(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として[A]重合体よりフッ素原子含有率が小さくかつ酸解離性基を含む構造単位を有する第2重合体(以下、「[C]重合体」ともいう)、[D]酸拡散制御体及び[E]溶媒を含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。
【0015】
当該感放射線性樹脂組成物は、重合体成分として、ベース重合体のみを含有していてもよく、ベース重合体以外に撥水性重合体添加剤を含有することもできる。「ベース重合体」とは、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜の主成分となる重合体をいい、好ましくは、レジスト膜を構成する全重合体に対して50質量%以上を占める重合体をいう。また、「撥水性重合体添加剤」とは、感放射線性樹脂組成物に含有させることで、形成されるレジスト膜の表層に偏在化する傾向を有する重合体である。ベース重合体となる重合体より疎水性が高い重合体は、レジスト膜表層に偏在化する傾向があり、撥水性重合体添加剤として機能させることができる。
【0016】
当該感放射線性樹脂化合物が撥水性重合体添加剤を含有する場合、この撥水性重合体添加剤により、レジスト膜からの[B]酸発生体等の溶出を抑制できるとともに、形成されたレジスト膜表面が高い動的接触角を示すので、レジスト膜表面は優れた水切れ特性を発揮することができる。これにより液浸露光プロセスにおいて、レジスト膜表面と液浸媒体を遮断するための上層膜を別途形成することを要することなく、高速スキャン露光を可能にすることができる。
【0017】
当該感放射線性樹脂組成物が撥水性重合体添加剤を含有する場合、撥水性重合体添加剤の含有量としては、ベース重合体100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.3質量部〜15質量部がより好ましく、0.5質量部〜10質量部がさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物におけるベース重合体の含有量としては、当該感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0018】
当該感放射線性樹脂組成物における重合体成分の態様としては、(1)ベース重合体としての[A]重合体、(2)ベース重合体としての[C]重合体及び撥水性重合体添加剤としての[A]重合体をそれぞれ含有する場合等が挙げられる。これらの中で、[A]重合体を撥水性重合体添加剤として用いることが好ましい。[A]重合体が撥水性重合体添加剤であることで、レジスト膜の現像前後の接触角変化をより大きくすることができ、現像欠陥抑制性がさらに向上する。
以下、各成分について説明する。
【0019】
<[A]重合体>
[A]重合体は構造単位(I)を有する重合体である。当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体が構造単位(I)を有することで、レジスト膜の現像前後の接触角変化が大きくなり、現像欠陥抑制性に優れる。当該感放射線性樹脂組成物が上記構成を有することで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、以下のように推察することができる。すなわち、構成単位(I)のR
2が二重結合を有することでR
2の酸解離性が高くなっている。また、[B]酸発生体は通常高い極性を有し、構造単位(I)と高い親和性があり、R
2の酸解離性基の近傍に存在する度合いが高まると考えられる。これらの結果、[A]重合体の解離容易性が高まり、解離が不十分であることに起因するブリッジ欠陥等の現像欠陥が抑制できると考えられる。
また、R
6、R
7、R
8のうち少なくともいずれかはフッ素原子又はフッ素原子を含む基であるため、R
8はアルカリ解離性基となる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜は露光時には高い撥水性を有し、また、現像の際、アルカリ性水溶液により加水分解しカルボキシ基が生じ、上記レジスト膜表面が親水性に変化する。その結果、上記レジスト膜の現像前後の接触角変化を大きくすることができ、現像後の洗浄不足に起因するブロッブ欠陥等の現像欠陥を抑制することができると考えられる。
以上のように、構造単位(I)が酸解離性基とアルカリ解離性基の両方を有することにより、当該感放射線性樹脂組成物は現像前後の接触角変化が大きくなるレジスト膜を形成することができ、現像欠陥抑制性に優れると考えられる。
【0020】
ここで、「酸解離性基」とは、例えばカルボキシ基が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。「アルカリ解離性基」とは、例えばカルボキシ基等の極性官能基中の水素原子を置換する基であって、アルカリの存在下(例えば、23℃のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%水溶液中)で解離する基をいう。
【0021】
[A]重合体は、構造単位(I)以外にも、下記式(2)で表される構造単位(II)を有していてもよく、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造及びヒドロキシ基を含む構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位(III)をさらに有していてもよい。また、[A]重合体は構造単位(I)〜(III)以外のその他の構造単位を有していてもよい。[A]重合体は、上記構造単位をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
以下、各構造単位について説明する。
【0022】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、下記式(1)で表される。
【0024】
上記式(1)中、R
1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
2は、二重結合を含む炭素数5〜20の脂環式炭化水素基である。R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。R
5は、単結合又は炭素数1〜20の2価の有機基である。R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基である。R
8は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基である。但し、R
6、R
7及びR
8のうち少なくとも1つは、フッ素原子又はフッ素原子を含む基である。
【0025】
上記R
1としては、構造単位(I)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0026】
上記R
2で表される二重結合を含む炭素数5〜20の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロペンテンテトライル基、シクロヘキセンテトライル基、シクロヘプテンテトライル基、シクロオクテンテトライル基、シクロデセンテトライル基等の単環のシクロアルケン骨格を含む基;
ビシクロ[4.4.0]デセンテトライル基、ビシクロ[3.1.1]ヘプテンテトライル基、トリシクロデセンテトライル基等の多環のシクロアルケン骨格を含む基などが挙げられる。これらの中で、単環のシクロアルケン骨格を含む基が好ましく、シクロペンテンテトライル基、シクロヘキセンテトライル基がより好ましい。
【0027】
上記R
3及びR
4で表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基などの鎖状炭化水素基;
シクロプロピル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基、シクロプロペニル基、ノルボルネニル等のシクロアルケニル基などの脂環式炭化水素基;
フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
これらの中で、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0028】
また、R
3及びR
4としては、水素原子、鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0029】
上記R
5で表される炭素数1〜20の2価の有機基としては、例えば、2価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間にヘテロ原子含有基を含む基、これらの基の水素原子の一部または全部を置換基で置換した基等が挙げられる。
【0030】
上記2価の炭化水素基としては、例えば、
メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基等のアルカンジイル基;
エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等のアルケンジイル基;
エチンジイル基、プロピンジイル基、ブチンジイル基等のアルキンジイル基などの鎖状炭化水素基;
シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の単環のシクロアルカンジイル基;
シクロプロペンジイル基、シクロブテンジイル基等の単環のシクロアルケンジイル基;
ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基、トリシクロデカンジイル基、テトラシクロドデカンジイル基等の多環のシクロアルカンジイル基;
ノルボルネンジイル基、トリシクロデセンジイル基等の多環のシクロアルケンジイル基などの脂環式炭化水素基;
ベンゼンジイル基、トルエンジイル基、キシレンジイル基、ナフタレンジイル基等のアレーンジイル基;
ベンゼンジイルメタンジイル基、ナフタレンジイルシクロヘキサンジイル基等のアレーンジイル(シクロ)アルカンジイル基などが挙げられる。
【0031】
上記ヘテロ原子含有基とは、構造中に2価以上のヘテロ原子を有する基をいう。上記ヘテロ原子含有基は、ヘテロ原子を1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。
【0032】
上記ヘテロ原子含有基が有する2価以上のへテロ原子としては、2価以上の原子価を有するヘテロ原子であれば特に限定されず、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子等が挙げられる。
【0033】
上記ヘテロ原子含有基としては、例えば、
−SO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
3−等の2個以上のヘテロ原子を組み合わせた基;
−CO−、−COO−、−COS−、−CONH−、−OCOO−、−OCOS−、−OCONH−、−SCONH−、−SCSNH−、−SCSS−等の炭素原子とヘテロ原子とを組み合わせた基などが挙げられる。
【0034】
上記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0036】
上記R
6、R
7及びR
8で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、上記R
3及びR
4において例示したものと同様の基が挙げられる。
【0037】
R
6、R
7及びR
8で表される炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば、
フッ素化メチル基、フッ素化エチル基、フッ素化プロピル基等のフッ素化アルキル基、フッ素化エテニル基、フッ素化プロペニル基等のフッ素化アルケニル基、フッ素化エチニル基、フッ素化プロピニル基等のフッ素化アルキニル基;
フッ素化シクロプロピル基、フッ素化ノルボルニル基等のフッ素化シクロアルキル基、フッ素化シクロプロペニル基、フッ素化ノルボルネニル等のフッ素化シクロアルケニル基;
フッ素化フェニル基、フッ素化トリル基、フッ素化ナフチル基等のフッ素化アリール基、フッ素化ベンジル基、フッ素化フェネチル基等のフッ素化アラルキル基などが挙げられる。
【0038】
これらの中で、R
6及びR
7としてはフッ素原子、フッ素化炭化水素基が好ましく、フッ素原子、フッ素化アルキル基がより好ましく、フッ素原子、パーフルオロアルキル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。R
8としてはアルキル基、フッ素化炭化水素基が好ましく、アルキル基、フッ素化アルキル基、フッ素化フェニル基がより好ましく、エチル基、トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、トリフルオロメチルフェニル基がさらに好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、トリフルオロメチルフェニル基が特に好ましい。
【0039】
構造単位(I)としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−8)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−1)〜(I−8)」ともいう)等が挙げられる。
【0041】
上記式中、R
1は、上記式(1)と同義である。
【0042】
これらの中で、構造単位(I−3)、(I−4)が好ましい。
【0043】
構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましく、75モル%が特に好ましい。構造単位(I)の含有割合の上限としては、100モル%が好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜の現像前後の接触角変化がより大きくなり、現像欠陥抑制性を向上させることができる。構造単位(I)の含有割合が上記下限未満であると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0044】
構造単位(I)の含有割合を100モル%とし、[A]重合体を構造単位(I)を有するホモポリマーとすることで、重合体が複数種の構造単位を有することに起因する物性のバラつきによる感放射線性樹脂組成物の性能の低下を低減でき、その結果レジスト膜の現像前後の接触角変化をより大きくでき、現像欠陥抑制性をより向上させることができる。
【0045】
構造単位(I)を与える単量体としては、例えば、化合物(i)等が挙げられる。
【0047】
上記式(i)中、R
1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
2は、二重結合を含む炭素数5〜20の脂環式炭化水素基である。R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。R
5は、単結合又は炭素数1〜20の2価の有機基である。R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基である。R
8は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基である。但し、R
6、R
7及びR
8のうち少なくとも1つは、フッ素原子又はフッ素原子を含む基である。
【0048】
化合物(i)としては、例えば、下記式(i1)〜(i8)で表される化合物(以下、「化合物(i1)〜(i8)」ともいう)等が挙げられる。
【0050】
これらの中で、化合物(i3)、(i4)が好ましい。
【0051】
上記化合物(i)は、例えば、上記式(i)におけるR
8が1価の炭化水素基である化合物(i’)の場合は以下の通りであり、下記スキームに従い簡便かつ収率よく製造することができる。
【0053】
上記スキーム中、R
1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
2は、二重結合を含む炭素数5〜20の脂環式炭化水素基である。R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。R
5は、単結合又は炭素数1〜20の2価の有機基である。R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基である。但し、R
6及びR
7のいずれかはフッ素原子又はフッ素原子を含む基である。R’は、1価の炭化水素基である。Yは、ハロゲン原子である。Gは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は−OCOR”である。R”は、1価の炭化水素基である。
【0054】
上記Yで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましい。
上記Gで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0055】
上記式(i−a)で表されるα,β−不飽和環状ケトン化合物と、上記式(i−b)で表される有機ハロゲン化物とを、亜鉛及び活性化剤としてのトリメチルシリルクロリド等の存在下、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させることにより、上記式(i−c)で表されるヒドロキシ化合物が得られる。このヒドロキシ化合物と、上記式(i−d)で表される化合物とを、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の塩基存在下、アセトニトリル等の溶媒中で反応させることにより、上記化合物(i’)が生成する。得られた化合物(i’)は、カラムクロマトグラフィー、再結晶、蒸留等の方法により精製し、単離することができる。
【0056】
また、上記式(i)におけるR
8が1価のフッ素化炭化水素基である化合物(i”)は、上記化合物(i’)を水酸化リチウム等の塩基の存在下、テトラヒドロフラン等の溶媒中で加水分解し、その後、アセトニトリル等の溶媒中、ジメチルホルムアミド等の触媒を用いてオキサリルクロリドと反応させた後に、トリエチルアミン等の塩基の存在下で、フッ素含有アルコール又はフッ素含有フェノールと反応させることにより生成する。
【0057】
上記化合物(i’)及び(i”)以外の化合物(i)についても、上記同様の方法により製造することができる。
【0058】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、下記式(2)で表される構造単位である。下記式(2)中、−CR
10R
11R
12で表される基は酸解離性基である。[A]重合体は、構造単位(I)に加えて、酸解離性基を含む構造単位(II)をさらに有すると、現像液に対する溶解性をより適度なものに調整することができる。
【0060】
上記式(2)中、R
9は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
10は、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基である。R
11及びR
12はそれぞれ独立して炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成する環員数3〜20の脂環構造を表す。
【0061】
ここで「環員数」とは、芳香環構造、芳香族複素環構造、脂環構造及び脂肪族複素環構造の環を構成する原子数をいい、多環の環構造の場合は、この多環を構成する原子数をいう。
【0062】
上記R
9としては、構造単位(II)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0063】
上記R
10、R
11及びR
12で表される炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の飽和炭化水素基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、エチニル基、プロピニル基等の不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0064】
上記R
11及びR
12で表される炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の飽和単環炭化水素基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基等の不飽和単環炭化水素基;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル基、ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカニル基等の飽和多環炭化水素基;
ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル基、ビシクロ[2.2.2]オクテニル基等の不飽和多環炭化水素基などが挙げられる。
【0065】
上記これらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3〜20の脂環構造としては、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等の単環のシクロアルカン構造;ノルボルナン構造、アダマンタン構造等の多環のシクロアルカン構造などが挙げられる。
【0066】
構造単位(II)としては、例えば、下記式(2−1)〜(2−4)で表される構造単位(以下、「構造単位(II−1)〜(II−4)」ともいう)等が挙げられる。
【0068】
上記式(2−1)〜(2−4)中、R
9〜R
12は、上記式(2)と同義である。n
pは、1〜4の整数である。
【0069】
n
pとしては、1、2又は4が好ましく、1がより好ましい。
【0070】
構造単位(II)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0073】
上記式中、R
9は、上記式(2)と同義である。
【0074】
構造単位(II)としては、構造単位(II−1)、(II−2)が好ましく、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましい。
【0075】
構造単位(II)の含有割合としては、0モル%〜50モル%が好ましく、0モル%〜30モル%がより好ましく、0モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の現像液に対する溶解性を向上させることができる。構造単位(II)の含有割合が上記上限を超えると、レジスト膜の後退接触角の変化が低下する傾向がある。
【0076】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造及びヒドロキシ基を含む構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(III)をさらに有することで、現像液への溶解性をさらに調整することができる。ここで、ラクトン構造とは、−O−C(O)−で表される基を含む環(ラクトン環)を有する構造をいう。また、環状カーボネート構造とは、−O−C(O)−O−で表される基を含む環(環状カーボネート環)を有する構造をいう。スルトン構造とは、−O−S(O)
2−で表される基を含む環(スルトン環)を有する構造をいう。
【0077】
構造単位(III)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0082】
上記式中、R
13は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0083】
上記R
13としては、構造単位(III)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0084】
構造単位(III)としては、これらの中で、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位、オキサノルボルナンラクトン構造を含む構造単位、γ−ブチロラクトン構造を含む構造単位、エチレンカーボネート構造を含む構造単位、ノルボルナンスルトン構造を含む構造単位、ヒドロキシ基含有アダマンタン構造を含む構造単位が好ましい。
【0085】
構造単位(III)の[A]重合体を構成する全構造単位に対する含有量としては、70モル%〜70モル%が好ましく、0モル%〜40モル%がより好ましく、0モル%〜20モル%がさらに好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性をより向上させることができる。上記含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0086】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(III)以外にもその他の構造単位を有してもよい。上記その他の構造単位の含有割合としては、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
【0087】
[A]重合体がベース重合体である場合、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分中に対する[A]重合体の含有量としては、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0088】
[A]重合体が撥水性重合体添加剤である場合、[A]重合体の含有量の下限としては、ベース重合体100質量部に対して0.1質量部が好ましく、0.3質量部がより好ましく、0.5質量部がさらに好ましく、1質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、ベース重合体100質量部に対して30質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましく、10質量部が特に好ましい。
【0089】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤等の重合開始剤を使用し、適当な重合反応溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル重合開始剤を含有する溶液を、重合反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル重合開始剤を含有する溶液とを各別に、重合反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル重合開始剤を含有する溶液とを各別に、重合反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0090】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0091】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0092】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0093】
重合反応により得られた重合体は再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0094】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1,000以上40,000以下が好ましく、2,000以上20,000以下がより好ましく、2,500以上10,000以下がさらに好ましく、3,000以上7,000以下が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗布性及び現像欠陥抑制性が向上する。[A]重合体のMwが上記下限未満だと、十分な耐熱性を有するレジスト膜が得られない場合がある。[A]重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0095】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましく、1.2以上1.7以下が特に好ましい。Mw/Mnを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性をより向上させることができる。
【0096】
なお、本明細書においてMw及びMnは、GPCカラム(東ソー社の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、「G4000HXL」1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃の分析条件で、検出器として示差屈折計を使用し、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した値をいう。
【0097】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、露光光の照射により酸を発生する化合物である。その酸の作用により[A]重合体等の酸解離性基が解離してカルボキシ基等の極性基が生じ、その結果、[A]重合体等の現像液に対する溶解性が変化する。[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0098】
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N−スルホニルイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0099】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0100】
[B]酸発生体の具体例としては、例えば、特開2009−134088号公報の段落[0080]〜[0113]に記載されている化合物等が挙げられる。
【0101】
[B]酸発生体は下記式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。[B]酸発生体が下記構造を有する化合物を含むことで、[A]重合体の構造単位(I)との相互作用等により、露光により発生する酸のレジスト膜中の拡散長がより適度に短くなると考えられ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性をさらに向上させることができる。
【0103】
上記式(3)中、R
14は、環員数6以上の脂環構造を含む1価の基又は環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基である。R
15は、炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基である。X
+は、1価の放射線分解性オニウムカチオンである。
【0104】
上記R
14で表される環員数6以上の脂環構造を含む1価の基としては、例えば、
シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0105】
上記R
14で表される環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基としては、例えば、
ノルボルナンラクトン−イル基等のラクトン構造を含む基;
ノルボルナンスルトン−イル基等のスルトン構造を含む基;
オキサシクロヘプチル基、オキサノルボルニル基等の酸素原子含有複素環基;
アザシクロヘプチル基、ジアザビシクロオクタン−イル基等の窒素原子含有複素環基;
チアシクロヘプチル基、チアノルボルニル基等のイオウ原子含有複素環基等が挙げられる。
【0106】
R
14で表される基の環員数としては、上述の酸の拡散長がさらに適度になる観点から、8以上が好ましく、9〜15がより好ましく、10〜13がさらに好ましい。
【0107】
R
14としては、これらの中で、環員数9以上の脂環構造を含む1価の基、環員数9以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ノルボルナンラクトン−イル基、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.1
3,8]ウンデカン−イル基がより好ましく、アダマンチル基がさらに好ましい。
【0108】
上記R
15で表される炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基等の炭素数1〜10のアルカンジイル基が有する水素原子の1個以上をフッ素原子で置換した基等が挙げられる。
【0109】
これらの中で、SO
3−基に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合しているフッ素化アルカンジイル基が好ましく、SO
3−基に隣接する炭素原子に2個のフッ素原子が結合しているフッ素化アルカンジイル基がより好ましく、1,1−ジフルオロメタンジイル基、1,1−ジフルオロエタンジイル基、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−1,2−プロパンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロエタンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロブタンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロヘキサンジイル基がさらに好ましい。
【0110】
上記X
+で表される1価の放射線分解性オニウムカチオンは、露光光の照射により分解するカチオンである。露光部では、この放射線分解性オニウムカチオンの分解により生成するプロトンと、スルホネートアニオンとからスルホン酸を生じる。上記X
+で表される1価の放射線分解性オニウムカチオンとしては、例えば、S、I、O、N、P、Cl、Br、F、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi等の元素を含む放射線分解性オニウムカチオンが挙げられる。元素としてS(イオウ)を含むカチオンとしては、例えば、スルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が挙げられ、元素としてI(ヨウ素)を含むカチオンとしては、ヨードニウムカチオン等が挙げられる。これらの中で、下記式(X−1)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(X−2)で表されるテトラヒドロチオフェニウムカチオン、下記式(X−3)で表されるヨードニウムカチオンが好ましい。
【0112】
上記式(X−1)中、R
a1、R
a2及びR
a3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
P若しくは−SO
2−R
Qであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。R
P及びR
Qは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0〜5の整数である。R
a1〜R
a3並びにR
P及びR
Qがそれぞれ複数の場合、複数のR
a1〜R
a3並びにR
P及びR
Qはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
上記式(X−2)中、R
b1は、置換若しくは非置換の炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6〜8の芳香族炭化水素基である。k4は0〜7の整数である。R
b1が複数の場合、複数のR
b1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のR
b1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。R
b2は、置換若しくは非置換の炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の芳香族炭化水素基である。k5は、0〜6の整数である。R
b2が複数の場合、複数のR
b2は同一でも異なっていてもよく、また、複数のR
b2は互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。qは、0〜3の整数である。
上記式(X−3)中、R
c1及びR
c2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
R若しくは−SO
2−R
Sであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。R
R及びR
Sは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。k6及びk7は、それぞれ独立して0〜5の整数である。R
c1、R
c2、R
R及びR
Sがそれぞれ複数の場合、複数のR
c1、R
c2、R
R及びR
Sはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0113】
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2で表される非置換の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2で表される非置換の分岐状のアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
上記R
a1〜R
a3、R
c1及びR
c2で表される非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
上記R
b1及びR
b2で表される非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0114】
上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。これらの中で、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0115】
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2としては、非置換の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、−OSO
2−L、−SO
2−Lが好ましく、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フッ素化アルキル基がさらに好ましい。Lは、非置換の1価の脂環式炭化水素基又は非置換の1価の芳香族炭化水素基である。
【0116】
上記式(X−1)におけるk1、k2及びk3としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記式(X−2)におけるk4としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、1がさらに好ましい。k5としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記式(X−3)におけるk6及びk7としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0117】
上記X
+としては、上記式(X−1)で表されるカチオンが好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0118】
上記式(3)で表される酸発生剤としては、例えば、下記式(3−1)〜(3−11)で表される化合物(以下、「化合物(3−1)〜(3−11)」ともいう)等が挙げられる。
【0120】
[B]酸発生剤としては、これらの中でも、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩がより好ましく、化合物(3−2)、化合物(3−3)、化合物(3−11)がさらに好ましい。
【0121】
[B]酸発生体の含有量としては、[B]酸発生体が[B]酸発生剤の場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性を確保する観点から、ベース重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1質量部以上15質量部以下がさらに好ましく、3質量部以上15質量部以下が特に好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性が向上する。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0122】
<[C]重合体>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体よりフッ素原子含有率が小さくかつ酸解離性基を含む構造単位を有する重合体である。[A]重合体が撥水性重合体添加剤の場合、当該感放射線性樹脂組成物は、ベース重合体として[C]重合体をさらに含有することが好ましい。このように、当該感放射線性樹脂組成物が[A]重合体に加え[C]重合体をさらに含有することで、当該感放射線性樹脂組成物からレジスト膜を形成した際に、[A]重合体がレジスト膜表面に偏在化する度合いが高くなる。その結果、上述の[A]重合体の撥水性の変化に起因する特性がより効率的に発現される。なお、このフッ素原子含有率(質量%)は、
13C−NMR分析により求めた重合体の構造から算出することができる。
【0123】
[C]重合体の酸解離性基を含む構造単位としては、例えば[A]重合体における構造単位(II)等が挙げられる。また、[A]重合体における構造単位(III)及びその他の構造単位を有していてもよい。
【0124】
[C]重合体を構成する全構造単位に対する酸解離性基を含む構造単位の含有割合の上限としては80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、65モル%がさらに好ましい。上記含有割合の下限としては、20モル%が好ましく、25モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の露光部と未露光部の現像液への溶解コントラストを十分に確保することができる。
【0125】
[C]重合体を構成する全構造単位に対する[A]重合体における構造単位(III)の含有割合の上限としては70モル%が好ましく、65モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましく、55モル%が特に好ましい。上記含有割合の下限としては0モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性をより向上させることができる。上記含有割合が上記下限未満であると、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性が低下する場合がある。上記含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0126】
当該感放射線性樹脂組成物の全固形分中に対する[C]重合体の含有量としては、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0127】
<[C]重合体の合成方法>
[C]重合体は、上述の[A]重合体の合成方法と同様の方法を用いて合成することができる。
【0128】
[C]重合体のMwとしては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましく、2,000〜20,000がさらに好ましく、3,000〜10,000が特に好ましい。[C]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性をさらに向上させることができる。
【0129】
[C]重合体のMw/Mnとしては、通常1〜5であり、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1.2〜1.8がさらに好ましい。Mw/Mnを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性をさらに向上させることができる。
【0130】
<[D]酸拡散制御体>
[D]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する成分である。感放射線性樹脂組成物が[D]酸拡散制御体を含有することで、得られる感放射線性樹脂組成物の解像性が向上し、また貯蔵安定性が向上し、さらに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。なお、[D]酸拡散制御体の含有形態としては、遊離の化合物の形態(以下、適宜「[D]酸拡散制御剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0131】
[D]酸拡散制御剤としては、例えば、アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0132】
アミン化合物としては、例えばモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;2,6−ジイソプロピルアニリン等の置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0133】
アミド基含有化合物としては、例えば、t−ブチル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、t−アミル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート等のN−t−アミルオキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0134】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0135】
含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、4−ヒドロキシ−N−アミロキシカルボニルピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール;モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、N−(2−シクロヘキシルカルボニルオキシエチル)モルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール等のモルホリン類;1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0136】
これらの中で、アミン化合物、アミド基含有化合物が好ましく、置換アルキルアニリン、N−t−アミルオキシカルボニル基含有化合物がより好ましく、t−アミル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート、2,6−ジイソプロピルアニリンがさらに好ましい。
【0137】
また、[D]酸拡散制御剤として、露光により弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基は、未露光部ではアニオンによる酸捕捉機能が発揮されクエンチャーとして機能し、露光部から拡散する酸を捕捉する。一方、露光部においては酸を発生してアニオンが消滅するため、酸捕捉機能がなくなる。すなわち、未露光部のみにおいてクエンチャーとして機能するため、酸解離性基の解離反応のコントラストが向上し、結果として、当該感放射線性樹脂組成物の解像度等のリソグラフィー性能をより向上させることができる。光崩壊性塩基としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(D1)で示されるスルホニウム塩化合物、下記式(D2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0139】
上記式(D1)及び式(D2)中、R
16〜R
20はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は−SO
2−R
Aである。R
Aは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。Q
−及びE
−は、OH
−、R
B−COO
−、R
C−SO
2−N
−−R
B、R
B−SO
3−又は下記式(C3)で表されるアニオンである。R
Bは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。R
Cは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基である。上記アルキル基及びシクロアルキル基が有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。但し、Q
−がR
B−SO
3−の場合、SO
3−が結合する炭素原子にフッ素原子が結合する場合はない。
【0141】
上記式(D3)中、R
21は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基である。uは、0〜2の整数である。
【0142】
上記式(D1)及び(D2)におけるR
16〜R
20としては、水素原子、−SO
2−R
Aが好ましい。また、上記R
Aとしては、シクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0143】
上記R
Bで表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が置換された基等が挙げられる。
【0144】
上記R
Bで表されるシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が置換された基等が挙げられる。
【0145】
上記R
Bで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が置換された基等が挙げられる。
【0146】
上記R
Bで表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が置換された基等が挙げられる。
【0147】
上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルカリール基が有する置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ラクトン基、アルキルカルボニル基等が挙げられる。
【0148】
上記R
Cで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0149】
上記R
Cで表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0150】
上記光崩壊性塩基としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0152】
これらの中でも、トリフェニルスルホニウムサリチレート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホナートが好ましく、トリフェニルスルホニウムサリチレートがより好ましい。
【0153】
[D]酸拡散制御体の含有量としては、[D]酸拡散制御体が[D]酸拡散制御剤の場合、ベース重合体100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0.1質量部〜7質量部がより好ましく、0.3質量部〜5質量部がさらに好ましい。[D]酸拡散制御剤の含有量が上記上限を超えると、得られる感放射線性樹脂組成物の感度が低下する場合がある。[D]酸拡散抑制剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0154】
<[E]溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常、[E]溶媒を含有する。[E]溶媒は少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体、必要に応じて含有される[C]重合体、[D]酸拡散制御剤、及び後述するその他の任意成分を溶解又は分散することができるものであれば特に限定されない。[E]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒及び炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0155】
アルコール系溶媒としては、例えば、
4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘキサノール等の炭素数1〜18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3〜18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2−プロピレングリコール等の炭素数3〜18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノエチルエーテル等の炭素数3〜19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0156】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジ脂肪族エーテル系溶媒;
アニソール、ジフェニルエーテル等の含芳香環エーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0157】
ケトン系溶媒としては、例えば、
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトフェノン等の鎖状ケトン系溶媒;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のジケトン系溶媒等が挙げられる。
【0158】
アミド系溶媒としては、例えば、
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒;
N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の環状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0159】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸n−ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
γ−ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0160】
これらの中で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、ラクトン系溶媒、環状ケトン系溶媒がより好ましい。[E]溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0161】
<その他の任意成分>
当該感放射線性樹脂組成物は上記[A]〜[E]成分以外にも、その他の成分として、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等を含有できる。なお、当該感放射線性樹脂組成物は、その他の任意成分をそれぞれ1種単独で又は2種以上を混合して含有してもよい。
【0162】
[界面活性剤]
界面活性剤は、当該感放射線性樹脂組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤、市販品としてKP341(信越化学工業社)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学社)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業社)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム社)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子工業社)等が挙げられる。
【0163】
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、当該感放射線性樹脂組成物のドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0164】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば
1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン等が挙げられる。
【0165】
[増感剤]
増感剤は、[B]酸発生体からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0166】
増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。
【0167】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば、[E]溶媒中で[A]重合体、[B]酸発生体、必要に応じて、[C]重合体、[D]酸拡散制御体及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。調製された感放射線性樹脂組成物は、例えば、孔径20nmのフィルター等で濾過して用いることが好ましい。当該感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜15質量%がさらに好ましく、1質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0168】
<レジストパターン形成方法>
本発明のレジストパターン形成方法は、レジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)
を備え、上記レジスト膜を当該感放射線性樹脂組成物により形成する。
以下、各工程について説明する。
【0169】
[レジスト膜形成工程]
本工程では、当該感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成する。レジスト膜を形成する基板としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。また、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。
【0170】
塗布方法としては、例えば回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましい。
【0171】
当該感放射線性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じてプレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PB温度としては、当該感放射線性樹脂組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常30℃〜200℃であり、50℃〜150℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0172】
環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するために、例えば特開平5−188598号公報等に開示されている保護膜をレジスト膜上に設けることもできる。さらに、レジスト膜からの酸発生体等の流出を防止するために、例えば特開2005−352384号公報等に開示されている液浸用保護膜をレジスト膜上に設けることもできる。なお、これらの技術は併用できる。
【0173】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜を露光する。この露光としては、例えば、所望の領域にアイソラインパターンマスクを介して縮小投影露光を行うことにより、アイソトレンチパターンを形成できる。また、露光は所望のパターンとマスクパターンによって2回以上行ってもよい。2回以上露光を行う場合、露光は連続して行うことが好ましい。複数回露光する場合、例えば所望の領域にラインアンドスペースパターンマスクを介して第1の縮小投影露光を行い、続けて第1の露光を行った露光部に対してラインが交差するように第2の縮小投影露光を行う。第1の露光部と第2の露光部とは直交することが好ましい。直交することにより、露光部で囲まれた未露光部において真円状のコンタクトホールパターンが形成しやすくなる。
【0174】
露光方法としては液浸露光が好ましい。液浸露光とすることで、上記の本発明のレジスト膜現像前後における接触角の変化及び現像欠陥抑制性の効果を発揮させることができる。なお、露光の際に用いられる液浸液としては水やフッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト層を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0175】
露光に使用される放射線としては、[B]酸発生体の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、紫外線、遠紫外線、可視光線、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中で、遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)がより好ましく、ArFエキシマレーザーがさらに好ましい。露光量等の露光条件は、当該感放射線性樹脂組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選択される。当該パターン形成方法においては露光工程を複数回有してもよく、複数回の露光は同じ光源を用いても異なる光源を用いても良いが、1回目の露光にはArFエキシマレーザー光を用いることが好ましい。
【0176】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、当該感放射線性樹脂組成物中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行できる。PEB温度としては、通常、30℃〜200℃であり、50℃〜170℃が好ましく、70℃〜120℃がより好ましい。PEB時間としては、通常、5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0177】
[現像工程]
本工程では、上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、レジストパターンを得る。
【0178】
本工程においては、アルカリ現像の場合は、アルカリ性水溶液により露光部が除去されてポジ型のレジストパターンが形成される。有機溶媒現像の場合は、有機溶媒を含む現像液で現像することにより未露光部が除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
【0179】
上記現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、及び1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物からなる群より選択される少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液等が挙げられる。上記アルカリ性水溶液の濃度は、10質量%以下であることが好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が10質量%を超えると、非露光部も現像液に溶解してしまうおそれがある。上記アルカリ性水溶液には、有機溶媒を添加することもできる。
【0180】
上記現像液としては、有機溶媒現像の場合、上記溶媒[E]で例示したものと同様の有機溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。現像液中の有機溶媒の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、99質量%がさらに好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量が上記範囲であることにより、良好な現像特性を得ることができ、よりリソグラフィー特性に優れたパターンを形成することができる。なお、有機溶媒以外の成分としては、水、シリコンオイル等が挙げられる。
【0181】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0182】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0183】
上記現像後に、形成されたレジストパターンをリンス液により洗浄するとよい。リンス液としては、アルカリ現像の場合は水が好ましく、純水がより好ましい。有機溶媒現像の場合は、アルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、炭素数6〜8の1価のアルコール系溶媒がより好ましく、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、4−メチル−2−ペンタノールがさらに好ましい。
【0184】
洗浄処理の方法としては、例えば一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0185】
<重合体>
本発明の重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)を有する。当該重合体は上記特定の構造単位を有するので、上述の当該感放射線性樹脂組成物の重合体成分として好適に用いることができる。
【0186】
<化合物>
本発明の化合物は上記式(i)で表される。当該化合物は上記特定構造を有するので、上述の当該重合体の構造単位(I)を与える単量体として好適に用いることができる。
【0187】
当該重合体及び当該化合物については、上述の当該感放射線性樹脂組成物の[A]重合体の項で説明している。
【実施例】
【0188】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例に本発明が限定的に解釈されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0189】
[Mw及びMn測定]
重合体のMw及びMnは、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
カラム:東ソー社の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/分
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0190】
[
13C−NMR分析]
重合体の各構造単位含有割合を求めるための
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM−EX270」)を使用して測定した。
【0191】
[実施例1]
1Lのナスフラスコに、亜鉛粉末28.8g(440mmol)及びTHF210gを仕込み、トリメチルシリルクロリド8.0g(74mmol)をゆっくりと滴下し、滴下終了後、室温で30分間攪拌した。そこへ2−シクロペンテン−1−オン30.0g(370mmol)及びブロモジフルオロ酢酸エチル75.0g(370mmol)を滴下した。滴下完了後、室温で4時間攪拌し、次いで20質量%酢酸水溶液を加え反応を停止させた。得られた反応生成物について抽出洗浄及びカラムクロマトグラフィー精製を行うことにより、下記式(i−1−1)で表される化合物を46g得た(収率;60%)。
【0192】
【化22】
【0193】
次に、1Lのナスフラスコに、上記得られた化合物(i−1−1)46g(220mmol)、トリエチルアミン25g(250mmol)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン7.4g(66mmol)及びアセトニトリル400gを仕込み、氷浴で0℃に冷却した。そこへメタクリロイルクロライド27g(260mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、0℃で30分間、次いで45℃で4時間攪拌した後、水を加えて反応を停止させた。得られた反応生成物について抽出洗浄及びカラムクロマトグラフィー精製を行うことにより、下記式(i−1)で表される化合物42gを得た(化合物(i−1−1)基準での収率;70%)。
【0194】
【化23】
【0195】
[実施例2]
1Lのナスフラスコに、化合物(i−1)20g(73mmol)及びTHF140gを仕込み、5質量%水酸化リチウム水溶液35gをゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温で2時間攪拌した後、1モル/Lの塩酸73mLを加えて反応を停止させた。得られた反応生成物を抽出洗浄することにより、下記式(i−2−1)で表される化合物13gを得た(化合物(i−1)基準の収率;70%)。
【0196】
【化24】
【0197】
次に、1Lのナスフラスコに上記得られた化合物(i−2−1)13g(50mmol)及びアセトニトリル100gを仕込み0℃に冷却した。そこへオキサリルクロリド6.3g(50mmol)及びジメチルホルムアミド(50mmol)を加え、1時間攪拌した。その後、トリエチルアミン7.6g(75mmol)及び2,2,2−トリフルオロエタノール5.0g(50mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、0℃で30分、次いで室温で4時間攪拌し、得られた反応生成物について抽出洗浄及びカラムクロマトグラフィー精製を行うことにより、下記式(i−2)で表される化合物8.2gを得た(化合物(i−2−1)基準の収率;50%)。
【0198】
【化25】
【0199】
[実施例3]
1Lのナスフラスコに、亜鉛粉末18.0g(270mmol)及びTHF200gを仕込み、トリメチルシリルクロリド5.0g(46mmol)をゆっくりと滴下し、滴下終了後、室温で30分間攪拌した。そこへ3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン25.0g(230mmol)及びブロモジフルオロ酢酸エチル47.0g(230mmol)を滴下した。滴下完了後、室温で4時間攪拌し、20質量%酢酸水溶液を加え反応を停止させた。得られた反応生成物について抽出洗浄及びカラムクロマトグラフィー精製を行うことにより、下記式(i−3−1)で表される化合物を33g得た(収率;62%)。
【0200】
【化26】
【0201】
次に、1Lのナスフラスコに、上記得られた化合物(i−3−1)33g(140mmol)、トリエチルアミン15g(150mmol)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン4.7g(42mmol)及びアセトニトリル210gを仕込み、氷浴で0℃に冷却した。そこへメタクリロイルクロライド18g(170mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、0℃で30分間、次いで45℃で4時間攪拌し、水を加えて反応を停止させた。得られた反応生成物に抽出洗浄及びカラムクロマトグラフィー精製を行うことにより、下記式(i−3−2)で表される化合物29gを得た(化合物(i−3−1)基準の収率;68%)。
【0202】
【化27】
【0203】
そして、1Lのナスフラスコに上記得られた化合物(i−3−2)29g(95mmol)及びTHF200gを仕込み、5質量%水酸化リチウム水溶液46gをゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温で2時間攪拌した後、1モル/Lの塩酸95mLを加えて反応を停止させた。得られた反応生成物を抽出洗浄することにより、下記式(i−3−3)で表される化合物21gを得た(化合物(i−3−2)基準の収率;80%)。
【0204】
【化28】
【0205】
さらに、1Lのナスフラスコに上記得られた化合物(i−3−3)10g(36mmol)及びアセトニトリル100gを仕込み、0℃に冷却した。そこへ、オキサリルクロリド4.9g(36mmol)及びジメチルホルムアミド(36mmol)を加え1時間攪拌した。その後、トリエチルアミン5.5g(55mmol)及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール6.0g(36mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、0℃で30分、次いで室温で4時間攪拌し、得られた反応生成物に抽出洗浄及びカラムクロマトグラフィー精製を行うことにより、下記式(i−3)で表される化合物8.1gを得た(化合物(i−3−3)基準の収率;53%)。
【0206】
【化29】
【0207】
[実施例4]
1Lのナスフラスコに、化合物(i−3−3)10g(36mmol)及びアセトニトリル100gを仕込み、0℃に冷却した。そこへ、オキサリルクロリド4.9g(36mmol)及びジメチルホルムアミド(36mmol)を加え1時間攪拌した。その後、トリエチルアミン5.5g(55mmol)及びm−ヒドロキシベンゾトリフルオリド5.8g(36mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、0℃で30分、次いで室温で4時間攪拌し、得られた反応生成物に抽出洗浄及びカラムクロマトグラフィー精製を行うことにより、下記式(i−4)で表される化合物7.7gを得た(化合物(i−3−3)基準の収率;51%)。
【0208】
【化30】
【0209】
<重合体の合成>
[A]重合体及び[C]重合体の合成に用いた単量体について以下に示す。
【0210】
【化31】
【0211】
なお、化合物(i−1)〜(i−4)は構造単位(I)を、化合物(M−1)、(M−2)は構造単位(II)を、化合物(M−3)は構造単位(III)をそれぞれ与える。化合物(ci−5)、(ci−6)は下記の合成例において構造単位(I)の代わりに用いる単量体である。
【0212】
[[A]重合体の合成]
[実施例5]
化合物(i−1)20g(100モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、さらに、ラジカル重合開始剤としてのAIBN0.59g(化合物の合計モル数に対して5モル%)を溶解させて単量体溶液を調製した。続いて、2−ブタノン20gを入れた200mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応が終了した後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却し、n−ヘキサン400g中に重合反応液を滴下し、30分攪拌した。その後、デカンテーションにより上澄みを除去し、重合体(A−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。重合体(A−1)のMwは4,500、Mw/Mnは1.5であった。
13C−NMR分析の結果、化合物(i−1)に由来する構造単位の含有割合は100モル%であった。
【0213】
[実施例6〜12並びに合成例1及び2]
下記表1に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外は実施例6と同様に操作して、重合体(A−2)〜(A−8)並びに(CA−1)及び(CA−2)を合成した。なお、用いる化合物の合計質量は20gとした。合成した各重合体の各単量体に由来する構造単位の含有割合(モル%)、収率(%)、Mw及びMw/Mnを表1に合わせて示す。
【0214】
【表1】
【0215】
[[C]重合体の合成]
[合成例3]
化合物(M−1)11.93g(65.4mmol)、化合物(M−2)39.60g(169mmol)及び化合物(M−3)48.48g(218mmol)を2−ブタノン200gに溶解し、さらに、ラジカル重合開始剤としてのAIBN3.58g(21.8mmol)を溶解させて単量体溶液を調製した。次に、100gの2−ブタノンを入れた500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却した。2,000gのメタノール中に上記冷却した重合反応液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を400gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、60℃で15時間乾燥させて白色粉末状の重合体(C−1)を得た(74g、収率74%)。重合体(C−1)のMwは6,900、Mw/Mnは1.70であった。また
13C−NMR分析の結果、(M−1)、(M−2)及び(M−3)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ14モル%、37モル%、49モル%であった。
【0216】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
各感放射線性樹脂組成物の調製に用いた各成分を以下に示す。
【0217】
[[B]酸発生剤]
B−1:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホネート(下記式(B−1)で表される化合物)
【0218】
【化32】
【0219】
[[D]酸拡散制御剤]
D−1:トリフェニルスルホニウムサリチレート(下記式(D−1)で表される化合物)
【0220】
【化33】
【0221】
[[E]溶媒]
E−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E−2:シクロヘキサノン
E−3:γ−ブチロラクトン
【0222】
[実施例13]
[A]重合体としての(A−1)3質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)8.5質量部、[C]重合体としての(C−1)100質量部、[D]酸拡散制御剤としての(D−1)1.3質量部、並びに[E]溶媒としての(E−1)2,240質量部、(E−2)960質量部、及び(E−3)30質量部を混合し、得られた混合液を20nmのメンブランフィルターで濾過することにより感放射線性樹脂組成物(J−1)を調製した。
【0223】
[実施例14〜20並びに比較例1及び2]
実施例13において、下記表2に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例13と同様に操作して、感放射線性樹脂組成物(J−2)〜(J−8)並びに(CJ−1)及び(CJ−2)を調製した。
【0224】
【表2】
【0225】
<評価>
[後退接触角の測定]
8インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン株式会社の「クリーントラック「ACT8」」)を使用して各感放射線性樹脂組成物を膜厚80nmとなるように塗布し、100℃で60秒間PBを行い、レジスト膜を形成した。このレジスト膜について以下の手順で表面の後退接触角を測定した。
【0226】
DSA−10(KRUS社)を用い、室温23℃、湿度45%、常圧の環境下でDSA−10の針をアセトンとイソプロピルアルコールで洗浄した後、針に水を注入し、ウェハステージ上にウェハをセットした。次いで、ウェハ表面と針の先端の距離が1mm以下になるようステージの高さを調整した。針から水を排出しウェハ上に25μLの水滴を形成した後、針によって水滴を10μL/分の速度で180秒間吸引するとともに、接触角を毎秒(計180回)測定した。そして、接触角が安定した時点から計20点の接触角について平均値を算出し、後退接触角(°)とした。
【0227】
また、上記PBを行った後のレジスト膜を現像装置(東京エレクトロン株式会社の「クリーントラック「ACT8」」)のGPノズルを用いて2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により10秒間現像し、15秒間純水によりリンスした。リンス後、2,000rpmで液振り切り乾燥し、その乾燥後のレジスト膜の後退接触角を、上記PB後のレジスト膜と同様に測定した。PB後のレジスト膜の後退接触角、現像後のレジスト膜の後退接触角及びこれらの角の差を表3に示す。
【0228】
[現像欠陥評価]
[欠陥抑制性]
下層反射防止膜形成用組成物(日産化学社の「ARC66」)で下層反射防止膜を形成した12インチシリコンウェハ上に、上記スピンコーターにより各感放射線性樹脂組成物を塗布し、120℃で60秒間PBを行うことにより膜厚75nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜について、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON社の「NSR−S610C」)を用い、NA=1.3、ratio=0.750、Crosspoleの条件により、ターゲットサイズが幅45nmのラインアンドスペース(1L/1S)のマスクパターンを介して露光した。露光後、100℃で60秒間PEBを行った。その後、上記現像装置のGPノズルを用い、2.38質量%のTMAH水溶液により30秒間現像し、7秒間純水によりリンスし、3,000rpmで液振り切り乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、幅45nmの1L/1Sを形成する露光量を最適露光量とした。この最適露光量にてウェハ全面に線幅45nmの1L/1Sを形成し、欠陥検査用ウェハとした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CC−4000」)を用いた。また、欠陥検査用ウェハ上の欠陥数を、欠陥検査装置(KLA−Tencor社の「KLA2810」)を用いて測定し、この測定された欠陥を、レジスト膜由来と判断されるものと外部異物由来と判断されるものとに分類した。このうち、レジスト膜由来と判断される欠陥の数の合計を算出し、欠陥抑制性の指標とした。欠陥抑制性は、1,000個/ウェハ未満の場合は「A」と、1,000個/ウェハ以上の場合は「B」と評価した。評価結果を表3に示す。
【0229】
【表3】
【0230】
表3の結果から分かるように、実施例では比較例より現像前後の後退接触角差が大きくなっており、現像欠陥抑制性に優れる。また、[A]重合体がホモポリマーである実施例13、15、17及び19は、現像の前後における後退接触角差を特に大きくできていることも分かる。