特許第6024697号(P6024697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024697
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/44 20060101AFI20161107BHJP
   B29D 30/26 20060101ALI20161107BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20161107BHJP
   B60C 5/14 20060101ALN20161107BHJP
【FI】
   B29D30/44
   B29D30/26
   B29C35/02
   !B60C5/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-77774(P2014-77774)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-199210(P2015-199210A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】友井 修作
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛和
【審査官】 佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−080963(JP,A)
【文献】 特開平10−034751(JP,A)
【文献】 特開2006−198848(JP,A)
【文献】 特開2007−083655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/44
B29C 35/02
B29D 30/26
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体の端部を重ね合わせて加硫成形する工程を含むタイヤの製造方法において、前記シート積層体の端部を重ね合わせた後、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上、120℃以下の温度で、前記重ね合わせた部分を圧着する工程を有し、
前記重ね合わせた部分に、該重ね合わせ面の垂直方向から、補強繊維入りゴムブラダーを押し当てることにより、0.1MPa以上1MPa以下の圧力で前記圧着を行い、
前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む前記熱可塑性樹脂組成物のシートにおいて、前記熱可塑性樹脂が少なくともナイロンを含んでいることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
少なくとも、左右のビードフィラートップの間の箇所において、前記圧着を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
加熱プレートの上に、前記重ね合わせた部分を配置して、前記圧着を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体を重ね合わせた後、カーカス層を貼る前に、前記圧着をすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤの製造方法に関する。
さらに詳しくは、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体の端部を重ね合わせて加硫成形する工程を含む方法でタイヤの製造をする際、該タイヤの加硫成形工程において、前記シート積層体の端部を重ね合わせたスプライス部分付近においてスプライス部の剥がれによる開口が生ずることのない空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートと、エラストマー層とを積層してなるシート積層体を空気入りタイヤのタイヤ構造部材として使用することが検討されている。
【0003】
例えば、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートと、エラストマー層とを積層してなるシート積層体を、空気入りタイヤのインナーライナー層や、適宜箇所の補強部材に使用することが検討されている。
【0004】
このような熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートと、エラストマー層とを積層してなるシート積層体をタイヤ構造部材として用いるためには、該シート積層体をタイヤ成形ドラムに巻き付けて、端部をラップスプライスしてタイヤの加硫工程に供するという製造手法がとられる。
【0005】
具体的には、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートをなしているフィルムをインナーライナーに使用する場合、該熱可塑性樹脂組成物シートであるフィルムと、エラストマー層として、該フィルムと加硫接着されるタイゴムシートを使用して、それらを積層した積層体シートをタイヤ成形ドラムに巻き付けて、端部をラップスプライスしてタイヤの加硫成形工程に供して、ラップスプライスされているインナーライナー層を有する空気入りタイヤを製造するという手法がとられる。こうした製造手法(全周にわたり設置する場合、端部をラップスプライスして設置すること)は、インナーライナー層に使用する場合だけに限らず、タイヤの適宜箇所の補強層として使用するときもほぼ同様である。
【0006】
しかし、こうした工程を経て空気入りタイヤを製造する場合、加硫成形時においてインフレーションを受けた際に、ラップスプライス部の接合状態が剥がれ等を生ずることにより解けてしまい、スプライスによる接合部がオープン(開口)してしまうことがあった。
【0007】
これを、図3を用いて、熱可塑性樹脂組成物シート2であるフィルムと、エラストマー層3のシート積層体1を、インナーライナー層に使用した例を説明すると、図3に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物シート2と、エラストマー層3とからなるシート積層体1は、タイヤサイズに応じて定まる所要サイズ(長さ)に形成されて、タイヤ成形ドラム(図示せず)上にて、その両端部にラップスプライス部Sを設けて環状を成すようにして重ね合わされ(オーバーラップされ)、ラップスプライスされる。エラストマー層3はタイゴム層をなすものであり、カーカス層と接合する役目を有するものである。なお、該シート積層体1は、1枚の使用のときは、その両端部がラップスプライスされて環状を成すように形成され、あるいは複数枚の使用のときは、それら相互の端部どうしがラップスプライスされて繋ぎ合わされ全体で一つの環状を成すように形成される。そして、更にタイヤの製造に必要なパーツ材(図示せず)が巻かれ、ブラダーで加硫成形される。
【0008】
こうした工程のもとで、上述した熱可塑性樹脂組成物シート2と、該熱可塑性樹脂組成物シート2と加硫接着されたエラストマー層3(タイゴム層)とが、加硫成形中〜成形直後までの間で剥離を起こしたり、接合部がオープン(開口)してしまう現象は、特に、図3で示した熱可塑性樹脂組成物シート2が露出していてかつその先端部付近4などにおいて発生し、まずクラックが発生する。そして、該熱可塑性樹脂組成物シート2の剥離やスプライス接合部のオープンなどに進展していく。
【0009】
このようなクラック発生、接合部のオープンの発生などを防止するために、シート積層体1は、その端部付近においてさまざまな検討がされてきており、例えばスプライス部の形態等に関する提案がある(特許文献1−3)。
【0010】
また、スプライス部に加熱加圧処理をして、熱可塑性樹脂フィルムシートどうしのスプライス部を熱融着させるという提案がある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−129208号公報
【特許文献2】特開平11−5261号公報
【特許文献3】特開2009−241855号公報
【特許文献4】特開2006−198848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上述した従来技術によるものは、クラックの発生、剥離の発生に一定の効果をもたらすものの、いまだ改善が要請されるものであった。
【0013】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体の端部を重ね合わせて加硫成形する工程を含む方法でタイヤの製造をする際、該タイヤの加硫成形工程において、前記シート積層体の端部を重ね合わせたスプライス部分付近においてスプライス部の剥がれによる開口が生ずることのない空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成する本発明の空気入りタイヤの製造方法は、以下の(1)の構成を有する。
(1)熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体の端部を重ね合わせて加硫成形する工程を含むタイヤの製造方法において、前記シート積層体の端部を重ね合わせた後、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上、120℃以下の温度で、前記重ね合わせた部分を圧着する工程を有し、前記重ね合わせた部分に、該重ね合わせ面の垂直方向から、補強繊維入りゴムブラダーを押し当てることにより、0.1MPa以上1MPa以下の圧力で前記圧着を行い、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む前記熱可塑性樹脂組成物のシートにおいて、前記熱可塑性樹脂が少なくともナイロンを含んでいることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【0015】
かかる本発明の空気入りタイヤの製造方法において、さらに好ましくは、以下の(2)〜(4)のいずれかの構成を有するものである。
【0016】
(2)少なくとも、左右のビードフィラートップの間の箇所において、前記圧着を行うことを特徴とする上記(1)記載の空気入りタイヤの製造方法。
(3)加熱プレートの上に、前記重ね合わせた部分を配置して、前記圧着を行うことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の空気入りタイヤの製造方法。
(4)熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体を重ね合わせた後、カーカス層を貼る前に、前記圧着をすることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる本発明によれば、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体の端部を重ね合わせて加硫成形する工程を含む方法でタイヤの製造をする際、該タイヤの加硫成形工程において、前記シート積層体の端部を重ね合わせたスプライス部分付近においてスプライス部の剥がれによる開口の発生が良好に抑制された空気入りタイヤの製造方法を提供することができる。
【0019】
さらに、請求項2〜のいずれかにかかる本発明の空気入りタイヤの製造方法によれば、請求項1にかかる本発明の効果をより一層明確に発揮する空気入りタイヤの製造方法を提供することができる。
【0020】
発明の空気入りタイヤの製造方法によれば、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体の端部を重ね合わせて加硫成形する工程を含む製造方法で得られる空気入りタイヤであって、該タイヤの加硫成形工程において、該シート積層体の端部を重ね合わせたスプライス部分付近においてスプライス部の剥がれによる開口の発生が良好に抑制された空気入りタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の空気入りタイヤの製造方法に関連する態様例をモデル的に示した側面図である。
図2】本発明の空気入りタイヤの製造方法を実施する態様例をモデル的に示した側面図である。
図3】熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシート2と、エラストマー層3とからなるシート積層体を、タイヤ成形ドラム(図示せず)上にて、その両端部にスプライス部Sを設けて環状を成すようにして重ね合わせた状態(加硫成形される前)をモデル的に示した側面図である。
図4】本発明の製造方法によって得られる空気入りタイヤの代表的形態の1例を示した一部破砕斜視図であり、熱可塑性樹脂組成物シートとエラストマー層からなるシート積層体をインナーライナー層の形成に使用したときのラップスプライス部のタイヤ内における位置関係を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、更に詳しく本発明の空気入りタイヤの製造方法について説明する。
【0023】
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシートとエラストマー層を積層してなるシート積層体の端部を重ね合わせて加硫成形する工程を含むタイヤの製造方法において、前記シート積層体の端部を重ね合わせた後、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上、120℃以下の温度で、前記重ね合わせた部分を圧着することを特徴とする。
【0024】
本発明の方法によれば、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上の温度で、重ね合わせた部分を圧着することにより、熱可塑性樹脂の分子運動が活発化されるために、圧着をしたときに、エラストマー層のエラストマーと樹脂がなじみやすくなり、圧着力が飛躍的に向上し、加硫成形工程でインフレーションを受けたとしてもスプライス部分での開口の発生が顕著に防止することができる。なお、上記の圧着時の温度とは、圧着している時の「熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシート」の温度であり、例えば、熱可塑性樹脂がナイロン樹脂の場合、ガラス転移温度Tgは約50℃である。
【0025】
圧着温度は120℃よりも高い温度であると、エラストマーがスコーチを起こしてしまうために望ましくない。
【0026】
圧着はタイヤ成形機上で行ってもよいが、別の装置で行っても良く、その場合、適宜のクリアランスを有して回転している一対の加熱ローラの間にシート積層体を通過させて連続的に加熱圧着をする方法や、適宜のクリアランスを保つ一対の加熱プレートを使用してバッチ式で加熱圧着させる方法などのいずれでも採用できる。一対のローラ、一対のプレートを加熱に使用する場合、片方のローラ、プレートは非加熱のものであってもよい。
【0027】
図1は、シート積層体1のスプライス部分を、ヒーター5と加熱プレート7の間に置いて、両者間で、該スプライス部分に直接的に熱と圧力を加えている例を示している。
【0028】
図2は、タイヤ成形機上で行なう例を示しており、シート積層体1とカーカス層6と貼り合わせた後に、シート積層体1のスプライス部分をヒーター5とブラダー8の間に置いて、両者間でカーカス層を介して該スプライス部分に熱と圧力を加えている例を示している。
【0029】
タイヤ成形機上で行なう場合、シート積層体1を重ね合わせた部分に、該重ね合わせ面の垂直方向から、補強繊維入りゴムブラダー、樹脂型あるいは金属型を押し当てることにより行うことが好ましい。
【0030】
本発明において、使用される熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシート2とエラストマー層3を積層させたシート積層体1は、それらの2層の積層構造であってもよいが、エラストマー層3を、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む熱可塑性樹脂組成物のシート2の表裏に積層させた3層の積層構造であってもよい。
【0031】
また、熱可塑性樹脂は、1種類を使用している場合に限らず、2種類以上のものをブレンドして使用してもよく、その場合、本発明における「熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg」は、ガラス転移温度の低い方の熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準にするものである。好ましくは、複数種類の熱可塑性樹脂を使用している場合、使用されている全ての熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以上で、かつ120℃以下の温度で、本発明を実施するのがよい。
【0032】
圧着は、0.1MPa以上1MPa以下の範囲の圧力で行うのがよく、特に、補強繊維入りゴムブラダー、樹脂型あるいは金属型を押し当てることにより行う場合には、該圧力範囲内で圧着を行うことが好ましい。圧着時の圧力が0.1MPa未満などと低いと圧着効果が不十分な場合があり、また、1MPaを超えるような高圧力では、シート積層体部材あるいは他部材をつぶしてしまう場合があるので、好ましくない。
【0033】
圧着をする時間は、付与する加圧力に応じても変わってくるものであり、一概には言えない点もあるが、一般には、本発明の効果を十分に得る上で、1秒以上、30秒以下とすることが好ましい。1秒未満では、圧着効果を十分に得ることが難しくなり、30秒よりも長くなると生産性の低下の点などから好ましくない。
【0034】
また、少なくとも、左右のビードフィラートップの間の箇所において、圧着を行うことが好ましい。特に、左右のビードフィラートップの間の箇所が、タイヤ成形時のリフトが大きく、かつ、一般に、補強されている部分がないため、スプライスオープンしやすいものであり、該箇所を加熱圧着すると高い効果が得られるからである。
【0035】
圧着は、好ましくは、加熱プレートなどの加熱体の上に、シート積層体の重ね合わせた部分を直接的に配置して圧着を行うことが温度コントロールの容易さなどから好ましい。これに反して、タイヤ自体を雰囲気加熱して圧着をするようにしてもよいが、一般には、温度コントロールが難しく好ましくない。
【0036】
本発明において、シート積層体1を重ね合わせた後、カーカス層を貼る前に、圧着をすることが好ましい。シート積層体にカーカスを貼った後に、加熱圧着をする場合には、タイヤの成形時にリフトがかかっときにカーカスまで加熱されているとカーカスコード間のゴムが柔らかくなり、目開きが発生しやすくなり好ましくないからである。
【0037】
また、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンド物を含む前記熱可塑性樹脂組成物のシートが、少なくともナイロン樹脂を含んでいることが好ましい。ナイロン樹脂は耐久性、耐熱性に優れ、タイヤに使用することが適しているからである。
【0038】
図4は、本発明にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。
【0039】
空気入りタイヤTは、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13を連接するように設けている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14が、タイヤ幅方向に左右のビード13、13間に跨るように設けられている。トレッド部11に対応するカーカス層4の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15が設けられている。矢印Eはタイヤ幅方向を示し、矢印Xはタイヤ周方向を示している。カーカス層14の内側には、インナーライナー層10が配され、そのスプライス部Sがタイヤ幅方向に延びて存在している。16はビードフィラーであり、前述のビードフィラートップとは、この部材16のタイヤ径方向最外側位置をいう。
【実施例】
【0040】
以下、実施例などにより、本発明について具体的に説明する。
【0041】
実施例1〜、比較例1〜2、参考例1
試験タイヤとして、ベルト2層、カーカス1層のタイヤ構造を有するタイヤサイズ195/65R15 91H(15x6J)の試験タイヤを、各実施例1〜、比較例1〜2、参考例1ごとに各5本ずつを製造した。
【0042】
評価は、各試験タイヤにおいて、インナーライナーを形成する熱可塑性樹脂組成物シート2(厚さ130μm)として表1に記載の組成のもの、タイゴムであるエラストマー層3(厚さ0.7mm)として表2に記載の組成のものを、それぞれ共通に用いて加硫成形を行い、その加硫成形工程においてスプライス部が剥がれずに成形できるか、否かを判定して評価した。ラップ長さ(重なり合ったスプライス部分のタイヤ周方向長さ)は、全ての試験タイヤで10mmとした。熱可塑性樹脂は、N6/N66であり、ガラス転移温度Tgは約50℃である。
【表1】
【表2】
【0043】
各試験タイヤは、表3に示したとおりに、圧着方法や、その圧力、温度、時間などを変更して、それぞれ製造し、それぞれ目視で、以下の評価基準に従い評価判定した。
評価結果は、表3に示したとおりである。圧着方法に関して、ステッチャによるものは、径14cm、高さ5cmの円柱状の金属製ステッチャを転がすことによって、スプライス部に0.7MPa、分速60cmの速度でスプライス部を圧着するものであり、プレスと記載したものは、加熱プレートと繊維補強された空気入りブラダーに空気圧0.4MPaを充填したものを使用して、インナーライナー側に加温プレート、カーカス側に繊維補強されたブラダーを配置したものである。ステッチャによるものは、圧力の付与が、油圧ポンプを用い、機械的制御によるものである。圧着範囲に関して「全幅」とあるのは、熱可塑性樹脂組成物シート2の幅方向全幅において圧着したものである。
【表3】
【0044】
(1)スプライス部の耐オープン性の評価:
実施例1〜、比較例1〜2、参考例1ごとに、各5本ずつ製造した試験タイヤについて、以下の評価基準に従い、3段階評価を行った。
(a)優秀……5本ともにスプライス部で剥がれが認められないもの
(b)良い……寸法が1mm×1mm以下の剥がれが、1本でもあったもの(他は、剥がれが認められない)、
(c)不良……寸法が1mm×1mmよりも大きな剥がれが、1本でもあったもの(他は、剥がれが認められない
【符号の説明】
【0045】
1:シート積層体
2:熱可塑性樹脂組成物シート
3:エラストマー層(タイゴム層)
4:熱可塑性樹脂組成物シートの先端部付近
5:ヒーター
6:カーカス
7:加熱プレート
8:ブラダー
10:インナーライナー層
11:トレッド部
12:サイドウォール部
13:ビード
14:カーカス層
15:ベルト層
16:ビードフィラー
T:空気入りタイヤ
S:ラップスプライス部
E−E:タイヤ幅方向
X−X:タイヤ周方向
図1
図2
図3
図4