特許第6024619号(P6024619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024619
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】シート空調用送風機
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20161107BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20161107BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   B60H1/00 102F
   B60H1/00 102V
   F04D29/66 L
   F04D29/62 E
   F04D29/62 F
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-170393(P2013-170393)
(22)【出願日】2013年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-39906(P2015-39906A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 真範
(72)【発明者】
【氏名】石井 文也
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−029085(JP,A)
【文献】 特開2008−018869(JP,A)
【文献】 特開2011−057010(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0198212(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
F04D 29/62
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流を発生する羽根車(20)と、
前記羽根車を支持する回転軸(30)を回転させるモータ(18)と、
前記羽根車および前記モータを収納するケーシング(22)と、
車両シートを構成するシートバネ(16)から前記ケーシングを吊した状態で前記シートバネに対して前記ケーシングを支持する支持部材(50、80、91、110、120)と、を備え、
前記支持部材が前記ケーシングを支持する支持部位は、前記回転軸の軸心方向に位置しており、
前記羽根車、前記モータ、および前記ケーシングは、前記モータの回転に伴って、前記支持部位を中心とする振れ回り運動を可能に構成されていることを特徴とするシート空調用送風機。
【請求項2】
前記支持部材(50、80、91)は、前記ケーシングに連結されて、かつ前記シートバネに対して前記ケーシングを前記振れ回り運動を可能に支持するものであることを特徴とする請求項1に記載のシート空調用送風機。
【請求項3】
前記ケーシングは、前記支持部材側に突起するように形成されている突起部を備え、
前記突起部のうち先端側に、前記支持部材が連結されていることを特徴とする請求項2に記載のシート空調用送風機。
【請求項4】
一端が前記支持部材(110、120)側にそれぞれ接続されて、他端が前記ケーシング側にそれぞれ接続されている複数のワイヤ(100)を備え、
前記支持部材が前記複数のワイヤのそれぞれの一端に連結されて前記支持部位を構成するものであり、
前記羽根車、前記モータ、および前記ケーシングは、前記複数のワイヤの変位によって、前記振れ回り運動を行うことを特徴とする請求項1に記載のシート空調用送風機。
【請求項5】
前記羽根車は、前記回転軸の軸心方向に向けて空気流を発生させるものであり、
前記ケーシングのうち前記支持部材側には、前記軸心方向に向けて流れる空気流を通過させる開口部(22a)が形成されており、
前記ケーシング側と前記シートバネ側との間において前記開口部を囲むように形成されているダクト(70)と、
前記ダクトは、前記ケーシングの前記振れ回り運動に伴って弾性変形可能に構成されていることを請求項1ないし4のいずれか1つに記載のシート空調用送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート空調装置に用いられる送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のシート空調装置においてシートバネに支持されている送風機が、例えば特許文献1に開示されている。その特許文献1の送風機は、ゴム材、樹脂材等の低弾性材からなる防振用弾性部材を介してシートバネに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−29085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート空調装置の送風機はシートバネに固定されているので、送風機およびシートバネは、シートバネをバネ項とし、送風機を質量項とする振動系を構成する。 そして、特許文献1では、発泡ウレタンから成る防振用弾性部材を介して送風機をシートバネに固定することで、上記振動系の固有振動数を送風機の使用回転速度範囲よりも低くし、それにより振動低減が図られている。
【0005】
しかし、ゴム材、樹脂材などの防振用弾性部材は、低温下で使用された場合または長期間にわたって使用された場合には硬くなる。そうなると、その防振用弾性部材が硬くなることに起因して固有振動数が高くなるので、送風機の使用回転速度範囲で共振が生じ、振動が増加するため、耐久性、信頼性に問題が生じる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、耐久性、信頼性の向上と低振動化とを両立するようにしたシート空調用送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気流を発生する羽根車(20)と、前記羽根車を支持する回転軸(30)を回転させるモータ(18)と、前記羽根車および前記モータを収納するケーシング(22)と、車両シートを構成するシートバネ(16)から前記ケーシングを吊した状態で前記シートバネに対して前記ケーシングを支持する支持部材(50)と、を備え、前記支持部材が前記ケーシングを支持する支持部位は、前記回転軸の軸心方向に位置しており、前記羽根車、前記モータ、および前記ケーシングは、前記モータの回転に伴って、前記支持部位を中心とする振れ回り運動を可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、モータの回転に伴う振動の原因は、送風機の荷重の偏りが原因で送風機の支持部位を中心とするモーメントに変動が生じることであり、送風機の振動は、具体的に云うと、回転軸(すなわち、送風機)を振り子状に揺らそうとする揺動運動となる。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、羽根車、モータ、およびケーシングは、モータの回転に伴って、支持部位を中心とする振れ回り運動を行う。このため、モーメントの変動により生じる振動がシートバネ側に伝わることを抑制することができる。
【0010】
さらに、請求項1に記載の発明では、送風機とシートバネとの間に防振用弾性部材を介在させていない。このため、防振用弾性部材が硬くなることに起因して耐久性、信頼性に問題が生じることはない。
【0011】
以上により、耐久性、信頼性の向上と低振動化とを両立するようにしたシート空調用送風機を提供することができる。
【0012】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の送風機を有するシート空調装置が設けられた車両用シートの全体構成の概要を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態の送風機およびシートバネの平面図であり、具体的には、図1において矢印II方向から見た図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4図3中のブッシュ付近を拡大した図である。
図5図3中5V−V断面図である。
図6図2の送風機においてモータの回転数と送風機の振動との関係を表した図である。
図7図2に相当する図であって、第1実施形態に対する比較例としての送風機およびシートバネを示す平面図である。
図8図7のVIII−VIII断面図である。
図9】本発明の本第2実施形態において押さえ板に対して送風機を支持する構造を示す図である。
図10図9のX−X断面図である。
図11】本発明の本第3実施形態において押さえ板に対して送風機を支持する構造を示す図である。
図12図11のXII−XII断面図である。
図13】本発明の本第4実施形態において送風機を支持する構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る送風機10を有するシート空調装置12が設けられた車両用シート14の全体構成の概要を示す図である。この車両用シート14は、例えば運転席あるいは助手席のシートである。
【0016】
図1に示すように、車両用シート14は、発泡ウレタン等から成り乗員を支持する不図示のシートクッションと、4つのシートバネ16と、シート空調装置12とを備えている。
【0017】
シート空調装置12は、送風機10を備えており、送風機10の駆動により、乗員に対するシート当たり面に通風する。本実施形態では、乗員の尻部に対するシート当たり面すなわちシート座面14aに通風する。例えば、シート空調装置12は、シート座面14aから送風機10へ空気を吸い込み送風機10から外部に吹き出すように、空気を流通させる。
【0018】
図2は、送風機10およびシートバネ16の平面図であり、具体的には、図1において矢印II方向から見た図である。図3は、図2のIII−III断面図である。
【0019】
図2に示すように、車両用シート14には、シート座面14aに沿って車両前後方向に長手状に延びた長手状のシートバネ16が設けられている。4つのシートバネ16は、車両用シート14を構成する金属製のバネ線材であって、シートクッションを支持すると共にシート座面14aに弾力性を付与している。
【0020】
具体的には、4つのシートバネ16は、車両の左右方向すなわち車両幅方向に並列に並んでいる。そのシートバネ16の並び方向はシートバネ16の長手方向に直交している。シートバネ16は、隣り合うシートバネ16との間に間隔を空けて、波状に成形されている。
【0021】
送風機10は、図1のように車両用シート14において、4つのシートバネ16に対しシート座面14aとは反対側(すなわち、下側)に設けられている。図3に示すように、送風機10は遠心式送風機であり、モータ18と羽根車20とケーシング22と回転軸30とを備えている。送風機10は、モータ18で羽根車20を回転させることにより空気流れを発生させる。
【0022】
送風機10のモータ18は、コア181とロータ182とマグネット183とを備えている。モータ18では、外部電源からコア181へ通電されるとそのコア181に磁束変化が生じ、ロータ182に固定されたマグネット183を引き寄せる力が発生する。ロータ182は、ケーシング22に固定された軸受支持部26に軸受28を介して支持されている回転軸30に固定されているため、マグネット183を引き寄せる力を受けて回転軸30の軸心まわりに回転運動する。
【0023】
本実施形態では、ロータ182の停止時には、回転軸30の軸心方向は、天地方向になり、かつシートバネ16の長手方向に直交している。
【0024】
羽根車20は、モータ18のロータ182に固定されており、回転軸30およびロータ182と一体に回転運動する。すなわち、羽根車20は、モータ18により回転させられると羽根車20の翼部が空気に運動量を与え、矢印ARairのように、羽根車20の中央部から外周部へ向けて空気を送り出す。要するに、羽根車20は、回転軸30の軸心まわりに回転することにより送風する。
【0025】
詳細には、シート座面14a(図1参照)からの空気は、ケーシング22の中央上部に形成された空気吸込口22a(図5参照)から送風機へ吸い込まれ、羽根車20の翼部を通って羽根車20の径方向外側においてケーシング22内に形成された空気流路22bに送り出される。そして、その空気流路22bから、ケーシング22に形成された空気吹出口を通って車両用シート14の外部に送り出される。
【0026】
ケーシング22は、送風機10の筐体を成しており、モータ18、羽根車20、軸受支持部26、軸受28、および回転軸30を収容している。そして、それらを外部の塵、汚れから保護している。ケーシング22は、例えば、2つの部材が一体となって構成されている。ケーシング22のうちシートバネ16側には、梁40および4つの空気吸込口22aが形成されている。梁40は、図5中紙面手前側から視ると十字状に形成されて、4つの空気吸込口22aをそれぞれ区分けしている。梁40は、天地方向上側(図3中上側)に凸になる突起部を形成している。梁40の中央部40aは、梁40のうち天地方向上側の先端部を形成している。梁40の中央部40aは、回転軸30の軸心方向一方側に位置する。梁40の中央部40aは、止め板60の開口部60a内に位置し、かつ押さえ板61における梁部63の中央部63aに対して下側に位置している。
【0027】
梁40の中央部40aは、ブッシュ50によって、押さえ板61おける梁部63の中央部63aに対して支持されている。押さえ板61および止め板60は、2つのシートバネ16を挟み込むことにより、2つのシートバネ16に固定されている。これにより、ブッシュ50が車両用シート14に対してケーシング22(すなわち、送風機10自体)を吊した状態で支持している。
【0028】
押さえ板61は、図2に示すように、4つの開口部62および梁部63を備える。4つの開口部62および梁部63は、2つのシートバネ16の間に位置している。梁部63は、図2中紙面手前側から視ると十字状に形成されて、4つの空気吸込口62をそれぞれ区分けしている。4つの空気吸込口62は、それぞれ扇状に形成されている(図2参照)。止め板60には、開口部60aが形成されている。4つの開口部62は、開口部60aを介して、4つの空気吸込口22aに対向している。つまり、4つの開口部62は、開口部60a、および4つの空気吸込口22aは連通している。
【0029】
図4の押さえ板61において、梁部63の中央部63aには、上側に開口する穴部64が設けられている。穴部64は、ブッシュ50の球状部51を収容している。梁部63の中央部63aのうち穴部64を形成する形成部64aと球状部51との間には、隙間が形成されている。穴部64のうち下側は押さえ板61のうち下側に下側開口部が設けられている。下側開口部内には、ブッシュ50の突起部52が位置している。突起部52は、球状部51から下側開口部内を通して梁40の中央部40a側に突起している。突起部52の先端側は、梁40の中央部40aの凹部41aに嵌め込まれている。このことにより、ブッシュ50は、ケーシング22の梁40の突起部の先端側に連結されて、送風機10自体を水平方向で360度の全方位に揺動可能に押さえ板61(すなわち、シートバネ16)に対して支持されていることになる。つまり、ブッシュ50が送風機10自体を振れ回り運動を可能に押さえ板61に対して支持されていることになる。
【0030】
ケーシング22と止め板60との間には、ゴム等で蛇腹状に形成されているブーツ70が配置されている。ブーツ70は、開口部60aを介して4つの開口部62と4つの空気吸込口22aとの間の空気通路を形成するダクト部材である。ブーツ70は、後述するように、送風機10の振れ回り運動に伴って弾性変形するように構成されている。
【0031】
このような送風機10においては、羽根車20、ロータ182、マグネット183、及び回転軸30から成る回転部材の重心は、送風機10の作動時の振動を抑制する観点から、回転軸30の軸心上に位置することが望ましいが、実際には僅かにずれるものである。このため、モータ18の回転時には、送風機10がアンバランスになる。そのため、モータ18の回転時には、当該重心のずれにより、送風機10の連結部位を中心とするモーメントが発生する。送風機10の連結部位とは、ブッシュ50の突起部52のうち先端側であって、梁40の中央部40aの凹部41a内に位置する支持部位である。これにより、ブッシュ50は、突起部52が揺動可能に押さえ板61(すなわち、シートバネ16)に対して支持されている。
【0032】
このため、モータ18の回転に伴って、送風機10の連結点を送風機10の傾き中心として送風機10は振れ回り運動を行う。このとき、ブーツ70は、送風機10の振れ回り運動に伴って弾性変形する。このため、ブーツ70は、シートクッション側から吸い込まれて開口部62、60aを通過した空気を開口部22a内に案内することになる。この案内された空気は、羽根車20の中央部から外周部へ向けて空気を送り出される。そして、羽根車20の径方向外側においてケーシング22内に形成された空気流路22bに送り出される。そして、その空気流路22bから、ケーシング22に形成された空気吹出口を通って車両用シート14の外部に送り出される。
【0033】
以上説明した本実施形態によれば、ブッシュ50は、車両シートを構成するシートバネ16からケーシング22を吊した状態でシートバネ16に対してケーシング22を支持する。ブッシュ50は、ケーシング22に連結されて、かつシートバネ16に対してケーシング22を揺動可能に支持するものである。ブッシュ50がケーシング22を支持する連結部位は、回転軸30の軸心方向一方側(上側)に位置している支持部位である。羽根車20、モータ18、およびケーシング22は、モータ18の回転に伴って、ケーシング22が天地方向に対して傾いた状態で、当該連結部位を中心とする振れ回り運動を行う。
【0034】
モータ18の回転に伴う振動の原因は、送風機10の荷重の偏りが原因で発生するものであって、送風機10の連結部位を中心とするモーメントの変動であり、送風機10の振動は、具体的に云うと、送風機10を振り子状に揺らそうとする揺動運動となる。
【0035】
これに対して、本実施形態では、モータ18、およびケーシング22は、モータ18の回転に伴って、ケーシング22が天地方向に対して傾いた状態で、当該連結部位を中心とする振れ回り運動を行う。
【0036】
このため、当該連結部位を中心とするモーメントが発生しても、モーメントにより押さえ板61側(すなわち、車両用シート14側)に荷重が加わらない。このため、モーメントの変動により発生する振動が車両用シート14側に伝わらない。
【0037】
本実施形態では、送風機とシートバネとの間に防振用弾性部材を介在させていない。このため、弾性部材が硬くなることに起因して耐久性、信頼性に問題が生じることはない。
【0038】
本実施形態では、送風機10の連結点回りの傾きバネ定数は、十分に低くなっている。送風機10の連結点回りの傾きバネ定数は、送風機10の回転軸30の軸心方向におけるバネ定数である。傾きバネ定数は、主に、ブッシュ50および押さえ板61によって定まる。
【0039】
このため、モータ18の回転数(rpm)と送風機10の振動との関係を表す図6においてグラフL01で示すように、送風機10の振動における共振点を、送風機10の使用回転数範囲よりも低くして、共振による振動増幅を防止することが可能である。
【0040】
図6に示すグラフL02は、図7図8に示す送風機10における振動とモータ18の回転数との関係を表している。図7は、図2に相当する図であって、本実施形態に対する比較例としての送風機10およびシートバネ16を示す平面図である。図8図7のVIII−VIII断面図である。
【0041】
図7及び図8に示すように、比較例の送風機10は、本実施形態とは異なり、4本のシートバネ16のうち内側の2本のシートバネ16に連結されている。そして、ケーシング22の外形よりも内側で2つのシートバネ16に連結されている。そのため、図7及び図8に示す送風機10では、揺動運動である送風機10の振動に対して2つのシートバネが撓み易いので、図6にグラフL02で示すように、振動の共振点が本実施形態と比較して高くなり、送風機10の使用回転数範囲内に入っている。すなわち、その共振点において送風機10の振動が増幅されることになる。
【0042】
一方、共振点以上の回転数域では、ジャイロモーメントによる自動調心効果により回転軸30の軸心方向の傾き角が低減するため、ケーシング22と押さえ板61とが衝突することはない。
【0043】
このように図6のグラフL01とグラフL02とを比較して判るように、本実施形態では、送風機10の支持構造の違いによって、送風機10の振動を低減することができる。
【0044】
以上により、耐久性、信頼性の向上と低振動化とを両立するようにした送風機10を提供することができる。
【0045】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、押さえ板61に対して送風機10を支持する構造として、ブッシュ50を支持部材として用いた例について説明したが、これに代えて、図9図10に示すようにしてもよい。
【0046】
図9図10は、本第2実施形態において押さえ板61に対して送風機10を支持する構造を示している。
【0047】
本実施形態の押さえ板61の中央部63aには、下側に向けて凸となる湾曲部80が支持部材として設けられている。湾曲部80には、上側に開口する溝部81が形成されている。溝部81の底部82は、下側に凸になるV字状に形成されている。
【0048】
一方、ケーシング22の梁40の中央部40aには、押さえ板61の中央部63a側に凸になる湾曲部85が設けられている。湾曲部85には、穴部86が設けられている。穴部86の天井部86aは、上側に凸となるU字状に形成されている。
【0049】
ここで、湾曲部85のうち先端側85aは、湾曲部80の溝部81内に位置している。これにより、湾曲部85のうち先端側85aは、湾曲部80の溝部81の底部82によって支持されることになる。つまり、湾曲部80は、湾曲部85をA方向に揺動可能に支持することになる。
【0050】
これに加えて、湾曲部80のうち先端側80aは、湾曲部85の穴部86内に位置している。これにより、湾曲部80のうち先端側80aは、湾曲部85の穴部86の天井部86aによって支持されることになる。つまり、湾曲部80は、湾曲部85をB方向に揺動可能に支持することになる。A方向およびB方向は、天地方向に直交する水平方向であって、互いに直交する方向である。
【0051】
以上により、湾曲部85が湾曲部80に対してA方向、B方向のそれぞれの方向に対して揺動可能に支持される。これにより、湾曲部85が湾曲部80に対して水平方向で360度の全方位に揺動可能に連結されることになる。したがって、モータ18の回転時には、送風機10の連結部位を送風機10の傾き中心として送風機10は振れ回り運動を行う。本実施形態では、湾曲部80、85のうち互いに接触する部位を送風機10の連結部位(すなわち、支持部位)とする。
【0052】
なお、本実施形態では、押さえ板61に対して送風機10を支持する構造以外は、上記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0053】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、押さえ板61に対する送風機10の支持部材として湾曲部80を用いた例について説明したが、これに代えて、本第3実施形態では、図11図12に示すようにしてもよい。
【0054】
図11図12は、本第2実施形態において押さえ板61に対する送風機10の支持構造を示している。
【0055】
本実施形態の押さえ板61の中央部63aには、天地方向に貫通する穴部90が設けられている。穴部90内には、天地方向に貫通する開口部91aを有するリング部材91が支持部材として配置されている。リング部材91は、水平方向に延びる軸92が設けられている。リング部材91は押さえ板61に対してその軸92を中心としてA方向に揺動可能に支持されている。
【0056】
一方、ケーシング22の梁40の中央部40aには、上側に突起する突起部93が設けられている。突起部93のうち先端側には、水平方向に延びる軸94が設けられている。突起部93は、リング部材91に対して軸94を中心としてB方向に揺動可能に支持されている。B方向は、図11中紙面垂直方向である。A方向およびB方向は、天地方向に直交する水平方向であって、互いに直交する方向である。
【0057】
以上により、ケーシング22の梁40の中央部40aが押さえ板61の中央部63aに対して、軸92、94を介して水平方向360度の全方位に揺動可能に支持されることになる。したがって、モータ18の回転時には、送風機10の連結部位を送風機10の傾き中心として送風機10は振れ回り運動を行う。
【0058】
本実施形態では、ケーシング22の梁40の中央部40aの突起部93のうちリング部材91の開口部91a内に位置する部位を送風機10の連結部位(すなわち、支持部位)とする。
【0059】
なお、本実施形態では、押さえ板61に対して送風機10を支持する構造以外は、上記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0060】
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、支持部材としてブッシュ50が変位することにより、送風機10が振れ回り運動を行うようにした例について説明したが、これに代えて、ワイヤの変位によって送風機10が振れ回り運動を行うようにした例について説明する。
【0061】
図13は、本第4実施形態において押さえ板61に対する送風機10の支持構造を示している。
【0062】
本実施形態の送風機10は、複数本のワイヤ100(図中2本のワイヤを示す)を介して押さえ板61に対して支持されている。具体的には、複数本のワイヤ100のそれぞれの一端は、ケーシング22の上部側のうち空気吸込口22aを形成する開口端22cに接続されている。
【0063】
複数本のワイヤ100の他端は、止め具110にそれぞれ接続されている。止め具110は、止め板60の開口部60a内に位置し、かつ押さえ板61における梁部63の中央部63aに対して下側に位置している。止め具110は、押さえ板61における梁部63の中央部63aに対してリベット120で固定されている。
【0064】
以上により、止め具110およびリベット120は支持部材を構成する。リベット120のうち止め具110に連結されている部分が送風機10の連結部位(すなわち、支持部位)を構成する。そして、モータ18の回転時には、複数本のワイヤ100の変位によって、送風機10の連結部位を送風機10の傾き中心として送風機10は振れ回り運動を行う。
【0065】
なお、本実施形態では、押さえ板61に対して送風機10を支持する構造以外は、上記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0066】
(他の実施形態)
上記第1〜第4実施形態では、遠心式送風機を送風機10として用いた例について説明したが、これに代えて、軸流式送風機を送風機10として用いてもよい。
【0067】
上記第1〜第4実施形態では、車両用シート14側から送風機10側に空気を吸い込んで吹き出す送風機10を用いた例について説明したが、これに限らず、送風機10側から車両用シート14側に空気を流す送風機10を用いてもよい。
【0068】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 送風機
12 シート空調装置
16 シートバネ
18 モータ
20 羽根車
22 ケーシング
40 梁
50 ブッシュ(支持部材)
61 押さえ板
100 ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13