特許第6024356号(P6024356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソシオネクストの特許一覧

<>
  • 特許6024356-AC−DCコンバータ 図000002
  • 特許6024356-AC−DCコンバータ 図000003
  • 特許6024356-AC−DCコンバータ 図000004
  • 特許6024356-AC−DCコンバータ 図000005
  • 特許6024356-AC−DCコンバータ 図000006
  • 特許6024356-AC−DCコンバータ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024356
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】AC−DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H02M7/12 A
   H02M7/12 601A
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-221101(P2012-221101)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-75871(P2014-75871A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100192636
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】沖 秀太
(72)【発明者】
【氏名】前川 幸憲
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−268594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードの端子間を接続する同期整流素子と、整流電圧が出力される第1ノードと、基準電圧が印加される第2ノードと、交流電圧が印加される第3および第4ノードとを有する整流ブリッジ部と、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間の電圧差を検出し、前記第1ノードより前記第3ノードが高電圧のとき、前記第1および第3ノードの間にある同期整流素子、および前記第2および第4ノードの間にある同期整流素子を導通する第1制御信号を出力する第1比較器と、
前記第1ノードと前記第4ノードとの間の電圧差を検出し、前記第1ノードより前記第4ノードが高電圧のとき、前記第1および第4ノードの間にある同期整流素子、および前記第2および第3ノードの間にある同期整流素子を導通する第2制御信号を出力する第2比較器と、
前記第1もしくは第2制御信号の少なくとも何れか一方に応じて前記第1ノードに接続される負荷状態を判定し、該負荷状態が規定レベルを越えると判断される場合に、次の負荷状態の判定までの間、前記第1および第2制御信号をマスクする同期整流マスク部とを備えることを特徴とするAC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記同期整流マスク部は、
前記第1もしくは第2制御信号の少なくとも何れか一方の出力開始時の前記整流電圧を保持するサンプホールド回路と、
前記整流電圧と前記サンプルホールド回路によって保持される電圧との差電圧を検出する第1検出器とを備え、
前記第1検出器によって検出される差電圧が規定の電圧レベルを越えるとの検出結果に応じて、前記第1検出器による次の検出までの間、前記第1および第2制御信号をマスクすることを特徴とする請求項1に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記同期整流マスク部は、
前記第1検出器による検出結果を、前記第1もしくは第2制御信号の少なくとも何れか一方の出力終了時にラッチする第1ラッチ部を備えることを特徴とする請求項2に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記同期整流マスク部は、
前記第1もしくは第2制御信号の少なくとも何れか一方の出力される回数の計数を規定回数まで繰り返すカウンタと、
前記整流電圧と前記第3もしくは第4ノードの少なくとも何れか一方の電圧との差電圧を検出する第2検出器とを備え、
前記カウンタによる計数時における前記第2検出器による差電圧が規定の電圧レベルを越えるとの検出結果に応じて、前記カウンタによる計数が次の規定回数になるまでの間、前記第1および第2制御信号をマスクすることを特徴とする請求項1に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項5】
前記同期整流マスク部は、
前記第2検出器によって検出される差電圧が規定の電圧レベルを越えるとの検出結果を、前記カウンタによる計数時にラッチする第2ラッチ部を備えることを特徴とする請求項4に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項6】
前記同期整流マスク部は、
前記第1もしくは第2制御信号の少なくとも何れか一方の出力期間を計時する計時部と、前記計時部による計時時間を検出する第3検出器とを備え、
前記第3検出器によって検出される計時時間が規定時間を越えるとの検出結果に応じて、前記第3検出器による次の検出までの間、前記第1および第2制御信号をマスクすることを特徴とする請求項1に記載のAC−DCコンバータ。
【請求項7】
前記同期整流マスク部は、
前記第3検出器によって検出される計時時間が規定時間を越えるとの検出結果をラッチする第3ラッチ部を備えることを特徴とする請求項6に記載のAC−DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源を直流電源に変換するAC−DCコンバータに関し、特にダイオードブリッジを用いたAC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源を直流電源に変換するAC−DCコンバータとして、ダイオードブリッジを用いた全波整流回路を使用したものが知られている。ダイオードブリッジにおける整流方法としては、非同期整流方式と同期整流方式とがある。非同期整流方式は、ダイオードを用いて交流電圧を整流することで直流電圧に変換する。一方、同期整流方式は、ダイオードの代わりにパワーMOSトランジスタ等の能動素子を用いる。これらパワーMOSトランジスタのオンオフ動作を適切なタイミングで制御することで、交流電圧を整流して直流電圧に変換する。
【0003】
ダイオードを用いる非同期整流方式では、ダイオードに順方向の電流が流れる際に、端子間に順方向電圧が発生することで損失が生じる。同期整流方式では、オン抵抗が十分に小さいパワーMOSトランジスタを用いることで、ダイオードによる損失より小さい電流消費で整流動作をすることができる。
【0004】
従来より、非同期整流方式と同期整流方式とを組み合わせて利用することができる整流制御装置が開示されている(特許文献1など)。整流ブリッジに入力される交流電圧、整流ブリッジから出力される整流電圧、整流ブリッジの基準電圧のいずれか一つをサンプリングするサンプリング回路と、サンプリング回路によってサンプリングされたサンプリング電圧と交流電圧とを比較する第1のコンパレータとを有し、第1のコンパレータの出力信号に基づいて、整流ブリッジに含まれる複数の同期整流素子のうちの少なくとも一つのオン/オフを制御する整流制御装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−74949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同期整流方式では、ダイオードによる損失よりオン抵抗による損失が小さくできるため、非同期整流方式と比べ低損失で整流できる。しかし、パワーMOSトランジスタの駆動には、ゲートキャパシタの放充電をする必要がある。そして、負荷がより大きくなる場合に、パワーMOSトランジスタのオン抵抗による損失とゲート駆動損失とが、ダイオードによる損失を上回る場合があり、このような場合には、非同期整流方式を採用した方が低損失で整流動作をすることができる。
【0007】
特許文献1などに記載されている技術は、入力する交流電源がノイズの影響を受けて正確な正弦波でない場合においても、正確に同期整流素子であるMOSFETのオン/オフのタイミング制御をする技術が開示されているに過ぎない。MOSFETのオン抵抗による損失とゲート駆動損失がダイオードによる損失を上回る場合の制御に関しては何ら記載がない。
【0008】
つまり、上記特許文献1に記載の背景技術は、電源にかかる負荷がより大きくなり、同期整流方式が非同期整流方式と比べて損失が増大するといった課題については、何ら解決策を提供するものではない。
【0009】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、負荷に応じて、同期整流方式と非同期整流方式との間で制御を切り替えることで、パワーMOSトランジスタのオン抵抗による損失とゲート駆動損失とが、ダイオードによる損失を上回る負荷領域において整流動作に係るゲート駆動損失の抑制が可能なAC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願に開示のAC−DCコンバータは、整流ブリッジ部と、第1比較器と、第2比較器と、同期整流マスク部とを備える。整流ブリッジ部は、ダイオードの端子間を接続する同期整流素子と、整流電圧が出力される第1ノードと、基準電圧が印加される第2ノードと、交流電圧が印加される第3および第4ノードとを有する。第1比較器は、第1ノードと第3ノードとの間の電圧差を検出し、第1ノードより第3ノードが高電圧のとき、第1および第3ノードの間にある同期整流素子、および第2および第4ノードの間にある同期整流素子を導通する第1制御信号を出力する。第2比較器は、第1ノードと第4ノードとの間の電圧差を検出し、第1ノードより第4ノードが高電圧のとき、第1および第4ノードの間にある同期整流素子、および第2および第3ノードの間にある同期整流素子を導通する第2制御信号を出力する。同期整流マスク部は、第1もしくは第2制御信号の少なくとも何れか一方に応じて第1ノードに接続される負荷状態を判定し、負荷状態が規定レベルを越えると判断される場合に、次の負荷状態の判定までの間、第1および第2制御信号をマスクする。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示の技術が提供する同期整流素子を備える整流ブリッジを有するAC−DCコンバータでは、電源にかかる負荷が重負荷になり、同期整流素子にかかるオン抵抗による損失とゲート駆動損失とがダイオードによる損失を上回る場合において、同期整流動作を禁止することにより損失の低減を図ることができ、同期整流動作による低負荷から中負荷における低損失動作に加えて重負荷での損失低減により、整流ブリッジに係るゲート駆動損失の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1aのブロック図
図2】第1実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1aの動作を説明するタイミングチャート
図3】第2実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1bのブロック図
図4】第2実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1bの動作を説明するタイミングチャート
図5】第3実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1cのブロック図
図6】第3実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1cの動作を説明するタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、第1実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1aのブロック図である。AC−DCコンバータ装置1aは、同期整流制御回路2a、交流電源5、整流ブリッジ6、平滑コンデンサ7、DC−DCコンバータ8、インダクタ9、および出力コンデンサ10を備える。
【0014】
同期整流制御回路2aは、整流ブリッジ6の各ダイオードに並列に接続されている後述のPMOSトランジスタTP1〜TP4のオン/オフを制御することで、交流電源5から出力される交流電圧VAC1、VAC2を全波整流する際に、同期整流動作をさせるか否かを制御する。整流ブリッジ6を介して全波整流された交流電圧は平滑コンデンサ7により平滑されて整流電圧VO1を得る。整流電圧VO1は、DC−DCコンバータ8に入力される。DC−DCコンバータ8の出力端子には、インダクタ9を介して出力端子となる。出力端子には接地電圧との間に出力コンデンサ10が接続されており、出力電圧VO2が出力される。
【0015】
整流ブリッジ6は、全波整流型のダイオードブリッジである。各ダイオードにはPMOSトランジスタTP1ないしTP4が並列に接続されている。PMOSトランジスタTP1ないしTP4は他に、IGBTなどにより構成することもできる。
【0016】
整流ブリッジ6のノードN1からは全波整流された整流電圧VO1が出力され、ノードN2は接地電圧に接続されている。また、整流ブリッジ6のノードN3には交流電圧VAC1が入力され、ノードN4には交流電圧VAC2が入力されている。交流電圧VAC1と交流電圧VAC2の電圧極性は、それぞれ反対の電圧極性である。
【0017】
PMOSトランジスタTP1はノードN1、N3間に接続され、ゲートG1にはSW制御信号S1aが入力される。ソースはノードN1に接続され整流電圧VO1が出力される。ドレインはノードN3に接続され交流電圧VAC1が入力される。ソース・ドレイン間には、ノードN3からノードN1に向かう方向を順方向とする整流ダイオードD1が並列に接続される。
【0018】
また、PMOSトランジスタTP2はノードN1、N4間に接続され、ゲートG2にはSW制御信号S2aが入力される。ソースはノードN1に接続され整流電圧VO1が出力される。ドレインはノードN4に接続され交流電圧VAC2が入力される。ソース・ドレイン間には、ノードN4からノードN1に向かう方向を順方向とする整流ダイオードD2が並列に接続される。
【0019】
また、PMOSトランジスタTP3はノードN2、N4間に接続され、ゲートG3にはSW制御信号S1aが入力される。ソースはノードN4に接続され交流電圧VAC2が入力される。ドレインはノードN2に接続され接地電圧が入力される。ソース・ドレイン間には、ノードN2からノードN4に向かう方向を順方向とする整流ダイオードD3が並列に接続される。
【0020】
また、PMOSトランジスタTP4はノードN2、N3間に接続され、ゲートG4にはSW制御信号S2aが入力される。ソースはノードN3に接続され交流電圧VAC1が入力される。ドレインはノードN2に接続され接地電圧が入力される。ソース・ドレイン間には、ノードN2からノードN3に向かう方向を順方向とする整流ダイオードD4が並列に接続される。
【0021】
同期整流制御回路2aは、ブリッジ制御回路3aと同期整流マスク回路4aとを備える。ブリッジ制御回路3aは、整流ブリッジ6の入力電圧である交流電圧VAC1、VAC2と出力電圧である整流電圧VO1とを、後述するコンパレータ31a、32aによって比較し、整流ブリッジ6のノード間に接続されるPMOSトランジスタTP1〜TP4のオン/オフを制御する。
【0022】
ブリッジ制御回路3aは、コンパレータ31a、32a、スイッチ制御回路33a、34a、トリガ回路35aを備える。コンパレータ31aの反転入力端子にはノードN1が接続され整流電圧VO1が入力される。非反転入力端子にはノードN3が接続され交流電圧VAC1が入力される。出力端子から比較信号SC1が出力される。コンパレータ31aは、交流電圧VAC1と整流電圧VO1との電圧値を比較することで、交流電圧VAC1が整流電圧VO1より高電圧であることの検出を行なう。交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る期間に比較信号SC1はハイレベル(高電位電源電圧)となる。
【0023】
コンパレータ32aの反転入力端子にはノードN1が接続され整流電圧VO1が入力される。非反転入力端子にはノードN4が接続され交流電圧VAC2が入力される。出力端子から比較信号SC2が出力される。コンパレータ32aは、交流電圧VAC2と整流電圧VO1との電圧値を比較することで、交流電圧VAC2が整流電圧VO1より高電圧であることの検出を行なう。交流電圧VAC2が整流電圧VO1を上回る期間に比較信号SC2はハイレベルとなる。
【0024】
スイッチ制御回路33aの第1入力端子にはコンパレータ31aの出力端子が接続されて比較信号SC1が入力され、第2入力端子には後述するマスク信号MA1が入力される。尚、比較信号SC1は論理反転された上で入力される。スイッチ制御回路33aの出力端子は、PMOSトランジスタTP1のゲートG1およびPMOSトランジスタTP3のゲートG3に接続され、SW制御信号S1aが出力される。マスク信号MA1がローレベル(低電位電源電圧)の場合に、交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回ったことがコンパレータ31aによって検出され比較信号SC1がハイレベルになるとSW制御信号S1aがローレベルに反転する。これにより、PMOSトランジスタTP1、TP3がオンされる。一方、交流電圧VAC1が整流電圧VO1を下回ったことが検出され比較信号SC1がローレベルになるとSW制御信号S1aのレベルがハイレベルに反転する。このときは、PMOSトランジスタTP1、TP3がオフされる。また、マスク信号MA1がハイレベルの場合には、比較信号SC1の論理レベルに関わらずSW制御信号S1aはハイレベルであり、PMOSトランジスタTP1、TP3がオフ状態に維持される。
【0025】
スイッチ制御回路34aの第1入力端子にはコンパレータ32aの出力端子が接続されて比較信号SC2が入力され、第2入力端子にはマスク信号MA1が入力される。尚、比較信号SC2は論理反転された上で入力される。スイッチ制御回路34aの出力端子は、PMOSトランジスタTP2のゲートG2およびPMOSトランジスタTP4のゲートG4が接続され、SW制御信号S2aが出力される。マスク信号MA1がローレベルの場合に、交流電圧VAC2が整流電圧VO1を上回ったことがコンパレータ32aによって検出され比較信号SC2がハイレベルになるとSW制御信号S2aがローレベルに反転する。これにより、PMOSトランジスタTP2、TP4がオンされる。一方、交流電圧VAC2が整流電圧VO1を下回ったことが検出され比較信号SC2がローレベルになるとSW制御信号S2aのレベルがハイレベルに反転する。このときは、PMOSトランジスタTP2、TP4がオフされる。また、マスク信号MA1がハイレベルの場合には、比較信号SC2の論理レベルに関わらずSW制御信号S2aはハイレベルであり、PMOSトランジスタTP2、TP4がオフ状態に維持される。
【0026】
トリガ回路35aの第1入力端子にはコンパレータ31aの出力端子が接続されて比較信号SC1が入力される。第2入力端子にはコンパレータ32aの出力端子が接続されて比較信号SC2が入力される。トリガ回路35aの出力端子から、同期整流マスク回路4aに対してトリガ信号STが出力される。トリガ回路35aはOR論理回路であるので、比較信号SC1、SC2が共にローレベルの時にはトリガ信号STはローレベルであり、比較信号SC1、SC2のうち何れか一方がハイレベルの時にはトリガ信号STはハイレベルである。つまり、交流電圧VAC1もしくは交流電圧VAC2が整流電圧VO1の電圧を上回る期間に、トリガ信号STがハイレベルとなる。
【0027】
同期整流マスク回路4aは、サンプルホールド回路41a、オペアンプ42a、コンパレータ43a、Dフリップフロップ(以降、D−FF)回路44aを備える。トリガ信号STのハイレベル反転時の整流電圧VO1と、トリガ信号STのローレベル反転時の整流電圧VO1との電圧差を求め。その電圧差が所定値以上である場合に、ハイレベルのマスク信号MA1が出力される。この場合、交流電圧VAC1、VAC2が整流電圧VO1を上回る場合であっても、SW制御信号S1a、S2aの出力はハイレベルに固定される。PMOSトランジスタTP1〜TP4はオフ状態に維持され同期整流は行われない。一方、電圧差が所定値以下である場合にはマスク信号MA1がローレベルであり、交流電圧VAC1、VAC2が整流電圧VO1を上回るときには、ローレベルのSW制御信号S1aまたはS2aが出力される。PMOSトランジスタTP1〜TP4がオンされ同期整流が行われる。
【0028】
サンプルホールド回路41aは、スイッチSW1、コンデンサC1を備える。スイッチSW1は、ノードN1と後述するオペアンプ42aの反転入力端子との間に接続される。トリガ信号STのローレベルの間はスイッチSW1はオン状態である。トリガ信号STのハイレベルの時にはスイッチSW1はオフ状態となる。コンデンサC1の一端はスイッチSW1とオペアンプ42aの反転入力端子とが接続されているノードに接続され、他端は接地電圧に接続される。スイッチSW1のオン状態の間には、ノードN1とコンデンサC1の一端とが接続される。これにより、コンデンサC1には整流電圧VO1が充電される。一方、スイッチSW1のオフ状態の間には、ノードN1とコンデンサC1の一端との接続が切り離される。これにより、コンデンサC1にはスイッチSW1はオフ状態となる直前の整流電圧VO1が保持される。コンデンサC1の一端の端子電圧VC1が整流電圧VO1となる。これにより、PMOSトランジスタTP1またはPMOSトランジスタTP2の何れかがオンする直前の整流電圧VO1がサンプリングされ保持される。全波整流される整流電圧VO1の最低値が保持されることとなる。DC−DCコンバータ8による制御で変換され出力される出力電圧VO2は、接続される負荷により電力が消費される結果、平滑コンデンサ7に充電されている電力は常に消費される。MOSトランジスタTP1およびTP2がオフ状態の間は、平滑コンデンサ7への電力の供給はなく、整流電圧VO1は徐々に低下するからである。
【0029】
オペアンプ42aの反転入力端子には端子電圧VC1が入力される。非反転入力端子にはノードN1が接続され整流電圧VO1が入力される。オペアンプ42aは、これらの電圧差を増幅した電圧を差電圧VD1として出力する。これにより、スイッチSW1のオフ状態の間、すなわち、MOSトランジスタTP1あるいはTP2がオンする期間の整流電圧VO1とサンプルホールド回路41aにホールドされている整流電圧VO1の最低値との差電圧が増幅される。
【0030】
コンパレータ43aの反転入力端子には基準電圧VREF1が入力され、非反転入力端子にはオペアンプ42aの出力端子が接続され差電圧VD1が入力される。整流電圧VO1が端子電圧VC1より高電圧になるほど差電圧VD1は高電圧になる。差電圧VD1が基準電圧VREF1の電圧を越えると、コンパレータ43aの出力信号である比較信号SD1はローレベルからハイレベルに反転する。
【0031】
D−FF44aの端子Dにはコンパレータ43aの出力端子が接続され比較信号SD1が入力される。端子CLKにはトリガ信号STが論理反転されて入力される。端子Qからマスク信号MA1が出力される。D−FF44aは、トリガ信号STのローレベルへの反転に応じて比較信号SD1を取り込みマスク信号MA1として出力する。
【0032】
図2は、第1実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1aの動作を説明するタイミングチャートである。図2において、交流電圧VAC1と交流電圧VAC2との差電圧(VAC1−VAC2)、整流電圧VO1、交流電圧VAC1と整流電圧VO1との差電圧(VAC1−VO1)、交流電圧VAC2と整流電圧VO1との差電圧(VAC2−VO1)、比較信号SC1、SC2、トリガ信号ST、差電圧VD1、マスク信号MA1、およびSW制御信号S1a、S2aの動作波形が示されている。また、タイミングチャートにおいて、領域Iaを中負荷、領域IIaを重負荷の領域とする。また、交流電圧VAC1と整流電圧VO1との差電圧(VAC1−VO1)、交流電圧VAC2と整流電圧VO1との差電圧(VAC2−VO1)において、負電圧の記載は省略する。
【0033】
まず、AC−DCコンバータ装置1aにかかる負荷が図2の領域Iaに示す中負荷の場合について説明する。この場合において、交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る期間T1の期間中、比較信号SC1はハイレベルとなる。中負荷においてはマスク信号MA1はローレベルであるので、スイッチ制御回路33aはローレベルのSW制御信号S1aを出力する。これにより、整流ブリッジ6のPMOSトランジスタTP1、TP3をオン状態にする。期間T1の間、PMOSトランジスタTP1、TP3をオン状態にすることで、ノードN3からノードN1、およびノードN2からノードN4に流れる交流電流に対して整流ブリッジ6による同期整流動作が行なわれる。ここで、マスク信号MA1はローレベルであるのは、整流電圧VO1と端子電圧VC1との差電圧VD1が基準電圧VREF1を上回ることがなく、比較信号SD1はローレベルに維持されるからである。
【0034】
また、中負荷において、交流電圧VAC2が整流電圧VO1を上回る期間中には、比較信号SC2はハイレベルとなり、スイッチ制御回路34aはSW制御信号S2aをローレベルに反転することで、整流ブリッジ6のPMOSトランジスタTP2、TP4をオン状態にする。これにより、交流電圧VAC2が整流電圧VO1を上回る期間、交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る期間T1の場合と同様に、ノードN4からノードN1、およびノードN2からノードN3に流れる交流電流に対して整流ブリッジ6による同期整流動作が行なわれる。
【0035】
AC−DCコンバータ装置1aにかかる負荷が、図2の領域IIaに示す重負荷の場合について説明する。交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回り、比較信号SC1がハイレベルに反転すると(期間T2)、トリガ回路35aから出力されるトリガ信号STは、ハイレベルに反転する。サンプルホールド回路41aでは、トリガ信号STがハイレベルに反転することに応じて整流電圧VO1がサンプリングされる。
【0036】
図2が示すように、交流電源5の電圧サイクルF1の期間中、比較信号SC1、SC2がハイレベルに反転する直前が、最も整流電圧VO1の低くなるタイミングである。平滑コンデンサ7への電力の補充がないまま出力電圧VO2の負荷により平滑コンデンサ7に充電されている電力が消費されるからである。つまり、サンプルホールド回路41aには、電圧サイクルF1の期間中最も低い整流電圧VO1が端子電圧VC1として保持される。重負荷では、出力電圧VO2での電力消費が中負荷と比べ大きいため、MOSトランジスタTP1およびTP2がオフ状態の間の端子電圧VC1の電圧降下はより大きくなる。これに伴い、オペアンプ42aから出力される整流電圧VO1と端子電圧VC1との差電圧VD1は中負荷と比べ大きくなる。
【0037】
したがって、中負荷であった領域Iaから重負荷の領域IIaに移ると、交流電圧VAC1、VAC2が整流電圧VO1を上回る期間T2は中負荷での期間T1より長くなるとともに、差電圧VD1は基準電圧VREF1を上回る。
【0038】
期間T3は、この差電圧VD1が基準電圧VREF1を上回る期間である。差電圧VD1が基準電圧VREF1を上回ってから、比較信号SC1、SC2がローレベルに反転した後、基準電圧VREF1を下回るまでの期間である。差電圧VD1が基準電圧VREF1を上回ると、コンパレータ43aにより比較信号SD1はハイレベルに反転される。ハイレベルである比較信号SD1はトリガ信号STのローレベルの反転により確定され、D−FF44aに取り込まれてハイレベルのマスク信号MA1として出力される。
【0039】
ブリッジ制御回路3aのスイッチ制御回路33a、34aの第2入力端子に、ハイレベルのマスク信号MA1が入力されると、比較信号SC1、SC2の論理レベルに関わらず、SW制御信号S1a、S2aはハイレベルに固定される。マスク信号MA1は、比較信号SC1、SC2がローレベルに反転して同期整流動作が終了した時点で論理レベルが確定し、次のサイクルでの同期整流動作の可否を決定する。例えば、交流電圧VAC1が正電圧になるサイクルにおいて期間T2で同期整流が行われる。マスク信号MA1は期間T2の終了時点でがハイレベルに反転する。ハイレベルのマスク信号MA1は次サイクルである交流電圧VAC2が正電圧になる期間の同期整流を抑制する(図2のX)。以下同様に、各サイクルで次サイクルでの同期整流動作の可否を決定する。
【0040】
図3は、第2実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1bのブロック図である。AC−DCコンバータ装置1bは、同期整流制御回路2b、交流電源5、整流ブリッジ6、平滑コンデンサ7、DC−DCコンバータ8、インダクタ9、および出力コンデンサ10を備える。
【0041】
整流ブリッジ6、平滑コンデンサ7、DC−DCコンバータ8、インダクタ9、および出力コンデンサ10は、第1実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1aと同様の構成であり同様の機能を奏するので、ここでの説明は省略する。
【0042】
同期整流制御回路2bは、ブリッジ制御回路3bと同期整流マスク回路4bとを備える。ブリッジ制御回路3bは、ブリッジ制御回路3aと同様に、整流ブリッジ6の入力電圧である交流電圧VAC1、VAC2と整流電圧VO1とを比較し、整流ブリッジ6のPMOSトランジスタTP1〜TP4のオン/オフを制御する。
【0043】
ブリッジ制御回路3bは、コンパレータ31b、32b、スイッチ制御回路33b、34bを備える。コンパレータ31bは、コンパレータ31aと同様に、反転入力端子にはノードN1が接続され整流電圧VO1が入力される。非反転入力端子にはノードN3が接続され交流電圧VAC1が入力される。出力端子から比較信号SC1が出力される。コンパレータ31bの動作は、コンパレータ31aと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
コンパレータ32bは、コンパレータ32aと同様に、反転入力端子にはノードN1が接続され整流電圧VO1が入力される。非反転入力端子にはノードN4が接続され交流電圧VAC2が入力される。出力端子から比較信号SC2が出力される。コンパレータ32bの動作は、コンパレータ32aと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0045】
スイッチ制御回路33aと同様に、スイッチ制御回路33bの第1入力端子にはコンパレータ31bの出力端子が接続され比較信号SC1が入力され、第2入力端子には、第1実施形態でのマスク信号MA1に代えて、後述するマスク信号MA2が入力される。尚、比較信号SC1は論理反転された上で入力される。スイッチ制御回路33bの出力端子には、PMOSトランジスタTP1のゲートG1およびPMOSトランジスタTP3のゲートG3が接続され、SW制御信号S1bが出力される。スイッチ制御回路33bの動作は、スイッチ制御回路33aと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0046】
スイッチ制御回路34aと同様に、スイッチ制御回路34bの第1入力端子にはコンパレータ32bの出力端子が接続され比較信号SC2が入力され、第2入力端子には、第1実施形態でのマスク信号MA1に代えて、マスク信号MA2が入力される。尚、比較信号SC2は論理反転された上で入力される。スイッチ制御回路34bの出力端子には、PMOSトランジスタTP2のゲートG2およびPMOSトランジスタTP4のゲートG4が接続され、SW制御信号S2bが出力される。スイッチ制御回路34bの動作は、スイッチ制御回路34aと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0047】
同期整流マスク回路4bは、カウンタ回路41b、オペアンプ42b、コンパレータ43b、アンド回路45b、フリップフロップ(以下、FFと表記)回路46b、およびD−FF回路44bを備える。カウンタ回路41bが、比較信号SC1のハイレベル反転の回数を4回を数える毎に、比較信号SC1のローレベル反転時の整流電圧VO1と交流電圧VAC1との電圧差を検出し、その電圧差が所定値以上である場合に、ハイレベルのマスク信号MA2が出力される。マスク信号MA2の論理レベルは、カウンタ回路41bが次のカウント動作、すなわち、比較信号SC1のハイレベル反転の回数を4回を数えるまで維持される。マスク信号MA2がハイレベルにされた場合、交流電圧VAC1、VAC2が整流電圧VO1を上回る場合であっても、SW制御信号S1b、S2bの出力はハイレベルに固定される。PMOSトランジスタTP1〜TP4はオフ状態に維持され同期整流は行われない。一方、マスク信号MA2がローレベルにされた場合には、交流電圧VAC1、VAC2が整流電圧VO1を上回るときには、ローレベルのSW制御信号S1bまたはS2bが出力される。PMOSトランジスタTP1〜TP4がオンされ同期整流が行われる。
【0048】
カウンタ回路41bは、D−FF47b、48b、インバータINV1、XOR回路XOR1、および論理積回路49bを備える。比較信号SC1が入力されゲート信号GTが出力される。比較信号SC1のハイレベル反転に応じて、カウント値COがカウントアップされる。比較信号SC1が4回目のハイレベル反転されるのに応じてゲート信号GTはハイレベルに反転し、ローレベル反転されるのに応じてローレベルに反転する。
【0049】
D−FF47bの端子CLKには比較信号SC1が入力される。端子DにはインバータINV1の出力端子が接続される。端子QはインバータINV1の入力端子、XOR回路XOR1の入力端子、および論理積回路49bの第2入力端子に接続される。インバータINV1により、比較信号SC1がハイレベルに反転するごとに、D−FF47bの端子Qの出力信号は論理反転することになる。
【0050】
D−FF48bの端子CLKには比較信号SC1が入力される。端子DにはXOR回路XOR1の出力端子が接続される。端子QはXOR回路XOR1の入力端子、および論理積回路49bの第3入力端子に接続される。
【0051】
論理積回路49bの第1入力端子には比較信号SC1が入力される。尚、論理積回路49bの第2入力端子、第3入力端子に入力される信号は論理反転された上で入力される。論理積回路49bの出力端子からはゲート信号GTが出力される。カウンタ回路41bがカウントアップされ、論理積回路49bの第1入力端子にハイレベル、第2および第3入力端子にローレベルが入力されるとゲート信号GTがハイレベルに反転する。
【0052】
カウンタ回路41bは、カウント値CO=0を初期状態とし、比較信号SC1のハイレベル反転ごとに1増加しカウントアップされ、カウント値CO=3までの4回のカウント動作をした後、初期状態のカウント値CO=0に戻る。以下、4回のカウント動作を繰り返す。
【0053】
オペアンプ42bの反転入力端子にはノードN1が接続され整流電圧VO1が入力される。非反転入力端子にはノードN3が接続され交流電圧VAC1が入力される。オペアンプ42bは、両入力端子における電圧差を増幅した差電圧VD2を出力する。
【0054】
コンパレータ43bの反転入力端子には基準電圧VREF2が入力され、非反転入力端子にはオペアンプ42bの出力端子が接続され差電圧VD2が入力される。差電圧VD2が基準電圧VREF2の電圧を越えると交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る電圧値が規定値を越えたと判断され、コンパレータ43bから出力される比較信号SD2はローレベルからハイレベルに反転する。
【0055】
アンド回路45bは、第1入力端子にカウンタ回路41bの出力端子が接続されゲート信号GTが入力される。第2入力端子にコンパレータ43bの出力端子が接続され比較信号SD2が入力される。アンド回路45bの出力端子にはFF回路46bの端子Sに接続される。
【0056】
FF回路46bの端子Sはセット端子である。ハイレベルの入力によりハイレベルの論理値がラッチされる。端子Rはリセット端子である。ハイレベルの入力によりローレベルの論理値がラッチされる。端子Rには比較信号SC2が入力される。端子Qから制御信号SQ2が出力される。交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る電圧値が規定値を越えたと判断され比較信号SD2がハイレベルに反転された状態でハイレベルのゲート信号GTが入力されると、FF回路46bはセットされハイレベルの制御信号SQ2が出力される。比較信号SC2がローレベルに反転することに応じて、制御信号SQ2はローレベルにリセットされる。
【0057】
D−FF回路44bの端子DはFF回路46bの端子Qが接続され制御信号SQ2が入力される。端子CLKはカウンタ回路41bの出力端子が接続されゲート信号GTが入力される。端子Qからマスク信号MA2が出力される。D−FF回路44bは、ゲート信号GTがローレベルに反転することに応じて制御信号SQ2を取り込みマスク信号MA2として出力する。
【0058】
図4は、第2実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1bの動作を説明するタイミングチャートである。図4において、交流電圧VAC1と交流電圧VAC2との差電圧(VAC1−VAC2)、整流電圧VO1、交流電圧VAC1と整流電圧VO1との差電圧(VAC1−VO1)、交流電圧VAC2と整流電圧VO1との差電圧(VAC2−VO1)、比較信号SC1、SC2、差電圧VD2、比較信号SD2、カウント値CO、ゲート信号GT、制御信号SQ2、マスク信号MA2、およびSW制御信号S1b、S2bの動作波形が示されている。また、タイミングチャートにおいて、領域Ibを中負荷、領域IIbを重負荷の領域とする。また、図2と同様に、交流電圧VAC1と整流電圧VO1との差電圧(VAC1−VO1)、交流電圧VAC2と整流電圧VO1との差電圧(VAC2−VO1)において、負電圧の記載は省略する。
【0059】
AC−DCコンバータ装置1bにかかる負荷が中負荷の場合において(領域Ib)、マスク信号MA2は、第1実施形態におけるマスク信号MA1と同様の信号であり、ブリッジ制御回路3bに入力される。マスク信号MA2はローレベルであるのは、中負荷では交流電圧VAC1と整流電圧VO1との差電圧VD2が基準電圧VREF2を上回ることはないためである。このため、比較信号SD2はローレベルに維持される。カウンタ回路41bにより、比較信号SC1のハイレベル反転の回数を4回を数え、カウント値COが0に戻りゲート信号GTがハイレベルに反転するものの比較信号SD2はローレベルに維持されているのでFF回路46bはローレベルに維持されているからである。ここで、ブリッジ制御回路3bの動作は、ブリッジ制御回路3aと同様の動作であるので、ここでの説明は省略する。マスク信号MA2がローレベルに維持されているので、SW制御信号S1b、S2bは交互にローレベルとなり同期整流動作が行われる。
【0060】
AC−DCコンバータ装置1bにかかる負荷が重負荷の場合(領域IIb)には、交流電圧VAC1と整流電圧VO1との電圧差に応じた差電圧VD2は基準電圧VREF2を上回る。これにより、比較信号SD2はハイレベルに反転される。
【0061】
カウンタ回路41bにより、比較信号SC1のハイレベル反転回数が4回を数えるとカウント値COが0に戻り、ゲート信号GTはハイレベルに反転する。このとき差電圧VD2がハイレベルであるので、FF回路47bがセットされ、D−FF回路44bを介してハイレベルのマスク信号MA2が出力される。
【0062】
マスク信号MA2のハイレベル状態は、カウント値COが再度0に戻るまで維持され、この間の比較信号SC1、SC2の論理レベルに関わらず同期整流動作は行われない。
【0063】
図5は、第3実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1cのブロック図である。AC−DCコンバータ装置1cは、同期整流制御回路2c、交流電源5、整流ブリッジ6、平滑コンデンサ7、DC−DCコンバータ8、インダクタ9、および出力コンデンサ10を備える。
【0064】
整流ブリッジ6、平滑コンデンサ7、DC−DCコンバータ8、インダクタ9、および出力コンデンサ10は、第1実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1aと同様の構成であり同様の機能を奏するので、ここでの説明は省略する。
【0065】
同期整流制御回路2cは、ブリッジ制御回路3cと同期整流マスク回路4cとを備える。ブリッジ制御回路3bは、ブリッジ制御回路3a、3bと同様に、整流ブリッジ6の入力電圧である交流電圧VAC1、VAC2と整流電圧VO1とを比較し、整流ブリッジ6のPMOSトランジスタTP1〜TP4のオン/オフを制御する。
【0066】
ブリッジ制御回路3cは、コンパレータ31c、32c、スイッチ制御回路33c、34cを備える。コンパレータ31cは、コンパレータ31a、31bと同様に、反転入力端子にはノードN1が接続され整流電圧VO1が入力される。非反転入力端子にはノードN3が接続され交流電圧VAC1が入力される。出力端子から比較信号SC1が出力される。コンパレータ31cの動作は、コンパレータ31a、31bと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0067】
コンパレータ32cは、コンパレータ32a、32bと同様に、反転入力端子にはノードN1が接続され整流電圧VO1が入力される。非反転入力端子にはノードN4が接続され交流電圧VAC2が入力される。出力端子から比較信号SC2が出力される。コンパレータ32cの動作は、コンパレータ32a、32bと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0068】
スイッチ制御回路33a、33bと同様に、スイッチ制御回路33cの第1入力端子にはコンパレータ31cの出力端子が接続され比較信号SC1が入力され、第2入力端子には、第1実施形態でのマスク信号MA1に代えて、後述するマスク信号MA3が入力される。尚、比較信号SC1は論理反転された上で入力される。スイッチ制御回路33cの出力端子には、PMOSトランジスタTP1のゲートG1およびPMOSトランジスタTP3のゲートG3が接続され、SW制御信号S1cが出力される。スイッチ制御回路33cの動作は、スイッチ制御回路33a、33bと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
スイッチ制御回路34a、34bと同様に、スイッチ制御回路34cの第1入力端子にはコンパレータ32cの出力端子が接続され比較信号SC2が入力され、第2入力端子には、第1実施形態でのマスク信号MA1に代えて、マスク信号MA3が入力される。尚、比較信号SC2は論理反転された上で入力される。スイッチ制御回路34cの出力端子には、PMOSトランジスタTP2のゲートG2およびPMOSトランジスタTP4のゲートG4が接続され、SW制御信号S2cが出力される。スイッチ制御回路34cの動作は、スイッチ制御回路34a、34bと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
同期整流マスク回路4cは、計時回路41c、コンパレータ43c、FF回路46c、およびD−FF回路44cを備える。計時回路41cでは、交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る期間である比較信号SC1がハイレベルの時間を計測する。所定時間より比較信号SC1のハイレベルの時間が長い場合に(図6の領域IIcの場合)、ハイレベルのマスク信号MA3が出力される。この場合、交流電圧VAC1、VAC2が整流電圧VO1の電圧値を上回る場合であっても、SW制御信号S1c、S2cの出力はハイレベルに固定される。PMOSトランジスタTP1〜TP4はオフ状態に維持され同期整流は行われない。一方、比較信号SC1のハイレベルの時間が所定時間以下である場合には(図6の領域Icの場合)、マスク信号MA3がローレベルであり、交流電圧VAC1、VAC2が整流電圧VO1を上回るときには、ローレベルのSW制御信号S1cまたはS2cが出力される。PMOSトランジスタTP1〜TP4がオンされ同期整流が行われる。
【0071】
計時回路41cは、インバータINV2、NMOSトランジスタTN1、定電流源I1、およびコンデンサC2を備える。インバータINV2の入力端子には比較信号SC1が入力される。NMOSトランジスタTN1のドレインには定電流源I1から電流が供給され、ソースには接地電圧が接続される。NMOSトランジスタTN1のゲートにはインバータINV2の出力端子が接続され、比較信号SC1の反転信号が入力される。コンデンサC2の一端にはNMOSトランジスタTN1のドレインと定電流源I1との接続ノードに接続され、他端は接地電圧に接続される。
【0072】
比較信号SC1のローレベルの間はNMOSトランジスタTN1はオン状態であり、コンデンサC2は放電状態にある。比較信号SC1がハイレベルに遷移すると、NMOSトランジスタTN1はオフ状態となりコンデンサC2は定電流源I1により充電される。コンデンサC2の一端に発生する端子電圧VC3はNMOSトランジスタTN1はオフの期間に応じて線形に上昇する電圧となる。
【0073】
コンパレータ43cの反転入力端子には基準電圧VREF3が入力され、非反転入力端子はコンデンサC2の一端が接続され端子電圧VC3が入力される。端子電圧VC3が基準電圧VREF3の電圧を越えると、コンパレータ43cからハイレベルの比較信号SD3が出力される。
【0074】
FF回路46cのセット端子Sにはコンパレータ43cの出力端子が接続される。リセット端子Rには比較信号SC2が入力される。端子Qから制御信号SQ3が出力される。交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る時間が所定時間を越えたと判断され比較信号SD3がハイレベルに反転されると、FF回路46cはセットされハイレベルの制御信号SQ3が出力される。交流電圧VAC1、VAC2の半サイクル先の比較信号SC2がローレベルに反転することに応じて、制御信号SQ3はローレベルにリセットされる。
【0075】
D−FF44cの端子DはFF回路46cの端子Qが接続され制御信号SQ3が入力される。端子CLKは比較信号SC1が論理反転されて入力される。端子Qからマスク信号MA3が出力される。D−FF回路44cは、比較信号SC1のローレベル反転に応じて制御信号SQ3を取り込みマスク信号MA3として出力する。
【0076】
図6は、第3実施形態に係るAC−DCコンバータ装置1cの動作を説明するタイミングチャートである。図6において、交流電圧VAC1と交流電圧VAC2との差電圧(VAC1−VAC2)、整流電圧VO1、交流電圧VAC1と整流電圧VO1との差電圧(VAC1−VO1)、交流電圧VAC2と整流電圧VO1との差電圧(VAC2−VO1)、比較信号SC1、SC2、端子電圧VC2、比較信号SD3、制御信号SQ3、マスク信号MA3、およびSW制御信号S1c、S2cの動作波形が示される。また、タイミングチャートにおいて、領域Icを中負荷、領域IIcを重負荷の領域とする。また、図2、4と同様に、交流電圧VAC1と整流電圧VO1との差電圧(VAC1−VO1)、交流電圧VAC2と整流電圧VO1との差電圧(VAC2−VO1)において、負電圧の記載は省略する。
【0077】
AC−DCコンバータ装置1cにかかる負荷が中負荷の場合において(領域Ic)、マスク信号MA3は、マスク信号MA1、MA2と同様の信号であり、ブリッジ制御回路3cに入力される。中負荷(領域Ic)ではマスク信号MA3はローレベルである。コンデンサC2の一端に発生する端子電圧VC3は、交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る期間である比較信号SC1のハイレベルの継続時間に応じた電圧となる。中負荷では、コンデンサC2の充電時間の間には端子電圧VC3は基準電圧VREF3を上回ることはないので、比較信号SD3はローレベルに維持される。ローレベルの比較信号SD3ではFF回路46cがセットされることはなく、D−FF回路44cから出力されるマスク信号MA3はローレベルに維持される。ここで、ブリッジ制御回路3cの動作は、ブリッジ制御回路3aと同様の動作であるので、ここでの説明は省略する。マスク信号MA3がローレベルに維持されているので、SW制御信号S1c、S2cは交互にローレベルとなり同期整流動作が行われる。
【0078】
AC−DCコンバータ装置1cにかかる負荷が重負荷の場合(領域IIc)には、DC−DCコンバータ8による制御では、負荷電流の増加に伴い導通角が広がる特性を有している。すなわち、負荷が重いほど交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る時間が長くなる。これにより、計時回路41cによる計時時間が長くなりコンデンサC2の充電時間が長くなる。その結果、端子電圧VC3は基準電圧VREF3を上回ることになる。端子電圧VC3が基準電圧VREF3を上回ることにより比較信号SD3がハイレベルに反転される。ハイレベルの比較信号SD3はFF回路46cをセットし、D−FF回路44cを介してハイレベルのマスク信号MA2が出力される。
【0079】
以上、詳細に説明したように、本発明の第1実施形態によれば、ブリッジ制御回路3aのトリガ回路35aが、交流電圧VAC1もしくは交流電圧VAC2が整流電圧VO1の電圧を上回る期間に、ハイレベルのトリガ信号STを出力する。同期整流マスク回路4aのサンプルホールド回路41aでは、トリガ信号STがハイレベルに反転することに応じて、交流電源5の電圧サイクルF1の期間中最も低い整流電圧VO1が端子電圧VC1として取り込まれ、コンデンサC1に保持することができる。オペアンプ42aが、端子電圧VC1と整流電圧VO1との電圧差である差電圧VD1を検出し、コンパレータ43aが、差電圧VD1と、基準電圧VREF1を比較することで、AC−DCコンバータ装置1aにかかる負荷を判定することができる。AC−DCコンバータ装置1aにかかる負荷が重負荷のとき、差電圧VD1は基準電圧VREF1を上回り、比較信号SD1がハイレベルとなる。トリガ信号STのローレベルの反転に応じて、D−FF44aの端子Qから、重負荷の判定信号であるハイレベルのマスク信号MA1が出力される。ハイレベルのマスク信号MA1が、スイッチ制御回路33a、34aに入力されると、比較信号SC1、SC2の論理レベルに関わらず、SW制御信号S1a、S2aはハイレベルに維持される。よって、PMOSトランジスタTP1〜TP4がオフ状態に維持される。これにより、PMOSトランジスタTP1〜TP4のオンによる同期整流動作が抑止される。
【0080】
また、本発明の第2実施形態によれば、同期整流マスク回路4bのカウンタ回路41bが、比較信号SC1のハイレベル反転の回数を数える。比較信号SC1のハイレベル反転を4回数える毎に、オペアンプ42bで検出されている整流電圧VO1と交流電圧VAC1との電圧差である差電圧VD2は、コンパレータ43bにより基準電圧VREF2を比較される。これにより、AC−DCコンバータ装置1bにかかる負荷を判定することができる。AC−DCコンバータ装置1bにかかる負荷が重負荷のとき、差電圧VD2は基準電圧VREF2を上回り、比較信号SD2がハイレベルとなる。比較信号SC1のローレベル反転に応じたゲート信号GTのローレベルの反転に応じて、D−FF44bの端子Qから、重負荷の判定信号であるハイレベルのマスク信号MA2が出力される。ハイレベルのマスク信号MA2が、スイッチ制御回路33b、34bに入力されると、第1実施形態と同様に、比較信号SC1、SC2の論理レベルに関わらず、SW制御信号S1b、S2bはハイレベルに維持される。よって、PMOSトランジスタTP1〜TP4がオフ状態に維持される。これにより、PMOSトランジスタTP1〜TP4のオンによる同期整流動作が抑止される。
【0081】
また、本発明の第3実施形態によれば、計時回路41cが、交流電圧VAC1が整流電圧VO1を上回る期間である比較信号SC1がハイレベルの時間を計測する。コンパレータ43cは、比較信号SC1のハイレベルの時間に応じて線形に上昇する端子電圧VC3と、基準電圧VREF3を比較することで、AC−DCコンバータ装置1cにかかる負荷を判定することができる。AC−DCコンバータ装置1cにかかる負荷が重負荷のとき、端子電圧VC3は基準電圧VREF3を上回り、比較信号SD3がハイレベルとなる。比較信号SC1のローレベルの反転に応じて、D−FF44bの端子Qから、重負荷の判定信号であるハイレベルのマスク信号MA3が出力される。ハイレベルのマスク信号MA3が、スイッチ制御回路33c、34cに入力されると、第1、2実施形態と同様に、比較信号SC1、SC2の論理レベルに関わらず、SW制御信号S1c、S2cはハイレベルに維持される。よって、PMOSトランジスタTP1〜TP4がオフ状態に維持される。これにより、PMOSトランジスタTP1〜TP4のオンによる同期整流動作が抑止される。
【0082】
これにより、AC−DCコンバータ装置1a、1b、1cは、負荷がより大きくなり、同期整流方式が非同期整流方式と比べて損失が増大する場合において、同期整流マスク回路4a、4b、4cによって負荷状態を判断することで、同期整流方式を抑止することができ、負荷に関わらず整流動作に係る損失の低減を図ることが可能となる。
【0083】
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、本願の第1実施形態では、交流電圧VAC1およびVAC2が整流電圧VO1を上回るときに同期整流マスク回路4aにより負荷状態を検出し同期整流動作の可否を判断した。しかしながら本願はこれに限定されるものではなく、トリガ信号STに代えて、例えば、比較信号SC1または比較信号SC2に応じて同期整流マスク回路4aを動作させ、同期整流動作の可否を判断しても構わない。
また、本願の第2実施形態において、オペアンプ42bの非反転入力端子に入力されるのは交流電圧VAC1に限らない。交流電圧VAC2であっても構わない。この場合、カウンタ回路41bに入力される信号は比較信号SC2となる。
また、カウンタ回路41bにより数えられる比較信号SC1のハイレベル反転の回数は、4回に限定されない。
また、比較信号SC1のハイレベル反転の回数を計数することに代えて、比較信号SC1およびSC2のそれぞれのハイレベル反転の回数を計数してもよい。この場合、オペアンプ42bに代えて交流電圧VAC2と整流電圧VO1との差電圧を出力し負荷状態を判定してもよい。
また、本願の第3実施形態において、計時回路41cに入力される信号は比較信号SC1と限らない。比較信号SC2であっても構わない。この場合は1周期に1度の導通角の検出であるが、比較信号SC1および比較信号SC2のそれぞれに計時回路41cに対応する計時回路を備えてやれば、半周期にごとに導通角を検出することができる。
【0084】
ここで、コンパレータ31a、31b、31cは第1比較器の一例、またコンパレータ32a、32b、32cは第2比較器の一例、スイッチ制御回路33a、33b、33c、34a、34b、34c、および同期整流マスク回路4a、4b、4cは同期整流マスク部の一例、オペアンプ42aは第1検出器の一例、D−FF44aは第1ラッチ部の一例、オペアンプ42bは第2検出器の一例、D−FF回路44bおよびFF回路46bは第2ラッチ部の一例、計時回路41cは計時部の一例、コンパレータ43cは第3検出器の一例、D−FF回路44cおよびFF回路46cは第3ラッチ部の一例である。
【符号の説明】
【0085】
1a、1b、1c AC−DCコンバータ装置
2a、2b、2c 同期整流制御回路
3a、3b、3c ブリッジ制御回路
4a、4b、4c 同期整流マスク回路
5 交流電源
6 整流ブリッジ
7 平滑コンデンサ
8 DC−DCコンバータ
9 インダクタ
10 出力コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6