(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各チューナは選局チャンネルの周波数帯域内のいずれかの周波数の定数倍の周波数の発振信号を生成する発振回路と、前記発振回路から出力される発振信号を分周する分周器と、を備える請求項1に記載の受信装置。
前記制御部は予め前記複数のチューナの発振信号同士が乗算されて生成される合成信号の周波数と各チューナの選局チャンネルの周波数帯域とが重なるチャンネルの組み合わせを特定するとともに各チューナの発振信号の周波数に対する前記発振信号の基準となる選局チャンネルの中心周波数と、これに対応する制御後の周波数との差分値である制御値を算出する請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下に本発明の受信装置について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために受信装置の一例を示すものであって、本発明をこの受信装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の装置にも等しく適応し得るものである。
【0018】
図1は本発明の受信装置の構成の一例を示す図である。
図2は
図1の局部発振器の第1の例を示す図である。
図3は
図1の局部発振器の第2の例を示す図である。本実施形態で受信装置1は2つのチューナ2‐1、2‐2(いわゆるダブルチューナ)を備える。チューナ2‐1、2‐2は夫々アンテナ30の出力信号(以下、「アンテナ30の出力信号」を「放送信号」と称することもある。)を取得する。そして、チューナ2‐1、2‐2は放送信号に選局チャンネルに対応する周波数の局部発振信号を乗算してベースバンド信号に周波数変換する。
【0019】
以下、詳説するが、チューナ2‐1とチューナ2‐2は同一構成であるため、チューナ2‐1とチューナ2‐2を区別せずにチューナ2として説明を行う。チューナ2の構成要素についても同様である。例えばチューナ2‐1が備える入力端子3‐1とチューナ2‐2が備える入力端子3‐2は区別せず入力端子3として説明を行う。
【0020】
チューナ2は入力端子3、第1のフィルタ4、第1の可変利得器5、ミキサ6、局部発振器7、第2のフィルタ8、第2の可変利得器9、出力端子10を備える。
【0021】
入力端子3にはアンテナ30が受信した放送信号が入力される。第1のフィルタ4は入力端子に入力された放送信号から受信帯域(全受信放送周波数帯)のみが選別され、それ以外の周波数成分が除去される。例えばユーザによりBSが選局されているときは衛星放送以外の周波数帯が除去される。
【0022】
第1のフィルタ4の出力信号は第1の可変利得器5によって利得が調整される。ミキサ6は第1の可変利得器5の出力信号に局部発振器7から出力される局部発振信号(詳細は後述)を乗算してベースバンド信号に周波数変換する。
【0023】
図2及び
図3を参照して局部発振器7について詳説する。なお、
図2及び
図3は局部発振器7‐1の構成を示すものであるが、局部発振器7‐2も同様の構成である。
図2及び
図3に示す局部発振器7は基準信号発生器71、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)72(以下、「電圧制御発振器」を「VCO」又は「発振回路」とも称する。)、分周器(DIV:Divider)73、位相比較器74、ループフィルタ75を備える。また、
図3に示す局部発振器7はさらに分周器76を備える。基準信号発生器71は所定の一定の周波数の基準信号を生成して出力する。
【0024】
VCO72は周波数制御電圧に応じた周波数の発振信号を生成して出力する。分周器73はVCO72から出力された発振信号を所定の分周比で分周する。分周器73における分周比は後述する制御部12により変更可能である。つまり分周器73は可変分周器である。分周比が1であればVCO72から出力された発振信号と分周器73によって分周された発振信号が一致する。
【0025】
位相比較器74は分周器73により分周された発振信号と基準信号発生器71から出力された基準信号の位相を比較し、位相差を示す信号が出力される。ループフィルタ75は位相比較器74から出力された位相差を示す信号に基づいてVCO72を制御する直流の周波数制御電圧を出力する。そしてVCO72はループフィルタ75の周波数制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する。
【0026】
図3で、分周器76は分周器73と同様にVCO72から出力された発振信号を所定の分周比で分周する。つまり
図2ではVCO72から出力された発振信号が局部発振信号として局部発振器7から出力される。
図3ではVCO72から出力された発振信号が分周器76によって分周されて分周した信号が局部発振信号として局部発振器7から出力される。
【0027】
VCO72が生成する発振信号の周波数は通常時において選局チャンネルの中心周波数の定数倍の周波数である。但し本実施形態では後述するように発振信号の周波数を選局チャンネルの周波数帯域内であって中心周波数以外の周波数の定数倍の周波数とすることがある。
【0028】
つまり本実施形態ではVCO72によって選局チャンネルの周波数帯域内のいずれかの周波数(中心周波数又は中心周波数以外の周波数)の定数倍の発振信号を生成される。これにより、VCO72が選局チャンネルに対応する周波数の発振信号を生成する場合に比べてVCO72が生成した発振信号による選局チャンネルの受信品質の劣化を抑制することができる。
【0029】
なお、本実施形態では上記定数倍が2倍又は4倍である場合を例に以下説明を行うが、倍数はこれに限られるものではない。定数倍が2倍又は4倍である場合の局部発振器7は
図3に示す構成であり、以下、
図1に示す局部発振器7の構成が
図3に示す構成であることとして説明する。
【0030】
第2のフィルタ8はミキサ6から出力されるベースバンド信号を平滑化、すなわち高周波数成分を減衰させて出力する。第2のフィルタ8の出力信号は第2の可変利得器9によって利得が調整される。第2の可変利得器9の出力信号は出力端子10から復調器11に出力される。
【0031】
復調器(demodulator)11は出力端子10の出力信号に対して復調処理を行い、復調信号を出力する。
【0032】
制御部(CPU)12は受信装置1全体を制御する制御手段である。特に本実施形態において制御部12はVCO72によって生成される発振信号の周波数を制御する。具体的には、上述したようにVCO72は選局チャンネルの中心周波数の定数倍の周波数の発振信号を生成する場合と、選局チャンネルの中心周波数に後述する制御値を加算し、或いは減算した周波数の定数倍の周波数の発振信号を生成する場合とを制御する。
【0033】
その際、制御部12は、選局チャンネルの中心周波数に制御値を加算し、或いは減算した周波数が選局チャンネルの周波数帯域内の周波数となるように制御値を設定する。これによって局部発振器7から出力される局部発振信号を放送信号に乗算することでベースバンド信号に周波数変換することができる。
【0034】
上述したように受信装置1は放送信号をベースバンド信号に周波数変換するために発振信号を生成する必要がある。そして両チューナ2‐1、2‐2で選局が行われているときは両チューナ2‐1、2‐2のVCO72‐1、72‐2で発振信号が生成されるが、副次的に両発振信号が乗算されて合成信号が生成される。この合成信号が受信品質の劣化を招くことがある。そこで制御部12は合成信号が受信品質の劣化を招くことがないようにVCO72‐1、72‐2を制御する。以下
図4の参照して説明する。
図4は本実施形態の受信装置1の制御部12が実行する処理を示すフローチャートである。
【0035】
ステップS01において制御部12は両チューナ(チューナ2‐1、2‐2)が共に衛星放送を選局しているか否かを判定する。衛星放送は放送衛星や通信衛星を利用して行う放送であり、日本ではBS放送、CS放送がこれに該当する。
【0036】
両チューナが衛星放送を選局していれば(ステップS01のY)ステップS02に進み、両チューナが衛星放送を選局していなければ(ステップS01のN)処理を終了する。
【0037】
ステップS02において制御部12は局部発振器7‐1のVCO72‐1及び局部発振器7‐2のVCO72‐2が選局チャンネルの中心周波数の定数倍の周波数の発振信号を生成したときに、両発振信号の合成信号の周波数が、チューナ2‐1又はチューナ2‐2の選局チャンネルの周波数帯域に重複するか否かを判定する。
【0038】
合成信号の周波数が一方のチューナ2の選局チャンネルの周波数帯域に重複するときは(ステップS02のY)ステップS03に進み、合成信号の周波数がいずれのチューナ2の選局チャンネルの周波数帯域にも重複しないときは(ステップS02のN)は処理を終了する。
【0039】
以下、合成信号の周波数がチューナ2‐1又はチューナ2‐2の選局チャンネルの周波数帯域に重複する場合について具体的に説明する。
図5は日本の衛星放送の選局チャンネルとその中心周波数を示す表である。BS放送の中心周波数間隔は38.36MHzであり、CS放送の中心周波数間隔は40MHzである。また、周波数帯域幅は中心周波数から±17.25MHzの範囲である
【0040】
制御部12は発振信号同士が乗算されることで生成される合成信号の周波数を算出する。上述したようにVCO72‐1、72‐2が選局チャンネルの中心周波数の2倍又は4倍の周波数の発振信号を生成するものとして合成信号の周波数を算出する。
【0041】
チューナ2‐1の選局チャンネルの中心周波数をA、チューナ2‐2の選局チャンネルの中心周波数をBとすると、合成信号の周波数は以下の数式のいずれかである。なお、A<Bであることとする。
2×B−2×A・・・数式(1)
4×A−2×B・・・数式(2)
4×B−2×A・・・数式(3)
4×B−4×A・・・数式(4)
【0042】
そして各数式によって算出される周波数が選局チャンネルの周波数帯域(中心周波数±17.25の範囲)となるときに受信劣化が発生する可能性がある。言い換えれば以下の数式が成立する場合に受信劣化が発生する可能性がある。なお、記載を省略するが、以下の数式(5)〜(22)において左辺及び右辺の単位は〔MHz〕である。
2×B−2×A=A±17.25・・・数式(5)
2×B−2×A=B±17.25・・・数式(6)
4×A−2×B=A±17.25・・・数式(7)
4×A−2×B=B±17.25・・・数式(8)
4×B−2×A=A±17.25・・・数式(9)
4×B−2×A=B±17.25・・・数式(10)
4×B−4×A=A±17.25・・・数式(11)
4×B−4×A=B±17.25・・・数式(12)
なお、上記又下記の数式で「±」は誤差の範囲を示すものであり、例えば上記数式(5)において「2×B−2×A=A±17.25」とは、−17.25≦(2×B−2×A)−A≦17.25であることを示す。
【0043】
数式(5)〜数式(12)を展開すると夫々以下の数式となる。以下の、数式(13)〜数式(20)は夫々順に数式(5)〜数式(12)に対応する。
B=A×3/2±17.25/2・・・数式(13)
B=2×A±17.25/2・・・数式(14)
B=A×3/2±17.25/2・・・数式(15)
B=A×4/3±17.25/3・・・数式(16)
B=A×3/4±17.25/4・・・数式(17)
B=A×2/3±17.25/3・・・数式(18)
B=A×5/4±17.25/4・・・数式(19)
B=A×4/3±17.25/3・・・数式(20)
【0044】
上述したようにA<Bであるから数式(17)、数式(18)は成立しない。また、
図5に示す各中心周波数を代入すると、数式(14)、数式(19)は成り立たない。従って、成立する数式は以下の2つに絞られる。
B=A×3/2±17.25/2・・・数式(21)
B=A×4/3±17.25/3・・・数式(22)
【0045】
図6は数式(21)〜数式(22)を満たすチャンネルの組み合わせを示す表である。
図6に示すようにチューナ2‐1と2‐2の選局チャンネルの組み合わせがa〜eに該当するときに受信品質の劣化が発生する可能性がある。言い換えれば制御部12はチューナ2‐1と2‐2の選局チャンネルの組み合わせがa〜eに該当するときに合成信号の周波数が一方のチューナ2の選局チャンネルの周波数帯域に重複すると判定してステップS03に進む。
【0046】
ステップS03において制御部12は局部発振器7‐1、7‐2を制御してVCO72‐1、72‐2が生成する発振信号の周波数を制御する。具体的にはVCO72‐1、72‐2が生成する発振信号の合成信号の周波数が選局チャンネルの周波数帯域外となるようにVCO72‐1、72‐2が生成する発振信号の周波数を制御(変更)する。
【0047】
変更後の発振信号の周波数は、選局チャンネルの周波数帯域内の周波数であって、中心周波数以外の周波数の2倍又は4倍の周波数である。そして分周器76によって分周された発振信号は局部発振信号として局部発振器7から出力される。局部発振器7から出力された局部発振信号は放送信号に乗算されてベースバンド信号に周波数変換される。
【0048】
従って周波数が制御された場合のベースバンド信号の周波数は選局チャンネルの中心周波数に対して誤差を有する。この誤差は復調器11によって復調可能であるが、誤差が大きくなると復調に時間を要したり、復調が困難となることが考えられる。従ってこの誤差はできる限り小さくすることが望ましい。例えば復調器11として復調可能な誤差が中心周波数から±7MHzの範囲である復調器を使用する場合には、誤差を7MHz以下とし、且つ、できるだけ誤差を小さくすることが望ましい。
【0049】
合成信号の周波数は上述した数式(1)等が示すように周波数Bと周波数Aの差に比例して大きくなり、または小さくなる。つまり、合成信号の周波数の変動値を小さくすれば、ベースバンド信号の周波数と中心信号の周波数の誤差を小さくすることができる。以下、具体的な制御方法について
図6に示す組み合わせa〜eの夫々について説明する。
【0050】
<組み合わせaの場合の制御方法>
組み合わせaは合成信号の周波数がBS5の周波数帯域に重複する。従って制御部12は合成信号の周波数がBS5の周波数帯域外となるようにVCO72‐1、72‐2の局部発振周波数を制御する。
【0051】
合成信号の周波数は1133.6MHzであり、BS5の中心周波数(1126.2MHz)よりも周波数が高い。つまり、合成信号の周波数の変動値が最も小さいのは、合成信号の周波数をBS5の周波数帯域の上限値である1143.45MHzよりも大きい周波数の中で最小の周波数としたときである。
【0052】
BS5の周波数帯域の上限値と合成信号の周波数の差は9.85MHzである。組み合わせaの合成信号の周波数は上述した数式(1)によって算出される。数式(1)において周波数A及びBは共に2倍されている。従って、制御後の周波数AをA’、制御後の周波数BをB’とすると、合成信号の周波数を1143.45MHzよりも大きくするには、(B’−A’)−(B−A)>9.85/2となればよい。
【0053】
また、数式(1)において周波数Aは負倍され、周波数Bは正倍されていることから周波数Aの制御値A1(A’−A)をマイナス値とし、周波数Bの制御値B1(B’−B)をプラス値とすれば、ベースバンド信号の周波数とBS5及びND6の中心周波数との誤差が最も小さくなる。
【0054】
以上から、以下の数式(23)〜数式(24)を満たすと共に、制御値の絶対値をできるだけ小さな値(例えば制御値A1=−2.5MHz、制御値B1=2.5MHz)とすることで、ベースバンド信号の周波数と選局チャンネルの中心周波数の誤差を最小限にしつつ、受信品質の劣化を抑制することができる。
制御値A1<−9.85/4・・・数式(23)
制御値B1>9.85/4・・・数式(24)
【0055】
<組み合わせbの場合の制御方法>
組み合わせbは合成信号の周波数がBS9の周波数帯域に重複する。従って制御部12は合成信号の周波数がBS9の周波数帯域外となるようにVCO72‐1、72‐2の局部発振周波数を制御する。
【0056】
合成信号の周波数は1220.16MHzであり、BS9の中心周波数(1202.92MHz)よりも周波数が高い。つまり、合成信号の周波数の変動値が最も小さいのは、合成信号の周波数をBS9の周波数帯域の上限値である1220.17MHzよりも大きい周波数の中で最小の周波数としたときである。。
【0057】
BS9の周波数帯域の上限値と合成信号の周波数の差は0.01MHzである。組み合わせbの合成信号の周波数は上述した数式(1)によって算出される。数式(1)において周波数A及びBは共に2倍されている。従って、制御後の周波数AをA’、制御後の周波数BをB’とすると、合成信号の周波数を1220.17MHzよりも大きくするには、(B’−A’)−(B−A)>0.01/2となればよい。
【0058】
また、数式(1)において周波数Aは負倍され、周波数Bは正倍されていることから周波数Aの制御値A1(A’−A)をマイナス値とし、周波数Bの制御値B1(B’−B)をプラス値とすれば、ベースバンド信号の周波数とBS9及びND12の中心周波数との誤差が最も小さくなる。
【0059】
以上から、以下の数式(25)〜数式(26)を満たすと共に、制御値の絶対値をできるだけ小さな値(例えば制御値A1=−0.1MHz、制御値B=0.1MHz)とすることで、ベースバンド信号の周波数と選局チャンネルの中心周波数の誤差を最小限にしつつ、受信品質の劣化を抑制することができる。
制御値A1<−0.01/4・・・数式(25)
制御値B1>0.01/4・・・数式(26)
【0060】
<組み合わせcの場合の制御方法>
組み合わせcは合成信号の周波数がBS15の周波数帯域に重複する。従って制御部12は合成信号の周波数がBS15の周波数帯域外となるようにVCO72‐1、72‐2の局部発振周波数を制御する。
【0061】
合成信号の周波数は1310MHzであり、BS15の中心周波数(1318MHz)よりも周波数が低い。つまり、合成信号の周波数の変動値が最も小さいのは、合成信号の周波数をBS15の周波数帯域の下限値である1300.75MHzよりも小さい周波数の中で最大の周波数としたときである。。
【0062】
BS15の周波数帯域の下限値と合成信号の周波数の差は9.25MHzである。組み合わせcの合成信号の周波数は上述した数式(1)によって算出される。数式(1)において周波数A及びBは共に2倍されている。従って、制御後の周波数AをA’、制御後の周波数BをB’とすると、合成信号の周波数を1300.75MHzよりも小さくするには、(B’−A’)−(B−A)>−9.25/2となればよい。
【0063】
また、数式(1)において周波数Aは負倍され、周波数Bは正倍されていることから周波数Aの制御値A1(A’−A)をプラス値とし、周波数Bの制御値B1(B’−B)をマイナス値とすれば、ベースバンド信号の周波数とBS15及びND20の中心周波数との誤差が最も小さくなる。
【0064】
以上から、以下の数式(27)〜数式(28)を満たすと共に、制御値の絶対値をできるだけ小さな値(例えば制御値A1=2.4MHz、制御値B=−2.4MHz)とすることで、ベースバンド信号の周波数と選局チャンネルの中心周波数の誤差を最小限にしつつ、受信品質の劣化を抑制することができる。
制御値A1>9.25/4・・・数式(27)
制御値B1<−9.25/4・・・数式(28)
【0065】
<組み合わせdの場合の制御方法>
組み合わせdは合成信号の周波数がBS19の周波数帯域に重複する。従って制御部12は合成信号の周波数がBS19の周波数帯域外となるようにVCO72‐1、72‐2の局部発振周波数を制御する。
【0066】
合成信号の周波数は1408.48MHzであり、BS19の中心周波数(1394.72MHz)よりも周波数が高い。つまり、合成信号の周波数の変動値が最も小さいのは、合成信号の周波数をBS19の周波数帯域の上限値である1411.97MHzよりも大きい周波数の中で最小の周波数としたときである。。
【0067】
BS15の周波数帯域の下限値と合成信号の周波数の差は3.49MHzである。組み合わせdの合成信号の周波数は上述した数式(4)によって算出される。数式(4)において周波数Aは正倍され、周波数Bは負倍されていることから周波数Aの制御値A1(A’−A)をプラス値とし、周波数Bの制御値B1(B’−B)をマイナス値とすればよい。
【0068】
加えて数式(1)において周波数Aは4倍、周波数Bは2倍されている。従って倍数に応じて、1/2×制御値A1の絶対値=制御値B1の絶対値とすればベースバンド信号の周波数とBS1及びBS19の中心周波数との誤差が最も小さくなる。
【0069】
以上から、以下の数式(29)〜数式(30)を満たすと共に、制御値の絶対値をできるだけ小さな値(例えば制御値A1=0.6MHz、制御値B=−0.6MHz)とすることで、ベースバンド信号の周波数と選局チャンネルの中心周波数の誤差を最小限にしつつ、受信品質の劣化を抑制することができる。
制御値A1>3.49/6・・・数式(29)
制御値B1<−3.49/6・・・数式(30)
【0070】
<組み合わせeの場合の制御方法>
組み合わせeは合成信号の周波数がND4の周波数帯域に重複する。従って制御部12は合成信号の周波数がND4の周波数帯域外となるようにVCO72‐1、72‐2の局部発振周波数を制御する。
【0071】
合成信号の周波数は1659.12MHzであり、ND4の中心周波数(1653MHz)よりも周波数が高い。つまり、合成信号の周波数の変動値が最も小さいのは、合成信号の周波数をND4の周波数帯域の上限値である1670.25MHzよりも大きい周波数の中で最小の周波数としたときである。。
【0072】
ND4の周波数帯域の上限値と合成信号の周波数の差は11.13MHzである。組み合わせeの合成信号の周波数は上述した数式(4)によって算出される。数式(4)において周波数Aは正倍され、周波数Bは負倍されていることから周波数Aの制御値A1(A’−A)をプラス値とし、周波数Bの制御値B1(B’−B)をマイナス値とすればよい。
【0073】
加えて数式(1)において周波数Aは4倍、周波数Bは2倍されている。従って倍数に応じて、1/2×制御値A1の絶対値=制御値B1の絶対値とすればベースバンド信号の周波数とBS11及びND4の中心周波数との誤差が最も小さくなる。
【0074】
以上から、以下の数式(31)〜数式(32)を満たすと共に、制御値の絶対値をできるだけ小さな値(例えば制御値A1=1.9MHz、制御値B=−1.9MHz)とすることで、ベースバンド信号の周波数と選局チャンネルの中心周波数の誤差を最小限にしつつ、受信品質の劣化を抑制することができる。
制御値A1>11.13/6・・・数式(31)
制御値B1<−11.13/6・・・数式(32)
【0075】
本実施形態によれば、アンテナの出力信号に発振信号或いは発振信号を分周した信号を乗算して周波数変換を行う複数のチューナと、複数のチューナの発振信号同士が乗算されて生成される合成信号の周波数が各チューナの選局チャンネルの周波数帯域と重ならないように各チューナの発振信号の周波数を制御する制御部と、を備える。つまり、複数のチューナの発振信号同士が乗算されて生成される合成信号の周波数が各チューナの取得する放送信号の周波数帯域と重ならないように各チューナの発振信号の周波数が制御される。従って、発振周波数同士の乗算による受信品質の劣化が生じない。
【0076】
また、受信装置は複数のチューナによって周波数変換された放送信号を復調する復調器を備えるが、制御部は各チューナの局部発振信号の周波数を制御する際に復調器が復調可能な周波数の範囲に基づいて周波数を制御する。従って、制御部がチューナの局部発振信号の周波数を制御することによって復調不能となることがない。
【0077】
また、各チューナは選局チャンネルの周波数帯域内のいずれかの周波数の定数倍の周波数の発振信号を生成する発振回路と、発振回路から出力される発振信号を分周する分周器と、を備える。制御部は発振信号を制御する場合には、電圧制御発振器に対して選局チャンネルの周波数帯域のいずれかの周波数に制御値を加えた周波数の定数倍の周波数の発振信号を生成させる。従って、制御値を比較的小さな値としても定数倍されることによって発振信号の周波数は比較的大きく変動する。
【0078】
発振信号は分周器により分周されて局部発振信号として放送信号に乗算されるが、上述したように制御値を比較的小さな値とすることができることにより、ベースバンド信号と選局チャンネルの中心周波数との誤差が小さくなる。よって復調器が復調可能な周波数の範囲内で発振信号の制御を十分に行うことができる。
【0079】
また、制御部は予め複数のチューナの発振信号同士が乗算されて生成される合成信号の周波数と各チューナの選局チャンネルの周波数帯域とが重なるチャンネルの組み合わせを特定するとともに各チューナの発振信号の周波数に対する制御値を算出している。つまり予めチャンネルの組み合わせと制御値とを関連付けた表を所持しておくことにより、その表を参照するだけで早期に発振信号の周波数を制御することができる。
【0080】
また、制御部は各チューナの発振信号の周波数を制御する場合に、各チューナの発振信号の周波数に対する制御値の絶対値を等しくする。これにより復調器がベースバンド信号を復調する際に、いずれのチューナから出力されるベースバンド信号も同様の復調時間、復調精度で復調することができる。
【0081】
<補足>
上記各制御では周波数Aの制御値A1の絶対値と周波数Bの制御値B1の絶対値が等しくなるように制御している。このような制御とすることにより一方の制御値の絶対値が他方の制御値の絶対値に比べて大きくなることを防ぎ、いずれのチューナ2から出力されるベースバンド信号も同様に復調可能としている。
【0082】
但し、これに限られるものではなく、一方の制御値の絶対値を他方の制御値の絶対値に比べて小さく又は大きくしてもよい。例えば、チューナ2‐1の選局チャンネルが録画されておらず、チューナ2‐2の選局チャンネルが録画されているときは、ザッピングされる可能性が高いチューナ2‐1のベースバンド信号と選局チャンネルの中心周波数の誤差を、チューナ2‐2のベースバンド信号と選局チャンネルの中心周波数の誤差よりも小さくすることとしてもよい。
【0083】
上記実施形態で制御部12はステップS02で合成信号の周波数が一方のチューナ2の選局チャンネルの周波数帯域に重複するか否かを判定し、ステップS03で制御値を算出することとしているが、予め、合成信号の周波数が一方のチューナ2の選局チャンネルの周波数帯域に重複するチャンネルの組み合わせを特定するとともに両チューナ2の発振信号の周波数に対する制御値を算出しておくこととしてもよい。
【0084】
すなわち、制御部12は
図7に示すようなチャンネルの組み合わせと制御値とを関連付けた表を所持し、選局チャンネルの組み合わせが
図7の示すいずれかのチャンネルの組み合わせに該当する場合にその組み合わせに基づいて制御値を特定して両チューナ2の発振信号の周波数を制御することとしてもよい。当該構成によりチャンネルが選局される度に、合成信号の周波数や制御値を算出する必要がないので早期に制御を行うことができる。
【0085】
また上記実施形態では受信装置1がダブルチューナを備える場合を例として説明したがこれに限られるものではなく3以上のチューナを備えることとしてもよい。例えば3つのチューナを備える場合には、第1のチューナの発振信号及び第2のチューナの発振信号の合成信号と、第3のチューナの発振信号と、の合成信号の周波数がいずれかのチューナの選局チャンネルの周波数帯域に重複する場合に、発振信号の周波数を制御することとすればよい。
【0086】
また上記各実施形態において各数式はチューナの発振周波数やチューナに入力されるアンテナの出力信号の周波数が常に安定した希望どおりの周波数であるという前提において成り立っている。しかし実際には、チューナの発振周波数やアンテナの出力信号周波数は、それぞれがもつ公差や温度ドリフトの影響により、ある程度の周波数変動幅をもつことを考慮しなければならない。
【0087】
例えば、チューナの発振周波数を生成している局部発振器が公差と温度ドリフトとを含めて±50ppmの変動幅をもつこととする。また、アンテナの出力信号の周波数は、日本国内の衛星放送の場合、±1.5MHzの変動幅をもつことが規格により要求されている。ここでこのチューナがND24ch(2053MHz)を選局するとき、チューナの発振周波数は2053MHzに対して±0.10265MHz(2053MHzの50ppmは0.10265MHzであるから)の変動幅をもつ。一方、アンテナ出力信号の周波数も最大±1.5MHzの変動幅をもつため、この場合、両者を足した±1.60265MHzの変動幅を考慮し局部発振周波数をずらさなければ、期待した効果は得られないことがあるといえる。
【0088】
従って、上述の数式(5)〜(12)においては±17.25MHzという周波数帯域を考慮していたが、これを±18.85265MHzとして計算すればよいことになる。なお計算結果は前例同様容易に導けるため省略する。なお、ND24chはチューナが選局し得る最大の周波数であるため、チューナの発振周波数変動はND24ch選局時に最大となる。従ってND24ch選局時の最大変動幅を用いた上記計算の結果は、ND24ch以外のあらゆるch選局時においても十分な効果を得る。