特許第6024511号(P6024511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6024511-車体構造 図000002
  • 特許6024511-車体構造 図000003
  • 特許6024511-車体構造 図000004
  • 特許6024511-車体構造 図000005
  • 特許6024511-車体構造 図000006
  • 特許6024511-車体構造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024511
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/24 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   B60R19/24 D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-34411(P2013-34411)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-162332(P2014-162332A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 寿也
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−230607(JP,A)
【文献】 特開2012−162167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側面を構成する側面パネルと、車両前面または車両後面の下部から該側面パネルの前端または後端にわたって取り付けられるバンパーと、該側面パネルと該バンパーとを接続するバンパーホルダーとを備える車体構造であって、
前記側面パネルは、その前端または後端にて、
前記バンパーとの見切りを形成する端縁であって、車両前後方向での中央から離れる方向に向かうにしたがって下方に傾斜する上方傾斜部と、該上方傾斜部の下端から折り返され車両前後方向での中央に向かうにしたがって下方に傾斜する下方傾斜部とからなる、車両側方から見て略L字形状の端縁と、
前記上方傾斜部から車幅方向内側に向かって延びる側面パネル側フランジと、
前記上方傾斜部の前記下方傾斜部との境目から始まる一部分にわたって該側面パネル側フランジの車幅方向内側の縁から車体側面に平行に延び前記バンパーホルダーの取付座面となる延長座面部とを有し、
前記バンパーは、前記側面パネルに取り付けられる側の端縁から車幅方向内側に向かって延び前記側面パネル側フランジと対面するバンパー側フランジを有し、
前記バンパーホルダーは、
車両側方から見て前記延長座面部と重なる領域に取り付けられた被取付部と、
前記被取付部から前記延長座面部を逸脱して前記見切りを形成する端縁の上端近傍まで延びる延伸部と、
前記延伸部の先端に設けられ前記側面パネル側フランジと前記バンパー側フランジとを車幅方向内側から挟み込む挟持部とを有することを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記挟持部は、車幅方向外側が開口した溝を有し、該溝内に前記側面パネル側フランジと前記バンパー側フランジが配置されることによりそれらを挟み込むことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記バンパーホルダーは、
前記延長座面部より上方の領域にて前記側面パネル側フランジと対向する面から車両前後方向での中央に向かって立設し更に車幅方向外側に向かって屈曲して延びる略L字形状であり、前記側面パネルに前記バンパーを取り付けた際に該車幅方向外側に向かって延びる部位が該側面パネル側フランジと前記バンパー側フランジとの間に配置される爪部と、
前記側面パネル側フランジと対向する面と前記爪部の車幅方向外側に向かって延びる部位との間に掛け渡される壁部とを更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側面を構成する側面パネルと、車両前面または車両後面の下部から側面パネルの前端または後端にわたって取り付けられるバンパーと、側面パネルとバンパーとを接続するバンパーホルダーとを備える車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体では、左右それぞれの側面(右側面および左側面)を構成する側面パネルの前端や後端に、車体前面や車体後面を構成するバンパーが取り付けられる。これらの取付にバンパーホルダー等の取付部材を用いることは従来から行われていて、例えば特許文献1では、車体の側方前部に設けられるフロントフェンダ(フェンダパネルとも称される)と、車体の前方に設けられるバンパフェース(フロントバンパとも称される)とを取付部材であるバンパスペーサによって連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−091655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バンパーは、車幅方向に長い部材であるため重量が重い。このため、特許文献1のようにバンパスペーサ(取付部材)の中央部や下部をフロントフェンダ(フェンダパネル)に固定しただけでは、すなわちバンパスペーサの上部がフロントフェンダに取り付けられてないと、重力によって垂れ下がろうとするバンパーをバンパスペーサが支えきれず、バンパーとフロントフェンダとの見切り(境目)に隙間が生じてしまう。
【0005】
バンパーの垂れ下がり、ひいては見切りの隙間を防ぐためには、特許文献1においてバンパスペーサが取り付けられているフェンダ側延長部をバンパスペーサの上端近傍あたりまで上方に延長し、そこでバンパスペーサの上部を固定することが有効である。しかしながら、意匠上の都合であったり、ヘッドランプ等の他の部材も当然にして配置されたりするため、すべての車体においてそれが可能なわけではない。したがって、特許文献1はいまだ改善の余地がある。
【0006】
また特許文献1ではバンパスペーサ(取付部材)をフロントフェンダに取り付ける場合(特許文献1の図4参照)、ネジを回転させながらネジ穴に螺合する。このとき、時計回りに回転させて締めるネジであると、特許文献1の図4の構成ではバンパスペーサにも時計回りに回転させる力が作用し、その力によってネジ止め時にバンパスペーサが位置ずれしてしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、側面パネルとバンパーとの見切りにおける隙間の発生を防ぎ、更にそれらを接続する取付部材であるバンパーホルダーを側面パネルに取り付ける際の位置ずれを防ぐことが可能な車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体構造の代表的な構成は、車体側面を構成する側面パネルと、車両前面または車両後面の下部から側面パネルの前端または後端にわたって取り付けられるバンパーと、側面パネルとバンパーとを接続するバンパーホルダーとを備える車体構造であって、側面パネルは、その前端または後端にて、バンパーとの見切りを形成する端縁であって、車両前後方向での中央から離れる方向に向かうにしたがって下方に傾斜する上方傾斜部と、上方傾斜部の下端から折り返され車両前後方向での中央に向かうにしたがって下方に傾斜する下方傾斜部とからなる、車両側方から見て略L字形状の端縁と、上方傾斜部から車幅方向内側に向かって延びる側面パネル側フランジと、上方傾斜部の下方傾斜部との境目から始まる一部分にわたって側面パネル側フランジの車幅方向内側の縁から車体側面に平行に延びバンパーホルダーの取付座面となる延長座面部とを有し、バンパーは、側面パネルに取り付けられる側の端縁から車幅方向内側に向かって延び側面パネル側フランジと対面するバンパー側フランジを有し、バンパーホルダーは、車両側方から見て延長座面部と重なる領域に取り付けられた被取付部と、被取付部から延長座面部を逸脱して見切りを形成する端縁の上端近傍まで延びる延伸部と、延伸部の先端に設けられ側面パネル側フランジとバンパー側フランジとを車幅方向内側から挟み込む挟持部とを有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、バンパー側フランジが、バンパーホルダーの延伸部の先端、すなわち側面パネルとバンパーとの見切りの上端近傍に配置される挟持部に挟み込まれることによって側面パネルフランジに固定される。これにより、側面パネルとバンパーとが見切りの上端において固定されるため、重力によるバンパーの垂れ下がりが防がれ、それに起因する側面パネルとバンパーとの見切りにおける隙間の発生を防止することができる。このように本発明では、バンパーホルダーの上部を側面パネルに固定することなく上述した効果が得られるため、意匠上の都合や他の部材の配置との兼ね合いによりバンパーホルダーの上部を固定する面を側面パネルに設けられない車種であっても適用可能である。また上記構成によれば、挟持部によってバンパーホルダーの上端が側面パネルに引っ掛かった状態になる。このため、それらをネジ止めによって固定する際にバンパーホルダーを側面パネルから離れる方向に移動させる力がかかっても位置ずれが生じることがない。
【0010】
上記挟持部は、車幅方向外側が開口した溝を有し、溝内に側面パネル側フランジとバンパー側フランジが配置されることによりそれらを挟み込むとよい。このように単純な形状によって上述した効果を得ることができるため、バンパーホルダーの金型の構造が複雑化することがない。
【0011】
上記バンパーホルダーは、延長座面部より上方の領域にて側面パネル側フランジと対向する面から車両前後方向での中央に向かって立設し更に車幅方向外側に向かって屈曲して延びる略L字形状であり、側面パネルにバンパーを取り付けた際に車幅方向外側に向かって延びる部位が側面パネル側フランジとバンパー側フランジとの間に配置される爪部と、側面パネル側フランジと対向する面と爪部の車幅方向外側に向かって延びる部位との間に掛け渡される壁部とを更に有するとよい。
【0012】
かかる構成によれば、爪部がスペーサとして機能し、側面パネル側フランジとバンパー側フランジとの干渉が防がれる。そして、側面パネル側フランジと対向する面と前記爪部の車幅方向外側に向かって延びる部位、すなわち爪部内に掛け渡された壁部は、爪部内において突っ張り棒として機能するため、爪部の剛性が向上し、爪部が潰れにくくなる。したがって、バンパーホルダーをネジ止めによって側面パネルに固定する際に、バンパーホルダーを側面パネル側に移動させる力がかかっても、爪部がパネル側フランジに押し付けられることで移動が規制されるため位置ずれが生じることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、側面パネルとバンパーとの見切りにおける隙間の発生を防ぎ、更にそれらを接続する取付部材であるバンパーホルダーを側面パネルに取り付ける際の位置ずれを防ぐことが可能な車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかる車体構造の斜視図である。
図2図1の拡大図である。
図3図1の拡大図である。
図4図3(a)の側面図および拡大斜視図である。
図5図3(a)に示すバンパーホルダーと反対側に取り付けられているバンパーホルダーの側面図および拡大斜視図である。
図6図4(b)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかる車体構造100の斜視図である。図2および図3は、図1の拡大図である。図2図1の車体構造100を右側から観察した状態を図示している。図3(a)は、図2の車体構造100のフロントバンパー120を透過させた状態の拡大図であり、図3(b)は図3(a)に示すフェンダパネル110からバンパーホルダー130を取り外した状態を図示している。なお、本実施形態の車体構造100は左右対称に構成されているため、以下の説明では、特にことわりがない限り、車体構造100の右側の構成を例示して説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の車体構造100では、車体前部において車体右側の側面を構成する側面パネルであるフロントフェンダパネル(以下、フェンダパネル110と称する)の前側に、車両前面の下部からフェンダパネル110の前端にわたって取り付けられて車体前面を構成するバンパーであるフロントバンパー120が取り付けられている。本実施形態ではこれらのフェンダパネル110およびフロントバンパー120は、後述するバンパーホルダー130によって接続される。
【0018】
図2に示すように、フェンダパネル110とフロントバンパー120との見切り102は略L字形状である。このため、図3(b)に示すように、フェンダパネル110は、その前端にてフロントバンパー120との見切りを形成する端縁112が略L字形状になっている。この端縁112は、車両側方から見て、車両前後方向での中央から離れる方向すなわち車両前方に向かうにしたがって下方に傾斜する上方傾斜部112aと、上方傾斜部の下端から折り返され車両前後方向での中央すなわち車両後方に向かうにしたがって下方に傾斜する下方傾斜部112bとからなる。
【0019】
図3(b)に示すように、側面パネルである110では、その端縁112において、上方傾斜部112aから車幅方向内側に向かって延びる側面パネル側フランジであるフェンダ側上フランジ114aと、それと連続して下方傾斜部112bから車幅方向内側に向かって延びる側面パネル側フランジであるフェンダ側下フランジ114bとが形成されている。これらのフランジにより、フェンダパネル110においてその形状を維持するための剛性が確保される。
【0020】
また側面パネルであるフェンダパネル110では、上方傾斜部112aと下方傾斜部112bとの境目から始まる一部分においてフェンダ側上フランジ114aが車幅方向内側に向かって張り出して、幅広になっている。そして、フェンダ側上フランジ114aのその幅が広くなっている領域にわたって、フェンダ側上フランジ114aの車幅方向内側の縁から車体側面に平行に車両前側に向かって延び、後述するバンパーホルダー130の取付座面となる延長座面部116が設けられている。延長座面部116には、バンパーホルダー130をボルト締めによってフェンダパネル110に締結する際にボルト160を挿通されるボルト穴116aが形成されている。
【0021】
また本実施形態では、ボルト穴116aが設けられている領域のフェンダ側上フランジ114a、すなわちフェンダ側上フランジ114aの幅が広くなっている領域にネジ穴115aが形成されている。更に本実施形態では、フェンダ側下フランジ114bにおいてもその下端近傍を車幅方向内側に向かって張り出させて下側固定部118を形成し、そこにもネジ穴115bを形成している。これにより、後述するバンパーホルダー130をより確実にフェンダパネル110に固定することが可能となる。
【0022】
なお、上記構成は例示に過ぎず、下側固定部118が必要ではない場合は、それを設けない構成としてもよい。また延長座面部116が設けられる領域のフェンダ側上フランジ114aの幅は、そこに設置されるバンパーホルダー130の幅に応じて適宜変更可能である。
【0023】
図3(b)に示すフェンダパネル110にバンパーホルダー130を配置すると図3(a)に示す状態となる。図3(a)に示すように、本実施形態のバンパーホルダー130は、フェンダパネル110の略L字形状の端縁112に沿うよう、端縁112と同様に略L字形状の形状を有する。
【0024】
図4は、図3(a)の側面図および拡大斜視図である。図4(a)は、図3(a)に示す車体構造100を右側から観察した側面図であり、図4(b)は、図3(a)に示すバンパーホルダー130の上端近傍の拡大斜視図である。図5は、図3(a)に示すバンパーホルダー130と反対側に取り付けられているバンパーホルダー(以下、左側バンパーホルダー130aと称する)の側面図および拡大斜視図である。図5(a)は、左側バンパーホルダー130aを左側から観察した側面図であり、図5(b)は、図5(a)に示す左側バンパーホルダー130aの上端近傍の拡大斜視図である。図6は、図4(b)の断面図である。図6(a)は図4(b)のA−A断面図であり、図6(b)は図4(b)のB−B断面図である。なお、理解を容易にするために、図4および5では、図3(a)と同様に、車体構造100のフロントバンパー120(図2参照)を透過させた状態で図示し、図6では、図4(b)において図示されていないフロントバンパー120の断面を図示している。
【0025】
図4(a)に示すように、バンパーホルダー130は、車両側方から見て延長座面部116と重なる領域に、それに取り付けられる部位である被取付部132を有する。この被取付部132にボルト160をねじ込んでボルト穴116a(図3(b)参照)に挿通させることにより、バンパーホルダー130がフェンダパネル110の延長座面部116に固定される。そして、ネジ穴115a・115bにおいてネジ止め(ネジは不図示)することにより、バンパーホルダー130がフェンダパネル110に取り付けられる。
【0026】
本実施形態の特徴として、バンパーホルダー130は、図4(a)に示すように、被取付部132から延長座面部116を逸脱してフロントバンパー120との見切りを形成する端縁112の上端近傍まで延びる延伸部134を有し、図4(b)に示すように、その延伸部134の先端に挟持部136が設けられている。図6(a)に示すように、フロントバンパー120は、フェンダパネル110に取り付けられる側の端縁から車幅方向内側に向かって延びてフェンダ側上フランジ114aと対面するバンパー側フランジ122を有し、挟持部136は、そのバンパー側フランジ122とフェンダ側上フランジ114aとを車幅方向内側から挟み込む。
【0027】
特に本実施形態では、挟持部136は、車幅方向外側が開口した溝136aを有し、その溝136a内にフェンダ側上フランジ114aとバンパー側フランジ122が配置されることによりそれらを挟み込んでいる。このような単純な形状とすることにより、フェンダ側上フランジ114aとバンパー側フランジ122とを好適に挟持しながらも、製造時の歩留まりの低下やバンパーホルダーの金型構造の複雑化を回避することができる。
【0028】
上述したように挟持部136によってフェンダ側上フランジ114aとバンパー側フランジ122を挟み込むことにより、図6(a)に示すように、バンパーホルダー130がフェンダ側上フランジ114aに引っ掛けられ、バンパー側フランジ122が挟持部136に引っ掛けられた状態となる。したがって、重力によって矢印A方向に移動しようとする力(垂れ下がろうとする力)がフロントバンパー120にかかり、その力によってバンパーホルダー130も矢印B方向に移動しようとしても、それらの動きはフェンダパネル110によって規制される。
【0029】
このように本実施形態の車体構造100によれば、ネジやボルト等によるフェンダパネル110の延長座面部116へのバンパーホルダー130の上部の取り付けを必要とすることなく、フェンダパネル110とフロントバンパー120との見切りの上端近傍においてそれらがバンパーホルダー130を介して固定される。したがって、意匠上の都合や他の部材の配置との兼ね合いによりフェンダパネル110の延長座面部116をバンパーホルダー130の上部まで延長できない車種であっても、重力によるフロントバンパー120の垂れ下がりが防がれ、それに起因するフェンダパネル110とフロントバンパー120との見切りにおける隙間の発生を防止することが可能である。
【0030】
上述したようにボルト160によってバンパーホルダー130をフェンダパネル110に取り付ける際、締付時に時計回りに回転させるボルト160であると、ボルト160には図4(a)の矢印C方向に回転する力がかかる。この力によってバンパーホルダー130が矢印D方向、すなわちフェンダパネル110から離れる方向に移動しようとすることがボルト締め時の位置ずれを引き起こしていた。しかし、本実施形態の車体構造100であれば、上述したように挟持部136によってバンパーホルダー130の上端がフェンダパネル110のフェンダ側上フランジ114aに引っ掛かっているため(図6(a)参照)、バンパーホルダー130の動きが規制される。したがって、バンパーホルダー130をフェンダパネル110にボルト締めする際に、フェンダパネル110から離れる方向に作用する力がバンパーホルダー130にかかってもその位置ずれが生じることがない。
【0031】
また本実施形態では、図4(a)および(b)に示すように、バンパーホルダー130は爪部140a・140bを有している。これらのうち爪部140bは、図6(b)に示すように、バンパーホルダー130においてフェンダパネル110のフェンダ側上フランジ114aと対向する面(以下、対向面138と称する)から車両前後方向での中央(本実施形態においては車両後方)に向かって立設する立設部142と、立設部142の車両前後方向での中央側(本実施形態においては車両後方側)の縁から車幅方向外側に向かって屈曲して更に延びるスペーサ部144とからなる略L字形状である。
【0032】
上記のスペーサ部144は、図6(b)に示すように、フェンダパネル110にフロントバンパー120を取り付けた際に、車幅方向外側に向かって延びる部位であるスペーサ部144がフェンダ側上フランジ114aとバンパー側フランジ122との間に配置される。これにより、爪部140bのスペーサ部144がスペーサとして機能し、フェンダ側上フランジ114aとバンパー側フランジ122との干渉を防止することができる。
【0033】
更に本実施形態では、フェンダパネル110の延長座面部116より上方の領域に配置される爪部140aに壁部146を設けている。詳細には、図4(b)に示すように、爪部140aでは、爪部140bと同様に立設部142とスペーサ部144(立設部142については図6(b)参照)が設けられているが、それらに加えて、フェンダ側上フランジ114aと対向する対向面138とスペーサ部144(爪部140aにおいて車幅方向外側に向かって延びる部位)との間に壁部146が掛け渡されている。
【0034】
図5(a)は、フェンダパネル110の左右反対側に配置され、車体前部において車体左側の側面を構成する側面パネルであるフロントフェンダパネル(以下、左側フェンダパネル110aと称する)と、それに取り付けられている左側バンパーホルダー130aとを示している。図5(b)に示すように、左側バンパーホルダーにおいても、バンパーホルダー130と左右対称に爪部140a・140bが設けられていて、延長座面部116より上方の領域に配置される140aには壁部146が掛け渡されている。
【0035】
図5(b)に示すように、ボルト160によって左側バンパーホルダー130aを左側フェンダパネル110aに取り付ける際、締付時に時計回りに回転させるボルト160では矢印E方向に回転する力がかかる。すると、この力によって左側バンパーホルダー130aが矢印G方向、すなわち左側フェンダパネル110aに押し付けられる方向に移動しようとし、このことがボルト締め時の位置ずれを誘引していた。しかし、本実施形態の車体構造100であれば、爪部140a内に掛け渡された壁部146がそこにおいて突っ張り棒となるため、爪部140aの剛性が向上し、爪部140aの潰れが生じにくくなる。これにより、左側バンパーホルダー130aにそれを左側フェンダパネル110a側に移動させる力によって爪部140aが左フェンダ側上フランジ114cに押し付けられても爪部140aがその形状を保つことができるため、左側バンパーホルダー130aの移動が規制され、その位置ずれを防ぐことが可能となる。
【0036】
上記説明したように、本実施形態にかかる車体構造100によれば、フェンダパネル110とフロントバンパー120との見切りの上端近傍においてそれらがバンパーホルダー130を介して固定されることにより、ネジやボルト等によるフェンダパネル110の延長座面部116へのバンパーホルダー130の上部の取り付けを必要とすることなく、重力によるフロントバンパー120の垂れ下がり、ひいてはそれに起因するフェンダパネル110とフロントバンパー120との見切りにおける隙間の発生を防止することができる。したがって、意匠上の都合や他の部材の配置との兼ね合いによりフェンダパネル110の延長座面部116をバンパーホルダー130の上部まで延長できない車種にも適用可能である。またバンパーホルダー130と、壁部146が設けられた爪部140aとにより、フェンダパネル110や左側フェンダパネル110aにボルト締めによって取り付ける際のバンパーホルダー130や左側バンパーホルダー130aの位置ずれを防止することが可能となる。
【0037】
なお、上記説明した実施形態では、車体側面を構成する側面パネルとしてフェンダパネル110の前端にフロントバンパー120を取り付ける構成、すなわち車体前部の構成を例示して説明したが、これに限定するものではない。本発明は、例えば車体後部の側面を構成する側面パネルであるクォータパネル等に、車両後面の下部からその側面パネルの後端にわたって車体後面を構成するリアバンパーを取り付ける場合にも適用可能である。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、車体側面を構成する側面パネルと、車両前面または車両後面の下部から側面パネルの前端または後端にわたって取り付けられるバンパーと、側面パネルとバンパーとを接続するバンパーホルダーとを備える車体構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100…車体構造、110…フェンダパネル、110a…左側フェンダパネル、112…端縁、112a…上方傾斜部、112b…下方傾斜部、114a…フェンダ側上フランジ、114b…フェンダ側下フランジ、114c…左フェンダ側上フランジ、115a…ネジ穴、115b…ネジ穴、116…延長座面部、116a…ボルト穴、118…下側固定部、120…フロントバンパー、122…バンパー側フランジ、130…バンパーホルダー、130a…左側バンパーホルダー、132…被取付部、134…延伸部、136…挟持部、136a…溝、138…対向面、140a…爪部、140b…爪部、142…立設部、144…スペーサ部、146…壁部、160…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6