(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受けプレートは、側面視で半円形状に形成され、且つ、前記リンク機構を前記積層形態に切り替えると円弧面が上方に位置し、前記リンク機構を前記展開形態に切り替えると前記円弧面が下方に位置するように、前記前側のリンクアームに取り付けられている
ことを特徴とする請求項4記載の苗移植機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1などに示される苗移植機の予備苗枠の前記積層形態において最も上方に位置する予備苗載台には、後端部のみに作業者が把持可能な把持部を設けている。このために、特許文献1などに示される苗移植機では、走行車体外から予備苗載台に苗の積み込み作業を行う際に、走行車体の外からのリンク機構の切り替え操作を行い難い。したがって、特許文献1などに示される苗移植機では、走行車体上の作業者がリンク機構の切り替え操作を行う必要があり、作業能率が低下する傾向であった。
【0005】
また、特許文献1などに示される苗移植機では、予備苗載台上の苗を掬い取る苗取部材を保持する保持部材が設けられていないので、作業者は、苗取部材を使用しないときは走行車体上に苗取部材を載置しておく必要がある。このために、特許文献1などに示される苗移植機では、走行中の走行車体の振動などで接触音が生じ、作業者に不快感を与える問題があるとともに、風などにより走行車体の外に苗取部材が吹き飛ばされてしまい、落下した苗取部材を拾う必要が生じ、作業能率が低下するとともに作業者の労力が増大する問題がある。
【0006】
そして、特許文献1などに示される苗移植機では、リンク機構の回動を規制する部材や機構が設けられていないので、作業時の振動や傾斜によってリンク機構が回動すると、予備苗載台に積載した苗が落下することがある。このために、特許文献1などに示される苗移植機では、落下した苗を拾う作業が必要となり、作業能率が低下する問題があるとともに、落下の際に苗が傷付き、苗の生育に悪影響がでる問題がある。
【0007】
さらに、特許文献1などに示される苗移植機では、苗移植機自体を収納するときには、予備苗枠を積層形態として前後の長さを短くするが、このとき、苗移植機の中で予備苗枠の上端部が最も高い位置となるので、苗移植機の上下方向の省スペース化が図れなくなる問題がある。
【0008】
また、特許文献1などに示される苗移植機では、前述した保持部材やリンク機構の回動を規制する部材や機構を設けると、苗移植機の部品点数が増加するという問題も考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、部品点数が極力増加することなく苗取部材を保持できるとともにリンク機構の回動を規制することができる苗移植機を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為、請求項1に記載の発明は、圃場を走行する走行車体(2)と、前記走行車体(2)の前部に設けられた操縦席(22)と、前記走行車体(2)の後部に装着され、且つ苗を圃場に植え付ける苗植付部(30)と、前記走行車体(2)の前部に設けられ、且つ前記苗植付部(30)に補充する苗を載置する複数の予備苗載台(102)と、前記複数の予備苗載台(102)が前後方向に並ぶ展開形態と前記複数の予備苗載台(102)が上下方向に並ぶ積層形態とに切り替え可能なリンク機構(103)と、を備えた予備苗枠(8)と、前記予備苗載台(102)上の苗を掬い取るための苗取部材(110)を保持し、前記予備苗載台(102)に対して回動自在に取り付けられるとともに、前記予備苗載台(102)に近付くと前記リンク機構(103)の切り替えを規制するロック部(112)を備えた保持部材(104)と、を備えることを特徴とする苗移植機(1)である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記保持部材(104)は、前記苗取部材(110)の振動を抑制する振動抑制部(113)を備え、前記振動抑制部(113)は、把持可能な把持部(117)を備えることを特徴とする請求項1に記載の苗移植機(1)である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記保持部材(104)の後端部を中心として前端部が前記予備苗載台(102)から前記操縦席(22)に近付く方向に回動自在に支持する回動支持部(105)を備え、前記ロック部(112)は、前記保持部材(104)の後端部に設けられ、前記後端部から下方に屈曲しているとともに、前記保持部材(104)の前端部が前記予備苗載台(102)に近付くと前記リンク機構(103)の切り替えを規制し、前記保持部材(104)の前端部が前記予備苗載台(102)から離間すると前記リンク機構(103)の切り替えを許容することを特徴とする請求項2に記載の苗移植機(1)である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記リンク機構(103)は、前後方向に並べて配置された2本のリンクアーム(106)を備え、前記2本のリンクアーム(106)のうちの前側のリンクアーム(106)には、前記展開形態に切り替えた際に前記保持部材(104)を前記予備苗載台(102)に近付けても、前記ロック部(112)と干渉して、前記ロック部(112)に前記リンク機構(103)の切り替えを規制させない受けプレート(121)が取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の苗移植機(1)である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記受けプレート(121)は、側面視で半円形状に形成され、且つ、前記リンク機構(103)を前記積層形態に切り替えると円弧面(121a)が上方に位置し、前記リンク機構(103)を前記展開形態に切り替えると前記円弧面(121a)が下方に位置するように、前記前側のリンクアーム(106)に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の苗移植機(1)である。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記走行車体(2)の後部に設けられ、且つ肥料を前記圃場に供給する施肥装置(26)と、前記予備苗載台(102)を上下方向の軸心回りに回転可能に支持する回転台(130)と、を備え、前記予備苗載台(102)を前記軸心回りに後方に180度回転させて、前記リンク機構(103)を前記展開形態に切り替えると、前記予備苗載台(102)が前記施肥装置(26)の上方に位置することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の苗移植機(1)である。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、前記予備苗載台(102)は、前記リンク機構(103)が取り付けられたフレーム部材(107)に取り付けられ、前記積層形態において下方の予備苗載台(102)が支持された前記フレーム部材(107)に、前記リンク機構(103)を前記積層形態に維持する規制ピン(108)が着脱自在に設けられ、前記積層形態において、前記規制ピン(108)を前記フレーム部材(107)から取り外すと、前記リンク機構(103)が回動して前記複数の予備苗載台(102)が互いに重なることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の苗移植機(1)である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、予備苗枠(8)のリンク機構(103)を展開形態とすることにより、予備苗載台(102)を走行車体(2)の前部よりも前側に位置させることができるので、圃場と圃場外との間に水路などがあっても、予備苗載台(102)に対する苗の積み込み作業を容易に行うことができる。
【0018】
また、苗移植機(1)によれば、苗取部材(110)を保持する保持部材(104)を予備苗枠(8)の予備苗載台(102)に対して回動自在に取り付けているので、使用していない苗取部材(110)が走行車体(2)から脱落することを抑制でき、作業能率が低下することを抑制できる。
【0019】
また、苗移植機(1)によれば、保持部材(104)を予備苗枠(8)の予備苗載台(102)に近付けるとロック部(112)がリンク機構(103)の切り替えを規制するので、走行中の振動によってリンク機構(103)が回動して、予備苗載台(102)から苗が不意に落下することを抑制できる。よって、苗移植機(1)によれば、作業能率の低下を抑制でき、苗の生育に悪影響がでることを抑制できる。
【0020】
したがって、苗移植機(1)によれば、保持部材(104)が苗取部材(110)の保持と、リンク機構(103)の回動の規制を行うので、部品点数が極力増加することなく苗取部材(110)を保持できるとともにリンク機構(103)の回動を規制することができる。よって、苗移植機(1)によれば、部品点数が極力増加することなく、作業能率が低下することを抑制できる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、保持部材(104)に苗取部材(110)の振動を抑制する振動抑制部(113)を備えているので、走行中の振動により苗取部材(110)が振動して接触音を生じることを抑制できる。よって、苗移植機(1)によれば、作業者が作業に集中でき、作業能率が向上する。
【0022】
また、苗移植機(1)によれば、振動抑制部(113)に把持部(117)を形成したことにより、走行車体(2)外から保持部材(104)即ち予備苗枠(8)のリンク機構(103)の切り替え操作を行うことができ、作業能率の低下を抑制できる。また、苗移植機(1)によれば、振動抑制部(113)に把持部(117)を形成したことにより、走行車体(2)への乗り降りの際に把持部(117)を掴むことができるので、乗り降り時の安全性を向上することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、保持部材(104)の前端部が予備苗枠(8)の予備苗載台(102)に近づくと、保持部材(104)の後端部に設けられたロック部(112)がリンク機構(103)の切り替えを規制するので、予備苗載台(102)からの苗の落下を抑制することができる。
【0024】
また、苗移植機(1)は、保持部材(104)の前端部が予備苗枠(8)の予備苗載台(102)から離間すると、保持部材(104)の後端部に設けられたロック部(112)がリンク機構(103)の切り替えを許容するので、保持部材(104)の前端部が予備苗枠(8)の予備苗載台(102)から離間するように、保持部材(104)を回転させることで、積層形態から展開形態への切り替えを容易に行うことができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加えて、展開形態に切り替えた際に、予備苗枠(8)の予備苗載台(102)に近付いた保持部材(104)のロック部(112)に干渉して、ロック部(112)にリンク機構(103)の切り替えを規制させない受けプレート(121)を前側のリンクアーム(106)に設けている。このために、苗移植機(1)によれば、展開形態から積層形態に切り替える際に、ロック部(112)の規制を解除することを必要としないので、作業能率を向上することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、展開形態では、受けプレート(121)の円弧面(121a)が下方に位置するので、展開形態に切り替えた際に、保持部材(104)が予備苗枠(8)の予備苗載台(102)に近付いても、受けプレート(121)に保持部材(104)のロック部(112)が確実に干渉する。したがって、苗移植機(1)によれば、展開形態から積層形態に切り替える際に余分な操作が増えることを抑制でき、作業能率を向上することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、予備苗載台(102)を180度移動させて、展開形態とすることで、予備苗載台(102)が施肥装置(26)の上方に位置するので、予備苗枠(8)の上下高さを抑制でき、苗移植機(1)自体の収納時や輸送時の省スペース化を図ることができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、規制ピン(108)をフレーム部材(107)から取り外すことで、予備苗載台(102)同士を重なり合う状態とすることができるので、予備苗枠(8)の上下高さを抑制でき、苗移植機(1)自体の収納時や輸送時の省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態に係る苗移植機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0031】
[実施形態]
本発明の実施形態に係る苗移植機1を、
図1から
図14に基いて説明する。
図1は、実施形態に係る苗移植機を表す側面図である。
図2は、実施形態に係る苗移植機を表す上面図である。
図3は、実施形態に係る苗移植機を表す正面図である。
図4は、実施形態に係る苗移植機の可動式予備苗枠などの上面図である。
図5は、実施形態に係る苗移植機の可動式予備苗枠などを後方からみた図である。
図6は、実施形態に係る苗移植機の保持部材の上面図である。
図7は、実施形態に係る苗移植機の可動式予備苗枠などの側面図である。
図8(a)は、実施形態に係る苗移植機の積層形態の可動式予備苗枠と保持部材などをフロントカバー側からみた側面図であり、
図8(b)は、実施形態に係る苗移植機の展開形態の可動式予備苗枠と保持部材などをフロントカバー側からみた側面図である。
図9(a)は、
図8(a)中のIXa−IXa線に沿う断面図であり、
図9(b)は、
図8(b)中のIXb−IXb線に沿う断面図である。
図10は、実施形態に係る苗移植機に用いられる苗取部材を示す斜視図である。
図11は、実施形態に係る苗移植機の整地装置などを断面で示す上面図である。
図12は、実施形態に係る苗移植機の整地装置などを示す側面図である。
図13は、実施形態に係る苗移植機の整地昇降機構の調整用目盛部材などの側面図である。
図14は、実施形態に係る苗移植機の整地昇降機構の調整用目盛部材の正面図である。
【0032】
実施形態に係る苗移植機1は、走行しながら圃場に苗を植え付けるものである。なお、以下では、苗移植機1の前進方向を前方側(
図1および
図2の左側)とし、苗移植機1の後退方向を後方側(
図1および
図2の右側)とし、苗移植機1の前後方向に直交する直交方向を左右方向とし、苗移植機1の前後方向に直交する鉛直方向を上下方向としている。
【0033】
図1および
図2に示すように、苗移植機1は、圃場を走行する走行車体2と、走行車体2の後部(後方側)に装着された苗植付装置3と、動力伝達機構4と、整地装置5と、整地装置昇降機構6(
図12に示す)と、固定式予備苗枠7と、可動式予備苗枠8(予備苗枠に相当)と、制御装置(図示せず)を備えている。
【0034】
走行車体2は、左右一対の前輪12a,12aおよび左右一対の後輪(走行輪)12b,12bからなる4つの車輪12を有し、該4つの車輪12を駆動輪とする4輪駆動車となっている。走行車体2は、メインフレーム10と、メインフレーム10に搭載されたエンジン11などを有している。この苗移植機1において、エンジン11の駆動力は、走行車体2を前進または後退させるために使用されるだけでなく、苗植付装置3を駆動させるためにも使用される。
【0035】
エンジン11は、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関であって、出力軸から駆動力を出力する。出力軸は、走行車体2の左側方から突出している。エンジン11は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ20よりも上方に突出させた状態で配置されている。このとき、エンジン11の出力軸は、フロアステップ20の床面よりも下方に位置している。
【0036】
ここで、フロアステップ20は、走行車体2の前部(前方側)とエンジン11の後部(後方側)との間に渡って設けられており、メインフレーム10上に取り付けられている。また、フロアステップ20の後方には、後輪12b,12bのフェンダを兼ねたリアステップ21が設けられている。このリアステップ21は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン11の左右それぞれの側方に配置されている。
【0037】
エンジン11は、これらのフロアステップ20とリアステップ21とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン11を覆うエンジンカバー14が配設されている。即ち、エンジンカバー14は、フロアステップ20とリアステップ21とから上方に突出した状態で、エンジン11を覆っている。
【0038】
また、走行車体2には、エンジンカバー14の上部に操縦席22が設置されている。即ち、操縦席22は、走行車体2の前部に設けられている。また、操縦席22の下方には、走行車体2のピッチ角を検出可能な傾斜角センサ(図示せず)が設けられている。また、走行車体2には、操縦席22の前方で、且つ、走行車体2の前部には、フロントカバー23が配設されている。このフロントカバー23は、フロアステップ20の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ20の前方側を左右に分断している。
【0039】
このフロントカバー23の内部には、図示しない制御装置、操作パネル等の操作装置、ステアリング機構等が配設されている。また、フロントカバー23の上部には、各種操作レバー等や計器類、ハンドル24が配設されている。このハンドル24は、作業者が回転操作することにより、前輪12a,12aをステアリング操舵する操舵部材として設けられており、フロントカバー23内のステアリング機構等を介して前輪12a,12aをステアリング操舵(転舵)させることが可能になっている。
【0040】
また、フロントカバー23の上部に設けられた各種操作レバーとしては、走行車体2の前後進、停止及び移動速度を切り替える走行操作レバー(図示せず)が配設されている。また、フロントカバー23の上部に設けられた各種操作レバーとしては、走行車体2が路上を走行する「路上走行モード」と、走行車体2が走行しながら圃場に苗を植え付ける「作業走行モード」等とを切替える副変速操作レバー(図示せず)が配設されている。また、フロントカバー23の上部に設けられた各種操作レバーとしては、苗植付装置3が圃場に植え付ける苗の間隔(走行車体2の進行方向における苗の植付間隔)を変更する株間変更ダイヤル(図示せず)が配設されている。実施形態では、株間変更ダイヤルは、苗の株間(植付間隔)を、坪当たりの株数を37株とする状態と、42株とする状態と、47株とする状態と、50株とする状態と、60株とする状態と、70株とする状態と、80株とする状態と、90株とする状態とのいずれかに変更する。
【0041】
また、走行車体2の操縦席22の後方に施肥装置26(
図1に示す)が設けられている。即ち、施肥装置26は、走行車体2の後部に設けられている。施肥装置26は、肥料ホッパ27に貯留されている粒状の肥料を植付作業中に一定量ずつ圃場に供給する。
【0042】
苗植付装置3は、走行車体2の後部に装着され、かつ苗を圃場に植え付ける苗植付部30と、苗植付部30を走行車体2に対して昇降させる苗植付部昇降機構31とを備えている。苗植付部昇降機構31は、昇降リンク機構32を有しており、苗植付部30は、この昇降リンク機構32を介して走行車体2に取り付けられている。昇降リンク機構32は、走行車体2の後部と苗植付部30とを連結させる上リンクと下リンクとを有しており、これらのリンクが、メインフレーム10の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム33に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部30に回転自在に連結されることにより、苗植付部30を昇降可能に走行車体2に連結している。
【0043】
また、苗植付部昇降機構31は、エンジン11の駆動力により発生する油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ34を有しており、油圧昇降シリンダ34の伸縮動作によって、昇降リンク機構32が苗植付部30を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構31は、その昇降動作によって、苗植付部30を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(苗の植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
【0044】
苗植付部30は、苗の植付範囲を複数の区画あるいは複数の列で、苗を圃場に植え付けることができる。実施形態に係る苗移植機1は、苗を4つの区画で植え付ける、いわゆる4条植のものである。苗植付部30は、昇降リンク機構32により昇降自在に設けられた植付フレーム35(
図12に示す)と、植付機構36と、苗載せ台37と、フロート38とを備えている。
【0045】
植付フレーム35は、昇降リンク機構32の上リンクと下リンクの後端が取り付けられている。苗載せ台37は、植付フレーム35に重ねられるなどして設けられ、植付フレーム35などを介して走行車体2の後部に苗植付部昇降機構31により昇降自在に配置されている。苗載せ台37は、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面37aを有しており、それぞれの苗載せ面37aに土付きのマット状苗を積載することが可能になっている。これにより、苗載せ台37に積載した苗が植え付けられて無くなるたびに、圃場外に用意している苗を取りに戻る必要が無く、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
【0046】
植付機構36は、苗載せ台37の下方に配置されかつ苗載せ台37に積載された苗を圃場に植え付ける。この植付機構36は、2条毎に一つずつ配設されており、2条分の複数の植込杆36cを備えている。本実施形態では、植付機構36は、合計二つ設けられ、各植付機構36は、1条につき植込杆36cを二つ備えている。また、植付機構36は、植付フレーム35の下端部に取り付けられかつ左右方向に直線状に延びた整地支持フレーム39(
図12に示す)から後方に延びた伝動ケース36aと、中央部を中心に伝動ケース36aに回転自在に設けられた二つの回転支持部36bと、それぞれの回転支持部36bの両端部に回転自在に設けられかつ苗載せ台37に積載された苗を圃場に植え付ける植込杆36cとを備えている。
【0047】
フロート38は、走行車体2の移動と共に、圃場上を滑走して整地するものである。フロート38は、走行車体2の左右方向における苗植付部30の中央に設けられた一つのセンターフロート38aと、該センターフロート38aの左右両側にそれぞれ設けられたサイドフロート38b,38bとの3枚で構成されている。
【0048】
また、各フロート38a,38b,38bは、圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられている。苗植付装置3は、センターフロート38aの上下動を検知する迎角制御センサ(図示しない)を設けている。苗植付装置3は、植付作業時にはセンターフロート38aの前部の上下動が迎角制御センサにより検知され、その検知結果に応じて制御装置により油圧昇降シリンダ34を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部30を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0049】
動力伝達機構4は、主変速機としての油圧式無段変速機15と、この油圧式無段変速機15にエンジン11からの駆動力を伝えるベルト式動力伝達機構16と、植付伝動機構(図示せず)とを有している。先ず、油圧式無段変速機15について説明する。
【0050】
油圧式無段変速機15は、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機として構成されている。油圧式無段変速機15は、エンジン11からの駆動力で駆動する油圧ポンプと、油圧ポンプによって発生させた油圧により機械的な力(回転力)を出力する油圧モータとを有している。なお、油圧ポンプによって発生させた油圧は、油圧モータを作動させるだけでなく、苗植付部昇降機構31の油圧昇降シリンダ34を作動させるために用いられる。また、油圧式無段変速機15は、エンジン11の駆動力が入力される油圧ポンプの入力軸に対して傾斜可能な図示しない斜板と、走行車体2の目標とする走行速度に応じて斜板の傾斜角を変更させるサーボモータとを有している。斜板は、油圧ポンプの入力軸に対して傾斜させることで、油圧ポンプから油圧モータへ向けて供給される作動油の流量を可変させる。
【0051】
斜板の傾斜角を変更させるサーボモータは、制御装置に接続されており、制御装置は、走行車体2の目標とする走行速度に応じて、サーボモータにより斜板の傾斜角を変更している。具体的に、走行車体2を停止させる停止位置の場合、制御装置は、サーボモータにより斜板を中立状態とする。ここで、斜板の中立状態とは、斜板と入力軸とがなす角度が90°となる状態である。そして、制御装置は、サーボモータにより斜板を中立状態とすると、油圧ポンプは、油圧モータへ向けて供給する作動油の流量をゼロとする。
【0052】
一方で、走行車体2を前進させる前進位置の場合、制御装置は、サーボモータにより斜板の傾斜角が正側に大きくなるように変更させる。すると、油圧ポンプは、油圧モータの出力軸が正回転するように、油圧モータへ向けて供給する作動油の流量を多くする。他方で、走行車体2を後退させる後退位置の場合、制御装置は、サーボモータにより斜板の傾斜角が負側に大きくなるように変更させる。すると、油圧ポンプは、油圧モータの出力軸が逆回転するように、油圧モータへ向けて供給する作動油の流量を多くする。なお、油圧モータは、供給される作動油の流量が多ければ多いほど、出力軸の回転数が大きくなる。
【0053】
このため、油圧式無段変速機15は、エンジン11の駆動力を、走行車体2が前進方向に駆動する駆動力として出力したり、走行車体2を停止させる制動力として出力したり、走行車体2が後退方向に駆動する駆動力として出力可能となっている。
【0054】
再び、
図1を参照するが、この油圧式無段変速機15は、エンジン11よりも前方で且つフロアステップ20の床面よりも下方に配置される。実施形態では、走行車体2の上面から見て、エンジン11の前方に油圧式無段変速機15を配置している。また、油圧式無段変速機15は、エンジン11の出力軸が走行車体2の左側方から突出しているため、走行車体2の左側に寄せて配置され、その入力軸が走行車体2の左側方から突出している。
【0055】
ベルト式動力伝達機構16は、エンジン11で発生した駆動力を、ベルト16aを介して油圧式無段変速機15に伝達する。
【0056】
さらに、動力伝達機構4は、エンジン11からの駆動力がベルト式動力伝達機構16と油圧式無段変速機15とを介して伝達されるミッションケース(図示せず)などを有している。ミッションケースは、メインフレーム10の前部に取り付けられている。ミッションケースは、ベルト式動力伝達機構16と油圧式無段変速機15とを介して伝達されたエンジン11からの駆動力を、当該ミッションケース内の副変速機で変速して、前輪12a,12aと後輪12b,12bへの走行用動力と、苗植付装置3への植付用動力などに分けて出力する。
【0057】
このうち、走行用動力は、走行車体2に設けられた後輪12bに駆動力を供給するドライブシャフト17及び左右の後輪ギヤケース29を介して後輪12bに伝達される。また、走行用動力は、図示しない前輪用デフ装置に伝達された後、左右の前輪ファイナルケース28を介して前輪12aに伝達される。
【0058】
なお、左右の前輪ファイナルケース28は、ミッションケースの左右それぞれの側方に配設されており、左右一対の前輪12aは、前輪側車軸を介して左右の前輪ファイナルケース28に連結されている。また、この前輪ファイナルケース28は、ハンドル24の回転操作に応じて駆動し、前輪12aをステアリング操舵させることが可能になっている。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース29には、後輪側車軸を介して後輪12bが連結されている。
【0059】
また、植付用動力は、走行車体2の後部に設けた植付伝動機構の植付クラッチ(図示せず)に伝達され、この植付クラッチの係合時に苗植付部30へ伝達される。
【0060】
植付伝動機構は、エンジン11からの駆動力を苗植付装置3へ植付用動力として伝達するものである。植付伝動機構は、各植付機構36の回転支持部36bを伝動ケース36aに対して回転させるとともに、回転支持部36bの両端部で植込杆36cを回転させる。また、動力伝達機構4は、エンジン11からの駆動力を整地装置5へ整地用動力として伝達するものである。
【0061】
整地装置5は、苗植付装置3の苗植付部30及び整地支持フレーム39の前方に設けられて、圃場を整地するものである。整地装置5は、整地支持フレーム39に支持されている。即ち、苗移植機1は、整地装置5の後方に設けられかつ整地装置5を支持するための整地支持フレーム39を備える。整地支持フレーム39は、
図11に示すように、センターフロート38aの前端部の上方で、かつサイドフロート38bの前方に設けている。なお、本実施形態では、整地支持フレーム39は、サイドフロート38bの前方の部分からセンターフロート38aの前端部の上方の部分が上方でかつ若干前方に配置されている。
【0062】
整地装置5は、センターフロート38a及び左右のサイドフロート38b,38bと同様に、
図11に示すように、走行車体2の左右方向の中央に設けられたセンターロータ50と、センターロータ50の左右両側でセンターロータ50よりも後方に設けられた一対のサイドロータ51と、センターロータ50の左右両端と一対のサイドロータ51とを連結する一対の連結伝動機構52とを備える。
【0063】
センターロータ50と一対のサイドロータ51の長手方向は、左右方向と平行に配置されており、連結伝動機構52により軸心回りに回転自在に支持されている。一対の連結伝動機構52は、センターロータ50と一対のサイドロータ51とを軸心回りに連動させて回転させる。一対の連結伝動機構52には、エンジン11からの駆動力が伝達される駆動入力軸53が設けられている。これにより、センターロータ50とサイドロータ51とは、共にエンジン11からの出力によって回転可能になっている。
【0064】
整地装置昇降機構6は、整地装置5を走行車体2に支持し、整地装置5を昇降するものである。整地装置昇降機構6は、
図11に示すように、一対の第1整地回動アーム60と、一対の第1整地回動アーム60間に設けられた第2整地回動アーム61と、整地昇降機構62(
図12に示す)とを備える。
【0065】
第1整地回動アーム60及び第2整地回動アーム61は、一端が整地支持フレーム39に回転自在に連結され、他端が整地装置5のサイドロータ51に回転自在に連結されて、整地装置5を後方から支持するものである。第1整地回動アーム60の一端は、整地支持フレーム39の左右端に回転自在に連結されている。第1整地回動アーム60は、苗移植機1の側方からみて、整地支持フレーム39から整地装置5に向かって延びている。第1整地回動アーム60の他端は、サイドロータ51の左右方向の外側の端に回転自在に連結されている。こうして、第1整地回動アーム60は、整地装置5のサイドロータ51の左右両端と整地支持フレーム39の左右両端とを連結している。
【0066】
第2整地回動アーム61は、本実施形態では、一対設けられている。一対の第2整地回動アーム61の他端は、サイドロータ51の左右方向の内側の端に回転自在に連結されている。こうして、サイドロータ51は、第1整地回動アーム60と第2整地回動アーム61により支持されている。
【0067】
整地昇降機構62は、
図12に示すように、整地装置5の高さ調整する整地高さ調整レバー63と、吊下げアーム66とを備えている。整地高さ調整レバー63は、苗植付装置3の苗植付部30の植付フレーム35に固定された調整用目盛部材64などに後端部を中心として回転自在に取り付けられている。整地高さ調整レバー63(
図13に示す)は、作業者により把持されて回転される。
【0068】
調整用目盛部材64は、
図14に示すように、上下方向に延び、かつ整地高さ調整レバー63を通す通し孔65と、通し孔65の内縁に設けられた高さ表示用切欠き67とを備えている。高さ表示用切欠き67は、整地装置5の高さを示す目盛であって、整地高さ調整レバー63の回転中心を中心した円弧上に間隔をあけて設けられている。この高さ表示用切欠き67は、整地高さ調整レバー63が左右に並べられた際の整地装置5の高さを示す。調整用目盛部材64は、高さ表示用切欠き67が整地高さ調整レバー63の回転中心を中心した円弧上に間隔をあけて設けられていることで、整地装置5の高さを正確に示すことができる。
【0069】
吊下げアーム66は、棒状に形成され、一端が整地高さ調整レバー63の中央部にスライド自在に取り付けられ、他端が一方の第2整地回動アーム61の中央部に回転自在に取り付けられている。即ち、整地昇降機構62は、一方の第2整地回動アーム61に取り付けられている。吊下げアーム66は、苗植付装置3の苗植付部30の植付フレーム35から第2整地回動アーム61を介して整地装置5を吊り下げる。このため、整地昇降機構62は、整地装置5の一対の連結伝動機構52よりの左右方向の内側の位置で整地装置5を吊り下げて、整地装置5を回転させる。これにより、整地装置5を左右に略対称な構成とすることができる。
【0070】
整地昇降機構62は、整地高さ調整レバー63が後端部を中心として回転させることで、吊下げアーム66を昇降させ、第2整地回動アーム61を介して整地装置5を昇降させる。整地昇降機構62は、苗植付部昇降機構31とは独立しており、整地装置5のみを苗植付部30に対して相対的に昇降させる。
【0071】
また、整地装置5の一対の連結伝動機構52のうちの吊下げアーム66と上下方向に重なる一方の連結伝動機構52の前端部に設けられた取付部材100と、吊下げアーム66の上端部とには、コイルばね70が取り付けられている。コイルばね70は、一方の連結伝動機構52の前端部と吊下げアーム66の上端部とを連結し、かつ一方の連結伝動機構52即ち整地装置5の前端部を上方でかつ後方に付勢する。
【0072】
固定式予備苗枠7と、可動式予備苗枠8は、補給用の苗を載せておくものであり、
図2及び
図3に示すように、フロントカバー23の側方に設けられている。即ち、固定式予備苗枠7及び可動式予備苗枠8は、走行車体2の前部に設けられている。なお、固定式予備苗枠7は、フロントカバー23の右側に設けられ、可動式予備苗枠8は、フロントカバー23の左側に設けられている。
【0073】
固定式予備苗枠7及び可動式予備苗枠8は、
図1及び
図3に示すように、フロアステップ20などに取り付けられた一対の支持フレーム101と、複数の予備苗載台102とを備えている。予備苗載台102は、苗植付部30に補充するための補給用の苗を載置するものであり、平板状に形成されている。予備苗載台102は、本実施形態では、固定式予備苗枠7及び可動式予備苗枠8ともに二つ設けられており、一対の支持フレーム101などにより支持されている。固定式予備苗枠7では、予備苗載台102は、一対の支持フレーム101などにより上下方向に間隔をあけて並べられている。
【0074】
可動式予備苗枠8は、一対の支持フレーム101と、二つの予備苗載台102とに加えて、
図3及び
図7などに示すように、リンク機構103と、保持部材104と、回動支持部105(
図5に示す)とを備えている。リンク機構103は、
図7に示すように、二つ(複数)の予備苗載台102が前後方向に並ぶ展開形態と、二つ(複数)の予備苗載台102が上下方向に間隔をあけて並ぶ積層形態とに切り替え可能なものである。リンク機構103は、
図7などに示すように、前後方向に間隔をあけて並べて配置された2本のリンクアーム106を備えている。2本のリンクアーム106は、それぞれ、両端部が予備苗載台102を支持するフレーム部材107に回転自在に連結され、互いに平行に設けられている。即ち、リンク機構103は、フレーム部材107に取り付けられている。
【0075】
また、積層形態において、下方に位置する予備苗載台102が互いに重ねられた二つのフレーム部材107により支持されており、リンクアーム106の端部は、これら二つのフレーム部材107のうちの下方のフレーム部材107に回転自在に連結されている。また、上方のフレーム部材107には、リンクアーム106と接触して、積層形態を超えて予備苗載台102が密に重なる方向に回転することを規制する規制ピン108が着脱自在である。即ち、規制ピン108は、下方の予備苗載台102が支持されたフレーム部材107に着脱自在に設けられ、リンク機構103を積層形態に維持するものである。
【0076】
さらに、積層形態において、上方に位置する予備苗載台102を支持したフレーム部材107の後端部には、作業者が把持することが可能な扁平な輪状の把持部109が取り付けられている。把持部109は、作業者が把持することで、展開形態と積層形態とを切り替えることができる。
【0077】
保持部材104は、予備苗載台102上の苗を掬い取る苗取部材110(
図10に示す)を保持するものである。保持部材104は、可動式予備苗枠8の積層形態時の上方の予備苗載台102よりも左右方向の内側即ちフロントカバー23側に設けられている。保持部材104は、回動支持部105により可動式予備苗枠8即ち予備苗載台102に対して、
図4の実線で示す位置から
図4の点線で示す位置とに亘って苗移植機1の前後方向に平行な軸心回りに回動自在に取り付けられている。
【0078】
保持部材104は、パイプ状の部材が曲げられるなどして得られ、
図6に示すように、扁平な枠状の部材保持部111と、ロック部112と、振動抑制部113とを備えている。部材保持部111は、内側に苗取部材110の平板状部110a(
図10に示す)を通すことで、苗取部材110を保持する。
【0079】
ロック部112は、保持部材104が予備苗載台102に近付いて、予備苗載台102の側方に並ぶと、リンク機構103の積層形態から展開形態への切り替えを規制するものである。即ち、ロック部112は、保持部材104が予備苗載台102に近付くと、リンク機構103の切り替えを規制するものである。ロック部112は、部材保持部111の後端に連なって、保持部材104の後端部に設けられている。ロック部112は、部材保持部111の後端からさらに後方で、且つ下方に向かって屈曲した後下方延在部114と、後下方延在部114の先端から左右方向の外側に向かって屈曲した外側延在部115とを備えている。ロック部112は、
図4の実線に示すように、積層形態時に保持部材104の前端部が予備苗載台102に近付くと、
図9(a)に示すように前側のリンクアーム106の内側面に後下方延在部114が重なり、前側のリンクアーム106の下面に外側延在部115が重なることで、後下方延在部114と外側延在部115とが共にリンク機構103の積層形態から展開形態への切り替えを規制する。また、ロック部112は、
図4の点線に示すように、保持部材104の前端部が予備苗載台102から離間すると、リンク機構103の積層形態と展開形態との間の切り替えを許容する。
【0080】
振動抑制部113は、部材保持部111内に保持された苗取部材110の振動を抑制するものである。振動抑制部113は、保持部材104の部材保持部111の前端部に設けられている。振動抑制部113は、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、部材保持部111の前端部からさらに前方でかつ下方に向かって屈曲した傾斜部116と、傾斜部116の下端から上方に向かって屈曲して部材保持部111の前端に連なった鉛直部117(把持部に相当)とを備えて、側方からみて三角形に形成されている。傾斜部116は、部材保持部111内に保持された苗取部材110が当接することで、苗取部材110の振動を抑制する。鉛直部117は、作業者が把持可能である。
【0081】
回動支持部105は、保持部材104の後端部を中心として、保持部材104の前端部が予備苗載台102から操縦席22に近付く方向や離間する方向に、保持部材104を支持するものである。回動支持部105は、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、支持フレーム101の上端部に取り付けられた支持部材118(
図5に示す)と、支持部材118に取り付けられた保持部材支持フレーム119と、保持部材支持フレーム119に保持部材104を取り付ける固定部材120とを備えている。保持部材支持フレーム119は、保持部材104よりも操縦席22側に設けられる。固定部材120は、保持部材支持フレーム119と部材保持部111とが平行となるように、部材保持部111を保持部材支持フレーム119に取り付ける。固定部材120は、部材保持部111を挟み込んで、苗移植機1の前後方向と平行な軸心回りに部材保持部11即ち保持部材104を回転自在に支持する。回転支持部105は、固定部材120が前後方向と平行な軸心回りに部材保持部11即ち保持部材104を回転自在に支持することで、保持部材104の後端部を中心として、保持部材104の前端部に設けられた振動抑制部113及び後端部に設けられたロック部112が予備苗載台102から操縦席22に近付く方向や離間する方向に、保持部材104を支持する。
【0082】
また、リンク機構103の前側のリンクアーム106には、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、受けプレート121が取り付けられている。受けプレート121は、前側のリンクアーム106の積層形態における上端部に取り付けられている。また、受けプレート121は、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、前側のリンクアーム106のフロントカバー23寄りの内側面に取り付けられている。受けプレート121は、展開形態に切り替えた際に、予備苗載台102から離間した保持部材104を予備苗載台102に近付けても、保持部材104のロック部112に干渉(接触)する。そして、受けプレート121は、ロック部112にリンク機構103の切り替えを規制させないものである。即ち、受けプレート121は、保持部材104のロック部112に干渉(接触)すると、ロック部112がリンク機構103の切り替えを規制することを規制するものである。
【0083】
受けプレート121は、
図7、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、側面視で、半円形状に形成されている。受けプレート121は、リンク機構103を積層形態に切り替えると、
図7の実線及び
図8(a)に示すように、円弧面121aが上方に位置して、前側のリンクアーム106の下面から下方に突出しない。そして、受けプレート121は、リンク機構103を積層形態に切り替えると、
図9(a)に示すように、ロック部112に干渉(接触)せずに、ロック部112がリンク機構103のリンクアーム106の切り替えを規制することを許容する。受けプレート121は、リンク機構103を積層形態に切り替えると、
図7の点線及び
図8(b)に示すように、円弧面121aが下方に位置して、前側のリンクアーム106の下面から下方に突出する。そして、受けプレート121は、リンク機構103を積層形態に切り替えると、
図9(b)に示すように、ロック部112に干渉(接触)して、ロック部112にリンク機構103のリンクアーム106の切り替えを規制させない。
【0084】
制御装置は、苗移植機1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置は、例えば、油圧式無段変速機15を制御する変速制御、苗植付部昇降機構31による苗植付部30の昇降制御、エンジン11を制御するエンジン制御等を実行している。特に、制御装置は、傾斜角センサが走行車体2の前上がりのピッチ角を検出したときの油圧昇降シリンダ34の油圧を制御して苗植付部30を上昇させるまでのディレイ時間を、傾斜角センサが走行車体2の前下がりのピッチ角を検出したときの油圧昇降シリンダ34の油圧を制御して苗植付部30を下降させるまでのディレイ時間よりも短くする。こうすることで、例えば、圃場内から圃場外へ苗移植機1が移動する際に、苗植付部30を速やかに上昇させることができ、圃場内での植え付け作業中に苗の植付深さがばらつくことを抑制できる。
【0085】
また、本発明では、制御装置は、ディレイ時間に変えて、前上がりのピッチ角を検出して油圧昇降シリンダ34の油圧を制御するまでの不感帯を、前下がりのピッチ角を検出して油圧昇降シリンダ34の油圧を制御するまでの不感帯よりも狭くしてもよい。また、本発明では、制御装置は、ディレイ時間及び不感帯に変えて、前上がりのピッチ角を検出して油圧昇降シリンダ34を制御する油圧を、前下がりのピッチ角を検出して油圧昇降シリンダ34を制御する油圧よりも高くしてもよい。また、本発明では、制御装置は、傾斜角センサが走行車体2の前上がりのピッチ角を検出したときの苗植付部30の植付深さを、傾斜角センサが走行車体2の前下がりのピッチ角を検出したときの苗植付部30の植付深さよりも浅くしてもよい。また、制御装置は、傾斜角センサの検出結果にかえて、前輪12aのサスペンションの伸縮を検出して、苗植付部30の植付深さを適宜変更してもよい。この際には、サスペンションが伸びたときのディレイ時間を、サスペンションが縮んだときのディレイ時間よりも短くしてもよく、サスペンションが伸びたときの不感帯を、サスペンションが縮んだときの不感帯よりも狭くするのが望ましい。
【0086】
前述した苗移植機1は、圃場に苗を植え付ける際には、作業者の各種操作レバーの操作により苗植付装置3が対地作業位置(苗の植付位置)まで下降される。また、苗移植機1は、作業者の整地高さ調整レバー63の操作により整地装置5が適切な高さに位置付けられる。そして、苗移植機1は、圃場内を走行しながら整地装置5のロータ50,51が回転することで圃場の表面を均す。そして、苗移植機1は、苗植付部30の回転支持部36bが中央部を中心として回転しながら回転支持部36bの両端部で植込杆36cが回転して、苗を圃場に植え付ける。
【0087】
苗移植機1は、特に、可動式予備苗枠8の各予備苗載台102に補給用の苗を載せる際には、保持部材104を苗移植機1の前後方向に平行な軸心回りに回転させて、保持部材104の前端部に設けられた振動抑制部113を予備苗載台102から離間させてから振動抑制部113の鉛直部117を把持するなどして、リンク機構103を積層形態から展開形態に切り替える。特に、苗移植機1は、圃場の外縁に位置して、圃場外から補給用の苗を載せる際には、可動式予備苗枠8のリンク機構103を展開形態に切り替える。そして、苗移植機1は、可動式予備苗枠8への苗の補給が完了すると、リンク機構103を積層形態に切り替えた後、保持部材104を苗移植機1の前後方向に平行な軸心回りに回転させて、保持部材104の前端部に設けられた振動抑制部113及び後端部に設けられたロック部112を予備苗載台102に近付けて、ロック部112にリンク機構103の切り替えを規制させる。また、前方からの苗移植機1の操縦席22への乗り降りの際には、作業員は、振動抑制部113の鉛直部117を把持し、後方からの苗移植機1の操縦席22への乗り降りの際には、作業員は、把持部109を把持することができる。
【0088】
以上のように、本実施形態の苗移植機1の構成によれば、可動式予備苗枠8のリンク機構103を展開形態とすることにより、可動式予備苗枠8を走行車体2の前部よりも前方に位置させることができるので、圃場と圃場外との間に水路などがあっても、可動式予備苗枠8の予備苗載台102に対する苗の積み込み作業を容易に行うことができる。
【0089】
また、苗移植機1によれば、苗取部材110を保持する保持部材104を可動式予備苗枠8の予備苗載台102に対して苗移植機1の前後方向に平行な軸心回りに回動自在に取り付けているので、使用していない苗取部材110が走行車体2から脱落することを抑制でき、作業能率が低下することを抑制できる。
【0090】
また、苗移植機1によれば、保持部材104の前端部に設けられた振動抑制部113及び後端部に設けられたロック部112を可動式予備苗枠8の予備苗載台102に近付けるとロック部112がリンク機構103の切り替えを規制するので、走行中の振動によってリンク機構103が回動して、可動式予備苗枠8の予備苗載台102から苗が不意に落下することを抑制できる。よって、苗移植機1によれば、作業能率の低下を抑制でき、苗の生育に悪影響がでることを抑制できる。
【0091】
したがって、苗移植機1によれば、保持部材104が苗取部材110の保持と、リンク機構103の回動の規制を行うので、部品点数が極力増加することなく苗取部材110を保持できるとともにリンク機構103の回動を規制することができる。よって、苗移植機1によれば、部品点数が極力増加することなく、作業能率が低下することを抑制できる。
【0092】
苗移植機1によれば、保持部材104に苗取部材110の振動を抑制する振動抑制部113を備えているので、走行中の振動により苗取部材110が振動して接触音を生じることを抑制できる。よって、苗移植機1によれば、作業者が作業に集中でき、作業能率が向上する。
【0093】
また、苗移植機1によれば、振動抑制部113に作業者が把持可能な鉛直部117を形成したことにより、走行車体2外から保持部材104即ち可動式予備苗枠8のリンク機構103の切り替え操作を行うことができ、作業能率の低下を抑制できる。また、苗移植機1によれば、振動抑制部113に鉛直部117を形成したことにより、走行車体2への乗り降りの際に保持部材104を掴むことができるので、乗り降り時の安全性を向上することができる。
【0094】
苗移植機1によれば、保持部材104の前端部に設けられた振動抑制部113及び後端部に設けられたロック部112が可動式予備苗枠8の予備苗載台102に近付くと、保持部材104の後端部に設けられたロック部112がリンク機構103の切り替えを規制するので、可動式予備苗枠8の予備苗載台102からの苗の落下を抑制することができる。
【0095】
また、苗移植機1は、保持部材104の前端部に設けられた振動抑制部113及び後端部に設けられたロック部112が可動式予備苗枠8の予備苗載台102から離間すると、保持部材104の後端部に設けられたロック部112がリンク機構103の切り替えを許容するので、保持部材104の前端部が可動式予備苗枠8の予備苗載台102から離間するように、保持部材104を回転させることで、積層形態から展開形態への切り替えを容易に行うことができる。
【0096】
苗移植機1によれば、展開形態に切り替えた際に、可動式予備苗枠8の予備苗載台102に近付いた保持部材104のロック部112に干渉して、ロック部112にリンク機構103の切り替えを規制させない受けプレート121を前側のリンクアーム106に設けている。このために、苗移植機1によれば、展開形態から積層形態に切り替える際に、ロック部112の規制を解除することを必要としないので、作業能率を向上することができる。
【0097】
苗移植機1によれば、展開形態では、受けプレート121の円弧面121aが下方に位置して前側のリンクアーム106の下面から下方に突出するので、展開形態に切り替えた際に、保持部材104の前端部に設けられた振動抑制部113及び後端部に設けられたロック部112が可動式予備苗枠8の予備苗載台102に近付いても、受けプレート121に保持部材104のロック部112が確実に干渉する。したがって、苗移植機1によれば、展開形態から積層形態に切り替える際に余分な操作が増えることを抑制でき、作業能率を向上することができる。
【0098】
また、本発明では、
図15に示すように、可動式予備苗枠8が回転台130を備えてもよい。なお、
図15は、実施形態の変形例に係る苗移植機の可動式予備苗枠などの側面図である。
図15において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0099】
図15に示された可動式予備苗枠8は、予備苗載台102を三つ備えている。三つの予備苗載台102のうちの上方の二つの予備苗載台102は、リンク機構103により展開形態と積層形態とが切り替えられる。回転台130は、三つの予備苗載台102を上下方向の軸心回りに回転可能に、回動支持部105の支持部材118に支持している。
【0100】
図15に示された可動式予備苗枠8は、
図15中に点線で示す状態から三つの予備苗載台102を上下方向の軸心回りに後方に180度回転させて、リンク機構103を展開形態に切り替えて、
図15中に実線で示す状態とすると、
図15に示すように、最も上方の予備苗載台102が施肥装置26の上方に位置する。
【0101】
図15に示された苗移植機1によれば、予備苗載台102を180度移動させて、展開形態とすることで、予備苗載台102が施肥装置26の上方に位置する。このために、苗移植機1によれば、収納時などの可動式予備苗枠8の上下高さを抑制でき、苗移植機1自体の収納時や輸送時の省スペース化を図ることができる。
【0102】
また、本発明では、
図16に示すように、可動式予備苗枠8の規制ピン108を取り外すと、予備苗載台102同士が密に重なるようにしてもよい。なお、
図16は、実施形態の他の変形例に係る苗移植機の可動式予備苗枠などの側面図である。
図16において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0103】
図16に示された可動式予備苗枠8は、予備苗載台102を三つ備えている。三つの予備苗載台102のうちの上方の二つの予備苗載台102は、リンク機構103により展開形態と積層形態とが切り替えられる。
【0104】
図16に示された可動式予備苗枠8は、積層形態において、
図16中に点線で示す規制ピン108を取り付けた状態から規制ピン108をフレーム部材107から取り外すと、リンク機構103が積層形態を超えて展開形態に切り替わる際に回動する方向の逆向きに回動する。そして、可動式予備苗枠8は、
図16中に実線で示すように、複数の予備苗載台102即ち最も上方の予備苗載台102と中央の予備苗載台102とが互いに密に重なる。
【0105】
図16に示された苗移植機1によれば、規制ピン108をフレーム部材107から取り外すことで、予備苗載台102同士を重なり合う状態とすることができるので、可動式予備苗枠8の上下高さを抑制でき、苗移植機1自体の収納時や輸送時の省スペース化を図ることができる。
【0106】
また、苗移植機1は、整地装置5の走行車体2の前後方向の姿勢を水平に維持するために、
図17に示すように、接触突起69と、水平維持部材71とを備えてもよい。なお、
図17は、実施形態の変形例に係る苗移植機の整地装置などを示す側面図である。なお、
図17において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0107】
接触突起69は、吊下げアーム66の下端部の左右方向の側面に取り付けられて、吊下げアーム66に設けられている。接触突起69は、吊下げアーム66から前方に向かって凸に形成されている。接触突起69は、上下方向の中央の吊下げアーム66からの前方側の突出量が上下方向の両端の突出量よりも大きく形成されている。また、接触突起69は、例えば、金属、硬質樹脂、炭素繊維などの硬質材料で構成されている。なお、硬質材料とは、炭化物、窒化物、ホウ化物、ある種の酸化物には硬さの非常に高い性質を利用した物質を総称したものをいう。接触突起69の水平維持部材71の後述するローラ73が接触する接触面69aが、苗移植機1の側方から見て円弧状に形成されている。
【0108】
水平維持部材71は、一方の連結伝動機構52に取り付けられている。水平維持部材71は、接触突起69に接触して、サイドロータ51即ち整地装置5の前後方向の姿勢を水平に維持するものである。水平維持部材71は、一方の連結伝動機構52の左右方向の内側の一端から上方に突出する突出部材72と、突出部材72の上端に左右方向の軸心を中心として回転自在な回転体としてのローラ73とを備える。ローラ73は、整地装置5が最下方の位置に位置付けられると、外周面が接触突起69の接触面69aに接触して、接触面69a上を転動可能である。ローラ73は、外周面が接触突起69の接触面69aに接触することで、整地装置5の走行車体2の前後方向の姿勢を水平に維持することができる。
【0109】
図17に示された苗移植機1によれば、整地装置5の前後方向の姿勢を水平に維持することができるために、整地装置5が圃場の凸部などに潜り込むことを抑制でき、整地装置5が破損することを抑制できる。
【0110】
また、苗移植機1は、
図18に示すように、整地昇降機構62の整地高さ調整レバー63と吊下げアーム66との連結箇所を上下方向に調整可能としてもよい。なお、
図18は、実施形態の変形例に係る苗移植機の整地昇降機構の要部の側面図である。
【0111】
図18に示された例では、整地高さ調整レバー63と吊下げアーム66とを連結するピンを通す孔を上下方向に間隔をあけて、整地高さ調整レバー63に複数設けている。
図18に示された例では、整地装置5の細かな高さ調整を行うことができる。
【0112】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。