(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用回転電機について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、一実施形態の車両用回転電機100は、2つの固定子巻線1A、1B、界磁巻線2、2つのMOSモジュール群3A、3B、UVW相ドライバ4A、XYZ相ドライバ4B、Hブリッジ回路5、Hブリッジドライバ6、回転角センサ7、制御回路8、入出力回路9、電源回路10、ダイオード11、コンデンサ12を含んで構成されている。この車両用回転電機100は、ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と称されており、電動機の機能と発電機の機能を併せ持っている。
【0010】
一方の固定子巻線1Aは、U相巻線、V相巻線、W相巻線からなる三相巻線であって、固定子鉄心(図示せず)に巻装されている。同様に、他方の固定子巻線1Bは、X相巻線、Y相巻線、Z相巻線からなる三相巻線であって、上述した固定子鉄心に、固定子巻線1Aに対して電気角で30度ずらした位置に巻装されている。本実施形態では、これら2つの固定子巻線1A、1Bと固定子鉄心によって、回転子と対向配置された固定子が構成されている。なお、固定子巻線1A、1Bのそれぞれの相数は3以外であってもよい。
【0011】
界磁巻線2は、ベルトあるいはギアを介してエンジンとの間で駆動力の入出力を行う回転軸を有する回転子に磁界を発生させるためのものであり、界磁極(図示せず)に巻装されて回転子を構成している。
【0012】
一方のMOSモジュール群3Aは、一方の固定子巻線1Aに接続されており、全体で三相ブリッジ回路が構成されている。このMOSモジュール群3Aは、発電動作時に固定子巻線1Aに誘起される交流電圧を直流電圧に変換するとともに、電動動作時に外部(高電圧バッテリ200)から印加される直流電圧を交流電圧に変換して固定子巻線1Aに印加する電力変換器3として動作する。MOSモジュール群3Aは、固定子巻線1Aの相数に対応する3個のスイッチングモジュールとしてのMOSモジュール3AU、3AV、3AWを備えている。MOSモジュール3AUは、固定子巻線1Aに含まれるU相巻線に接続されている。MOSモジュール3AVは、固定子巻線1Aに含まれるV相巻線に接続されている。MOSモジュール3AWは、固定子巻線1Aに含まれるW相巻線に接続されている。
【0013】
図2に示すように、MOSモジュール3AUは、2つのMOSトランジスタ30、31、電流検出用抵抗32を備えている。一方のMOSトランジスタ30は、ソースがP端子を介して固定子巻線1AのU相巻線に接続され、ドレインがパワー電源端子PBに接続された上アーム(ハイサイド側)の第1のスイッチング素子である。パワー電源端子PBは、例えば定格48Vの高電圧バッテリ200(第1のバッテリ)や高電圧負荷210の正極端子に接続されている。他方のMOSトランジスタ31は、ドレインがP端子を介してU相巻線に接続され、ソースが電流検出用抵抗32を介してパワーグランド端子PGNDに接続された下アーム(ローサイド側)の第2のスイッチング素子である。これら2つのMOSトランジスタ30、31からなる直列回路が高電圧バッテリ200の正極端子と負極端子の間に配置され、これら2つのMOSトランジスタ30、31の接続点にP端子を介してU相巻線が接続されている。また、MOSトランジスタ30のゲート、ソース、MOSトランジスタ31のゲート、電流検出用抵抗32の両端のそれぞれがUVW相ドライバ4Aに接続されている。
【0014】
MOSトランジスタ30、31のそれぞれのソース・ドレイン間にはダイオードが並列接続されている。このダイオードはMOSトランジスタ30、31の寄生ダイオード(ボディダイオード)によって実現されるが、別部品としてのダイオードをさらに並列接続するようにしてもよい。上アームおよび下アームの少なくとも一方を、MOSトランジスタ以外のスイッチング素子を用いて構成するようにしてもよい。
【0015】
なお、MOSモジュール3AU以外のMOSモジュール3AV、3AWや後述するMOSモジュール3BX、3BY、3BZも基本的に同じ構成を有しており、詳細な説明は省略する。
【0016】
他方のMOSモジュール群3Bは、他方の固定子巻線1Bに接続されており、全体で三相ブリッジ回路が構成されている。このMOSモジュール群3Bは、発電動作時に固定子巻線1Bに誘起される交流電圧を直流電圧に変換するとともに、電動動作時に外部(高電圧バッテリ200)から印加される直流電圧を交流電圧に変換して固定子巻線1Bに印加する電力変換器3として動作する。MOSモジュール群3Bは、固定子巻線1Bの相数に対応する3個のスイッチングモジュールとしてのMOSモジュール3BX、3BY、3BZを備えている。MOSモジュール3BXは、固定子巻線1Bに含まれるX相巻線に接続されている。MOSモジュール3BYは、固定子巻線1Bに含まれるY相巻線に接続されている。MOSモジュール3BZは、固定子巻線1Bに含まれるZ相巻線に接続されている。
【0017】
UVW相ドライバ4Aは、3個のMOSモジュール3AU、3AV、3AWのそれぞれに含まれるMOSトランジスタ30、31の各ゲートに入力する駆動信号を生成するとともに、電流検出用抵抗32の両端電圧を検出する。同様に、XYZ相ドライバ4Bは、3個のMOSモジュール3BX、3BY、3BZのそれぞれに含まれるMOSトランジスタ30、31の各ゲートに入力する駆動信号を生成するとともに、電流検出用抵抗32の両端電圧を検出する。
【0018】
Hブリッジ回路5は、ブラシ装置55(
図5)を介して界磁巻線2の両端に接続されており、界磁巻線2に励磁電流を供給する励磁回路である。
図3に示すように、Hブリッジ回路5は、2つのMOSトランジスタ50、51、2つのダイオード52、53、電流検出用抵抗54を備えている。ハイサイド側のMOSトランジスタ50とローサイド側のダイオード52が直列に接続されており、この接続点に界磁巻線2の一方端が接続されている。また、ハイサイド側のダイオード53とローサイド側のMOSトランジスタ51と電流検出用抵抗54とが直列に接続されており、ダイオード53とMOSトランジスタ51の接続点に界磁巻線2の他方端が接続されている。このHブリッジ回路5は、パワー電源端子PBとパワーグランド端子PGNDのそれぞれに接続されている。MOSトランジスタ50、51をオンすることにより、Hブリッジ回路5から界磁巻線2に励磁電流が供給される。また、MOSトランジスタ50、51のいずれかをオフすることにより励磁電流の供給が停止されるとともに、ダイオード52、53のいずれかを介して界磁巻線2を流れる励磁電流を環流させることができる。
【0019】
Hブリッジドライバ6は、Hブリッジ回路5に含まれるMOSトランジスタ50、51の各ゲートに入力する駆動信号を生成するとともに、電流検出用抵抗54の両端電圧を検出する。
【0020】
回転角センサ7は、回転子の回転角を検出する。例えば、永久磁石とホールICを用いて回転角センサ7を構成することができる。具体的には、
図4に示すように、回転子20の回転軸21先端に回転検出用磁石としての永久磁石22を固定するとともに、この永久磁石22と対向する位置に制御基板102上の位置に回転角センサ7としてのホールIC23を配置する。このホールIC23には、永久磁石22の外周近傍であって互いに90°隔たった位置に配置されたホール素子が含まれている。これらのホール素子の出力を取り出すことにより、永久磁石22とともに回転する回転子20の回転角を検出することができる。なお、回転角センサ7は、ホールIC23以外(例えば磁気抵抗効果素子や磁気インピーダンス素子など)を用いて構成するようにしてもよい。また、
図4に示した永久磁石22の配置や取付方法は一例であって、回転軸21やその周辺構造に合わせて適宜変更するようにしてもよい。
【0021】
制御回路8は、電力変換器3を含む車両用回転電機100の全体を制御する。この制御回路8には、アナログ−デジタル変換器やデジタル−アナログ変換器が備わっており、他の構成との間で信号の入出力を行う。制御回路8は、例えばマイコン(マイクロコンピュータ)によって構成されており、所定の制御プログラムを実行することにより、UVWドライバ4A、XYZドライバ4B、Hブリッジドライバ6を制御して車両用回転電機100を電動機や発電機として動作させたり、異常検出や通知などの各種処理を行う。
【0022】
入出力回路9は、制御用ハーネス310を介して外部との間の信号の入出力や、高電圧バッテリ200の端子電圧やパワーグランド端子PGNDの電圧のレベル変換等を行う。入出力回路9は、入出力される信号や電圧を処理するための入出力インタフェースであって、例えばカスタムICによって必要な機能が実現されている。
【0023】
電源回路10は、定格12Vの低電圧バッテリ202(第2のバッテリ)が接続されており、例えばスイッチング素子をオンオフしてその出力をコンデンサで平滑することにより、5Vの動作電圧を生成する。この動作電圧によって、UVW相ドライバ4A、XYZ相ドライバ4B、Hブリッジドライバ6、回転角センサ7、制御回路8、入出力回路9が動作する。
【0024】
コンデンサ12は、車両用回転電機100を電動動作させるためにMOSモジュール3AU等のMOSトランジスタ30、31をオンオフする際に発生するスイッチングノイズを除去あるいは低減するためのものである。
図1では1つのコンデンサ12が用いられているが、実際にはスイッチングノイズの大きさに応じて適宜その数が決定される。例えば、
図5に示されるように、本実施形態の車両用回転電機100では4つのコンデンサ12が用いられている。
【0025】
上述したUVW相ドライバ4A、XYZ相ドライバ4B、Hブリッジ回路5、Hブリッジドライバ6、回転角センサ7(回転子に取り付けられた永久磁石を除く)、制御回路8、入出力回路9、電源回路10が1枚の制御基板102に搭載されている。
【0026】
また、
図1に示すように、車両用回転電機100には、パワー電源端子PB、パワーグランド端子PGNDや、制御グランド端子CGNDと制御電源端子CBと制御用ハーネス310などが取り付けられるコネクタ400が備わっている。パワー電源端子PBは、高電圧の正極側入出力端子であり、高電圧バッテリ200や高電圧負荷210が所定のケーブルを介して接続される。制御電源端子CBは、低電圧の正極側入力端子であり、低電圧バッテリ202や低電圧負荷204が所定のケーブルを介して接続される。
【0027】
パワーグランド端子PGNDは、負極側入出力端子としての第1のグランド端子であって、パワー系回路を接地するためのものである。このパワーグランド端子PGNDは、第1の接続線としての接地用ハーネス320を介して車両フレーム500に接続されている。上述したMOSモジュール群3A、3B(電力変換器3)およびHブリッジ回路5(励磁回路)がパワー系回路である。このパワー系回路には、固定子巻線1A、1Bや界磁巻線2と共通の電流が流れるパワー素子としてのMOSトランジスタ30、31、50、51が含まれている。
【0028】
また、制御グランド端子CGNDは、パワーグランド端子PGNDとは別に設けられた第2のグランド端子であって、制御系回路を接地するためのものである。この制御グランド端子CGNDは、接地用ハーネス320とは別の接地用ケーブル330(第2の接続線)を介して接地されている。この制御グランド端子CGNDと車両用回転電機100のフレーム(以後、「ISGフレーム」と称する)110との間には、入出力回路9の内部配線を介してダイオード11が挿入されている。具体的には、ダイオード11のカソードがフレームグランド端子FLMGNDに接続されており、このフレームグランド端子FLMGNDがISGフレーム110に接続されている。上述したUVW相ドライバ4A、XYZ相ドライバ4B、Hブリッジドライバ6、回転角センサ7、制御回路8、入出力回路9などが制御系回路である。なお、この接地用ケーブル330の接続先は、車両側に用意されたグランド電位(0V)の部位であり、電圧変動がないものとする。また、
図1では、ダイオード11は入出力回路9の外部に設けられているが、ダイオード11を入出力回路9に搭載するようにしてもよい。
【0029】
コネクタ400は、パワー電源端子PB、パワーグランド端子PGND以外の端子(制御グランド端子CGNDや制御電源端子CBなど)に制御用ハーネス310や接地用ケーブル330、その他のケーブルを取り付けるためのものである。
【0030】
上述した車両用回転電機100のISGフレーム110は、例えばアルミダイカストによって形成された導電体であり、このISGフレーム110がエンジン(E/G)ブロック510にボルトによって固定されている。さらに、エンジンブロック510は接地用ハーネス322によって車両フレーム500に接続されている。
【0031】
本実施形態の車両用回転電機100はこのような構成を有しており、次に、電力変換器3の構造と制御基板102を収納する基板ケース80(
図10、
図11)の構造や制御基板102の位置決め構造について説明する。
【0032】
図6に示すように、2つのMOSモジュール群3A、3Bを含んで一体に構成される電力変換器3は、MOSモジュール3AU、3AV、3AW、3BX、3BY、3BZと、正極側入出力端子300および負極側入出力端子301が突出する端子台308と、各MOSモジュール3AU等と端子台308との間に配置される6個の中間端子台309とを含んで構成されている。正極側入出力端子300と負極側入出力端子301は、異なる形状を有している(例えば、異なる直径のボルト)。なお、
図6に示す電力変換器3の分解斜視図や
図5に示す車両用回転電機100の斜視図では、制御回路8と入出力回路9等が実装された制御基板102や、制御基板102を収納する基板ケース80、電力変換器3や制御基板102等を覆うリアカバーなどが取り外された状態が示されている。
【0033】
端子台308は、インサート成型により形成されており、正極側入出力端子300が接続された板状の配線層としての正極側バスバー302と、負極側入出力端子301が接続された板状の配線層としての負極側バスバー303とを含んでいる(
図7)。これらの正極側バスバー302と負極側バスバー303のそれぞれは、端子台308を構成する樹脂材料を挟んで対向した状態で積層されている。
図5では、端子台308の一部を途中で破断した状態であって、破断面において正極側バスバー302と負極側バスバー303が露出した状態が示されている(A部)。
【0034】
また、
図7に示すように、正極側バスバー302は、正極側入出力端子300を挟んで2方向に延在する2つの枝部302A、302Bを有する。これら2つの枝部302A、302Bは、正極側入出力端子300および負極側入出力端子301の中心を挟んで対称形状(線対称)を有している。
図8に示すように、一方の枝部302Aには、MOSモジュール3AU、3AV、3AWの各電源端子(パワー電源端子PB)がほぼ等間隔に接続される。他方の枝部302Bには、MOSモジュール3BX、3BY、3BZの各電源端子(パワー電源端子PB)がほぼ等間隔に接続される。また、負極側バスバー303は、負極側入出力端子301を挟んで2方向に延在する2つの枝部303A、303Bを有する。これら2つの枝部303A、303Bは、正極側入出力端子300および負極側入出力端子301の中心を挟んで対称形状(線対称)を有している。一方の枝部303Aには、MOSモジュール3AU、3AV、3AWの各グランド端子(パワーグランド端子PGND)がほぼ等間隔に接続される。他方の枝部303Bには、MOSモジュール3BX、3BY、3BZの各グランド端子(パワーグランド端子PGND)がほぼ等間隔に接続される。
【0035】
熱伝導性を向上させるために、MOSモジュール3AU等の下面とフレーム40との間の隙間に熱伝導性が良好なグリースG1(
図6)を充填させることが望ましい。また、正極側バスバー302と負極側バスバー303(端子台308)は、MOSモジュール3AU等の上面に押圧された状態で接触しているため、MOSモジュール3AU等に含まれるMOSトランジスタ30、31の発熱を放熱する放熱部材としても用いられている。但し、この放熱部材としての放熱性を高めるためには、MOSモジュール3AU等や端子台308を形成するモールド樹脂の熱伝導性を高めたり、MOSモジュール3AU等と端子台308との間の隙間に熱伝導性が良好なグリースG2(
図6)を充填するなどの工夫をすることが望ましい。なお、
図6では、MOSモジュール3BXに対応するグリースG1、G2の充填位置をハッチングで示したが、他のMOSモジュール3AU等についても同様であり、図示は省略されている。また、必ずしもグリースG1、G2の少なくとも一方を、全てのMOSモジュール3AU等に対応させて充填する必要はなく、放熱性のばらつき等を考慮して充填対象となるMOSモジュール3AU等の数を減らすようにしてもよい。
【0036】
フレーム40は、回転子20と固定子2を収容して保持するためのものであり、
図5や
図6に示すように、リア部40A、センター部40B、フロント部40Cの3つの分割部位によって構成されている。センター部40Bは、固定子を内包する筒状部材であり、
図9に示すように、内部に冷却液流路41を構成する凹部41Aを有する。リア部40Aは、センター部40Bの一方の軸方向端部であるリア側(反プーリ側)を塞ぐ円盤状部材である。センター部40Bの冷却液流路41はセンター部40Bの一方の軸方向端部において開口し、この開口部の両側に気密性維持のためのOリング42が配置されており、これらのOリング42に当接するようにリア部40Aを取り付けて凹部41Aの開口面を閉塞することにより冷却液流路41が形成される。また、リア部40Aは、センター部40Bと反対側の軸方向端面に、各MOSモジュール3AU等の下面が接触した状態で電力変換器3が取り付けられている。
【0037】
冷却液流路41は、横断面がC字形状を有しており、その一方端に対応するリア部40Aの一部に冷却液入口41B(
図5、
図6)が、他方端に対応するリア部40Aの一部に冷却液出口41C(
図5、
図6)が設けられている。これらの冷却液入口41Bおよび冷却液出口41Cのそれぞれには、冷却液用配管41D(
図9)が接続されて冷却液の供給および排出が行われる。このような冷却液流路41を通して冷却液を流すことにより、フレーム40が冷却される。
【0038】
また、
図5に示す電力変換器3の上部には図示しない基板ケース80が配置されており、この基板ケース80に制御基板102が収納されている。
図10および
図11に示すように基板ケース80が制御基板102に収納されている。この基板ケース80は、制御基板102が搭載されるハウジング82と、シール材83を介してハウジング82の開口を覆うカバー84とを備える。なお、
図10にはシール材83およびカバー84を取り付ける前の状態が示されている。
【0039】
ハウジング82は、外周部82Aよりも内径側に配置された4つの固定部82Bを有し、これら4つの固定部82Bによってフレーム40のリア部40Aに固定されている。これら4つの固定部82Bは、回転軸21に対して対称配置されている。また、それぞれの固定部82Bには、固定部材としてのネジを挿通する挿入孔82Cが形成されている。フレーム40のリア部40Aは、回転子20の回転軸21に沿ってリア側に突出した4本の取付ポスト44(
図5、
図6、
図8)を有する。これら4本の取付ポスト44は、上述した4つの固定部82Bに対応する位置に設けられている。固定部82Bのそれぞれに形成された挿入孔82Cにネジを通して締め回すことにより、固定部82Bを取付ポスト44に締結して、基板ケース80の全体をリア部40Aに固定することができる。
【0040】
制御基板102は、
図12に示すように、基板ケース80の外形形状に沿った多角形形状(例えば八角形に近い形状)を有しており、基板ケース80(ハウジング82)の4つの固定部82Bに対応する位置(4箇所)に、外形部から貫通部としての切り欠き部80Aを有する。なお、切り欠き部80Aを設ける代わりに、固定部82Bの形状に合わせた貫通部としての貫通孔を設けるようにしてもよい。
【0041】
カバー84は、ハウジング82の外周部82Aに対してシール材83を介して蓋をするようにハウジング82に取り付けられており、4つの固定部82Bを含む制御基板102の全体を覆っている。カバー84と当接する外周部82Aの端部は、
図11に示すようにV溝形状を有しており、シール面積の拡大と位置決めの容易化が図られている。なお、単にシール性を確保する場合には、V溝形状ではなく、平面形状としてもよい。
【0042】
また、上述したハウジング82は、各固定部82Bの周囲に、制御基板102に設けられた貫通部としての切り欠き部80Aを貫通する仕切り壁82Dを有する。この仕切り壁82Dの内側には、挿入孔82Cを含む固定部82Bの全体が配置されている。また、この仕切り壁82Dの端部は、
図11に示すように、シール材83を介してカバー84に当接しており、仕切り壁82Dの内部空間と制御基板102の搭載空間との間が仕切り壁82Dによって分離される。
【0043】
また、上述したハウジング82は、制御基板102に実装されたホールIC23(回転角センサ7)と、回転子20の回転軸21先端に固定された回転検出用磁石としての永久磁石22との間に配置された非磁性金属からなる薄板部材82Eがインサート成形により一体に形成されている。ハウジング82は、金属材料である薄板部材82E以外は絶縁材としての樹脂材料によって形成されている。薄板部材82Eとしては、例えば、熱伝導性が良好なアルミニウムや銅などの金属材料を用いることができる。この薄板部材82Eは、基板ケース80の外部(
図11に示す例では下側)に露出している。また、この薄板部材82Eの端部は、4つの固定部82Bに埋設されている(
図11)。
【0044】
また、薄板部材82Eは、金属材料であって良好な熱伝導性を有するため、制御基板102の一部(例えば、発熱量が多い制御回路8が搭載された領域)と当接する当接部82Fを備えることが望ましい(
図13)。この当接部82Fは、薄板部材82Eの平板部分を部分的に突出させることにより形成される。なお、当接部82Fは、薄板部材82Eと一体成形する必要は必ずしもなく、薄板部材82Eとは別部材としての金属材料からなる当接部82Fをネジ止めや接着剤固定により組み合わせて用いるようにしてもよい。また、薄板部材82Eを挟んで当接部82Fと反対側に、薄板部材82Eと一体あるいは別体の放熱フィン82G(
図13)を配置することにより、さらに放熱性を向上させるようにしてもよい。
【0045】
ところで、
図4に示すように、制御基板102に実装されたホールIC23は、回転軸21の先端に取り付けられた永久磁石22に対向する位置(回転方向位置および径方向位置)に正確に取り付ける必要がある。このために、本実施形態では、ブラシ装置55から延出する給電ターミナルを用いた制御基板102の位置決めが行われる。
【0046】
図8に示すように、ブラシ装置55は、ブラシ551、552(
図14)を保持するブラシホルダ550とスリップリングカバー570を含んで構成されている。これらのブラシホルダ550とスリップリングカバー570によって、回転軸21の端部近傍に備わったスリップリング24、25(
図4)の周囲空間が覆われる。
【0047】
図14および
図15に示すように、ブラシホルダ550は、箱型形状を有し、内部に正極側と負極側の2本のブラシ551、552を収納する直方体形状の収納部553、554と、これらの収納部553、554から組付時にスリップリング24、25(
図4)を囲むように広がりながら延びだすスカート部555と、ブラシ551、552のそれぞれから延びた柔軟性を有するリード部としてのピグテール556と電気的に接続されて外部に突出する一対の給電ターミナル561、562と、給電ターミナル561、562と電気的に絶縁されて外部に突出する一対の固定用ターミナル563、564とを備えている。給電ターミナル561、562および固定用ターミナル563、564は、絶縁樹脂製のブラシホルダ550にインサート成形されている。
【0048】
ブラシ551、552は、天然黒鉛に銅粉を含有し、フェノール樹脂などを結合材とした金属黒鉛である。これらのブラシ551、552は同一形状であり、同じ形状のものを互いにピグテール556側が向かい合うように配置し、スプリング557を介在させた状態で収納部553、554に収納される。これらのブラシ551、552は、スプリング557によってスリップリング24、25に向けて押圧されて収納部553、554内で摺動接触している。
【0049】
固定用ターミナル563、564は、
図15に示すように、ブラシホルダ550の対向する側面のそれぞれから耳状に突出しており、それらの露出部の中央に孔563a、564aが設けられている。孔563a、564aのそれぞれに、締結手段としてのビス563b、564b(
図8)を通して、リア部40Aの軸方向端面に設けられた台座(図示せず)に締結することにより、ブラシホルダ550がリア部40Aに固定される。このときのブラシホルダ550の位置決めは、ビス563b、564bを孔563a、564aに通した状態でブラシホルダ550を所定方向に押圧した状態で所定位置に取り付けることにより行われる。
【0050】
給電ターミナル561、562は、
図14および
図15に示すように、ブラシホルダ550の軸方向端面からリア側(反プーリ側)に、回転軸21に沿って並走するように突出しており、これらの間にはブラシホルダ550と一体形成された壁部565が形成されている。この壁部565は、一対の給電ターミナル561、562が突出するブラシホルダ550の端面に垂直に形成されている。また、壁部565の高さは、給電ターミナル561、562の高さよりも低く設定されている。
【0051】
なお、給電ターミナル561、562は、横断面が板状であって、回転子20の回転方向に沿ってこの横断面の長手方向が配置されている。これにより、給電ターミナル561、562の径方向に沿った長さを短くすることができるため、径方向に沿ったブラシホルダ550(ブラシ装置55)の長さを短くすることができる。
【0052】
本実施形態では、ブラシホルダ550からリア側に突出する2本の給電ターミナル561、562を用いて、制御基板102に対する電気接続と制御基板102の位置決めを行っている。具体的には、
図14に示すように、基板ケース50のハウジング82に含まれる薄板部材82Eと制御基板102のそれぞれに貫通孔が形成されており、これらの貫通孔に2本の給電ターミナル561、562を通すように、制御基板102が固定された基板ケース80が取り付けられる。特に、制御基板102に形成された貫通孔のサイズを給電ターミナル561、562の断面サイズとほぼ同じ(組み付け作業性を考慮して若干大きくする必要がある)に設定することにより、給電ターミナル561、562を制御基板102の貫通孔に係合させることができ、給電ターミナル561、562を用いた制御基板102の位置(回転方向位置および径方向位置)決めが可能となる。給電ターミナル561、562の先端が制御基板102よりも所定長さだけ突出するように給電ターミナル561、562の長さが設定されており、これらの突出部分が制御基板102に半田付けされて制御基板102に実装されたHブリッジ回路5との間で電気的な接続が行われる。
【0053】
このように、本実施形態の車両用回転電機100では、フレーム4のリア部40Aに固定されたブラシ装置55(ブラシホルダ550)から延出する給電ターミナル561、562を用いて制御基板102の位置決めを行うことにより、回転角センサ7のホールIC23が実装された制御基板102を所定の位置に配置することが可能となり、回転角センサ7を用いた位置検出精度を向上させることができる。
【0054】
特に、給電ターミナル561、562は、ブラシ装置55から回転軸21に沿った向きに延出しており、制御基板102に形成された貫通孔に係合している。これにより、確実に制御基板102をブラシ装置55の給電ターミナル561、562と係合することができ、位置検出精度を向上させることが可能となる。
【0055】
また、ブラシ装置55は、一対のブラシ551、552のそれぞれに対応する2本の給電ターミナル561、562を有している。2本の給電ターミナル561、562を用いて位置決めを行うことにより、給電ターミナル561、562と制御基板102の間の係合強度を増すことができ、位置検出精度をさらに高めることが可能となる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、ISGとして動作する車両用回転電機100について説明したが、電動動作および発電動作のいずれかのみを行う車両用回転電機についても本発明を適用することができる。
【0057】
また、上述した実施形態では、2つの固定子巻線1A、1Bと2つのMOSモジュール群3A、3Bを備えるようにしたが、一方の固定子巻線1Aと一方の整流器モジュール群3Aを備える車両用回転電機や、3つ以上の固定子巻線やMOSモジュールを備えた車両用回転電機についても本発明を適用することができる。
【0058】
また、上述した実施形態では、正極側入出力端子300および負極側入出力端子301の中心を挟んで左右それぞれに3個ずつMOSモジュール3AU等を分散して配置したが、左右それぞれに分散配置するMOSモジュール3AU等の数を異ならせたり、左右のいずれか一方のみにMOSモジュール3AU等を配置するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、4つの固定部82Bがカバー84によって覆われる場合について説明したが、カバー84の一部に切り欠き部(あるいは孔)を設けて固定部82Bをカバー84で覆わない構造としてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、ハウジング82の一部に薄板部材82Eを含ませたが、ハウジング82の全体を樹脂材料を用いて形成するようにしてもよい。また、
図14に示した例では、薄板部材82Eに貫通孔を形成して給電ターミナル561、562を貫通孔に通したが、この貫通孔を形成する領域は、薄板部材82Eに代えて絶縁性の樹脂材料で形成するようにしてもよい。あるいは、薄板部材82Eに貫通孔を形成して給電ターミナル561、562を通す場合には、この貫通孔を通す部分までは給電ターミナル561、562の周囲を絶縁部材で覆うようにしてもよい。この場合に、給電ターミナル561、562の周囲を覆う絶縁部材を、ブラシホルダ550と一体形成すれば、部品の追加がないため、コスト低減が可能となる。
【0061】
また、上述した実施形態では、ブラシ装置55の2本の給電ターミナル561、562を用いて制御基板102の位置決めを行ったが、2本の給電ターミナル561、562のいずれか一方を用いて制御基板102の位置決めを行うようにしてもよい。また、固定用ターミナル563、564を介してフレーム4に接地するブラシ装置を用いる場合にも本発明を適用することができる。この場合には、正電位を有する給電ターミナルを回転軸21に沿って制御基板102に向けて延出し、制御基板102との電気的接続や位置決めを行うようにすればよい。
【0062】
また、ブラシ装置55の2本の給電ターミナル561、562を用いて制御基板102に対する直接的な電気接続と位置決めを行う代わりに、基板ケース80に対する電気接続と位置決めを行うことにより、この基板ケース80に収納された制御基板102に対する間接的な電気接続と位置決めを行うようにしてもよい。例えば、
図16に示すように、基板ケースの一部に貫通孔が形成されており、これらの貫通孔に2本の給電ターミナル561、562を通して基板ケース80が取り付けられる。特に、基板ケース80に形成された貫通孔のサイズを給電ターミナル561、562の断面サイズとほぼ同じ(組み付け作業性を考慮して若干大きくする必要がある)に設定することにより、給電ターミナル561、562を基板ケース80の貫通孔に係合させることができ、給電ターミナル561、562を用いた制御基板102の間接的な位置(回転方向位置および径方向位置)決めが可能となる。なお、給電ターミナル561、562が係合する基板ケース80の貫通孔内部あるいはその周囲には、配線ターミナル(図示せず)が形成されており、この配線ターミナルと給電ターミナル561、562とが半田付けされて、制御基板102に実装されたHブリッジ回路5との間で電気的な接続が行われる。