(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動通電導体と前記保持手段の間、もしくは前記保持手段と前記第1の通電導体と前記第2の通電導体の間のうち少なくとも一方に絶縁物を配置することを特徴とする請求項1に記載の過電流検出装置。
互いに平行に配置される第1の通電導体及び第2の通電導体と、前記第1の通電導体もしくは前記第2の通電導体のいずれか一方に設けられ、保持手段により移動する可動通電導体と、前記可動通電導体と連動して移動する連動手段とを備える過電流検出装置と、
前記第1の通電導体から間隔を置いて設けられる消弧室と、
前記第2の通電導体に設けられる第1の回転軸周りを回動し、開極手段により前記第1の通電導体と接離する可動電極と、
前記第1の通電導体に隣接して設けられ、前記可動電極と接離する固定接触子と
を備え、
前記第1の通電導体と前記固定接触子と前記可動電極と前記第2の通電導体とが通電可能であり、前記連動手段と連動する引き外し機構により開極可能であることを特徴とする電流遮断装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による電流遮断装置の全体構成図である。
図1(a)は通電導体に過電流が流れない定常時の状態を示している。
図1(b)は通電導体に過電流が流れ過電流検出装置が動作して電流遮断装置が開極した後の状態を示している。また、
図2は、この発明の実施の形態1による過電流検出装置の要部構成図である。
【0013】
図1(a)に示す定常時の電流遮断装置の構成を説明する。電流遮断装置の過電流検出装置は、互いに平行に配置される第1の通電導体2と第2の通電導体3とを有し、第1の通電導体2と、第2の通電導体3とは通電可能である。また、可動通電導体4が第1の通電導体2もしくは第2の通電導体3のいずれか一方に設けられ、保持手段としての保持バネにより摺動可能なスライド通電部5を介して上下に移動する。実施の形態1の過電流検出装置1は
図1(a)に示す一点鎖線で囲われた部分であり、
図2はその拡大図である。また、連動手段としての連動棒6が設けられ、可動通電導体4と連動して上下に移動する。
【0014】
第1の通電導体2は、電流遮断装置の上部に設けられる消弧室14から間隔を置いて、フレームに固定され設置される。
【0015】
第2の通電導体3は、第1の通電導体2と平行に消弧室14側と反対側に配置される。この第2の通電導体3は、第1の通電導体2と同じ端子を有し、第1連結部材16と第2連結部材17とを介し、消弧室14に固定されて設置される。
【0016】
固定接触子12は、第1の通電導体2に隣接しているスライド通電部25を有し、スライド通電部25の内部を摺動可能であるスライド通電導体26を有する。スライド通電部25はスライド手段であるワイプバネ13に接続している。
【0017】
可動電極10は、第2の通電導体3に設けられる第1の回転軸31周りを回動し、第1の通電導体2と接離する。定常時には、可動電極10は、第1の通電導体2の一部となる固定接触子12と接しており、固定接触子12はワイプバネ13によって可動電極10に押し付けられている。また、可動電極10にはストッパー43が取り付けられている。アクチュエーター35はストッパー43と接離し、フレームに固定され設置される。
【0018】
引き外し機構18は、可動電極10と直交する方向に設けられるラッチ8と、ラッチ8に設けられる第2の回転軸32と調整手段とを有している。調整手段は調整バネ9を有し、フレームに固定され下向きの力がかかっている。過電流検出装置1に取り付けられる連動棒6は定常時においてラッチ8に接している。ラッチ8は第2の回転軸32周りを回動可能に支持され、一端を調整バネ9で固定され、もう一端で可動電極10を固定している。
【0019】
開極バネ11からなる開極手段は、可動電極10の上部に取り付けられ、可動電極10を固定接触子12から引き外す方向に力を作用させる。
【0020】
開極バネ11と、ワイプバネ13の2つのバネによって可動子10は開極方向に常に力を受けるが、第2の回転軸32で支持され一端を調整バネ9で固定されるラッチ8が可動電極10の下端部を固定するため、定常時に閉極状態を維持できる。
【0021】
定常時の電流は、第1の通電導体2、スライド通電部25を介する固定側接触子12、可動電極10、可動電極10と第2の通電導体3を電気的に接続する図示しないタワミ導体、第2の通電導体3の経路で流れる。
【0022】
第2の通電導体3と可動通電導体4の間に配置される保持バネ7は、可動通電導体4に対して、
図2において上向きの力を作用させている。絶縁物で形成され連動手段である連動棒6は可動通電導体4の底面に取り付けられ、保持バネ7および第2の通電導体3を貫いている。
【0023】
続いて、電流遮断装置に設けられる過電流検出装置の構成の説明をする。過電流検出装置1は、互いに平行に配置される第1の通電導体2及び第2の通電導体3を有する。また、第1の通電導体2もしくは第2の通電導体3のいずれか一方に設けられて保持手段により上下に移動する可動通電導体4と、可動通電導体4と連動して上下に移動する連動手段とを有する。
【0024】
保持手段には保持バネ7が用いられ、可動通電導体4と第2の通電導体3とに接続する。第2の通電導体3の窪みの内部には、摺動通電部5が設けられる。また、可動通電導体4は、第2の通電導体3に固定される保持バネ7に接続し、摺動通電部5の内部を摺動可能である。
【0025】
開極バネ11、ワイプバネ13、調整バネ9の各バネは電流遮断装置のフレームに固定される。力Fの大きさに対しては、可動通電導体4が押し下がる距離は保持バネ7および調整バネ9につかうバネのバネ定数、自然長および組み込み長を調整することで任意に変更できる。なお、各バネは伸縮可能な手段であればバネ以外であってもよく、例えばアクチュエーターといったもので代替しても良い。
【0026】
図3は、この発明の実施の形態1による過電流検出装置において過電流を検出する方式を説明するための電流、磁場、力の関係を示した図であって、第1の通電導体2を流れる電流I
2、電流I
2により生じる磁場H
2、および可動通電導体4を流れる電流I
4の概念図である。電流I
4は磁場H
2によって図示下向きに|I
4×(μ0×μ)×H
2×L1|の大きさの力Fを受ける。距離L1は
図2における可動通電導体4の長手方向の長さに一致する。また、μ0は真空の透磁率、μは可動通電導体に用いる材料の比透磁率である。そのため可動通電導体4は、定常時においても負荷電流によって常に図示下向きの力Fを受けるが、保持バネ7がその力に抗するため、定常位置に保持される。可動通電導体4の材料は、比透磁率が1以上の金属であることが望ましい。
【0027】
続いて、
図1(a)、
図1(b)及び、
図3を用いて、過電流検出装置1の開極時の動作を説明する。
【0028】
定常時の電流遮断装置は
図1(a)の状態であるが、事故が起こり過電流検出装置1に過電流が流れると、
図3の電流I
2、磁場H
2、電流I
4が増大するため可動通電導体4が受ける力Fは増加する。そして、可動電極10を固定接触子12から引き外す方向に力が作用し、開極を開始する。力Fの大きさが閾値に到達し、保持バネ7および調整バネ9の抗力、およびその他可動部品どうしの摩擦力を上回ると、連動棒6はラッチ8を押し下げ始める。
【0029】
連動棒6がある設定した距離押し下げられるとラッチ8が可動電極10から外れるので、可動電極10の固定が外れ、可動電極10は開極バネ11に引っ張られて開極する。
【0030】
開極した後の電流遮断装置は
図1(b)に示す状態となる。始めに固定側接触子12および可動電極10の間にアーク15が、下方15aの位置で点弧する。その後、アーク15は自身の浮力や周りの通電導体が発する磁場の影響で上方15bの位置に駆動され、最終的には消弧室14に導かれて冷却され、電流零点を形成後に遮断が完了する。
【0031】
開極動作時には、可動電極10がアクチュエーター35に接触する。開極後にアクチュエーター35のバネが伸びることでアクチュエーター35の先端部分が突き出し、可動電極10を定常状態の位置に押し戻す。可動電極10にはストッパー43がついているため、アクチュエーター35はストッパー43を押す。そして、アクチュエーター35は閉極状態の位置に戻り、電流遮断装置は
図1(a)の定常状態に復帰する。
【0032】
以上の電流遮断装置の動作において、力Fの大きさ|I
4×(μ0×μ)×H
2×L1|をより大きくするために、可動通電導体4の材料を通常の通電導体に用いるアルミニウムではなく、同材料よりも比透磁率が大きい材料、例えば鉄にすることも出来る。鉄は比透磁率がアルミニウムの約5000倍と大きいため、可動通電導体4の材料を鉄にすると、アルミニウムの場合と比べて力Fの大きさを増大させることが出来る。
【0033】
以上のように、実施の形態1の電流遮断装置は、第1の通電導体2と第2の通電導体3とを電流が流れるので、小型で簡易な構造で、過電流を検出可能な過電流検出装置を提供できる。また、過電流検出装置1を有する電流遮断装置は、第1の通電導体2もしくは第2の通電導体3のいずれか一方に設けられ、保持手段により上下に移動する可動通電導体4と、可動通電導体4と連動して上下に移動する連動手段とによって、小さな力で開極するので、小型で簡易な構造である電流遮断装置を提供できる。
【0034】
また、電流遮断装置は調整バネ9とラッチ8もしくはフレームとの間の長さを変えられる機構、例えばジャッキ等を挿入して調整バネ9の組み込み長を変えられるようにしてもよい。このような構成とすることで、ラッチ8が可動電極10を外れるときの力Fの大きさ、つまり検知する過電流の大きさを容易に、任意に変化させることが出来る。
【0035】
さらに、過電流検出装置1は、保持バネ7および第2の通電導体3の間にシート状の絶縁物を配置するのが望ましい。バネの材料には通常金属を用いるため、
図2の電流遮断装置の構成では、可動通電導体4および第2の通電導体3が保持バネ7を介して電気的につながることになる。可動通電導体4は摺動通電部5を介して第2の通電導体3の一部になっているが、摺動通電部5と可動通電導体4の間には接触抵抗が生じるため、可動通電導体4と第2の通電導体3は厳密には同電位ではない。そのため、保持バネ7と第2の通電導体3の間を絶縁しない場合、それらの接触面で微小アークがつき、保持バネ7が損傷し、バネ定数等の特性が変わる可能性がある。
【0036】
そこで、保持バネ7を絶縁物でコーティングする構成としてもよく、保持バネ7および第2の通電導体3の間にシート状の絶縁物を配置してもよい。これにより、保持バネ7が損傷し、バネ定数等の特性が変わることを防止できる。
【0037】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による電流遮断装置の全体構成図であり、過電流が流れない定常時の状態を示している。実施の形態2において実施の形態1との相違点は、過電流検出装置1の可動通電導体4の設置箇所である。
実施の形態1では、可動通電導体4を第2の通電導体3に取り付けたが、実施の形態2では第1の通電導体2に取り付けられる。また、連動棒6は、ラッチ8において可動電極10と反対側の端部に接続される。
【0038】
可動通電導体4を第1の通電導体2に取り付けた場合、第2の通電導体3を流れる電流で生じる磁場によって可動通電導体4に働く力Fは、
図4において上向きに働く。そして、可動通電導体4に接続された連動棒6で可動電極10を固定しているラッチ8を外すために、連動棒6はラッチ8の第2の回転軸32に対して調整バネ9側の端部に接続する。電流遮断装置は過電流を検出すると、連動棒6に連動してラッチ8を押し、可動電極10を外して、開極する。
【0039】
以上の構成により、実施の形態2の電流遮断装置は、過電流検出装置により過電流を検知し、開極することが出来る。
【0040】
また、フレームの構造に制約があり、連動棒6と調整バネ9を実施の形態1のように配置できない場合であっても、過電流検出装置1の可動通電導体4の配置を変更することで実施の形態2の電流遮断装置を構成することが出来る。
【0041】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3の電流遮断装置の構成図であり、過電流が流れない定常時の状態を示している。実施の形態3において実施の形態1との相違点は、引き外し機構18の構成と引き外し方法である。
【0042】
図6は、この発明の実施の形態3による電流遮断装置の要部と回路とを含む構成図である。
図6(a)に定常時、
図6(b)に開極時の電流遮断装置の引き外し機構18周辺の拡大図を示す。
【0043】
引き外し機構18は、抵抗24と直流電源30と回路切替手段36とコイル20とコイル内に設けられる鉄心21と可動電極10の一部に設けられる磁性体の吸着部19とを有する。
【0044】
回路切替手段36は、第1の閉回路28と第2の閉回路29とを切り替え可能である。また、第1の閉回路28は、コイル20とコイル内に設けられる鉄心21とを有する。第1の閉回路28と第2の閉回路29は、抵抗24と直流電源30と回路切替手段36とを共有する。
【0045】
回路切替手段36は、支持バネ23と通電板22とからなる。回路切替手段36は、フレームに接続される支持バネ23を介して連動棒6に接続される通電板22により、第1の閉回路28と第2の閉回路29とを切り替え可能である。
【0046】
引き外し機構18には、定常時、直流電源30と通電板22と鉄心21が挿入されたコイル20と抵抗24とを接続して構成される第1の閉回路が形成されており、鉄心21は電磁石になっている。通電板22は支持バネ23によって、
図6(a)において上方向に力を受けており、回路の導体に押し付けられている。実施の形態3の電流遮断装置では、可動電極10の一部に磁性体の吸着部19を設けるため、第1の閉回路28を電流が流れている際には、固定された鉄心21で可動電極10の磁性体部19を吸引することで、電流遮断装置の閉極状態を維持する。
【0047】
図6(a)において、可動通電導体4底面に接続される連動棒6は通電板22に接している。そのため、力Fの大きさに対して可動通電導体4が押し下がる距離は、保持バネ7および支持バネ23に使うバネのバネ定数、自然長および組み込み長を調整することで任意に変更できる。
【0048】
第1の閉回路28に過電流が流れると、通電板22に下向きの力がかかる。通電板22が
図6(a)に示す距離L2分押し下がると、コイル20を通る電路からコイル20を通らない電路に切り替わる。回路切替手段36は、第1の閉回路28を流れる電流が閾値を超えたときに、第1の閉回路28から第2の閉回路29へ切り替える。このとき、鉄心21の磁力が失われ、
図6(b)に示すように鉄心21から可動電極の磁性体部19が離れ、可動電極10は開極バネ11に引っ張られて開極する。
【0049】
以上の構成により、実施の形態3の電流遮断装置は、過電流検出装置により過電流を検知し、開極することが出来る。
【0050】
また、調整バネ9と固定面の
間に高さを変えられる機構、例えばジャッキ等を挿入して支持バネ23の組み込み長を変えられるようにすれば、鉄心21が磁力を失うときの力Fの大きさ、つまり検知する過電流の大きさを容易に、任意に変化させることも出来る。
【0051】
さらに、フレームの構造に制約があり、ラッチ8と調整バネ9とを実施の形態1のように配置できない場合であっても、引き外し機構18を設置することが出来る。
【0052】
実施の形態4
図7は、この発明の実施の形態4による電流遮断装置の全体構成図であり、過電流が流れない定常時の状態を示している。実施の形態4において実施の形態1との相違点は、引き外し機構18の構成と引き外し方法である。
【0053】
図8はこの発明の実施の形態4による電流遮断装置の要部と回路とを含む構成図である。
図8(a)に定常時、
図8(b)に開極時の電流遮断装置の引き外し機構18周辺の拡大図を示す。引き外し機構18は、抵抗24と直流電源30と回路切替手段36とコイル20とコイル20内に設けられる鉄心21と可動電極10の端部に設けられ鉄心21と接離する磁性体部19とを有する。
【0054】
第3の閉回路41と第4の閉回路42は、抵抗24と直流電源30と回路切替手段36とコイル20とを共有する。回路切替手段36は、支持バネ23と通電板22とからなる。
【0055】
定常時、直流電源30と抵抗24とを接続して構成される第3の閉回路41が形成されている。また、回路切替手段36は、フレームに接続される支持バネ23を介して連動棒6に接続される通電板22により、第3の閉回路41と第4の閉回路42とを切り替え可能である。
【0056】
図8(a)において、通電板22は支持バネ23によって、上方向に力を受けており、回路の導体に押し付けられている。実施の形態4では、可動電極10の一部に永久磁石の吸着部19を設けるため、吸着部19は固定された鉄心21を吸引することで、電流遮断装置の閉極状態を維持する。
【0057】
コイル20は鉄心21に生じる磁力が吸着部19の永久磁石に反発する向きに生じるように導体が巻かれている。
【0058】
通電板22が
図8(a)に示す距離L2押し下がると、電路がコイル20を通る電路に切り替わる。そのため、鉄心21に磁力が生じる。
【0059】
第4の閉回路42を電流が流れると、鉄心21に生じる磁力は吸着部19の永久磁石に反発する向きに生じるため、
図8(b)に示すように鉄心21から可動電極の吸着部19が離れ、可動電極は開極バネ11に引っ張られて開極する。そして、回路切替手段36が第3の閉回路41から第4の閉回路42へ回路を切り替える。
【0060】
以上の構成により、実施の形態4の電流遮断装置は、過電流検出装置により過電流を検知し、開極することが出来る。
【0061】
また、調整バネ9と固定面の間に高さを変えられる機構、例えばジャッキ等を挿入して支持バネ23の組み込み長を変えられるようにすれば、鉄心21が磁力を生じるときの力Fの大きさ、つまり検知する過電流の大きさを容易に、任意に変化させることも出来る。
【0062】
さらに、実施の形態4の電流遮断装置は、鉄心21に流れる磁力の向きにより可動電極10の開閉を制御できるため、フレームの構造に制約があり、実施の形態4のように開極バネ11を配置できない場合であっても引き外し機構18を設置することが出来る。