特許第6024622号(P6024622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024622
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20161107BHJP
   B60T 8/36 20060101ALI20161107BHJP
   B60T 15/36 20060101ALI20161107BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   F16K31/06 305D
   B60T8/36
   B60T15/36 Z
   F16K31/06 385A
   H01F7/16 E
   H01F7/16 R
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-173849(P2013-173849)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-40624(P2015-40624A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】林 晃
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−082623(JP,A)
【文献】 特開平08−285114(JP,A)
【文献】 特開平05−099362(JP,A)
【文献】 特開平07−047945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
B60T 8/36
B60T 15/36
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに駆動されるポンプを内蔵した液圧ユニットのハウジングの一面に、ホイールシ
リンダのブレーキ液圧を低下させる減圧用電磁弁と前記ポンプから供給されるブレーキ液
圧を前記ホイールシリンダに供給する増圧用電磁弁を組み付けたブレーキ液圧制御装置で
あって、
前記減圧用電磁弁と前記増圧用電磁弁として下記の電磁弁前記ハウジングに偶数個組み付けられ、対をなす2個の電磁弁並列に配置されてその2個の電磁弁のそれぞれのヨークの幅絞り部間に空間部形成されたブレーキ液圧制御装置。

「コイルと、ヨークと、前記コイルが発生させた磁力で磁性体の可動子を吸引して弁体を駆動するバルブユニットを備えた液圧制御用の電磁弁であって、
前記バルブユニットは、前記可動子の外周を覆う磁性体の筒状ガイドを有し、
前記ヨークは、コの字状に成形されており、前記コイルの外周に沿わせる連結部と前記
コイルの端部に沿わせる連結部の両端の折り曲げ部を有し、かつ、前記連結部の両端の折
り曲げ部の各々が前記筒状ガイドを挿入するバルブユニット挿通孔と前記連結部に連なる
側の幅を縮小する幅絞り部を有し、前記連結部の幅がバルブユニット挿通孔形成部の幅よ
りも小さい電磁弁」
【請求項2】
前記空間部に電子部品が組み付けられた請求項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記電磁弁は、対をなす並列配置の第1群の2個と、その第1群の2個とは正反対向き
にした並列配置の第2群の2個を1組にして設けられ、計4個の電磁弁の前記ヨークの前記幅絞り部間に主空間部形成され、その主空間部に前記電子部品が組み付けられた請求項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記電磁弁のヨークの前記幅絞り部がヨークの両側面を切り欠く形状となっており、前記第1群と第2群の各2個の電磁弁の前記主空間部を形成する側とは反対側の幅絞り部間に副空間部形成され、その副空間部に他部品配置された請求項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液圧制御用の電磁弁を備える車両用のブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁に利用する電磁駆動装置の従来例として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載された電磁駆動装置(電磁作動装置)は、円筒状保持部材の内部に磁性体の固定子や弁体である可動子などが組み込まれたバルブユニットと、そのバルブユニットの前記保持部材の外周に配置された電磁コイルと、磁路を構成するヨークを組み合わせたものである。
【0004】
前記ヨークは、コの字状に折り曲げ成形されたものであって、電磁コイルの外周に沿わせる連結部の両端にバルブユニット挿通孔を有する折曲げ部を備えている。特許文献1の電磁駆動装置は、このようなヨークを用いることで軽量化や組み付け性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−66914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の電磁駆動装置は、ヨークが小型化されると、折り曲げ部の基端が連なる前記連結部から前記バルブユニット挿通孔までの距離が短くなり、連結部の両端の折り曲げ部を曲げ加工した際に、バルブユニット挿通孔に歪が生じて孔の真円度が悪化する。
【0007】
曲げの内側では、曲げ加工するブランク材に圧縮力が加わり、曲げの外側では逆に引っ張り力が加わる。折り曲げ部からバルブユニット挿通孔までの距離が近いと、その圧縮力と引っ張り力の影響が孔の形成部に波及してバルブユニット挿通孔が歪み易くなる。
【0008】
その歪によってバルブユニット挿通孔の真円度が悪化すると、孔面に対するバルブユニットの円筒状保持部材の密着性が悪化し、ヨークとバルブユニット間における磁気の伝達ロスが大きくなる。
【0009】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電磁弁のヨークを小型化した際の課題となっているバルブユニット挿通孔の歪による真円度の低下を抑制し、それによって、ヨークとバルブユニット間での磁気の伝達ロスを低減することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明においては、コイルと、ヨークと、前記コイルが
発生させた磁力で磁性体の可動子を吸引して弁体を駆動するバルブユニットを備えた液圧
制御用の、以下の特徴部を付加した電磁弁を採用する
【0011】
即ち、前記バルブユニット、前記可動子の外周を覆う磁性体の筒状ガイドを有し、
前記ヨークは、コの字状に成形されており、前記コイルの外周に沿わせる連結部と前記
コイルの端部に沿わせる連結部の両端の折り曲げ部を有し、かつ、前記連結部の両端の折
り曲げ部の各々が前記筒状ガイドを挿入するバルブユニット挿通孔と前記連結部に連なる
側の幅を縮小する幅絞り部を有し、前記連結部の幅がバルブユニット挿通孔形成部の幅よ
りも小さくなっている。
【0012】
かかる電磁弁は、前記ヨークの前記幅絞り部を、端面視において前記コイルの外径よりも径方向外側に配置するのがよい。
【0013】
この発明は、上記電磁弁を用いた下記のブレーキ液圧制御装置提供する。そのブレーキ液圧制御装置は、モータに駆動されるポンプを内蔵した液圧ユニットのハウジングの一面に、ホイールシリンダのブレーキ液圧を低下させる減圧用電磁弁と前記ポンプから供給されるブレーキ液圧を前記ホイールシリンダに供給する増圧用電磁弁を組み付けている。
【0014】
また、この発明を特徴づける構成として、前記減圧用電磁弁と前記増圧用電磁弁として上述したこの発明の電磁弁を前記ハウジングに偶数個組み付け、対をなす2個の電磁弁を並列に配置してその2個の電磁弁のそれぞれのヨークの前記幅絞り部間に空間部を形成し、その空間部に圧力センサなどの電子部品を組み付けている。
【0015】
上記圧力センサは、前記ハウジングの内部の液圧通路に導入されたブレーキ液圧を検知するものであるが、前記空間部に組み付ける電子部品は、その圧力センサに限定されない。
【0016】
この発明のブレーキ液圧制御装置は、前記電磁弁を、対をなす並列配置の第1群の2個と、その第1群の2個とは正反対向きにした並列配置の第2群の2個を1組とし、計4個の電磁弁の前記ヨークの前記幅絞り部間に主空間部を形成してその主空間部に電子部品を組み付けると好ましい。
【0017】
また、この構造では、前記幅絞り部をヨークの両側面を切り欠く形状にして第1群と第2群の各2個の電磁弁の前記主空間部を形成する側とは反対側の幅絞り部間に副空間部を形成することができ、その副空間部に前記液圧ユニットに対して電子制御ユニットを連結するボルトや前記液圧ユニットの
ポンプ駆動用モータに対して電子制御ユニット側から電力を供給する給電用端子などの他部品を配置
するのも好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の電磁弁は、ヨークの連結部の両端の折り曲げ部に幅絞り部を設けて前記連結部の幅をバルブユニット挿通孔形成部の幅よりも小さくしたので、折り曲げ部の曲げ加工がし易い。
【0019】
これにより、折り曲げ部を曲げ加工するときのブランク材の歪が小さくなり、連結部の両端の折り曲げ部に設けられたバルブユニット挿通孔の真円度の悪化が抑制される。
【0020】
そのために、バルブユニット挿通孔に対する前記筒状ガイドの密着性が高まり、ヨークとバルブユニット間での磁気の伝達ロスが減少して磁気効率が高まる。
【0021】
また、バルブユニット挿通孔の真円度向上とヨーク両端のバルブユニット挿通孔の軸ずれ抑制により、ヨークに対するバルブユニットの組み付けも容易になる。
【0022】
電磁弁のヨークに幅絞り部を設けることで、電磁弁をブレーキ液圧制御装置の液圧ユニットに組み付ける際に、2個の電磁弁を並列に配置してその2個の電磁弁のヨークの幅絞り部間に電子部品を組み付けるスペース(空間部)を確保することができる。
【0023】
この発明のブレーキ液圧制御装置は、この発明の電磁弁を液圧ユニットに偶数個組み付け、対をなす並列配置の2個の電磁弁のそれぞれのヨークの幅絞り部間に空間部を形成してその空間部に圧力センサなどの電子部品が組み付けており、スペースの有効利用が図られて液圧ユニットとそれを含ませた液圧制御装置を小型化することが可能になる。
【0024】
このほか、ヨークの折り曲げ部が易くなったことでその折り曲げ部を曲げ加工したときのスプリン
グバック量も小さくなり、ヨーク両端の折り曲げ部に設けるバルブユニット挿通孔の軸心のずれも抑えられる。この軸ずれ抑制の効果とバルブユニット挿通孔の真円度向上の効果が併せて発揮され、そのために、ヨークに対するバルブユニットの組み付け性も改善される。
【0025】
なお、第1群と第2群の各2個(計4個)の電磁弁のヨークの幅絞り部間に主空間部を形成してその主空間部に電子部品を組み付けたものや、第1群と第2群の各2個の電磁弁の主空間部を形成する側とは反対側の幅絞り部間に副空間部を形成してそこに他部品を配置するものは、装置の小型化の効果がより高まる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の電磁弁の一例を示す断面図である。
図2図1の電磁弁に用いたコイルとヨークの組立体を示す断面図である。
図3図2のコイルとヨークの組立体の平面図である。
図4図2のコイルとヨークの組立体の右側面図である。
図5】幅絞り部を有するヨークと幅絞り部の無いヨークに設けたバルブユニット挿通孔のばらつきの測定値を比較した図である。
図6】この発明のブレーキ液圧制御装置の全体構成の概要を示す斜視図である。
図7図6のブレーキ液圧制御装置に含まれる液圧ユニットの電磁弁組み付け側の端面図である。
図8】2輪車用液圧ブレーキ装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の電磁弁の実施の形態を添付図面の図1図5に基づいて説明し、さらに、その電磁弁を用いたこの発明のブレーキ液圧制御装置の実施の形態を添付図面の図6図8に基づいて説明する。
【0028】
図1に示した電磁弁1は、コイル2と、ヨーク3と、バルブユニット4を組み合わせて構成されている。
【0029】
コイル2は、ボビン2aに銅線2bを巻きつけたものであって、電力を供給するコイル端子2cを備えている。
【0030】
ヨーク3は、磁性体のブランク材をコの字状に曲げ加工したものであって、コイル2の外周に沿わせる連結部3aと、コイル2の端部に沿わせる折り曲げ部3bを有する。
【0031】
折り曲げ部3bは、連結部3aの両端に設けられおり、連結部3aの両端の対向した折り曲げ部3bのそれぞれに、バルブユニット挿通孔3c(図2図3参照)が設けられている。
【0032】
また、このヨーク3の各折り曲げ部3bの連結部3aに連なる側(基端側)に、図3に示した幅絞り部3dを設けている。その幅絞り部3dは、コイル2の外径よりも径方向外側に配置されており、コイル2が発生させる磁束が折り曲げ部3bに乗り移り易くなっている。
【0033】
その幅絞り部3dの設置によって連結部3aの図3に示した幅wが縮小され、その幅wがヨークのバルブユニット挿通孔形成部(折り曲げ部3bの幅を縮小していない部分)の幅w1よりも小さくなっている。
【0034】
バルブユニット4は、各々が磁性体の可動子5および固定子6と、可動子5に駆動される弁体7と、その弁体を接離させる弁座8と、可動子5の外周を覆う磁性体の筒状ガイド9と、可動子5を閉弁方向に付勢する復帰スプリング10と、底壁と周壁にポート11a、11bを設けた有底筒状のホルダ11を組み合わせたものを図1に例示した。
【0035】
12は、ホルダ11の内部に組み込んだシートであり、このシートに弁座8と、ポート11a、11b間を連通させる通路孔12aが設けられている。
【0036】
固定子6は、図1においてヨーク3の上側の折り曲げ部3bに設けられたバルブユニット挿通孔3cに、その孔の内面に密着するように挿入されている。
【0037】
また、筒状ガイド9は、図1においてヨーク3の下側の折り曲げ部3bに設けられたバルブユニッ
ト挿通孔3cにその孔の内面に接するように挿入されている。
【0038】
ホルダ11も磁性体で形成されており、このホルダ11の上側の一部は筒状ガイド9に圧入されている。
【0039】
このように構成した例示の電磁弁1は、コイル2に励磁電流を流すと、磁束が発生し、その磁束がヨーク3を通して流れて可動子5が発生した磁力によって固定子6に吸引され、弁体7が弁座8から離反して弁部が開き、ポート11a、11bが連通する。
【0040】
また、コイルへの通電を止めると、可動子5が復帰スプリング10に押し戻されて弁部が閉じる。
【0041】
例示の電磁弁1は、ヨーク3の2箇所の折り曲げ部3bに幅絞り部3dを設けたことによってバルブユニット挿通孔3cの真円度が幅絞り部の無い従来品に比べて良くなる。
【0042】
幅絞り部を有するヨークと、幅絞り部の無いヨークに設けられたバルブユニット挿通孔の内径のばらつき状態を図5に示す。
【0043】
内径のばらつきは、孔深さ方向(板厚方向)に0.2mm刻みでバルブユニット挿通孔3cの内径を測定して求めた。測定点は、各深さ位置とも周方向等分点の6箇所の直径を求めてその6箇所の測定データの平均値を図5に記載した。
【0044】
ヨークは、金属であり、特に鉄製であると好ましく、板厚=2.0mm、バルブユニット挿通孔形成部の幅w1=10mm〜(幅絞り部の無いものは全体が幅w1)、連結部の幅w=17mm、両端の折り曲げ部間の距離L=13mm
、折り曲げ部の内径側の曲げ半径r=5.3mmである。
【0045】
図5から判るように、幅幅絞り部のあるヨークに設けたバルブユニット挿通孔の孔径は、ばらつき(最大値と最小値の差)が、幅絞り部の無いヨークのばらつきに比べて半減している。これから、幅絞り部を設けることの有効性を確認できる。
【0046】
なお、電磁弁には、弁部を単に開閉するものと、可動子5をコイル2に流す電流の大きさに応じた位置に動かして弁部の開度を制御するものがある。この発明を適用する電磁弁は、どちらのタイプのであってもよい。
【0047】
また、図1の電磁弁1は、常閉(ノーマルクローズ)型であるが、この発明を適用する電磁弁は、常開(ノーマルオープン)型であってもよい。さらに、常開型の電磁弁は、弁部と並列な通路を有し、その通路に作動液の流れを一方向に規制するチェック弁を組み込んだものであってもよい。
【0048】
次に、添付図面の図6図8に基づいて、この発明の電磁弁を用いたブレーキ液圧制御装置の実施の形態を説明する。
【0049】
2輪車用液圧ブレーキ装置の一例の回路図を図8に示す。同図の13,14は、ブレーキレバー(
図示せず)の操作力を受けて作動するマスタシリンダ、15,16は前輪と後輪のホイールシリンダ、17は、電子制御装置からの指令に基づいて各ホイールシリンダの液圧を調整するブレーキ液圧制御装置である。
【0050】
図示のブレーキ液圧制御装置17は、液圧ユニット20と電子制御装置(ECU)の含まれた電子制御ユニット40を有する。
【0051】
液圧ユニット20は、ホイールシリンダ15,16のブレーキ液圧を低下させる減圧用の電磁弁22−1,22−2と、ホイールシリンダ15,16のブレーキ液圧を高める増圧用のチェック弁内臓の電磁弁23−1,23−2と、ホイールシリンダ15,16から排出されたブレーキ液を一時的に蓄える低圧リザーバ24−1,24−2と、ホイールシリンダ15,16から排出されたブレーキ液を汲み上げてマスタシリンダからホイールシリンダに至る液圧路に還流させるポンプ25−1,25−2と、そのポンプを駆動するモータ26と、ホイールシリンダの液圧を検知する圧力センサ27を有する。
【0052】
図示のブレーキ液圧制御装置17は、一系統のブレーキ液圧のみを圧力センサ27で検出するようにしているが、前、後輪の各系統に圧力センサを設置して両系統のホイールシリンダ圧を検出する構造にすることも可能である。
【0053】
上記ブレーキ液圧制御装置の全体構成の概要を図6に示す。図示のブレーキ液圧制御装置17は、液圧ユニット20と電子制御ユニット40を組み合わせて構成されている。
【0054】
電子制御ユニット40は、基板収容ケース41と、そのケースの開口を液密に閉鎖する蓋(図示せず)と、基板収容ケース41に収容される回路基板42を組み合わせて構成されている。
【0055】
図1は、構造をわかりやすくするために、回路基板42を想像線にして表した。この回路基板42
には、電子制御用の回路を作り出すICチップ(ECU)などが実装され、必要な電気回路も作りこまれている。
【0056】
図には、基板の電源回路に電気的に接続して回路基板42で支持する電磁弁のコイル2と、基板収
容ケース41の本体ケース41aに植設された電気端子43,44,45を示した。
【0057】
液圧ユニット20は、アルミニウム合金などからなるハウジング21の内部に前輪と後輪に対応させた2系統の増、減圧用の液圧路を形成し、さらに、モータ26に駆動されるポンプ(図8の25)や前後輪のブレーキ液圧の増減制御を行う電磁弁22−1,22−2、23−1,23−2を組み付けたものである。
【0058】
電磁弁22−1,22−2、23−1,23−2は、図7に示すように、前記ハウジング21の一面側(モータ26を固定した面とは反対側の面)に組み付けられている。
【0059】
各電磁弁22−1,22−2、23−1,23−2は、折り曲げ部に幅絞り部3dのあるヨーク3を用いている。減圧用の電磁弁22−1,22−2図1で説明した電磁弁1と同一構造の弁である。増圧用の電磁弁23−1,23−2は、チェック弁を内蔵した常開型であり、バルブユニットの構造が図1の電磁弁1とは異なる。ヨークは図1の電磁弁と同様、幅絞り部3dを設けたものが用いられている。
【0060】
電磁弁22−1,22−2を対にして並列に配置し、さらに、電磁弁23−1,23−2も対にして並列に配置している。その配置は、第1群の電磁弁22−1,22−2に対して第2群の電磁弁23−1,23−2が正反対向き、かつ、ヨークの幅絞り部を設けた側が互いに突き合わされる向きになるようにしている。
【0061】
その配列により、計4個の電磁弁のヨークの幅絞り部間に主空間部28が生じており、その主空間
部28に圧力センサ27を配置している。これにより、電磁弁22−1と22−2間の間隔と23−1と2
−2の間の間隔が詰まり、液圧ユニット20とブレーキ液圧制御装置17を小型化することが可能に
なっている。
【0062】
図示の構造では、第1群と第2群の各2個の電磁弁22−1と22−2及び23−1と23−2の主空間部28を形成する側とは反対側の幅絞り部間に副空間部29が形成されている。その副空間部29には、液圧ユニットのハウジング21に対して電子制御ユニットの基板収容ケース41を連結する締結ボルト30を配置しており、これによって、ブレーキ液圧制御装置17が更に小型化されている。
【0063】
図7の31は、電子制御ユニット40内の給電回路とモータ26をつなぐ給電用端子(モータ端子)である。給電用端子31は、ハウジング21に貫通孔32を設けてその貫通孔に通している。その
貫通孔32と締結ボルト30の位置を入れ替えて、副空間部29に給電用端子31を配置することも可能である。
【0064】
なお、液圧ユニットのハウジング21に組み付けられた電磁弁や圧力センサなどは、電子制御ユニット40のケースで覆って保護される。
【符号の説明】
【0065】
1 電磁弁
2 コイル
2a ボビン
2b 銅線
2c コイル端子
3 ヨーク
3a 連結部
3b 折り曲げ部
3c バルブユニット挿通孔
3d 幅絞り部
4 バルブユニット
5 可動子
6 固定子
7 弁体
8 弁座
9 筒状ガイド
10 復帰スプリング
11 ホルダ
11a、11b ポート
12 シート
12a 通路孔
13,14 マスタシリンダ
15,16 ホイールシリンダ
17 ブレーキ液圧制御装置
20 液圧ユニット
21 ハウジング
22−1,22−2 減圧用の電磁弁
23−1,23−2 増圧用の電磁弁
24−1,24−2 低圧リザーバ
25 ポンプ
26 モータ
27 圧力センサ
28 主空間部
29 副空間部
30 締結ボルト
31 給電用端子
40 電子制御ユニット
41 基板収容ケース
41a 本体ケース
42 回路基板
43,44,45 電気端子
w ヨークの連結部の幅
w1 ヨークのバルブユニット挿通孔形成部の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8