特許第6024489号(P6024489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6024489クロック再生回路及びクロックデータ再生回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024489
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】クロック再生回路及びクロックデータ再生回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/033 20060101AFI20161107BHJP
   H03L 7/08 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   H04L7/033
   H03L7/08 107
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-17150(P2013-17150)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-150360(P2014-150360A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康介
(72)【発明者】
【氏名】田村 泰孝
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−526984(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0031028(US,A1)
【文献】 特開2003−204319(JP,A)
【文献】 特開2010−252244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/033
H03L 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるデータ信号からデータレートに対して1/2の周波数のクロックを再生するクロック再生回路であって、
前記データ信号と再生クロックとの位相を比較し、位相差を示す位相差信号を出力する位相比較回路と、
前記位相差信号に応じた電流を出力するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路が出力する電流を平滑化して制御電圧に変換するループフィルタと、
前記制御電圧に応じた周波数を有する第1の正弦波クロック、及び前記第1の正弦波クロックに対して90度の位相差を有する第2の正弦波クロックを生成する発振回路と、
前記第1の正弦波クロック及び前記第2の正弦波クロックのうち、前記データ信号の遷移時において振幅中心との電圧差が大きいクロックを前記再生クロックとして選択し出力するクロックセレクタとを有することを特徴とするクロック再生回路。
【請求項2】
前記クロックセレクタは、
前記データ信号の遷移時に、前記第1の正弦波クロックの電圧と前記第2の正弦波クロックの電圧とを比較し、振幅中心との電圧差が大きいクロックを示す選択制御信号を出力する選択制御回路と、
前記選択制御信号に応じて、前記第1の正弦波クロック又は前記第2の正弦波クロックを選択し出力する選択回路とを有することを特徴とする請求項1記載のクロック再生回路。
【請求項3】
前記選択制御回路は、
前記第1の正弦波クロックの電圧と前記第2の正弦波クロックの電圧とを比較する比較部と、
前記再生クロックの信号レベルを検出する検出部とを有することを特徴とする請求項2記載のクロック再生回路。
【請求項4】
入力されるデータ信号からデータレートに対して1/2の周波数のクロック及びデータを再生するクロックデータ再生回路であって、
前記データ信号から再生クロックを再生するクロック再生回路と、
前記クロック再生回路により再生された再生クロックを用いて前記データ信号の識別を行いデータを再生する識別回路とを有し、
前記クロック再生回路は、
前記データ信号と再生クロックとの位相を比較し、位相差を示す位相差信号を出力する位相比較回路と、
前記位相差信号に応じた電流を出力するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路が出力する電流を平滑化して制御電圧に変換するループフィルタと、
前記制御電圧に応じた周波数を有する第1の正弦波クロック、及び前記第1の正弦波クロックに対して90度の位相差を有する第2の正弦波クロックを生成する発振回路と、
前記第1の正弦波クロック及び前記第2の正弦波クロックのうち、前記データ信号の遷移時において振幅中心との電圧差が大きいクロックを前記再生クロックとして選択し出力するクロックセレクタとを有することを特徴とするクロックデータ再生回路。
【請求項5】
前記クロックデータ再生回路は、
前記データ信号が入力されていないときにオフ状態となり、
前記オフ状態で前記データ信号が入力されると動作状態に復帰することを特徴とする請求項4記載のクロックデータ再生回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック再生回路及びクロックデータ再生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置等の性能向上に伴い装置内外において送受信する信号のデータレートが高くなり、受信器側では受信したデータ信号からクロック及びデータを再生するクロックデータ再生(CDR:Clock and Data Recovery)回路が用いられている。CDR回路は、受信器で再生するクロックと受信データとの位相関係を判定してクロックをロックするが、このクロックの周波数が低いほどクロックパス等で消費される電力を削減することが可能になる。そこで、CDR回路におけるクロックの周波数をデータレートの半分にすることで受信器の消費電力を削減するハーフレートのCDR回路が提案されている。ハーフレートのCDR回路は、例えばデータレートが10Gbps(bits per second)である場合、クロックの周波数は5GHzである。また、入力NRZ(Non Return to Zero)信号から、そのビットレートの1/2の周波数のクロック信号を抽出し、位相比較回路の動作周波数を1/2にして消費電力を削減するPLL(Phase Locked Loop)回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−126400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送信器と受信器との間でのデータ送受信において、送信器がデータを送らないアイドル(Idel)時間が存在する。省電力化のため、送信器からデータが送られてこないアイドル時には受信器をオフ状態にし、送信器からデータが再び送信されるときに受信器をオン状態(動作状態)に復帰するように制御する技術がある。受信器がオン状態になる際、CDR回路は、再度データ信号に追随してクロックをロックする。しかし、ハーフレートのCDR回路では、受信器がオン状態になる際、データとクロックのタイミングをロックするまでの時間がフルレートのCDR回路よりもかかる。そのため、受信器がオフ状態からオン状態に復帰する時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明は、ハーフレートのCDR回路においてデータとクロックのタイミングをロックするまでの時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
クロック再生回路の一態様は、データ信号とそのデータレートに対して1/2の周波数を有する再生クロックとの位相を比較する位相比較回路と、位相比較回路の出力に応じて制御電圧を制御するチャージポンプ回路及びループフィルタと、制御電圧に応じた周波数を有する第1の正弦波クロック及び90度の位相差を有する第2の正弦波クロックを生成する発振回路と、第1の正弦波クロック又は第2の正弦波クロックを再生クロックとして選択し出力するクロックセレクタとを有する。クロックセレクタは、第1の正弦波クロック及び第2の正弦波クロックのうち、データ信号の遷移時において振幅中心との電圧差が大きいクロックを再生クロックとして選択する。
【発明の効果】
【0007】
開示のクロック再生回路は、90度の位相差を有する2つの正弦波クロックのうち、ロックする位相に近いクロックを選択し出力することができ、データとクロックのタイミングをロックするまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態におけるクロック再生回路の構成例を示す図である。
図2】クロック及びデータの一例を示す図である。
図3】本実施形態におけるクロック再生回路の構成例を示す図である。
図4】本実施形態におけるクロック選択論理の例を示す図である。
図5】本実施形態におけるクロック選択論理を説明するための図である。
図6】本実施形態におけるクロック再生回路と一般的な技術でのロック時間の例を示す図である。
図7】本実施形態におけるクロックデータ再生回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態におけるクロック再生回路の構成例を示す図である。本実施形態におけるクロック再生回路10は、受信器のクロックの周波数が、送受信する信号のデータレートに対して半分(1/2)であるハーフレートのPLL(Phase Locked Loop)型CDR(Clock and Data Recovery)回路である。本実施形態におけるハーフレートのCDR回路は、例えばLSIチップ内通信、同じ基板上でのチップ間の短距離通信、バックプレーンを介したドーターカード間やサーバ間の中長距離通信等のデータ伝送を高速で行うための入出力部(I/O)部内の受信器に適用可能である。
【0011】
本実施形態におけるクロック再生回路10は、図1に示すように位相比較回路(PD)11、チャージポンプ回路(CP)12、ループフィルタ(LF)13、電圧制御発振回路(VCO)14、及びクロックセレクタ15を有する。位相比較回路11は、受信したデータ信号DATAと再生クロックCLKOUTとの位相を比較し、位相差を示す位相差信号を出力する。チャージポンプ回路12は、位相比較回路11から出力される位相差信号に応じたチャージポンプ電流をループフィルタ13に対して出力する。ループフィルタ13は、チャージポンプ回路12からのチャージポンプ電流が供給され、供給されるチャージポンプ電流を平滑化して電圧制御発振回路14の制御電圧に変換する。
【0012】
電圧制御発振回路14は、制御電圧に応じた周波数のクロック(発振信号)を出力する。本実施形態においては、電圧制御発振回路14は、0度クロックである第1のクロックCLKI、及び第1のクロックCLKIに対して位相が90度異なる90度クロックである第2のクロックCLKQを出力する。ここで、電圧制御発振回路14が出力する第1のクロックCLKI及び第2のクロックCLKQは、同じ周波数の正弦波クロックである。なお、電圧制御発振回路14は、第1のクロックCLKI及び第2のクロックCLKQの2相の正弦波クロックを出力するものとしているが、さらに180度クロックや270度クロックを出力するものであっても良い。
【0013】
データ信号DATAに対して再生クロックCLKOUTの位相が進んでいる場合には、電圧制御発振回路14が出力するクロックの周波数を低くするように、位相比較回路11、チャージポンプ回路12、及びループフィルタ13が電圧制御発振回路14の制御電圧を制御する。一方、データ信号DATAに対して再生クロックCLKOUTの位相が遅れている場合には、電圧制御発振回路14が出力するクロックの周波数を高くするように、位相比較回路11、チャージポンプ回路12、及びループフィルタ13が電圧制御発振回路14の制御電圧を制御する。
【0014】
クロックセレクタ15は、クロック再生回路10の出力側(図1に示した例では電圧制御発振回路14の次段)に設けられる。クロックセレクタ15は、電圧制御発振回路14が出力する第1のクロックCLKI及び第2のクロックCLKQのうちの一方のクロックを選択し、再生クロックCLKOUTとして出力する。クロックセレクタ15より出力される再生クロックCLKOUTは、クロック再生回路10の外部にも出力される。クロックセレクタ15は、クロック選択制御回路(CSL)16及び選択回路(SEL)17を有する。
【0015】
クロック選択制御回路15は、データ信号DATAの立ち上がりエッジ若しくは立ち下がりエッジにおいて、再生クロックCLKOUTの信号レベルを検出するとともに、第1のクロックCLKIの電圧と第2のクロックCLKQの電圧とを比較する。また、クロック選択制御回路15は、検出及び比較の結果に基づいて選択回路17に選択制御信号を出力する。
【0016】
選択回路17は、電圧制御発振回路14から出力される第1のクロックCLKI及び第2のクロックCLKQが入力されるとともに、クロック選択制御回路15から出力される選択制御信号が入力される。選択回路17は、選択制御信号に応じて第1のクロックCLKI又は第2のクロックCLKQを選択し、再生クロックCLKOUTとして出力する。
【0017】
ここで、ハーフレートのCDR回路では、ロック状態になると、図2(A)に示すようにハーフレートのクロックのピーク(最大値又は最小値)となるタイミングと、データの遷移するタイミングとが一致する。図2(A)において、実線により示したCLKIは0度クロックである第1のクロックを示し、破線により示したCLKQは90度クロックである第2のクロックを示している。また、実線により示したDATは受信データを示し、一点鎖線で示したSZCは第1のクロックCLKIに基づくデータのサンプリングクロックを示しており第1のクロックCLKIのゼロクロス点で信号レベルが変化する。
【0018】
図2(A)には、データDATと第1のクロックCLKIのタイミングがロックしている状態を示しており、例えば第1のクロックCLKIが最大値となるタイミング21、23とデータDATのエッジが重なっている。また、第1のクロックCLKIが最小値となるタイミング22とデータDATのエッジが重なっている。
【0019】
このようにハーフレートのCDR回路では、ロックするとハーフレートのクロックのピークとなるタイミングと、データの遷移するタイミングとが一致する。したがって、データのエッジにおいて、電圧がピーク値に近いクロックの方がロックする位相に近いこととなる。そこで、本実施形態では、ロックする前において、クロックセレクタ15のクロック選択制御回路16が、データのエッジで第1のクロックCLKI及び第2のクロックCLKQの信号電圧を比較する。その結果、コモン電位との差の絶対値が大きい方のクロックをロック制御対象のクロックとして選択する。ここで、コモン電位とは、正弦波クロックにおいて振幅の中心となる電位であり、振幅の最大値と最小値との平均である。すなわち、データのエッジ(遷移時)においてコモン電位との差の絶対値が大きい方のクロックは、データのエッジ(遷移時)において振幅中心との電圧差が大きいクロックである。このように制御することで、CDR回路においてデータとクロックのタイミングをロックするまでの時間を短縮することができる。
【0020】
図2(B)に一例を示すように、データDATの立ち上がりエッジのタイミング24において、コモン電位との差の絶対値が第1のクロックCLKIよりも第2のクロックCLKQが大きい場合には、クロックセレクタ15は、第2のクロックCLKQを選択し再生クロックCLKOUTとして出力する。また、図2(C)に一例を示すように、データDATの立ち下がりエッジのタイミング25において、コモン電位との差の絶対値が第1のクロックCLKIよりも第2のクロックCLKQが大きい場合には、クロックセレクタ15は、第2のクロックCLKQを選択し再生クロックCLKOUTとして出力する。ここで、図2(B)、(C)に示すようにコモン電位を電位0とした場合には、第1のクロックCLKI及び第2のクロックCLKQのうち、データDATのエッジにおいて電圧の絶対値が大きいクロックを再生クロックCLKOUTとするように制御すれば良い。
【0021】
図3は、本実施形態におけるクロック再生回路の構成例を示す図である。図3は、図1に示した位相比較回路11及びクロック選択制御回路16の具体的な回路構成例を示すものである。図3において、図1に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、図3に示す位相比較回路11及びクロック選択制御回路16は一例であり、これに限定されるものではない。
【0022】
位相比較回路11は、ハーフレートのHogge型位相比較回路である。位相比較回路11は、4つのラッチ31、32、33、34、及び2つの排他的論理和演算回路(EXOR回路)35、36を有する。
【0023】
ラッチ31、32は、受信したデータDATAが入力Dに入力され、ラッチ33、34は、ラッチ31、32の出力Qがそれぞれ入力Dに入力される。ラッチ31、33は、再生クロックCLKOUTにより駆動され、クロックCLKOUTがハイレベルのときには入力Dが出力Qに伝達され、ローレベルのときには出力Qを保持する。また、ラッチ32、34は、反転された再生クロックCLKOUTにより駆動され、クロックCLKOUTがローレベルのときには入力Dが出力Qに伝達され、ハイレベルのときには出力Qを保持する。EXOR回路35は、ラッチ31、32の出力Qが入力され、その演算結果をチャージポンプ回路12に出力する。また、EXOR回路36は、ラッチ33、34の出力Qが入力され、その演算結果をチャージポンプ回路12に出力する。
【0024】
図3に示すハーフレートのHogge型位相比較回路11は、データDATAが遷移してから、データDATAと再生クロックCLKOUTとの位相差に応じた期間の間、EXOR回路35の出力がハイレベルとなる。また、データDATAの遷移が生じたときにEXOR回路36の出力がハイレベルとなる。なお、図3においては、1つのデータ(データ1UI)に対して1ポイントのみサンプルする位相比較回路11(1xPD)かつリニアな位相比較回路11を一例として示した、これに限定されるものではなく、他の方式の位相比較回路であっても良い。
【0025】
クロック選択制御回路16は、2つのフリップフロップ37、38、コンパレータ39、及びEXOR回路40を有する。フリップフロップ37は、再生クロックCLKOUTが入力Dに入力され、フリップフロップ38は、コンパレータ39の出力が入力される。フリップフロップ37、38は、受信したデータDATAの立ち上がりエッジ若しくは立ち下がりエッジで入力Dをサンプリングし(取り込み)、出力Qから出力する。
【0026】
コンパレータ39は、第1のクロックCLKI及び第2のクロックCLKQが入力され、その電圧を比較する。コンパレータ39は、第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より高い場合には出力をハイレベルとし、第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より低い場合には出力をローレベルとする。EXOR回路40は、フリップフロップ37の出力Qより出力される信号SIGA及びフリップフロップ38の出力Qより出力される信号SIGBが入力され、その演算結果を選択制御信号SIGCとして出力する。この選択制御信号SIGCに応じて、選択回路17は、第1のクロックCLKI又は第2のクロックCLKQを選択して出力する。
【0027】
前述したクロック選択制御回路16を含むクロックセレクタ15の動作について説明する。なお、以下の説明において、オフ状態からオン状態に復帰する動作の開始直後には、第1のクロックCLKIが再生クロックCLKOUTとして選択され出力されるものとする。ここで、図3に示したフリップフロップ37から出力される信号SIGAは、データDATAのエッジにおいてサンプリングした再生クロックCLKOUTの信号レベルを示している。信号SIGAは、データDATAのエッジにおいて、再生クロックCLKOUTがローレベルである場合には“0”(ローレベル)となり、再生クロックCLKOUTがハイレベルである場合には“1”(ハイレベル)となる。また、フリップフロップ38から出力される信号SIGBは、データDATAのエッジにおいて第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より高いか否かを示している。信号SIGBは、データDATAのエッジにおいて、第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より高い場合には“1”(ハイレベル)となり、第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より低い場合には“0”(ローレベル)となる。
【0028】
例えば信号SIGAが“0”かつ信号SIGBが“0”である場合(図4の(A))は、図5(A)に示す状態に相当する。すなわち、データDATAのエッジにおいて、クロックCLKOUTとしての第1のクロックCLKIがローレベルであり、第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より低い。したがって、第1のクロックCLKIの方が第2のクロックCLKQよりもロックする位相に近く、第1のクロックCLKIを選択した方がロック状態に速やかに収束させることができる。この場合には、EXOR回路40から出力する信号SIGCが“0”となり、この信号SIGCに応じて選択回路17が第1のクロックCLKIを再生クロックCLKOUTとして出力する。
【0029】
また、信号SIGAが“0”かつ信号SIGBが“1”である場合(図4の(B))は、図5(B)に示す状態に相当する。すなわち、データDATAのエッジにおいて、クロックCLKOUTとしての第1のクロックCLKIがローレベルであり、第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より高い。したがって、第2のクロックCLKQの方が第1のクロックCLKIよりもロックする位相に近く、第2のクロックCLKQを選択した方がロック状態に速やかに収束させることができる。この場合には、EXOR回路40から出力する信号SIGCが“1”となり、この信号SIGCに応じて選択回路17が再生クロックCLKOUTとして出力するクロックを第1のクロックCLKIから第2のクロックCLKQに切り替えて出力する。
【0030】
また、信号SIGAが“1”かつ信号SIGBが“0”である場合(図4の(C))は、図5(C)に示す状態に相当する。すなわち、データDATAのエッジにおいて、クロックCLKOUTとしての第1のクロックCLKIがハイレベルであり、第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より低い。したがって、第2のクロックCLKQの方が第1のクロックCLKIよりもロックする位相に近く、第2のクロックCLKQを選択した方がロック状態に速やかに収束させることができる。この場合には、EXOR回路40から出力する信号SIGCが“1”となり、この信号SIGCに応じて選択回路17が再生クロックCLKOUTとして出力するクロックを第1のクロックCLKIから第2のクロックCLKQに切り替えて出力する。
【0031】
また、信号SIGAが“1”かつ信号SIGBが“1”である場合(図4の(D))は、図5(D)に示す状態に相当する。すなわち、データDATAのエッジにおいて、クロックCLKOUTとしての第1のクロックCLKIがハイレベルであり、第1のクロックCLKIの電圧が第2のクロックCLKQの電圧より高い。したがって、第1のクロックCLKIの方が第2のクロックCLKQよりもロックする位相に近く、第1のクロックCLKIを選択した方がロック状態に速やかに収束させることができる。この場合には、EXOR回路40から出力する信号SIGCが“0”となり、この信号SIGCに応じて選択回路17が第1のクロックCLKIを再生クロックCLKOUTとして出力する。
【0032】
このように、CDR回路が動作状態になる際にデータと再生クロックがロックする前においては、クロックセレクタ15のクロック選択制御回路16は、図4に示したクロックの選択論理に従って選択制御信号SIGCを出力する。これにより、クロックセレクタ15の選択回路17は、第1のクロックCLKI及び第2のクロックCLKQのうち、ロックする位相に近いクロックを選択して再生クロックCLKOUTとして出力する。なお、データと再生クロックがロックした後は、クロックセレクタ15による切り替え制御は止まり、一般的なハーフレートのCDR回路と同様に動作する。
【0033】
本実施形態によれば、ハーフレートのCDR回路のクロック再生回路10において、電圧制御発振回路14が90度の位相差を有する第1のクロックCLKIと第2のクロックとを生成し出力する。そして、受信したデータDATAのエッジにおいて、現在の再生クロックCLKOUTの信号レベルを検出するとともに、2つのクロックCLKI、CLKQとの電圧を比較して、その結果に応じて2つのクロックCLKI、CLKQのうちの一方を選択し出力する。これにより、90度の位相差を有する2つのクロックCLKI、CLKQから、ロックする位相に近いクロックを選択して再生クロックCLKOUTとして出力しロック状態に速やかに収束させることができ、ロックするまでの時間を短縮することができる。
【0034】
例えば、図6に示すように本実施形態におけるクロック再生回路10では、波形61に示すように時間TAでロックさせることができる。一方、一般的な技術でのクロック再生回路では、波形62に示すようにロックさせるまでに時間TBを要する。したがって、本実施形態によれば、ハーフレートのCDR回路においてデータとクロックのタイミングをロックするまでの時間をほぼ1/2に短縮することができる。
【0035】
図7は、本実施形態におけるハーフレートのCDR回路の構成例を示す図である。CDR回路73は、送信器71から送信されたデータ信号DATAを伝送路72を介して受信する。クロック再生回路74は、図1図3に示した本実施形態におけるクロック再生回路である。クロック再生回路74は、受信したデータ信号DATAから、データ信号DATAのデータレートに対して半分(1/2)の周波数の再生クロックCLOCKを再生する。識別回路75は、クロック再生回路74により再生された再生クロックCLOCKを用いて、データ信号DATAの識別を行いデータを再生する。例えば、識別回路75は、再生クロックCLOCKに基づくサンプリングクロックでデータ信号DATAをサンプリングしてデータを再生する。
【0036】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明の諸態様を付記として以下に示す。
【0037】
(付記1)
入力されるデータ信号からデータレートに対して1/2の周波数のクロックを再生するクロック再生回路であって、
前記データ信号と再生クロックとの位相を比較し、位相差を示す位相差信号を出力する位相比較回路と、
前記位相差信号に応じた電流を出力するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路が出力する電流を平滑化して制御電圧に変換するループフィルタと、
前記制御電圧に応じた周波数を有する第1の正弦波クロック、及び前記第1の正弦波クロックに対して90度の位相差を有する第2の正弦波クロックを生成する発振回路と、
前記第1の正弦波クロック及び前記第2の正弦波クロックのうち、前記データ信号の遷移時において振幅中心との電圧差が大きいクロックを前記再生クロックとして選択し出力するクロックセレクタとを有することを特徴とするクロック再生回路。
(付記2)
前記クロックセレクタは、
前記データ信号の遷移時に、前記第1の正弦波クロックの電圧と前記第2の正弦波クロックの電圧とを比較し、振幅中心との電圧差が大きいクロックを示す選択制御信号を出力する選択制御回路と、
前記選択制御信号に応じて、前記第1の正弦波クロック又は前記第2の正弦波クロックを選択し出力する選択回路とを有することを特徴とする付記1記載のクロック再生回路。
(付記3)
前記選択制御回路は、
前記第1の正弦波クロックの電圧と前記第2の正弦波クロックの電圧とを比較する比較部と、
前記再生クロックの信号レベルを検出する検出部とを有することを特徴とする付記2記載のクロック再生回路。
(付記4)
前記選択制御回路は、
前記第1の正弦波クロックの電圧と前記第2の正弦波クロックの電圧とを比較するコンパレータと、
前記コンパレータの出力を前記データ信号のエッジでサンプルする第1のフリップフロップと、
前記再生クロックを前記データ信号のエッジでサンプルする第2のフリップフロップと、
前記第1のフリップフロップの出力及び前記第2のフリップフロップの出力を排他的論理和演算し、演算結果を前記選択制御信号として出力する演算回路とを有することを特徴とする付記2記載のクロック再生回路。
(付記5)
入力されるデータ信号からデータレートに対して1/2の周波数のクロック及びデータを再生するクロックデータ再生回路であって、
前記データ信号から再生クロックを再生するクロック再生回路と、
前記クロック再生回路により再生された再生クロックを用いて前記データ信号の識別を行いデータを再生する識別回路とを有し、
前記クロック再生回路は、
前記データ信号と再生クロックとの位相を比較し、位相差を示す位相差信号を出力する位相比較回路と、
前記位相差信号に応じた電流を出力するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路が出力する電流を平滑化して制御電圧に変換するループフィルタと、
前記制御電圧に応じた周波数を有する第1の正弦波クロック、及び前記第1の正弦波クロックに対して90度の位相差を有する第2の正弦波クロックを生成する発振回路と、
前記第1の正弦波クロック及び前記第2の正弦波クロックのうち、前記データ信号の遷移時において振幅中心との電圧差が大きいクロックを前記再生クロックとして選択し出力するクロックセレクタとを有することを特徴とするクロックデータ再生回路。
(付記6)
前記クロックデータ再生回路は、
前記データ信号が入力されていないときにオフ状態となり、
前記オフ状態で前記データ信号が入力されると動作状態に復帰することを特徴とする付記5記載のクロックデータ再生回路。
【符号の説明】
【0038】
10 クロック再生回路
11 位相比較回路
12 チャージポンプ回路
13 ループフィルタ
14 電圧制御発振回路
15 クロックセレクタ
16 クロック選択制御回路
17 選択回路
37、38 フリップフロップ
39 コンパレータ
40 排他的論理和演算回路(EXOR回路)
73 クロックデータ再生(CDR)回路
74 クロック再生回路
75 識別回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7