(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
コンピュータには、複数のCPU(Central Processing Unit)や、メモリなどの電子
部品が1つの基板上に実装されたマルチチップモジュールを有するものがある。このタイプのコンピュータでは、マルチチップモジュールの上に冷却装置を取り付けて、マルチチップモジュール内のチップを冷却している。
【0003】
チップを効率良く冷却するためには、全てのチップを冷却装置に確実に密着させる必要がある。ここで、複数のチップを実装するときには、基板からの各チップの上面までの高さにばらつきが生じ易いので、1つのチップが冷却装置に密着していても他のチップと冷却装置の間に隙間が生じることがあった。このために、従来の冷却装置では、下向きに開口する孔が複数形成されたリッドにピストンを上下方向に摺動可能に収容したモジュールリッドを設け、モジュールリッドの上に水冷コールドプレートを配置している。リッドには、孔内のピストンを下方に付勢するコイルバネが収容されている。この冷却装置では、チップの基板からの高さのばらつきをコイルバネで吸収させることによって、各ピストンをチップに確実に押し当てることが可能になる。
【0004】
ところが、このような冷却装置では、モジュールリッドの構成が複雑になるので小型軽量化には適しない。そこで、従来の冷却装置は、リッドにピストンを挿入する貫通孔を複数設け、貫通孔のそれぞれにピストンを1つずつ予めハンダで固定した構成を有している。
【0005】
複数のピストンを対応するそれぞれのチップに密着させるときには、マルチチップモジュール上にモジュールリッドを位置決めして載置した後、モジュールリッドを加熱してハンダを溶かす。これによって、ピストンが移動可能になるので、各ピストンを1つずつ押圧して下方のチップに密着させる。この状態でモジュールリッドの温度を下げてハンダを凝固させ、各ピストンをチップと密着する高さに固定する。この結果、チップの実装高さのばらつきに応じて各ピストンの上面の位置がピストンごとに変化する。ピストンによっては、その上面がリッドより低い位置に配置されることもあるし、上面がリッドから突出することもある。ピストンがリッドの上面から突出した場合には、ピストンとリッドの間に段差が生じる。この状態でモジュールリッド上に水冷コールドプレートを載置すると水冷コールドプレートに密着するピストンと、密着しないピストンが生じることになるので、マルチチップモジュールの冷却効率が低下する。
【0006】
そこで、全てのピストンの位置を調整してハンダを凝固させたら、モジュールリッドをマルチチップモジュールから一旦取り外し、モジュールリッドの上面を機械加工してピストンとリッドの段差を削って平面に仕上げる。この後、再びモジュールリッドをマルチチップモジュール上に位置決めして搭載させ、モジュールリッド上に水冷コールドプレートを密着させる。このような冷却装置では、モジュールリッドの上面が平坦になるので、モジュールリッドと水冷コールドプレートの密着性が高くなり、冷却効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0014】
(第1の実施の形態)
最初に、
図1に冷却部品を含む電子装置の概略構成を示す。電子装置1は、基板2上に複数のチップ3やその他の電子部品4が実装されたマルチチップモジュール5を有する。さらに、マルチチップモジュール5の上には、複数のチップ3を冷却する冷却装置6が搭載されている。冷却装置6は、各チップ3の上面に1枚ずつ密着させられるシート状の第1の放熱材料(TIM: Thermal Interface Material)7を有する。第1の放熱材料7の上
には、モジュールリッド8が搭載されている。モジュールリッド8の上には、シート状の第2の放熱材料9を介して水冷コールドプレート10(熱交換ユニット)が配置されている。水冷コールドプレート10は、不図示の流路が内部に形成されており、流路に冷媒を通流させることによってチップ3で発生した熱を冷却することが可能になっている。ここで、冷却装置6は、冷却コールドプレート10の代わりに複数の放熱フィンを設けた熱交換ユニットを用いても良い。
【0015】
図2に一部を拡大した断面図を示すように、電子装置1のマルチチップモジュール5は、基板2に形成された電極11に第1のハンダ12を介してチップ3が実装されている。チップ3は、例えば、BGA(Ball Grid Array)により基板2に電気的に接続されてい
る。
【0016】
モジュールリッド8は、板体に複数の貫通孔21が形成されたリッド20を有する。複数の貫通孔21は、マルチチップモジュール5のチップ3の数及び配置に合わせて形成さ
れており、その各々に冷却ピストン22が1つずつ収容されている。モジュールリッド8のリッド20及び冷却ピストン22は、熱伝導性が良好な材料、例えば銅やアルミを用いて製造されている。
図3にモジュールリッド8の平面図を示すように、貫通孔21は、平面視における形状が正方形になっており、冷却ピストン22が1つずつ貫通孔21に沿って上下に移動可能に挿入されている。また、冷却ピストン22の平面視における形状も正方形になっているが、冷却ピストン22の一辺の長さは、貫通孔21の一辺の長さより小さくなっており、貫通孔21と冷却ピストン22との間には、隙間23が形成されている。
【0017】
ここで、冷却ピストン22の構成について、
図2と、
図4のモジュールリッド8の一部を拡大した断面図を参照して説明する。
図2は、冷却ピストン22の高さを調整した後の状態を示し、
図4は冷却ピストン22の高さを調整する前の初期状態における冷却ピストン22の配置を示している。冷却ピストン22は、下側の第1のピストン31と、上側の第2のピストン32が連結部材である第2のハンダ33を介して上下に連結された構成を有する。第1及び第2のピストン31,32は同じ大きさの直方体に製造されている。また、
図4に示す初期状態では、第2のハンダ33は、第1及び第2のピストン31,32の外形と略等しい外形になっており、冷却ピストン22の側方には突出していない。一方、
図2に示すように、高さ調整後の冷却ピストン22では、第2のハンダ33の一部が貫通孔21と冷却ピストン22の間の隙間23にはみ出した状態で凝固している。
【0018】
第2のハンダ33は、マルチチップモジュール5の基板2とチップ3の接合に使用される第1のハンダ12より融点が低い材料が用いられている。例えば、第1のハンダ12には、Sn−Ag−Cu系の融点が220℃程度のハンダ材料が用いられている。この場合、第2のハンダ33は、例えば、Sn−58Bi(融点138℃)などのSn−Bi系や、Sn−9Zn(融点199℃)などのSn−Zn系が使用される。ここで、連結部材は、熱伝導性が良好で、加熱によって溶融して冷却ピストン22の高さを調整させる機能と、冷却ピストン22をリッド8に固定する機能とを有すれば良く、ハンダに限定されない。
【0019】
次に、
図5を参照して電子装置1の製造装置であるホットプレス機40の一例について説明する。ホットプレス機40は、基板2を位置決めして載置する固定定盤41を有する。固定定盤41内には、ヒータ42が埋設されると共に、温度管理用のセンサ43が取り付けられており、基板2を所望の温度まで加熱できるようになっている。さらに、固定定盤41には、一対のガイドポスト44が平行に立てられている。各ガイドポスト44には、下側から順番に一対の第1のスライダ45と、一対の第2のスライダ46とが独立に昇降可能に取り付けられており、上端には加圧機構47が固定されている。第1のスライダ45には、不図示の昇降機能が内蔵されており、モジュールリッド8を把持するハンド51が1つずつ取り付けられている。第2のスライダ46には、可動定盤52が固定されている。可動定盤52は、内部にヒータ53が埋設されており、下面には押圧部材54が取り付けられている。押圧部材54には、温度管理用のセンサ55が固定されている。加圧機構47は、ボールネジ機構を有し、ボールネジ56が鉛直下向きに延び、可動定盤52に固定されている。
【0020】
さらに、ホットプレス機40は、位置制御部61と、温度調整部62と、押圧制御部63を有する。位置制御部61は、第1のスライダ45に接続されており、第1のスライダ45の上下位置を制御可能になっている。また、温度調整部62には、上下の定盤41、52内のそれぞれのヒータ42、53と、センサ43、55が接続されており、各ヒータ42、53の温度を独立に調整可能になっている。さらに、押圧制御部63は、加圧機構47に接続されており、押圧部材54の位置制御と、押圧力を調整する。
【0021】
次に、冷却装置6の製造方法を含む電子装置1の製造方法について説明する。
最初に、
図5に示すホットプレス機40の固定定盤41の上に基板2を載置する。さらに、基板2上の所定位置に複数のチップ3を搭載する。具体的には、
図2に示す基板2上の電極11にチップ3に取り付けた第1のバンプ12を載置する。
【0022】
続いて、ホットプレス機40の温度調整部62が下側のヒータ42を発熱させ、基板2を第1の温度まで加熱し、基板2上の第1のハンダ12を溶かす。これによって、基板2と複数のチップ3が電気的に接続される。この後、ヒータ42による加熱を停止して第1のハンダ12を冷却して凝固させる。
【0023】
さらに、
図6Aに示すように、各チップ3の上に第1の放熱材料7を載せた後、基板2の上方にリッド20を配置する。このとき、
図5に示すように、リッド20は、第1のスライダ45の一対のハンド51に支持させる。位置制御部61によって、リッド20は、貫通孔21が第1の放熱材料7の上方に1つずつ配置されるように位置決めされる。リッド20と基板2の間の距離も予め設定された所定値に制御される。
【0024】
続いて、
図6Bに示すように、リッド20の複数の貫通孔21に冷却ピストン22を1つずつ挿入する。冷却ピストン22は、2つのピストン31,32が第2のハンダ33で接合された状態でリッド20の貫通孔21内に挿入される。貫通孔21と冷却ピストン22の間には隙間23があるので、冷却ピストン22は、貫通孔21内を落下し、その下面が第1の放熱材料7に密着させられる。これによって、冷却ピストン22の第1のピストン31が発熱体であるチップ3に第1の放熱材料7を介して熱的に密着させられる。この段階では、第2のハンダ33は、凝固しているので、貫通孔21と冷却ピストン22の隙間23に流出しない。
【0025】
この後、
図6Cに示すように、位置制御部61が第1のスライダ45を下降させ、リッド20を基板2に向けて降下させる。この段階で冷却ピストン22はリッド20に固定されていないので、冷却ピストン22の位置は変化せずに、リッド20の高さのみが下がる。このとき、位置制御部61は、全ての冷却ピストン22の上部がリッド20の上面20Aから突出するまでリッド20を降下させる。
【0026】
続いて、
図6Dに示すように、押圧部材54をリッド20の上面20Aから突出する冷却ピストン22の上面32Aに当接させる。具体的には、
図5に示す押圧制御部63がボールネジ56を回転させて第2のスライダ46ごと可動定盤52を降下させ、押圧部材54をリッド20の上面20Aから突出する冷却ピストン22の上面32Aに当接させる。さらに、この状態で、温度調整部62でヒータ53を発熱させ、冷却ピストン22を加熱する。温度調整部62は、冷却ピストン22の第2のハンダ33を第2の温度まで上昇させ、第2のハンダ33を溶融させる。
【0027】
第2のハンダ33が溶けることによって、第1のピストン31に対して第2のピストン32が移動可能になる。ここで、第2の温度は、第1の温度より低いので、チップ3と基板2を接合している第1のハンダ12が溶けることはない。
【0028】
この状態で押圧部材54を介して所定の圧力で冷却ピストン22をさらに押す。
図6Eに示すように、リッド20の上面20Aから突出している第2のピストン32が押圧部材54によって押し下げられ、2つのピストン31,32の間で溶融状態になっている第2のハンダ33が冷却ピストン22と貫通孔21の隙間23に流出する。その結果、第2のハンダ22の高さが低くなり、押圧部材54によって下向きに押されている第2のピストン32の位置が下降する。第1のピストン31は、第1の放熱材料7を介してチップ3に当接しており移動しないので、2つのピストン31,32の間の距離が初期状態に比べて
小さくなり、冷却ピストン22の高さが低くなる。
【0029】
そして、押圧部材54がリッド20の上面20Aに接するまで可動定盤52を降下させると、リッド20の上面20Aから突出していた全ての冷却ピストン22が、リッド20の上面20Aと一致する高さまで押し下げられる。この状態でヒータ53による加熱を停止すると、第2のハンダ33が凝固し、冷却ピストン22の高さ方向の位置が調整された状態で固定される。さらに、各冷却ピストン22から流出した第2のハンダ33によって全ての冷却ピストン22とリッド20が固定される。
【0030】
第2のハンダ33が凝固したら、可動定盤52を上昇させる。
図6Fに示すように、冷却ピストン22がチップ3に密着させられた状態でリッド20に固定され、かつ冷却ピストン22の上面32Aがリッド20の上面20Aと略一致するモジュールリッド8が完成する。この後、マルチチップモジュール5とモジュールリッド8をホットプレス機40から取り出す。続いて、
図2に示すように、モジュールリッド8の上面に第2の放熱材料9を載せてから水冷コールドプレート10を取り付ける。これによって、これによって、水冷コールドプレート10に冷却ピストン22の第2のピストン32が第2の放熱材料9を介して熱的に密着させられ、冷却装置6が完成する。そして、冷却ピストン22を介して、チップ3と水冷コールドプレート10が熱交換可能に密着させられた電子装置1が完成する。
【0031】
この電子装置1では、チップ3で発生した熱が第1の放熱材料7を介して冷却ピストン22に伝達される。冷却ピストン22内では下側の第1のピストン31から第2のハンダ33を介して第2のピストン32に熱が伝達される。さらに、第2のピストン32から第2の放熱材料9を介して水冷コールドプレート10に熱が伝達される。この熱が水冷コールドプレート10内を流れる冷媒と熱交換することによって冷却される。
【0032】
ここで、
図4に示す初期状態では、第2のハンダ33の厚さH3は、
図2に示す取り付け作業後の第2のハンダ33の厚さより小さい。これは、マルチチップモジュール5への取り付け時に、第2のハンダ33の一部が貫通孔21と冷却ピストン22の間の隙間23にはみ出した状態で凝固しているためである。
【0033】
モジュールリッド7は、チップ3を実装したときの基板2からチップ3の上面までの高さのばらつきの最大値をXとしたときに、ばらつきの最大値Xを吸収できるように構成されている。このために、第2のハンダ33の厚さH3は、ばらつきの最大値Xの2倍にするなど、ばらつきの最大値Xより大きくなっている
【0034】
さらに、リッド20の貫通孔21と、冷却ピストン22の間には、溶融した第2のハンダ33を受け入れるための隙間23が形成されている。しかしながら、隙間23が大きすぎると、冷却ピストン22の位置がずれ易くなるので、チップ3と冷却ピストン22の熱的な接触面積が減少してチップ3の冷却効率が低下し易くなる。また、溶融した第2のハンダ33が隙間23から基板2側に滴下してしまうと、配線ショートの原因になることがある。さらに、溶融した第2のハンダ33がリッド20の上面20Aに溢れ出ると、モジュールリッド8の上面の平面度が低下してしまい、リッド20と水冷コールドプレート10との密着性が悪くなって冷却性能が低下してしまう。
【0035】
そこで、以下に、第2のピストン32がリッド20の上面20Aと一致する高さまで押し下げられたときに第2のハンダ33がリッド20の上下面20A,20Bのいずれからも漏れ出ないような貫通孔21の一辺の長さを検討する。まず、
図4に示すように、第1及び第2のピストン31,32の幅及び奥行き(一辺の長さ)を共にPD、高さをそれぞれH1、H2とし、第2のハンダ33の厚さをH3とする。第1のピストン31の高さH
1と第2のピストン32の高さH2は同じでも良いし、異なっても良い。また、リッド20の貫通孔21の幅及び奥行き(一辺の長さ)をHD、リッド20の高さをRTとする。
【0036】
第2のハンダ33がリッド20の上下面20A,20Bのいずれからも漏れ出ないということは、第2のハンダ33の体積(PD
2×H3)が、リッド20の貫通孔21の体積(HD
2×RT)から2つのピストン31,32の体積の和(PD
2×(H1+H2))を引いた値以下であれば良いことになる。即ち、
(HD
2×RT)−(PD
2×(H1+H2))≧(PD
2×H3)
が成り立てば良い。このときの貫通孔21の一辺の長さHDは、
HD≧(PD
2×(H1+H2+H3)/RT)
0.5
となる。即ち、HDが(PD
2×(H1+H2+H3)/RT)
0.5以上の長さを有していれば、第2のハンダ33がリッド20の上下面20A,20Bのいずれからも漏れ出ることなく、冷却ピストン22の位置を調整できる。
【0037】
以上、説明したように、この実施の形態では、冷却装置6のモジュールリッド8として、貫通孔21内で移動可能な冷却ピストン22を用い、連結部材である第2のハンダ33の溶融を利用することによって冷却ピストン22の高さを調整可能にした。これによって、モジュールリッド8を上方から押圧することによって、冷却ピストン22の高さとリッド20の高さを容易に一致させることが可能になる。さらに、リッド20や冷却ピストン22の上面32Aを機械加工することによって平坦にする工程が不要になるので、作業効率が向上する。また、チップ3から冷却ピストン22を介して水冷コールドプレート10に至る熱伝達経路を確保できるので、熱ロスを低減でき、チップ3を効率良く冷却できる。
【0038】
また、この実施の形態では、第2のハンダ33を溶融させれば、冷却ピストン22をリッド20から取り外せるので、チップ3を交換して基板2からの高さが変化した場合でも同じモジュールリッド8を利用して冷却装置6を再構築することができる。
【0039】
さらに、この実施の形態では、冷却ピストン22を独立した2つのピストン31,32を第2のハンダ33で連結させた構成にしたので、第2のハンダ33を溶融させた場合でも、溶けた第2のハンダ33がリッド20の下面20Bや上面20Aに飛び出し難い。さらに、貫通孔21と冷却ピストン22の隙間23をHD≧(PD
2×(H1+H2+H3)/RT)
0.5と満たす値にすることによって、第2のハンダ33がリッド20の下面20Bや上面20Aに溢れ出すことを確実に防止できる。ここで、隙間23の上限値は、隙間23が大きくなることによって冷却ピストン22の位置がずれた場合でも、冷却ピストン22とチップ3の熱的な接触面積がチップ3の冷却に十分な大きさになる程度であれば良い。
【0040】
また、冷却ピストン22の高さ調整時には、リッド20から冷却ピストン22の頭部を突出させた状態で加熱と押圧を行えば良いので、製造工程が容易である。また、第2のハンダ33の一部が隙間23に充填されるので、第2のハンダ33を再凝固させるだけで、2つのピストン31,33とリッド20のそれぞれの固定が可能になる。
ここで、ピストンは直法体でなくても良い。貫通孔の平面視における形状は正方形に限定されない。
【0041】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
チップ3を基板2に実装したときの高さのばらつきの最大値Xが正確に判明しない場合などには、第2のハンダ33の厚さH3を大きく設定する必要がある。しかしながら、リ
ッド20の厚さRTが同じ場合には、貫通孔21と冷却ピストン22の隙間23が大きくなるので、冷却ピストン22の位置ずれが生じ易くなる。また、ばらつきの最大値Xが既知の場合でも、冷却ピストン22の位置ずれをさらに低減させる観点からは、貫通孔21と冷却ピストン22の隙間23をより小さくすることが好ましい。この実施の形態は、このような観点に基づいてなされたものである。
【0042】
図7Aに示すように、リッド20は、貫通孔21の上端部に第2のハンダ33を溜め置きできる凹部71が形成されている。同様に、貫通孔21の下端部には、第2のハンダ33を溜め置きできる凹部72が形成されている。
図7Bに平面図を示すように、凹部71,72の長さは、1片の長さHDに等しい。ここで、リッド20の貫通孔21や、冷却ピストン22の形状やサイズは、第1の実施の形態と同様である。例えば、貫通孔21の1辺の長さHDは、HD≧(PD
2×(H1+H2+H3)/RT)
0.5になっている。また、凹部71,72による体積の増加分を越えない範囲で、貫通孔21の1辺の長さHDを短くしても良い。
【0043】
このモジュールリッド8において、第2のハンダ33を溶融させなら第2のピストン32を押圧して下降させると、
図8に示すように、溶融した第2のハンダ33が隙間23に溢れ出す。そして、第2のハンダ33の一部は、凹部71,72に入り込む。凹部71,72は、隙間23の寸法を大きくするように拡幅されているので、第2のハンダ33はリッド20の下面20Bや上面20Aに到達しない。これによって、チップ3の実装高さのばらつきの最大値Xが不明の場合であっても、冷却ピストン22のモジュールリッド8の上面の機械加工が確実に不要になる。同様に、第2のハンダ33が基板2上に落ちて配線ショートを生じなくなる。また、凹部71,72を有することによって、他の領域における貫通孔21と冷却ピストン22の間の隙間23を狭くすることが可能になるので、冷却ピストン22の位置ずれを防止し、チップ3の熱を水冷コールドプレート10に確実に伝達できるようになる。
【0044】
ここで、凹部71,72は、第2のハンダ33を溜め置き可能に貫通孔21を拡げる形状であれば良く、長さや高さは限定されない。例えば、
図9に示すように、貫通孔21の片の一部のみを広げるように凹部71,72を形成しても良い。
【0045】
また、
図10に変形例を示すように、上側のみの凹部71を形成しても良い。同様に、
図11に示すように、下側のみの凹部72を形成しても良い。さらに、凹部71,72は、貫通孔21の4つの辺のうちの1つのみに形成しても良いし、2つの辺又は3つの辺に1つずつ形成しても良い。
そして、
図12に示すようにリッドの高さ方向の中間部分に凹部を形成したりしても良い。
【0046】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0047】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1) 発熱体の上方に配置され、貫通孔が形成されたリッドと、前記貫通孔に挿入され、前記発熱体に熱的に接触させられる冷却ピストンと、前記冷却ピストンに熱的に接触させられ、前記発熱体で発生した熱であって、前記冷却ピストンを介して伝達される熱と熱交換可
能な熱交換ユニットと、を含み、前記冷却ピストンは、前記発熱体の上方に配置される第1のピストンと、前記第1のピストンの上方に配置され、その上面が前記リッドの上面と同じ高さに配置される第2のピストンと、前記第1のピストンと前記第2のピストンの間に配置され、前記第1のピストンと前記第2のピストンを連結させると共に、加熱により前記冷却ピストンの高さを変更可能に溶融する連結部材と、を有することを特徴とする冷却装置。
(付記2) 前記連結部材は、前記リッドと前記冷却ピストンを接合させていることを特徴とする付記1に記載の冷却装置。
(付記3) 前記冷却ピストンと前記リッドの前記貫通孔は隙間を有し、前記隙間の体積は、前記連結部材の体積以上であることを特徴とする付記1又は付記2に記載の冷却装置。
(付記4) 前記連結部材は、ハンダであることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記5) 前記貫通孔の少なくとも一部に前記隙間の体積を増大させる凹部が形成されていることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか一項に記載の冷却装置。
(付記6) 付記1乃至付記5のいずれか一項に記載の冷却装置と、半導体素子が形成されたチップが基板に複数搭載されたマルチチップモジュールと、を含み、前記チップを前記基板に接合するハンダの融点より前記連結部材の融点の方が低いことを特徴とする電子装置。
(付記7) 発熱体の上方に複数の貫通孔を有するリッドを配置する工程と、複数の前記貫通孔に、第1のピストンと第2のピストンを連結部材で連結させた冷却ピストンを1つずつ挿入する工程と、前記リッドの位置を固定し、前記冷却ピストンを加熱して前記連結部材を溶融させながら前記第2のピストンを押圧し、全ての前記冷却ピストンの前記第2のピストンの上面と前記リッドの上面を一致させる工程と、全ての前記冷却ピストンの前記第2のピストンの上面と前記リッドの上面が一致した状態で前記連結部材を凝固させる工程と、前記発熱体で発生した熱であって、前記冷却ピストンを介して伝達される熱と熱交換可能な熱交換ユニットを前記冷却ピストンの上方に配置する工程と、を含むことを特徴とする冷却装置の製造方法。
(付記8) 前記リッドを降下させ、全ての前記第2のピストンの上端を前記リッドの上面から突出させる工程を含むことを特徴とする付記7に記載の冷却装置の製造方法。
(付記9) 全ての前記冷却ピストンの前記第2のピストンの上面と前記リッドの上面を一致させる工程は、前記第2のピストンを加熱して前記連結部材を溶融させながら押圧することによって、前記連結部材を前記冷却ピストンと前記貫通孔の隙間に、前記リッドの上面及び下面から前記連結部材が溢れ出ない範囲内で流出させることを含むことを特徴とする付記6又は付記7に記載の冷却装置の製造方法。
(付記10) 付記7乃至付記9のいずれか一項に記載の冷却装置の製造方法と、半導体素子が形成された発熱体であるチップを基板にハンダバンプを用いて接合する工程と、を含み、前記冷却ピストンの前記連結部材を溶融させる工程は、前記冷却ピストンの前記連結部材を前記ハンダバンプの融点より低い温度で溶融させる工程を含むことを特徴とする電子装置の製造方法。