(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共通信号出力手段が出力するPWM信号のデューティ比は、前記駆動信号出力手段が出力するPWM信号のうち、最大のデューティ比以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPWM制御装置。
前記共通信号出力手段が出力するPWM信号のデューティ比は、各負荷に流れる電流値が所定の定格内に収まるように設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
前記駆動信号出力手段が出力するPWM信号は、その立ち上がりタイミングが、駆動用スイッチング素子毎に異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のPWM制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。
【0012】
(第1実施形態)
最初に、
図1を参照して、本実施形態に係るPWM制御装置の概略構成について説明する。
【0013】
本実施形態に係るPWM制御装置100は、例えば、車両における変速機に用いられるものである。PWM制御装置100は、負荷としてのソレノイドに流れる電流を制御することによって、変速のための油圧を制御する。
【0014】
このPWM制御装置100は、
図1に示すように、第1駆動回路10、第2駆動回路20、第3駆動回路30および第4駆動回路40を備えている。各駆動回路10〜40は、電源200と基準電位源としてのGND300に対して並列に接続されている。そして、PWM制御装置100は、これら駆動回路10〜40をPWM制御する制御部50を備えている。さらに、PWM制御装置100は、各駆動回路10〜40、電源200およびGND300と直列に接続され、すべての駆動回路10〜40に電流を供給するか否かを規定する共通スイッチング素子60を備えている。
【0015】
各駆動回路10〜40は、負荷10a〜40aを駆動する回路である。第1駆動回路10には負荷10aが接続されている。第2駆動回路20には負荷20aが接続されている。第3駆動回路30には負荷30aが接続されている。第4駆動回路40には負荷40aが接続されている。
【0016】
制御部50は、各駆動回路10〜40に対応した駆動信号出力部51〜54を有している。第1駆動信号出力部51は、第1駆動回路10を制御すべくパルス幅変調信号(以下、PWM信号と示す)を生成して第1駆動回路10に出力する。同様に、第2駆動信号出力部52は、第2駆動回路20にPWM信号を出力してPWM制御する。第3駆動信号出力部53は、第3駆動回路30にPWM信号を出力してPWM制御する。第4駆動信号出力部54は、第4駆動回路40にPWM信号を出力してPWM制御する。負荷10a〜40aには、上記PWM制御に基づいた負荷電流が流れる。各駆動回路10〜40は、それぞれに接続された負荷10a〜40aに流れる負荷電流を検出して、その電流値を各駆動信号出力部51〜54にフィードバックする。各駆動信号出力部51〜54は、フィードバックされた電流値に基づいて、PWM信号のデューティ比を決定する。
【0017】
共通スイッチング素子60は、電源200およびGND300と直列に接続され、すべての駆動回路10〜40に電流を供給するか否かを規定する素子である。制御部50は、この共通スイッチング素子60のオンオフを制御するためのPWM信号を出力する共通信号出力部56を有している。通常は、この共通スイッチング素子60が常にオン状態とされ、各駆動回路10〜40がそれぞれのデューティ比に基づいて駆動する。一方、この共通スイッチング素子60がオフ状態であれば、すべての駆動回路10〜40に電流が供給されない。
【0018】
ところで、何らかの理由で、駆動回路10〜40のうちの一つ、例えば第1駆動回路10が、第1駆動信号出力部51のPWM信号に依らず、常にオンの状態に固定されたと仮定する。この場合、負荷10aには常に電流が流れる状態となり、所望の電流値に対して過電流となってしまう。すなわち、PWM制御装置100は、負荷に対して、本来あるべき制御をすることができない。
【0019】
このような事態に対応するため、本実施形態では、制御部50における共通信号出力部56が、0%および100%を除く所定のデューティ比を以ってPWM信号を出力可能となっている。すなわち、共通信号出力部56は、駆動信号出力部51〜54と同様のPWM信号を出力可能となっている。なお、デューティ比が0%とは、共通スイッチング素子60が常にオフ状態であることを指し、デューティ比が100%とは、共通スイッチング素子60が常にオン状態であることを指す。
【0020】
具体的には、オン状態で固定された第1駆動回路10の駆動を共通スイッチング素子60のPWM制御で代替させる。そして、共通スイッチング素子60がオンの期間において、第2駆動回路20、第3駆動回路30および第4駆動回路40のPWM制御を行う。これにより、第1駆動回路10が、第1駆動信号出力部51のPWM信号に依らず、常にオンの状態に固定されたとしても、すべての駆動回路10〜40の駆動を継続させることができる。
【0021】
図2を参照して、より具体的な構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、第1駆動回路10は、電源200とGND300との間で、負荷10aに対して直列に接続された駆動用スイッチング素子Tr1およびオン故障検出回路12を有している。電源200側から、駆動用スイッチング素子Tr1、オン故障検出回路12、負荷10aが、この順で直列接続されている。
【0023】
駆動用スイッチング素子Tr1は第1駆動信号出力部51からのPWM信号に基づいてオンオフする。これにより、第1駆動回路10は、PWM信号に基づいた負荷電流を負荷10aに流すことができる。
【0024】
オン故障検出回路12は電流モニタである。オン故障検出回路12はシャント抵抗12aの両端子間の電圧をモニタリングすることによって負荷10aに流れる負荷電流を検出する。そして、負荷電流の電流値を制御部50に出力する。例えば、オン故障検出回路12に所定の閾値以上の過電流が、一定時間流れると、制御部50は、駆動用スイッチング素子Tr1が常にオン状態となるオン故障であると判断する。
【0025】
第2駆動回路20は、第1駆動回路10と同一の回路構成となっている。具体的には、第2駆動回路20は、負荷20aに対して直列に接続された駆動用スイッチング素子Tr2およびオン故障検出回路22を有している。ハイサイド側から、駆動用スイッチング素子Tr2、オン故障検出回路22、負荷20aが、この順で直列接続されている。第2駆動回路20においても、オン故障検出回路22はシャント抵抗22aを有する。そして、負荷20aに流れる負荷電流を検出し、その電流値を制御部50に出力する。
【0026】
第3駆動回路30も、第1駆動回路10と同一の回路構成となっている。具体的には、第3駆動回路30は、負荷30aに対して直列に接続された駆動用スイッチング素子Tr3およびオン故障検出回路32を有している。ハイサイド側から、駆動用スイッチング素子Tr3、オン故障検出回路32、負荷30aが、この順で直列接続されている。第3駆動回路30においても、オン故障検出回路32はシャント抵抗32aを有する。そして、負荷30aに流れる負荷電流を検出し、その電流値を制御部50に出力する。
【0027】
第4駆動回路40も、第1駆動回路10と同一の回路構成となっている。具体的には、第4駆動回路40は、負荷40aに対して直列に接続された駆動用スイッチング素子Tr4およびオン故障検出回路42を有している。ハイサイド側から、駆動用スイッチング素子Tr4、オン故障検出回路42、負荷40aが、この順で直列接続されている。第4駆動回路40においても、オン故障検出回路42はシャント抵抗42aを有する。そして、負荷40aに流れる負荷電流を検出し、その電流値を制御部50に出力する。
【0028】
制御部50は、上記したように、駆動回路10〜40に対応した数の駆動信号出力部51〜54を有している。各駆動信号出力部51〜54は、対応する駆動回路10〜40におけるオン故障検出回路12,22,32,42から電流値を取得し、その電流値に基づいて駆動用スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティ比を決定する。例えば、第1駆動信号出力部51は、駆動回路10におけるオン故障検出回路12から電流値を取得する。そして、第1駆動信号出力部51は、取得した実測の電流値と、目標とする電流値とを比較し、必要なデューティ比を決定する。第1駆動信号出力部51は、決定されたデューティ比に基づき、駆動用スイッチング素子Tr1に対してPWM信号を出力する。なお、その他の駆動信号出力部52,53,54についても上記した第1駆動信号出力部51と同様の動作を行う。
【0029】
加えて、制御部50は、共通信号出力部56を有している。共通信号出力部56は、共通スイッチング素子60に対してPWM信号を出力する。例えば、駆動用スイッチング素子Tr1がオン故障であると判断されると、制御部50は、共通信号出力部56に第1駆動信号出力部51の代替を行わせる。共通信号出力部56は、直前のPWM信号周期における、各駆動回路10〜40の負荷電流の電流値に基づいて、共通スイッチング素子60に出力すべきデューティ比を決定する。そして、共通信号出力部56は、決定されたデューティ比に基づいたPWM信号を共通スイッチング素子60に出力する。これにより、駆動用スイッチング素子Tr1の駆動を、共通スイッチング素子60で代替させることができる。より具体的な説明は後述する。
【0030】
共通スイッチング素子60は、共通信号出力部56からのPWM信号に基づいてオンオフする。共通スイッチング素子60がオンのときにはすべての駆動回路10〜40に通電可能な状態となる。一方、共通スイッチング素子60がオフのときにはすべての駆動回路10〜40に通電不可能能な状態となる。
【0031】
次に、
図2〜
図4を参照して、本実施形態に係るPWM制御装置100の動作および作用効果について説明する。一例として、第1駆動回路10の駆動用スイッチング素子Tr1がオン故障した場合について説明する。
【0032】
駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4および共通スイッチング素子60に出力されるPWM信号のタイミングチャートを
図3に示す。
図3では、時間毎にI部〜III部に分けて示してある。I部は駆動用スイッチング素子Tr1にオン故障が発生する以前、II部はオン故障検出後の一定期間、III部は共通スイッチング素子60が所定デューティ比を以って駆動を開始した後のオン状態の期間を示す。なお、説明を単純化するため、本実施形態における各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4は、
図3に示すように、すべて同一の周期Tで駆動する。また、各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4のデューティ比は、本来、必要とされる電流値に応じて調整されるが、本実施形態では、便宜上、
図3に示した範囲において、すべて同一の50%であるとする。
【0033】
また、
図4は、制御部50が、駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4、および、共通スイッチング素子60をPWM制御する制御フローを示す図である。
【0034】
以下、
図3に示すI部〜III部について、時系列に沿って説明する。
【0035】
[I部]
I部は、駆動用スイッチング素子Tr1にオン故障が発生する以前のタイミングである。
【0036】
まず、
図4に示すステップS1を実施する。ステップS1は、制御部50が、各駆動回路10〜40における負荷電流を、オン故障検出回路12,22,32,42から取得するステップである。I部においては、オン故障が発生していないので、各駆動回路10〜40の負荷電流は正常値である。
【0037】
次いで、ステップS2を実施する。ステップS2は、制御部50が、オン故障検出回路12,22,32,42から取得した負荷電流の電流値を基に、オン故障の有無を判断するステップである。I部における各駆動回路10〜40の負荷電流は正常値であり、ステップS2において、オン故障は検出されない。よって、ステップS2はNO判定となり、ステップS3に進む。
【0038】
ステップS3は、制御部50が各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4に出力するPWM信号のデューティ比を決定するステップである。上記したように、各駆動信号出力部51〜54が、取得した実測の電流値と、目標とする電流値とを比較し、必要なデューティ比を決定する。I部においては、各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4に異常が発生していないため、共通スイッチング素子60は常時オンとする。また、本実施形態では、便宜上、各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4に出力するPWM信号のデューティ比は50%としている。
【0039】
次いで、ステップS7を実施する。ステップS7は、制御部50が、ステップS3あるいは後述のステップS6により決定されたデューティ比を以って、PWM信号を出力するステップである。上記したように、制御部50は、共通スイッチング素子60を常時オンで動作させつつ、各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4を、デューティ比50%で動作させる。
【0040】
[II部]
II部は、II部はオン故障検出後の一定期間を示すタイミングである。II部では、
図3に示すように、オン故障した駆動用スイッチング素子Tr1を除くすべての駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4、および、共通スイッチング素子60がオフの状態となっている。
【0041】
まず、I部と同様に、ステップS1を実施する。II部においては、駆動用スイッチング素子Tr1が常にオン状態となるオン故障が発生している。このため、第1駆動回路10のオン故障検出回路12において過電流が検出される。
【0042】
次いで、ステップS2を実施する。このステップで、第1駆動回路10における駆動用スイッチング素子Tr1にオン故障が検出される。よって、YES判定となり、ステップS4に進む。
【0043】
ステップS4は、オフすることができない駆動用スイッチング素子Tr1を除く、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4、および、共通スイッチング素子60をオフ状態とするステップである。これは、各負荷10a〜40aに過電流が流れないようにするためのフェールセーフ対応であるとともに、その後、PWM制御を継続させるために、一旦駆動をリセットする意味も含んでいる。
【0044】
次いで、ステップS5を実施する。ステップS5は、共通信号出力部56が、共通スイッチング素子60に出力するPWM信号のデューティ比を決定するステップである。II部では、共通信号出力部56は、オン故障発生直前に決定された各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4におけるデューティ比に基づいて、デューティ比を決定する。なお、III部以降では、直前のPWM信号周期における、各駆動回路10〜40の負荷電流の電流値に基づいて、共通スイッチング素子60に出力すべきデューティ比を決定する。
【0045】
制御部50は、負荷電流が不足することによる動作不良が生じないように、共通スイッチング素子60のデューティ比として、各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4のうち、最大のデューティ比以上に設定する。本実施形態における各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4は、オン故障発生前のI部において、デューティ比50%で駆動している。このため、制御部50は、共通スイッチング素子60に出力するPWM信号のデューティ比として、例えば60%とする。なお、このPWM信号の周期は、駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4と同一とする。ここで、共通スイッチング素子60に出力するPWM信号のデューティ比の決定の方法として、例えば、各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4のうち、最大のデューティ比の定数倍(本実施形態であれば1.2倍)、とすることができる。あるいは、最大のデューティ比に所定数を加算(本実施形態であれば+10%)とすることもできる。
【0046】
次いで、ステップS6を実施する。ステップS6は、駆動信号出力部52〜54が、駆動用スイッチング素子Tr1を除く、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4のデューティ比および位相を決定するステップである。共通スイッチング素子60がオン状態のときにのみ、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4のオンオフが有効である。このため、駆動信号出力部52〜54は、共通スイッチング素子60がオン状態となる期間において、駆動用スイッチングTr2〜Tr4が、少なくとも所定の期間だけオンになるようにPWM信号の位相を調整する。また、駆動信号出力部52〜54は、PWM信号のデューティ比を設定する。この例では、駆動用スイッチング素子Tr1のオン故障以前のデューティ比である50%をそのまま踏襲している。
【0047】
上記したように、ステップS6により決定された駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4に出力されるPWM信号のデューティ比は、
図3のIII部以降のタイミングに示すように、例えば50%である。且つ、そのオン期間は、共通スイッチング素子60に出力されるPWM信号のオン期間内に含まれる。さらに、本実施形態では、駆動用スイッチングTr2〜Tr4に出力されるPWM信号が同時に立ち上がらないように、立ち上がりタイミングが異なるように設定されている。
【0048】
次いで、ステップS7を実施する。制御部50は、共通スイッチング素子60をデューティ比60%で動作させつつ、各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4を、デューティ比50%で動作させるように、PWM信号を出力する。
【0049】
[III部以降]
III部以降、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4、および、共通スイッチング素子60の最初の駆動は、II部におけるステップS7で出力されたPWM信号に基づいて行われる。なお、III部以降では、直前のPWM信号周期における、各駆動回路10〜40の負荷電流の電流値に基づいて、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4、および、共通スイッチング素子60に出力すべきデューティ比が決定される。
【0050】
これによれば、共通スイッチング素子60がPWM制御されることにより、共通スイッチング素子60が駆動用スイッチング素子Tr1を代替することができる。すなわち、オン故障した駆動用スイッチング素子Tr1が属する第1駆動回路10の負荷10aをPWM制御することができる。そして、III部、すなわち共通スイッチング素子60がオン状態の期間において、故障に関係しない駆動回路20〜40についてもPWM制御される。したがって、駆動回路のオン故障に際しても、すべての負荷10a〜40aのPWM制御を継続させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、共通スイッチング素子60のデューティ比として、各駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4のうち、最大のデューティ比(=50%)以上である60%を採用している。このため、負荷10a〜40aに流れる負荷電流の最大値が、オン故障以前の負荷電流の最大値を下回ることはない。したがって、負荷電流の不足に起因する変速機の誤動作を防止することができる。
【0052】
また、本実施形態では、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4に出力されるPWM信号が同時に立ち上がらないように、立ち上がりタイミングが異なるように設定されている。これにより、負荷電流が一度に大量に流れることを抑制することができる。すなわち、負荷電流の変動を抑制することができ、電源電圧の変動や電流ノイズの発生を抑制することができる。
【0053】
(第2実施形態)
第1実施形態では、オン故障発生以降の共通スイッチング素子60のデューティ比を60%とし、故障していない駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4のデューティ比として、故障以前のデューティ比である50%を踏襲する例を示した。しかしながら、この例に限定されるものではない。
【0054】
共通スイッチング素子60の駆動にかかるデューティ比は任意であり、0%(常時オフ)および100%(常時オン)を除くものであれば良い。そして、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4の駆動にかかるデューティ比は、共通スイッチング素子60がオン状態の期間において、少なくとも所定のオン期間を有するように設定され、負荷20a〜40aがPWM制御されれば良い。
【0055】
しかしながら、共通スイッチング素子60のデューティ比は、各負荷10a〜40aに流れる負荷電流の電流値が、例えば変速機の仕様に規定された定格内に収まるようにすることが好ましい。
【0056】
例えば、第1実施形態に係るPWM制御装置100において、変速機の特性として、各負荷10a〜40aに流れる負荷電流に対して、変速のための油圧が
図5に示すように変化するとする。故障なく、すべての駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4がデューティ比50%で駆動している場合には、負荷電流として1000mAが流れるとする。この変速機において、1000mAは最も好適な値である(
図5中typと示す)。負荷電流が小さ過ぎる(例えば800mAより小さい)と十分な油圧が得られない。一方、負荷電流が大き過ぎる(例えば1200mAより大きい)と駆動回路10〜40および負荷10a〜40aの発熱量が増加し、断線などの原因となる。すなわち、この変速機における負荷電流の定格は、800mA以上1200mA以下である。なお、
図5における縦軸は、変速機油圧について、その最大値を100%として規格化したものである。
【0057】
第1実施形態に記載のように、駆動用スイッチング素子Tr1がオン故障したとするとき、共通スイッチング素子60のデューティ比が大きすぎると、負荷10aに大電流が流れ、負荷電流がスペック上限である1200mAを超えてしまう。一方、共通スイッチング素子60のデューティ比が小さすぎると、オン故障していない駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4のデューティ比もそれに伴って小さくなる。このため、負荷電流がスペック下限である800mAを下回ってしまう。
【0058】
したがって、共通スイッチング素子60のデューティ比は、各負荷10a〜40aに流れる負荷電流の電流値が、定格内に収まるように設定することが好ましい。
【0059】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0060】
上記した各実施形態では、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4に出力されるPWM信号が同時に立ち上がらないように、立ち上がりタイミングが異なるように設定されている。しかしながら、必ずしも立ち上がりタイミングが異なるように設定する必要はない。例えば、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4に出力されるPWM信号が、周期、デューティ比、立ち上がりタイミングともに同一であってもよい。すなわち、駆動用スイッチング素子Tr2〜Tr4に出力されるPWM信号が、共通スイッチング素子60に出力されるPWM信号と同期されていてもよい。ただし、上記したように、立ち上がりタイミングが異なるように設定することにより、負荷電流の変動を抑制することができる。
【0061】
また、上記した各実施形態では、駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4のオン故障を検出する手段として、オン故障検出回路12,22,32,42を用いる例を示したが、この限りではない。例えば、
図6に示すように、駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4のオンまたはオフの状態を、ソース電圧から検出する、いわゆるダイアグ回路71〜74を用いてもよい。ダイアグ回路71〜74を用いる場合、ソース電圧と、所定の閾値電圧(
図6においてはVthと示す)とをコンパレータで比較することにより、駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4のオンまたはオフの状態を判断させることができる。
【0062】
また、上記した各実施形態では、駆動用スイッチング素子Tr1〜Tr4、および、共通スイッチング素子60として、
図2に示すように、MOSを用いる例を示したが、この例に限定されない。これらスイッチング素子は、制御部50から出力されるPWM信号に対してオンオフする素子であれば良い。
【0063】
また、上記した各実施形態では、オン故障検出回路12,22,32,42として、シャント抵抗12a,22a,32a,42aの両端子の電圧により負荷電流を検出する例を示したが、この例に限定されない。オン故障検出回路12,22,32,42は、各駆動回路10〜40に接続された負荷10a〜40aに流れる負荷電流を検出するものであれば良い。