特許第6024149号(P6024149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6024149カラーフィルター用着色樹脂組成物、カラーフィルター、及び液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024149
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】カラーフィルター用着色樹脂組成物、カラーフィルター、及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20161027BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20161027BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20161027BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   G02B5/22
   G02F1/1335 505
   G03F7/004 505
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-73731(P2012-73731)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-205581(P2013-205581A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 泉
(72)【発明者】
【氏名】日野 和幸
(72)【発明者】
【氏名】俵屋 誠治
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−070343(JP,A)
【文献】 特開2003−161821(JP,A)
【文献】 特開2009−057435(JP,A)
【文献】 特開2003−161827(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0151708(US,A1)
【文献】 特開2012−067229(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/039361(WO,A1)
【文献】 特開2008−019383(JP,A)
【文献】 特開2012−053278(JP,A)
【文献】 特開2004−070342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02B 5/22
G02F 1/1335
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む顔料と、硬化性バインダー成分と、溶媒とを含有する、カラーフィルター用着色樹脂組成物。
【化1】
(化学式(1)中、X〜X16は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、又は水素原子である。但し、X〜X16のうち、1分子あたり平均80%以上87.5%以下が塩素原子である。)
【請求項2】
前記顔料が、更に黄色顔料を含む、請求項1に記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物。
【請求項3】
前記高塩素化亜鉛フタロシアニンを、当該高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む緑色顔料全体に対して10質量%以上含む、請求項1又は2に記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物。
【請求項4】
膜厚が2.5μmの塗膜としたときに、透過率スペクトルが、波長510〜540nmに極大値を有し、且つ当該極大値における透過率が40%以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物。
【請求項5】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項1乃至のいずれか一項に記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層であることを特徴とする、カラーフィルター。
【請求項6】
前記請求項1乃至のいずれか一項に記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層の透過率スペクトルが、波長510〜540nmに極大値を有し、且つ当該極大値における透過率が40%以上であることを特徴とする、請求項に記載のカラーフィルター。
【請求項7】
前記請求項又はに記載のカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用着色樹脂組成物、当該カラーフィルター用着色樹脂組成物を用いたカラーフィルター、及び当該カラーフィルターを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶表示装置の需要が増加している。また、最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、益々液晶表示装置の市場は拡大する状況にある。さらに近年普及している液晶表示装置は大画面化の傾向があり、特に家庭用の液晶テレビに関してはその傾向が強くなってきている。このような状況において、液晶表示装置は、更なる高輝度化や色再現性の向上といった要望が高まっている。
【0003】
従来の表示装置は、色空間の国際標準規格であるsRGB(IEC61966−2−1)に準拠するものが多かった。しかしながら、更なる色再現性の向上の要求から、sRGBと比べて広い色再現域を有するAdobeRGBに対応する表示装置への要求が高まっている。AdobeRGB規格はAdobeSystemsによって提唱された色空間の定義であり、AdobeRGBにおいて三原色は、XYZ表色系における色度座標x及びyについて下記のように定められている。
赤:x=0.64;y=0.34
緑:x=0.21;y=0.71
青:x=0.15;y=0.06
【0004】
また、sRGBと比べて、赤と緑方向に広い色再現域を有するDCI(Digital Cinema Initiatives)規格に合わせる仕様への要求もある。
【0005】
このような状況において、表示装置をカラー表示化させる機能を有するカラーフィルターにおいても、AdobeRGBやDCI等の広い色再現域を有する色空間を達成することが求められている。このような広い色再現域を有する色空間を達成するためには、特にカラーフィルターの緑色画素を、高色濃度の緑の色度(x=0.20〜0.30、y=0.60〜0.75)とすることが求められていた。
【0006】
従来、緑色画素に広く用いられている緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)や、C.I.ピグメントグリーン7(PG7)が挙げられる。
PG58を用いて高色濃度の緑の目標色度を達成するためには、緑色画素を従来よりも厚膜化する必要があり、フォトリソグラフィー法により画素を形成する場合には、膜を十分に硬化させるため、製版工程を少なくとも2回繰り返す必要があるという問題があった。また、緑色画素のみを厚膜化した場合には、カラーフィルターの厚さが不均一なものとなり位相差のずれを生じ、その結果、視野角が狭くなったり、色味を損なうという問題があった。
一方、PG7を用いて高色濃度の緑の目標色度を達成するように緑色画素を形成した場合には、当該緑色画素の輝度が低下するという問題があった。低輝度の緑色画素を用いた場合、いわゆるホワイトバランスの点から、赤色画素、青色画素についても輝度を低下させなければならず、カラーフィルター全体の輝度も低下するという問題があった。
【0007】
特許文献1には、透過率が高い緑色顔料として、部分臭素化亜鉛フタロシアニンが記載されている。しかしながら、特許文献1は、AdobeRGBやDCI等の広い色再現域を有する色空間を目標とするものではなく、x=0.250〜0.300、y=0.700〜0.750等の色度は製版可能な膜厚の範囲内では達成できていない。このように、より高色濃度の緑色を呈する緑色顔料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−70342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、厚膜化することなく高色濃度の緑の目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能なカラーフィルター用着色樹脂組成物、当該カラーフィルター用着色樹脂組成物を用いた高輝度で色再現性に優れたカラーフィルター、及び当該カラーフィルターを用いた高輝度で色再現性に優れた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物は、下記化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む顔料と、硬化性バインダー成分と、溶媒とを含有することを特徴とする。
【0011】
【化1】
(化学式(1)中、X〜X16は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、又は水素原子である。但し、X〜X16のうち、1分子あたり平均80%以上87.5%以下が塩素原子である。)
【0012】
本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物は、前記顔料が、更に黄色顔料を含むことが、目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能な点から好ましい。
【0013】
本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物は、前記高塩素化亜鉛フタロシアニンを、当該高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む緑色顔料全体に対して10質量%以上含むことが、厚膜化することなく目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能な点から好ましい。
【0014】
本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物は、膜厚が2.5μmの塗膜としたときに、透過率スペクトルが、波長510〜540nmに極大値を有し、且つ当該極大値における透過率が40%以上であることが、厚膜化することなく目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能な点から好ましい。
【0015】
本発明に係るカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るカラーフィルターは、前記本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層の透過率スペクトルが、波長510〜540nmに極大値を有し、且つ当該極大値における透過率が40%以上であることが、高輝度で色再現性に優れる点から好ましい。
【0017】
更に本発明は、前記本発明に係るカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、厚膜化することなく高色濃度の緑の目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能なカラーフィルター用着色樹脂組成物、当該カラーフィルター用着色樹脂組成物を用いた高輝度で色再現性に優れたカラーフィルター、及び当該カラーフィルターを用いた高輝度で色再現域性に優れた液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のカラーフィルターの一例を示す概略図である。
図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明において(メタ)アクリルとはアクリル基又はメタクリル基のいずれかであることを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル基又はメタクリロイル基のいずれかであることを意味する。また、本発明において光とは、可視及び非可視領域の波長の電磁波及び放射線が含まれ、放射線には例えばマイクロ波、電子線が含まれ、具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線をいう。
【0021】
[カラーフィルター用着色樹脂組成物]
本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物は、下記化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む顔料と、硬化性バインダー成分と、溶媒とを含有することを特徴とする。
【0022】
【化2】
(化学式(1)中、X〜X16は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、又は水素原子である。但し、X〜X16のうち、1分子あたり平均80%以上が塩素原子である。)
【0023】
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物は、顔料として上記化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンを用いることにより、厚膜化することなく高色濃度の緑の目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能である。
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物は、AdobeRGBやDCI等の広い色再現域を有する規格に対応したカラーフィルターに好適に用いられるが、sRGBなど他の規格に対応したカラーフィルターに用いることもできる。
【0024】
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物は、少なくとも、顔料と、顔料分散剤と、硬化性バインダー成分と、溶媒とを含有するものであり、必要に応じて他の成分を含有していてもよいものである。
以下、このような本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物の各成分について順に詳細に説明する。
【0025】
(顔料)
本発明において顔料は、必須成分として下記化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む。
【0026】
【化3】
(化学式(1)中、X〜X16は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、又は水素原子である。但し、X〜X16のうち、1分子あたり平均80%以上が塩素原子である。)
【0027】
化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンは、化学式(1)におけるX〜X16のうち、1分子あたり平均80%以上が塩素原子である。このような高塩素化亜鉛フタロシアニンは、透過率が高く、青みよりの緑色を発色し、着色力に優れるため、AdobeRGBやDCI等の広い色再現域を有する規格に対応するカラーフィルターの緑色画素を形成するのに適している。中でも、より高輝度を達成可能な点から、X〜X16のうち、1分子あたり平均87.5%以上が塩素原子であることが好ましい。
なお、X〜X16のうち、1分子あたりの塩素原子の割合(以下、塩素化率という場合がある)は、下記式(1)により表される値である。塩素化率は、高塩素化亜鉛フタロシアニンを、質量分析装置(例えば、装置名BRUKER REFLEX II ブルカー・ダルトニクス(株)製)により測定して得られたマススペクトルから、水素原子、塩素原子及び臭素原子の存在比を求めることにより算出することができる。
【0028】
【数1】
【0029】
本発明において、化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンは、X〜X16のうち、20%以下であれば、水素原子及び/又は臭素原子が含まれても良いものである。塩素原子以外の全てが水素原子である場合には、より青みが強くなる点で好ましく、臭素原子が混合する場合には、黄味が調整される点で好ましい。
【0030】
化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンは、特開昭50−130816号公報等に開示されている公知の製造方法で製造できる。例えば、芳香環の水素原子の一部または全部が塩素原子の他、臭素原子で置換されたフタル酸やフタロジニトリルを適宜出発原料として使用して、顔料を合成する方法が挙げられる。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒を用いてもよい。
【0031】
他の方法としては、塩化アルミニウムのようなハロゲン化アルミニウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウムのようなアルカリ金属ハロゲン化物等の1種又は2種以上の混合物からなる110〜170℃程度の溶融物中で、亜鉛フタロシアニンをハロゲン化剤にてハロゲン化する方法が挙げられる。この方法においては、溶融塩中の塩化物と臭化物の比率を調節したり、ハロゲン化剤や反応時間を変化させたりすることによって、塩素含有量の異なる種々の高塩素化亜鉛フタロシアニンの比率を任意にコントロールすることができる。
【0032】
また、亜鉛フタロシアニンを、クロロスルホン酸等の硫黄酸化物系の溶媒に溶解し、塩素ガス、必要に応じて臭素ガスを仕込みハロゲン化する、クロロスルホン酸方法が挙げられる。
【0033】
得られた高塩素化亜鉛フタロシアニン粗顔料は、必要に応じて、アトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等の粉砕機内で乾式摩砕し、ついで、ソルベントソルトミリング法やソルベントボイリング法等で顔料化する。これらは例えば特開2004−70342等に開示されている公知の方法で行うことができる。
【0034】
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物においては、顔料として、上記化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンのみを単独で用いてもよい。一方、緑色画素の色調を調製するために、更に他の顔料を組み合わせて用いてもよい。他の顔料としては、他の緑色顔料や、黄色顔料等が挙げられる。
【0035】
他の緑色顔料としては、特に限定されない。例えば、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58などが挙げられる。他の緑色顔料は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
他の緑色顔料を用いる場合、上記高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む緑色顔料全体に対する、上記高塩素化亜鉛フタロシアニンの含有量は、所望の色度に合わせて適宜調整されればよく、特に限定されない。中でも、厚膜化することなく目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能となる点から、上記高塩素化亜鉛フタロシアニンを、上記高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む緑色顔料全体に対して、10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましい。
【0036】
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物においては、更に黄色顔料を含んでいることが、目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能となる点から好ましい。黄色顔料を組み合わせることによって、波長380〜470nmにおける分光透過率スペクトルの透過率を低下させることが可能である。黄色顔料としては、特に限定されず、例えば、C.I.ピグメントイエロー(PY)1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、199等が挙げられ。中でも、輝度が高い、又は、黄色顔料の使用量が少量ですみ、薄膜化に適している点から、PY83、138、139、150、185が好ましく、特にPY138、150、185が好ましい。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
黄色顔料を組み合わせて用いる場合、その含有量は、より高輝度を達成可能な点から、前記顔料全体に対して20〜70質量%含む、更に30〜70質量%含むことが好ましい。
【0038】
顔料の平均一次粒径は、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されない。用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散性及び分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、10〜300nmの範囲内であることが好ましく、20〜250nmであることがより好ましい。顔料の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルターは、高輝度で、かつ高品質なものとすることができる。
なお、上記顔料の平均一次粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に100個以上の粒子についてそれぞれ粒子の体積(質量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径として求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)又は走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0039】
(硬化性バインダー成分)
本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与し、塗膜に充分な硬度を付与するために、硬化性バインダー成分を含有する。硬化性バインダー成分としては、特に限定されず、カラーフィルターの着色層を形成するのに用いられる従来公知の硬化性バインダー成分を適宜用いることができる。
硬化性バインダー成分としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含む感光性バインダー成分や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダー成分を含むものを用いることができる。
【0040】
本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物を、例えばインクジェット方式で用いる場合など、基板上にパターン状に選択的に付着させて着色層を形成可能な場合には、硬化性バインダー成分に現像性は必要がない。この場合、インクジェット方式等でカラーフィルター着色層を形成する場合に用いられる、公知の熱硬化性バインダー成分や、光硬化性バインダー成分等を適宜用いることができる。
一方、着色層を形成する際にフォトリソグラフィー工程を用いる場合には、アルカリ現像性を有する感光性バインダー成分が好適に用いられる。
以下、感光性バインダー成分と、インクジェット方式に用いるのに適した熱硬化性バインダー成分について具体的に説明するが、硬化性バインダー成分はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(1)感光性バインダー成分
感光性バインダー成分としては、ポジ型感光性バインダー成分とネガ型感光性バインダー成分が挙げられる。ポジ型感光性バインダー成分としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂及び感光性付与成分としてo−キノンジアジド基含有化合物を含んだ系が挙げられ、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド前駆体等が挙げられる。
【0042】
ネガ型感光性バインダー成分としては、アルカリ可溶性樹脂と、多官能性モノマーと、光開始剤を少なくとも含有する系が好適に用いられる。以後、アルカリ可溶性樹脂と、多官能性モノマーと、光開始剤について、具体的に説明する。
【0043】
(1−1)アルカリ可溶性樹脂
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシル基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体、及びエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0044】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとエチレン性不飽和モノマーを共重合して得られる。
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、更に芳香族炭素環を有する構成単位を含有していてもよい。芳香族炭素環はカラーフィルター用着色樹脂組成物に塗膜性を付与する成分として機能する。
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、更にエステル基を有する構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、カラーフィルター用着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0045】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス−2−プロペノエート、スチレン、γ−メチルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどの中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亞合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示できる。また、上記のコポリマーに、例えばグリシジル基、水酸基等の反応性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させるなどして、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等も例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらの中で、コポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等は、露光時に、後述する多官能性モノマーと重合することが可能となり、着色層がより安定なものとなる点で、特に好適である。
【0046】
カルボキシル基含有共重合体におけるカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合は、アルカリ現像性や形成されたパターンの基板密着性等の点から、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。
【0047】
カルボキシル基含有共重合体の好ましい重量平均分子量は、好ましくは1,000〜500,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜200,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下し、500,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定されるものをいう。
【0048】
また、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
【0049】
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては、カラーフィルター用着色樹脂組成物に含まれる顔料100質量部に対して、通常、10〜1000質量部の範囲内、好ましくは20〜500質量部の範囲内であることが、充分なアルカリ現像性と、充分な着色濃度が得られる点から好ましい。
【0050】
(1−2)多官能性モノマー
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物において用いられる多官能性モノマーは、後述する光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0051】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能性モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物において用いられる上記多官能性モノマーの含有量は、特に制限はないが、上記アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、通常5〜500質量部程度、好ましくは20〜300質量部の範囲である。多官能性モノマーの含有量が上記範囲より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合があり、また、多官能性モノマーの含有量が上記範囲より多いとアルカリ現像性が低下するおそれがある。
【0053】
(1−3)光開始剤
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物において用いられる光開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種光開始剤の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体又はそれらのエステルなどの誘導体;キサントン並びにチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などがある。好ましくは、イルガキュアー184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュアー369(2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジル−1−ブタノン)、イルガキュアー651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、イルガキュアー907(2−[4−(メチルチオ)ベンゾイル]−2−(4−モルホリニル)プロパン)(いずれもチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)などのケトン系及びビイミダゾール系化合物等を挙げることができる。これらの開始剤を1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするのがよい。
【0054】
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の含有量は、上記多官能性モノマー100質量部に対して、通常0.01〜100質量部程度、好ましくは5〜60質量部である。この含有量が上記範囲より少ないと十分に重合反応を生じさせることができないため、着色層の硬度を十分なものとすることができない場合があり、一方上記範囲より多いと、カラーフィルター用着色樹脂組成物の固形分中の顔料の含有量が相対的に少なくなり、十分な着色濃度が得られない場合がある。
【0055】
(2)熱硬化性バインダー成分
熱硬化性バインダーとしては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加しても良い。熱硬化性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、エチレン性不飽和結合等が挙げられる。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。また、これらにそれ自体は重合反応性のない重合体を更に用いても良い。
【0056】
(2−1)1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物が好適に用いられる。1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。また、特開2007−072283等に開示されているバインダー性エポキシ化合物と多官能エポキシ化合物の組み合わせも好適に用いることが可能である。
【0057】
(2−2)硬化剤
本発明に用いられる熱硬化性バインダー成分には、通常、硬化剤が組み合わせて配合される。硬化剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
また、本発明に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸などの脂肪族多価カルボン酸;1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびトリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
【0058】
これら硬化剤は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる硬化剤の配合量は、エポキシ基を含有する成分100質量部当たり、通常は1〜100質量部の範囲であり、好ましくは5〜50質量部である。硬化剤の配合量が1質量部未満であると、硬化が不充分となり、強靭な塗膜を形成することができないおそれがある。また、硬化剤の配合量が100質量部を超えると、塗膜の基板に対する密着性が劣るおそれがある。
【0059】
(2−3)触媒
本発明に用いられる熱硬化性バインダー成分には、硬化層の硬度および耐熱性を向上させるために、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、前記特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。熱潜在性触媒は、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物及び硬化剤の合計100質量部に対して、通常は0.01〜10.0質量部程度の割合で配合する。
【0060】
(溶媒)
本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物には、顔料を分散させるために溶媒が含まれる。着色樹脂組成物に用いる溶媒としては、該着色樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等を用いることができる。
【0061】
(任意添加成分)
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。
例えば、顔料分散性を向上するために、顔料分散剤を用いても良い。
(顔料分散剤)
本発明において顔料分散剤は、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、分散性及び分散安定性の点から、高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0062】
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;3級アミン変性ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物);ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類などの高分子界面活性剤が好ましく用いられる。上記高分子分散剤の市販品としては、例えば、ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業製)、メガファックF171、F172、F173(大日本インキ化学工業製)、フロラードFc430、Fc431(住友スリーエム製)、ソルスパース13240、20000、24000、26000、28000等の各種ソルスパース分散剤(アビシア製)、ディスパービック111、161、162、163、164、182、2000、2001(ビックケミー製)、アジスパーPB711、PB411、PB111、PB821、PB822(味の素ファインテクノ製)等を用いることができる。
【0063】
本発明においては、上記の顔料分散剤を1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
分散剤の配合割合は、通常、顔料(緑色顔料と他の顔料の合計)100質量部に対して通常は5〜100質量部であり、中でも、顔料分散性及び分散安定性の点から、10〜60質量部の割合で用いることが好ましい。
その他の添加剤としては、例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
これらの中で、用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0064】
<カラーフィルター用着色樹脂組成物における各成分の配合割合>
化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニン及び必要に応じて配合される顔料の合計の含有量は、カラーフィルター用着色樹脂組成物の固形分全量に対して、5〜65質量%、より好ましくは8〜55質量%の割合で配合することが好ましい。顔料が少なすぎると、カラーフィルター用着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0〜5.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがあり、また顔料等が多すぎると、カラーフィルター用着色樹脂組成物を基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがあり、またそのカラーフィルター用着色樹脂組成物中の顔料の分散に使われる分散剤の量の比率も多くなるために耐溶媒性等の特性が不十分になる恐れがある。尚、本発明において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、溶媒中に溶解している多官能性モノマー等も含まれる。
硬化性バインダー成分は、これらの合計量が、カラーフィルター用着色樹脂組成物の固形分全量に対して35〜95質量%、好ましくは45〜92質量%の割合で配合するのが好ましい。
また、溶媒の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。該溶媒を含む上記カラーフィルター用着色樹脂組成物の全量に対して、通常、65〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも75〜88質量%の範囲内であることが好ましい。上記溶媒の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
また、顔料分散剤を用いる場合の含有量としては、顔料を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カラーフィルター用着色樹脂組成物の固形分全量に対して、1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、カラーフィルター用着色樹脂組成物の固形分全量に対して、1質量%未満の場合には、顔料を均一に分散することが困難になる恐れがあり、60質量%を超える場合には、硬化性、現像性の低下を招く恐れがある。
【0065】
<カラーフィルター用着色樹脂組成物の製造>
カラーフィルター用着色樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されない。例えば、(1)上記高塩素化亜鉛フタロシアニンの顔料分散体と、必要に応じて他の顔料の顔料分散体をそれぞれ準備し、溶媒中に、上記高塩素化亜鉛フタロシアニンの顔料分散体と、硬化性バインダー成分と、他の顔料の顔料分散体と、所望により用いられる各種添加成分を投入し、混合する方法、(2)溶媒中に、硬化性バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合した後、これに上記高塩素化亜鉛フタロシアニンの顔料分散体と、必要に応じて他の顔料分散体を加えて混合する方法、(3)溶媒中に高塩素化亜鉛フタロシアニンと他の顔料とを分散した顔料分散体を準備し、溶媒中に当該顔料分散体と、硬化性バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分を混合する方法、(4)溶媒中に、硬化性バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合した後、これに、高塩素化亜鉛フタロシアニンと他の顔料とを分散した顔料分散体を加え混合する方法等が挙げられる。中でも、顔料分散性の点から、上記(1)の方法を用いることが好ましい。
【0066】
顔料分散体は、溶媒中、必要に応じて顔料分散剤やアルカリ可溶性樹脂等の分散補助樹脂の存在下で、顔料を分散させる工程を有することが好ましい。
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜2.00mmが好ましく、より好ましくは0.05〜1.0mmである。
【0067】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.1〜5.0μmのメンブランフィルターで濾過することが好ましい。
【0068】
本発明においては、公知の分散機を用いて分散させる分散時間は、適宜調整され特に限定されないが、前記化学式(1)で表される高塩素化亜鉛フタロシアニンや必要に応じて用いられる他の顔料を微細化して高い透過率を実現する点から、5〜40時間に設定されることが好ましい。このようにして、顔料粒子の分散性に優れた顔料分散液が得られる。
【0069】
このようにして得られた本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物は、膜厚が2.5μmの塗膜としたときに、透過率スペクトルが、波長510〜540nmに極大値を有し、且つ当該極大値における透過率が40%以上であることが、厚膜化することなくAdobeRGBやDCI等の広い色再現域を有する色空間の目標色度を達成し、且つ高輝度な緑色画素を形成可能な点から好ましい。
【0070】
次に、本発明のカラーフィルターについて説明する。
[カラーフィルター]
本発明のカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層であることを特徴とする。
中でも、本発明に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層の透過率スペクトルが、波長510〜540nmに極大値を有し、且つ当該極大値における透過率が40%以上であることが、高輝度で色再現性に優れる点から好ましい。
【0071】
このような本発明のカラーフィルターについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルターの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルター10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0072】
(着色層)
本発明のカラーフィルターに用いられる着色層は、前述した本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物を用いて硬化させて形成されたものであればよく、特に限定されないが、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、カラーフィルター用着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0073】
当該着色層は、例えば感光性樹脂組成物である場合、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、コールコート法、スピンコート法などの塗布手段を用いて後述する透明基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能性モノマー等を光重合反応させて、カラーフィルター用着色樹脂組成物の塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用するカラーフィルター用着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0074】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶媒にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、カラーフィルター用着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0075】
また、当該着色層は、例えばインクジェット方式で形成する場合、下記の方法により形成することができる。
まず、前記本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物を含み、青(B)用、緑(G)用及び赤(R)用等の色材がそれぞれ配合されたカラーフィルター用着色樹脂組成物を用意する。そして、透明基板1の表面に、遮光部2のパターンにより画成された各色(R、G、B)の着色層形成領域に、対応する色のカラーフィルター用着色樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する。このインクの吹き付け工程において、カラーフィルター用着色樹脂組成物は、インクジェットヘッドの先端部で粘度増大を起こし難く、良好な吐出性を維持し続ける必要がある。各色のカラーフィルター用着色樹脂組成物を、複数のヘッドを使って同時に基板上に吹き付けることもできるので、印刷等の方法で各色ごとに着色層を形成する場合と比べて作業効率を向上させることができる。
次に、各色のインク層を乾燥し必要に応じてプリベークした後、適宜加熱乃至露光することにより硬化させる。インク層を適宜加熱乃至露光すると、カラーフィルター用着色樹脂組成物中に含まれる硬化性樹脂の架橋要素が架橋反応を起こし、インク層が硬化して着色層3R,3G,3Bが形成される。
【0076】
(遮光部)
本発明のカラーフィルターにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルターに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。この遮光部としては、例えば、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO膜(xは任意の数)及びCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO膜(xは任意の数)、CrN膜(yは任意の数)及びCr膜が3層積層されたものであってもよい。
当該遮光部が黒色着色剤をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、遮光部用カラーフィルター用着色樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0077】
上記の場合であって、遮光部の形成方法として印刷法やインクジェット法を用いる場合、バインダー樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0078】
また、上記の場合であって、遮光部の形成方法としてフォトリソグラフィー法を用いる場合、バインダー樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。この場合、黒色着色剤及び感光性樹脂を含有する遮光部用カラーフィルター用着色樹脂組成物には、光重合開始剤を添加してもよく、さらには必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0079】
一方、遮光部が金属薄膜である場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィー法、マスクを用いた蒸着法、印刷法等を挙げることができる。
【0080】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2〜0.4μm程度で設定され、黒色着色剤をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5〜2μm程度で設定される。
【0081】
(透明基板)
本発明のカラーフィルターにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルターに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルターの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルターは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0082】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルター10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルター10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルターが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0083】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0084】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルター及び対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルターの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルターを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルター及び対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。なお、実施例中、「部」とは、「質量部」を表す。
【0086】
[高塩素化亜鉛フタロシアニンの調製]
(合成例1)
フタロジニトリル、塩化亜鉛を原料として亜鉛フタロシアニンを製造した。これの1 −クロロナフタレン溶液は、600〜700nmに光の吸収を有していた。ハロゲン化は、塩化スルフリル2.9質量部、無水塩化アルミニウム3.5質量部、塩化ナトリウム0.43質量部、亜鉛フタロシアニン1質量部を40℃で混合して行った。80℃で15時間反応し、その後、反応混合物を水に投入し、部分塩素化亜鉛フタロシアニン粗顔料を析出させた。この水性スラリーを濾過し、80℃の湯洗浄を行い、90℃で乾燥させ、2.6質量部の精製された部分塩素化亜鉛フタロシアニン粗顔料を得た。
この部分塩素化亜鉛フタロシアニン粗顔料 1質量部、粉砕した塩化ナトリウム7 質量部、ジエチレングリコール1.6 質量部、キシレン0.09質量部を双腕型ニーダーに仕込み、100℃で6時間混練した。混練後80℃の水100質量部に取り出し、1時間攪拌後、濾過、湯洗、乾燥、粉砕した部分塩素化亜鉛フタロシアニン顔料(以下、高塩素化亜鉛フタロシアニン1 と称す)を得た。
得られた部分塩素化亜鉛フタロシアニン顔料は、質量分析計(装置名 BRUKER REFLEX II ブルカー・ダルトニクス(株)製)によるハロゲン含有量分析から、平均組成ZnPcCl13で(Pc;フタロシアニン)で 、1分子中の平均塩素比率は81.3%であった。
【0087】
(合成例2)
ハロゲン化材料の質量部を表1に変更した以外、合成例1と同様に部分塩素化亜鉛フタロシアニンを作製した。
この部分塩素化亜鉛フタロシアニン粗顔料に他の成分を上記合成例1と同じ組成で仕込み、同じ方法でニーダーを用い顔料化し、部分塩素化亜鉛フタロシアニン顔料(以下、高塩素化亜鉛フタロシアニン2 と称す)を得た。
得られた部分塩素化亜鉛フタロシアニン顔料は、合成例1と同様の質量分析によるハロゲン含有量分析から、平均組成ZnPcCl14で(Pc;フタロシアニン)で 1分子中の平均塩素比率は87.5%であった。
【0088】
(比較合成例1)
ハロゲン化材料の質量部を表1に変更した以外、合成例1と同様に部分塩素化亜鉛フタロシアニンを作製した。
この部分塩素化亜鉛フタロシアニン粗顔料に他の成分を上記合成例1と同じ組成で仕込み、同じ方法でニーダーを用い顔料化し、部分塩素化亜鉛フタロシアニン顔料( 以下、部分塩素化亜鉛フタロシアニン と称す) を得た。
得られた部分塩素化亜鉛フタロシアニン顔料は、合成例1と同様の質量分析によるハロゲン含有量分析から、平均組成ZnPcCl11で( Pc;フタロシアニン)で 、1分子中の平均塩素比率は68.8%であった。
【0089】
【表1】
【0090】
[顔料分散体の調製]
(製造例1)
直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだ五十嵐機械製造社製高速分散機「TSC−6H」に、高塩素化亜鉛フタロシアニン1 15質量部、ビックケミー社製アクリル系分散剤「BYK−2001」7質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと称す)78質量部を仕込み、毎分2000回転で8時間攪拌して、高塩素化亜鉛フタロシアニン1(塩素化率 81.3%)を含有する製造例1の緑色顔料分散体を調製した。
【0091】
(製造例2)
製造例1において、高塩素化亜鉛フタロシアニン1の代わりに高塩素化亜鉛フタロシアニン2を用いた以外は製造例1と同様にして、高塩素化亜鉛フタロシアニン2(塩素化率 87.5%)を含有する製造例2の緑色顔料分散体を調製した。
【0092】
(比較製造例1)
製造例1において、高塩素化亜鉛フタロシアニン1の代わりにピグメントグリーン58(入手先 大日本インキ化学工業(株))を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例1の緑色顔料分散体を調製した。
【0093】
(比較製造例2)
製造例1において、高塩素化亜鉛フタロシアニン1の代わりにピグメントグリーン7(入手先 BASF)を用いた以外は製造例1と同様にして、比較製造例2の緑色顔料分散体を調製した。
【0094】
(比較製造例3)
製造例1において、高塩素化亜鉛フタロシアニン1の代わりに部分塩素化亜鉛フタロシアニンを用いた以外は製造例1と同様にして、部分塩素化亜鉛フタロシアニン(塩素化率 68.8%)を含有する比較製造例3の緑色顔料分散体を調製した。
【0095】
(製造例3:黄色顔料分散体の調製)
製造例1において、高塩素化亜鉛フタロシアニン1の代わりにピグメントイエロー150(入手先 ランクセス(株))を用いた以外は製造例1と同様にして、製造例3の黄色顔料分散体を調製した。
【0096】
[カラーフィルター用着色樹脂組成物の調製]
(製造例4:アルカリ可溶性樹脂の調製)
アルカリ可溶性樹脂を調製するために、メチルメタアクリレート(MMA)70部、ベンジルメタアクリレート(BzMA)15部、メタクリル酸(MAA)15部、PGMEA100部をフラスコに仕込み、93℃、窒素雰囲気下で7時間重合した。この反応液の固形分濃度をPGMEAで40.2%に調製し、製造例4のアルカリ可溶性樹脂溶液を得た。得られたポリマーの酸価は104mgKOH、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは24,700であった。
【0097】
(実施例1:着色樹脂組成物Aの調製)
上記製造例1の緑色顔料分散体、上記製造例3の黄色顔料分散体、上記製造例4のアルカリ可溶型光反応性ポリマー溶液、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(以下、DPPA)、2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジル−1−ブタノン(商品名:イルガキュア369)及びPGMEAを下記割合で混合し、室温で混合、攪拌、ろ過して実施例1の着色樹脂組成物Aを得た。
<着色樹脂組成物Aの組成>
・製造例1の緑色顔料分散体:26.75部
・製造例3の黄色顔料分散体:30.92部
・製造例4のアルカリ可溶性樹脂溶液:6.31部
・DPPA(日本化薬(株)製サートマーSR399E):3.26部
・イルガキュア369(商品名:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):2.49部
・プロピレングリコールモノメチルアセテート(PGMEA):30.29部
【0098】
(実施例2:着色樹脂組成物の調製)
実施例1において、製造例1の緑色顔料分散体の代わりに、製造例2の緑色顔料分散体を用い、下記表2の組成とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の着色樹脂組成物を得た。
【0099】
(比較例1〜3:比較着色樹脂組成物の調製)
実施例1において、製造例1の緑色顔料分散体の代わりに、比較製造例1〜3の緑色顔料分散体を用い、下記表2の組成とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜3の着色樹脂組成物を得た。
【0100】
【表2】
【0101】
[評価]
実施例1〜2及び比較例1〜3の着色樹脂組成物をそれぞれ用いて緑色画素を作成し、下記項目の評価を行った。評価結果は表3に示す。
【0102】
(緑色画素の作製、及び色度、輝度・膜厚評価)
10cm画のガラス基板上に、実施例1〜2及び比較例1〜3の着色樹脂組成物をそれぞれスピンコーター(MIKASA製、形式1H−DX2)により、塗布、乾燥し、塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で90℃、3分間加熱した。加熱後、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナー(大日本スクリーン製、形式MA1200)によって、100mJ/cmの強度(405nm照度換算)でフォトマスクを介して紫外線を照射した。紫外線の照射後、23℃の0.5質量%水酸化カリウム水溶液を用いて1分間、スピン現像機で現像した後、純水で1分間洗浄して乾燥し、塗膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株製、SCOV−250Hy−So)により230℃で30分間乾燥し、緑色画素を得た。緑色画素の膜厚は、目標色度y=0.710になるように調整した。その結果、比較例1では上記製版工程を2回繰り返す必要があった。
【0103】
形成した緑色画素を、オリンパス(株)製OSP−SP200顕微分光測光装置で測色した。測定条件は、光源がC光源、照明倍率20倍、ピンホールNo.7(50μm)である。測定結果を表3に示す。
形成した緑色画素の膜厚は、触針式膜厚計P−15(ケー・エル・エーテンコール(株)社製)を用いて測定した。測定結果を表3に示す。
【0104】
(評価基準)
<輝度評価>
測定結果及びシミュレーション結果において、y=0.710となる際の極大透過率が40以上を○、40未満を×とした。
<パターニング評価>
測定結果及びシミュレーション結果において、y=0.710となる際の膜厚が3.0以上を×、3.0未満を○とした。
<総合判定>
輝度評価、パターニング評価において、両者共○判定の場合を○、少なくとも一方が×の場合を×とした。
【0105】
【表3】
【0106】
[結果のまとめ]
化学式(1)で表される塩素化率が80%以上の高塩素化亜鉛フタロシアニンを含む実施例1及び実施例2の着色樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、膜厚を2.5μmとしたときであっても、目標色度とすることができ、輝度も高かった。塩素化率が70%程度の部分塩素化亜鉛フタロシアニンを含む比較例3の塗膜や、高塩素化銅フタロシアニンであるPG7を用いた比較例2の塗膜は、目標色度とすることはできたが、輝度が低かった。また、高臭素化亜鉛フタロシアニンであるPG58を用いた比較例1の塗膜は、膜厚が2.5μmでは目標色度とすることができず、製版工程を2回繰り返し、膜厚を2倍以上厚くしなければ目標色度とすることができないことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0107】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルター
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
図1
図2