(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
照射したレーダ波についての照射先に存在する物体による反射波を受信することで、該物体の位置及び移動速度の情報を該物体についての検出情報として検出するレーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって該レーダ装置による検出の当初から静止状態にある該固定物についての位置情報である第一背景情報と、該レーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって一時的に静止している一時的な固定物についての位置情報である第二背景情報とを記憶する背景情報記憶部、
第一の所定の信号の受信を契機として、前記レーダ装置によって検出された前記検出情報と前記背景情報記憶部に記憶されている前記第一背景情報とを用いて前記レーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって一時的に静止している一時的な固定物を検知する第一検知部、及び
第二の所定の信号の受信を契機として、前記レーダ装置によって検出された前記検出情報と前記背景情報記憶部に記憶されている前記第二背景情報とを用いて前記レーダ装置の検出範囲に存在する移動体を検知する第二検知部、
を備えることを特徴とする監視装置。
前記背景情報記憶部に記憶されている前記第二背景情報を、前記第二検知部による検知の結果に基づき更新する更新部を更に有することを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
前記判定部は、前記検出情報記憶部に記憶されている検出情報の履歴において、前記レーダ装置が物体を最初に検出した際の移動速度が所定の速度閾値よりも小さい場合には、該履歴の対象である物体を移動体ではないとの判定を下すことを特徴とする請求項3に記載の監視装置。
照射したレーダ波についての照射先に存在する物体による反射波を受信することで、該物体の位置及び移動速度の情報を該物体についての検出情報として検出するレーダ装置から該検出情報を取得し、
第一の所定の信号の受信を契機として、前記レーダ装置によって検出された前記検出情報と、前記レーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって前記レーダ装置による検出の当初から静止状態にある該固定物についての位置情報であって背景情報記憶部に記憶されている第一背景情報とを用いて前記レーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって一時的に静止している一時的な固定物を検知し、
第二の所定の信号の受信を契機として、前記レーダ装置によって検出された前記検出情報と、前記レーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって一時的に静止している一時的な固定物についての位置情報であって前記背景情報記憶部に記憶されている第二背景情報とを用いて前記レーダ装置の検出範囲に存在する移動体を検知する、
ことを特徴する監視方法。
照射したレーダ波についての照射先に存在する物体による反射波を受信することで、該物体の位置及び移動速度の情報を該物体についての検出情報として検出するレーダ装置から該検出情報を取得し、
第一の所定の信号の受信を契機として、前記レーダ装置によって検出された前記検出情報と、前記レーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって前記レーダ装置による検出の当初から静止状態にある該固定物についての位置情報であって背景情報記憶部に記憶されている第一背景情報とを用いて前記レーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって一時的に静止している一時的な固定物を検知し、
第二の所定の信号の受信を契機として、前記レーダ装置によって検出された前記検出情報と、前記レーダ装置の検出範囲に存在する固定物であって一時的に静止している一時的な固定物についての位置情報であって前記背景情報記憶部に記憶されている第二背景情報とを用いて前記レーダ装置の検出範囲に存在する移動体を検知する、
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず
図1について説明する。
図1は、監視装置の一実施例の構成を図解した機能ブロック図である。
【0015】
図1において、監視装置10にはレーダ装置1が接続されている。レーダ装置1は、照射したレーダ波についての照射先に存在する物体による反射波を受信することで、当該物体の位置及び移動速度の情報を該物体についての検出情報として検出する。
【0016】
本実施例で使用するレーダ装置1について、
図2を用いて説明する。
本実施例では、レーダ装置1として、回転走査型のものを使用する。
図1は、回転走査型のレーダ装置1と回転走査の制御を電子的若しくは機械的に行う制御装置2とからなる検出システムが、道路3を走行している車両4の検知を行う様子を模式的に表したものである。このレーダ装置1は、検出域5を水平面上で左右に走査することで、車両4と、道路3上の不図示の障害物と、道路3の路肩に位置している固定構造物6である樹木との存在方向を検出することができる。つまり、このような回転走査型のレーダ装置1の使用により、車両4と、障害物と、固定構造物6との位置を2次元上で特定することができる。
【0017】
図1の説明に戻る。
監視装置10は、背景情報記憶部11、第一検知部12、及び第二検知部13を備えている。
【0018】
背景情報記憶部11は、レーダ装置1の検出範囲に存在する固定物についての位置情報である第一背景情報及び第二背景情報を記憶する記憶部である。
【0019】
第一検知部12は、第一の所定の信号の受信を契機として、レーダ装置1によって検出された検出情報と背景情報記憶部11に記憶されている第一背景情報とを用いてレーダ装置1の検出範囲に存在する一時的な固定物を検知する。なお、監視装置10による監視対象が道路である場合には、一時的な固定物とは、例えば、停止中の車両、車両からの落下物、落石、大きなゴミなどといった、電柱やガードレール等の固定構造物以外の障害物である。また、第一の所定の信号とは、例えば、監視装置10の動作モードを、障害物の検知動作を行うモードへ変更する旨を指示する信号である。
【0020】
第二検知部13は、第二の所定の信号の受信を契機として、レーダ装置1によって検出された検出情報と背景情報記憶部11に記憶されている第二背景情報とを用いてレーダ装置1の検出範囲に存在する移動体を検知する。なお、監視装置10による監視対象が道路である場合には、移動体とは、走行中の車両であるが、例えば信号機での指示や道路渋滞等によって一時的に停止している車両も移動体に含めるものとする。また、第二の所定の信号とは、例えば、監視装置10の動作モードを、車両の検知動作を行うモードへ変更する旨を指示する信号である。
【0021】
一時的な固定物の検知に用いる第一背景情報は、レーダ装置1の検出範囲内で長期間に亘り静止している物体についての情報であるのに対し、移動体の検知に用いる第二背景情報は、当該検出範囲内で直近に静止している物体についての情報である。このような、対象とする物体の静止の期間が異なる背景情報を一時的な固定物の検知と移動体の検知とに共用すると、検知精度の低下が懸念される。また、特に、監視装置10の監視対象を移動体から一時的な固定物に変更した直後には、一時的な固定物検知用の背景情報の初期情報として、長期間に亘り静止している物体についての情報を得る必要があるため、監視結果が得られるまでに時間を要することとなる。これに対し、
図1の監視装置10には、一時的な固定物の検知に用いる第一背景情報と、移動体の検知に用いる第二背景情報との両者が独立して用意されている。従って、一時的な固定物の検知と移動体の検知との両者において良好な検知精度が期待できる。また、一時的な固定物の検知用の第一背景情報が背景情報記憶部11で保持されているので、監視装置10の監視対象を移動体から一時的な固定物に変更した直後でも、監視結果を迅速に提供することができる。
【0022】
なお、
図1に図解されているように、監視装置10は、更新部14を更に備えてもよい。更新部14は、背景情報記憶部11に記憶されている第二背景情報を、第二検知部13による検知の結果に基づき更新する。この更新部14を備えることで、第二背景情報が、レーダ装置1の検出範囲内で直近に静止している物体についての最新の情報とすることがきるようになる。
【0023】
また、
図1に破線を用いて図解されているように、監視装置10の第二検知部13は、背景差分処理部21、検出情報記憶部22、予測部23、追跡部24、及び、判定部25を備えていてもよい。
【0024】
背景差分処理部21は、レーダ装置1によって検出された検出情報から、位置情報が第二背景情報と一致していない物体についての検出情報を抽出する。
【0025】
検出情報記憶部22は、背景差分処理部21により抽出された検出情報を、物体毎に記憶する。
【0026】
予測部23は、レーダ装置1によって新たに検出されて背景差分処理部により抽出された検出情報を、検出情報記憶部22に記憶されている検出情報の履歴から物体毎に予測する。
【0027】
追跡部24は、レーダ装置1によって新たに検出された検出情報の対象である物体を、当該検出情報についての予測部23による予測結果に基づいて特定することで、当該物体の追跡を行う。
【0028】
判定部25は、追跡部により追跡されている物体が移動体であるか否かを、検出情報記憶部22に記憶されている当該物体についての検出情報の履歴に基づいて判定する。
【0029】
なお、第二検知部13が上述した構成を備えている場合には、更新部14は、レーダ装置1によって検出情報が検出された物体のうちで判定部25により移動体ではないと判定された物体の位置情報を、第二背景情報とするようにしてもよい。
【0030】
このようにすることで、第二検知部13は、移動体の検知を行える上に、移動する物体が一時的に停止するような場合であっても、当該物体を移動体として検知することができる。
【0031】
なお、判定部25は、検出情報記憶部22に記憶されている検出情報の履歴において、レーダ装置1が物体を最初に検出した際の移動速度が所定の速度閾値よりも小さい場合には、当該履歴の対象である物体を移動体ではないとの判定を下すようにしてもよい。この速度閾値としては、「0」近傍の値とすることが好ましい。この場合、当該履歴の対象である物体は、レーダ装置1によって検出された当初から静止状態にあると推定できるので、移動体ではないとの判断が可能になる。
【0032】
なお、
図1において、レーダ装置1の検出範囲に、道路の車線が複数含まれている場合がある。例えば、
図3に図解した例では、道路3が有している3つの車線7が、レーダ装置1の検出範囲8に含まれている様子を表している。なお、検出範囲8は、
図2に示したレーダ装置1の検出域5を水平面上で左右に走査した範囲の全体を表している。
【0033】
このように、レーダ装置1の検出範囲に、道路の車線が複数含まれている場合には、この複数の車線のうちの少なくとも一部の車線の範囲に対し、第一検知部12による一時的な固定物の検知と、第二検知部13による移動体の検知との両者を行うようにしてもよい。そして、このようにする場合には、背景情報記憶部11には、この少なくとも一部の車線の範囲について、第一背景情報及び第二背景情報の両者が格納されているようにしてもよい。
【0034】
監視装置10を上述のように構成する場合の例について、
図4を用いて説明する。
図4は、路肩運用を行う道路を図解したものである。
【0035】
図4において、(A)は通常時の運用状況を表しており、道路3における中央線9寄りの2車線の通常車線7aの通行を許可し、路肩車線7bの通行を禁止している状況である。この場合には、監視装置10は、道路3の車両の交通量を調べるために、通常車線7aに対して移動体の検知を行う。
【0036】
また、
図4において、(B)は、道路3の交通量が増加したことで路肩車線7bの通行の許可を出す前の状況を表している。この場合には、監視装置10は、(A)の場合と同様に、通常車線7aに対して移動体の検知を行うことに加えて、これから通行の許可を出す路肩車線7bに障害物がないことを確認するために、通常車線7aに対して一時的な固定物の検知を行う。
【0037】
また、
図4において、(C)は、路肩車線7bの通行の許可を出した後の状況を表している。この場合には、監視装置10は、(A)の場合と同様に、通常車線7aに対して移動体の検知を行うことに加えて、路肩車線7bに対しても、車両の交通量を調べるために、移動体の検知を行う。
【0038】
このように、監視装置10は、通常車線7aに対しては、移動体の検知を常時行う。これに対し、路肩車線7bに対しては、監視装置10の動作は、例えば
図5に示すように、S1:検知停止と、S2:障害物検知動作と、S3:車両検知動作とがサイクリックに切り替えられる。このために、一時的な固定物の検知と、移動体の検知との両者が行われる路肩車線7bについて、背景情報記憶部11に第一背景情報及び第二背景情報の両者が格納されるようする。このようにすることで、路肩車線7bに対して行われる、一時的な固定物の検知のための動作と、移動体の検知のための動作とが切り替えられた場合に、監視装置10は、その監視結果を迅速に提供することができる。
【0039】
なお、以降の本実施例の説明では、
図4に図解したような路肩運用を行う道路3の監視を監視装置10が行う場合について説明する。
【0040】
次に
図6について説明する。
図6は、
図1の監視装置10のハードウェア構成の一例を表している。
【0041】
本構成例においては、監視装置10は、コンピュータ30により構成されている。なお、
図5においては、コンピュータ30にレーダ装置1と上位装置41とが接続されている。なお、上位装置41は、コンピュータ30に対して監視処理の動作モードの変更指示を行い、また、コンピュータ30から出力される、移動体や一時的な固定物の検知結果を取得して管理する装置である。
【0042】
コンピュータ30は、MPU31、ROM32、RAM33、ハードディスク装置34、入力装置35、表示装置36、インタフェース装置37、及び記録媒体駆動装置38を備えている。なお、これらの構成要素はバスライン39を介して接続されており、MPU31の管理の下で各種のデータを相互に授受することができる。
【0043】
MPU(Micro Processing Unit)31は、コンピュータ30全体の動作を制御する演算処理装置である。
【0044】
ROM(Read Only Memory)32は、所定の基本制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリである。MPU31は、この基本制御プログラムをコンピュータ30の起動時に読み出して実行することにより、コンピュータ30の各構成要素の動作制御が可能になる。なお、ROM32として、フラッシュメモリ等の、電力供給の停止に対して記憶データが不揮発性であるメモリを使用してもよい。
【0045】
RAM(Random Access Memory)33は、MPU31が各種の制御プログラムを実行する際に、必要に応じて作業用記憶領域として使用する、随時書き込み読み出し可能な半導体メモリである。このRAM33は、コンピュータ30を用いて監視装置10を構成した場合には、
図1の背景情報記憶部11及び検出情報記憶部22としても機能する。
【0046】
ハードディスク装置34は、MPU31によって実行される各種の制御プログラムや各種のデータを記憶しておく記憶装置である。MPU31は、ハードディスク装置34に記憶されている所定の制御プログラムを読み出して実行することにより、各種の制御処理を行えるようになる。
【0047】
入力装置35は、例えばキーボード装置やマウス装置であり、例えば監視装置10の管理者により操作されると、その操作内容に対応付けられている管理者からの各種情報の入力を取得し、取得した入力情報をMPU31に送付する。
【0048】
表示装置36は例えば液晶ディスプレイであり、MPU31から送付される表示データに応じて各種のテキストや画像を表示する。
【0049】
インタフェース装置37は、このコンピュータ30に接続される各種機器との間での各種情報の授受の管理を行う。レーダ装置1及び上位装置41はインタフェース装置37に接続されている。つまり、レーダ装置1から出力される検出情報はインタフェース装置37を介してコンピュータ30に取り込まれる。更に、上位装置41から送られてくる、監視処理の動作モードの変更指示信号もインタフェース装置37を介してコンピュータ30に取り込まれる。また、コンピュータ30から出力される、移動体や一時的な固定物の検知結果を表している信号は、インタフェース装置37を介して上位装置41に送られる。
【0050】
記録媒体駆動装置38は、可搬型記録媒体40に記録されている各種の制御プログラムやデータの読み出しを行う装置である。MPU31は、可搬型記録媒体40に記録されている所定の制御プログラムを、記録媒体駆動装置38を介して読み出して実行することによって、後述する各種の制御処理を行うようにしてもよい。なお、可搬型記録媒体40としては、例えばCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)やDVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリなどがある。
【0051】
このようなコンピュータ30を用いて監視装置10を構成するには、例えば、後述する監視処理をMPU31に行わせるための制御プログラムを作成する。作成された制御プログラムはハードディスク装置34若しくは可搬型記録媒体40に予め格納しておく。そして、MPU31に所定の指示を与えてこの制御プログラムを読み出させて実行させる。こうすることで、コンピュータ30を、背景情報記憶部11、第一検知部12、第二検知部13、及び更新部14等として機能させることが可能となり、コンピュータ30を用いた監視装置10の構成が可能になる。
【0052】
次に、コンピュータ30において行われる監視処理について説明する。
図7は、この監視処理の処理内容を図解したフローチャートである。なお、この
図7の監視処理は、
図4における道路3のうちの路肩車線7bを対象として行われる処理である。
【0053】
図7の処理が開始されると、まず、S101において、計測データを取得する処理をMPU31が行う。
【0054】
ここで、計測データについて、
図8を用いて説明する。
図8は、レーダ装置1から出力される検出情報のデータ例である。検出情報は、回転走査を行っているレーダ装置1によってレーダ波の物体での反射波が受信される度に、その受信時における走査角度と、レーダ装置1からレーダ波の反射点までの距離と、当該物体の移動速度とのデータを対応付けたデータである。ここでは、対応付けられている角度、距離、及び移動速度のデータからなる組のデータを「計測データ」と称することとする。
【0055】
図7の処理の説明に戻る。次に、S102では、道路3の路肩車線7bに対する監視動作の動作モードを、障害物の検知動作を行うモードへ変更する旨を指示する所定の信号をインタフェース装置37が上位装置41から受信したか否かを判定する処理をMPU31が行う。MPU31は、ここで、判定結果がYesのとき、すなわち、当該所定の信号を受信したと判定したときにはS103に処理を進める。一方、MPU31は、ここで、判定結果がNoのとき、すなわち、当該所定の信号を受信していないと判定したときにはS106に処理を進める。
【0056】
S103では、障害物検知処理をMPU31が行う。この処理は、レーダ装置1の検出範囲に存在する前述した一時的な固定物、すなわち障害物を検知する処理であり、その処理の詳細は後述する。前述したS102の判定処理に続けてこのS103の処理を行うMPU31によって、
図1における第一検知部12の機能が提供される。
【0057】
次に、S104では、S103の障害物検知処理によって障害物が検知されなかったか否かを判定する処理をMPU31が行う。ここで、MPU31は、判定結果がYesのとき、すなわち、障害物が検知されなかったと判定したときにはS105に処理を進める。一方、MPU31は、ここで、判定結果がNoのとき、すなわち、障害物が検知されたと判定したときにはS106に処理を進める。
【0058】
次に、S105では、RAM33に格納されている、路肩車線7bについての背景データのうちの、S103の障害物検知処理に用いられる背景データである第一背景情報を、直近に行われた障害物検知処理の結果に基づき更新する処理をMPU31が行う。この更新処理の詳細は後述する。
【0059】
次に、S106では、道路3の路肩車線7bに対する監視動作の動作モードを、車両の検知動作を行うモードへ変更する旨を指示する所定の信号をインタフェース装置37が上位装置41から受信したか否かを判定する処理をMPU31が行う。MPU31は、ここで、判定結果がYesのとき、すなわち、当該所定の信号を受信したと判定したときにはS107に処理を進める。一方、MPU31は、ここで、判定結果がNoのとき、すなわち、当該所定の信号を受信していないと判定したときにはS108に処理を進める。
【0060】
次に、S107では、車両検知処理をMPU31が行う。この処理は、レーダ装置1の検出範囲に存在する前述した移動体、すなわち、走行中若しくは一時的に停止中の車両を検知する処理であり、その処理の詳細は後述する。前述したS106の判定処理に続けてこのS107の処理を行うMPU31によって、
図1における第二検知部13の機能が提供される。
【0061】
次に、S108では、RAM33に格納されている、路肩車線7bについての背景データのうちの、S107の車両検知処理に用いられる背景データである第二背景情報を、直近に行われた車両検知処理の結果に基づき更新する処理をMPU31が行う。この更新処理の詳細は後述する。このS108の処理を行うMPU31によって、
図1における更新部14の機能が提供される。
その後、MPU31は、このS108の更新処理を終えた後にはS101へと処理を戻して、上述した処理を繰り返す。なお、この処理の繰り返しにおけるS101の計測データ取得処理は、一定の所定時間間隔毎に行われるようにする。
【0062】
以上までの処理が
図7の監視処理である。
次に、
図7の監視処理におけるS103の処理である、障害物検知処理について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、この障害物検知処理の処理内容を図解したフローチャートである。
【0063】
この
図9の障害物検知処理は、前掲した特許文献3において説明されている障害物検知方法をMPU31が行うための処理である。
【0064】
図9の処理が開始されると、まず、S201では、速度マスク処理をMPU31が行う。この処理は、
図8のS101の処理により取得された計測データから、所定の速度以上の速度で移動している計測データを除外する処理である。この処理によって、S101の処理により取得された計測データから走行中の車両に関する計測データが除外され、障害物に関する計測データと前述した固定構造物に関する計測データとが得られる。なお、この計測データには、一時停止している若しくは顕著な低速で走行している車両に関するものが含まれることがあるが、このような車両は障害物として扱われる。
【0065】
次に、S202において、背景差分処理が行われる。この処理は、測定データと、背景情報記憶部11としての機能を提供するRAM33に記憶されている第一背景情報との差分を求めて、前述した固定構造物についての測定データを削除する処理である。
【0066】
この背景差分処理について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10において、(A)は、車両及び障害物のどちらもが存在しないときの道路3の状況を表しており、(B)は、障害物Aが存在しているときの道路3の状況を表している。但し、この道路3には、固定構造物6として、ガードレールが設置されている。
【0067】
このような状況においてレーダ装置1を動作させて、(A)において破線で囲まれている範囲を回転走査すると、(A)において太線を用いて表されている物体に関する計測データが得られる。この計測データは、左側の破線とガードレールとの交点についてのレーダ装置1から見た角度と距離とで表される点から、右側の破線とガードレールとの交点についてのレーダ装置1から見た角度と距離とで表される点までの範囲のドットデータ群である。このような、道路3上に車両及び障害物のどちらもが存在しないときに得られる、固定構造物6のみに関する計測データが、障害物検知処理用の第一背景情報である。背景情報記憶として機能するRAM33には、この第一背景情報が記憶される。
【0068】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、レーダ装置1から見た角度を単に「角度」と表現することとする。
【0069】
一方、道路3が
図10の(B)の状況において、レーダ装置1を動作させて、(B)において破線で囲まれている範囲を回転走査すると、(B)において太線を用いて表されている物体に関する計測データが得られる。この計測データは、固定構造物6であるガードレールの一部と、障害物Aとについてのドットデータ群となる。
【0070】
図9のS202の背景差分処理では、
図10の(A)に図解されている背景データと、
図10の(B)に図解されている計測データとの差分を求める処理が行われる。
【0071】
図10の(B)の計測データは、太線で表現されている範囲のドットデータ群、すなわち、L字形状である障害物Aについてのドットデータ群と、レーダ装置1から直接見ることのできる範囲のガードレールのドットデータ群とからなる。従って、差分処理後に残る計測データは、障害物Aとガードレールの中央部6aとについてのものである。このうち、ガードレールの中央部6aについては背景データに存在する部分であるので、計測データから更に除外され、結果として、障害物Aについてのものである、
図11に図解するようなL字状のドットデータ群についての計測データのみが残される。
【0072】
図9の処理の説明に戻る。
次に、S203では、背景差分処理後に残された計測データに対してセグメンテーション処理をMPU31が行う。この処理は、当該計測データに対し、隣接しているドットデータを1つのグループに纏めることで、計測データを複数のグループに分類する処理である。このセグメンテーション処理によって同一のグループに属することとなった各ドットデータ群についての計測データは、同一の障害物候補についての計測データと考えられる。
【0073】
次に、S204では、孤立点除去処理をMPU31が行う。この処理は、S203の処理の結果、いずれのグループにも分類されることのなかった、孤立しているドットデータを、レーダ装置1による計測におけるノイズとみなして、除去する処理である。
【0074】
次に、S205では、属性情報生成処理をMPU31が行う。この処理は、S203のセグメンテーション処理により生成した各グループに属する、各障害物候補についての計測データの属性情報を生成する処理である。より具体的には、この属性情報とは、レーダ装置1により計測された障害物候補の各検出点の計測データである角度及び距離のデータから算出される、各検出点の重心の位置、角度、距離、及び速度と当該障害物候補の大きさとを表したものである。
【0075】
この属性情報は、例えばラベル名等といった、各障害物候補を識別する情報と対応付けてRAM33に記憶される。なお、属性情報は重心に限らず、障害物候補の位置を特定できるような情報であればよく、例えば障害物の外接円の中心座標、障害物の外周の複数の点の座標等でもよい。
【0076】
次に、S206では、履歴情報生成処理をMPU31が行う。この処理は、各障害物候補についての履歴情報を生成して記録する処理である。より具体的には、この処理では、まず、上述の処理により生成した障害物候補の属性情報と、過去に実行された障害物検知処理により得られている障害物の属性情報との比較が行われる。ここで、属性情報の一致する障害物が存在する場合には、MPU31は、その障害物の識別情報であるラベル名を今回計測時の履歴情報として履歴情報テーブルに記憶させておく。一方、属性情報の一致する障害物が存在しない場合には、MPU31は、その障害物候補の識別情報であるラベル名を履歴情報テーブルに記憶させる。
【0077】
ここで
図12について説明する。
図12は履歴情報テーブルの一例である。
履歴情報テーブル50は、障害物の検出履歴を記録するテーブルであって、障害物を識別するラベル名をレーダ装置1の回転走査における各走査タイミングに対応させて順に記録したものであり、RAM33に記憶される。
【0078】
図12の例では、『t−2』回目の走査時には、障害物候補が2個検出され、それらのラベル名が『L1』及び『L2』であることが記録されている。また、その次の『t−1』回目の走査時にはラベル名『L2』に該当する障害物候補は検出されたが、ラベル名『L1』に該当する障害物候補は検出されなかったことを表している。但し、ラベル名『L1』に該当する障害物候補は、他の物体によるオクルージョンの可能性、すなわち、他の物体、例えば他の車線を走行する車両によりレーダ装置1の検知範囲から一時的に隠された可能性がある。そこで、この障害物候補について、その可能性を示す符号『OC』がラベル名『1』の欄に記憶される。なお、オクルージョンのチェックの処理は、後述の
図9のS207の処理によって行われる。その次の『t』回目の走査時には、ラベル名『L1』及び『L2』の障害物候補が検出され、それと共に新規の障害物候補が検出されたので、その障害物候補を識別するラベル名『L3』が記録されている。
【0079】
図9の処理の説明に戻る。
次に、S207では、オクルージョンチェック処理をMPU31が行う。この処理は、上述した履歴情報テーブル50と属性情報とを参照し、オクルージョンが存在するか否か、すなわち、他の物体によって一時的に隠された障害物が存在するか否かを調べる処理である。より具体的には、この処理では、過去に行われた障害物検知処理により検知されていた障害物が今回の障害物検知処理では検知されない場合には、その障害物が他の物体により一時的に隠されたものと推定され、履歴情報テーブル50に前述のように記録される。このオクルージョンチェックの結果は、後述する、障害物検知処理用背景データ更新処理において使用される。
【0080】
次に、S208では、障害物の有無を判定する処理をMPU31が行う。この処理による判定は、履歴情報テーブル50を参照して、同一のラベル名、すなわち、同じ属性情報を有する障害物候補が、所定回数以上繰り返し検出されたか否かにより行う。ここで、所定回数以上、例えば2回以上、同じ障害物候補が検出された場合には、障害物が検出されたとの判定が下される。
【0081】
MPU31は、S208の判定処理において、判定結果がYesのとき、すなわち、障害物が検出されたと判定したときには、S209に処理を進める。一方、MPU31は、S208の判定処理において、判定結果がNoのとき、すなわち、障害物が検出されなかったと判定したときには、S210に処理を進める。
【0082】
次に、S209では、S208の処理によって検出されたと判定された障害物についての情報を取得する処理をMPU31が行う。より具体的には、この処理では、まず、検出された障害物についての前述のドットデータ群の重心の位置の算出が行われる。そして次に、その重心についてのレーダ装置1からの距離及び角度が計測データに基づき算出され、更に、当該ドットデータ群の配置位置に基づき、検出された障害物の大きさの情報の取得が行われる。
【0083】
次に、S210では、障害物検出処理の結果を、インタフェース装置37を介して上位装置41へ出力する処理をMPU31が行い、その後はこの障害物検知処理を終了して、
図7の監視処理へと処理を戻す。このS210の処理では、障害物が検出された場合には、S209の処理により取得された障害物についての情報が出力され、障害物が検出されなかった場合には、その旨を通知する情報が出力される。
【0084】
以上までの処理が障害物検知処理である。
なお、MPU31が、障害物検知処理として、上述した処理を行う代わりに、例えば、前掲した特許文献2において説明されている障害物検知方法を行うようにしてもよい。
【0085】
次に、
図7の監視処理におけるS105の処理である、障害物検知処理用背景データ更新処理について説明する。
【0086】
この更新処理では、まず、レーダ装置1の検出範囲内においてデータ更新を行う範囲を決定し、その更新範囲内の第一背景情報の更新を行う。
【0087】
このS105の処理では、S101の処理で取得された計測データが用いられる。但し、このS105の処理はS104の判定処理の結果がYesの場合、すなわち、S103の障害物検知処理によって障害物が検知されなかったと判定された場合にのみ実行される。従って、S105の処理で用いられる計測データには、固定構造物6についてのものは含まれているが、障害物、すなわち一時的な固定物についての測定データは含まれていない。
【0088】
図13について説明する。
図13は、この障害物検知処理用背景データ更新処理の処理内容を図解したフローチャートである。
【0089】
この
図13の更新処理も、前掲した特許文献3において説明されている背景データの更新処理と基本的には同様のものである。
【0090】
図13の処理が開始されると、まず、S221において、直近のS101の処理により取得されていた計測データによって表されている物体についてのぼかし範囲内の領域を、背景データの更新領域として設定する処理をMPU31が行う。ここで、ぼかし範囲とは、当該物体の周囲を囲む、物体から所定の距離の範囲であり、この範囲内の領域については、背景データの更新を行うものとする。
【0091】
次に、S222において、前述した履歴情報テーブル50における最近の走査時の行が参照され、符号『OC』が付されている障害物候補の物体についてのぼかし範囲内の領域を、背景データの更新領域として設定する処理をMPU31が行う。このような物体は、オクルージョンによって他の物体に隠されていることで、直近のS101の処理により取得されていた計測データには含まれていない固定構造物6の可能性がある。しかも、前述したように、この障害物検知処理用背景データ更新処理は、S103の障害物検知処理によって障害物が検知されなかったと判定された場合にのみ実行されるものであり、実行頻度は余り高くはない。そこで、このような物体に関する領域については、背景データの更新を行うものとする。
【0092】
次に、S223では、上述の処理により設定された更新領域内の背景データに対して、データ更新を行う処理をMPU31が行い、その後はこの
図13の処理を終了する。
【0093】
本実施の形態では、MPU31は、下記の式の計算を更新領域内の各位置について行うことによって背景データを算出する。
【0094】
M=(1−α)M
0 +αD ・・・(1)
なお、上記の式において、Mは更新後の背景データであり、M
0 は更新前の背景データである。DはS101の処理により取得されていた計測データであり、当該位置の計測データが存在している場合には値を「1」とし、存在していない場合には値を「0」とする。MPU31は、更新前の背景データを、背景情報記憶部11としての機能を提供するRAM33の所定領域から読み出して上記(1)式の計算を行い、算出された更新後の背景データをRAM33の当該所定領域に書き込むことで、背景データの更新を行う。
【0095】
前述した背景差分処理では、こうして更新された第一背景情報を2値化して、レーダ装置1の検出範囲内の各位置での固定構造物の存在の有無を表すデータとし、このデータと測定データとの差分を求めることで、固定構造物についての測定データを削除する。
【0096】
以上までの処理が障害物検知処理用背景データ更新処理である。
なお、MPU31が、障害物検知処理用背景データ更新処理として、前掲した特許文献3において説明されている背景データの更新処理を行う代わりに、例えば、前掲した特許文献2において説明されている背景データの更新処理を行うようにしてもよい。
【0097】
次に、
図7の監視処理におけるS107の処理である、車両検知処理について、
図14A及び
図14Bを参照しながら説明する。
図14A及び
図14Bは、この車両検知処理の処理内容を図解したフローチャートである。
【0098】
この車両検知処理は、本願出願人が本願に先行して出願した特願2012−040638号の明細書において説明されている移動体追跡方法をMPU31が行うための処理である。
【0099】
この車両検知処理が開始されると、まず、
図14AのS301において、背景差分処理が行われる。この処理は、測定データと、背景情報記憶部11としての機能を提供するRAM33に記憶されている第二背景情報との差分を求めて、レーダ装置1の検出範囲内で直近に静止している物体についての測定データを削除する処理である。この背景差分処理の処理内容は、
図9の障害物検知処理におけるS202の背景差分処理と同様のものであるので、詳細な説明は省略する。但し、S301の処理では、測定データとの差分を求めるデータが、長期間に亘り静止している固定構造物のみのデータである第一背景情報ではなくて、当該検出範囲内で一時的に静止している物体のデータである第二背景情報である点が異なっている。
【0100】
次に、S302のセグメンテーション処理、S303の孤立点除去処理、及びS304の属性生成処理をMPU31が行う。これらの各処理の処理内容は、
図9の障害物検知処理におけるS203、S204、及びS205の各処理と同様の処理であるので、詳細な説明は省略する。これらの処理により、レーダ装置1の検出範囲内に存在する各物体についての属性情報として、各物体の検知範囲内での位置及び速度の情報が得られる。なお、本実施の形態では、各物体の検知範囲内での位置の情報として、各物体の重心の角度及び距離の値を変換してXY直交2次元座標上の位置を得るものとする。
【0101】
なお、以下の
図14Bの説明では、以上のようにして得られた各物体についてのレーダ装置1の検知範囲内での位置及び速度の情報を、各物体の計測データと称することとする。
【0102】
次に、処理が
図14Bに進み、S305では、背景差分処理後に残された計測データと予測データとのマッチング処理をMPU31が行う。
【0103】
ここで、予測データ及びマッチング処理について、
図15を用いて説明する。
図15は追跡テーブルの構造を表している。
【0104】
追跡テーブル61は、
図14AのS304までの処理によって得られる、当該検出情報の対象である各物体の計測データが格納されるテーブルである。この追跡テーブル61には、各物体についての計測データが各行に格納される。追跡テーブル61は、検出情報記憶部22としての機能を提供するRAM33における、予め定められている記憶領域に配置される。
【0105】
以下、この追跡テーブル61の各列の項目について説明する。
『現在位置』及び『現在速度』の列には、それぞれ、レーダ装置1からの直近の出力から得られた、検知対象の物体についての計測データにおける位置のデータと移動速度のデータとが、当該物体についての検出情報として格納される。但し、詳しくは後述するが、レーダ装置1からの直近の出力から得られた計測データに、検知対象の物体についての計測データが存在しなかった場合には、これらの列には、それぞれ、検知対象の物体の計測データについての予測値が格納される。
【0106】
『初出位置』及び『初出速度』の列には、それぞれ、検知対象の物体についてのレーダ装置1の初めての出力から得られた当該物体についての計測データである位置のデータと移動速度のデータとが格納される。
【0107】
『実測回数』の列には、検知対象の物体をレーダ装置1が実際に検知できた回数、すなわち、検知対象の物体についての検出情報を受け取った回数が格納される。
【0108】
『速度合計値』の列には、検知対象の物体についての計測データのうちの移動速度のデータの合計値が格納される。
【0109】
『平均速度』の列には、検知対象の物体についての平均の移動速度、すなわち、『速度合計値』の値を『実測回数』の値で除算した結果の値が格納される。
【0110】
『連続実測失敗数』の列には、レーダ装置1からの出力から得られた計測データに、検知対象の物体についての計測データが含まれていなかった場合が連続した回数、すなわち、レーダ装置1による計測に失敗した場合が連続した回数が格納される。
【0111】
『予測位置』及び『予測速度』の列には、それぞれ、『現在位置』及び『現在速度』の値から予測される、レーダ装置1からの次の出力から得られる、検知対象の物体についての計測データにおける距離のデータと移動速度のデータとの予測値が格納される。
【0112】
『追跡回数』の列には、検知対象の物体の追跡が継続できている場合における、その追跡の継続回数が格納される。詳しくは後述するが、車両追跡処理では、検知対象の物体をレーダ装置1が検知できていない期間においても、検知結果の予測値に基づいた当該物体の追跡を暫くの間は継続する。『追跡回数』の列には、このときの追跡の継続数が格納される。
【0113】
『構造物フラグ』の列には、検知対象の物体が固定物であるか移動体であるかを表すフラグが格納される。詳しくは後述するが、このフラグの初期値は「OFF」に設定されて検出対象の物体が移動体、すなわち車両であることが表され、その後、後述の所定の条件に合致した場合には、このフラグが「ON」に設定されて検出対象の物体が固定物であることが表される。
【0114】
追跡テーブル61には、検知対象の物体毎に、以上の各項目のデータが格納される。ここで、検出対象の物体における『予測位置』と『予測速度』とからなる組のデータを「予測データ」と称することする。
【0115】
図14BのS305のマッチング処理では、上述した各計測データと上述した各予測データとを比較して、両者が一致するか否かを判定する処理を行う。但し、この判定では、予測データである『予測位置』及び『予測速度』の各々について、その値を中心とする所定幅の許容範囲を設定し、計測データがその許容範囲以内の値であれば、当該計測データは当該予測データと一致しているとの判定を下すものとする。
【0116】
S305のマッチング処理では、更に、上述の判定処理の結果、各計測データを、一致する予測データが存在していた計測データと、一致する予測データが存在しなかった計測データとに分類する処理が行われる。更に、各予測データから、いずれの計測データにも一致しなかった予測データを抽出する処理が行われる。
【0117】
以上のマッチング処理後の各計測データのうち、一致する予測データが存在していた計測データに対しては、後述のS306からS308にかけての処理が行われる。また、一致する予測データが存在しなかった計測データに対しては、後述のS313からS316にかけての処理が行われる。更に、いずれの計測データにも一致しなかった予測データに対しては、後述のS309からS312にかけての処理が行われる。これらの各処理について説明する。
【0118】
まず、S306からS308にかけての処理を説明する。
S306において、追跡テーブル61における、マッチング処理によって計測データと一致すると判定された予測データが格納されていた行を参照して、その行の各項目を当該計測データに基づいて更新する処理をMPU31が行う。具体的には、この行における『現在位置』及び『現在速度』に、当該計測データに含まれている位置のデータと移動速度のデータとがそれぞれ格納される。また、『実測回数』に、この処理時点において『実測回数』に格納されていた値に「1」が加算された値が格納される。そして、『速度合計値』には、この処理時点において『速度合計値』に格納されていた値に、当該計測データに含まれている移動速度のデータが加算された値が格納される。更に、『平均速度』には、『速度合計値』の更新後の値を『実測回数』の更新後の値で除算した値が格納される。なお、『連続実測失敗数』には値「0」が格納されて初期化され、『追跡回数』には、この処理時点において『追跡回数』に格納されていた値に「1」が加算された値が格納される。
【0119】
前述したS305のマッチング処理と、この処理に続いて行われるS306の処理とを行うMPU31によって、
図1における追跡部24の機能が提供される。
【0120】
次に、S307では、S306の処理によって参照中である追跡テーブル61の行に各種のデータが格納されている検出対象の物体が、固定物であるか移動体であるかを判定する条件である、長期停止条件に合致するか否かを判定する処理をMPU31が行う。
【0121】
長期停止条件は、第一条件として、この物体についての『初出速度』の値が所定の閾値よりも小さいこと、より具体的には、速度ゼロ若しくはゼロの近傍であることである。このような物体は、レーダ装置1によって検出された当初から静止状態にあると推定できるので、移動体、すなわち車両ではなく固定物であると判断することができる。
【0122】
なお、本実施の形態では、長期停止条件として、第二条件を更に課している。この第二条件は、この物体についての『実測回数』の値が、所定の閾値以上であることである。この第二条件を課すことで、レーダ装置1による検出情報に一時的に含まれ得るノイズの影響が抑制されて、固定物である物体が実在することの確からしさが向上する。
【0123】
更に、本実施の形態では、長期停止条件として、第三条件も課している。この第三条件は、この物体についての『追跡回数』の値が、所定の閾値以上であることである。この第三条件を課すことによっても、レーダ装置1による検出情報に一時的に含まれ得るノイズの影響が抑制されて、固定物である物体が実在することの確からしさが向上する。
【0124】
なお、第二条件と第三条件とのうちのどちらか一方若しくは両方を、長期停止条件から除外するようにしてもよい。
【0125】
MPU31は、S307の判定処理において、判定結果がYesのとき、すなわち、追跡テーブル61に格納されている検出対象の物体についてのデータが、長期停止条件に合致すると判定したときにはS308に処理を進める。一方、MPU31は、判定結果がNoのとき、すなわち、S307の判定処理において、当該検出対象の物体についてのデータが、長期停止条件に合致しないと判定したときにはS317に処理を進める。
【0126】
上述したS307の処理を行うMPU31によって、
図1における判定部25の機能が提供される。
【0127】
S308では、構造物テーブルに対して登録若しくは更新を行うと共に、追跡テーブル61における検出対象の物体についてのデータの格納行における『構造物フラグ』を値「ON」とする処理をMPU31が行い、その後はS317に処理を進める。
【0128】
ここで構造物テーブルについて説明する。
図16は構造物テーブルの構造を表している。
【0129】
構造物テーブル62は、監視装置10によって固定物である、すなわち固定構造物であるとの判定が下された物体についての各種の情報が格納されるテーブルであり、RAM33において予め定められている記憶領域に配置されるテーブルである。この構造物テーブル62には、固定物である各物体についての検出情報のデータが各行に格納される。
【0130】
以下、この構造物テーブル62の各列の項目について説明する。
『ID』の列には、各構造物に対して個々に付与される識別コードが格納される。
【0131】
『位置』の列には、対象構造物の位置のデータが格納される。
『実測回数』の列には、対象構造物をレーダ装置1が実際に検出できた回数が格納される。
【0132】
『追跡回数』の列には、対象構造物の追跡を監視装置10が継続できている場合における、その追跡の継続回数が格納される。
【0133】
『追跡フラグ』の列には、対象構造物の追跡の現在の状況を表すフラグが格納される。より具体的には、このフラグが「0」の場合には、対象構造物の追跡が、レーダ装置1からの出力に基づいて行えていることを表している。また、このフラグが「1」の場合には、対象構造物の追跡が中止されていることを表している。更に、このフラグが「2」の場合には、レーダ装置1からの出力に基づいた対象構造物の追跡は行えておらず、計測データの予測値に基づいた追跡を行っていることを表している。
【0134】
図14BのS308の処理では、MPU31は、まず、S306の処理によって参照中である追跡テーブル61の行における『現在位置』の値を取得し、構造物テーブル62における『位置』のデータから、この『現在位置』の値と一致するものを探す処理を行う。但しこの探索処理では、構造物テーブル62における『位置』のデータについて、その位置を中心とする所定幅の許容範囲を設定し、『現在位置』がその許容範囲以内であれば、両者は一致しているとの判定を下すものとする。
【0135】
この探索処理により、『現在位置』の値と一致する『位置』のデータを発見した場合には、MPU31は、この『位置』のデータが含まれていた構造物テーブル62の行のデータを更新する処理を行う。より具体的には、MPU31は、S105の処理によって参照中である追跡テーブル61の行における『実測回数』及び『追跡回数』の値を、『位置』のデータが含まれていた構造物テーブル62の行における『実測回数』及び『追跡回数』に格納する処理を行う。更に、MPU31は、この行における『追跡フラグ』の値を「0」とする。なお、このときに、構造物テーブル62におけるこの行の『位置』の値を、追跡テーブル61の行における『現在位置』の値に置き換えてもよく、また、両者の値の平均値に置き換えてもよい。なお、両者の値の平均値の算出では、重み付き平均を算出するようにしてもよい。
【0136】
一方、前述の探索処理により、『現在位置』と一致する『位置』のデータが見つからなかった場合には、MPU31は、構造物テーブル62に新たな行を登録する処理を行う。より具体的には、MPU31は、『ID』として、構造物テーブル62の他の行の値とは異なる値を格納し、『位置』として、S306の処理によって参照中である追跡テーブル61の行における『現在位置』の値を格納する。MPU31は、更に、『実測回数』及び『追跡回数』として、追跡テーブル61の当該行における『実測回数』及び『追跡回数』の値を格納し、この行における『追跡フラグ』の値を「0」とする。
【0137】
次に、S309からS312にかけての処理を説明する。
前述したように、S309からS312にかけての処理は、いずれの計測データにも一致しなかった予測データに対して行われる。これはすなわち、当該予測データの対象である物体が、例えば他の物体による前述したオクルージョンにより、レーダ装置1によって今回は検出できず、実測データでの追跡が行えなかった場合を表している。
【0138】
本実施の形態の監視装置10では、このようなオクルージョン等によって検出対象の物体のレーダ装置1による計測が途切れても、検出結果の予測値に基づいた当該物体の追跡を暫くの間は継続する。また、本実施例の監視装置10では、この検出対象の物体のレーダ装置1による計測が途切れている期間においては、実測データに代えて、予測データを出力するようにする。S309からS312にかけての処理は、これらの機能を監視装置10において実現させるための処理である。
【0139】
まず、S309では、いずれの計測データにも一致しなかった予測データが格納されていた追跡テーブル61の行を参照し、その行の『現在位置』及び『現在速度』に、当該予測データの値を格納する処理をMPU31が行う。なお、予測データの値とは、具体的には『予測位置』及び『予測速度』の値である。この処理を行うことで、後述するS317の出力処理において、移動体、すなわち車両である物体のうち実測データでの追跡が行えなかったものについて、実測データの代わりに予測データを出力させることが可能になる。
【0140】
次に、S310では、S309の処理によって参照中である追跡テーブル61の行の他の項目を更新する処理をMPU31が行う。具体的には、この行における、『連続実測失敗数』には、この処理時点において『連続実測失敗数』に格納されていた値に「1」が加算された値が格納される。また、『追跡回数』には、この処理時点において『追跡回数』に格納されていた値に「1」が加算された値が格納される。なお、MPU31は、このときに、追跡テーブル61の参照中の行の『構造物フラグ』が「ON」であった場合には、この行にデータが表されていた固定物についての構造物テーブル62における行の『追跡フラグ』を、値「2」に設定する処理も行う。
【0141】
次に、S311では、S309の処理によって参照中である追跡テーブル61の行の対象である物体の追跡を継続するか否かを判定する処理をMPU31が行う。より具体的には、MPU31は、この行における『連続実測失敗数』の値を読み出し、この値が、所定の追跡中止判定閾値未満であるか否かを判定する処理を行う。なお、追跡中止判定閾値は、例えば数回〜10回程度の値である。MPU31は、ここで、判定結果がYesのとき、すなわち、『連続実測失敗数』が閾値未満であると判定したときには、物体の追跡を継続するとの判定を下してS317に処理を進める。一方、MPU31は、ここで、判定結果がNoのとき、すなわち、『連続実測失敗数』が閾値以上になったと判定したときには、物体の追跡を中止するとの判定を下してS312に処理を進める。
【0142】
S312では、S309の処理によって参照中である行を追跡テーブル61から削除して、当該行の対象である物体の追跡を中止する処理をMPU31が行い、その後はS317に処理を進める。なお、MPU31は、このときに、追跡テーブル61から削除した行の『構造物フラグ』が「ON」であった場合には、この行にデータが表されていた固定物についての構造物テーブル62における行の『追跡フラグ』を、値「1」に設定する処理も行う。
【0143】
次に、S313からS316にかけての処理を説明する。
前述したように、S313からS316にかけての処理は、いずれの予測データにも一致しなかった計測データに対して行われる処理である。これらの処理は、この計測データを追跡テーブル61に新たに登録して、当該計測データの対象である物体の追跡を開始する処理である。但し、この計測データの対象である物体は、過去に追跡を行っていたが、レーダ装置1による検知が長期間連続して途絶えたことにより、追跡が中止されていたものである場合がある。特に、この物体が固定物であった場合には、過去に行った追跡によって当該物体の情報が構造物テーブル62に既に登録されていることがある。そこで、S313からS316にかけての処理では、このような場合に、同一の固定物が、構造物テーブル62に重複して登録されることを防止するための処理も行われる。
【0144】
まず、S313では、いずれの予測データにも一致しなかった計測データの対象である物体についての情報が構造物テーブル62に登録されているか否かを判定する処理をMPU31が行う。より具体的には、この処理において、MPU31は、構造物テーブル62における『位置』のデータから、いずれの予測データにも一致しなかった計測データにおける位置のデータと一致するものを探す処理を行う。但しこの探索処理では、構造物テーブル62における『位置』のデータについて、その値を中心とする所定幅の許容範囲を設定し、当該計測データにおける位置の値がその許容範囲以内の値であれば、両者は一致しているとの判定を下すものとする。
【0145】
MPU31は、S313の判定処理において、判定結果がYesのとき、すなわち、計測データの対象である物体についての情報が構造物テーブル62に登録されていると判定したときにはS314に処理を進める。一方、MPU31は、S313の判定処理において、判定結果がNoのとき、すなわち、計測データの対象である物体についての情報が構造物テーブル62に登録されていないと判定したときにはS316に処理を進める。
【0146】
S314では、いずれの予測データにも一致しなかった計測データと、S313の処理で発見された、当該計測データの対象である物体についての構造物テーブル62の情報とを用いて、当該物体のデータを追跡テーブル61に再登録する処理をMPU31が行う。具体的には、追跡テーブル61における『現在位置』及び『初出位置』には、構造物テーブル62における対象の物体についての『位置』のデータが格納される。なお、この物体は固定物であるので、追跡テーブル61における『現在速度』、『初出速度』、『速度合計値』、及び『平均速度』には、値「0」が格納される。また、追跡テーブル61における『実測回数』及び『追跡回数』には、それぞれ、この処理時点において構造物テーブル62における対象の物体についての『実測回数』及び『追跡回数』に格納されていた値に「1」が加算された値が格納される。なお、『連続実測失敗数』には値「0」が格納されて初期化され、『構造物フラグ』は、固定物であることを表す値「ON」が格納される。
【0147】
次に、S315では、S313の処理で発見された、計測データの対象である物体についての構造物テーブル62の情報を更新する処理をMPU31が行い、その後はS317に処理を進める。このS315の処理では、より具体的には、この物体についての構造物テーブル62における行の『実測回数』及び『追跡回数』に、それぞれ、この処理時点において『実測回数』及び『追跡回数』に格納されていた値に「1」が加算された値が格納される。更に、この行における『追跡フラグ』が値「0」に設定される。
【0148】
一方、S316では、いずれの予測データにも一致しなかった計測データを用いて、当該計測データの対象である物体のデータを追跡テーブル61に新規に登録する処理をMPU31が行い、その後はS317に処理を進める。このS316の処理では、より具体的には、追跡テーブル61における『現在位置』及び『初出位置』には、当該計測データにおける位置のデータが格納される。また、『現在速度』、『初出速度』、『速度合計値』、及び『平均速度』には、当該計測データにおける移動速度のデータが格納される。また、追跡テーブル61における『実測回数』及び『追跡回数』には値「1」が格納される。なお、『連続実測失敗数』には値「0」が格納されて初期化され、『構造物フラグ』は、ここでは、移動体であることを表す値「OFF」が格納される。
【0149】
S305のマッチング処理後の各データに対して、以上までに説明したS306からS316にかけての処理が行われた後には、これより説明するS317からS319にかけての処理が行われる。
【0150】
まず、S317では、追跡テーブル61を参照して、『構造物フラグ』が「OFF」である行、すなわち、移動体である車両についてのデータが格納されている行を抽出する処理をMPU31が行う。
【0151】
次に、S318では、S317の処理により抽出された行の『現在位置』と『現在速度』とを読み出し、読み出したデータを各行で対応付けて、インタフェース装置37から出力させ、上位装置41に送る処理をMPU31が行う。
【0152】
次に、S319では、追跡テーブル61の全ての行について、検出対象の物体についての次の検出情報を行毎に予測して予測結果を格納する処理をMPU31が行う。本実施例では、この予測処理では、MPU31は、まず、予測対象の行の『現在位置』及び『平均速度』の値を取得する。次に、取得した『平均速度』の値に、
図7のS101の計測データ取得処理が実行される時間間隔を乗算して、当該時間間隔の期間における検出対象の物体の移動量を予測する。そして、取得した『現在位置』の値に、この移動量の予測結果を加算した値を、この物体についての位置の予測値とする。なお、この物体についての移動速度の予測値は、取得した『平均速度』の値とする。その後、MPU31は、得られた位置及び移動速度の予測値を、それぞれ、予測対象の行の『予測位置』及び『予測速度』に格納する。この処理を行うMPU31によって、
図1における予測部23の機能が提供される。
【0153】
MPU31は、上述したS319の処理を終えた後には、
図14A及び
図14Bに図解した車両検知処理を終了して、
図7の監視処理へと処理を戻す。
【0154】
以上までの処理が車両検知処理である。この車両検知処理をMPU31が行うことで、車両が一時的に停止するような場面でも、そのような車両の追跡を継続することができる。
【0155】
なお、MPU31が、車両検知処理として、上述した前掲した特許文献3において説明されている障害物検知方法を行う代わりに、例えば、前掲した特許文献1において説明されている障害物検知方法を行うようにしてもよい。
【0156】
次に、
図7の監視処理におけるS108の処理である、車両検知処理用背景データ更新処理について説明する。
【0157】
この更新処理は、前述した障害物検知処理用の更新処理とは異なり、S107の車両検知処理が実行された場合には、その処理に続いて毎回行われる。また、この車両検知処理用の更新処理は、レーダ装置1の検出範囲内においてデータ更新を行う範囲を決定し、その更新範囲内の背景データの更新を行う点においては、障害物検知処理用の更新処理と同様である。但し、この車両検知処理用の更新処理では、最初に、S101の処理で取得された計測データのうち、S107の車両検知処理により検知された車両についての計測データを除外し、残りの計測データを用いて背景データの更新を行う。車両検知処理用の更新処理は、このようにすることで、第二背景情報、すなわち、レーダ装置1の検出範囲内で一時的に静止している物体のデータが得られる。
【0158】
図17について説明する。
図17は、この車両検知処理用背景データ更新処理の処理内容を図解したフローチャートである。
【0159】
図17の処理が開始されると、まず、S321において、直近のS101の処理により取得されていた計測データから、S107の車両検知処理により検知された車両についての計測データを除外する処理をMPU31が行う。
【0160】
次に、S322において、S321の除外の処理の後に残された計測データによって表されている物体についてのぼかし範囲内の領域を、背景データの更新領域として設定する処理をMPU31が行う。この処理は、処理対象の計測データが異なることを除けば、
図13の障害物検知処理用背景データ更新処理におけるS221の処理と同様の処理である。
【0161】
次に、S323において、上述の処理により設定された更新領域内の背景データに対して、データ更新を行う処理をMPU31が行い、その後はこの
図17の処理を終了する。この処理は、
図17の障害物検知処理用背景データ更新処理におけるS223の処理と同様の処理であり、背景データの更新を、前掲の(1)式を用いて行う。
図14AのS301の背景差分処理では、上述のようにして更新された第二背景情報を2値化して、レーダ装置1の検出範囲内で静止している物体の存在の有無を表すデータとし、このデータと測定データとの差分を求める。
【0162】
以上までの処理が車両検知処理用背景データ更新処理である。
なお、
図17の処理では、
図13のS222の処理、すなわち、オクルージョンにより隠されている可能性のある物体についてのぼかし範囲内の領域を、背景データの更新領域として設定する処理を行っていない。これは、前述のように、この車両検知処理用背景データ更新処理は、S107の車両検知処理が実行された場合には、その処理に続いて毎回行われる。従って、物体がオクルージョンにより一時的には隠されてしまっても、その後に行われる更新処理ではオクルージョンが解消されるので、S222の処理を行わなくても、十分な背景データの精度が得られるからである。従って、車両検知処理用背景データ更新処理においても、障害物検知処理用背景データ更新処理のように、S222の処理を行うようにしてもよい。
【0163】
MPU31が、以上までに説明した各種の処理を行うことで、コンピュータ30が監視装置10として機能し、路肩車線7bを対象とする道路3の監視が行われる。
【0164】
なお、
図7の監視処理では、S102からS105にかけての処理である、障害物の検知に関する処理と、S106からS108にかけての処理である、車両の検知処理とが逐次行われる。この代わりに、S102からS105にかけての処理と、S106からS108にかけての処理とを並行して同時に行うようにしてもよい。
【0165】
また、
図4における道路3のうちの通常車線7aに対しては、
図7の監視処理のうちのS101、S107、及びS108の処理が繰り返し行われる。この処理の繰り返しを、路肩車線7bに対して行われる
図7の監視処理と並行して行うようにしてもよい。また、路肩車線7bに対するS108の処理に続けて、通常車線7aに対するS101、S107、及びS108の処理を行い、その後にS101に処理を戻して、路肩車線7bに対しての監視処理を繰り返すようにしてもよい。