(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動車などの車両において、金属布又は金属箔などの導電性のシート材を電流の伝送媒体として使用したいというニーズがある。例えば、金属布が、編組線の代わりにシールド部材として採用されることが考えられる。この場合、金属布は、電線の周囲を囲む筒状に保持された状態で使用される。金属布は、金属糸が交差して織られた網目構造を有する。
【0008】
導電性のシート材が電流の伝送媒体として使用される場合、シート材と基準電位体などの他の導体とを電気的に接続する接続金具が必要となる。以下、導電性のシート材とそのシート材と接続された接続金具とを含む電気部品のことを金具付導電シートと称する。
【0009】
金具付導電シートにおいて、シート材に対する接続金具の固着力が十分に大きいこと、及び、シート材と接続金具との間の接続抵抗が十分に小さいことが重要である。
【0010】
なお、固着力は、接続金具におけるシート材と接続された部分からシート材を引き抜く方向の力がシート材に加わった場合に、接続金具とシート材とを分離するに至るのに要する力のことである。また、接続抵抗は、導電性のシート材と接続金具との間の電気的抵抗のことである。
【0011】
しかしながら、特許文献1に示されるシールドシェル補助部及びリング状の固定部材が、金属布などのシート材に接続される接続金具として用いられる場合、小さな接続抵抗と大きな固着力とを両立することが難しい。
【0012】
即ち、シート材を挟み込む2つの金属部材の挟持力が大き過ぎると、シート材が過度に圧縮されるために十分な固着力を確保することができない。一方、シート材を挟み込む2つの金属部材の挟持力が、十分な固着力を確保できる程度に小さく調節されると、2つの金属部材とシート材との間の接続抵抗が大きくなる。
【0013】
本発明は、導電性のシート材及びそのシート材と他の部材とを電気的に接続する接続金具を備える金具付導電シートにおいて、小さな接続抵抗と大きな固着力とを両立しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1態様に係る金具付導電シートは、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、導電性のシート材である。
(2)第2の構成要素は、上記シート材の縁部に圧着された圧着部を有し、上記シート材と他の部材とを電気的に接続する接続金具である
。上記圧着部は、上記シート材の縁部を挟み込んだ一対の板状挟持部と、上記一対の板状挟持部を繋ぐ折り返し部と、を備える。一対の上記板状挟持部の少なくとも一方は、上記折り返し部とその反対側における上記板状挟持部の縁部との間の中間領域の外表面に、
帯状に形成された帯状凹部を有し、前記板状挟持部のうち前記帯状凹部の底の部分は、前記シート材に対して他の部分よりも強く密着している状態である。また、前記帯状凹部は、前記折り返し部に対して平行に形成され、前記シート材が前記圧着部に対して前記折り返し部の反対側に延出し、前記帯状凹部の長手方向に沿った方向において、前記圧着部の少なくとも一側に接続対象物に直接接続される接続部が繋がって設けられている。
【0015】
第2態様に係る金具付導電シートは、第1態様に係る金具付導電シートの一態様である。第2態様に係る金具付導電シートにおいて、上記帯状凹部の表面は、上記帯状凹部の長手方向に沿う帯状の傾斜面を含む。上記帯状の傾斜面は、上記帯状凹部の幅方向の端からそれより中央寄りの位置まで徐々に深く形成された面である。
【0016】
第3態様に係る金具付導電シートは、第2態様に係る金具付導電シートの一態様である。第3態様に係る金具付導電シートにおいて、上記帯状凹部の表面は、上記帯状凹部の長手方向に沿う帯状の平坦面をさらに含む。上記帯状の平坦面は、上記帯状凹部の幅方向の両端各々から形成された一対の上記帯状の傾斜面の間において一定の深さで形成された面である。
【0017】
第4態様に係る金具付導電シートは、第3態様に係る金具付導電シートの一態様である。第4態様に係る金具付導電シートにおいて、上記シート材は、金属糸が交差して織られた網目構造を有する金属布である。さらに、上記帯状凹部における上記帯状の平坦面は、上記金属布における上記金属糸のピッチよりも大きな幅で形成されている。
【0018】
第5態様に係る金具付導電シートは、第1態様から第3態様のいずれか1つに係る金具付導電シートの一態様である。第5態様に係る金具付導電シートにおいて、上記シート材は、金属糸が交差して織られた網目構造を有する金属布である。
【0019】
第6態様に係る金具付導電シートは、第1態様から第5態様のいずれか1つに係る金具付導電シートの一態様である。第6態様に係る金具付導電シートにおいて、上記帯状の凹部は、一対の上記板状挟持部の一方にのみ一の直線に沿って形成されている。
【0020】
第7態様に係る金具付導電シートは、第1態様又は第2態様のいずれかに係る金具付導電シートの一態様である。第7態様に係る金具付導電シートにおいて、上記帯状の凹部は、一対の上記板状挟持部の一方に平行に形成された2列の凹部と、一対の上記板状挟持部の他方における上記2列の凹部の間の領域に対向する位置に形成された1列の凹部と、を含む。
【0021】
第8態様に係る金具付導電シートは、第1態様から第7態様のいずれか1つに係る金具付導電シートの一態様である。第8態様に係る金具付導電シートにおいて、一対の上記板状挟持部は、上記折り返し部とその反対側における上記板状挟持部の縁部との間の中間領域の局所に
、圧縮部をさらに有している。上
記圧縮部は、周囲の部分よりも圧縮されており重なった一対の上記板状挟持部の厚み方向における一方の側の面で凸部を成し他方の側の面で凹部を成す部分である。
【0022】
第9態様に係る金具付導電シートは、第8態様に係る金具付導電シートの一態様である。第9態様に係る金具付導電シートにおいて、上
記圧縮部は、上記帯状凹部と重なって形成されている。
【0023】
第10態様に係る金具付導電シートは、第8態様又は第9態様に係る金具付導電シートの一態様である。第10態様に係る金具付導電シートにおいて、上
記圧縮部における一方の側の面の上記凸部は、根元部分よりも頭頂側の部分の方が大きな幅で形成されている。
【0024】
第11態様に係る金具付導電シートは、第1態様から第7態様のいずれか1つに係る金具付導電シートの一態様である。第10態様に係る金具付導電シートにおいて、上記圧着部は上記折り返し部側から見て曲がった形状に成形された曲げ部を有している。
【0025】
第12態様に係る金具付導電シートは、第1態様から第11態様のいずれか1つに係る金具付導電シートの一態様である。第11態様に係る金具付導電シートにおいて、一対の上記板状挟持部各々における上記折り返し部に対して反対側の縁部は、上記シート材側に対して反対側へ反った形状に形成されている。
【発明の効果】
【0026】
金属の板状部分が折り返されることにより形成された圧着部が、シート材の縁部を挟み込む状態でシート材に圧着される場合、いわゆるスプリングバック現象が生じる。そのため、圧着部が圧着機(プレス機)で圧縮されているときよりも圧着機による加圧が除かれたときの方が、シート材に対する圧着部の圧着状態が緩む。
【0027】
特に、シート材を挟み込む一対の板状挟持部の両方が平板状である場合、即ち、一対の板状挟持部の全領域が圧着機によって均一に加圧された場合、加圧が除かれた圧着部のスプリングバック量が大きい。この場合、一対の板状挟持部全体が微小な鋭角を成して開いた状態となり、シート材に対する一対の板状挟持部の挟持力が低下する。そのため、小さな接続抵抗と大きな固着力との両立が難しい。
【0028】
上記の各態様において、シート材の縁部を挟み込んだ一対の板状挟持部の一方は、その中間領域の外表面に帯状凹部を有している。帯状凹部は、他の部分よりもシート材に強く圧着された部分である。特に、一対の板状挟持部は、帯状凹部の底の部分において他の部分よりもシート材に対してより強く密着している。
【0029】
上記の各態様によれば、スプリングバック現象による一対の板状挟持部の挟持力の緩み、即ち、一対の板状挟持部全体の隔離幅を小さくすることができる。その結果、帯状凹部の底の部分において、一対の板状挟持部とシート材との間の接続抵抗が小さくなる。一方、一対の板状挟持部における帯状凹部の底の部分以外の部分において、十分な固着力が得られるように、広い領域で緩やかに密着した状態をつくることができる。
【0030】
従って、上記の各態様に係る金具付導電シートによれば、小さな接続抵抗と大きな固着力とを両立しやすい。なお、上記の各態様によれば、一対の板状挟持部の全領域が圧着機によって均一に加圧される場合に比べ、圧着機の加圧力を低減することができる。その結果、圧着設備の小型化及び低コスト化の効果も得られる。
【0031】
また、第2態様において、帯状凹部における帯状の傾斜面が形成された領域は、帯状凹部の幅方向の端の浅い部分から凹部の深い部分へ近づくにつれて徐々に強くシート材に密着した状態となっている。そのため、圧着部の圧着状態の多少のばらつきが生じた場合でも、帯状凹部における帯状の傾斜面が形成された領域のうちの少なくとも一部の領域が、十分な固着力を得るのに適した強度で密着した状態となる。
【0032】
従って、第2態様によれば、圧着部の圧着状態のばらつきが生じる場合においても、十分な固着力を確実に確保することができ、金具付導電シートの品質が安定する。
【0033】
また、第3態様において、帯状凹部における帯状の平坦面が形成された領域は、凹部の底の領域であり、他の領域よりもシート材に強く密着した領域である。第3態様によれば、そのようにシート材に強く密着した領域が広く形成される。そのため、圧着部の圧着状態のばらつきが生じる場合においても、一対の板状挟持部とシート材との間の接続抵抗を確実に小さくすることができ、金具付導電シートの品質が安定する。
【0034】
また、第4態様及び第5態様において、シート材は、金属糸が交差して織られた網目構造を有する金属布である。この金属布は、軽量で柔軟性に優れており、さらに、金属箔などに比べて曲げ変形時の耐久性及び通気性に優れている。従って、金属布は、振動及び温度変化の環境が厳しい自動車などの車両に搭載される電気伝送媒体として好適である。
【0035】
さらに、第4態様において、帯状凹部における帯状の平坦面は、金属布における金属糸のピッチよりも大きな幅で形成されている。そのため、圧着部とシート材との位置関係のばらつきに起因する一対の板状挟持部とシート材の金属糸との接触不良が回避される。その結果、一対の板状挟持部とシート材との間の接続抵抗を確実に小さくすることができ、金具付導電シートの品質が安定する。
【0036】
また、各種のテストの結果、帯状の凹部が、一対の板状挟持部の一方にのみ一の直線に沿って形成されている場合に、接続抵抗と固着力とのバランスが特に良好となる。
【0037】
また、第8態様において
、圧縮部は、一対の板状挟持部の一方の一部と他方の一部とがより強固に圧着された部分である。そのため、第8態様によれば、接続金具に強い外力が加わった場合及び接続金具の熱膨張が生じた場合などにおいても
、圧縮部が、シート材に対する一対の板状挟持部の挟持力の低下を防ぐ。
【0038】
ところで
、圧縮部が、圧着部における一対の板状挟持部の密着度合いが低い部分に形成されると、帯状凹部の圧着状態が緩む可能性を否定できない。そこで、第9態様においては
、圧縮部が、一対の板状挟持部における密着度合いが高い帯状凹部と重なって形成されている。これにより
、圧縮部の形成に起因して帯状凹部の圧着状態が緩むことを防止できる。
【0039】
また、第10態様においては
、圧縮部における一方の側の面の凸部は、根元部分よりも頭頂側の部分の方が大きな幅で形成されている。この場合、後述するように
、圧縮部に、一対の板状挟持部の一方の部分と他方の部分とが係り合った係合構造が生じる。そのよう
な圧縮部は、一対の板状挟持部の挟持力の低下をより確実に防ぐ。
【0040】
また、第11態様において、圧着部は折り返し部側から見て曲がった形状に成形された曲げ部を有する。この曲げ部も、スポット圧縮部と同様に、外力及び熱膨張などに起因してシート材に対する一対の板状挟持部の挟持力が低下することを防ぐ。
【0041】
また、第12態様において、一対の板状挟持部各々における折り返し部に対して反対側の縁部は、シート材側に対して反対側へ反った形状に形成されている。これにより、シート材が一対の板状挟持部各々の縁部に引っ掛かって破れることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0044】
<第1実施形態>
まず、
図1,2を参照しつつ、第1実施形態に係る金具付導電シート1の構成について説明する。
図2は、
図1におけるII−II平面での断面図である。
【0045】
本実施形態における金具付導電シート1は、2つの導電部材を電気的に接続する電気部品である。例えば、金具付導電シート1は、自動車などの車両に搭載された2つの金属筐体を電気的に接続する。この場合、金具付導電シート1の両端部各々が自動車などの車両に搭載された2つの金属筐体各々に接続される。一方の金属筐体が車両ボディなどの基準電位体に接続されている場合、金具付導電シート1で接続された2つの金属筐体の両方が接地された状態となる。
【0046】
図1が示すように、金具付導電シート1は、導電性のシート材2及びそのシート材2と他の部材とを電気的に接続する接続金具3を備える。接続金具3の接続対象物は、例えば電気機器を収容する金属筐体などである。
【0047】
<シート材>
導電性のシート材2は、例えば金属布又は金属箔などである。金属布は、例えば銅を主成分とする金属の糸が縦方向及び横方向に交差して織られた網目構造を有する生地である。また、金属布は、金属糸の生地に樹脂材料からなる柔軟性を有するフィルムが貼り付けられた構造を有する場合もある。金属布は、軽量で柔軟性に優れており、さらに、金属箔などに比べて曲げ変形時の耐久性及び通気性に優れている。
【0048】
従って、金具付導電シート1が、振動及び温度変化の環境が厳しい自動車などの車両に搭載される場合、シート材2が金属布であれば好適である。
【0049】
以下の説明において、シート材2の四方の縁部それぞれのことを、第一縁部21、第二縁部22、第三縁部23及び第四縁部24と称する。第一縁部21及びその反対側の第二縁部22は、接続金具3が圧着される部分であり、それぞれシート材2の外縁から内側へ一定の範囲を占める部分である。
【0050】
<接続金具>
接続金具3は、シート材2と他の導電部材とを電気的に接続する金具である。シート材2に圧着された接続金具3は、例えば、金属板に対する曲げ加工及びプレス加工によって得られる。接続金具3の材料は、例えば、銅の合金、鉄又はステンレスなどである。また、接続金具3が、銅などを主成分する芯金部とその芯金部の表面に形成された錫メッキとを含むことも考えられる。
【0051】
金具付導電シート1は、シート材2の第一縁部21及び第二縁部22の各々に圧着された2つの接続金具3を備えている。
【0052】
接続金具3は、シート材2の縁部に圧着された圧着部31を有する。本実施形態において、接続金具3は、シート材2の接続相手となる導電部材に直接接続される接続部32をさらに有する。
【0053】
圧着部31は、板状部分が折り返されることにより形成された部分である。換言すれば、圧着部31は、折り返して曲がった二重の板状の部分である。
【0054】
圧着部31は、シート材2の縁部を挟み込んだ一対の板状挟持部311,312と、それら一対の板状挟持部311,312を繋ぐ折り返し部313とを含む。一対の板状挟持部311,312の一方は、接続部32と繋がっている。
【0055】
以下の説明において、一対の板状挟持部311,312のうち、接続部32に繋がっている一方を第一板状挟持部311と称し、他方を第二板状挟持部312と称する。
【0056】
2つの接続金具3各々の接続部32が、2つの接続対象物(導電部材)各々に接続されると、2つの接続対象物の一方から一方の接続金具3とシート材2と他方の接続金具3とを通じて2つの接続対象物の他方へ電流が流れる。
【0057】
2つの接続対象物各々が電気機器を収容する金属筐体である場合、2つの金属筐体の一方から一方の接続金具3とシート材2と他方の接続金具3とを通じて2つの金属筐体の他方へアース電流が流れる。この場合、金具付導電シート1は、アース電流が流れるドレイン線である。
【0058】
2つの接続対象物の間で高周波電流が流れるために、2つの接続対象物を電気的に接続する電気伝送媒体のインダクタンスを小さく抑える必要がある場合に、インダクタンスの小さな導電性のシート材2を有する金具付導電シート1を採用すれば好適である。また、振動などによって2つの接続対象物の相対位置が変化する場合には、柔軟性及び曲げ変形時の耐久性に優れた金属布をシート材2として有する金具付導電シート1を採用すれば好適である。
【0059】
一対の板状挟持部311,312の一方は、シート材2に対して他の部分よりも強く圧着されたことによって帯状に形成された帯状凹部314を有する。帯状凹部314は、一対の板状挟持部311,312の一方における折り返し部313とその反対側の縁部との間の中間領域の外表面に形成されている。例えば、帯状凹部314は、折り返し部313の稜線(折り返し線)に平行な帯状に形成されている。この例は、帯状凹部314が折り返し部313の稜線に沿う方向に延びた帯状に形成されている例である。
【0060】
本実施形態においては、帯状凹部314は、第二板状挟持部312にのみ一の直線に沿って形成されている。従って、第一板状挟持部311において、折り返し部313に対して反対側の縁部3110以外の部分の外表面は平坦面である。
【0061】
帯状凹部314は、第二板状挟持部312における他の部分よりもシート材2に強く圧着された部分である。特に、一対の板状挟持部311,312は、帯状凹部314の底の部分3144において他の部分よりもシート材2に対してより強く密着している。
【0062】
図2は、金具付導電シート1における圧着部31の部分の断面図である。
図1,2が示すように、帯状凹部314の表面は、帯状凹部314の長手方向に沿う帯状傾斜面3141を含む。帯状傾斜面3141は、帯状凹部314の幅方向の端からそれより中央寄りの位置まで徐々に深く形成された傾斜面である。
【0063】
本実施形態においては、帯状凹部314の表面は、帯状凹部314の幅方向の両端各々からそれより中央寄りの位置まで徐々に深く形成された一対の帯状傾斜面3141を含む。
図2が示す例では、帯状傾斜面3141各々は、帯状凹部314の幅方向の端からそれより中央寄りの位置に近づくほど徐々に傾斜角度が緩やかになる円弧面である。
【0064】
さらに、本実実施形態においては、帯状凹部314の表面は、帯状凹部314の長手方向に沿う帯状平坦面3142をさらに含む。帯状平坦面3142は、一対の帯状傾斜面3141の間において一定の深さで形成された面である。従って、帯状凹部314における帯状平坦面3142が形成された部分が、帯状凹部314の底の部分3144を成している。
【0065】
帯状凹部314における帯状傾斜面3141が形成された部分3143は、帯状凹部314の幅方向の端の浅い部分から帯状凹部314の深い部分へ近づくにつれて徐々に強くシート材2に密着した状態となっている。
【0066】
シート材2が金属布である場合、帯状凹部314における帯状平坦面3142は、金属布(シート材2)における金属糸のピッチよりも大きな幅で形成されていることが望ましい。例えば、シート材2を構成する金属布における金属糸のピッチが0.5ミリメートルである場合に、帯状平坦面3142の幅が1.0ミリメートル又はそれ以上であることが考えられる。
【0067】
また、一対の板状挟持部311,312各々における折り返し部313に対して反対側の縁部3110,3120は、シート材2側に対して反対側へ反った形状に曲げられている。これにより、シート材2が一対の板状挟持部311,312各々の縁部3110,3120に引っ掛かって破れることを防止できる。
【0068】
次に、
図3,4を参照しつつ、シート材2に対して接続金具3を圧着する圧着工程について説明する。圧着工程は、接続金具3の元になる曲がった金属板である圧着前金具3xの圧着部の部分に対してプレス加工を施すことによってシート材2に圧着された接続金具3を得る工程である。
【0069】
図3に示されるように、圧着前金具3xの圧着部31xは予め鋭角に曲げられている。圧着前金具3xの圧着部31xは、シート材2の縁部が挿入される隙間の両側に位置して鋭角を成す一対の板状挟持部311x,312xと、それら一対の板状挟持部311x,312xを繋ぐ曲げ部313xとを含む。一対の板状挟持部311x,312x各々の縁部3110x,3120xは、相互に対向する側に対して反対側へ反った形状に曲げられている。
【0070】
圧着工程により、一対の板状挟持部311x,312x及び曲げ部313xは、それぞれ接続金具3における一対の板状挟持部311,312及び折り返し部313となる。
【0071】
圧着前金具3xにプレス加工を施す圧着機9は、圧着前金具3xの圧着部31xを挟み込んで成型する下金型91及び上金型92を備えている。下金型91は、第一板状挟持部311xの外側面を成型する第一成形面910が形成された金型である。上金型92は、第二板状挟持部312xの外側面を成型する第二成形面920が形成された金型である。
【0072】
第一成形面910は、第一板状挟持部311xにおける反った縁部3110xに対向する部分以外の領域において平坦な面である。また、第一成形面910には、第一板状挟持部311xにおける反った縁部3110xとの接触を回避するための溝919が形成されている。
【0073】
第二成形面920は、第二板状挟持部312xにおける反った縁部3120xに対向する部分以外の領域において平坦面921と凸面922とを含む。また、第二成形面920には、第二板状挟持部312xにおける反った縁部3120xとの接触を回避するための欠け部929が形成されている。
【0074】
第二成形面920の凸面922は、直線に沿って帯状に形成されている。即ち、
図3において、凸面922は紙面の奥行き方向に沿って帯状に形成されている。第二成形面920の凸面922は、接続金具3の帯状凹部314を成形する部分である。
【0075】
第二成形面920の凸面922は、その長手方向に沿う帯状の側面9221を含む。凸面922の側面9221は、凸面922の幅方向の端からそれより中央寄りの位置まで徐々に高く形成された傾斜面である。
【0076】
本実施形態においては、凸面922は、その幅方向の両端各々からそれより中央寄りの位置まで徐々に高く形成された一対の側面9221を含む。
図3が示す例では、傾斜した側面9221各々は、凸面922の幅方向の端からそれより中央寄りの位置に近づくほど徐々に傾斜角度が緩やかになる円弧面である。
【0077】
さらに、本実実施形態においては、凸面922は、その長手方向に沿う平坦な頭頂面9212をさらに含む。凸面922の頭頂面9212は、一対の帯状傾斜面3141の間において一定の高さで形成された面である。凸面922における一対の側面9221及び頭頂面9222は、接続金具3の帯状凹部314における一対の帯状傾斜面3141及び帯状平坦面3142を成形する部分である。
【0078】
図4が示すように、圧着機9の下金型91及び上金型92が圧着前金具3xの圧着部31xを挟み込むと、
図2が示す接続金具3の圧着部31が形成される。
【0079】
以上に示したように、本実施形態は、導電性のシート材2に対する接続金具3の圧着構造(
図2参照)が、ドレイン線として機能する金具付導電シート1に適用された事例である。
【0080】
<効果>
金属の板状部分が折り返されることにより形成された圧着部が、シート材2の縁部を挟み込む状態でシート材2に圧着される場合、いわゆるスプリングバック現象が生じる。そのため、接続金具3の圧着部31が圧着機9で圧縮されているときよりも圧着機9による加圧が除かれたときの方が、シート材2に対する圧着部31の圧着状態が緩む。
【0081】
特に、シート材2を挟み込む一対の板状部の両方が平板状である場合、即ち、一対の板状挟持部311x,312xの全領域が圧着機9によって均一に加圧された場合、加圧が除かれた圧着部のスプリングバック量が大きい。この場合、一対の板状部全体が微小な鋭角を成して開いた状態となり、シート材2に対する一対の板状部の挟持力が低下する。そのため、小さな接続抵抗と大きな固着力との両立が難しい。
【0082】
金具付導電シート1において、シート材2の縁部を挟み込んだ一対の板状挟持部311,312の一方は、その中間領域の外表面に帯状凹部314を有している。帯状凹部314は、他の部分よりもシート材2に強く圧着されている。特に、一対の板状挟持部311,312は、帯状凹部314の底の部分3144において他の部分よりもシート材2に対してより強く密着している。
【0083】
金具付導電シート1が採用されれば、スプリングバック現象による一対の板状挟持部311,312の挟持力の緩み、即ち、一対の板状挟持部311,312全体の隔離幅を小さくすることができる。その結果、帯状凹部314の底の部分3144において、一対の板状挟持部311,312とシート材2との間の接続抵抗が小さくなる。一方、一対の板状挟持部311,312における帯状凹部314の底の部分3144以外の部分において、十分な固着力が得られるように、広い領域で緩やかに密着した状態をつくることができる。
【0084】
従って、金具付導電シート1が採用されれば、小さな接続抵抗と大きな固着力とを両立しやすい。また、金具付導電シート1が採用されれば、一対の板状挟持部311,312の全領域が圧着機9によって均一に加圧される場合に比べ、圧着機9の加圧力を低減することができる。その結果、圧着設備の小型化及び低コスト化の効果も得られる。
【0085】
また、金具付導電シート1において、帯状凹部314における帯状傾斜面3141が形成された部分は、帯状凹部314の幅方向の端の浅い部分から凹部の深い部分へ近づくにつれて徐々に強くシート材2に密着した状態となっている。そのため、圧着部31の圧着状態の多少のばらつきが生じた場合でも、帯状凹部314における帯状傾斜面3141が形成された部分3143のうちの少なくとも一部の領域が、十分な固着力を得るのに適した強度で密着した状態となる。
【0086】
従って、金具付導電シート1が採用されれば、圧着部31の圧着状態のばらつきが生じる場合においても、十分な固着力を確実に確保することができ、金具付導電シート1の品質が安定する。
【0087】
また、金具付導電シート1において、帯状凹部314における帯状平坦面3142が形成された底の部分3144は、他の部分よりもシート材2に強く密着した領域である。金具付導電シート1においては、そのようにシート材2に強く密着した部分が広く形成される。そのため、圧着部31の圧着状態のばらつきが生じる場合においても、一対の板状挟持部311,312とシート材2との間の接続抵抗を確実に小さくすることができ、金具付導電シート1の品質が安定する。
【0088】
また、シート材2として採用され得る金属布は、軽量で柔軟性に優れており、さらに、金属箔などに比べて曲げ変形時の耐久性及び通気性に優れている。従って、金属布は、振動及び温度変化の環境が厳しい自動車などの車両に搭載される金具付導電シート1のシート材2として好適である。
【0089】
さらに、シート材2が金属布である場合、帯状凹部314における帯状平坦面3142は、金属布における金属糸のピッチよりも大きな幅で形成されていることが望ましい。この場合、圧着部31とシート材2との位置関係のばらつきに起因する一対の板状挟持部311,312とシート材2の金属糸との接触不良が回避される。その結果、一対の板状挟持部311,312とシート材2との間の接続抵抗を確実に小さくすることができ、金具付導電シート1の品質が安定する。
【0090】
また、各種のテストの結果、帯状凹部314が、一対の板状挟持部311,312の一方にのみ一の直線に沿って形成されている場合に、接続抵抗と固着力とのバランスが特に良好となる。
【0091】
<第2実施形態>
次に、
図5〜8を参照しつつ、第2実施形態に係る金具付導電シート1A及びそれを含むワイヤハーネス10について説明する。
図5は金具付導電シート1Aの平面図である。
図6は金具付導電シート1Aの正面図である。
図7は金具付導電シート1Aを備えるワイヤハーネス10の分解平面図である。
図8はワイヤハーネス10の端部の側面図である。
図5〜8において、
図1,2に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0092】
金具付導電シート1Aは、金具付導電シート1と同様に導電性のシート材2とそのシート材2の縁部に圧着された接続金具3Aとを備えている。また、接続金具3Aの圧着部31は、接続金具3の圧着部31と同じ圧着構造でシート材2に圧着されている。
【0093】
しかしながら、金具付導電シート1Aは、金具付導電シート1とは用途が異なる。金具付導電シート1Aは、車両に搭載されるワイヤハーネス10においてノイズ電磁波を遮蔽する電磁シールド具である。
【0094】
金具付導電シート1Aは、導電性のシート材2と、4つの接続金具3Aとを備えている。2つの接続金具3Aは、シート材2の第一縁部21に一列に並ぶ状態で圧着されており、残り2つの接続金具3Aは、シート材2の第二縁部22に一列に並ぶ状態で圧着されている。
【0095】
接続金具3A各々は、シート材2の縁部に圧着された圧着部31と圧着部31の両側各々に繋がる2つの接続部32とを有している。接続金具3A各々の圧着部31は、
図2に示された接続金具3の圧着部31と同じ構造でシート材2に圧着されている。
【0096】
シート材2の第一縁部21に圧着された2つの接続金具3Aは、それらが組み合わされることによって環状に形成される。同様に、シート材2の第二縁部22に圧着された2つの接続金具3Aは、それらが組み合わされることによって環状に形成される。
【0097】
図7が示すように、金具付導電シート1Aは、コネクタ付電線群5に取り付けられる。コネクタ付電線群5は、複数の端子付電線51と2つのコネクタ52とを備えている。端子付電線51各々は、端部に端子金具511が接続された絶縁電線である。
【0098】
コネクタ52各々は、複数の端子付電線51各々の両端部各々を並列に並ぶ状態に保持する非導電性部材である。例えば、コネクタ52は、複数の端子付電線51の端部をインサート品とするインサート成形により形成された合成樹脂のモールド部材である。
【0099】
コネクタ52は、電線保持部521と端子囲み部522とを有している。電線保持部521は、複数の端子付電線51の端部を並列状態に保持する部分である。端子囲み部522は、並列に並ぶ端子付電線51各々の端子金具511を囲む筒状の部分である。
【0100】
筒状の端子囲み部522の開口は、端子金具511にアクセスするための開口である。端子囲み部522の開口は、端子金具511がネジなどによって相手側機器の端子部に接続された後に、不図示の蓋部材によって塞がれる。
【0101】
シート材2の第一縁部21に圧着された2つの接続金具3Aは、コネクタ付電線群5の第一端部のコネクタ52における電線保持部521の両側から組み合わされる。これにより、2つの接続金具3Aは、電線保持部521を挟み込む状態で組み合わされ、電線保持部521の外側面に沿う環状に形成される。
【0102】
同様に、シート材2の第二縁部22に圧着された2つの接続金具3Aは、コネクタ付電線群5の第二端部のコネクタ52における電線保持部521の両側から組み合わされる。その際、2つの接続金具3Aは、それぞれの接続部32が相互に重なる状態で組み合わされる。
【0103】
上記のようにして4つの接続金具3Aが2つずつ組み合わされると、シート材2の第一縁部21及び第二縁部22の各々において、2つの接続金具3Aは、電線保持部521を挟み込む状態で組み合わされ、電線保持部521の外側面に沿う環状に形成される。
【0104】
4つの接続金具3Aの2つずつが環状に組み合わされると、シート材2は、中間部25で折り返され、複数の端子付電線51の周囲を囲む筒状に保持される。その際、シート材2の第三縁部23及び第四縁部24が重なる状態でシート材2が筒状に形成されることが望ましい。
【0105】
端子囲み部522は、端子付電線51の接続相手となる機器を収容する筐体7の開口71の枠内に嵌め入れられる。
図8において、筐体7及び筐体7内に収容された機器の端子台72が仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0106】
端子囲み部522の外周面には環状の弾性部材であるパッキン53が装着されている。コネクタ52の端子囲み部522が筐体7の開口71の枠内に嵌め入れられることにより、パッキン53は、端子囲み部522と筐体7の枠との間に挟み込まれる。これにより、パッキン53は、端子囲み部522と筐体7の開口71の枠との間の隙間を埋める。
【0107】
コネクタ52の端子囲み部522が筐体7における開口71の枠内に嵌め入れられた状態で、端子囲み部522内の端子金具511各々が、ネジなどによって筐体7内の機器に繋がった端子台72に接続される。
【0108】
さらに、環状に組み合わされた2つの接続金具3Aにおける重なった接続部32が、ネジ4によって筐体7の一部の固定座73に固定される。これにより、導電性のシート材2が、接続金具3Aを介して金属の筐体7に対して電気的に繋がる。
【0109】
従って、アース電流が、端子付電線51の周囲を囲む電磁シールド部材として機能するシート材2と基準電位体である筐体7との間で流れる。
【0110】
以上に示したように、本実施形態は、導電性のシート材2に対する接続金具3の圧着構造(
図2参照)が、電磁シールド具として機能する金具付導電シート1Aに適用された事例である。
【0111】
<効果>
金具付導電シート1Aが採用されれば、金具付導電シート1が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0112】
また、金具付導電シート1Aにおいて、導電性のシート材2の縁部に対して一列に並ぶ状態で圧着された2つの接続金具3Aは、コネクタ付電線群5の両側から組み合わされて環状に保持され、これにより、シート材2は、端子付電線51の周囲を囲む筒状に形成される。
【0113】
即ち、金具付導電シート1Aは、予め筒状に形成されている必要がないため、コネクタ付電線群5に対する後付けが可能である。より具体的には、金具付導電シート1Aは、端部にコネクタ52などが取り付けられた後の電線に対して装着可能であり、また、筐体7の外から内への配線が行われた後の電線に対する装着も可能である。
【0114】
また、4つの接続金具3Aは、シート材2を筒状に保持する役割と、シート材2と金属筐体などの他の導電部材との電気的な接続を維持する役割とを果たす。従って、金具付導電シート1Aが採用された場合、従来の編組線及びかしめ金具の採用によって複数の部材が取り扱われる場合に比べ、部品の管理及び取り扱いの工数が簡素化される。
【0115】
また、導電性のシート材2が柔軟性を有するため、金具付導電シート1Aは、曲がった経路に沿う電線の周囲を囲むこともできる。
【0116】
<第1応用例に係る接続金具の圧着構造>
次に、
図9を参照しつつ、金具付導電シート1,1Aに適用可能な第1応用例に係る接続金具の圧着構造について説明する。
図9は、第1応用例に係る圧着部31Aの部分の断面図であり、
図2に相当する図である。
【0117】
金具付導電シート1,1Aの接続金具3,3Aにおいて、圧着部31の帯状凹部314は、第二板状挟持部312にのみ一の直線に沿って形成されていた。さらに、第一板状挟持部311における縁部3110以外の部分の外表面は平坦面であった。
【0118】
第1応用例に係る圧着部31Aにおいても、第二板状挟持部312は、シート材2に対して他の部分よりも強く圧着されたことによって帯状に形成された帯状凹部314Aを有している。
【0119】
但し、帯状凹部314Aは、第二板状挟持部312にのみ間隔を空けて2列に平行に形成されている。従って、圧着部31Aの第一板状挟持部311において、折り返し部313に対して反対側の縁部3110以外の部分の外表面は平坦面である。
【0120】
また、帯状凹部314Aの表面は、帯状凹部314Aの長手方向に沿う帯状傾斜面3141を含む。帯状傾斜面3141は、帯状凹部314Aの幅方向の端からそれより中央寄りの位置まで徐々に深く形成された傾斜面である。
【0121】
本応用例においては、帯状凹部314Aの表面は、帯状凹部314Aの幅方向の両端各々からそれより中央寄りの位置まで徐々に深く形成された一対の帯状傾斜面3141Aを含む。また、帯状傾斜面3141Aは、帯状凹部314の幅方向の端からそれより中央寄りの位置に近づくほど徐々に傾斜角度が緩やかになる円弧面である。
【0122】
図9が示す例では、帯状凹部314Aの表面は、一対の帯状傾斜面3141の間において一定の深さで形成された帯状平坦面3142(
図2参照)を含んでいない。なお、帯状凹部314Aの表面が帯状平坦面3142を含んでいることも考えられる。
【0123】
圧着部31Aの構造が接続金具3,3Aに採用された場合、シート材2を挟み込む一対の板状部の両方が平板状である場合に比べ、スプリングバック現象による一対の板状挟持部311,312の挟持力の緩み、即ち、一対の板状挟持部311,312全体の隔離幅を小さくすることができる。
【0124】
従って、圧着部31Aの構造が採用されれば、小さな接続抵抗と大きな固着力とを両立しやすい。また、圧着部31Aの構造が採用されれば、一対の板状挟持部311,312の全領域が圧着機9によって均一に加圧される場合に比べ、圧着機9の加圧力を低減することができる。その結果、圧着設備の小型化及び低コスト化の効果も得られる。
【0125】
<第2応用例に係る接続金具の圧着構造>
次に、
図10を参照しつつ、金具付導電シート1,1Aに適用可能な第2応用例に係る接続金具の圧着構造について説明する。
図10は、第2応用例に係る圧着部31Bの部分の断面図であり、
図2,9に相当する図である。
【0126】
圧着部31Bの第二板状挟持部312は、圧着部31Aの第二板状挟持部312と同じ構造を有している。即ち、圧着部31Bの第二板状挟持部312は、平行に形成された2列の帯状凹部314Aを有している。
【0127】
さらに、圧着部31Bにおいては、第一板状挟持部311も、第二板状挟持部312と同様に帯状凹部314Aを有している。第一板状挟持部311の帯状凹部314Aは、第二板状挟持部312における2列の帯状凹部314Aの形成領域の間の領域に対向する位置に1列に形成されている。
【0128】
また、第一板状挟持部311及び第二板状挟持部312の各々における帯状凹部314Aの表面は、帯状凹部314Aの長手方向に沿う帯状傾斜面3141を含む。本応用例においては、帯状凹部314Aの表面は、帯状凹部314Aの幅方向の両端各々からそれより中央寄りの位置まで徐々に深く形成された一対の帯状傾斜面3141を含む。
【0129】
図10が示す例では、帯状凹部314Aの表面は、一対の帯状傾斜面3141の間において一定の深さで形成された帯状平坦面3142(
図2参照)を含んでいない。なお、帯状凹部314Aの表面が帯状平坦面3142を含んでいることも考えられる。
【0130】
圧着部31Bの構造が接続金具3,3Aに採用された場合も、圧着部31Aの構造が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0131】
<第3応用例に係る接続金具の圧着構造>
次に、
図11を参照しつつ、金具付導電シート1,1Aに適用可能な第3応用例に係る接続金具の圧着構造について説明する。
図11は、第3応用例に係る圧着部31Cの部分の断面図であり、
図2に相当する図である。
【0132】
圧着部31Cにおいても、第二板状挟持部312は、シート材2に対して他の部分よりも強く圧着されたことによって帯状に形成された帯状凹部314Bを有している。
【0133】
帯状凹部314Bは、第二板状挟持部312にのみ一の直線に沿って形成されている。従って、第一板状挟持部311において、折り返し部313に対して反対側の縁部3110以外の部分の外表面は平坦面である。
【0134】
また、帯状凹部314Bの表面は、帯状凹部314Aの長手方向に沿う帯状傾斜面3141Bを含む。帯状傾斜面3141Bは、帯状凹部314Aの幅方向の端からそれより中央寄りの位置まで徐々に深く形成された傾斜面である。
【0135】
帯状凹部314Bにおける帯状傾斜面3141Bが形成された部分3143Bは、帯状凹部314Bの幅方向の端の浅い部分から帯状凹部314Bの深い部分へ近づくにつれて徐々に強くシート材2に密着した状態となっている。
【0136】
本応用例においては、帯状凹部314Bの表面は、帯状凹部314Bの幅方向の両端各々からそれより中央寄りの位置まで徐々に深く形成された一対の帯状傾斜面3141Bを含む。帯状傾斜面3141B各々は、一定角度で傾斜した平面である。
【0137】
さらに、帯状凹部314Bの表面は、一対の帯状傾斜面3141Bの間において一定の深さで形成された帯状平坦面3142を含む。
【0138】
圧着部31Cの構造が接続金具3,3Aに採用された場合も、圧着部31の構造が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0139】
<第3実施形態>
次に、
図12〜15を参照しつつ、第3実施形態に係る金具付導電シート1Dについて説明する。
図12は金具付導電シート1Dの平面図である。
図13は金具付導電シート1Dにおける接続金具の圧着部31Dの部分の断面図である。
図14は金具付導電シート1Dにおける接続金具3Dのスポット圧縮部315の部分の断面図である。
図15は金具付導電シート1Dにおける成形中のスポット圧縮部315の部分の断面図である。
【0140】
図12〜15において、
図1〜11に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。金具付導電シート1Dは、第2実施形態に係る金具付導電シート1Aの応用例である。以下、金具付導電シート1Dにおける金具付導電シート1Aと異なる点について説明する。
【0141】
金具付導電シート1Dは、金具付導電シート1Aと同様に、ノイズ電磁波を遮蔽する電磁シールド具である。但し、金具付導電シート1Dは、シート材2を筒状に保持する構造を有していない。このため、金具付導電シート1Dは、不図示のワイヤハーネスの側方に配置され、その側方において電磁シールド機能を果たす。
【0142】
金具付導電シート1Dは、金具付導電シート1Aと同様に導電性のシート材2とそのシート材2における第一縁部21及び第二縁部22の各々に圧着された2つの接続金具3Dとを備えている。接続金具3D各々は、シート材2の縁部に圧着された圧着部31Dを有している。
【0143】
接続金具3Dの圧着部31Dは、シート材2の縁部を挟み込んだ一対の板状挟持部311,312と、それら一対の板状挟持部311,312を繋ぐ折り返し部313とを含む。さらに、一対の板状挟持部311,312の一方は、帯状に形成された帯状凹部314を有する。
図13が示すように、圧着部31Dの帯状凹部314は、圧着部31の帯状凹部314と同じ構造を有している。
【0144】
接続金具3Dの圧着部31Dは、以上に示した接続金具3,3Aの圧着部31と同じ構造に加え、さらにスポット圧縮部315を有している。
図12が示すように、スポット圧縮部315は、折り返し部313とその反対側における板状挟持部311,312の縁部3110,3120との間の中間領域の局所に形成されている。
【0145】
例えば、
図12が示すように、スポット圧縮部315は、少なくともその一部が帯状凹部314と重なった状態で形成されている。
図12が示す例は、スポット圧縮部315全体が、帯状凹部314と重なって形成されている例である。
【0146】
図14が示すように、スポット圧縮部315は、周囲の部分よりも圧縮されている。さらに、スポット圧縮部315は、重なった一対の板状挟持部311,312の厚み方向における一方の側の面で凸部3151を成すとともに他方の側の面で凹部3152を成している。
【0147】
図14が示す例では、スポット圧縮部315の凸部3151は、第一板状挟持部311の外側面に形成されており、スポット圧縮部315の凹部3152は、第二板状挟持部312の外側面に形成されている。なお、スポット圧縮部315の凸部3151が、第二板状挟持部312の外側面に形成されており、スポット圧縮部315の凹部3152が、第一板状挟持部311の外側面に形成されていることも考えられる。
【0148】
また、
図14が示す例では、スポット圧縮部315における一方の側の面の凸部3151は、根元部分よりも頭頂側のヘッド部3153の方が大きな幅で形成されている。この場合、スポット圧縮部315において、第一板状挟持部311の一部であるヘッド部3153とそれに重なる第二板状挟持部312の一部である凹部3152の底面外縁部3154とが係り合った係合構造が生じる。
【0149】
図15が示すように、スポット圧縮部315は、予め帯状凹部314が形成された一対の板状挟持部311,312に対してプレス機9Aを用いたスポットプレス加工を施すことによって形成される。
【0150】
例えば、プレス機9Aは、支持部91Aと支持部91Aに対する接近及び離隔が可能に支持されたプレス部92Aとを有している。
【0151】
支持部91Aには、一対の板状挟持部311,312の一方の表面を支える支面910Aが形成されている。支面910Aは、スポット圧縮部315の凸部3151になる部分を支える凹状支面912Aと、その他の部分を支える基準支面911Aとを含む。
【0152】
一方、プレス部92Aには、一対の板状挟持部311,312の他方の表面に押し付けられる凸状成形面920Aが形成されている。プレス部92Aの凸状成形面920Aは、スポット圧縮部315の凹部3152を成形する面である。
【0153】
図15が示すように、重なった一対の板状挟持部311,312の一部が、支持部91Aの凹状支面912Aとプレス部92Aの凸状成形面920Aとの間に挟み込まれることにより、支持部91A側へ隆起するように変形するとともに圧縮される。その結果、スポット圧縮部315が形成される。
【0154】
また、凹状支面912Aの輪郭は、一対の板状挟持部311,312における凸状成形面920A側の反対側へ隆起する部分の根元部分の輪郭よりも大きく形成されている。これにより、スポット圧縮部315の凸部3151は、その根元部分よりもヘッド部3153の方が大きな幅になるように成形される。
【0155】
金具付導電シート1Dにおいて、スポット圧縮部315は、一対の板状挟持部311,312の一方の一部と他方の一部とがより強固に圧着された部分である。そのため、金具付導電シート1Dが採用されれば、接続金具3Dに強い外力が加わった場合及び接続金具3Dの熱膨張が生じた場合などにおいても、スポット圧縮部315が、シート材2に対する一対の板状挟持部311,312の挟持力の低下を防ぐ。
【0156】
また、
図12が示す例では、スポット圧縮部315が、一対の板状挟持部311,312における密着度合いが高い帯状凹部314と重なって形成されている。これにより、スポット圧縮部315の形成に起因して帯状凹部314の圧着状態が緩むことを防止できる。
【0157】
また、
図14が示す例では、スポット圧縮部315における一方の側の面の凸部3151は、根元部分よりも頭頂側のヘッド部3153の方が大きな幅で形成されている。この場合、前述したように、スポット圧縮部315において、ヘッド部3153とそれに重なる底面外縁部3154とが係り合った係合構造が生じる。そのようなスポット圧縮部315は、一対の板状挟持部311,312の圧着状態の緩み、即ち、一対の板状挟持部311,312の挟持力の低下をより確実に防ぐ。
【0158】
<第4〜6応用例に係る接続金具の圧着構造>
次に、
図16〜19を参照しつつ、金具付導電シート1,1A,1Dに適用可能な第4〜6応用例に係る接続金具の圧着構造について説明する。
図16は第4応用例に係る接続金具3Eの正面図である。
図17は接続金具3Eの曲げ部が成形される様子を示す斜視図である。
図18は第5応用例に係る接続金具3Fの正面図である。
図19は第6応用例に係る接続金具3Gの正面図である。
【0159】
図16〜19において、
図1〜15に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。接続金具3E,3F,3Gは、第2実施形態における接続金具3Aの応用例である。以下、接続金具3E,3F,3Gにおける接続金具3Aと異なる点について説明する。
【0160】
接続金具3Eは、シート材2の縁部に圧着された圧着部31Eを有している。同様に、接続金具3Fは、シート材2の縁部に圧着された圧着部31Fを有している。同様に、接続金具3Gは、シート材2の縁部に圧着された圧着部31Gを有している。
【0161】
圧着部31E,31F,31Gは、シート材2の縁部を挟み込んだ一対の板状挟持部311,312と、それら一対の板状挟持部311,312を繋ぐ折り返し部313とを含む。
図16,18,19(正面図)は、接続金具3E,3F,3G各々を折り返し部313側から見た図である。
【0162】
さらに、圧着部31E,31F,31Gにおいて、一対の板状挟持部311,312の一方は、圧着部31の帯状凹部314と同じ構造の帯状凹部314を有している。なお、
図16,18,19には帯状凹部314は示されていない。
【0163】
圧着部31E,31F,31G各々は、折り返し部313側から見て曲がった形状に成形された曲げ部316,317,318を有している。
【0164】
圧着部31Eの曲げ部316は、帯状凹部314の長手方向に交差する方向に沿って圧着部31Eを横断して形成され、帯状凹部314の長手方向において圧着部31Eに段差を形成している。
【0165】
図16が示す例では、曲げ部316は、帯状凹部314の長手方向に直交する方向に沿って圧着部31Eを横断して形成されている。さらに、
図16が示す例では、2つの曲げ部316が、圧着部31Eにおける帯状凹部314の長手方向の一方の端部寄りの位置と他方の端部寄りの位置との2箇所に形成されている。
【0166】
圧着部31Fの曲げ部317は、帯状凹部314の長手方向に交差する方向に沿って圧着部31Eを横断する溝状に形成されている。
【0167】
図18が示す例では、曲げ部317は、帯状凹部314の長手方向に直交する方向に沿って圧着部31Fを横断する溝状に形成されている。さらに、
図18が示す例では、2つの曲げ部317が、圧着部31Fにおける帯状凹部314の長手方向の一方の端部寄りの位置と他方の端部寄りの位置との2箇所に形成されている。
【0168】
圧着部31Gの曲げ部318は、圧着部31Gにおける帯状凹部314の長手方向の一方の端部寄りの位置から他方の端部寄りの位置までに亘って湾曲した部分である。
【0169】
図17が示すように、圧着部31Eの曲げ部316は、予め帯状凹部314が形成された圧着部31Aに対してプレス機9Bでプレス加工を施すことによって形成される。
【0170】
例えば、プレス機9Bは、第一金型91Bと第一金型91Bに対する接近及び離隔が可能に支持された第二金型92Bとを有している。
【0171】
第一金型91Bには、一対の板状挟持部311,312の一方の表面を支える支面910Bが形成されている。支面910Bは、曲げ部316を成形する第一成形面911Bと、圧着部における曲げ部316以外の部分を元の形状のまま支える第一支面912Bとを含む。
【0172】
同様に、第二金型92Bには、一対の板状挟持部311,312の他方の表面を支える支面920Bが形成されている。支面920Bは、曲げ部316を成形する第二成形面921Bと、圧着部における曲げ部316以外の部分を元の形状のまま支える第二支面922Bとを含む。
【0173】
折り返し部313及び重なった一対の板状挟持部311,312が、第一金型91Bの支面910Bと第二金型92Bの支面920Bとの間に挟み込まれることにより、曲げ部316が形成される。なお、圧着部31Fの曲げ部317及び圧着部31Gの曲げ部318も、同様にして形成される。
【0174】
接続金具3E,3F,3Gの圧着部31E,31F,31Gにおいて、曲げ部316,317,318は、
図12,14に示されるスポット圧縮部315と同様に、外力及び熱膨張などに起因してシート材2に対する一対の板状挟持部311,312の挟持力が低下することを防ぐ。
【0175】
<その他の応用例>
接続金具3,3A,3D,3E,3F,3Gにおいて、一対の板状挟持部311,312各々の縁部3110,3120が反った形状に形成される代わりに、縁部3110,3120に面取り加工もしくは丸め加工が施されることも考えられる。
【0176】
縁部3110,3120の面取り加工もしくは丸め加工は、縁部3110,3120における端面からシート材2に接する側の内側面に亘る範囲に施される。この面取り加工もしくは丸め加工によっても、シート材2が一対の板状挟持部311,312各々の縁部3110,3120に引っ掛かって破れることを防止できる。
【0177】
なお、本発明に係る金具付導電シートは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態及び応用例を自由に組み合わせること、或いは各実施形態及び応用例を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。