(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、スマートフォン又はタブレット型端末等の携帯端末を、接触面を有する入力部を備えた電子機器の一例として説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態における携帯端末のハードウェア構成例を示す図である。
図1において、携帯端末10は、CPU11、メモリ12、補助記憶装置13、及びタッチパネル14等を有する。
【0013】
補助記憶装置13は、携帯端末10にインストールされたプログラム等を記憶する。メモリ12は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置13からプログラムを読み出して記憶する。CPU11は、メモリ12に記憶されたプログラムに従って携帯端末10に係る機能を実現する。
【0014】
タッチパネル14は、入力機能と表示機能との双方を備えた電子部品であり、情報の表示や、ユーザからの入力の受け付け等を行う。タッチパネル14は、表示装置15、入力装置16、及びタッチコントロールIC17等を含む。
【0015】
表示装置15は、液晶パネル等であり、タッチパネル14の表示機能を担う。入力装置16は、表示装置15に対する接触物の接触を検出するセンサを含む電子部品である。接触物の接触の検出方式は、静電方式、抵抗膜方式、又は光学方式等、公知の方式のいずれであってもよい。入力装置16は、接触物に反応した(すなわち、接触を検出した)センサの座標(以下、「センサ座標」という。)の集合をタッチコントロールIC17に入力する。なお、接触物とは、タッチパネル14に接触する物体をいう。斯かる物体の一例として、ユーザの指や専用又は一般のペン等が挙げられる。
【0016】
タッチコントロールIC17は、入力装置16より入力されるセンサ座標の集合に基づいて、接触物の接触領域の形状の特定等を実行するIC(Integrated Circuit)である。
【0017】
図2は、本実施の形態における携帯端末の機能構成例を示す図である。
図2において、携帯端末10は、接触領域特定部111、重心位置算出部112、補正量算出部113、補正部114、及び上位部115等を有する。このうち、接触領域特定部111は、タッチコントロールIC17に記憶されたプログラムがタッチコントロールIC17に実行させる処理により実現される。その他の各部は、補助記憶装置13に記憶され、メモリ12にロードされたプログラムがCPU11に実行させる処理により実現される。但し、接触領域特定部111が、他の各部と同様にCPU11によって実現されてもよい。また、上位部115以外の各部が、タッチコントロールIC17によって実現されてもよい。
【0018】
携帯端末10は、また、補正量記憶部116を有する。補正量記憶部116は、例えば、メモリ12又は補助記憶装置13等を用いて実現可能である。
【0019】
接触領域特定部111は、入力装置16より入力されるセンサ座標の集合に基づいて、入力装置16への接触物の接触領域の形状を特定する。
【0020】
重心位置算出部112は、接触領域の重心位置を算出する。接触領域の重心位置が、接触物による指示位置の基準位置となる。補正量算出部113は、接触領域の形状等に基づいて、重心位置に対する補正量を算出する。算出された補正量は、補正量記憶部116に記憶される。
【0021】
補正部114は、重心位置算出部112によって算出される重心位置を、補正量記憶部116に記憶された補正量によって補正する。補正された結果が、接触物による指示位置の座標値として上位部115に出力される。
【0022】
上位部115は、タッチパネル14を介した操作に応じて、ユーザに所定の機能を提供するアプリケーション等である。
【0023】
以下、携帯端末10が実行する処理手順について説明する。
図3は、携帯端末が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図3の処理は、入力装置16によって指等の接触物の接触が検出されると開始される。例えば、指のタッチダウンが行われると、
図3の処理が開始される。指のタッチダウンとは、タッチパネル14に指が接触することをいう。
【0024】
ステップS101において、接触領域特定部111は、入力装置16よりセンサ座標の集合の入力を受け付ける。続いて、接触領域特定部111は、当該センサ座標の集合に基づいて、接触領域の形状を特定する(S102)。
【0025】
図4は、本実施の形態における接触領域に関する各パラメータを示す図である。
図4に示されるXY平面は、タッチパネル14の接触面に対応する。XY平面に示された各格子点は、各センサの座標に対応する。
図4において楕円によって示される領域は、入力装置16より検出されたセンサ座標の集合によって形成される領域を示す。当該領域が、接触領域に相当する。なお、
図4に示される接触領域は、例えば、左手親指の接触領域である。
【0026】
本実施の形態において、接触領域は、線分L1の両端の座標値である(X1,Y1)及び(X2,Y2)、線分L1の長さd、並びに線分L1のX軸に対する角度θによって規定される。すなわち、接触領域特定部111は、(X1,Y1)及び(X2,Y2)、長さd、及び角度θを算出することにより、接触領域の形状を特定する。
【0027】
線分L1の両端の座標値は、例えば、入力されたセンサ座標の集合の中の二つのセンサ座標を一組とする全ての組み合わせの中で、二つのセンサ間の距離が最長となる組み合わせに係る二つのセンサ座標を特定することによって求められる。すなわち、特定された二つのセンサ座標が、線分L1の両端の座標値となる。
【0028】
また、長さd及び角度θは、以下の演算を行うことにより算出可能である。
長さd={(X2−X1)
2+(Y2−Y1)
2}
1/2
角度θ=(Y2−Y1)/(X2−X1)
続いて、重心位置算出部112は、次の演算を行うことにより、接触領域の重心位置Gの座標値を算出する(S103)。なお、重心位置Gは、接触物による指示位置の基準位置となる。重心位置GのX座標値であるXgと、Y座標値であるYgは、それぞれ次にように算出される。
【0029】
Xg=(X1+X2)/2
Yg=(Y1+Y2)/2
続いて、補正量算出部113は、補正量記憶部116に補正量(補正値)が記憶されているか否かを判定する(S104)。
図3の処理が開始されてから最初にステップS104が実行されるタイミングでは、補正量記憶部116に補正量は記憶されていない(S104でNo)、したがって、ステップS105に進む。
【0030】
ステップS105において、補正量算出部113は、基準位置に対する補正量を算出する。基本的に、基準位置に対して指先方向に補正が行われるように補正量が算出される。指先方向とは、通常、タッチパネル14の上側の方向である。
図4に示されるXY平面においては、Y座標が大きくなる方向である。
【0031】
補正量の算出式としては、例えば、以下の式が挙げられる。なお、ΔXは、X方向の補正量である。ΔYは、Y方向の補正量である。
【0032】
ΔX=d×cosθ
ΔY=d×sinθ
続いて、補正量算出部113は、算出された補正量(ΔX,ΔY)を、補正量記憶部116に記憶する(S107)。
【0033】
続いて、補正部114は、補正量記憶部116に記憶された補正量を利用して、基準位置(重心位置G)によって特定されている指示位置を補正する(S108)。補正は、例えば、次の演算を行うことによって行われる。
【0034】
補正後の指示位置PのX座標値=Xg+ΔX
補正後の指示位置PのY座標値=Xg+ΔY
その結果、指示位置の座標値は、例えば、
図5に示されるように補正される。
図5は、指示位置の補正例を示す図である。
図5に示されるように、指示位置は、指先側に補正される。補正された指示位置Pに対応する座標値が、上位部115に通知される。指示位置が指先側に補正されることにより、指の腹によってタッチされた場合であっても、指先を指示位置とすることができる。
【0035】
続いて、接触領域特定部111は、入力装置16から入力されるセンサ座標の集合が変化するまで待機する(S108)。センサ座標の集合が変化すると(S108でYes)、接触領域特定部111は、接触状態が解除されたか否か、すなわち、タッチアップが行われたのか否かを判定する(S109)。タッチアップとは、接触していた指がタッチパネル14から離れることをいう。タッチアップであるか否かは、例えば、入力装置16より入力されるセンサ座標の集合が空であるか否かによって判定することができる。
【0036】
タッチアップでない場合(S109でNo)、携帯端末10は、ステップ102以降を繰り返す。タッチアップでない場合とは、接触状態が維持されたままで接触物の位置が移動した場合である。例えば、ユーザがタッチパネル14に指をタッチしたまま指をスライドさせた場合である。
【0037】
ステップS102以降が繰り返される場合、補正量記憶部116に補正量は記憶されている(S104でYes)。したがって、改めて補正量は算出されない。よって、ステップS107では、最初に算出された補正量によって、指示位置の補正が行われる。
【0038】
すなわち、接触物が接触状態を維持したまま接触領域が移動している間、接触物の接触が検出されたときに(接触物の接触の検出に応じて)算出された補正量によって、指示位置の補正が行われる。但し、必ずしも接触物が接触した時点に算出された補正量ではなく、接触物の接触が検出されてから所定期間内に算出された補正量であってもよい。例えば、当該所定期間内は、補正量が変化し、所定期間以降は、補正量が一定とされてもよい。この場合、所定期間以降に使用される補正量は、所定期間のいずれかの時点において算出された補正量であってもよいし、又は所定期間の補正量の平均値等、所定期間の補正量に対する関数値であってもよい。
【0039】
接触物の接触状態が解除されると、すなわち、タッチアップが行われると(S109でYes)、補正部114は、補正量記憶部116に記憶されている補正量を削除する(S110)。
【0040】
上述したように、本実施の形態によれば、接触物が接触してから、接触状態が維持されている間、一定の補正量によって、指示位置の補正が行われる。したがって、接触物の軌跡について、補正前の形状と補正後の形状とのずれを小さくすることができる。この点について、図を用いて説明する。
【0041】
図6は、接触した指が直線的に移動した場合の本実施の形態による補正例を示す図である。
図6では、指が直線的に左から右へスライドした例が示されている。すなわち、接触領域がA1→A2→A3のように変化した例が示されている。
【0042】
接触領域A1において、重心位置はG1で示される。また、補正後の指示位置はP1によって示される。接触領域A2において、重心位置はG2で示される。また、補正後の指示位置はP2によって示される。接触領域A3において、重心位置はG3で示される。また、補正後の指示位置はP3によって示される。
【0043】
また、軌跡t0は、補正前の重心位置の軌跡を示す。軌跡t1は、補正後の指示位置の軌跡を示す。本実施の形態では、接触状態が維持されている間、補正量は一定であるため、指が直線的に移動している場合、補正後の軌跡t1も直線的となる。
【0044】
したがって、補正後の軌跡の形状がユーザの意図した軌跡の形状(例えば、略直線)に対して大きくずれを有する可能性は、小さくなる。
【0045】
一方、
図7は、接触領域の形状に応じて補正値が変わってしまう場合の補正例を示す図である。
図7では、接触領域の面積が大きくなればなる程、補正量が大きくなる例を示す。なお、
図7において、
図6と同じ意味を示す対象については、同一符号が付されている。
【0046】
図7では、接触領域A2は、接触領域A1よりも小さいため、その補正量は、接触領域A1における補正量よりも小さくなる。
図7の例では、接触領域A2における補正量が0となった例が示されている。また、接触領域A3は、接触領域A1よりも大きいため、その補正量は、接触領域A1おける補正量よりも大きくなる。
【0047】
その結果、補正前の軌跡t0が直線的であったとしても、補正後の軌跡t1の形状は、直線的ではなくなっている。すなわち、軌跡t1は、軌跡t0に対して略平行でなくなっている。
【0048】
このように、接触状態が維持されている間に補正量が変化する場合、補正後の軌跡の形状がユーザの意図した軌跡の形状(例えば、略直線)に対して大きくずれを有する可能性が、高くなる。
【0049】
なお、本実施の形態は、デジタルカメラや車載器等、携帯端末以外の電子機器のタッチパネルに関して適用されてもよい。
【0050】
また、接触面を有する入力装置であれば、ノートPC等に備えられているタッチパッド等、タッチパネル以外の入力装置に本実施の形態が適用されてもよい。すなわち、表示装置を含まない電子部品であって、接触面を有する入力装置を備えた電子部品に本実施の形態が適用されてもよい。
【0051】
なお、本実施の形態において、携帯端末10は、補正装置の一例である。
【0052】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。