特許第6024517号(P6024517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024517
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】飲料抽出装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/36 20060101AFI20161107BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   A47J31/36 110
   A47J31/06 310
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-40341(P2013-40341)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-168494(P2014-168494A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】江利川 肇
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−161470(JP,A)
【文献】 実開昭55−013538(JP,U)
【文献】 実開昭61−118526(JP,U)
【文献】 実開昭55−011191(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0285997(US,A1)
【文献】 特開平08−334397(JP,A)
【文献】 特表2008−505667(JP,A)
【文献】 特開2011−083419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/36
A47J 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料および湯水を用いて飲料を抽出するための飲料抽出装置であって、
上面および下面が開放し、内部において飲料の抽出を行うための抽出容器と、
フィルタを上面に有し、前記抽出容器の下方において、前記抽出容器の下面をシールするシール位置と、該シール位置よりも下位でかつ前記抽出容器の下面を開放する開放位置との間で昇降自在に設けられ、前記シール位置に位置するときには前記抽出容器内で飲料が抽出され、前記抽出容器から搬出される飲料が通過する際には、該飲料を前記フィルタによってろ過する飲料ろ過部と、
を備えた飲料抽出装置において、
前記原料および湯水を受け入れて事前攪拌混合させた原料混合体を生成し、この原料混合体を、前記抽出容器の上面開口から供給する事前混合装置を、さらに備え、
前記事前混合装置は、両端面を閉塞した円筒状に形成され、筒本体には前記原料を受け入れるとともに、前記原料混合体を前記抽出容器に排出する開口が設けられるとともに、前記閉塞された一方の端面には前記供給された原料に前記湯水を噴射する湯水ノズルが設けられ、
前記事前混合装置で前記原料混合体を生成して前記抽出容器に供給するときには、前記事前混合装置の開口を上面に配置させて前記開口から前記原料を受け入れ、その後、前記事前混合装置を回転させることで前記開口を下面に配置させて前記受け入れた原料に前記湯水ノズルから前記湯水を噴射して事前攪拌混合させた前記原料混合体を前記開口から前記抽出容器に供給することを特徴とする飲料抽出装置。
【請求項2】
前記湯水ノズルから噴射された前記湯水で、前記事前混合装置の内壁面から前記原料を前記抽出容器に洗い流すことを特徴とする請求項1に記載の飲料抽出装置。
【請求項3】
前記事前混合装置は、前記抽出容器内に供給された前記原料混合体から発生する湯気を前記原料の粉砕装置から遮断して前記原料粉砕装置を保護することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飲料抽出装置。
【請求項4】
前記事前混合装置は、前記飲料ろ過部を昇降させるろ過部昇降機構と連動して回転動作することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の飲料抽出装置。
【請求項5】
前記フィルタは、飲料をろ過するろ過孔の上側をディンプル形状とし、該ディンプルに湯水膜を構成させることで、前記原料混合体から飲料抽出後の抽出滓廃棄スクレーパ摺動時の摺動抵抗を低減させることを特徴とする請求項1に記載の飲料抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ式飲料自動販売機や飲料ディスペンサなどに内蔵され、コーヒー挽き豆や粉砕茶葉などの原料と湯水とを用いてコーヒーや茶系飲料などを抽出する飲料抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の飲料抽出装置として、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に開示されたものが知られている。この飲料抽出装置は、カップ式飲料自動販売機などに適用され、所定の原料および湯を用い、コーヒーなどの飲料を抽出するものであり、上面および下面が開放した円筒状のシリンダと、上面に飲料をろ過するためのフィルタを有し、シリンダの下方に昇降自在に設けられたフィルタブロックと、飲料の抽出後にフィルタ上に残留した原料である抽出滓を排出するためのスクレーパなどを備えている。
【0003】
この飲料抽出装置では、飲料の抽出時には、まず、フィルタブロックが上昇し、シリンダの下面をシールする。次いで、原料および湯がシリンダに供給され、シリンダ内で飲料が抽出される。この抽出された飲料は、フィルタブロックのフィルタによってろ過されながら、フィルタブロックの内部を通過し、外部に搬出される。次いで、フィルタブロックが下降することによって、シリンダの下面が開放され、フィルタブロックのフィルタ上に抽出滓が残留する。その後、スクレーパがフィルタブロック上を摺動することにより、フィルタ上の抽出滓を掻き取り、廃棄するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−171382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した飲料抽出装置では、エアポンプを所定時間(例えば、数秒)作動させることにより、空気がフィルタブロックに送られる。このエアポンプから送られた空気は、フィルタブロックのフィルタを通過してシリンダ内の原料および湯を強制攪拌するようにしている。そして、シリンダ内で強制攪拌される湯から発生した湯気がコーヒー豆粉砕装置に侵入すると原料通路の閉塞を生じさせて飲料の販売が不能になるため、専用の湯気排気装置を設け、排気ダクトを介して、強制的に湯気を外部に排出するようにしている。
【0006】
このように、従来、飲料抽出装置では、シリンダに供給された原料と湯は成行きで混合されるため、エアポンプで送出してフィルタブロックのフィルタから送り込んだ空気で原料と湯を強制攪拌させることで抽出飲料の品質のバラツキを低減するようにしていた。
【0007】
しかしながら、コーヒー豆などの原料が粉砕される際に発生した微粉末が浮いたり、コーヒー豆の油成分や粉砕粒子により粉が塊状態で浮き上がったり、粉の塊の水弾きにより、原料と湯の混合状態が安定しないため、飲料抽出装置で抽出した飲料の品質が不安定であった。この抽出した飲料の品質を安定させるためには原料と湯を長時間強制攪拌させることが必要となり、短時間に高温の品質の安定した飲料を提供することを要求されるカップ式飲料自動販売機やコーヒーサーバーなどの飲料ディスペンサでは、この、短時間に高温の品質の安定した飲料を提供することが課題となっていた。
【0008】
さらに、シリンダ内で強制攪拌される湯から発生した湯気を専用の湯気排気装置を設けて排気ダクトから外部に強制的に排出するようにしているため、飲料抽出装置が大型化する要因となり、また、製造コストを上昇させることが課題となっていた。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、小型、低コストで、短時間に品質の安定した飲料を抽出できる飲料抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る飲料抽出装置は、原料および湯水を用いて飲料を抽出するための飲料抽出装置であって、
上面および下面が開放し、内部において飲料の抽出を行うための抽出容器と、
フィルタを上面に有し、前記抽出容器の下方において、前記抽出容器の下面をシールするシール位置と、該シール位置よりも下位でかつ前記抽出容器の下面を開放する開放位置との間で昇降自在に設けられ、前記シール位置に位置するときには前記抽出容器内で飲料が抽出され、前記抽出容器から搬出される飲料が通過する際には、該飲料を前記フィルタによってろ過する飲料ろ過部と、
を備えた飲料抽出装置において、
前記原料および湯水を受け入れて事前攪拌混合させた原料混合体を生成し、この原料混合体を、前記抽出容器の上面開口から供給する事前混合装置を、さらに備え、
前記事前混合装置は、両端面を閉塞した円筒状に形成され、筒本体には前記原料を受け入れるとともに、前記原料混合体を前記抽出容器に排出する開口が設けられるとともに、前記閉塞された一方の端面には前記供給された原料に前記湯水を噴射する湯水ノズルが設けられ、
前記事前混合装置で前記原料混合体を生成して前記抽出容器に供給するときには、前記事前混合装置の開口を上面に配置させて前記開口から前記原料を受け入れ、その後、前記事前混合装置を回転させることで前記開口を下面に配置させて前記受け入れた原料に前記湯水ノズルから前記湯水を噴射して事前攪拌混合させた前記原料混合体を前記開口から前記抽出容器に供給することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る飲料抽出装置は、上述した請求項1において、前記湯水ノズルから噴射された前記湯水で、前記事前混合装置の内壁面から前記原料を前記抽出容器に洗い流すことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る飲料抽出装置は、上述した請求項1または請求項2において、前記事前混合装置は、前記抽出容器内に供給された前記原料混合体から発生する湯気を前記原料の粉砕装置から遮断して前記原料粉砕装置を保護することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る飲料抽出装置は、上述した請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、前記事前混合装置は、前記飲料ろ過部を昇降させるろ過部昇降機構と連動して回転動作することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項5に係る飲料抽出装置は、上述した請求項1において、前記フィルタは、飲料をろ過するろ過孔の上側をディンプル形状とし、該ディンプルに湯水膜を構成させることで、前記原料混合体から飲料抽出後の抽出滓廃棄スクレーパ摺動時の摺動抵抗を低減させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、原料および湯水を用いて飲料を抽出するための飲料抽出装置であって、上面および下面が開放し、内部において飲料の抽出を行うための抽出容器と、フィルタを上面に有し、抽出容器の下方において、抽出容器の下面をシールするシール位置と、該シール位置よりも下位でかつ抽出容器の下面を開放する開放位置との間で昇降自在に設けられ、シール位置に位置するときには抽出容器内で飲料が抽出され、抽出容器から搬出される飲料が通過する際には、該飲料をフィルタによってろ過する飲料ろ過部と、を備えた飲料抽出装置において、原料および湯水を受け入れて事前攪拌混合させた原料混合体を生成し、この原料混合体を、抽出容器の上面開口から供給する事前混合装置を、さらに備え、事前混合装置は、両端面を閉塞した円筒状に形成され、筒本体には原料を受け入れるとともに、原料混合体を抽出容器に排出する開口が設けられるとともに、閉塞された一方の端面には供給された原料に湯水を噴射する湯水ノズルが設けられ、事前混合装置で原料混合体を生成して抽出容器に供給するときには、事前混合装置の開口を上面に配置させて開口から原料を受け入れ、その後、事前混合装置を回転させることで開口を下面に配置させて受け入れた原料に湯水ノズルから湯水を噴射して事前攪拌混合させた原料混合体を開口から抽出容器に供給することにより、抽出容器で攪拌混合を行う前に事前混合装置で原料と湯を強制的に事前攪拌混合して原料と湯の混合を効率よく行い、完全に馴染んだ原料混合体を、湯の供給時間と同じ時間で抽出容器に投入することができる。これによって、抽出効率を向上させ、原料や湯温による攪拌混合度合いのバラツキをなくして安定した抽出を実現し、小型、低コストで、短時間に品質の安定した飲料を抽出できる飲料抽出装置を提供することが可能となる。
【0016】
また、請求項2の発明によれば、湯水ノズルから噴射された湯水で、事前混合装置の内壁面から原料を抽出容器に洗い流すことにより、事前混合装置内壁面を常に清潔に保つことができる。
【0017】
また、請求項3の発明によれば、事前混合装置は、抽出容器内に供給された原料混合体から発生する湯気を原料の粉砕装置から遮断して原料粉砕装置を保護することにより、抽出容器内で原料混合体から発生する湯気が原料粉砕装置の原料通路まで上昇して侵入することがなくなるので、原料粉砕装置の原料通路が閉塞することを保護して飲料の販売が不能になることを防ぐことができる。これにより、専用の湯気排気装置を設け、強制的に排気ダクトを介して湯気を外部に排出する必要がなくなるので、高価で場所をとる専用の湯気排気装置が不要となり、小型化、および販売耐久性を実現し、低コストで、短時間に品質の安定した飲料を抽出できる飲料抽出装置を提供することができる。
【0018】
また、請求項4の発明によれば、事前混合装置は、飲料ろ過部を昇降させるろ過部昇降機構と連動して回転動作することにより、小型、低コストの飲料抽出装置を提供することができる。
【0019】
また、請求項5の発明によれば、フィルタは、飲料をろ過するろ過孔の上側をディンプル形状とし、該ディンプルに湯水膜を構成させることで、原料混合体から飲料抽出後の抽出滓廃棄スクレーパ摺動時の摺動抵抗を低減させることにより、スクレーパ摺動モータの小型化とスクレーパのコスト低減を図ることをでき、小型、低コストの飲料抽出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態である飲料抽出装置を備えたカップ式飲料自動販売機の内部構造を模式的に示す図である。
図2図1に示した飲料抽出装置を備えたカップ式飲料自動販売機の制御ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態である飲料抽出装置を示す外観斜視図である。
図4】本発明の実施の形態である飲料抽出装置の事前混合装置を内設した原料受け入れ部を示す外観斜視図である。
図5】本発明の実施の形態である飲料抽出装置の事前混合装置を示す外観斜視図である。
図6】本発明の実施の形態である飲料抽出装置の事前混合装置を内設した原料受け入れ部を示す断面斜視図であり、(a)は事前混合装置の開口を下面に配置した図、(b)は事前混合装置の開口を上面に配置した図である。
図7図3に示した飲料抽出装置の待機位置および湯供給、原料と湯の事前攪拌混合位置を示す断面側面図である。
図8図3に示した飲料抽出装置の原料粉末受け入れ位置を示す断面側面図である。
図9図3に示した飲料抽出装置の抽出滓廃棄位置を示す断面側面図である。
図10図3に示した飲料抽出装置の飲料抽出部の待機位置および湯供給、原料と湯の事前攪拌混合位置を示す外観斜視図である。
図11図3に示した飲料抽出装置の飲料抽出部の原料粉末受け入れ位置を示す外観斜視図である。
図12図3に示した飲料抽出装置の飲料抽出部の抽出滓廃棄位置を示す外観斜視図である。
図13図3に示した飲料抽出装置の飲料抽出部の待機位置を示す斜め後面図である。
図14図3に示した飲料抽出装置の飲料抽出部の抽出滓廃棄位置を示す斜め後面図である。
図15】フィルタのろ過孔のディンプル形状を示す部分拡大図である。
図16】本発明の実施の形態である飲料抽出装置の飲料抽出工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る飲料抽出装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
この実施の形態の飲料抽出装置は、カップ式飲料自動販売機や飲料ディスペンサなどに内蔵され、コーヒー挽き豆や粉砕茶葉などの原料と湯水とを用いてコーヒーや茶系飲料などを抽出するものである。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態である飲料抽出装置を備えたカップ式飲料自動販売機の内部構造を模式的に示している。図に示すように、カップ式飲料自動販売機1は、コーヒー抽出装置(飲料抽出装置)2により、コーヒー挽き豆(原料)および湯(湯水)を用いてコーヒー(飲料)を抽出し、利用者に提供するものである。
【0023】
カップ式飲料自動販売機1は、コーヒー抽出装置2と、このコーヒー抽出装置2に、所定量のコーヒー挽き豆および湯をそれぞれ供給する原料供給装置3、給湯装置4、および、空気送出、抽出液吸引用のギアポンプ5を備えている。また、これらは、図2に示すように、制御部90によって制御される。
【0024】
原料供給装置3は、コーヒー豆を収容する原料キャニスタ(原料収容装置)3aと、原料キャニスタ3aから供給されたコーヒー豆を挽いてコーヒー挽き豆とするミル(原料粉砕装置)3bを備えている。コーヒー抽出時には、原料キャニスタ3aからミル3bに供給されたコーヒー豆は、ミル3bによって粉末状に挽かれ、そのコーヒー挽き豆(以下「原料」ともいう)がコーヒー抽出装置2に供給される。
【0025】
給湯装置4は、ヒータ(図示せず)により加熱された湯を貯留する温水タンク4aと、電磁弁で構成された湯弁4bとを備えており、コーヒー抽出時には、湯弁4bを開放することにより、温水タンク4aから所定量の湯が給湯管路4cを介してコーヒー抽出装置2に供給される。
【0026】
ギアポンプ5は、ポンプ5aが一方向に回転されると管路5bから空気を取り込み、この取り込んだ空気を管路5cに送出し、ポンプ5aが他方向に回転されると管路5cを介して吸引したコーヒーを管路5bから排出してカップなどの飲料容器に供給する働きをするポンプである。そして、ポンプ5aが一方向に回転されると、ポンプ5aが管路5bから取り込んだ空気を管路5cを介してコーヒー抽出装置2のフィルタブロック(飲料ろ過部)23からシリンダ22内に供給し、シリンダ22内に投入されたコーヒー挽き豆と湯の原料混合体を攪拌してコーヒーを抽出する。また、ポンプ5aが他方向に回転されると、シリンダ22内で抽出されたコーヒーが、フィルタブロック23のフィルタ24によってろ過され、フィルタブロック23の内部を通過し(以上、図7図10参照)、ギアポンプ5によって吸引されて管路5c、管路5bを介して外部に搬出されてカップなどの飲料容器に注がれてカップ式飲料自動販売機1の利用者に提供される。
【0027】
図2は、コーヒー抽出装置2を備えたカップ式飲料自動販売機1の制御を示すブロック図であり、カップ式飲料自動販売機1での飲料の抽出などを制御する制御部90は、中央処理装置としてのCPU91、CPU91の制御プログラムを格納するROM(リード・オンリー・メモリ)92、CPU91の制御に必要な各種のプログラムやデータを随時記憶するRAM(ランダム・アクセス・メモリ、例えば、原料キャニスタ3aがコーヒー豆を供給する時間や湯弁4bを開放する時間を記憶する)93、基準クロック発生部(図示せず)で発生するクロックをカウントして各種時刻を計時するタイマー94、カップ式飲料自動販売機1に備えられている各装置に通電する電力回路を有する通電部95から構成されている。
【0028】
また、制御部90には、カップ式飲料自動販売機1の各種設定データ(例えば、原料キャニスタ3aがコーヒー豆を供給する時間や湯弁4bを開放する時間)を入力するリモコン96や回転子35(図13図14参照)の回転角度を検知する回転子角度センサ97などが接続されている。
【0029】
そして、制御部90は、RAM93に記憶されている情報や回転子角度センサ97が出力する情報に基づいて、原料キャニスタ3a、ミル3bや湯弁4b、ギアポンプ5、回転子駆動モータ98などへの通電制御を行う。
【0030】
次に、コーヒー抽出装置2について詳述する。図3は本発明の実施の形態であるコーヒー抽出装置2を示す外観斜視図であり、図4は事前混合装置21を内設した原料受け入れ部43を示す外観斜視図であり、図5は事前混合装置21を示す外観斜視図であり、図6は事前混合装置21を内設した原料受け入れ部43を示す断面斜視図であり、(a)は事前混合装置21の開口21bを下面に配置した図、(b)は事前混合装置21の開口21bを上面に配置した図である。
【0031】
また、図7はコーヒー抽出装置2の待機位置および湯供給、原料と湯の事前攪拌混合位置を示す断面側面図であり、図8はコーヒー抽出装置2の原料粉末受け入れ位置を示す断面側面図であり、図9はコーヒー抽出装置2の抽出滓廃棄位置を示す断面側面図である。
【0032】
さらに、図10はコーヒー抽出装置2の待機位置および湯供給、原料と湯の事前攪拌混合位置を示す外観斜視図であり、図11はコーヒー抽出装置2の原料粉末受け入れ位置を示す外観斜視図であり、図12はコーヒー抽出装置2の抽出滓廃棄位置を示す外観斜視図である。
【0033】
また、図13はコーヒー抽出装置2の待機位置を示す斜め後面図であり、図14はコーヒー抽出装置2の抽出滓廃棄位置を示す斜め後面図である。
図に示すように、コーヒー抽出装置2は、コーヒーを抽出するための抽出ユニット20と、原料(コーヒー豆を挽いたコーヒー挽き豆や粉砕茶葉など)および湯を受け入れて事前攪拌混合させた原料混合体を生成し、この原料混合体をシリンダ22の上面開口22aから供給する事前混合装置21と、この事前混合装置21を回転動作させるとともにフィルタブロック(飲料ろ過部)23を昇降させる駆動ユニット(ろ過部昇降機構)30(図13図14参照)と、抽出ユニット20および駆動ユニット30が取り付けられるユニット本体40とで構成されている。そして、ユニット本体40には、右パネル41、左パネル42が設けられ、カップ式飲料自動販売機1筐体内に取り付けられる。
【0034】
抽出ユニット20は、原料と湯が事前攪拌混合されて事前混合装置21から供給された原料混合体から、その内部においてコーヒーの抽出を行うための上面および下面が開放しているシリンダ(抽出容器)22と、シリンダ22内のコーヒーをろ過しながら外部に搬出するフィルタブロック23とで構成されている。
【0035】
事前混合装置21は、円筒状に形成されている筒本体21aに原料供給装置3から供給される原料を受け入れるとともに、受け入れた原料と湯を事前攪拌混合させた原料混合体をシリンダ22に排出する開口21bが設けられるとともに、筒本体21aの開放端を閉塞する態様で取り付けられる筒蓋21cで両端面が閉塞されている。また、閉塞された筒本体21aの一方の端面には、筒本体21aと同軸に歯車21dが形成されるとともに、湯弁4bが開放されることにより温水タンク4aから給湯管路4cを介して供給された湯を原料供給装置3から開口21bを介して供給された原料に噴射する湯ノズル21eが設けられている。
【0036】
さらに、事前混合装置21は、原料シュート43aが設けられている原料受け入れ部43内に回転自在に内設され、事前混合装置21を回転自在に内設している原料受け入れ部43はユニット本体40に着脱自在に配設される。そして、後述するスライダ本体36が昇降することに伴って事前混合装置21は回転する。
【0037】
シリンダ22は、プラスチックから成り、上下方向に延びるとともに上面開口22aおよび下面開口22bが開放する円筒状に形成されている。また、シリンダ22の外周面には、シリンダ22をユニット本体40に着脱する際に使用されるガイド部22cが設けられている。
【0038】
フィルタブロック23は、コーヒーをろ過するための円形のフィルタ24と、このフィルタ24の周囲を囲むように設けられた幅広リング状のパッキン25と、フィルタ24でろ過されたコーヒーを受けるコーヒー受け部26とで構成されている。そして、コーヒー受け部26には、フィルタ24でろ過されたコーヒーを排出するための管路5cが接続され、ギアポンプ5によってコーヒー受け部26からコーヒーが吸引されて搬出され、カップなどの飲料容器に注がれて提供される。
【0039】
このフィルタ24は、シリンダ22の下面開口22b内径よりも一回り小さい薄板状の金属板からなり、飲料をろ過するろ過孔24aは、所定の径(例えば、20μm)を有する多数の細孔から形成されており、ろ過孔24aの上側には径が100μm程度で深さが5〜10μmのディンプル(くぼみ)24bが形成されている(図15参照)。
【0040】
このように構成されたフィルタブロック23は、駆動ユニット30により、シリンダ22の下面開口22bをシールするシール位置(図7図10参照)と、このシール位置よりも下位でかつシリンダ22の下面開口22bを開放する開放位置(図8図9図11図12参照)との間で昇降するように駆動される。
【0041】
そして、駆動ユニット30は、スライダ本体36を昇降させることでフィルタブロック23を昇降させるカム機構34により構成され、フィルタブロック23をシール位置に位置させたときには、パッキン25の上面がシリンダ22の下面周縁部に当接した状態に保持されてこれをシールする。
【0042】
また、カム機構34は、回転子駆動モータ98の駆動により歯車35cを介して回転する回転子35と、この回転する回転子35の円盤部35aの外周縁35bが内接するカム37と事前混合装置21を回転させるためのラック38を一体に有するスライダ本体36とから構成されている。
【0043】
回転子35が回転子駆動モータ98により回転駆動されると、円盤部35aの外周縁35bがカム37の内周縁37aに内接して回転し、この円盤部35aがカム37の内周縁37aに内接して回転して上昇することでスライダ本体36が上昇し(図13参照)、また、円盤部35aがカム37の内周縁37aに内接して回転して下降することでスライダ本体36が下降する(図14参照)。
【0044】
次に、スライダ本体36が昇降することに伴い回転する事前混合装置21について説明する。スライダ本体36に設けられているラック38はピニオン(歯車)39と噛み合い、事前混合装置21と同軸で設けられている歯車21dがピニオン39と噛み合って構成されている。
【0045】
そして、スライダ本体36が上昇すると(図7図10図13参照)、スライダ本体36に設けられているラック38も上昇し、ラック38の上昇に伴い、ピニオン39、歯車21dが回転することで、事前混合装置21は図7図10に示すように開口21bを下面に開口させた位置に回転して停止する。そして、フィルタブロック23はシリンダ22の下面開口22bをシールするシール位置で停止する。
【0046】
また、スライダ本体36が下降すると(図8図11参照)、スライダ本体36に設けられているラック38も下降し、ラック38の下降に伴い、ピニオン39、歯車21dが回転することで、事前混合装置21は図8図11に示すように開口21bを上面に開口させた位置に回転して停止する。そして、フィルタブロック23はシリンダ22の下面開口22bを開放する開放位置で停止する。
【0047】
さらにスライダ本体36が下降すると(図9図12図14参照)、スライダ本体36に設けられているラック38がさらに下降し、ラック38の下降に伴い、ピニオン39、歯車21dが回転することで、事前混合装置21は図9図12に示すように開口21bを下面に開口させた位置に回転して停止する。そして、スクレーパ本体27aがフィルタブロック23上を移動することにより、スクレーパ27がフィルタ24の上面を摺動し、フィルタ24上に残留している抽出滓を掻き取り、廃棄する。
【0048】
以上説明したコーヒー抽出装置2を備えたカップ式飲料自動販売機1において、コーヒーを抽出する工程を図16の工程図を用いて詳細に説明する。先ず、図16(a)に示す待機位置において、制御部90のCPU91からコーヒー抽出信号が出力され、回転子駆動モータ98に通電されると、図16(b)に示すように、回転子35が回転子駆動モータ98により回転駆動され、カム37の内周縁37aに内接して回転する円盤部35aが下降することでスライダ本体36が下降し、事前混合装置21の開口21bを上面に開口させた位置に回転させて停止するとともに、フィルタブロック23をシール位置から開放位置へと下降させる。そして、原料キャニスタ3aおよびミル3bに通電されることで、コーヒー挽き豆が原料シュート43aから開口21bを介して事前混合装置21内に供給される。
【0049】
そして、事前混合装置21内にコーヒー挽き豆が供給された後、図16(c)に示すように、回転子駆動モータ98に通電して回転子35を回転駆動すると、カム37の内周縁37aに内接して回転する円盤部35aが上昇することでスライダ本体36が上昇し、事前混合装置21の開口21bを下面に開口させた位置に回転させて停止するとともに、フィルタブロック23を開放位置からシール位置に位置させ、パッキン25の上面がシリンダ22の下面周縁部に当接した状態で保持されてシールされる。
【0050】
事前混合装置21の開口21bを下面に開口させた位置に停止させるとともにフィルタブロック23を開放位置からシール位置に位置させ、湯弁4bを開放することにより所定量の湯を湯ノズル21eからコーヒー挽き豆に噴射して事前攪拌混合するとともに、この事前攪拌混合されたコーヒー挽き豆と湯の原料混合体は開口21bからシリンダ22内に流下する。さらに、湯ノズル21eから噴射された湯で事前混合装置21内壁面を洗浄してコーヒー挽き豆をシリンダ22内に洗い流すことで、事前混合装置21内壁面を常に清潔に保つことができる。
【0051】
また、シリンダ22内に供給された原料混合体から発生する湯気は事前混合装置21で遮断され、ミル3bの原料通路まで上昇して侵入することがなくなるので、ミル3bの原料通路が閉塞することを保護して飲料の販売が不能になることを防ぐことができる。
【0052】
コーヒー挽き豆と湯の原料混合体がシリンダ22内に流下してフィルタブロック23のフィルタ24上に溜まると、ギアポンプ5に通電してポンプ5aを一方向に回転させて管路5bから空気を取り込み、この取り込んだ空気を管路5cに送出し、フィルタブロック23のコーヒー受け部26からフィルタ24を介してシリンダ22内に供給し、シリンダ22内に投入されたコーヒー挽き豆と湯の原料混合体を攪拌してコーヒーを抽出する。
【0053】
ギアポンプ5に通電して送出している空気でコーヒー挽き豆と湯の原料混合体を所定時間攪拌してコーヒーを抽出すると、ポンプ5aを他方向に回転させて管路5cから吸引し、シリンダ22内で抽出されたコーヒーをフィルタブロック23のフィルタ24を通過させることでろ過し、コーヒー受け部26から管路5cを通流させ、ギアポンプ5によって吸引されたコーヒーを管路5bから外部に搬出させてカップなどの飲料容器に注いでカップ式飲料自動販売機1の利用者に提供する。このようにして、ギアポンプ5によってコーヒー挽き豆と湯の原料混合体からコーヒーを吸引すると、コーヒーの抽出後にはフィルタ24上に原料の抽出滓が残ることとなる。
【0054】
そして、抽出されたコーヒーがギアポンプ5によって吸引されてろ過され、カップ式飲料自動販売機1の利用者に提供されると、回転子駆動モータ98に通電され、図16(d)に示すように、回転子35が回転子駆動モータ98により回転駆動され、カム37の内周縁37aに内接して回転する円盤部35aが下降することでスライダ本体36がさらに下降し、フィルタブロック23がシール位置から開放位置へと下降して停止し、スクレーパ本体27aがフィルタブロック23上を移動することにより、スクレーパ27がフィルタ24の上面を摺動し、フィルタ24上に残留している抽出滓を掻き取り、廃棄する。
【0055】
このスクレーパ27がフィルタ24の上面を摺動し、フィルタ24上に残留している抽出滓を掻き取るとき、薄板状の金属板からなり、飲料をろ過するろ過孔24aの上側に径が100μm程度で深さが5〜10μmに形成されているディンプル(くぼみ)24bに湯膜が構成されていることで、スクレーパ27摺動時の摺動抵抗は低減され、回転子駆動モータ98の少ない駆動力でフィルタ24上から確実に抽出滓を排出して廃棄することができる。
【0056】
なお、図16(a)に示す状態を待機位置としているが、図16(d)に示す抽出滓を排出して廃棄した後の状態を待機位置としてもよい。
以上説明したように本発明によれば、原料および湯水を用いて飲料を抽出するためのコーヒー抽出装置2であって、上面および下面が開放し、内部において飲料の抽出を行うためのシリンダ22と、フィルタ24を上面に有し、シリンダ22の下方において、シリンダ22の下面をシールするシール位置と、該シール位置よりも下位でかつシリンダ22の下面を開放する開放位置との間で昇降自在に設けられ、シール位置に位置するときにはシリンダ22内で飲料が抽出され、シリンダ22から搬出される飲料が通過する際には、該飲料をフィルタ24によってろ過するフィルタブロック23と、を備えたコーヒー抽出装置2において、原料および湯水を受け入れて事前攪拌混合させた原料混合体を生成し、この原料混合体を、シリンダ22の上面開口22aから供給する事前混合装置21を、さらに備え、事前混合装置21は、両端面を閉塞した円筒状に形成され、筒本体21aには原料を受け入れるとともに、原料混合体をシリンダ22に排出する開口21bが設けられるとともに、閉塞された一方の端面には供給された原料に湯を噴射する湯ノズル21eが設けられ、事前混合装置21で原料混合体を生成してシリンダ22に供給するときには、事前混合装置21の開口21bを上面に配置させて開口21bから原料を受け入れ、その後、事前混合装置21を回転させることで開口21bを下面に配置させて受け入れた原料に湯ノズル21eから湯を噴射して事前攪拌混合させた原料混合体を開口21bからシリンダ22に供給することにより、シリンダ22で攪拌混合を行う前に事前混合装置21で原料と湯を強制的に事前攪拌混合して原料と湯の混合を効率よく行い、完全に馴染んだ原料混合体を、湯の供給時間と同じ時間でシリンダ22に投入することができる。これによって、抽出効率を向上させ、原料や湯温による攪拌混合度合いのバラツキをなくして安定した抽出を実現し、小型、低コストで、短時間に品質の安定した飲料を抽出できるコーヒー抽出装置2を提供することが可能となる。
【0057】
また、湯ノズル21eから噴射された湯で、事前混合装置21の内壁面から原料をシリンダ22に洗い流すことにより、事前混合装置21内壁面を常に清潔に保つことができる。
【0058】
また、事前混合装置21は、シリンダ22内に供給された原料混合体から発生する湯気をミル3bから遮断してミル3bを保護することにより、シリンダ22内で原料混合体から発生する湯気がミル3bの原料通路まで上昇して侵入することがなくなるので、ミル3bの原料通路が閉塞することを保護して飲料の販売が不能になることを防ぐことができる。これにより、専用の湯気排気装置を設け、強制的に排気ダクトを介して湯気を外部に排出する必要がなくなるので、高価で場所をとる湯気排気装置が不要となり、小型化、および販売耐久性を実現し、低コストで、短時間に品質の安定した飲料を抽出できるコーヒー抽出装置2を提供することができる。
【0059】
また、事前混合装置21は、フィルタブロック23を昇降させる駆動ユニット30と連動して回転動作することにより、小型、低コストのコーヒー抽出装置2を提供することができる。
【0060】
また、フィルタ24は、飲料をろ過するろ過孔24aの上側をディンプル形状とし、該ディンプル24bに湯膜を構成させることで、原料混合体から飲料抽出後の抽出滓廃棄スクレーパ27摺動時の摺動抵抗を低減させることにより、スクレーパ摺動モータの小型化とスクレーパ27のコスト低減を図ることをでき、小型、低コストのコーヒー抽出装置2を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 カップ式飲料自動販売機
2 コーヒー抽出装置(飲料抽出装置)
3 原料供給装置
3a 原料キャニスタ(原料収容装置)
3b ミル(原料粉砕装置)
21 事前混合装置
21a 筒本体
21b 開口
21e 湯ノズル(湯水ノズル)
22 シリンダ(抽出容器)
23 フィルタブロック(飲料ろ過部)
24 フィルタ
24b ディンプル
27 スクレーパ
30 駆動ユニット(ろ過部昇降機構)
90 制御部
図1
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