(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024324
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
B43K8/02 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-201084(P2012-201084)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-54776(P2014-54776A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】松下 欣也
(72)【発明者】
【氏名】福井 哲也
【審査官】
青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3150534(JP,U)
【文献】
特開2011−194625(JP,A)
【文献】
実開昭63−6885(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 1/12
B43K 5/00− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にペン先を支持させてなる筆記具本体と、この筆記具本体に螺着され内部にインクを貯蔵可能なインクカートリッジと、このインクカートリッジを被覆し前記筆記具本体に螺着されるカバーと、前記カバーを前記筆記具本体に螺着させる際にその螺着操作力を前記インクカートリッジに伝達して該インクカートリッジをも前記筆記具本体に螺着させる連動機構とを備え、この連動機構が、前記カバーを前記筆記具本体から離脱させるための離脱操作力は前記インクカートリッジに伝達しないように構成されていることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記連動機構が、前記インクカートリッジと前記カバーとを凹凸係合させ、前記インクカートリッジ及びカバーを前記筆記具本体に螺着させる際に前記凹凸係合部分を介して前記カバーから前記インクカートリッジに螺着操作力を伝達する構成を有し、この凹凸係合部分の凹部が、前記カバーを前記筆記具本体から離脱させるには該凹凸係合部の凸部に摺接した状態で前記インクカートリッジに離脱操作力を伝達せず前記インクカートリッジと前記カバーとを離間させる方向に案内するカム面を備えている請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記筆記具本体が、先端部にペン先を支持させてなる胴部と、前記胴部の内部に収納してなる中綿と、この中綿と前記インクカートリッジとの間に配される供給管とを備え、前記供給管に前記インクカートリッジを螺着するようにしているとともに、前記胴部に前記カバーを螺着するようにしている請求項1又は2記載の筆記具。
【請求項4】
前記筆記具本体と前記カバーとの間に、これら筆記具本体とカバーとの間の周方向の位置決めを行うための位置決め部を設けている請求項1、2又は3記載の筆記具。
【請求項5】
前記位置決め部が、前記筆記具本体と前記カバーとのうち一方に設けた雄ねじ山と連続させて設けた係止突起と、他方に設けた雌ねじ山を切り欠いて設けた係止凹部とを係合させてなるものである請求項4記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端部にペン先を支持させてなる筆記具本体と、この筆記具本体に螺着され内部にインクを貯蔵可能なインクカートリッジと、このインクカートリッジを被覆し前記筆記具本体に螺着されるカバーとを備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先端部にペン先を支持させてなる筆記具本体と、この筆記具本体に取り付けられ内部にインクを貯蔵可能なインクカートリッジと、このインクカートリッジを被覆し前記筆記具本体に螺着されるカバーとを備えた筆記具において、筆記具本体にインクカートリッジを取り付けるための構成として、この筆記具本体に前記インクカートリッジを圧入させる構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところが、特許文献1記載の発明の構成では、インクカートリッジを筆記具本体に取り付ける際にはインクカートリッジを筆記具本体に強く押し付ける必要があり、また、インクカートリッジを筆記具本体から取り外す際に、インクカートリッジが勢いよく筆記具本体から外れ、インクカートリッジ内に残っているインクが外部に飛び散る不具合が発生しうる。この不具合を解決するためには、インクカートリッジも筆記具本体に螺着する構成が考えられる。
【0004】
しかして、インクカートリッジ及びカバーを別途に筆記具本体に螺着する場合、螺着作業を2回行う必要があり作業が繁雑に感じられる不具合が存在する。その一方で、インクカートリッジ及びカバーの筆記具本体への螺着及び筆記具本体からの離脱をともに1回の操作で同時に行う構成を採用した場合、インクカートリッジ及びカバーを筆記具本体から離脱させた直後に、インクカートリッジの向きによってはインクカートリッジ内に残ったインクがこぼれてしまうという別の不具合が発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−048398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に着目し、小さな力でインクカートリッジを筆記具本体に取り付けることができるようにしつつ、また、インクカートリッジ及びカバーを筆記具本体に取り付ける手間の軽減を図りつつ、インクカートリッジを筆記具本体から取り外す際にインクが外部にこぼれる不具合の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決すべく、本発明に係る筆記具は、以下に述べるような構成を有する。すなわち本発明に係る筆記具は、先端部にペン先を支持させてなる筆記具本体と、この筆記具本体に螺着され内部にインクを貯蔵可能なインクカートリッジと、このインクカートリッジを被覆し前記筆記具本体に螺着されるカバーと、前記カバーを前記筆記具本体に螺着させる際にその螺着操作力を前記インクカートリッジに伝達して該インクカートリッジをも前記筆記具本体に螺着させる連動機構とを備え、この連動機構が、前記カバーを前記筆記具本体から離脱させるための離脱操作力は前記インクカートリッジに伝達しないように構成されている。
【0008】
このような構成によれば、前記カバーに前記筆記具本体に螺着するための螺着操作力を加えると、この螺着操作力が前記インクカートリッジに伝達され、該インクカートリッジをも前記筆記具本体に螺着される。従って、小さな力かつ最小限の手間によりこれらインクカートリッジ及びカバーの取付作業を同時に行うことができる。その一方で、前記カバーに前記筆記具本体から離脱させるための離脱操作力を加えても、離脱操作力は前記インクカートリッジに伝達されず、カバーのみが取り外される。このことにより、インクカートリッジの取り外しを行う際には、インクカートリッジの取り外しの取り外し作業に先立ってカバーのみを取り外してインクカートリッジ内のインクの残量を視認するよう促すことができる。従って、インクがインクカートリッジ内に残っている場合には、インクカートリッジの開口を上向きにしてインクカートリッジの取り外しの際にインクがこぼれることを防ぐようにできる。
【0009】
このような筆記具の連動機構を簡単な構成により実現するための構成の一例として、前記連動機構が、前記インクカートリッジと前記カバーとを凹凸係合させ、前記インクカートリッジ及びカバーを前記筆記具本体に螺着させる際に前記凹凸係合部分を介して前記カバーから前記インクカートリッジに螺着操作力を伝達する構成を有し、この凹凸係合部分の凹部が、前記カバーを前記筆記具本体から離脱させるには該凹凸係合部の凸部に摺接した状態で前記インクカートリッジに離脱操作力を伝達せず前記インクカートリッジと前記カバーとを離間させる方向に案内するカム面を備えているものが挙げられる。
【0010】
前記筆記具本体が、先端部にペン先を支持させてなる胴部と、前記胴部の内部に収納してなる中綿と、この中綿と前記インクカートリッジとの間に配される供給管とを備えている筆記具においてインクカートリッジ及びカバーを筆記具本体に取り付けるための構成の一例として、前記供給管に前記インクカートリッジを螺着するようにしているとともに、前記胴部に前記カバーを螺着するようにしているものが挙げられる。
【0011】
カバーを筆記具本体にロックしておくための構成として、前記筆記具本体と前記カバーとの間に、これら筆記具本体とカバーとの間の周方向の位置決めを行うための位置決め部を設けているものが挙げられる。
【0012】
前段で述べた位置決め部を簡単な構成により実現するための構成の一例として、前記筆記具本体と前記カバーとのうち一方に設けた雄ねじ山と連続させて設けた係止突起と、他方に設けた雌ねじ山を切り欠いて設けた係止凹部とを係合させてなるものが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小さな力でインクカートリッジを筆記具本体に取り付けることができるようにしつつ、また、インクカートリッジ及びカバーを筆記具本体に取り付ける手間の軽減を図りつつ、インクカートリッジを筆記具本体から取り外す際にインクが外部にこぼれる不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る筆記具の全体斜視図。
【
図5】同実施形態に係る筆記具の要部の分解斜視図。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る筆記具を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、
図1〜
図6を参照しつつ以下に示す。
【0016】
本実施形態の筆記具1は、ホワイトボードマーカーとして好適に用いられるもので、
図1〜
図6に示すように、先端部にペン先5を支持させてなる筆記具本体Hと、この筆記具本体Hに螺着され内部にインクを貯蔵可能なインクカートリッジ2と、このインクカートリッジ2を被覆可能であり筆記具本体Hに螺着されるカバー3とを備えている。前記筆記具本体Hは、先端部にペン先5を支持させてなり前記インクカートリッジ2の一部を内部に収納可能な胴部4と、この胴部4の内部に収納してなり前記インクカートリッジ2と前記ペン先5との間に設けられる中綿6と、前記インクカートリッジ2内のインクをその中綿6を介して前記ペン先5に供給するための供給管7とを備えている。また、この筆記具1は、筆記具として使用しない際にペン先5を被覆しておくための胴部4に対して着脱可能なキャップ8も備えている。
【0017】
前記インクカートリッジ2は、
図1、
図3、
図5及び
図6に示すように、内部にインクを貯蔵可能で先端側に向かって開口するカートリッジ本体21と、このカートリッジ本体21の開口を閉塞可能な蓋体22とを備えている。前記カートリッジ本体21は、ペン先5寄りの部位に鍔部211を有し、この鍔部211からペン先5と反対側に向かって駆動突起212を有する。また、このカートリッジ本体21には、前記供給管7に設けた雌ねじ74に螺合可能な雄ねじ213が設けられている。すなわち、供給管7に設けた雌ねじ74にインクカートリッジ2の雄ねじ213を螺合させることにより供給管7にインクカートリッジ2が螺着される。そして、このカートリッジ本体21の内部には、蓋体22を係止しておくための第1及び第2の蓋係止リブ214、215を設けている。これら第1及び第2の蓋係止リブ214、215は、いずれもカートリッジ本体21の内面においてそれぞれ周方向に延びるとともに間欠的に複数設けている。一方、前記蓋体22は、カートリッジ本体21内部にインクを満たした状態のインクカートリッジ2単体で流通している際には、
図7に示すようにカートリッジ本体21の第1及び第2の蓋係止リブ214、215の間に配された状態で該カートリッジ本体21の開口を閉塞している。ここで、蓋体22と第1の蓋係止リブ214との間、及び蓋体22と第2の蓋係止リブ215との間には、クリアランスが設けられている。この蓋体22は、該カートリッジ本体21の前記雄ねじ213を前記供給管7に設けた雌ねじ74に螺合させて取り付ける際に、前記供給管7に設けた蓋開けリブ75に衝き当たって移動し、
図3及び
図4に示すように該カートリッジ本体21の開口を開放する。そして、このインクカートリッジ2は、筆記具1を使用する際にはカバー3により被覆されている。
【0018】
前記カバー3は、
図1〜
図6に示すように、略円筒形をなし、先端側には胴部4に設けた雌ねじ44に螺合可能な雄ねじ31を有するとともに、基端部は半球状をなしている。すなわち、胴部4に設けた雌ねじ44にカバー3の雄ねじ31を螺合させることにより胴部4にカバー3が螺着される。また、このカバー3の先端面には、前記インクカートリッジ2の駆動突起212と凹凸係合可能な駆動凹部32を設けている。この駆動凹部32は、胴部4にカバー3を螺着させるべく胴部4に設けた雌ねじに前記雄ねじ31を螺合させる際に前記駆動突起212を押圧して螺着操作力をインクカートリッジ2に伝達するための起立面32aと、胴部4からカバー3を離脱させるべく胴部4に設けた雌ねじ44と前記雄ねじ213との螺合を解除させる際に離脱操作力をインクカートリッジ2に伝達せず前記駆動突起212から離間する方向に案内するためのカム面32bとを備えている。すなわち、前記駆動突起212と前記駆動凹部32とは、このカバー3を前記筆記具本体Hを構成する胴部4に螺着させる際にその螺着操作力を前記インクカートリッジ2に伝達して該インクカートリッジ2をも前記筆記具本体Hを構成する供給管7に螺着させ、前記カバー3を前記筆記具本体Hから離脱させるための離脱操作力は前記インクカートリッジ2に伝達しない機能を備えた連動機構Rを構成している。
【0019】
前記ペン先5は、上述したように、また、
図3〜
図5に示すように、前記筆記具本体Hを構成する胴部4の先端部に内周に設けたペン先保持リブ42によって保持され、この種の筆記具1に用いられるペン先5として周知のものと同様の構成を有する。
【0020】
前記胴部4は、
図1〜
図4及び
図6に示すように、略円筒状をなし、一端部に前記ペン先5を支持するための他の部位と比較して小径なペン先支持部41を有する。このペン先支持部41の内面には、
図3に示すように、それぞれ90°ずつ周方向に離間する4本のペン先保持リブ42を設けており、このペン先保持リブ42がペン先5を保持する。また、この胴部4の前記ペン先支持部41に隣接する部位の内面には、
図3に示すように、それぞれ45°ずつ周方向に離間する8本の中綿保持リブ43を設けており、この中綿保持リブ43が中綿6を保持する。これら中綿保持リブ43のうち4本は、前記ペン先保持リブ42と略連続しており、他の4本のリブと比較して長尺である。また、この胴部4のペン先支持部41と反対側の端部の内面には、
図3、
図5及び
図6に示すように、前述したカバー3の雄ねじ31と螺合させてこのカバー3を胴部4に取り付けるための雌ねじ44を設けている。加えて、この胴部4と前記カバー3との間には、これらを位置決めするための位置決め部を設けている。この位置決め部は、胴部4の雌ねじ44のねじ山の一部を切り欠いて設けた位置決め凹部45と、カバー3の雄ねじ31のねじ山から連続させて設けられ前記位置決め凹部45に係合可能な位置決め突起33とを係合させてなる。また、この位置決め部は、周方向に90°ずつ離間させた状態で4箇所に設けている。
【0021】
前記中綿6は、この種の筆記具1に用いられる中綿6として周知のものと同様の構成を有する。すなわち、
図3及び
図6に示すように、この筆記具1の長手方向に延伸する多数の繊維からなる中綿本体61と、この中綿本体61を内部に収納する樹脂製の中綿カバー62とを備えている。この中綿6は、
図6に示すように、胴部4の内部に挿入された状態で該胴部4の中綿保持リブ43によって保持されている。前記中綿カバー62は、ポリプロピレンフィルムにより構成されていて、通気性を有さず、インクを内部から外部に通す機能も有さない。そして、この中綿6の長手方向両端から、ペン先5及び供給管7がそれぞれこの中綿6の内部に挿入される。
【0022】
前記供給管7は、
図2〜
図6に示すように、ペン先5側が前記中綿6に挿入される一本の供給管本体71と、この供給管本体71の外方に設けられ該供給管本体71と前記インクカートリッジ2とを接続するための外筒体72とを備えている。この供給管本体71は、ペン先5側端面に中綿6に挿入されることによって該中綿6の繊維を圧縮させて繊維密度が高い部位を部分的に形成させるための突出部71aを有するとともに、内部にインク及び空気を流通させるための一本の供給路71cを有する。この供給路71cのペン先5側の開口端は、前記突出部71aから非突出部71bに亘って開口している。また、この供給管本体71は、横断面形状が楕円形をなしている。一方、前記外筒体72のペン先5側には、前記胴部4の長尺な中綿保持リブ43と係合してこの供給管7の回り止めを行うための回り止め凹部72aを設けている。さらに、前記外筒体72のペン先5と反対側の端部の内方には内壁73を設けていて、この内壁73と前記外筒体72との間に前記インクカートリッジ2の先端部を挿入するようにしている。また、この供給管7のペン先5と反対側の端部の内面には、前記インクカートリッジ2の雄ねじ213と螺合させてこのインクカートリッジ2を供給管7に取り付けるための雌ねじ74を設けているとともに、前記蓋体22に衝き当たって蓋体22を押圧して開放させるための蓋開けリブ75を設けている。そして、このペン先5と反対側の端部は隣接する部位と比較して小径となっており、この端部と前記胴部4に設けた突条46とが係り合うことによりこの供給管7の抜け止めを図るようにしている。
【0023】
ここで、本実施形態のインクカートリッジ2及びカバー3の筆記具本体Hへの着脱の際の手順及び各部の作用について述べる。
【0024】
インクカートリッジ2及びカバー3を筆記具本体Hに取り付ける際には、まず、カバー3の内部にインクカートリッジ2の基端側の部分を挿入させた状態で、カバー3の駆動凹部32とインクカートリッジ2の駆動突起212とを凹凸係合させる。それから、カバー3の雄ねじ31と筆記具本体Hの胴部4の雌ねじ44とを螺合させるべく螺着操作力を加える。このとき、前記駆動凹部32の起立面32aの進行方向前方に駆動突起212の起立面212aが位置しているので、これら両起立面32a、212a同士が衝き当たってカバー3からインクカートリッジ2に螺着操作力が伝達され、インクカートリッジ2の雄ねじ213と筆記具本体Hの供給管7の雌ねじ74とが螺合する。このようにして、カバー3が胴部4に、インクカートリッジ2が供給管7にそれぞれ螺着される。
【0025】
一方、カバー3を筆記具本体Hから取り外す際には、カバー3に、該カバー3の雄ねじ31と前記胴部4の雌ねじ44との螺合状態が解除される方向に回転させる離脱操作力を与える。このとき、カバー3の駆動凹部32の起立面32aとインクカートリッジ2の駆動突起212の起立面212aとが離間し、前記駆動凹部32のカム面32bが駆動突起212の先端に摺接するものの離脱操作力はインクカートリッジ2には伝達されない。すなわち、インクカートリッジ2は供給管7に螺着された状態を保ちつつカバー3のみが筆記具本体Hの胴部4から取り外される。
【0026】
以上に述べたように、本実施形態によれば、前記カバー3を前記筆記具本体Hに螺着させる際にその螺着操作力を前記インクカートリッジ2に伝達して該インクカートリッジ2をも前記筆記具本体Hに螺着させる構成の連動機構Rを備えているので、小さな力かつ最小限の手間によりこれらインクカートリッジ2及びカバー3の取付作業を同時に行うことができる。その一方で、前記カバー3に前記筆記具本体Hから離脱させるための離脱操作力を加えても、離脱操作力は前記インクカートリッジ2に伝達されず、カバー3のみが取り外される。このことにより、インクカートリッジ2の取り外しを行う際には、インクカートリッジ2の取り外し作業に先立ってカバー3のみを取り外してインクカートリッジ2内のインクの残量を視認するよう促すことができる。従って、インクがインクカートリッジ2内に残っている場合には、インクカートリッジ2の開口を上向きにする等してインクカートリッジ2の取り外しの際にインクがこぼれることの予防を促すことができる。
【0027】
前記連動機構Rが、前記インクカートリッジ2の駆動突起212と前記カバー3の駆動凹部32とを凹凸係合させ、前記インクカートリッジ2及びカバー3を前記筆記具本体Hに螺着させる際にこれら駆動突起212と駆動凹部32とが凹凸係合する部位を介して前記カバー3から前記インクカートリッジ2に螺着操作力を伝達する構成を有し、前記駆動凹部32が、前記カバー2を前記筆記具本体Hから離脱させる際には前記駆動突起212に摺接した状態で前記インクカートリッジ2に離脱操作力を伝達せず前記インクカートリッジ2と前記カバー3とを離間させる方向に案内するカム面32aを備えているので、このような連動機構Rを簡単な構成により実現することができる。
【0028】
前記筆記具本体Hが、先端部にペン先5を支持させてなる胴部4と、前記胴部4の内部に収納してなる中綿6と、この中綿6と前記インクカートリッジ2との間に配される供給管7とを備え、前記供給管7に前記インクカートリッジ2を螺着するようにしているとともに、前記胴部4に前記カバー3を螺着するようにしているので、上述したような連動機構Rを容易に実現できる。
【0029】
加えて、前記筆記具本体Hと前記カバー3との間、より具体的には前記胴部4と前記カバー3との間に、これら筆記具本体Hとカバー3との間の周方向の位置決めを行うための位置決め部を設けているので、カバー3を筆記具本体Hにロックしておくことができる。
【0030】
そして、前記位置決め部が、前記カバー3に設けた雄ねじ33のねじ山から連続させて設けられた位置決め突起33と、前記筆記具本体Hの胴部4に設けた雌ねじ44のねじ山を切り欠いて設けた係止凹部45とを係合させてなるので、このような位置決め部を、簡単な構成により実現することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に限らない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、カバーの先端面すなわちペン先側端面に駆動凹部を設け、インクカートリッジの鍔部からペン先と反対方向に突出し前記駆動凹部と凹凸係合する駆動突起を設け、これら駆動凹部及び駆動突起により駆動機構を構成しているが、
図7を参照しつつ以下に述べるような筆記具10に備えたような連動機構RRを採用してもよい。なお、この筆記具10は、以下に述べる点以外は、上述した実施形態の筆記具1と同様の構成を有するので、対応する部位には同一の名称及び符号を付し、詳細な説明は省略する。すなわち、この筆記具10は、筆記具本体Hを構成する胴部4の基端側すなわちペン先5と反対側に雄ねじ48を有し、カバー3の先端側に設けた雌ねじ38と前記胴部4の雄ねじ48とを螺合させることによりカバー3を筆記具本体Hの胴部4に螺着する構成を有する。その上で、このカバー3に被覆されるインクカートリッジ2の基端部すなわちペン先5と反対側の端部の外面に、ペン先5と反対側に延びる駆動突起29を設け、前記カバー3の基端部の内面に前記駆動突起29に凹凸係合可能な駆動凹部39を設けている。そして、これら駆動突起29と駆動凹部39とにより連動機構RRを形成している。
【0033】
ここで、この筆記具10の連動機構RRも、上述した実施形態の筆記具1の連動機構Rと同様に作用する。すなわち、前記駆動突起29と駆動凹部39とを凹凸係合させた状態でインクカートリッジ2及びカバー3を筆記具本体Hに取り付ける際には、カバー3の雌ねじ38と筆記具本体Hの胴部4の雄ねじ48とを螺合させるべく螺着操作力を加えると、前記駆動凹部39に設けた起立面39aから駆動突起29に、すなわちカバー3からインクカートリッジ2に螺着操作力が伝達され、インクカートリッジ2の雄ねじと筆記具本体Hの供給管7の雌ねじとが螺合する。このようにして、カバー3が胴部4に、インクカートリッジ2が供給管7にそれぞれ螺着される。一方、カバー3を筆記具本体Hから取り外す際には、カバー3に、該カバー3の雄ねじ31と前記胴部4の雌ねじ44との螺合状態が解除される方向に回転させる離脱操作力を与えると、前記駆動凹部39の起立面39aが駆動突起29から離間し、前記駆動凹部39のカム面39bが駆動突起29の先端に摺接するものの離脱操作力はインクカートリッジ2には伝達されない。すなわち、インクカートリッジ2は供給管7に螺着された状態を保ちつつカバー3のみが筆記具本体Hの胴部4から取り外される。
【0034】
従って、この筆記具10の連動機構RRの構成によっても、実施形態の筆記具1の連動機構Rの構成による主要な効果を得ることができる。
【0035】
また、上述した実施形態では、筆記具本体が、先端部にペン先を支持させてなる胴部と、前記胴部の内部に収納してなる中綿と、この中綿とインクカートリッジとの間に配される供給管とを備えているが、例えば、インクカートリッジ側に供給管を一体に設けた筆記具や、前記胴部及び中綿を備えた筆記具本体、前記インクカートリッジ、及び前記中綿と前記インクカートリッジとの間に配される供給管をそれぞれ別体に備えた筆記具に本発明を適用してもよい。
【0036】
そして、前記筆記具本体と前記カバーとの間の位置決め部は省略してもよく、また、位置決め部の数や設置箇所は任意に設定してよい。
【0037】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0038】
1、10…筆記具
H…筆記具本体
2…インクカートリッジ
3…カバー
R、RR…連動機構
4…胴部
5…ペン先
6…中綿
7…供給管