(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セラミックス基板の一方の面に回路層が積層され、該セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層が積層されてなるパワーモジュール用基板を、ヒートシンクに接合するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、前記ヒートシンクは、炭化ケイ素の多孔体にSiが2質量%以上11質量%以下の範囲で含有されるアルミニウム合金が含浸するとともに、前記多孔体の表面に該アルミニウム合金の被覆層が形成されたAlSiC系複合材料からなり、前記パワーモジュール用基板の金属層と前記ヒートシンクとの接合面間に銅からなる中間層を9g/m2以上180g/m2以下の分量で挟んで配置し、これらを520℃以上570℃以下の温度で加熱して、前記金属層と前記被覆層との間にアルミニウム合金と銅とが溶融してなる金属液相を形成した後、冷却して前記金属液相を凝固することにより、前記パワーモジュール用基板と前記ヒートシンクとを接合することを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーモジュールとして、絶縁層となるセラミックス基板の一方の面に、アルミニウム等からなる回路層が積層され、この回路層の上に半導体チップ等の電子部品がはんだ付けされるとともに、セラミックス基板の他方の面にアルミニウム等からなる金属層が形成され、この金属層を介してヒートシンクが接合された構成のものが知られている。
【0003】
そして、この種のパワーモジュールにおいて、特許文献1及び特許文献2に記載されているようにヒートシンクを低熱膨張で高熱伝導率のAlSiC系複合材料により形成したものが知られている。
AlSiC系複合材料は、特許文献1に記載されるように、主に炭化ケイ素(SiC)からなる多孔体にアルミニウム(Al)を主成分とする金属を含浸して形成されたアルミニウムと炭化ケイ素の複合体である。また、AlSiC系複合材料は、低熱膨張で高熱伝導率であることから、セラミックス基板と金属層との熱膨張差による応力を緩和して優れた放熱特性を有するという特徴がある。
【0004】
特許文献1には、AlSiC系複合材料を構成するアルミニウムを主成分とする金属の初晶温度を615℃以上に設定することが記載されている。そして、AlSiC系複合材料からなるヒートシンク(放熱部品)を用いて、パワーモジュール用基板をアルミニウム系ろう材でろう付けする温度(ろう付け温度590℃)まで昇温させた場合、アルミニウムを主成分とする金属が溶融せず、ヒートシンクの表面への溶け出しを防ぐことができるとされている。したがって、AlSiC系複合材料内部の密度低下を生じずに気密性を維持でき、熱伝導率、曲げ強さ、ヤング率を高い値に維持できることが記載されている。
【0005】
しかし、AlSiC系複合材料とパワーモジュール用基板とをろう付けする場合は、ろう付けの接合温度が高くなることから、特許文献1に記載されるAlSiC系複合材料のように、アルミニウムを主成分とする金属の初晶温度を615℃以上とする必要があり、使用できる金属が限定されるという問題があった。
また、AlSiC系複合材料とパワーモジュール用基板とをはんだ付けする場合には、はんだの熱抵抗が高く、放熱特性が阻害されることが問題であった。
【0006】
一方、特許文献2には、AlSiC系複合材料からなるヒートシンクとパワーモジュール用基板(セラミック回路基板)とを、表面にAl融点降下層(Al‐Si合金)を有するアルミニウム箔を介して接合することが記載されている。この場合、ヒートシンクの上にパワーモジュール用基板のアルミニウム板を重ねて、これらに荷重を加え、真空中で520℃に加熱することにより、ヒートシンクをアルミニウム板に接合することができ、アルミニウム系ろう材を用いたろう付け温度よりも低い接合加熱温度で接合することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に記載されるヒートシンク付パワーモジュール用基板においては、予めアルミニウム箔の表面にコーティングや蒸着等によりAl融点降下層を形成する作業が必要となるために、生産性が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、接合信頼性が高く、放熱特性に優れたヒートシンク付パワーモジュール用基板を容易に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、セラミックス基板の一方の面に回路層が積層され、該セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層が積層されてなるパワーモジュール用基板を、ヒートシンクに接合するヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、前記ヒートシンクは、炭化ケイ素の多孔体にSiが2質量%以上11質量%以下の範囲で含有されるアルミニウム合金が含浸するとともに、前記多孔体の表面に該アルミニウム合金の被覆層が形成されたAlSiC系複合材料からなり、前記パワーモジュール用基板の金属層と前記ヒートシンクとの接合面間に銅からなる中間層を9g/m
2以上180g/m
2以下の分量で挟んで配置し、これらを520℃以上570℃以下の温度で加熱して、前記金属層と前記被覆層との間にアルミニウム合金と銅とが溶融してなる金属液相を形成した後、冷却して前記金属液相を凝固することにより、前記パワーモジュール用基板と前記ヒートシンクとを接合することを特徴とする。
【0011】
パワーモジュール用基板の金属層とヒートシンクの被覆層との間に中間層を介在させた状態でこれらを520℃以上570℃以下の温度で加熱すると、被覆層のアルミニウム合金中に銅が拡散し、被覆層の中間層近傍の銅濃度が上昇して融点が低下し、アルミニウム合金と銅との共晶域にて接合界面に金属液相が形成される。そして、この金属液相を冷却して凝固することにより、金属層とヒートシンクの被覆層との界面に、アルミニウム合金と銅とが相互に拡散してなる合金層が形成され、これによりパワーモジュール用基板とヒートシンクとの良好な接合強度を確保することができる。
【0012】
ヒートシンクのアルミニウム合金がAl‐Si系合金で構成され、中間層が銅で形成される場合、これらの共晶温度は520℃程度である。したがって、良好な接合性を維持したままの低温接合が可能となる。また、ヒートシンク内部のアルミニウム合金が完全に溶融するのを防ぐことができ、溶融したアルミニウム合金が、ヒートシンクの外部に排出されることを回避することができる。これにより、ヒートシンクのアルミニウム合金の密度低下を防ぐことができ、放熱性能の低下を防ぐことができる。
【0013】
また、ヒートシンクのアルミニウム合金は、含有するSiの濃度(Si濃度)を2質量%以上11質量%以下の範囲に設定し、中間層は、9g/m
2以上180g/m
2以下の分量で配置することにより、共晶温度を低下させることができ、520℃以上570℃以下の温度で接合することができる。
なお、アルミニウム合金のSi濃度及び中間層の単位面積当たりの分量が上記範囲を外れると、共晶温度が下がらず、金属層と被覆層との接合界面に金属液相を形成することができない。
また、中間層の単位面積当たりの分量が9g/m
2未満では、金属液相が十分に形成されずに接合不良を引き起こすおそれがある。180g/m
2を超える場合には、被覆層の全てが金属液相となり、パワーモジュール用基板の埋没、傾きが生じるおそれがある。
そして、接合時の加熱温度が520℃未満では、金属液相を形成することができない。また、570℃を超える場合は、ヒートシンク内部のアルミニウム合金の溶融が顕著になり、溶融したアルミニウム合金がヒートシンクの外部に排出されるおそれがある。
【0014】
本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法において、前記ヒートシンクのアルミニウム合金にMgが含有されているとよい。
ヒートシンクのアルミニウム合金にMgを含有させた場合、接合加熱時にMgが金属層及びヒートシンクの表面酸化被膜(Al
2O
3)を分解・反応し、スピネル(MgAl
2O
4)を形成して、金属層及びヒートシンク表面の酸化被膜を良好に除去することができる。したがって、接合時に酸化被膜を除去するための加圧を行う必要はなく、金属層とヒートシンクとの位置合わせに必要な程度の低加圧、若しくは加圧しなくとも良好な接合性が得られる。
なお、スピネルも酸化物であるが、細かい粒子であり、また外部に流れ出ることから、金属層とヒートシンクとの接合に影響を与えずに良好に作用する。
【0015】
また、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法において、パワーモジュール用基板とヒートシンクとを適切な接合強度で接合するためには、被覆層の厚みを30μm以上500μm以下に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、AlSiC系複合材料からなるヒートシンクとパワーモジュール用基板とをはんだやろう材を用いることなく接合することができ、接合信頼性が高く、放熱特性に優れたヒートシンク付パワーモジュール用基板を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すヒートシンク付パワーモジュール用基板10Aは、パワーモジュール用基板10と、パワーモジュール用基板10に接合されるヒートシンク30とから構成されている。
【0019】
パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板11の一方の面に回路層12が厚さ方向に積層され、セラミックス基板11の他方の面に金属層13が厚さ方向に積層された状態で接合されている。本実施形態では、Alよりも低融点のろう材(好ましくはAl‐Si系ろう材)を用いて接合されている。
【0020】
セラミックス基板11は、厚さ0.3mm〜1.0mmのAlN,Si
3N
4,Al
2O
3,SiC等からなる。
回路層12は、厚さ0.2mm〜2.5mmの純アルミニウム板(好ましくは純度99.99質量%以上の4N‐Al板)からなる。パワーモジュール用基板10においては、エッチング等により所定の回路パターン状に成形された回路層12の上に電子部品20がはんだ材等によって接合されている。なお、回路層12には、純アルミニウム板の他、アルミニウム合金板、銅又は銅合金板を用いることもできる。
また、金属層13は、厚み0.1mm以上5.0mm以下のアルミニウム又はアルミニウム合金板(好ましくは純度99.0質量%以上のAl板)からなる。
【0021】
そして、このように構成されたパワーモジュール用基板10の金属層13に、ヒートシンク30が接合されている。
ヒートシンク30は、
図2に示すように、炭化ケイ素(SiC)の多孔体31にSiが2質量%以上11質量%以下の範囲で含有されるアルミニウム合金が含浸するとともに、多孔体31の表面にそのアルミニウム合金の被覆層32が形成されたAlSiC系複合材料により、平板状に形成されている。また、ヒートシンク30の被覆層32の厚みは、30μm以上500μm以下に設定されている。
このように多孔体31の表面に被覆層32が形成されたヒートシンク30は、例えば、SiCの多孔体31をその周囲に所定の隙間を有するように設けられた型内に配置し、その型内に加熱溶融したアルミニウム合金を圧入して、その加圧された状態で冷却することにより製造される。アルミニウム合金を圧入することで、アルミニウム合金との濡れ性が悪いSiCの内部にアルミニウム合金を含浸させることができる。また、多孔体31の周囲の隙間にアルミニウム合金を充填して、多孔体31の表面に所定の厚みの被覆層32を形成することができる。
【0022】
なお、本実施形態のヒートシンク付パワーモジュール用基板10Aの好ましい組合せ例として、例えばパワーモジュール用基板10の各部材は、セラミックス基板11が厚み0.635のAlN、回路層12が厚み0.6mmの4N‐Al板、金属層13が厚み0.6mmのAl板(純度99.0質量%以上)とされる。また、ヒートシンク30のアルミニウム合金がAl‐Si系合金で構成され、ヒートシンク30の厚み5.0mmで、その被覆層32が厚み50μm程度で構成される。
【0023】
本実施形態に係るヒートシンク付パワーモジュール用基板10Aの製造方法について説明する。
まず、
図3に示すように、予めセラミックス基板11に回路層12及び金属層13がろう付けされたパワーモジュール用基板10を用いて、そのパワーモジュール用基板10の金属層13が、ヒートシンク30と対向するように配置するとともに、これら金属層13とヒートシンク30との接合面間に銅からなる中間層25を挟んで配置することにより、基板積層体40を組み立てる。このとき、中間層25は金属層13とヒートシンク30との接合面間に、9g/m
2以上180g/m
2以下の分量となるように配置する。なお、
図3に示す例では、中間層25は銅箔により形成しているが、めっき、クラッド材、塗布等、その他の手段により、金属層13とヒートシンク30との接合面間に配置することが可能である。
【0024】
次に、基板積層体40を、カーボングラファイト層からなるクッションシート50との間に挟んだ状態とし、複数の基板積層体40を、
図4に示すような加圧治具110によって積層方向に0.3MPa〜1.0MPaで加圧し、金属同士を位置合わせして密着させた状態とする。
この加圧治具110は、ベース板111と、ベース板111の上面の四隅に垂直に取り付けられたガイドポスト112と、これらガイドポスト112の上端部に固定された固定板113と、これらベース板111と固定板113との間で上下移動自在にガイドポスト112に支持された押圧板114と、固定板113と押圧板114との間に設けられて押圧板114を下方に付勢するばね等の付勢手段115とを備え、ベース板111と押圧板114との間に前述の基板積層体40が配設される。
【0025】
そして、この加圧治具110により基板積層体40を加圧した状態で、加圧治具110ごと加熱炉(図示略)内に設置し、真空又は不活性雰囲気下において520℃以上570℃以下の温度で加熱することにより、銅とアルミニウムとの共晶反応を利用してパワーモジュール用基板10とヒートシンク30とを接合する。
すなわち、パワーモジュール用基板10の金属層13とヒートシンク30の被覆層32との間に中間層25を介在させた状態でこれらを共晶域で加熱すると、被覆層32のアルミニウム合金中に銅が拡散し、被覆層32の中間層25近傍の銅濃度が上昇して融点が低下し、アルミニウム合金と銅との共晶域にて接合界面にアルミニウム合金と銅とが溶融してなる金属液相が形成される。そして、この金属液相を冷却して凝固することにより、金属層13とヒートシンク30の被覆層32との界面に、アルミニウム合金と銅とが相互に拡散してなる合金層が形成され、これによりパワーモジュール用基板10とヒートシンク30とを接合することができ、良好な接合強度を確保することができる。また、ヒートシンク30内部のアルミニウム合金は完全に溶融させることなく、パワーモジュール用基板10とヒートシンク30とを接合することができる。
【0026】
ヒートシンク30のアルミニウム合金がAl‐Si系合金で構成され、中間層が銅で形成される場合、これらの共晶温度は520℃程度である。したがって、良好な接合性を維持したままの低温接合が可能となる。また、ヒートシンク30内部のアルミニウム合金が完全に溶融するのを防ぐことができ、溶融したアルミニウム合金が、ヒートシンク30の外部に排出されることを回避することができる。これにより、ヒートシンク30のアルミニウム合金の密度低下を防ぐことができ、放熱性能の低下を防ぐことができる。
【0027】
また、ヒートシンク30のアルミニウム合金は、Si濃度を2質量%以上11質量%以下の範囲に設定し、中間層25は、9g/m
2以上180g/m
2以下の分量で配置することにより、共晶温度を低下させることができる。なお、アルミニウム合金のSi濃度が上記範囲を外れると、共晶温度が下がらず、金属層13と被覆層32との接合界面に金属液相を形成することができない。また、中間層25の単位面積当たりの分量が9g/m
2未満であると、金属液相が十分に形成されずに接合不良を引き起こすおそれがあり、180g/m
2を超えると、被覆層32の全てが金属液相となり、パワーモジュール用基板10の埋没や傾きが生じるおそれがある。
そして、接合時の加熱温度が520℃未満では、金属層13と被覆層32との接合界面に金属液相を形成することができない。また、570℃を超える場合は、ヒートシンク30内部のアルミニウム合金の溶融が顕著になり、溶融したアルミニウム合金がヒートシンク30の外部に排出されるおそれがある。
【0028】
また、ヒートシンク30に含浸され、被覆層32を形成するアルミニウム合金にMgを含有する場合、パワーモジュール用基板10の金属層13とヒートシンク30との接合加熱時に、アルミニウム合金中のMgが金属層13及びヒートシンク30(被覆層32)の表面酸化被膜(Al
2O
3)を分解・反応し、スピネル(MgAl
2O
4)を形成して、金属層13及びヒートシンク30表面の酸化被膜を良好に除去することができる。したがって、接合時に酸化被膜を除去するためのフラックスや加圧処理を行う必要はなく、金属層13とヒートシンク30との位置合わせに必要な程度の低加圧、若しくは加圧しなくとも良好な接合を行うことができる。なお、位置合わせに必要な程度に加圧する場合は、0.01MPa以上0.09MPa以下で加圧することが望ましい。
なお、スピネルも酸化物であるが、細かい粒子であり、また外部に流れ出ることから、金属層13とヒートシンク30との接合に影響を与えずに良好に作用する。
また、この場合、Mgはアルミニウム合金中に0.05質量%以上2.0質量%以下の範囲で含有するとよい。Mgの含有量が0.05質量%以上2.0質量%以下とされているので、金属層13及びヒートシンク30表面の酸化被膜が除去され、さらに接合を阻害するMgOが過剰に生成されることもないため、良好に接合を行うことができる。
【0029】
また、パワーモジュール用基板10とヒートシンク30とを適切な接合強度で接合するためには、上記実施形態のように、ヒートシンク30の被覆層32の厚みを30μm以上500μm以下に設定することが好ましい。
【実施例】
【0030】
上記において説明した本発明に係るヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法において、その効果を確認するために実験を行った。
回路層12には厚み0.6mmで31.4mm×26.4mmの4N‐Al板、金属層13には厚み0.6mmで31.4mm×26.4mmの純度99.0質量%のAl板、セラミックス基板11には厚み0.635mmで33.8mm×28.8mmのAlNを用いて、ろう付けすることによりパワーモジュール用基板10を製造した。なお、これらセラミックス基板11と回路層12、金属層13とのろう付けには、Al‐7.5質量%Siのろう材を用いた。
ヒートシンク30には、厚み5mmで46mm×58mmで形成され、SiCの多孔体31にアルミニウム合金を含浸させて形成された複数種類のAlSiC系複合材料を用いた。各ヒートシンク30の条件は、表1に示すとおりである。なお、表1の「Si濃度」は、ヒートシンク30を構成するアルミニウム合金のSi濃度を示す。
また、中間層25には無酸素銅(OFC)により、厚みを異ならせて形成した31.4mm×26.4mmの大きさの銅箔を用いた。なお、表1の「中間層の分量」には、銅箔の厚みではなく、単位面積(1m
2)当りの分量に換算して記載した。
【0031】
次に、これらパワーモジュール用基板10、中間層25、ヒートシンク30を積層した基板積層体40を、クッションシート50を介して積層した状態で加圧治具110内に設置し、530℃に加熱された窒素雰囲気下で10分間保持することにより接合した。
そして、このように作製した各試料について、「接合性」を評価した。
「接合性」の評価は、超音波深傷装置を用いて金属層13とヒートシンク30との接合部を評価したもので、接合率=(接合面積−非接合面積)/接合面積の式から算出した。ここで、非接合面積は、接合面を撮影した超音波深傷像において非接合部は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を測定したものである。また、接合面積は、接合前における接合すべき面積である、金属層13の接合面の面積とした。表1に結果を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示されるように、Si濃度が2質量%以上11質量%以下の範囲に設定され、中間層25が9g/m
2以上180g/m
2以下の分量で配置され、520℃以上570℃以下の接合温度で接合した実施例1〜実施例6は、接合率が92%〜98%と高く、良好な結果を得ることができた。
一方、Si濃度が2質量%以上11質量%以下の範囲を外れて設定された比較例3及び比較例4は、実施例1〜実施例6と比べて接合率が低下する結果となった。また、中間層の分量が9g/m
2以上180g/m
2以下の範囲を外れて設定された比較例1及び比較例2や、接合温度が570℃を超えた比較例5では、実施例1〜実施例6と比べて接合率が低下する結果となった。さらに、接合温度が520℃未満とされた比較例6では、ヒートシンクを接合することができなかった。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、平板状に形成したヒートシンク30を用いて説明を行ったが、本発明のヒートシンクには、平板部に複数の放熱フィンが形成されたフィン付きのヒートシンクを用いることもできる。また、本発明のヒートシンクには、いわゆる冷却器の他、放熱板、緩衝層等も含まれる。
また、セラミックス基板11と回路層12及び金属層13との接合は、ろう付けの他に、回路層12及び金属層13の接合面に接合材として、Ag若しくはCuを付着させて積層方向に加圧しながら加熱接合するいわゆる過渡液相接合法を用いることもできる。
さらに、上記実施形態では、各部品を構成する部材の寸法を記載して説明を行ったが、これらの寸法は例示的なものであり、各部材の寸法はこれに限られるものではない。