(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基部の上面には前記吸着穴とは別に中心吸着穴が設けられており、中心吸着穴は前記吸着穴の周の中心に位置していることを特徴とする請求項2記載の基板搬送用真空吸着アーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した基板搬送技術において、基板の反りが問題となってきている。基板の反りには種々の要因がある。一つには、基板が大型化しているため、自重で反ってしまうことが挙げられる。例えば、基板はカセット内で左右の縁が支持された状態となるが、大型の基板の場合、自重により撓み、中央が下方に突出するように反ってしまう。このような反りは、薄い基板の場合にも生じる。
【0006】
また、基板の反りは、製造プロセスの内容によっても生じ得る。例えば、製造プロセスに基板の加熱工程が存在しており、加熱装置から搬出される際、基板が熱により反ってしまっている場合がある。基板の加熱は、熱CVDのような熱を併用して行う処理の他、光やプラズマといった要因でも生じる場合が多い。
【0007】
加熱による基板の反りは、一時的なもので冷却されれば反りが解消される場合もある。また反りが解消されないまでも、特に製造上は反りが問題にならない場合もあり、反った状態でその後の製造工程が行われることもある。
しかしながら、このような基板の反りは、搬送用の真空吸着アームでは問題となり得る。真空吸着する場合、アームの上面に設けられた真空吸着穴を基板が塞ぎ、吸着穴内が負圧になる必要がある。基板が反っていると、本来塞がれる筈の真空吸着穴が塞がれず、真空がリークしてしまう。
【0008】
真空吸着機構は、真空に吸引する経路に圧力計を備えており、負圧になっていない場合(真空がリークしている場合)、吸着エラーとして警報を発生させる。真空吸着されていない状態で基板を搬送してしまうと、アームから基板が落下してしまう事故につながり易いからである。
吸着エラーの警報が発せられると、装置の真空吸着機構や搬送機構等を点検しなければならず、生産性に影響を与えることがある。このため、多少の反りがあっても基板を確実に真空吸着できるようにすることが必要になってきている。
【0009】
反りがあっても基板を真空吸着できるようにする点で問題となるのは、反りがランダムに発生する点、即ち、反った基板と反っていない基板がある点である。装置から基板を搬出する場合を例にすると、その装置での処理が終わった際、基板は反っている場合もあるし、反っていない場合もあるということである。反っている場合に確実に真空吸着穴を塞ぐことができるようにアームを構成したとしても、反っていない基板を搬出しようとした際に真空吸着穴を塞ぐことができないと、やはり吸着エラーとなってしまう。
【0010】
この点に関し、特許文献1では、ロボットを制御し、アーム上で基板を支持した後に僅かに上昇させて撓みを解消させて平らとし、この状態で吸引して保持するとしている。しかしながら、このような制御は複雑になり易く面倒である。即ち、撓み量が異なる場合、それに応じてアームの変位量を変える必要がある。また、この構成では、自重による撓み以外の反り、例えば熱によって生じた反りについては対応できない。
【0011】
また、特許文献2では、
図16において、円筒状基板滑り止め部材81の上端部に基壁83が形成され、基壁83の上面中央に突起部85が形成された構造を開示している。特許文献2は、基板の反りの影響を小さくできるとしているものの(段落0049)、この文献に開示されたアームは真空吸着を行うものではない。従って、基板を高速搬送することはできず、高速で搬送しようとすると、基板は落下してしまうものと推測される。
【0012】
この出願の発明は、上記のような課題及び先行技術文献の開示に鑑みて為されたものであって、反った基板及び反っていない基板の両方について真空吸着しつつ十分に支持できるようにするとともに、熱変形のような不可逆な反りが発生した基板についても十分に支持できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、基板に対して下側から進入して基板を真空吸着して支持する基板搬送用真空吸着アームであって、
平板状の長尺な基部と、基部の先端から枝分かれして設けられた二つの枝部とを備えており、
各枝部の上面は基部の上面と面一の状態で連続しており、各枝部の幅は基部よりも狭いものであり、
基部の上面には吸着穴が形成されており、
各枝部の上面にはゴム部材が設けられていて
各枝部の上面よりも上方に突出しており、
基部に形成された吸着穴の縁部にはゴム部材は設けられておらず、支持される基板は吸着穴の縁部に接触する構造であり、
各ゴム部材が設けられた位置は、吸着穴において基板が吸着された際、吸着穴の縁部と二つのゴム部材により基板が三点支持される位置であ
り、
各枝部は、各ゴム部材に基板の下面が当接して基板が支持された際、当該基板の反りの有無及び当該基板の剛性に応じて下方に撓む可撓性を有するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記吸着穴は無終端の周状であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記基部の上面には前記吸着穴とは別に中心吸着穴が設けられており、中心吸着穴は前記吸着穴の周の中心に位置しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項2又は3の構成において、前記吸着穴の外側の縁は外側プラテン部となっているとともに、内側の縁は内側プラテン部となっており、
外側プラテン部と内側プラテン部は前記基部の上面から同じ高さで突出しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項1乃至4いずれかの構成において、
前記各ゴム部材が前記各枝部の上面から突出する高さは0.1mm以上0.5mm以下であり、前記各枝部の厚さは1.5mm以上2.5mm以下であるという構成を有する。
【発明の効果】
【0014】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、基板に反りがあっても無くても、また反りの程度にかかわらず、基板は吸着穴と二つのゴム部材とによって三点支持され、熱変形のような不可逆な反りが発生した基板についても真空吸着しつつ十分に支持される。このため、反りがランダムに発生し得るプロセスで処理される基板の搬送用に好適に使用することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、吸着穴は無終端の周状であるので、吸着のために基板に反りが発生してしまったり反りが大きくなってしまったりする問題
が生じない。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、中心吸着穴を有するので、基板の中心においても吸着力が作用する。このため、より安定して吸着することができる。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、外側プラテン部と内側プラテン部とが設けられているので、基板を支持する際の接触面積が小さくなる。このため、裏面における基板の傷付きをより少なくして基板を支持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、第一の実施形態の基板搬送用真空吸着アームの斜視概略図、
図2は、
図1に示す真空吸着アームの平面概略図、
図3は
図1に示す真空吸着アームの正面断面概略図である。
実施形態の真空吸着アームは、セラミックス製であり、例えばアルミナで形成されている。
図1に示すように、真空吸着アームは、平板状の長尺な基部1と、基部1の先端から枝分かれして設けられた二つの枝部2とを有している。二つの枝部2は、基部1と同じ方向に長いものであり、従ってお互いに平行に延びている。
【0017】
基部1は、
図1及び
図2に示すように一定の幅の帯板状の部位である。二つの枝部2は、基部1よりも幅の狭いものとなっている。
図3に示すように、二つの枝部2は、上面が基部1の上面と面一の状態で連続している。基部1及び二つの枝部2は、厚さがほぼ一定の板状である。
図1及び
図2に示すように、基部1は、先端部分の上面に吸着穴11を有している。吸着穴11は基部1の幅方向では中央の位置に形成されている。
【0018】
図3に示すように、基部1は後端部の下面に接続穴12を有している。接続穴12は、不図示の真空ポンプに気密に接続される穴である。そして、基部1内には貫通路13が形成されている。貫通路13は、基部1の長手方向に延びており、吸着穴11と接続穴12とを連通させている。尚、実施形態の説明では、基部1の長さ方向に沿った面を正面としている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、吸着穴11は円周状となっている。以下、この吸着穴11を周状吸着穴という。この実施形態では、周状吸着穴11とは別に周の中心を含む吸着穴14が設けられている。以下、この吸着穴14を中心吸着穴という。中心吸着穴14は、円周状である周状吸着穴11の中心を通って延びる穴であり、周状吸着穴11を直径方向に連通させている。
図1及び
図2に示すように、中心吸着穴14の延びる方向は、基部1の長手方向に一致している。尚、
図3に示すように、基部1内を貫く貫通路13は、周状吸着穴11の側壁において周状吸着穴11に連通している。
【0020】
一方、
図1に示すように、各枝部2の上面にはゴム部材3が設けられていて上方に突出している。ゴム部材3は、各枝部2の先端部(各枝部2の長さ方向中央の位置より先端縁に近い部分)に設けられている。
ゴム部材3は、例えばニトリルゴム製の小さな柱状の部材であり、各枝部2の上面に接着等の方法で固定されている。ゴム部材3の弾性は、少なくとも高さ方向に作用するようになっている。即ち、ゴム部材3は高さ方向に圧縮され得る。尚、
図2に示すように、各ゴム部材3は、周状吸着穴11の中心から互いに等距離の位置に設けられている。
【0021】
このような第一の実施形態の真空吸着アームの作用について、
図4を使用して説明する。
図4は、第一の実施形態の真空吸着アームの作用について示した正面断面概略図である。
図4には、反りの具合が異なる基板Sを支持する状況が描かれている。このうち、
図4(1)は、大きな反りが発生した基板Sを支持する状況、(2)は反りが小さい基板Sを支持する状況、(3)は反りが発生していない基板Sを支持する状況となっている。
【0022】
実施形態の真空吸着アームは、周状吸着穴11の位置が基板Sの中央となる位置で基板Sを支持する。この際、
図4(1)に示すように、反りの大きな基板Sの場合、基板Sは中央で吸着穴11,14によって吸着されるとともに、アームの先端側でゴム部材3に当接する。ゴム部材3は、摩擦力が高いので、基板Sには真空吸着力に加えて高い摩擦力が作用する。このため、高速で搬送動作を行っても基板Sがアームから落下してしまうことはない。
【0023】
また、
図4(2)に示すように、反りの小さい基板Sについては、基板Sが周状吸着穴11に吸着された際、アームの先端側で基板Sがゴム部材3を多少圧縮する状態となる。この場合も、基板Sには真空吸着力に加えゴム部材3の高い摩擦力が作用するため、高速搬送動作を行うことが可能である。
【0024】
また、
図4(3)に示すように、反りが発生していない基板Sの場合も、基板Sはその中央で周状吸着穴11に吸着され、アームの先端側でゴム部材3に当接する。そして、基板Sがゴム部材3を圧縮する状態となり、吸着力に加えてゴム部材3の高い摩擦力が作用する。このため、高速搬送動作が可能である。
【0025】
尚、
図4(3)に示すように、反りが発生していない基板Sの場合には、枝部2を多少撓ませる状態となり得る。これは、枝部2が多少撓むことを想定して材料や寸法が選定されているためである。前述したように実施形態の真空吸着アームにおいて、各枝部2は基部1の先端から連続させた部材であって、基部1と同様に薄い板状である。そして、各枝部2は基部1よりも幅が狭いので、ある程度の力が加わると、多少撓むようになっている。従って、反りが発生していない基板Sを支持すると、基板Sの剛性によっては
図4(3)に示すように各枝部2が下方に撓むことがある。
【0026】
但し、反りのない基板Sを支持しようとしたときに各枝部2が撓むことは、必須の事項ではない。反りのない基板Sを支持しようとしたとき、圧縮された各ゴム部材3の弾性は各枝部2及び基板Sに作用するが、基板Sの方が撓む(即ち反る)場合もある。つまり、基板Sは反りがない状態であったがアームに支持された際、
図4(2)に示すように多少反った状態になる場合もある。この反りは、熱変形のような不可逆なものではないので、アームから取り去れた際、基板Sは元の反りのない姿勢に戻る。
【0027】
図4(3)に示すように各枝部2が多少撓むことを想定すると、各枝部2はある程度薄いものである必要がある。厚さの例を挙げると、アルミナのようなセラミックス製の場合、各枝部2は例えば1.5〜2.5mmの厚さとされる。この場合、基部1も同程度の厚さとされる。基部1や各枝部2を薄いものとすることは、全体に軽量のアームとなるため、搬送ロボットに装着されて各種運動を行う際、低慣性となるので好適である。
【0028】
いずれにしても、上記説明から解るように、実施形態の真空吸着アームによれば、基板Sに反りがあっても無くても、また反りの程度にかかわらず、基板Sはその中央で吸着穴11,14に吸着されて支持され、アームの先端側で各ゴム部材3に当接して支持される。即ち、吸着穴11,14と二つのゴム部材3という三点で基板Sを支持する。三点支持は安定な部材の支持構造として知られているが、上記三点支持のうち、一点は真空吸着であり、他の二点はゴム部材3による支持である。各ゴム部材3は弾性体であることから、基板Sの反りを補償することができている。このため、反りの状況によらず確実に安定して基板Sを支持することができる。そして、接触面には高い摩擦力が作用するから、吸着穴11,14における真空吸着と併せてより確実に安定して支持することができる。このため、基板の高速搬送にも十分に対応が可能である。
実施形態の真空吸着アームは、このような作用効果を有することから、反りがランダムに発生し得るプロセスで処理される基板Sの搬送用に好適に使用される。尚、ゴム部材3の高さは、反りが最も大きい場合でも基板Sが接触する高さとされ、例えば0.1〜0.5mm程度とされる。
【0029】
尚、上記実施形態では、各枝部2に吸着穴は形成されておらず、各枝部2は基板Sを真空吸着する部位ではない。各枝部2に真空吸着穴を設けることも可能であるが、設けない方が好ましい。
枝部2に真空吸着穴を設けた構造では、基板Sが吸着穴を塞ぐ必要があるため、基板Sの反りの状況によっては前述したように吸着エラーとなり易い。例えば、ゴム部材3に代え、筒状の突起を設け、この突起の開口を真空吸着穴として真空ポンプに連通させた構造が考えられる。この構造でも真空吸着は可能であるが、基板Sの反りが突起の高さ以上であった場合、突起の開口が基板Sで塞がれない状態となるので、やはり吸着エラーとなる。また、反りが小さい基板Sや反っていない基板Sを支持しようとすると、周状吸着穴11の縁に基板Sが当接しない状態となり、同様に吸着エラーとなる。ゴム部材3を筒状としてその開口を真空吸着穴とすることも考えられるが、吸着の際に圧縮されるため、吸着動作が不安定になる可能性がある。
これらの点を考え合わせると、各枝部2には真空吸着穴は設けず、各ゴム部材3による摩擦力のみを作用させることが、確実な吸着という点で好適である。
【0030】
三点のうちの一点が周状吸着穴11である(吸着孔が周状である)点は、吸着のために基板Sの反りが発生したり、反りが大きくなったりするのを防止する意義がある。この点について、
図5を使用して説明する。
図5は、周状の吸着穴の意義について示した正面断面概略図である。
【0031】
より大きな吸着力で基板Sを吸着して支持することは、より搬送速度を高くする観点から重要である。大きな吸着力を得るには、吸着穴を大きくすることが考えられる。しかしながら、吸着穴を大きくすると、基板Sの反りが発生したり、反りが大きくなったりし易い。この問題が
図5(1)に示されている。
図5(1)に示すように、大きな吸着穴10の場合、基板Sのうち吸着力が作用している部分が吸着穴10内に入り込んでしまうため、反っていなかった基板Sが反ってしまったり、反りが大きくなってしまったりする問題がある。
【0032】
一方、
図5(2)に示すように、周状吸着穴11の場合には、開口の面積が同じ(即ち作用する吸着力が同じ)であっても、基部1内に入り込んでしまうことがないので、基板Sの反りが発生したり、反りが大きくなったりしてしまうことはない。この点で、周状吸着穴11の方が好ましい。
また、実施形態の真空吸着アームでは、周状吸着穴11に加えて中心吸着穴14が設けられている。この点は、基板Sの反りを抑制しつつも中心で吸着力をさせることで吸着をより安定化させる意義を有している。
【0033】
周状吸着穴11の場合、基板Sが基部1内に入り込んでしまうことがないという長所があるものの、周の中心部分で吸着力が作用しない。基板Sは、周状吸着穴11の中心と同心となる位置に載置されるので、より吸着を安定化させるには、中心でも吸着力が作用することが好ましい。実施形態の真空吸着アームでは、中心吸着穴14がこの作用を達成している。
中心吸着穴14は、周の中心で吸着作用を生じさせる穴であれば足りるので、実施形態のように直線状のものではなく、中心に位置する小さなスポット状(円形又は角形)の穴でも良く、中心から十の字状(又は放射状)に延びる穴でも良い。
【0034】
次に、より好適な第二の実施形態の基板搬送用真空吸着アームについて説明する。
図6は、第二の実施形態の真空吸着アームの斜視概略図である。
第二の実施形態の真空吸着アームは、周状吸着穴11や中心吸着穴14の周辺の部位の形状が第一の実施形態と異なっている。他は、同様である。
【0035】
図6に示すように、第二の実施形態では、周状吸着穴11の外側の縁は外側プラテン部15となっており、内側の縁は内側プラテン部16となっている。各プラテン部15,16は、基部1の上面から少し突出した部位である。
外側プラテン部15は、周状吸着穴11の外側の縁に沿って延びる土手状の部位である。内側プラテン部16は、周状吸着穴11の内側を占める部位であり、同様の中心吸着穴14を有する部位である。外側プラテン部15の上面と内側プラテン部16の上面はともに平坦面であり、同じ高さとなっている。
【0036】
図7は、
図6に示す第二の実施形態の真空吸着アームの作用を示す正面断面概略図である。
図7中の(1)は、反りがある基板Sを支持する場合、(2)は反りがない基板Sを支持する場合を示す。第二の実施形態の真空吸着アームでも、基板Sは中心が周状吸着穴11の中心にほぼ一致するように載置され、真空吸着される。この際、アームの先端側では、同様に各ゴム部材3が基板Sに当接し、基板Sの反りに応じて圧縮される。これにより、第一の実施形態と同様、基板Sは三点支持され、うち一点で真空吸着、二点で摩擦力によるずれ防止、落下防止の作用が得られる。
【0037】
この際、
図7(1)(2)に示すように、基板Sは二つのプラテン部と二つのゴム部材3に接触するのみで、他には接触箇所はない。即ち、基板Sに対する接触面積が、第一の実施形態に比べて小さくなっている。
基板Sを真空吸着する場合、なるべく接触面積を小さくすることが要請される。これは、下面においても基板Sの傷つきを少なくする観点等からである。第二の実施形態の構成は、この要請を満足している。
尚、反りのない基板Sを支持する場合、
図7(2)に示すように各ゴム部材3は圧縮されるが、この際、
図4(3)に示すように各枝部2が若干撓むこともあり得る。
【0038】
次に、このような各実施形態の真空吸着アームが装着される基板搬送ロボットについて説明する。
図8は、実施形態の真空吸着アームが装着された基板搬送ロボットの斜視概略図である。
図8に示す基板搬送ロボットは、多関節型のロボットとなっており、複数のアーム41,42,43が関節部51,52,53を介して連結されたロボットである。各関節部51,52,53が駆動されることによるアーム41,42,43の伸縮運動、アーム41,42,43が垂直な回転軸の回りに全体として回転する回転運動、アーム41,42,43が全体に上下に移動する上下運動を行うものとなっている。そして、最も先端側に配置されたアーム41として、第一第二いずれかの実施形態の真空吸着アームが装着される。
【0039】
関節部51,52,53を介して連結された他のアーム42,43は、内部に吸引路を有しており、実施形態の真空吸着アーム41と不図示の真空ポンプとを連通させている。基板Sは、前述したように最先端のアーム(実施形態のアーム)41の上に載置されて支持される。この際、各アーム41,42,43を通して連通している真空ポンプの作用により基板Sは真空吸着される。搬送ロボットは、伸縮運動、回転運動、上下運動を適宜行い、基板Sを指示された場所に搬送する。
尚、基板搬送ロボットは、制御装置とともに使用される。制御装置は、前述したように、最先端のアーム41の真空吸着穴の位置(正確には、周状吸着穴11の中心位置)が基板Sの中心となるようティーチングされて基板搬送ロボットを制御する。
【0040】
図9は、
図8に示すような基板搬送ロボットにより基板Sの搬送が行われる装置の面概略図であり、一例として基板Sに対して露光処理を行う露光装置の正面概略図となっている。
露光処理は、基板Sの表面に微細なパターンを形成するフォトリソグラフィのために行われる処理である。露光装置は、光源61と、形成するパターンの原画としてのマスク62を保持するマスクホルダー621と、光源61からの光をマスク62に照射する照射光学系63と、マスク62の像を基板Sに結像する結像光学系64と、マスク62の像の投影位置に基板Sを保持するステージ65等を備えている。
【0041】
露光処理においては、基板Sにレジストが塗布されており、光源61はレジストの感光波長である紫外線を放射する超高圧水銀灯等が使用される。光源61からの光は楕円集光鏡611によって集光され、インテグレータを含む照射光学系63は、マスク62に対して均一に光を照射する。結像光学系64は、結像レンズを含んでおり、必要倍率でマスクの像を投影する。ステージ65は、高性能の位置制御機構を備えたものであり、XYθの位置制御を行い、結像光学系64の光軸に対して所定の位置に基板Sを保持する。ステージ65上の所定位置に載置された基板Sに対し、マスク62の像が結合光学系64によって投影されて露光される。
【0042】
このような露光装置においては、基板Sの搬入及び搬出のために基板搬送ロボット66が使用される。基板搬送ロボット66は、装置外に置かれた不図示のカセットとステージ65との間で基板Sを搬送するものである。この基板搬送ロボット66として、
図8に示すものが使用でき、その搬送ロボット66は、最先端のアームについていずれかの実施形態の真空吸着アームを採用することができる。実施形態の真空吸着アームを採用することで、反りの発生状況のいかんにかかわらず安定して十分に基板Sが真空吸着され、高速搬送を行うことができる。吸着エラーの発生がないので、生産性が阻害されることはない。
【0043】
上述した各実施形態の真空吸着アームにおいて、基部1や各枝部2はアルミナのようなセラミックス製であると説明したが、この点には、アームの製造が容易であるという長所がある。上述したように、基部1内には貫通路13が形成されるが、基部1の厚さは、前述したように1.5〜2.2mm程度と薄いものである。従って、このような薄い部材内に貫通路13を形成することは、一般的に容易ではない。セラミックス製の部材の場合、焼結によって一体形成できるので、貫通路13の形成が容易である。即ち、貫通路13と同一の形状の部材を焼結後の高温加熱で消失する材料で形成し、その部材を取り囲むようにしてセラミックス材料を型に充填して焼結し、その後、高温加熱すれば、容易に貫通路13を有する基部1の形成が可能である。尚、アルミナ以外のセラミックスとしては、ジルコニア、炭化ケイ素等で基部1や各枝部2を形成することも可能である。
【0044】
各実施形態の真空吸着アームについては、基部1や各枝部2をアルミのような金属製とすることもできる。金属製の場合には、切削加工で貫通路13を形成することになるが、屈曲した貫通路13を形成するのは難しかったり、不可能であったりする場合がある。上下二枚の部材で基部1や各枝部2を構成し、両者をろう付けなどで貼り合わせても良いが、貼り合わせ箇所から真空がリークする恐れもある。これらを考え合わせると、セラミックス製の方が好ましい。
【0045】
また、各実施形態の真空吸着アームにおいて、ゴム部材3の材料はニトリルゴムであるとしたが、ニトリルゴムは適度な弾性を有し、不純物となるガス放出が少ないので有利である。この他、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料を使用することもできる。
尚、各実施形態において、二つの枝部2は互いに平行に伸びるものであったが、これは必須ではなく、徐々に広がって延びる形状(ハの字状)であっても良い。
【0046】
また、周状吸着穴11の形状としては、円周状の他、楕円形の周状でも良く、正方形、長方形、菱形のような角周状であっても良い。
尚、周状吸着穴11は前述したような効果を有するが、本願発明においては他の形状の吸着穴を採用することもできる。例えば、基部1の先端部分において、多数の小さな穴が吸着穴として形成された構成とすることもできる。この場合、多数の小さい穴が形成された領域の中心に基板Sの中心が位置した状態で基板Sが支持される。
各実施形態の真空吸着アームは、基板Sに反りが発生している場合に好適に用いられるが、反りの無い基板S(反りが発生する可能性が無い基板S)について用いられても良いことは勿論である。