特許第6024369号(P6024369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024369
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】窓用ガラス積層体
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20161107BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20161107BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20161107BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20161107BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20161107BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C03C17/36
   C03C27/06 101H
   B32B17/06
   B32B7/02 103
   E06B5/00 B
   E06B3/66 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-225671(P2012-225671)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-76918(P2014-76918A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
(72)【発明者】
【氏名】中西 由貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和広
(72)【発明者】
【氏名】米倉 正明
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540311(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0136905(US,A1)
【文献】 特開2008−222507(JP,A)
【文献】 特開平08−104547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
C03C 27/00−29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材と、該ガラス基材上に、順次、該ガラス基材側から誘電体からなる第1層、Agを主成分とする金属からなる第2層、誘電体からなる第3層、Agを主成分とする金属からなる第4層、及び誘電体からなる第5層を有する低放射薄膜積層体が形成された窓用ガラス積層体において、
第2層及び第4層の直下の第1層及び第3層は、酸化亜鉛を主成分とする誘電体であり、第5層は最上層であり、
前記薄膜積層体は、第2層の幾何学厚みが9〜11nm、第4層の幾何学厚みが19〜30nmであり、該第2層と該第4層との幾何学厚みの合計が29〜40nmであり、前記第4層の幾何学厚みに対する前記第2層の幾何学厚みの比が0.3〜0.5の範囲内であり、前記第1層の光学厚みが40〜100nm、前記第3層の光学厚みが180〜220nm、前記第5層の光学厚みが50〜80nmであり、
該第2層及び該第4層の上に犠牲金属層が形成されており、
犠牲金属層は幾何学厚みが1〜4nmであり、該犠牲金属層はAlを含有するZnが酸化されて透明になったものであり
JIS R3106(1998)に準拠して算出したガラス基材側からの可視光反射率が15〜45%であり、
JIS Z8729(2004)に準拠して算出したガラス基材側からの反射色調が、CIE Lb*色度座標図において、aは−15〜2、bは−15〜−3.6の範囲内であることを特徴とする建築物に用いられる窓用ガラス積層体。
【請求項2】
前記薄膜積層体において、第2層の幾何学厚みと第4層の幾何学厚みの合計が29〜34nmであり、該第4層の幾何学厚みに対する該第2層の幾何学厚みの比が0.4〜0.5の範囲内である請求項1に記載の建築物に用いられる窓用ガラス積層体。
【請求項3】
ガラス基材側からの反射色調が、ブルー系又はブルーとグリーンの中間色であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築物に用いられる窓用ガラス積層体。
【請求項4】
複数枚のガラス基材が、それぞれ中空層を介して積層されてなる複層ガラスであって、前記ガラス基材の少なくともひとつが請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建築物に用いられる窓用ガラス積層体である複層ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性能を有する窓用ガラスに関し、特に建築物に用いられるガラス基材と、該ガラス基材上に形成した低放射薄膜積層体とからなる窓用ガラス積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷暖房効率の向上を目的として、2枚のガラス基板の間に中空層を形成するように積層した複層ガラスにおいて、ガラス基板の中空層側に低放射性の積層膜(Low−E膜)を配設した、Low−Eガラスを使用した窓ガラスが普及しつつある。
【0003】
このLow−Eガラスは、室内に可視光を取り入れ、窓ガラスに要求される採光性を満たす一方で、前記のLow−E膜が近赤外から赤外域の光を反射するため、太陽光による室内の温度上昇を抑制できる。また、室内から室外への熱の伝達を遮断するため、室内を保温、断熱する能力も高い。
【0004】
窓用ガラスに光が入射した場合、該ガラスを通して室内側に熱が流入するが、Low−Eガラスにおける遮熱性とは、この室内側に流入する熱を遮断する能力を指す。室内に流入する熱には、光としてガラスを透過するものと、ガラスに吸収された光が室内側に熱として再放射されるものとの2種類がある。ガラスに入射した全日射熱量に対する、室内側に流入した熱量の比が小さいほど遮熱性が高いとすることができる。JIS R3106(1998)には板ガラスの遮熱性を示す値として日射熱取得率が定義されており、これは全日射熱量のうち室内側に流入する熱量比を表すため、日射熱取得率が低いほど遮熱性は高くなる。
【0005】
従来、建築用の窓ガラスとして、採光性を重要視したタイプと遮熱性を重要視したタイプの2種類が提案されており、前者のある程度の遮熱性と可視光透過率が60〜70%以上となるLow−Eガラスへの需要が高い。一方で、遮熱性に特化したLow−Eガラスにおいては、日射熱取得率が0.43以下を示すことが基準性能と認識されており、実際に日射熱取得率が0.38〜0.40を示す高遮熱タイプのLow−Eガラスが市販されている。
【0006】
前記のLow−Eガラスとしては、ガラス基板上に、可視から赤外域にかけて高い反射特性を有する金属層と、透明誘電体層とを順次積層したものが提案されている。上記の高い反射特性を有する層として、Agを主成分とする金属膜が、透明誘電体層としては、ZnO、SnO、TiO等の金属酸化物膜や金属窒化物膜、金属酸窒化物膜がそれぞれ用いられており、基材上から、順次、透明誘電体層、金属層、透明誘電体層、金属層、透明誘電体層、と積層したものが広く利用されている。上記のように金属層を2層以上、透明誘電体層を3層以上積層し、光の干渉効果を利用することで遮熱性の向上と採光性とを両立することが可能となる。
【0007】
しかし、一方で、遮熱性を向上させるということは、すなわち近赤外域の反射率を高くすることとなり、赤に相当する波長域である700nm付近の反射率に影響が及び、積層膜によるガラス基材側からの反射色調(以下単に「反射色調」という場合がある)が赤味を帯びるようになる。ビルや住宅の窓に該積層体を利用する場合、これら用途では穏やかな外観色調が好まれていることから、反射色調が赤味を帯びることは回避されることが好ましい。
【0008】
上記の課題を解決するために、本出願人は、Agを主成分とする金属層である第2層と第4層の幾何学厚さの総和が22〜29nm、第2層の幾何学厚さが第4層の幾何学厚さの0.3〜0.8倍であり、誘電体層である第1、3、5層の光学厚さの総和が220〜380nm、第3層の光学厚さが140〜200nm、第1層の光学厚さが第5層の光学厚さの0.4〜1.5倍とすることで、斜め方向も含めて赤味の反射色調を低減し、且つ近赤外域の反射率の向上がなされた窓用ガラス積層体に関する発明を特許出願している(特許文献1)。
【0009】
また、特許文献2には、基材上に、基材側から順次、酸化物からなる第1層、Agを主成分とする金属からなる第2層、酸化物からなる第3層、Agを主成分とする金属からなる第4層、および酸化物からなる第5層とを有し、第1層の厚さが第5層の厚さの60〜90%である積層体として、角度による反射色調の変化が少ないLow−Eガラスが開示されている。
【0010】
また、ガラス面での反射色調を調整するために、本出願人は、Agを主成分とする金属層を、酸素/(Ar+酸素)×100が0.5〜13体積%である混合ガス下で形成した低放射膜に関する発明を特許出願している(特許文献3)。
【0011】
また、特許文献4には、Low−Eガラスを複層ガラスとした際の二重反射像や反射色調が赤味を帯びることを防ぐために、第1の酸化物膜/Ag膜/金属膜/第2の酸化物膜をこの順に積層した薄膜構造体において、前記第1の酸化物膜と第2の酸化物膜の膜厚比を1.0〜1.3、いずれの酸化物膜もその厚さを30〜40nm、前記Ag膜の厚さを8〜10nm、及び金属膜の厚さを1〜8nmとした、可視光透過率が50〜75%である複層ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−195638号公報
【特許文献2】特開平11−34216号公報
【特許文献3】特開2011−52294号公報
【特許文献4】特開2007−70146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、省エネルギー化の観点から、可視光の透過率よりも遮熱性を重要視する傾向にあり日射熱取得率が0.35以下となるような、より遮熱性を向上させたLow−Eガラスが要求されている。Low−Eガラスの遮熱性を向上させるためには、可視から赤外域にかけて高い反射特性を有する金属膜の厚みを厚くするのが一般的であるが、膜厚を厚くすると可視光域において反射率が高くなり、可視光の透過率が低くなる。そのために、相対的に遮熱性が低いLow−Eガラスと比べると、遮熱性を向上させたLow−Eガラスは、透過色調や反射色調がより濃く現れることから、外観上、環境との調和が取り難くなるという新たな問題があった。
【0014】
特許文献1に開示されたLow−Eガラスは、可視光透過率が70%以上であることから、可視光反射率は15%程度が上限になると想定される。15%以下の可視光反射率のLow−Eガラスである場合、通常は反射色調が淡くなるため、外観上発生する課題としては赤みの抑制が挙げられるが、前述したような遮熱性を向上させたLow−Eガラスにおいて反射色調が濃く現れることにより生じる、環境との調和が取り難くなるという問題は生じ難い。
【0015】
また、特許文献2にはわずかに緑色を帯びたLow−Eガラスが開示されており、角度による反射色調の変化を抑制したものであるが、特許文献1よりも金属層の厚みが薄く透過率が高いために、特許文献1記載のLow−Eガラスと同様、前述したような反射色調が濃く現れることにより生じる、環境との調和が取り難くなるという問題は生じ難い。
【0016】
また、特許文献3にはガラス面の反射色調を調整可能なLow−Eガラスが開示されており、当該発明を用いれば反射色調を微調整することは可能だが、色調を大きく変化させようとした場合、可視光の透過率が低下する可能性が高い。そのため、前述したような反射色調が濃く現れることにより生じる、環境との調和が取り難くなるという問題を解決することは困難であった。
【0017】
また、特許文献4には二重反射像を低減させる方法が開示されているが、可視光域から赤外域にかけての吸収率を増加させる方法を用いているため、吸収率が低いLow−Eガラスと比べて、遮熱性の低下や放射率の増加が生じやすい。
【0018】
本発明は、遮熱性を向上させ、かつガラス基材側からの反射色調を環境に調和させたLow−Eガラスを得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0019】
Agを主成分とする金属からなる層は、近赤外から赤外域における高い反射特性を発現させるための機能層であり、該機能層の厚みを厚くする程、遮熱性の高いLow−Eガラスを得ることが可能である。Low−Eガラスは基本的に複層ガラスとして使用されるため、通常、複層ガラスの日射熱取得率で遮熱性は評価される。しかしながら、複層ガラスの日射熱取得率は、ガラス板や中空層の厚み、中空層のガスの種類によって変化するため、本発明ではガラス板単板でも評価可能な遮熱性を表す数値として、前述した日射熱取得率0.35以下に相当する日射透過率33%以下を目標値とした。本発明者らが検討を行ったところ、機能層の厚みの合計が29nm以上であれば、目的とする遮熱性を達成することがわかった。
【0020】
しかし、一方で上記の範囲内である時、Low−Eガラスの反射色調が赤味を帯びたり、彩度が高くなって目に対する刺激が強いものとなり易い。そこで、本発明者らが更なる検討を行った結果、機能層の厚みの合計が29〜40nmのとき、従来と比べてガラス基材側からの可視光反射率が高いLow−E膜であるにも関わらず、ガラス基材側からの反射色調を環境に調和させることが可能となることが明らかとなった。
【0021】
すなわち本発明は、ガラス基材と、該ガラス基材上に、順次、該ガラス基材側から誘電体からなる第1層、Agを主成分とする金属からなる第2層、誘電体からなる第3層、Agを主成分とする金属からなる第4層、及び誘電体からなる第5層を有する低放射薄膜積層体が形成され、第2層の幾何学厚みが9〜11nm、第4層の幾何学厚みが19〜30nmであり、該第2層と該第4層との幾何学厚みの合計が29〜40nmである窓用ガラス積層体であって、前記第4層の幾何学厚みに対する前記第2層の幾何学厚みの比が0.3〜0.5の範囲内であり、前記第1層の光学厚みが40〜100nm、前記第3層の光学厚みが180〜220nm、前記第5層の光学厚みが50〜80nmである窓用ガラス積層体である。
【0022】
なお、前記第2層及び第4層における「主成分」とは、Agを95質量%以上含有することを指すものである。
【0023】
前記の第2層は、幾何学厚みが第4層の幾何学厚みの0.3〜0.5の範囲内となるものである。該第2層と第4層の厚みとの比率によっては斜視や正面視において赤味を呈し、また、彩度が高くなって環境に調和し難い外観になるが、第2層と第4層との幾何学厚みの比率を上記範囲内とすることにより、前述した外観上の問題を抑制することが可能である。
【0024】
ここで、幾何学厚みとは、低放射薄膜積層体作製時と同様の成膜条件で作製した単層膜の膜厚と基材の搬送速度との積から、該単層膜を作製する際の成膜速度を求め、該成膜速度を用いて低放射薄膜積層体の該当する層の膜厚を算出した値である。なお、本発明においては単層膜の膜厚は触針式段差計で測定した。
【0025】
また、前記低放射薄膜積層体の第2層の幾何学厚みを9〜11nm、第4層の幾何学厚みを19〜30nmとするのが好ましい。第2層の幾何学厚みが9nm未満の場合、反射色調が赤味を呈しやすくなり、第2層の幾何学厚みが11nmを超える場合は、反射色調の彩度が高くなりやすい。第4層の幾何学厚みが19nm未満の場合は、遮熱性が不十分となる傾向があり、30nmを超える場合は、遮熱性に優れるものの、可視光透過率が低く可視光反射率が高くなる傾向がある。
【0026】
また、光学厚みとは、低放射薄膜積層体作製時と同様の成膜条件で作製した単層膜の波長550nmにおける屈折率と膜厚との積から算出した値である。本発明における該屈折率は、単層膜の透過率と反射率とを分光光度計(U−4000、日立製作所製)で測定し、得られた値から光学シミュレーション(Reflectance−transmittance法)によって算出した。
【0027】
本発明は、前記第1層の光学厚みが40〜100nm、前記第3層の光学厚みが180〜220nm、前記第5層の光学厚みが50〜80nmとなるものである。
【0028】
第3層は前述した機能層である第2層と第4層との間に形成され、Low−Eガラスの可視光透過率や遮熱性に大きく作用する層である。第3層の光学厚みが180nm未満の場合は反射色調が赤味を帯びやすくなり、220nmを超える場合は可視光透過率、遮熱性共に低下しやすくなる。
【0029】
また、第1層と第5層はLow−Eガラスの反射色調への影響が大きい層であり、第1層と第5層の光学膜厚が上記範囲内であれば、ブルー系及びグリーン系といった、一般的に環境に調和するとされている反射色調を選択することが可能となる。一方で、第1層及び第5層の光学膜厚が上記範囲を外れると、反射色調の彩度が高くなり易い、可視光透過率が低下し易い等の傾向を示すことがある。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、遮熱性が向上し、かつ反射色調を環境に調和させたLow−Eガラスを得ることが可能となった。また、本発明はLow−Eガラスの反射色調をブルー系、グリーン系、及びブルーとグリーンの中間色の中から選択することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の低放射薄膜積層体は、3層の誘電体からなる層と、2層のAgを主成分とする金属からなる層を積層したものである。遮熱性や色調等を損なわない程度であれば、各層の間に1層以上の誘電体層又は金属層が形成されてもよい。
【0032】
本発明の機能層は、Agを主成分とする金属からなるものであり、Agの含有割合を高くすることで、近赤外から赤外域の反射特性が向上するため好ましい。また、Agに耐湿性等を付与することを目的として、第6族〜第11族元素、Al、Ti、In、Ta、Bi及びNd等の元素を含有させてもよい。
【0033】
前記低放射薄膜積層体の第1層、第3層及び第5層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化タンタル、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸窒化チタン、酸窒化亜鉛、酸窒化ジルコニウム、及び酸窒化スズからなる群から選ばれる少なくとも一つを主成分とすることが好ましい。また、各層は単一の組成の層からなっても良いし、複数の組成の異なる層が積層してなっても良い。
【0034】
第2層及び第4層のAgの結晶性及び密着性を向上させるため、第1層及び第3層のAgの直下に位置する層には、酸化亜鉛を主成分とする誘電体を用いるのが好ましい。酸化亜鉛に他の元素を添加することにより該低放射薄膜積層体の耐久性を向上させることができるが、一方で他の元素の添加量が過多になるとAgの結晶性が向上し難くなるため、酸化亜鉛に酸化アルミニウムもしくは酸化ガリウムを1〜10質量%、又は酸化スズを1〜45質量%添加した酸化亜鉛を用いるのが好ましい。
【0035】
また、特に低放射薄膜積層体の最上層に酸化スズを形成することにより良好な耐久性を発現できるため、第5層が最上層となる場合は、酸化スズを主成分とする誘電体膜を使用することが好ましい。
【0036】
前記ガラス基材は窓用に使用可能であればよく、一般的にソーダ石灰ケイ酸塩ガラスが好適に使用される。その他用途に応じて、石英ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸塩ガラス等の無色のもの、熱線吸収ガラス等の着色されたもの、更に強化ガラス、合わせガラス、網入りガラス等、を使用しても差し支えない。また、板厚は建築物に用いられる窓ガラスとして十分な強度を有していれば良く、特に規定するものではないが、3mm以上、19mm以下の板厚のガラス基材が好適に用いられる。
【0037】
本発明は遮熱性を向上させるために、近赤外域の反射率を上げたものであるが、一般的に近赤外域の反射率を上げるほど700nm付近の反射率も高くなり、反射色調が赤味を帯びる傾向にある。一方で可視光域の反射率を高くすると、赤味を打ち消す補色効果のある緑色に相当する500〜570nm付近の反射率も相対的に高くなるため、赤味を帯びた反射色調を視認し難くすることが可能となる。従って、本発明の窓用ガラス積層体はJIS R3106(1998)に準拠して算出したガラス基材側からの可視光反射率が好ましくは15〜45%、より好ましくは18〜40%、さらに好ましくは35〜40%となるものである。
【0038】
本発明の好ましい形態の一つは、前記低放射薄膜積層体において、第2層の幾何学厚みと第4層の幾何学厚みの合計が29〜34nmであり、該第4層の幾何学厚みに対する該第2層の幾何学厚みの比が0.4〜0.5の範囲内であり、JIS Z8729(2004)に準拠して算出したガラス基材側からの反射色調が、CIE L色度座標図において、a及びbは−15〜2の範囲内である窓用ガラス積層体である。該実施形態の反射色調はブルー系、グリーン系、及びブルーとグリーンの中間色となるものであり、特にブルー系の反射色調の場合は、青色に相当する波長域の反射率が高くなるため、400nm付近の透過率を下げ、遮熱性を向上させることが可能である。尚、aの値がマイナス方向に大きい程グリーン系、bの値がマイナス方向に大きい程ブルー系の反射色調となり、マイナス方向に大きい程反射色調は濃くなる。また、aとbが両方マイナスの場合、その数値がマイナスに大きい方の反射色調が強く表れるが、aとbの数値が近い又は同じ場合はブルーとグリーンの中間色を呈する。
【0039】
また、本発明の好ましい様態の一つは、前記低放射薄膜積層体において、第2層の幾何学厚みと第4層の幾何学厚みの合計が33〜40nmであり、該第4層の幾何学厚みに対する該第2層の幾何学厚みの比が0.35〜0.45の範囲内であり、JIS Z8729(2004)に準拠して算出したガラス基材側からの反射色調が、CIE L色度座標図において、a及びbは−15〜2の範囲内であり、a≦bである窓用ガラス積層体である。該実施形態の外観は反射色調がグリーン系となり、反射色調に生じる赤味を抑制し良好な外観とするものである。また、本発明のように反射色調が濃く表れ易いLow−Eガラスは可視光域の透過光が黄味を帯びることがあり、環境との調和という点で違和感を生じさせる要因のひとつだが、該実施形態を用いれば透過色調の黄味を抑制することができる。
【0040】
本発明の低放射薄膜積層体はスパッタリング法、電子ビーム蒸着法やイオンプレーティング法等で形成されることが好ましいが、生産性、均一性を確保しやすいという点でスパッタリング法が適している。
【0041】
スパッタリング法による低放射薄膜積層体の形成は、各層の材料となるスパッタリングターゲットが設置された装置内を、ガラス基材を搬送させながら行う。この時、装置内に設けられている膜形成を行う真空チャンバー内にはスパッタリング時に用いるガスが導入されており、ターゲットに負の電位を印加することにより装置内にプラズマを発生させてスパッタリングを行う。
【0042】
また、所望の膜厚を得る方法はスパッタリング装置の形式によって異なるため特に限定しないが、ターゲットへの投入電力や導入ガス条件の調整により、成膜速度を変化させることで膜厚を制御する方法や、基材の搬送速度を調整することで膜厚を制御する方法などが広く用いられている。
【0043】
誘電体からなる層である第1層、第3層、及び第5層を形成する場合、使用するターゲットはセラミックターゲット、金属ターゲット、どちらを用いても構わない。いずれにおいても使用するガス条件は特に限定するものでなく、Arガス、Oガス、及びNガスから目的とする膜に従ってガス種、混合比を適宜決めれば良い。また、真空チャンバーに導入するガスとして、Arガス、Oガス、Nガス以外の任意の第3成分を含んでも良い。
【0044】
Agを主成分とする金属からなる第2層及び第4層を形成する場合、使用するターゲットにはAgターゲット又はAg合金ターゲットを用いる。この時導入するガスにはArガスを用いるのが好ましいが、Ag膜の光学特性を損なわない程度であれば異なる種類のガスを混合してもよい。
【0045】
また、Ag膜を形成する際、Oガス等を少量混合することにより、Ag膜の日射吸収率を増加させることが可能である。本発明者らの検討により、Ag膜の日射吸収率を20%以下にすれば、日射透過率や反射色調が同程度ながら、可視光反射率を抑えることが可能となることがわかった。
【0046】
スパッタリング法を用いて該低放射薄膜積層体を形成する場合、ガラス基材上に第1層から順次各層を形成していく。特に第3層及び第5層を酸化ガスや窒化ガス等の反応性ガスを用いて形成する場合、第3層及び第5層の形成中にその下層である第2層及び第4層が、該反応性ガスにより劣化や変性してしまうことがある。上記を防ぐ目的で、該第2層及び該第4層の上にZn、Sn、Ti、Al、NiCr、Cr、Zn合金、及びSn合金等の犠牲金属層を形成するのが好ましい。該犠牲金属層が形成されることにより、第2層及び第4層への反応性ガスの影響を防ぐことが可能となる。なお、第3層及び第5層の形成時に、第2層及び第4層が劣化や変性するような反応性ガスを用いない場合は、犠牲金属層を形成する必要はない。
【0047】
また、前記の犠牲金属層は第3層及び第5層を形成する際、反応性ガスによって酸化や窒化され透明となるものが好ましい。該犠牲金属層はスパッタリング中に下層が劣化や変性するのを防止できればよいので、幾何学厚みは1nm以上、好ましくは2nm以上とするのがよい。また、4nmを超える場合は反応性ガスによる酸化や窒化が不十分となり可視光透過率が低下することがある。
【0048】
プラズマ発生源には直流電源、交流電源、及び交流と直流を重畳した電源等、いずれも用いられるが、誘電体の層を形成する際に異常放電が生じやすい場合は、交流電源又は直流電源にパルスを印加した電源を用いるのが好ましい。
【0049】
また、本発明の窓用ガラス積層体は、低放射薄膜積層体が形成された面を他のガラスと中空層を形成するように所定間隔を隔て対向させ、周辺部をスペーサーや封着材等で封止することによって、複数枚のガラス基材が、それぞれ中空層を介して積層されてなるようにした複層ガラスとして使用することが可能である。該中空層はAr、He、Ne、Kr、Xe等の不活性ガス、乾燥空気、N等が封入されるものであり、通常は乾燥空気を用いるが、より断熱性能や遮音性能を向上させることを目的としてArガスやNeガスなどを用いてもよい。
【0050】
前記スペーサーは内部に乾燥剤を有し、少なくとも2枚のガラス基材間にブチルゴムやシリコーン等の封着材を介して固定されるものであり、軽量なアルミ材や樹脂材が用いられる。当該スペーサーとガラス基材とで囲まれた部分が中空層であり、該中空層の厚みや封入する気体の種類によって、複層ガラスの断熱性を変化させることが可能である。
【0051】
また、Low−Eガラスを複層ガラス構成とすると単板の状態と比べて可視光透過率は低下し、その低下量はガラスの種類や板厚により異なり、例えば板厚6mmのソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを用いた場合は、単板状態と比べて5〜8%ほど可視光透過率が低下する。建築用に用いる複層ガラスの場合、窓ガラスの採光性を考慮すると可視光透過率が高い方が室内照明の使用頻度を抑えることが可能なため好ましい。本発明の場合、第2層と第4層の膜厚の和を29nm以上、40nm以下とすることにより、複層ガラス構成での可視光透過率を35%以上、70%以下に維持することが可能である。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の実施例及び比較例を記載する。なお、以下「膜厚」としたものは幾何学厚みを指すものとする。
【0053】
実施例1
ガラス基材上に、膜厚35nmのAl含有ZnO(以下、AZOと記載することもある)膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚3nmのAl含有Zn(以下、AZと記載することもある)膜、膜厚92nmのAZO膜、膜厚22nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚25nmのAZO膜、膜厚10nmのSnO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。ガラス基材には厚み6mmのソーダライムガラスを用いた。
【0054】
AZO膜は、Alを2質量%含むZnターゲットを用い、Oガスをプロセスガスとして導入し、圧力0.3Pa、DCパルス電源の出力電力を1.0kWとして形成した。
【0055】
Ag膜は、Agターゲットを用い、Arガスをプロセスガスとして導入し、圧力0.3Pa、DC電源の投入電力0.36kWとして形成した。
【0056】
AZ膜は、Alを4質量%含むZnターゲットを用い、Arガスをプロセスガスとして導入し、圧力0.6Pa、DC電源の出力電力を0.12kWとして形成した。なお、AZ膜は上層のAZO膜が形成される際に、一部又は全てが酸化されると想定される。
【0057】
SnOは、Snターゲットを用い、Oガスをプロセスガスとして導入し、圧力0.3Pa、DCパルス電源の出力電力を1.0kWとして形成した。
【0058】
なお、各層の形成において、所望の膜厚が得られるようにターゲット前面を通過する基材の搬送速度を調整した。
【0059】
実施例2
ガラス基材上に、膜厚40nmのAZO膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚96nmのAZO膜、膜厚20nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚25nmのAZO膜、膜厚10nmのSnO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。Ag膜形成時のプロセスガスにOガスを5体積%含有するArガスを用いた以外は、実施例1と同様の形成方法とした。
【0060】
実施例3
ガラス基材上に、膜厚40nmのAZO膜、膜厚9nmのAg膜、膜厚4nmのAZ膜、膜厚95nmのAZO膜、膜厚20nmのAg膜、膜厚4nmのAZ膜、膜厚27nmのAZO膜、膜厚10nmのSnO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。ガラス基材には厚み3mmのソーダライムガラスを用いた。各膜の形成方法は実施例1を同様とした。
【0061】
実施例4
ガラス基材上に、膜厚40nmのAZO膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚105nmのAZO膜、膜厚25nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚36nmのAZO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。ガラス基材には厚み3mmのソーダライムガラスを用いた。AZO膜形成時の電源と出力電力を、DC電源と2.0kWとした以外は実施例1と同様の形成方法とした。
【0062】
実施例5
ガラス基材上に膜厚40nmのAZO膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚104nmのAZO膜、膜厚25nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚35nmのAZO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。Ag膜形成時のプロセスガスにOガスを5体積%含有したArガスを用いた以外は、実施例4と同様の形成方法とした。
【0063】
比較例1
ガラス基材上に、膜厚30nmのZnO膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚6nmのAZO膜、膜厚87nmのZnO膜、膜厚17nmのAg膜、膜厚6nmのAZO膜、膜厚30nmのZnO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。ガラス基材には厚み6mmのソーダライムガラスを用いた。
【0064】
ZnO膜は、Znターゲットを用い、Oガスをプロセスガスとして導入し、圧力0.4Pa、DC電源の出力電力を1.0kWとして形成した。
【0065】
AZO膜は、Alを3質量%含むZnOターゲットを用い、Arガスをプロセスガスとして導入し、圧力0.7Pa、DC電源の出力電力を0.12kWとして形成した。
【0066】
Ag膜は実施例1と同様の形成方法とした。
【0067】
比較例2
ガラス基材上に、膜厚30nmのZnO膜、膜厚12nmのAg膜、膜厚6nmのAZO膜、膜厚87nmのZnO膜、膜厚17nmのAg膜、膜厚6nmのAZO膜、膜厚30nmのZnO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。各膜の形成方法は比較例1と同様にした。
【0068】
比較例3
ガラス基材上に、膜厚41nmのAZO膜、膜厚12nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚99nmのAZO膜、膜厚22nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚39nmのAZO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。各膜の形成方法は実施例1と同様にした。
【0069】
比較例4
ガラス基材上に、膜厚37nmのAZO膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚84nmのAZO膜、膜厚20nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚25nmのAZO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。AZO膜形成時の電源と出力電力を、DC電源と1.0kWとした以外は実施例1と同様の形成方法とした。
【0070】
比較例5
ガラス基材上に、膜厚35nmのAZO膜、膜厚19nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚104nmのAZO膜、膜厚14nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚45nmのAZO膜をDCマグネトロン順次スパッタリング装置を用いて形成した。各膜の形成方法は比較例4と同様にした。
【0071】
比較例6
ガラス基材上に、膜厚16nmのAZO膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚92nmのAZO膜、膜厚22nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚35nmのAZO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。各膜の形成方法は実施例1と同様にした。
【0072】
比較例7
ガラス基材上に、膜厚43nmのAZO膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚112nmのAZO膜、膜厚21nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚40nmのAZO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。各膜の形成方法は実施例1と同様にした。
【0073】
比較例8
ガラス基材上に、膜厚35nmのAZO膜、膜厚10nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚96nmのAZO膜、膜厚22nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚43nmのAZO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。各膜の形成方法は実施例1と同様にした。
【0074】
比較例9
ガラス基材上に、膜厚40nmのAZO膜、膜厚11nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚105nmのAZO膜、膜厚31nmのAg膜、膜厚3nmのAZ膜、膜厚36nmのAZO膜を順次DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成した。各膜の形成方法は実施例4と同様にした。
【0075】
得られた各実施例及び比較例の各層について、光学厚みを算出し、光学厚み及び幾何学厚みを表1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
得られた実施例及び比較例の光学特性を分光光度計(U−4000、日立製作所製)で測定し、JIS R3106(1998)に準拠した方法で、日射透過率(Ts)、可視光透過率(Tv)、ガラス基材側から光を入射した場合の可視光反射率(Rv)、低放射薄膜積層体側から光を入射した場合の日射吸収率(As)、ガラス基材側の反射色の刺激純度を求めた。また、ガラス基材側の反射色調を、JIS Z8729(2004)に準拠した方法で、CIE L色度座標図におけるa、bの値を求めた。各結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例1〜5は、日射透過率が最小で22%程度、最大でも30%程度となる遮熱性を有していた。また、実施例1〜3はブルー系、実施例4、5はグリーン系の反射色調であり、刺激純度がいずれも23%以下となるものであった。
【0080】
また、実施例4と実施例5は、各層の構成がほぼ同じであるが、実施例5はAg膜形成時のプロセスガスにOガスを含有するArガスを用いることで、実施例4と比べて日射吸収率を増加させたものである。実施例5により、日射透過率や反射色調が同程度ながら、可視光反射率が実施例4よりも低いものとなることがわかった。
【0081】
比較例1は第2層と第4層の合計の幾何学厚みが27nmであり、日射透過率が36%程度となり、遮熱性の点で不十分であった。
【0082】
また、実施例3と比較例2とは、第2層と第4層との合計膜厚が同じだが、その比率が異なるものである。比較例2の方が実施例3よりも日射透過率が高く、刺激純度も高いものであった。
【0083】
また、実施例1と比較的近い日射透過率を示す比較例3とを比較すると、どちらも可視光透過率、可視光反射率が同程度であり、基材側の反射色調の色度座標がa>bであった。しかし、比較例3の方が日射透過率が低く遮熱性は高いが、一方で比較例3はbの値が−15を下回り、刺激純度が30%以上であることから、彩度が高く視認者に周辺環境との違和感を与え易いものであった。
【0084】
また、実施例2と比較例4とは、第2層及び第4層の膜厚が同じであり、比較例4の第3層の光学厚みが180nm未満となるものである。実施例2に比べて比較例4の日射透過率は低く、高い遮熱性を有するものであるが、比較例4のaが4.4であり、反射色調が赤味を呈するものであった。
【0085】
また、比較例5は第4層よりも第2層を厚くしたものであるが、aが3.6と、反射色調が赤味を呈するものであった。
【0086】
また、実施例1と比較例6は第1層の膜厚が異なるものであるが、その他の膜構造はほぼ同等のものである。実施例1は良好な反射色調を有するのに対し、比較例6では刺激純度が34%を超え、彩度が高く、周辺環境と調和し難いものであった。
【0087】
また、比較例7は第3層の膜厚が厚い以外は、実施例1及び実施例2と類似した膜構造を有したものである。比較例7の日射透過率や反射色調は実施例1及び実施例2と同程度であるが、可視光透過率が7.5〜9.0%劣るものであった。
【0088】
また、実施例1と比較例8は第2層と第4層の膜厚は同じであり、比較例8の第5層の光学厚みが80nmを超えるものである。比較例8の可視光透過率及び日射透過率は実施例1に対してやや高い程度であるが、基材側の反射色調のbの値が−28.0と非常に彩度の高いものであった。
【0089】
また、比較例9は実施例4と第1層、第3層、第5層の膜厚が同じであるが、第2層と第4層の膜厚の和が40nmを超えるものであり、可視光透過率が37.1%と、第2層と第4層の膜厚の和が40nm以下の場合と比べて低い値を示した。
【0090】
以上より、本発明により高い遮熱性と環境に調和した反射色調を有するLow−Eガラスが得られた。