(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送経路に沿って原稿シートを搬送する搬送部と、複数の受光素子が主走査方向に沿って並んで配置され、前記搬送経路を搬送される原稿シートの画像を読み取り可能な画像読取部と、前記画像読取部に上から対向するガラスと、前記画像読取部を前記主走査方向に直交し、かつ前記ガラスに沿う方向である基準方向に移動させる移動部と、前記ガラスに対して前記搬送経路を挟んで上から対向し、前記搬送経路を搬送され、前記画像読取部によって画像が読み取られる原稿シートを前記ガラスに向かって押さえる単色の原稿押さえ部材と、制御部と、を備え、前記原稿押さえ部材は、前記ガラスの上面と平行に前記基準方向に延びる第1部分と、前記第1部分に連続し、かつ前記第1部分に対して搬送方向の上流に向かって延びる第2部分とを備え、前記第2部分は、前記原稿押さえ部材の下面と前記ガラスの上面との間隔が、前記搬送方向の下流から上流に向かって徐々に大きくなるように傾斜しており、前記移動部は、前記画像読取部を前記基準方向に移動させることにより、前記原稿押さえ部材の第1部分を読取可能な第1読取位置と、前記原稿押さえ部材の第2部分を読取可能な第2読取位置との間で移動可能であり、前記原稿押さえ部材の第1部分の下面と前記第1読取位置にある前記画像読取部の上面との距離は、前記原稿押さえ部材の第2部分の下面と前記第2読取位置にある前記画像読取部の上面との距離よりも小さく設定されており、前記制御部は、前記移動部を制御することにより、前記画像読取部を前記基準方向に移動させる移動処理を実行可能である画像読取装置に、
前記移動処理を実行させて、前記画像読取部を前記第1読取位置、前記第2読取位置のいずれか一方である初期読取位置に位置させ、前記搬送部により搬送される原稿シートの端が前記初期読取位置に到達する前から前記画像読取部に画像の読み取りを開始させ、読取画像の値を取得する画像取得処理と、
前記画像取得処理により取得される読取画像の値の変化を判定させる判定処理と、を実行させ、
基準期間経過しても前記初期読取位置にある前記画像読取部によって読み取られる読取画像の値が変化しないと前記判定処理により判定された場合、
前記移動処理を実行させて、前記画像読取部を前記第1読取位置、前記第2読取位置のうちの他方である次期読取位置に移動させ、前記画像取得処理を実行させることにより、前記搬送部により搬送される原稿シートの端が前記次期読取位置に到達する前から前記画像読取部に画像の読み取りを開始させ、読取画像の値を取得させると共に、前記判定処理を実行させ、前記次期読取位置に移動後の画像取得処理において取得された読取画像の値が変化したと判定された場合、前記搬送方向における原稿シートの端が前記次期読取位置に到達したと判定させ、前記次期読取位置において前記画像取得処理を継続させ、それ以降に取得される読取画像を原稿シートの原稿画像の読取画像として取得させる原稿端判定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
一実施形態のスキャナ1について
図1〜
図5を参照しつつ説明する。以下の説明では、
図2の紙面左側をスキャナ1の前側(F)とし、紙面手前側をスキャナ1の右側(R)とし、紙面上側をスキャナ1の上側(U)とする。
【0023】
(スキャナの電気的構成)
図1に示すように、スキャナ1は、制御部2、画像読取部3、デバイス移動機構4、原稿自動搬送装置(以下、「ADF」という)5、表示部6、操作部7、フロントセンサ8等を備える。
【0024】
制御部2は、中央処理装置(以下、CPU)11、ROM12、RAM13および画像処理部14を有する。ROM12には、後述する読取制御処理を実行するためのプログラム(原稿端判定プログラムの一例)や、このスキャナ1の各種の動作を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU11は、ROM12から読み出したプログラムに従って、スキャナ1の各部を制御する。なお、上記各種のプログラムが記憶される媒体は、ROM12やRAM13以外に、CD−ROM、ハードディスク装置、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性メモリでもよい。
【0025】
RAM13は、記憶部の一例である。画像読取部3で読み取られた読取画像に応じた画素列の読取データは、図示しないAD変換部によりAD変換され、画像処理部14に与えられる。画像処理部14は、画像処理専用のハード回路であり、AD変換された読取データに対し、シェーディング補正やガンマ補正等の処理を実行し、その後にRAM13に記憶する。
【0026】
操作部7は、複数のボタンを有し、ユーザにより各種の入力操作が可能である。表示部6は、液晶ディスプレイやランプ等を有し、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。画像読取部3、デバイス移動機構4、ADF5、フロントセンサ8の構成ついては次述する。
【0027】
(画像読取部およびADF等の構成)
図2に示すように、スキャナ1は、スキャナ本体1Aの上面に、仕切り部材20、ADF用ガラス21、および、FB(フラットベッド)用ガラス22が設けられている。仕切り部材20は、ADF用ガラス21とFB用ガラス22との間に設けられている。仕切り部材20の下面には白基準板20Aが設けられており、この白基準板20Aは、光反射率が概ね均一な白色の部材である。また、仕切り部材20の下面のうち、白基準板20Aに隣接する部分は、黒色である。
【0028】
また、スキャナ本体1Aの上面の一端側には,これらのガラス21,22を覆うカバー23が開閉可能に設けられている。このカバー23内には、上述したADF5、フロントセンサ8が設けられ、ADF用ガラス21等の下方には、上述した画像読取部3、デバイス移動機構4が設けられている。
【0029】
具体的には、カバー23には、原稿シートが配置される原稿トレイ24、および、その原稿トレイ24の上方に配置された排出トレイ25が設けられている。また、原稿トレイ24の先端側には上記フロントセンサ8が設けられている。このフロントセンサ8は、原稿トレイ24の先端側に設定された検知領域R0で、原稿トレイ24上の原稿シートの有無を検知する原稿有無センサであり、その検知結果を上記制御部2に送信する。
【0030】
また、カバー23内には、原稿シートを、原稿トレイ24からU字状に折り返して排出トレイ25に搬送するための搬送経路26が形成されている。ADF5は、搬送部の一例であり、その搬送経路26途中に配置された複数の搬送ローラ27や原稿押さえ部材28等を有し、搬送ローラ27を回転駆動することにより、原稿シートを搬送経路26に沿って自動で搬送する構成である。原稿押さえ部材28は、対向部材の一例である。また、原稿押さえ部材28は、カバー23内部の所定部位に固定されており、カバー23を閉姿勢にしたとき、原稿押さえ部材28は、ADF用ガラス21の上面に対向する。
【0031】
画像読取部3は、CIS(Contact Image Sensor)を有する読取デバイスである。画像読取部3の具体的構成、および、原稿押さえ部材28との配置関係等については後述する。なお、画像読取部3は、CISに限らず、例えばCCD(Charge Coupled Drive Image Sensor)を有する構成でもよい。また、画像読取部3は、デバイス移動機構4によってADF用ガラス21およびFB用ガラス22の下側において、前後方向に移動可能に設けられている(
図2の太い黒矢印参照)。
【0032】
これにより、スキャナ1は、ADF読取とFB読取とを実行することができる。ADF読取は、画像読取部3を原稿押さえ部材28に対向する第1読取位置X1や第2読取位置X2に静止させ、ADF5により搬送される原稿シート上の画像を読み取る動作である。FB読取は、デバイス移動機構4により、画像読取部3をFB用ガラス11Bに沿って移動させつつ、当該FB用ガラス11B上に配置された原稿シートの画像を読み取る動作である。
【0033】
画像読取部3は、ADF5により搬送される原稿シートを読み取る際、原稿押さえ部材28の直下に移動して、原稿シート上の原稿画像を読み取り、その読取画像に応じた読取データを上記制御部2に送信する。
【0034】
(画像読取部および原稿押さえ部材の具体的構成)
図3に示すように、画像読取部3は、発光部31および受光部32を備える。なお、本実施形態では、画像読取部3の構成上、原稿押さえ部材28や原稿シートでの正反射光は受光部32に受光されず、拡散反射光が受光部32に受光される。また、
図3では、各色の光LR、LG、LBの光路が区別できるよう模式的に描かれており、読取領域R1の範囲も大きく描かれている。また、同図の上段および下段のいずれも、各色の光LR、LG、LBが、原稿押さえ部材28の対向面で反射している状態を示す。
【0035】
具体的には、発光部31は、LED基板33および導光体34を有する。LED基板33には、レッド(R)の光LRを出射するR色LED(発光ダイオード)34R、グリーン(G)の光LGを出射するG色LED34G、ブルー(B)の光LBを出射するB色LED34Bが、前後方向(搬送経路26の搬送方向)に沿って互いにずれた位置に配置されている。導光体34は、LED34R,34G,34Bからの各色の光LR、LG、LBを、読取領域R1へと導く光学部材である。
【0036】
受光部32は、受光レンズ35および受光基板36を有する。受光レンズ35は、読取領域R1側からの光を受光基板36に導く光学部材である。受光基板36は、図示しない複数の受光素子が、左右方向、換言すれば主走査方向に沿って並んで配置された構成である。なお、各色の光LR、LG、LBの出射方向は、受光部32と原稿押さえ部材28の対向面との対向方向に対して傾いている。
【0037】
以上の構成により、画像読取部3は、読取領域R1内の画像を読み取って、その読取画像に応じた読取データを出力する読取動作を実行する。具体的には、画像読取部3は、発光部31のLED34R,34G,34Bを時分割で発光させて、読取領域R1で反射した各色の光LR、LG、LBを受光部32に受光させ、RGB色の主走査ラインデータを、1組の主走査ラインの読取データとして順次出力する読取動作を実行する。
【0038】
原稿押さえ部材28は、ADF用ガラス21の直下に位置する画像読取部3との距離が互いに異なる第1部分28Aおよび第2部分28B(一の部分、他の部分の一例)を有する。第1部分28Aは、ADF用ガラス21に略平行な直線部分である。
図3の上段に示すように、画像読取部3が第1読取位置X1にあるとき、読取領域R1は第1部分28A上に位置し、画像読取部3と第1部分28Aとの間の距離は第1距離D1である。
【0039】
第2部分28Bは、ADF用ガラス21に対して傾斜している部分である。
図3の下段に示すように、画像読取部3が第2読取位置X2にあるとき、読取領域R1は第2部分28B上に位置し、画像読取部3と第2部分28Bとの間の距離は第2距離D2であり、第1距離D1よりも長い。また、第1部分28Aおよび第2部分28Bは、いずれも画像読取部3と対向する側の面の色が同一であり、本実施形態では例えば白色である。なお、原稿押さえ部材28の対向面は、必ずしも白色である必要はなく、例えば灰色など、他の色でもよい。
【0040】
しかし、ADF読取の場合、搬送経路26において、原稿押さえ部材28と画像読取部3との間の領域が読取領域R1になり、
図2に示すように、画像読取部3の読取位置が第1読取位置X1であるか第2読取位置X2であるかによって、この読取領域R1も移動する。そして、上記のように第1距離D1と第2距離D2とは異なる。このため、画像読取部3が第1読取位置X1にあるときと第2読取位置X2にあるときとで、上記読取動作により原稿押さえ部材28を読み取ったときの読取データの値が互いに異なる。なお、読取データの値は、読取画像の値の一例であり、各色の画素値や各色同士の画素値の差である色差などが含まれる。
【0041】
(読取制御処理)
例えばユーザが操作部5にてADF読取の実行を指示するための操作を行うと、制御部2は、フロントセンサ8の検知結果に基づき、原稿トレイ24上に原稿シート有りと判断したことを条件に、
図4,5に示す読取制御処理を実行する。この読取制御処理では、画像読取部3の読取位置を、第1読取位置X1と第2読取位置X2とのいずれかに選択的に設定し、その設定した読取位置で読取動作を開始し、その読取データの値が変化したことに基づき、原稿シートの端が読取領域R1に到達したか否かを判定することが可能である。
【0042】
なお、制御部2は、予め、デバイス移動機構4を制御して、画像読取部3を上記仕切り部材20の直下のホーム位置X0(
図2参照)に移動させる。具体的には、CPU11は、画像読取部3を移動させつつ読取動作を実行させ、当その読取画像が、白基準板20Aの白画像から、その隣接部分の黒画像に切り替わった時点で、画像読取部3がホーム位置X0に到達したと判断し、デバイス移動機構4を停止させる。
【0043】
制御部2は、まず画像読取部3の読取位置を、初期位置に設定する(S1)。このS1の処理は、位置設定処理の一例である。初期位置は、上記第1読取位置X1および第2読取位置X2のいずれでもよい。但し、本実施形態では、画像読取部3が第1読取位置X1にあるときに、最も精度の高い読取動作を実行できるよう画像読取部3の読取条件が調整されている。このため、初期位置は第1読取位置X1に設定されている。次に、制御部2は、ホーム位置X0にて、画像読取部3に白基準板20A等に対する読取動作を実行させて、シェーディングデータ等の補正用データを取得する(S2)。なお、S1の処理とS2の処理の実行順序は逆でもよい。
【0044】
制御部2は、補正用データを取得すると、現在設定されている読取位置(以下、単に現在読取位置という)が、判定エラーとなった読取位置である判定エラー位置と異なっているかどうかを判断する(S3)。制御部2は、例えば後述するS17の処理でRAM13に記憶される判定エラー情報を参照して、現在読取位置と判定エラー位置とが不一致であるどうかを判断する。読取制御処理の実行当初は、まだS17の処理を実行しておらず、RAM13には、判定エラー位置として上記初期位置と同じ読取位置が記憶されている。このため、制御部2は、現在読取位置が判定エラー位置と一致すると判断し(S3:NO)、画像読取部3を第1読取位置X1に移動させる(S4
図3の上段参照)。
【0045】
次に、制御部2は、画像読取部3に、原稿押さえ部材28のうち対向部分に対する読取動作を実行させ、その読取データを取得してRAM13に記憶する(S6)。現在、画像読取部3は第1読取位置X1にあるから、制御部2は、第1部分28Aの読取データをRAM13に記憶する。以下、原稿押さえ部材28を読み取ったときの読取データの値を、原稿押さえ読取値といい、特に、第1部分28Aの読取データの値を第1原稿押さえ読取値といい、第2部分28Bの読取データの値を第2原稿押さえ読取値という。
【0046】
制御部2は、上記対向部分の読取データを取得すると、ADF5を起動させて原稿シートの搬送を開始させ(S7)、読取動作を開始する(S8)。なお、S7の処理とS8の処理の実行順序は逆でもよいし、同時でもよい。また、S7の処理の実行後、予め定めた基準時間経過後、あるいは、原稿シートを予め定めた基準距離搬送した後、S8の処理を実行してもよい。また、S4〜S8までの処理が、画像取得処理の一例である。
【0047】
制御部2は、読取動作の開始後、その読取動作によって順次取得する主走査ラインごとの読取データの値が、上記第1原稿押さえ読取値と一致するかどうかを判断することにより、原稿シートの先端が読取領域R1に到達したかどうかを判定する(S9)。読取動作の開始当初は、原稿シートは、まだ読取領域R1に到達していない。このため、制御部2は、読取データの値が第1原稿押さえ読取値と一致すると判断し(S9:YES)、上記読取動作の開始時から基準時間経過していないと判断した場合(S10:NO)、S9に戻る。
【0048】
一方、原稿シートの搬送方向における先端が読取領域R1に到達すると、画像読取部3は、原稿押さえ部材28ではなく、原稿シートを読み取るようになる。このため、制御部2は、読取データの値が第1原稿押さえ読取値と一致しないと判断し(S9:YES)、原稿シートの先端が読取領域R1に到達したと判定する。このS9の処理は、シート端判定処理の一例である。制御部2は、原稿シートの先端が読取領域R1に到達したと判定した場合、それ以降に取得する読取データを、原稿画像の読取データ(以下、原稿読取データという)としてRAM13に記憶し始める(S11)。
【0049】
制御部2は、読取データの値が第1原稿押さえ読取値と一致しないと判断している間(
図5のS12:NO)、読取データを、原稿読取データとしてRAM13に記憶し続ける。その後、制御部2は、第1原稿押さえ読取値と一致すると判断した場合(S12:YES)、原稿シートの搬送方向における後端が読取領域R1に到達したと判定し、読取動作を終了する(S13)。このS12の処理は、シート端判定処理の一例である。
【0050】
制御部2は、読取動作の終了後、フロントセンサ8の検知結果に基づき、原稿トレイ24上に原稿シート有りと判断した場合(S14:YES)、S3に戻り、次の原稿シートについても第1読取位置X1で読取動作を実行する。制御部2は、原稿トレイ24上に原稿シート無しと判断した場合(S14:NO)、制御部2は、ADF5を停止させ、原稿シートの搬送を終了し(S15)、本読取制御処理を終了する。
【0051】
一方、
図4のS9,S10で、制御部2は、上記基準時間経過しても読取データの値が第1原稿押さえ読取値と一致すると判断している場合(S9:NO、且つ、S10:YES)、現在の読取位置では、原稿シートの端が原稿読取領域R1に到達したかどうかの判定を行うことができない判定エラーであると判定する。このS9,S10の処理はエラー判定処理の一例である。ここで、基準時間は、原稿シートが、原稿トレイ24から原稿押さえ部材28近傍の位置まで搬送されるのに十分な時間に設定されている。例えば原稿シートの地色と原稿押さえ部材28の対向面の色とが同じ或いは近似している場合、読取領域R1に原稿シートが有るときと無いときとで読取データの値はほとんど変化しない。
【0052】
このため、制御部2は、上記の場合(S9:NO、且つ、S10:YES)、判定エラーと判定し、ADF5を停止させる(S16)。なお、制御部2は、原稿シートが、原稿トレイ24から排出トレイ25に排出されるのに十分な時間経過した後に、ADF5を停止させることが好ましい。また、制御部2は、その判定エラーを外部に報知する報知処理を実行し、現在読取位置を判定エラー位置としてRAM13に記憶し(S17)、S3に戻る。
【0053】
この報知処理では、制御部2は、例えば、原稿シート詰まりエラーか、原稿シートの端の上記判定エラーが発生した可能性あることや、判定エラーである場合、現在読取位置を変更すべきことを、表示部6に表示させる。これにより、現在読取位置では、原稿シートの端が読取領域R1に到達したかどうかを判定することができないことをユーザに知らせることができる。なお、S16の処理とS17の処理の実行順序は逆でもよいし、同時でもよい。
【0054】
ユーザは、この表示部6の表示内容を見て、操作部7で入力操作して、現在読取位置を、第1読取位置X1から第2読取位置X2に変更する。すると、制御部2は、
図4のS3で、現在読取位置が判定エラー位置と異なると判断し(S3:YES)、画像読取部3を第2読取位置X2に移動させる(S5
図3の下段参照:位置設定処理の一例)。ここで、上述したように、画像読取部3が第1読取位置X1にあるときと第2読取位置X2にあるときとで、S6で取得する原稿押さえ読取値が互いに異なる。このため、たとえ、原稿シートの地色と原稿押さえ部材28の対向面の色とが同じ或いは近似している場合でも、画像読取部3を第2読取位置X2に移動すれば、読取領域R1に原稿シートが有るときと無いときとで読取データの値が変化する可能性が高い。
【0055】
これにより、制御部2は、画像読取部3が第2読取位置X2にある状態で、上述のS6〜S8の処理を実行する。そして、制御部2は、S9、S10において、基準時間経過する前に読取データの値が第1原稿押さえ読取値と一致しないと判断し(S9:NO)、判定エラーを回避して、原稿シートの端が読取領域R1に到達したことを判定することができるようになる。
【0056】
(本実施形態の効果)
このスキャナ1は、画像読取部3を、第1読取位置X1および第2読取位置X2のいずれかに移動させ、読取動作により取得する読取画像の値が変化した場合、ADF5の搬送方向における原稿シートの端が読取領域R1に到達したと判定する。ここで、画像読取部3が第1読取位置X1にあるときと第2読取位置X2にあるときとで、読取動作により原稿押さえ部材28を読み取ったときの読取画像の値が互いに異なる。これにより、例えば、画像読取部3が第1読取位置X1にあるときに、原稿押さえ部材28と原稿シートとをそれぞれ読み取ったときの読取画像の値が同じであっても、画像読取部3を第2読取位置X2に移動させることにより、原稿シートの端が読取領域R1に到達したかどうかを判定することができる。
【0057】
<実施形態2>
図6は実施形態2を示す。前記実施形態1との相違は、原稿押さえ部材の構成にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0058】
図6に示すように、本実施形態の原稿押さえ部材28αは、搬送経路26に沿った形状をなし、第1部分28Aαおよび第2部分28Bαを有する。従って、画像読取部3が第1部分28Aαと対向する第1読取位置X1αにあるときの両者間の距離と、画像読取部3が第2部分28Bαに対応する第2読取位置X2αにあるときの両者間の距離とは同じである。
【0059】
しかし、第1部分28Aαおよび第2部分28Bαは、画像読取部3との対向面の色が互いに異なる。このため、画像読取部3が第1読取位置X1αにあるとき第2読取位置X2αにあるときとで、読取動作により原稿押さえ部材28を読み取ったときの読取データの値が互いに異ならせることができる。
【0060】
本実施形態によれば、画像読取部3が第1読取位置X1αにあるとき第2読取位置X2αにあるときとで、画像読取部3と搬送経路26を搬送している原稿シートとの距離が同じであるため、同等の精度で画像を読み取ることができる。
【0061】
<実施形態3>
図7,8は実施形態3を示す。前記実施形態1との相違は、読取制御処理にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0062】
制御部2は、まず、操作部7でのユーザの入力操作に基づき、第1読取モードと第2読取モードのいずれかを設定する(S1α 位置設定処理の一例)。なお、第1読取モードおよび第2読取モードの設定情報には、読取条件等の情報が含まれる。また、制御部2は、第1読取モードを設定した場合には、上記読取条件等の情報と共に、第1読取モードフラグをRAM13に記憶し、第2読取モードを設定した場合には、上記読取条件等の情報と共に、第2読取モードフラグをRAM13に記憶する。
【0063】
制御部2は、S3αでは、第1読取モードフラグおよび第2読取モードフラグのいずれがRAM13に記憶されているかを判断し、第1読取モードが記憶されていると判断した場合(S3α:YES)、S4に進み、第2読取モードが記憶されていると判断した場合(S3α:NO)、S5に進む。
【0064】
ここで、例えば、制御部2は、第1読取モードが記憶されていると判断した場合(S3α:YES)、画像読取部3を第1読取位置X1に移動させる(S4)。そして、制御部2は、S6〜S10の処理を実行した結果、上記基準時間経過しても読取データの値が第1原稿押さえ読取値と一致していると判断している場合(S9:NO、且つ、S10:YES)、判定エラーと判定し、ADF5を停止させ(S16)、その判定エラーを外部に報知する報知処理を実行し(S17α)、本読取制御処理を終了する。
【0065】
その後、ユーザは、判定エラーを示す表示部6の表示内容を見て、操作部7で入力操作して、第2読取モードを入力する。すると、制御部2は、画像読取部3が第2読取位置X2にある状態で、上述のS6〜S8の処理を実行する。そして、制御部2は、S9、S10において、基準時間経過する前に読取データの値が第1原稿押さえ読取値と一致しないと判断し(S9:NO)、判定エラーを回避して、原稿シートの端が読取領域R1に到達したことを判定することができるようになる。
【0066】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0067】
上記実施形態では、画像読取装置の一例として、スキャナ機能のみを有するスキャナ1を挙げた。しかし、これに限らず、画像読取装置は、スキャン機能に加えて、コピー機能など、複数の機能を実行可能な複合機や、ファクシミリ装置等でもよい。
【0068】
上記実施形態では、制御部2は、CPU11および画像処理部14により読取制御処理を実行する構成であった。しかし、これに限らず、制御部2は、複数のCPUにより読取制御処理を実行する構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路のみにより読取制御処理を実行する構成でもよい。
【0069】
上記実施形態では、画像読取部3は、搬送方向に対して、受光部32の下流側に発光部31が配置された構成であった。しかし、これに限らず、画像読取部3は、受光部32の上流側に発光部31が配置された構成でもよい。
【0070】
上記読取制御処理において、画像読取部3を、上記読取位置X1、X2以外の読取位置であって、且つ、原稿押さえ部材28との距離が上記距離D1,D2とは異なる他の読取位置で読取動作を実行可能な構成としてもよい。他の読取位置の例としては、画像読取部3の読取領域R1が、第2部分28Bの下面のうち、
図3の下段図とは異なる部位(第2部分28Bの後端側の部位)に設定される位置である。要するに、画像読取部3と原稿押さえ部材28との対向距離が互いに異なる複数の読取位置で画像読取部3が読取動作を実行できる構成であればよい。
【0071】
読取性牛処理において、S1の代わりに、ユーザが操作部7で入力操作して、第1読取位置X1および第2読取位置X2のいずれかを選択して初期位置として設定する構成でもよい。これにより、ユーザの意思によって読取位置を設定することができる。
【0072】
上記読取制御処理において、制御部2は、S6の処理を実行せずに、S8の読取動作の実行中に、その読取動作で順次取得する読取データの値の変化の有無を判別し、その判別結果に基づき、原稿シートの端が読取領域R1に到達したかどうかを判定する構成でもよい。
【0073】
上記読取制御処理において、制御部2は、判定エラーと判定した場合(S10:YES)、ユーザの入力操作によらず、自動で、現在読取位置を変更し、画像読取部3を当該変更後の読取位置に移動させる移動処理を実行する構成でもよい。これにより、ユーザの操作に頼ることなく、それ以降の原稿シートの端が読取領域R1に到達したかどうかを判定することができる。
【0074】
上記実施形態では、原稿押さえ部材28の形状や色を変えることにより、画像読取部3が第1読取位置にあるとき第2読取位置にあるときとで、原稿押さえ読取値を互いに異ならせる構成とした。しかし、これに限らず、例えば、原稿押さえ部材の対向面に互いに反射率が異なる複数の領域を設ける構成でもよい。