渦の中心が指紋中心である。指紋中心を算出する方法として、例えば、特許第2790689号の技術内容を用いてもよい。
【0033】
複数の指の指紋中心位置を原点として利用する際の座標系の例を
図10に示す。複数の指紋中心位置で座標値を算出することによって、いずれか1本の指の指紋中心位置の取得に失敗した場合にも対応することができ、安定した相対特徴の抽出が可能となる。
図11は、人差し指、中指、および薬指のそれぞれの指紋中心位置を原点として用いて算出された相対特徴のデータ構造の例である。
【0034】
登録部50は、取得された識別情報、品質スコア、相対特徴、および認証特徴を、
図2のように、登録データとしてデータベースサーバ300のデータベースに登録する(ステップS7)。なお、
図2を参照して、登録データは、各ユーザに関連付けて登録される。ステップS7の実行によって生体データ登録処理は終了する。
【0035】
(生体認証処理)
登録済みの被認証ユーザが生体情報処理装置100を備える端末などにログインしようとする際に、生体情報処理装置100は、生体認証処理を実行する。
図12は、生体認証処理の実行の際に実現される各機能のブロック図である。
図13は、生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、
図12および
図13を参照しつつ、生体認証処理の一例について説明する。
【0036】
生体センサ105は、
図4のステップS2と同様の手順により、被登録ユーザの生体情報を取得する(ステップS21)。次に、品質判定部10は、
図4のステップS3と同様の手順により、品質判定を行う(ステップS22)。次に、認証特徴抽出部30は、
図4のステップ4と同様の手順により、複数の指の前記指紋画像から照合処理に利用する認証特徴を抽出する(ステップS23)。次に、指先情報正規化部20は、
図4のステップS5と同様の手順により、複数の指の指紋画像を、所定の位置に移動させることによって正規化する(ステップS24)。相対特徴抽出部40は、
図4のステップS6と同様の手順により、正規化後の指紋画像から相対特徴を抽出する(ステップS25)。ステップS21〜ステップS25で取得された入力データは、認証サーバ200に送られる。
【0037】
次に、認証サーバ200の位置合わせ基準位置算出部210は、位置合わせ処理を行う(ステップS26)。位置合わせ処理とは、登録データの認証特徴と入力データの認証特徴との位置を一致させる処理である。この処理により、認証精度が向上する。また、位置合わせ処理は、相対特徴を用いることによって実行することができる。次に、照合処理部220は、位置合わせ処理の結果に基づいて、各指について、入力データと登録データとの照合を行う(ステップS27)。この場合の照合は、登録データの認証特徴と入力データの認証特徴との照合スコアを算出する処理である。照合スコアが高いほど、登録データの認証特徴と入力データの認証特徴とが類似していることを意味する。
【0038】
図14は、ステップS26の位置合わせ処理およびステップS27の照合処理の詳細を説明するためのフローである。本実施例においては、
図14の処理は、指紋画像ごとに実行される。
図14を参照して、まず、位置合わせ基準位置算出部210は、入力データの各マニューシャと、登録データの各マニューシャとの互いに対応するペアを決定する(ステップS31)。具体的には、位置合わせ基準位置算出部210は、同一の基準位置で算出した相対特徴中の座標値の距離が一番小さくなるように、入力データの各マニューシャと登録データの各マニューシャとのペアを作成する。上記距離は、例えばユークリッド距離である。
【0039】
その後、位置合わせ基準位置算出部210は、ペアの中で、距離が所定の値以下となるものが存在するかを判定する(ステップS32)。ステップS32において「Yes」と判定された場合、位置合わせ基準位置算出部210は、当該ペアを位置合わせの基準位置として決定する(ステップS33)。位置合わせ基準位置算出部210は、該当するペアが複数存在する場合、入力データおよび登録データのそれぞれについて、当該ペアとして選ばれたマニューシャの重心位置を基準位置として算出してもよい。ステップS32において「No」と判定された場合、位置合わせ基準位置算出部210は、位置合わせの基準位置がないと判定する(ステップS34)。
【0040】
なお、位置合わせ基準位置算出部210は、入力データの品質スコアが所定の数値以上の指の指紋画像中の指紋中心位置を基準として算出された相対特徴の値のみを利用して、基準位置を決定してもよい。または、位置合わせ基準位置算出部210は、入力データの3本の指のうち品質スコアが一番高い指の指紋画像中の指紋中心位置を基準として算出された相対特徴の値のみを利用してもよい。また、位置合わせ基準位置算出部210は、入力データと登録データとの間で、同一の指の品質スコアを比較し、品質スコアの合計値が所定数値以上となる指の指紋中心位置を基準として算出された相対特徴の値のみを利用してもよい。指先の状態が良い指紋画像を利用して得られる安定した基準位置を利用することで、指先の状態が悪くて位置合わせの基準位置の検出精度が悪い指紋画像についても、時間をかけず安定した位置合わせの処理を実行できる。
【0041】
ステップS34の後、照合処理部220は、指先情報正規化部20で得られた正規化後の位置関係に基づき、登録データと入力データとを重ね合わせる(ステップS36)。例えば、照合処理部220は、ある指の指紋中心位置を基準とした座標系に従って、登録データと入力データとを重ね合わせる。
【0042】
一方、ステップS33の後、照合処理部220は、ステップS33で得られた基準位置を重ねることによって登録データと入力データを重ね合わせる(ステップS35)。対応する複数のマニューシャの位置により算出される基準位置を利用することによって、基準位置が無い場合よりも、より誤差が少ない位置で登録データと入力データの重ね合わせが可能となる。
【0043】
ステップS35の実行後またはステップS36の実行後、照合処理部220は、入力データおよび登録データの位置合わせを行う(ステップS37)。具体的には、照合処理部220は、重ね合わせた登録データおよび入力データについて、一致するマニューシャ数が最も多くなるように、所定の角度α以内の回転、所定の範囲S内の移動等の微調整を行う。あるいは、照合処理部220は、隆線パターンが最も一致するように微調整を行ってもよい。例えば、αの値は10度以下であり、Sの範囲は数mm四方以下である。指先情報正規化部20による正規化により、基準位置の位置ずれが少なくなるため、微調整を行う範囲を狭めることが可能である。微調整を行う範囲を狭めることによって、全体の照合処理時間の短縮化が可能となる。
【0044】
次に、照合処理部220は、位置合わせ後の登録データの認証特徴と入力データの認証特徴とについて照合スコアを算出する(ステップS38)。照合スコアは、認証特徴の類似度のことである。例えば、照合処理部220は、認証特徴を用いて、隆線パターンの類似度、マニューシャの位置や種類の一致度などを照合スコアとして算出する。なお、
図14の処理は各指に対して実行されるため、各指の照合スコアが算出されることになる。
【0045】
再度
図13を参照して、照合処理部220は、最大の照合スコアがしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS28)。ステップS28において「Yes」と判定された場合、認証結果出力部60は、当該判定結果を受け取り、認証成功の結果を出力する(ステップS29)。ステップS28において「No」と判定された場合、認証結果出力部60は、当該判定結果を受け取り、認証失敗の結果を出力する(ステップS30)。ステップS29またはステップS30の実行後、
図13のフローチャートは終了する。
【0046】
本実施例によれば、正規化処理により、位置ずれが少ない相対特徴を抽出できる。この場合、照合対象の位置合わせの探索範囲を狭くすることができる。そのため、位置合わせの処理の時間を削減でき、全体の照合時間の削減が可能となる。すなわち、本実施例によれば、認証に要する時間を短縮化できる情報を抽出できる。特に、被認証ユーザと複数の登録ユーザとの照合を前提とした1:N認証においては、その削減効果の影響は大きい。また、検出対象の生体の状態が悪くても、状態の良い生体の相対特徴を用いることによって、生体の状態の影響を低減することができる。
【0047】
(変形例)
図15は、生体認証処理の他の例を説明するためのフローチャートである。
図15のステップS41〜ステップS47は、
図13のステップS21〜ステップS27と同様である。ステップS47の実行後、照合処理部220は、照合スコアが第1のしきい値以上とユーザがいるか否かを判定する(ステップS48)。ステップS48において「Yes」と判定された場合、照合処理部220は、照合スコアが第1のしきい値以上となるユーザが1人だけか否かを判定する(ステップS49)。ステップS49において「Yes」と判定された場合、認証結果出力部60は、認証成功の結果を出力する(ステップS50)。その後、フローチャートの実行が終了する。ステップS48において「No」と判定された場合、認証結果出力部60は、認証失敗の結果を出力する(ステップS53)。その後、フローチャートの実行が終了する。
【0048】
ステップS49において「No」と判定された場合、照合処理部220は、相対特徴を用いた照合処理を行う(ステップS51)。例えば、照合処理部220は、相対特徴がマニューシャの位置関係である場合、照合スコアが第一のしきい値以上となる登録データについて、マニューシャの位置関係の類似度を算出する。登録データTiと入力データIとの類似度PS(Ti,I)は、例えば下記式により算出される。
【数1】
【0049】
照合処理部220は、上記式で算出される類似度の最大値が第2のしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS52)。ステップS52において「Yes」と判定された場合、認証結果出力部60は、ステップS50を実行する。ステップS52において「No」と判定された場合、認証結果出力部60は、ステップS53を実行する。
【0050】
照合スコアが第1のしきい値以上となるユーザが複数名存在する場合、誤認証がなされる可能性が高くなる。しかしながら、相対特徴を用いて2重の判定を行うことによって、誤認証を抑制することができる。なお、被認証ユーザ1と1人の登録ユーザとの照合を前提とした1:1認証においては、照合処理部220は、照合スコアが第1のしきい値以上、第3のしきい値未満である場合に、相対特徴を用いて上記式に従って類似度を算出してもよい。照合処理部220は、照合スコアが第3のしきい値以上である場合、または照合スコアが第1のしきい値以上で上記類似度が第2のしきい値以上である場合に、認証成功であることを認証結果として算出する。照合スコアが第3のしきい値よりも低いが第1のしきい値以上である場合は、照合に用いた登録データが他のユーザの登録データであることがごく稀に起こりうる。このとき、照合処理部220が相対特徴も用いて二重の判定を行うことにより、誤認証を抑制することができる。
【実施例2】
【0051】
照合処理の際に、照合候補を絞り込んでもよい。例えば、
図16を参照して、認証サーバ200の記憶装置203に記憶されている照合プログラムの実行によって、位置合わせ基準位置算出部210、照合処理部220、および照合候補絞り込み処理部230が実現されてもよい。
図17は、生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。
図18は、生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、
図17および
図18を参照しつつ、生体認証処理の一例について説明する。
【0052】
図18のステップS61〜ステップS65は、
図13のステップS21〜ステップS25と同様である。また、ステップS68〜ステップS70は、
図13のステップ28〜ステップS30と同様である。
【0053】
ステップS65の実行後、照合候補絞り込み処理部230は、照合候補を絞り込む(ステップS66)。具体的には、照合候補絞り込み処理部230は、登録データの相対特徴と入力データの相対特徴とを比較して、値が高いほど同一の人物のデータである確率が高くなる絞り込みスコアを算出する。例えば、絞り込みスコアとして、入力データにおける相対特徴中のマニューシャの位置関係に対応するものが、登録データ内の相対特徴中のマニューシャ位置関係に存在するか否か算出した値である。絞り込みスコアは、上述した式に従って算出してもよい。照合候補絞り込み処理部230は、登録データのうち、絞り込みスコアが所定の数値以上となるものを照合候補として決定する。あるいは、照合候補絞り込み処理部230は、絞り込みスコアの高い順に登録データを並べ、上位の所定個数の登録データを照合候補として決定する。
【0054】
照合処理部220は、照合候補内の登録データと入力データとの照合を行う。すなわち、照合処理部220は、全ての登録データと照合を行わずに済む。それにより、照合処理の時間を削減することができる。なお、相対特徴は、指先情報正規化部20の正規化処理により、位置ずれが少ない安定した特徴量となる。このため、相対特徴は、位置合わせをすることなく絞り込み処理に用いることができる。したがって、位置合わせを必要とする処理よりも短時間で絞り込み処理を実施できる。
【0055】
(他の例)
上記各実施例においては、被認証ユーザと複数の登録ユーザとの照合を前提とした1:N認証を実施しているが、被認証ユーザ1と1人の登録ユーザとの照合を前提とした1:1認証を実施してもよい。1:1認証は、生体認証処理の際に被認証ユーザから取得した識別情報を用いて照合対象の登録ユーザを限定することによって実現できる。または、登録データが1人分だけ登録されていれば、1:1認証を実現できる。
【0056】
また、上記実施例においては、生体情報処理装置100と認証サーバ200とデータベースサーバ300とが互いに異なる機器によって構成されているが、1台のサーバなどによって構成されていてもよい。この場合、照合プログラムは生体情報処理プログラムに組み込まれていてもよい。また、位置合わせ基準位置算出部210、照合処理部220および照合候補絞り込み処理部は、生体情報処理装置100内の機能として実現されてもよい。
【0057】
正規化される対象は、同じモダリティでなくてもよい。例えば、静脈画像と指紋画像とを正規化してもよい。
図19は、正規化の他の例について説明するための図である。
図19の例では、中指の指静脈の位置と薬指の指紋画像の位置とを正規化する例が表されている。
図19を参照して、
図5〜
図9と同様の処理により、一方の画像を回転させることによって、互いの位置関係を正規化することができる。この場合、指先情報正規化部20は、指紋中心を原点とし、指先の方向を1つの軸とした座標系を設定し、指静脈のパターン、指静脈の分岐点、端点などを相対特徴として抽出することができる。
【0058】
または、第1関節が画像中に存在する場合、指先情報正規化部20は、第1関節を用いてもよい。
図20は、第1関節を用いた例を説明するための図である。
図20を参照して、指先情報正規化部20は、指静脈を抽出するための指の第1関節の中点を原点とし、第1関節を1つの軸とした座標系を設定し、薬指の指紋のマニューシャの座標を相対特徴として抽出することができる。
【0059】
また、各指の静脈および指紋の両方を使用してもよい。
図21および
図22に、各指の静脈および指紋の両方から相対特徴を抽出する例を示す。例えば、指先情報正規化部20は、指紋中心位置を基準とした座標系において、各指の静脈の分岐点、端点、パターンなどを抽出し、指紋の相対特徴と併せて相対特徴として用いてもよい。
【0060】
上記各実施例においては、異なるインスタンスとして指および手のひらを用いたが、他のインスタンスを用いてもよい。
図23に、虹彩と顔とを用いた例を示す。
図23を参照して、両目の虹彩画像を取得する。次に、顔画像を真正面に補正することによって、両目の虹彩画像を正規化する。なお、両目の中心位置を結ぶ線分が水平となるように、両目の虹彩画像をさらに正規化してもよい。生体データ登録処理の際には、この正規化した画像から認証特徴を抽出してもよい。さらに、上記線分の長さLを相対特徴として用いてもよい。認証処理時には、登録データの相対特徴と入力データの相対特徴とが同じ長さになるように入力データの虹彩画像を拡大または縮小すればよい。得られた虹彩画像から認証特徴を抽出することによって、虹彩に基づく照合処理が可能となる。この場合、登録処理時と認証処理時とで、顔とカメラとの距離が異なっている場合、顔の傾きが異なる場合などにおいて、虹彩画像の縮尺や傾きが変化しても、補正することができる。
【0061】
生体情報処理装置100の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムが記録されている記録媒体を生体情報処理装置100に供給し、CPU101が当該プログラムを実行してもよい。プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、CD−ROM、DVD、ブルーレイ又はSDカードなどがある。また、上記各実施例においては、CPUによるプログラムの実行によって各機能が実現されていたが、それに限られない。例えば、専用の回路などを用いて各機能を実現してもよい。
【0062】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。