(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024423
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ロック機能付きヒンジ口栓
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
B65D47/08 G
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-264097(P2012-264097)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-108809(P2014-108809A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
(72)【発明者】
【氏名】関 武邦
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−192968(JP,A)
【文献】
特表2001−523625(JP,A)
【文献】
特開平08−337262(JP,A)
【文献】
特開2011−219111(JP,A)
【文献】
特開2009−007066(JP,A)
【文献】
特開2010−006453(JP,A)
【文献】
特開平08−119353(JP,A)
【文献】
実開昭63−054653(JP,U)
【文献】
特開2001−163346(JP,A)
【文献】
特開2005−022673(JP,A)
【文献】
特開2008−074468(JP,A)
【文献】
特開2011−073708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口栓本体と、この口栓本体に対してヒンジを介して結合されたキャップとで構成されるロック機能付きヒンジ口栓において、
前記口栓本体が、筒状側壁と、容器本体に対する嵌合部としての嵌合側壁とを備え、前記筒状側壁の先端には注出口としての開口部が形成され、前記嵌合部の径が前記筒状側壁の径より大きく、筒状側壁と嵌合部との間にこれらをつなぐ天面を備えており、
前記キャップが、キャップ天面と、このキャップ天面から垂下する側壁とを備えて構成され、このキャップ天面はヒンジによる開閉動作によって前記注出口を開閉する機能を有しており、
前記キャップ天面の一方の端部であって、このキャップ天面と略同じ高さの位置に前記ヒンジが設けられ、他方、このヒンジとは反対側のキャップ天面の端部にロック用嵌合突起が設けられており、
前記口栓本体の筒状側壁、天面、または筒状側壁と天面との接合部に、前記ロック用嵌合突起に係合するロックリブを設けた
ことを特徴とするロック機能付きヒンジ口栓。
【請求項2】
前記キャップの側壁の下端の側壁縁の高さが、ヒンジ側とその反対側で互いに異なっており、ヒンジ側ではヒンジ高さ近傍に位置していることを特徴とする前記請求項1に記載のロック機能付きヒンジ口栓。
【請求項3】
前記キャップ背面の内側に筒状突起が設けられており、
前記キャップの側壁縁と背面との距離が、上記筒状突起の先端と背面との距離より離れていることを特徴とする前記請求項1又は2に記載のロック機能付きヒンジ口栓。
【請求項4】
前記ヒンジの位置が口栓本体の上端より高いことを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載のロック機能付きヒンジ口栓。
【請求項5】
ヒンジとは反対側の前記キャップ側壁縁に、キャップを開閉する鍔部を有することを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のロック機能付きヒンジ口栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップを設けた口栓に関する。
さらにくわしくは、ソース、胡麻油、蜂蜜、ドレッシングなどの液体、胡麻、塩、胡椒、山椒、グラニュー糖、ふりかけなどの粒体や粉体などを入れる容器の口栓で、少量の排出が可能なように、先端に向かって細くなる、首長の注出口を天面に有し、ヒンジキャップを設けた口栓に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジキャップを設けた口栓は、口栓本体からキャップを取り外すことなく開口でき、内容物を排出できるので、キャップを置き忘れたり、汚したりしにくい、片手で使用できるなどの点から、近年、採用する容器が多い。しかしながら、ヒンジキャップを開けても、中途半端な位置にキャップが留まり、内容物を注出、あるいは排出する時に、ヒンジキャップが閉蓋しようとするなどして邪魔をし、内容物がキャップにかかってしまったりして、排出を妨げることが多い。
この為、キャップを一方の手で閉蓋したりしないように押さえながら、排出することになり、手間が掛かり、かつ、内容物が手に付着するなどの問題が生じていた。
【0003】
たとえば、
図8、
図9のように、ヒンジキャップ側壁23が一定の高さで、ヒンジ3がキャップ背面21から離れている場合、
図10で示すように、ヒンジキャップ2を開けて、開状態を保持する形に係止するのは困難である。
内容物が付着しやすい注出口14も飛び出しているので、手に内容物が付いて汚れやすいといった問題があった。
【0004】
文献1では、左右2つのヒンジを設け、その中央に、キャップ側には蓋係止部という鉤状の爪と、口栓本体側には本体係止部という突起を設け、キャップの開き角度が180度乃至270度になった時、蓋係止部と本体係止部が係合し、キャップの開いている状態を保持するキャップを提案している。
しかしながら、この方法では、ヒンジ近傍に設けている為、係合時や外す時に、ヒンジに対する負荷が大きく、ヒンジが伸ばされ、次第に係合しなくなってしまう問題が発生する。
【0005】
文献2では、蓋が180度開いた状態で、ノズル部の突出する方向に、ノズル部先端から一定間隔の位置に蓋の端部が位置するように、蓋を係止する第一係止手段が設けている。第一係止手段を構成するには、ヒンジキャップの容器本体嵌合部が二重にしなければならない点と、ヒンジ部にスライドが必要で、金型が高価であり、かつ、ヒンジ部に近く、かつ、ヒンジに対し引っ張りの力が掛かり、負荷が大きく、ヒンジが伸ばされ、次第に嵌合しなくなってしまう問題が発生する。
また、第二係止手段として、蓋上方の外側面に形成され、側方へ突出する第二蓋係止部と、キャップ本体のヒンジ部より下方の外側面に形成され第二蓋係止部と係合する第二本体係止部の組み合わせによる係合も提案されている。しかし、注出するノズル部に当接する栓がヒンジよりも上方にあり、ノズルが完全に栓で漏れを塞ぎ難い状態になってしまう。しかも、第二本体係止部が下方にあるので、本体側面に無理な構造で、金型が高価になるとともに、耐久性も低下してしまい、開閉を重ねると、破損したりして、係止出来なくなる問題があった。
【0006】
文献3では、いわゆるスナップオンキャップにおいて、中央のバネヒンジを左右に分けて、その中央で、上蓋とキャップ本体のそれぞれから、鉤状の突起を出して、係合して、
キャップが開いた状態を保持するものである。
このヒンジキャップは文献1と同じように、ヒンジ近傍に係止する突起を設けた為、係合時や外す時に、ヒンジに対する負荷が大きく、ヒンジが伸ばされ、次第に係合しなくなってしまう問題が発生していた。
【0007】
文献4では、キャップ軸と交差する連通筒が備えられ、連通筒の頂壁部に注出口が形成された有頂筒状の外装体が、連通筒の軸線方向に移動可能に外嵌される為、上蓋とキャップ本体との合わせ面の形状が、平面ではなく、ヒンジ近傍において、交差する連通筒に合わせて、傾斜を設けている。しかし、このキャップは、閉口した状態を保つように、係合突片を設けてはあるが、開口した状態で固定化するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−163346号公報
【特許文献2】特開2005−22673号公報
【特許文献3】特開2008−74468号公報
【特許文献4】特開2011−73708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、ヒンジキャップを持った口栓において、キャップを閉めた時には、注出口にキャップの上蓋に設けた筒状突起が、無理なく挿入され、完全に漏れを止めるとともに、ヒンジキャップを開けた時、内容物の排出に支障がない程に、充分キャップが開いた状態を保持し、かつ、その状態が、ヒンジの開閉によって、変化せず、耐久性の高いヒンジキャップを提供する事が、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る口栓は、口栓本体と、この口栓本体に対してヒンジを介して結合されたキャップとで構成されるロック機能付きヒンジ口栓において、
前記口栓本体が、筒状側壁と、容器本体に対する嵌合部としての嵌合側壁とを備え、前記筒状側壁の先端には注出口としての開口部が形成され、前記嵌合部の径が前記筒状側壁の径より大きく、筒状側壁と嵌合部との間にこれらをつなぐ天面を備えており、
前記キャップが、キャップ天面と、このキャップ天面から垂下する側壁とを備えて構成され、このキャップ天面はヒンジによる開閉動作によって前記注出口を開閉する機能を有しており、
前記キャップ天面の一方の端部であって、このキャップ天面と略同じ高さの位置に前記ヒンジが設けられ、他方、このヒンジとは反対側のキャップ天面の端部にロック用嵌合突起が設けられており、
前記口栓本体の筒状側壁、天面、または筒状側壁と天面との接合部に、前記ロック用嵌合突起に係合するロックリブを設けた
ことを特徴とするロック機能付きヒンジ口栓である。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る口栓は、前記キャップの側壁の下端の側壁縁の高さが、ヒンジ側とその反対側で互いに異なっており、ヒンジ側ではヒンジ高さ近傍に位置していることを特徴とするロック機能付きヒンジ口栓である。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る口栓は、前記キャップ背面の内側に筒状突起が設けられており、
前記キャップの側壁縁と背面との距離が、上記筒状突起の先端と背面との距離より離れていることを特徴とするロック機能付きヒンジ口栓である。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る口栓は、口栓本体とキャップが結合するヒンジの位置を、口栓本体の上端より高く設けたことを特徴とするロック機能付きヒンジ口栓である。
【0014】
また、本発明の請求項5に係る口栓は、ヒンジとは反対側の前記キャップ側壁縁に、キャップを開閉する鍔部を有することを特徴とするロック機能付きヒンジ口栓である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の口栓は、キャップを閉めた時には、完全に漏れを止めることができると共に、キャップを開けた時には、充分開いた状態で係止し、内容物を注出する際等において邪魔になるなどの支障がない。しかも、開閉を繰り返しても、キャップの開き状態が係止出来なくなるなどの問題がなく、充分に耐久性のある口栓である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例を、キャップ鍔側より見た外観図である。
【
図2】本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例を、ヒンジ側より見た外観の斜視図である。
【
図3】本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例を、ヒンジを通る面で切った断面図である。
【
図4】本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例で、キャップを開け、ロックした状態を示した、断面図である。
【
図5】本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例で、キャップを開け、ロックした状態を示した、ヒンジ反対側より見た外観図である。
【
図6】本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例で、キャップを開け、ロックした状態を示した、ヒンジ側より見た外観図である。
【
図7】本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例を容器本体に嵌合させた外観図である。
【
図8】本発明によらない口栓の一例で、筒状側壁と形設するヒンジキャップの側壁縁が、一定の高さに設定されている場合の口栓の外観図である。
【
図9】本発明によらない口栓の一例で、筒状側壁と形設するヒンジキャップの側壁縁が、一定の高さに設定されている場合の口栓の断面図である。
【
図10】本発明によらない口栓の一例で、筒状側壁と形設するヒンジキャップの側壁縁が、一定の高さに設定されている場合の口栓のヒンジキャップを開いた状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のロック機能付きヒンジ口栓における実施の形態例について、図を用いて詳細に説明する。
図1、
図2は、本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例で、口栓本体1とキャップ2から構成されている。
口栓本体1は、口先が細長い筒状側壁11と、容器本体との嵌合側壁12と、それらの中間にあって、結び付けている天面13よりなる。なお、筒状側壁11の先端を注出口14としている。口栓本体1のヒンジ側における筒状側壁11ないし天面13には、ロックリブ4が設けられている。
キャップ2は、キャップ天面21の一方にヒンジ3、他方にロック用嵌合突起22を有し、キャップ天面21の周縁から垂下している側壁23が連なり、側壁縁231のヒンジ側は、傾斜面2311に沿って切り落とされている。そして、ヒンジ反対側の側壁縁231には、キャップ2を開閉する鍔232が設けられている。
【0018】
もちろん、側壁縁231のヒンジ側は、傾斜面ではなく、段差の状態に切り落とされていても、キャップを保持する機能は達成できる。また、ヒンジ反対側に設ける鍔232も、側壁縁231でなくてもかまわない。しかし、強度の点でも、汚れにくくする、耐久性を上げるなど、機能面においても、側壁縁231のヒンジ側を傾斜面2311に沿って切り落とし、また、ヒンジ反対側の側壁縁231にキャップ2を開閉する鍔232を設けることが好ましい。
【0019】
図3には、本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例における、ヒンジを通る面で切った断面図を示している。
キャップ2のキャップ天面21には、内側に筒状突起24があって、口栓本体1の注出口14内面に内接し、液止めの役割をしている。
また、注出口14のヒンジ反対側には嵌合凹部141があり、キャップ2側壁縁231の鍔232部内側に、嵌合突起233が係合し、キャップ2を閉めた時のロックになっている。
注出口14の高さは、ヒンジ3よりも低い位置になっており、注出口14の先端に付着した内容物が、手に付きにくくしている。
天面13の内側には、容器本体の口部に内接するインナーリング131と、容器本体の口部端部に圧接するコンタクトリング132を設けても良い。容器本体との嵌合も、図示したネジ121によるものであっても、打栓式の嵌合リングであってもかまわない。
【0020】
図4、
図5、
図6は、本発明のロック機能付きヒンジ口栓の一例における、キャップ2を開け、ロックした状態を示したもので、キャップ2は、ヒンジ3を中心に回転し、嵌合突起22が、ロックリブ4で掛止している。
この時、
図10で示したような口栓とは違い、キャップ2のキャップ天面21は、キャップ本体1の筒状側壁11には接していない。鍔232も、天面13と干渉していない。鍔232は、図面で示したように、口栓本体1の嵌合側壁12より外側に位置し、飛び出していることが好ましい。
ヒンジ3とロック用嵌合突起22は、キャップ2で一番離れた位置にあるので、ヒンジの開閉や、ロックでのずれなどで、ヒンジ3の支点をいたずらに変動させ、耐久性を低下させることがない。
キャップ2の側壁縁231のヒンジ側は傾斜面2311になっており、この傾斜面2311を含む側壁縁231は、筒状突起24より背面から離れた位置に設けられているので、筒状突起24先端に付着した内容物が、手に付着しにくくなっている。
また、注出口14はヒンジ3よりも低い位置に留まり、手に内容物が誤って汚さないように設定されている。
【0021】
図7は、本発明の口栓を容器本体5に嵌合した状態を示している。口栓と容器本体5との嵌合が打栓式の場合は、図のように容器口元に鍔(本体)51を設けることが好ましい。ねじ式の場合は、鍔をつけなくてもかまわないが、嵌合側壁の外側にはローレットを切る必要がある。
【0022】
本発明のロック機能付きヒンジ口栓を製造するには、主として射出成形で成形する。
また、材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの共重合樹脂、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、などを使用する。
射出成形に用いる金型は、通常の3プレート型でかまわないが、スライドも必要である。キャップを開いた配置で射出成形し、成形後速やかにキャップを閉じて、ヒンジ部分の樹脂の方向性を揃える。
【0023】
本発明は以上のようなもので、内容物が手に触れにくく、汚れない構造になっている。
鍔232が下方にあるので、開きやすい。キャップ2のキャップ天面21を掛止して、開いた状態で固定できる。ヒンジ3位置より注出口14と筒状突起24が下方にあるので、筒状突起が無理なく注出口14に入り易く、開閉の抵抗が少ないなどのメリットがある。キャップの開閉における抵抗が少ないことや、ヒンジから離れた位置でロックすることから、本発明のロック機能付きヒンジ口栓を一千回開閉しても、ヒンジキャップのロックや、キャップを閉めた状態での液漏れなどは発生せず、耐久性にも問題がなかった。
さらに、キャップ2の側壁23のヒンジ側が傾斜面2311で切り取られているので、もし、キャップ2をロックしないで、中途半端な状態であっても、内容物がキャップ2にかかりにくい効果もあり、従来の問題を解決し、より使いやすい口栓を得ることができた。
【符号の説明】
【0024】
1・・・・・・・・・口栓本体
11・・・・・・・・筒状側壁
12・・・・・・・・嵌合側壁
121・・・・・・・ネジ
13・・・・・・・・天面
131・・・・・・・インナーリング
132・・・・・・・コンタクトリング
14・・・・・・・・注出口
141・・・・・・・嵌合凹部
2・・・・・・・・・キャップ
21・・・・・・・・キャップ天面
22・・・・・・・・ロック用嵌合突起
23・・・・・・・・側壁
231・・・・・・・側壁縁
2311・・・・・・傾斜面
232・・・・・・・鍔
233・・・・・・・嵌合突起
24・・・・・・・・筒状突起
3・・・・・・・・・ヒンジ
4・・・・・・・・・ロックリブ
5・・・・・・・・・容器本体
51・・・・・・・・鍔(本体)