特許第6024824号(P6024824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024824
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】車両管理システムおよび車両管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20161107BHJP
   G06Q 30/06 20120101ALI20161107BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20161107BHJP
   G08G 1/14 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G06Q50/10
   G06Q30/06
   G08G1/09 F
   G08G1/14 Z
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-522615(P2015-522615)
(86)(22)【出願日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】JP2014060389
(87)【国際公開番号】WO2014199712
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-122586(P2013-122586)
(32)【優先日】2013年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】知野見 聡
(72)【発明者】
【氏名】原 加代子
【審査官】 塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−253321(JP,A)
【文献】 特開2003−162576(JP,A)
【文献】 特開2010−146229(JP,A)
【文献】 特開2011−128987(JP,A)
【文献】 特開2005−78223(JP,A)
【文献】 特開2004−227174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
G08G 1/09
G08G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザに利用される複数の車両を管理するための車両管理システムであって、
ユーザによる車両の利用の受付を行うとともに、前記受付を行う際に、対象となる車両をユーザが利用した後に、ユーザが該車両を返却すべき場所を、複数の駐車スペースのうちから返却予定地として設定する利用管理手段と、
ユーザにより、実際に車両が利用され、返却された際に、該車両が、前記利用管理手段により設定された前記返却予定地に返却されたか否かを判定する返却判定手段と、
前記返却判定手段により、前記車両が設定された前記返却予定地に返却されたと判定された場合に、該車両の返却を許可する返却許可手段と、
前記返却判定手段により、前記車両が設定された前記返却予定地に返却されていないと判定された場合に、当該設定された前記返却予定地に前記車両を返却するようユーザに通知する通知手段と、を備えることを特徴とする車両管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両管理システムにおいて、
前記駐車スペースの数が、ユーザが利用することができる車両の数より多いことを特徴とする車両管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両管理システムにおいて、
前記利用管理手段は、ユーザにより前記車両が占有されている間は、占有されている車両の前記返却予定地が、他の車両の前記返却予定地として設定されないように制限することを特徴とする車両管理システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の車両管理システムにおいて、
前記返却判定手段は、GPSによる測位により、返却された車両の位置を検出し、検出された車両の位置と、該車両の前記返却予定地とを比較することによって、該車両の前記返却予定地に返却されたか否かを判定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両管理システムにおいて、
前記返却判定手段は、前記GPSにより測位された車両の位置が前記返却予定地にある場合に加え、前記GPSの位置検出誤差範囲内に、返却された車両に設定された前記返却予定地が存在し、かつ、該返却予定地以外の前記駐車スペースが存在しない場合にも、該車両の前記返却予定地に返却されたと判定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の車両管理システムにおいて、
前記返却判定手段は、前記GPSでは、前記車両が設定された前記返却予定地に返却されたか否かを判定することができなかった場合には、各前記駐車スペースに予め設置された固有の位置特定用コードを、返却された車両に搭載された読取手段に読み取らせ、読み取らせた前記位置特定用コードの情報に基づいて、該車両の前記返却予定地に返却されたか否かを判定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の車両管理システムにおいて、
前記返却判定手段は、各前記駐車スペースに予め設置された固有の位置特定用コードを、返却された車両に搭載された読取手段に読み取らせ、読み取らせた前記位置特定用コードの情報に基づいて、該車両の前記返却予定地に返却されたか否かを判定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の車両管理システムにおいて、
前記駐車スペースのうち、現在利用可能な駐車スペースを返却候補地として抽出し、抽出した前記返却候補地の情報を、車両の利用または利用の予定をしているユーザに提供する提供手段をさらに備え、
前記利用管理手段は、前記提供手段により情報を提供されたユーザが、提供された情報に基づいて前記返却候補地を選択した場合には、選択された前記返却候補地を、ユーザにより占有されている車両の返却予定地として再設定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項9】
複数のユーザに利用される複数の車両を管理するための車両管理方法であって、
ユーザが利用しようとする車両に対し、対象となる車両をユーザが利用した後に、ユーザが該車両を返却すべき場所である返却予定地を設定し、ユーザにより、前記車両が実際に利用され、返却された際に、前記車両が設定された前記返却予定地に返却されたか否かを判定し、
前記車両が前記返却予定地に返却されたと判定した場合に、ユーザに対して、該車両の返却を許可し、
前記車両が前記返却予定地に返却されていないと判定した場合に、前記返却予定地に前記車両を返却するようユーザに通知することを特徴とする車両管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のユーザに利用される複数の車両を管理するための車両管理システムおよび車両管理方法に関するものである。
本出願は、2013年6月11日に出願された日本国特許出願の特願2013―122586に基づく優先権を主張するものであり、文献の参照による組み込みが認められる指定国については、上記の出願に記載された内容を参照により本出願に組み込み、本出願の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のユーザにより車両を共有して貸し与えるカーシェアリングサービスにおいて、ユーザが利用した車両を、借りた場所と異なる場所に返却するいわゆる乗り捨て型のサービスを提供する際に、車両の位置情報をGPSによる測位によって取得し、取得した車両の位置情報に基づいて、車両が正しい返却場所に返却されたか否かを判定する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−128987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、ユーザが車両を利用し、利用した車両を返却する際に、車両の返却場所をユーザが任意に選択した場合には、選択した返却場所がすでに他の車両によって駐車されていると、車両の返却ができなくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、カーシェアリングサービスにおいて、いわゆる乗り捨て型の利用が行われる際に、車両が適切な返却場所に返却される車両管理システムおよび車両管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の利用受付を行う時点で、対象となる車両をユーザが利用した後に返却すべき場所を返却予定地として設定し、その後、ユーザが実際に該車両を利用し、返却した際において、該車両が設定された返却予定地に返却されているか否かを判定し、返却予定地に返却されている場合に、車両の返却を許可することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カーシェアリングサービスにおいて、いわゆる乗り捨て型の利用が行われる際に、車両の利用受付を行う時点で、車両の返却予定地を確保し、さらに車両が該返却予定地に返却されなければ返却手続きが完了しないよう制御することにより、ユーザに利用された車両が、適切な返却場所に返却されるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るカーシェアリングシステムの構成図である。
図2図2は、所定の区域に複数の駐車スペースを設けた例を示す図である。
図3図3は、本実施形態における、車両の利用受付を行うための処理を示すフローチャートである。
図4図4は、本実施形態における、車両の返却予定地を再設定するための処理を示すフローチャートである。
図5図5は、本実施形態における、車両の返却を行うための処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るカーシェアリングシステムのブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態のカーシェアリングシステムは、管理サーバ100と、カーシェアリングに供される複数の共用車両200と、インターネット300を介して車両管理サーバ100と通信可能な複数のユーザ端末400とから構成される。なお、図1中においては、共用車両200を2台のみ示したが、本実施形態のカーシェアリングシステムは、多数の共用車両200から構成される。そして、本実施形態のカーシェアリングシステムにおいては、多数の共用車両200が、各所に設けられた所定の駐車スペースにそれぞれ駐車されており、特定多数のユーザが、所望の駐車スペースに駐車された共用車両200を選択して利用できるようになっている。
【0011】
図1に示すように、共用車両200は、管理サーバ100と相互に通信が可能となっており、車載装置210と、通信装置220とを備えている。車載装置210は、共用車両200の利用開始時間および利用終了時間の情報、走行距離の情報、ならびに自車両位置の情報などを、通信装置220から、無線通信により管理サーバ100に備えられた通信装置120に送信する。
【0012】
なお、車載装置210が、自車両位置の情報を取得する方法としては、たとえば、各共用車両200に備えられたGPS(Global Positioning System)により測位衛星から発信される電波を所定時間ごとに受信することで、各共用車両200のリアルタイムの位置情報を取得する方法などが挙げられる。
【0013】
ユーザ端末400は、本実施形態のカーシェアリングシステムを利用する特定多数のユーザが所有する端末であり、インターネット300を介して、管理サーバ100に備えられた通信装置120と通信可能となっている。本実施形態のカーシェアリングシステムにおいては、各ユーザは、ユーザ端末400により、共用車両200の利用申込みを行うことができるようになっている。
【0014】
ここで、共用車両200の利用申込みとしては、ユーザが利用申込みの直後に共用車両200の利用を開始するような即時利用の申込みでもよいし、ユーザが将来に共用車両200を利用するための利用予約の申込みでもよい。なお、このような即時利用の申込みとしては、利用申込みの時点で、ユーザが共用車両200を利用した後に返却する際の返却予定時間を設定するような態様でもよいし、利用申込みの時点では、返却予定時間を設定しないような態様としてもよい。利用申込みの時点で返却予定時間を設定しない場合には、ユーザが、実際に共用車両200を利用した後に、任意のタイミングで、共用車両200を返却することができる。
【0015】
また、本実施形態のカーシェアリングシステムにおいては、ユーザがユーザ端末400により共用車両200の利用申込みをする際において、ユーザは、共用車両200を利用した後に返却するための返却予定地の設定を行う。これにより、本実施形態においては、ユーザが利用した共用車両200を、借りた場所とは異なる場所に返却するいわゆる乗り捨て型のサービスを提供することが可能となっている。
【0016】
なお、ユーザ端末400としては、たとえば、パソコンの他、携帯電話などの各種移動端末などが挙げられる。図1中においては、ユーザ端末400として4つの端末を例示して示したが、ユーザ端末400および本実施形態のカーシェアリングシステムを利用するユーザの数は、特に限定されるものではない。
【0017】
また、管理サーバ100は、制御装置110と、通信装置120と、データベース130とを備えている。
【0018】
通信装置120は、無線通信により、共用車両200に備えられた通信装置220と、また、インターネット300を介して、各ユーザの所有するユーザ端末400と通信するための装置である。通信装置120は、無線通信により、車載装置210から、共用車両200の利用開始時間および利用終了時間の情報、走行距離の情報、ならびに車両位置の情報などを、また、ユーザ端末400から、ユーザによる共用車両200の利用申込みの情報、およびユーザにより設定された返却予定地の情報などを取得する。
【0019】
データベース130は、共用車両200ごとに、利用受付情報、および返却予定地情報を記憶するための記憶装置である。なお、利用受付情報、および返却予定地情報は、ユーザによって、ユーザ端末400を介して共用車両200の利用申込みおよび返却予定地の設定がされた場合に、ユーザ端末400から送信された情報に基づいて、共用車両200ごとに生成される情報である。
【0020】
さらに、データベース130には、共用車両200を駐車するための複数の駐車スペースの情報が記憶されている。具体的には、図2に示すように、データベース130には、地図上における破線で囲まれた所定の区域に複数設けられた駐車スペースの位置情報などが記憶されている。なお、本実施形態のカーシェアリングシステムにおいては、これらの駐車スペースは、共用車両200を駐車するための駐車場であり、すべて駐車スペースのうち幾つかには、共用車両200が駐車されており、ユーザがユーザ端末400を介して利用申込みをすることで、所望の共用車両200を利用することができるようになっている。
【0021】
管理サーバ100の制御装置110は、図1に示すように、各種プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)112と、このROM112に格納されたプログラムを実行する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)111と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)113と、を備えている。
【0022】
そして、制御装置110は、本実施形態に係るカーシェアリングシステムを管理するために、利用管理機能と、返却判定機能と、返却許可機能と、を備える。制御装置110は、上記各機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行することができる。
【0023】
以下に、管理サーバ100の制御装置110が実現する各機能についてそれぞれ説明する。
【0024】
まず、制御装置110の利用管理機能について説明する。制御装置110は、ユーザがユーザ端末400を操作して共用車両200の利用申込みを行った場合に、ユーザ端末400から送信された利用申込みの情報に基づいて、共用車両200ごとの利用受付情報を生成し、生成した共用車両200ごとの利用受付情報、具体的には、ユーザが利用申込みした共用車両200の利用開始時間および返却予定時間などの情報を、データベース130に記憶させる。
【0025】
たとえば、ユーザは、ユーザ端末400を操作することで、管理サーバ100から、各駐車スペースに駐車されている共用車両200のうち、現在いずれのユーザによっても占有(利用または利用予約)されていない共用車両200の車種などの情報を取得し、取得した情報に基づいて、所望の駐車スペースに駐車されている共用車両200を選択し、選択した共用車両200の利用開始時間および返却予定時間を入力することで利用申込みを行う。そして、制御装置110は、このようなユーザによる利用申込みの情報を、ユーザ端末400から受信し、受信した情報に基づいて、ユーザが選択した共用車両200について、利用開始時間および返却予定時間などの利用受付情報を生成し、これをデータベース130に記憶させる。
【0026】
次いで、制御装置110は、データベース130から、すべての駐車スペースの情報を読み出し、読み出した駐車スペースのうち、現在利用可能な駐車スペースである返却候補地を、少なくとも1つ抽出し、抽出した返却候補地の情報を、ユーザ端末400に送信することでユーザに提供する。ここで、現在利用可能な駐車スペースである返却候補地としては、たとえば、いずれの共用車両200の返却予定地としても設定されておらず、かつ、いずれの車両にも駐車されていない駐車スペースが挙げられる。
【0027】
そして、ユーザが、ユーザ端末400を操作して、このような返却候補地のいずれかを、利用しようとする共用車両200の返却予定地として選択した場合には、選択された返却予定地の情報がユーザ端末400から制御装置110に送信され、制御装置110は、送信された情報に基づいて、共用車両200の返却予定地情報を生成し、生成した共用車両200の返却予定地情報を、データベース130に記憶させる。
【0028】
なお、返却予定地を設定するための駐車スペースは、図2に示すように、比較的狭い区域内に、互いに近い間隔で設けられており、これにより、本実施形態においては、共用車両200を借りた場所と、返却する場所とが比較的近距離であるいわゆる近距離乗り捨て型のカーシェアリングサービスが提供される。ここで、本実施形態においては、駐車スペース同士の間隔は、特に限定されず、地形、道路状況、および駐車スペース付近における商業施設の有無などに応じて適宜設定することができるが、駐車スペース同士の間隔を、ユーザが徒歩で容易に行き来できるような間隔とすることにより、ユーザが返却予定地として設定しようとした駐車スペースが、いずれかの共用車両200によってすでに返却予定地として設定されている等の事情により利用できない場合においても、その近隣の駐車スペースを返却予定地として設定することで、ユーザが共用車両200を返却する際の利便性を向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態のカーシェアリングシステムにおいては、上述したように、制御装置110が抽出する返却候補地を、上述したように、いずれの共用車両200の返却予定地としても設定されていない駐車スペースとすることにより、ユーザ同士で返却予定地が重複して設定されることを防止できる。すなわち、ユーザにより共用車両200が占有(利用または利用予約)され、返却予定地が設定されている間は、制御装置110は、占有されている共用車両200の返却予定地を、他のユーザに対する返却候補地として抽出しないようにすることにより、他のユーザが、返却候補地の中から返却予定地を設定する際において、返却予定地の重複設定を防止することができる。そのため、本実施形態によれば、ユーザは、共用車両200を占有している間であれば、その共用車両200に設定された返却予定地が、他の共用車両200によって駐車されることがないため、共用車両200の返却を、いつでも行うことが可能となる。
【0030】
特に、本実施形態においては、上述したように近距離乗り捨て型のカーシェアリングサービスを提供するものであるため、ユーザが短時間でも簡単に共用車両200を利用できるように、ユーザによる共用車両200の利用申込みの手続きの簡素化が求められており、利用申込みの受付の時点では共用車両200の返却予定時間を設定せずに、ユーザが共用車両200を利用した後、所望のタイミングで共用車両200を返却するような利用方法が用いられることがある。本実施形態によれば、このような場合においても、ユーザが、上述したように、いずれの共用車両200の返却予定地としても設定されていない駐車スペースである返却候補地の中から、返却予定地を選択することにより、返却予定地の重複設定を防止し、ユーザが、共用車両200の返却を、いつでも行うことが可能となり、カーシェアリングサービスの利便性が向上する。
【0031】
さらに、本実施形態における近距離乗り捨て型のカーシェアリングシステムにおいては、ユーザが共用車両200を借りた場所と、返却する場所とが比較的近距離であることから、ユーザによる共用車両200の利用時間が比較的短時間となるため、他のユーザに対して返却予定地の設定を制限する時間も短くなり、これにより、他のユーザによる返却予定地の設定を阻害することなく、上述したように、カーシェアリングサービスの利便性を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態においては、返却候補地を抽出するための駐車スペースの数は、共用車両200の数より多く設定されている。すなわち、図2に示す駐車スペースの数は、カーシェアリングに供される共用車両200の数より多いものとなっている。これにより、制御装置110が、すべての駐車スペースの中から、いずれの共用車両200の返却予定地としても設定されていない駐車スペースである返却候補地を抽出する際においても、少なくとも1つの返却候補地を抽出することが可能となる。そのため、制御装置110が、抽出した返却候補地の情報をユーザに提供することで、ユーザは、返却候補地の中から確実に返却予定地を確保することができ、これにより、ユーザによる返却予定地の設定の手続きが簡便なものとなり、カーシェアリングシステムのプログラム構造を単純化することができる。
【0033】
次いで、制御装置110の返却判定機能について説明する。制御装置110は、ユーザが共用車両200を利用した後に返却した際において、共用車両200が、設定された返却予定地に返却されたか否かを判定する。具体的には、まず、制御装置110は、返却された共用車両200の車載装置210に指令することにより、共用車両200に備えられたGPSなどを用いて、共用車両200の位置情報を取得する。さらに、制御装置110は、返却された共用車両200の返却予定地情報を、データベース130に記憶された情報の中から抽出して取得する。そして、制御装置110は、このように取得した共用車両200の位置情報と、返却予定地情報とを比較し、共用車両200の位置が設定された返却予定地にある場合には、共用車両200が返却予定地に返却されたと判定する。
【0034】
本実施形態のカーシェアリングシステムにおいては、共用車両200が設定された返却予定地に返却されたか否かを判定する方法として、上述したように、共用車両200に備えられたGPSを利用する方法を用いることにより、共用車両200に備えられているナビゲーション装置などの機器を流用することができ、新たなシステムを構築することなく、容易に判定を行うことができる。
【0035】
また、本実施形態においては、GPSを用いて上記判定を行う場合には、GPSの位置検出誤差を考慮してもよい。具体的には、制御装置110は、GPSにより測位された共用車両200の位置が前記返却予定地にある場合に加え、GPSの位置検出誤差範囲内において、返却された共用車両200の返却予定地が存在し、かつ、該返却予定地以外の駐車スペースが存在しない場合にも、共用車両200が設定された返却予定地に返却されたと判定してもよい。これにより、GPSを用いて共用車両200が返却予定地に返却されたか否かを判定する際に、誤判定を防止しながら、GPSの位置検出誤差を考慮したより広い範囲で判定を行うことが可能となる。
【0036】
特に、本実施形態においては、近距離乗り捨て型のカーシェアリングサービスを提供するものであるため、複数の駐車スペース同士が比較的近距離で存在しており、そのため、GPSの位置検出誤差範囲内に、2以上の駐車スペースが存在していることがあり、共用車両200が返却予定地に返却されたか否かの判定を正確に行うことができない場合がある。これに対し、上述したように、GPSの位置検出誤差範囲内に、返却された共用車両200の返却予定地以外の駐車スペースが存在しないことを確認することにより、誤判定を防止し、適切な判定を行うことができる。
【0037】
次いで、制御装置110の返却許可機能について説明する。制御装置110は、上述した返却判定機能によって、共用車両200が設定された返却予定地に返却されたと判定した場合には、ユーザによる共用車両200の返却を許可し、ユーザに対して、ユーザ端末400を介して共用車両200の返却が完了した旨の通知を行い、共用車両200の返却処理を終了する。
【0038】
以上により、本実施形態に係るカーシェアリングシステムにおいて、ユーザによる共用車両200の利用申込み、および返却予定地の設定が行われ、その後、ユーザが共用車両200を利用した後における共用車両200の返却処理が行われる。
【0039】
本実施形態においては、ユーザによる共用車両200の利用申込みの受付を行う時点で、対象となる共用車両200の返却予定地を設定し、その後、ユーザが共用車両200を利用した後に、共用車両200を返却した際に、共用車両200が設定された返却予定地に返却されなければ返却処理が完了しないように制御する。これにより、本実施形態によれば、カーシェアリングサービスで乗り捨て型のサービスを提供する際において、ユーザに利用された共用車両200が、適切な返却場所に返却されるようにすることができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、ユーザは、共用車両200の利用申込みをした後、共用車両200を占有(利用または利用予約)している間に、共用車両200の返却予定地を、別の駐車スペースに再設定することができる。
【0041】
たとえば、ユーザが、ユーザ端末400を操作して返却予定地の再設定を要求した場合に、制御装置110は、データベース130から複数の駐車スペースの情報を読み出し、このような駐車スペースから抽出した返却候補地の情報を、ユーザ端末400に送信する。そして、ユーザが、ユーザ端末400を操作して、制御装置110から送信された返却候補地の中から、返却予定地として再設定しようとする返却候補地を選択した場合には、制御装置110は、ユーザによって選択された返却候補地を、ユーザにより占有されている共用車両200の返却予定地として再設定する。これにより、本実施形態においては、共用車両200を占有しているユーザが、共用車両200を返却するための返却予定地を適宜変更することができるため、共用車両200を返却する際の自由度が増大し、カーシェアリングサービスの利便性が向上する。
【0042】
あるいは、共用車両200の返却予定地を再設定する方法としては、次のような方法を用いてもよい。すなわち、ユーザが返却予定地の再設定を要求した場合に、制御装置110は、データベース130から複数の駐車スペースの情報を読み出し、読み出した駐車スペースの情報をそのままユーザ端末400に送信し、ユーザに提供する。そして、ユーザが、提供された駐車スペースの情報に基づいて、返却予定地として再設定しようとする駐車スペースを選択した場合には、制御装置110は、ユーザにより選択された駐車スペースが現在利用可能であるか否かを判定する。たとえば、制御装置110は、ユーザにより選択された駐車スペースが、いずれの車両にも駐車されていないことを確認した場合には、該駐車スペースが現在利用可能であると判定する。そして、制御装置110は、選択された駐車スペースが現在利用可能であると判定した場合には、選択された駐車スペースを、ユーザが占有している共用車両200の返却予定地として再設定する。
【0043】
次いで、本実施形態における動作について説明する。図3は、本実施形態における共用車両200の利用受付を行う際の動作例を示すフローチャートである。
【0044】
まず、ステップS101では、管理サーバ100の制御装置110により、ユーザ端末400を介して、本実施形態に係るカーシェアリングシステムを利用するユーザのうち、いずれかのユーザにより共用車両200の利用申込みが実行されたか否かの判定が行われる。いずれかのユーザにより利用申込みが実行された場合には、ステップS102に進み、一方、いずれのユーザからも利用申込みが実行されていない場合には、ステップS101で待機する。
【0045】
ステップS102では、管理サーバ100の制御装置110は、データベース130に記憶されている各共用車両200の利用受付情報に基づいて、現在いずれのユーザによっても占有(利用または利用予約)されていない共用車両200を抽出し、抽出した共用車両200の情報を、ユーザ端末400を介して、ステップS101で利用申込みを実行したユーザに提供する。そして、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザが利用しようとする共用車両200を選択した場合には、選択された共用車両200の情報を、ユーザ端末400から受信する。
【0046】
ステップS103では、管理サーバ100の制御装置110は、データベース130に記憶されている複数の駐車スペースの情報を読み出し、このような駐車スペースのうち、現在利用可能な駐車スペースである返却候補地を抽出し、抽出した返却候補地の情報を、ユーザ端末400を介して、ステップS101で利用申込みを実行したユーザに提供する。そして、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザが、返却候補地の中から、利用しようとする共用車両200を返却するための返却予定地を選択した場合には、選択された返却予定地の情報を、ユーザ端末400から受信する。
【0047】
ステップS104では、管理サーバ100の制御装置110は、ステップS101で利用申込みを実行したユーザにより、ユーザ端末400を介して、利用申込みの確定の操作が行われたか否かを判定する。そして、ステップS104において、利用申込みの確定の操作が行われたと判定された場合には、管理サーバ100の制御装置110は、対象となる共用車両200について、利用受付情報および返却予定地情報を生成し、生成した情報をデータベース130に記憶するとともに、共用車両200の利用申込みの受付を終了する。一方、ステップS104において、利用申込みの確定の操作が行われなかったと判定された場合には、ステップS102に戻り、再びステップS102およびステップS103において、ユーザにより車両の選択および返却予定地の選択が行われるまで待機する。
【0048】
次いで、本実施形態における、ユーザが共用車両200を占有(利用または利用予約)している間に返却予定地を再設定する際の動作例を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0049】
まず、ステップS201では、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザ端末400を介して、共用車両200を利用しているユーザにより、返却予定地の再設定処理が実行されたか否かの判定が行われる。返却予定地の再設定処理が実行された場合には、ステップS202に進み、一方、返却予定地の再設定処理が実行されていない場合には、ステップS201で待機する。
【0050】
ステップS202では、管理サーバ100の制御装置110は、データベース130から、各駐車スペースの情報、およびステップS201で返却予定地の再設定処理を実行したユーザが占有している共用車両200の返却予定地情報を読み出す。そして、制御装置110は、読み出した各駐車スペースの情報および返却予定地情報を、ユーザ端末400を介して、ユーザに提供する。
【0051】
ステップS203では、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザが、ステップS202で提供された各駐車スペースの情報および返却予定地情報に基づいて、返却予定地情報として再設定しようとする駐車スペースを選択した場合に、選択された駐車スペースの情報を、ユーザ端末400から受信する。
【0052】
ステップS204では、管理サーバ100の制御装置110は、ステップS203においてユーザにより選択された駐車スペースが、現在利用可能であるか否かを判定する。ここで、現在利用可能な駐車スペースである返却候補地としては、たとえば、いずれの共用車両200の返却予定地としても設定されておらず、かつ、いずれの車両にも駐車されていない駐車スペースなどが挙げられる。なお、駐車スペースが、共用車両200の返却予定地としても設定されているか否かは、データベース130に記憶されている各共用車両200の返却予定地情報に基づいて判定することができる。また、駐車スペースが、車両に駐車されているか否かを確認する方法としては、たとえば、各駐車スペース付近に予め設けられたセンサなどを用いて、駐車スペースにおける車両の有無を確認する方法などを用いることができる。そして、ステップS204において、ユーザにより選択された駐車スペースが、現在利用可能であると判定された場合には、ステップS205へ進む。一方、ステップS204において、ユーザにより選択された駐車スペースが、現在利用可能ではないと判定された場合には、ステップS206へ進む。
【0053】
ステップS204において、ユーザにより選択された駐車スペースが、現在利用可能であると判定された場合には、ステップS205へ進み、ステップS205では、管理サーバ100の制御装置110は、該駐車スペースを、ユーザが占有している共用車両200の返却予定地として再設定し、返却予定地の再設定処理を終了する。
【0054】
一方、ステップS204において、ユーザにより選択された駐車スペースが、現在利用可能ではないと判定された場合には、ステップS206へ進み、ステップS206では、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザに対し、選択された駐車スペースは、現在は返却予定地として設定できない旨を通知し、返却予定地の再設定処理を終了する。
【0055】
以上のとおり、本実施形態においては、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザに対して、各駐車スペースの情報を提供し、ユーザが、提供された駐車スペースの中から、返却予定地として再設定しようとする駐車スペースを選択した場合において、選択された駐車スペースが現在利用可能である際には、選択された駐車スペースを、ユーザが占有している共用車両200の返却予定地として再設定することができる。これにより、本実施形態においては、共用車両200を占有しているユーザが、共用車両200を返却するための返却予定地を適宜変更することができるため、共用車両200を返却する際の自由度が増大し、カーシェアリングサービスの利便性を向上させることができる。
【0056】
次いで、本実施形態における、ユーザが利用した共用車両200を返却した際の返却処理の動作例を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0057】
まず、ステップS301では、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザ端末400を介して、共用車両200を利用しているユーザにより、共用車両200の返却処理が実行されたか否かの判定が行われる。共用車両200の返却処理が実行された場合には、ステップS302に進み、一方、共用車両200の返却処理が実行されていない場合には、ステップS301で待機する。
【0058】
ステップS302では、管理サーバ100の制御装置110は、共用車両200の現在位置の情報を取得する。共用車両200の現在位置の情報を取得する方法としては、たとえば、管理サーバ100の制御装置110が、共用車両200に備えられたGPSに測位させることにより取得する方法が挙げられる。
【0059】
ステップS303では、管理サーバ100の制御装置110は、ステップS302で取得した共用車両200の現在位置の情報に基づいて、共用車両200が設定された返却予定地に位置しているか否かを判定する。そして、ステップS303において、共用車両200が設定された返却予定地に位置していると判定された場合には、ステップS304へ進む。一方、ステップS303において、共用車両200が設定された返却予定地に位置していないと判定された場合には、ステップS306へ進む。
【0060】
テップS303において、共用車両200が設定された返却予定地に位置していると判定された場合には、ステップS304へ進み、ステップS304では、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザにより共用車両200のイグニッションがOFFとされているか否かを判定する。そして、ステップS304において、共用車両200のイグニッションがOFFとされていると判定された場合には、ステップS305へ進み、一方、共用車両200のイグニッションがOFFにされていないと判定された場合には、ステップS304で待機する。
【0061】
ステップS304において、共用車両200のイグニッションがOFFとされたと判定された場合には、ステップS305へ進み、ステップS305では、管理サーバ100の制御装置110は、共用車両200の返却を許可し、その後、共用車両200の返却が完了した旨を、ユーザ端末400を介してユーザに通知し、本処理を終了する。
【0062】
一方、ステップS303において、共用車両200が設定された返却予定地に位置していないと判定された場合には、ステップS306へ進み、ステップS306では、管理サーバ100の制御装置110は、ユーザに対し、ユーザ端末400を介して、ユーザが利用している共用車両200の返却予定地の位置情報を提供するとともに、共用車両200を該返却予定地に返却するよう通知する。その後、ステップS302へ戻り、上述したステップS302およびステップS303を再度実行する。
【0063】
以上のとおり、本実施形態においては、ユーザによる共用車両200の利用申込みの受付を行う時点で、対象となる共用車両200の返却予定地を設定し、その後、ユーザが共用車両200を利用した後に、返却処理を実行した際に、共用車両200が設定された返却予定地に返却されなければ返却処理が完了しないように制御する。これにより、本実施形態によれば、カーシェアリングサービスで乗り捨て型のサービスを提供する際において、ユーザに利用された共用車両200が、適切な返却場所に返却されるようにすることができる。
【0064】
なお、上述した実施形態において、制御装置110の利用管理機能は本発明の利用管理手段および提供手段に、制御装置110の返却判定機能は本発明の返却判定手段に、制御装置110の返却許可機能は本発明の返却許可手段に、それぞれ相当する。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0066】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る車両管理システムの一例として近距離乗り捨て型のカーシェアリングサービスを例示して説明したが、本発明の車両管理システムは、長距離乗り捨て型のカーシェアリングサービス、レンタカーシステム、または車両リースシステムなどにももちろん適用することができる。
【0067】
また、上述した実施形態においては、制御装置110により、共用車両200が設定された返却予定地に返却されたか否かを判定する方法として、共用車両200に備えられたGPSを利用する方法を例示して説明したが、このようなGPSに加え、またはGPSに代えて、たとえば次のような方法を用いて判定を行ってもよい。
【0068】
すなわち、まず、予め各駐車スペースに固有の位置特定用コードを設置しておく。駐車スペースに設置される位置特定用コードとしては、特に限定されないが、たとえば、位置特定用のバーコード、QRコード(登録商標)、または英数字などが表示された表示板や、位置特定用の電子データが記憶された端末などが挙げられる。そして、制御装置110は、ユーザにより共用車両200が返却された際に、返却された共用車両200の車載装置210に指令することで、共用車両200に搭載されたカメラ、センサ、または通信機器などによって、上記位置特定用コードの情報を読み取らせる。次いで、読み取らせた位置特定用コードの情報が、共用車両200に設定された返却予定地を示すものであった場合には、制御装置110は、共用車両200が返却予定地に返却されたと判定する。これにより、GPSでは上記判定を行うことができない場面、たとえば、GPSの位置検出誤差範囲内に2以上の駐車スペースが存在している場面や、GPSの電波が届かない場面などにおいても、このような駐車スペースに設置された位置特定用手段の情報を読み取る方法によれば、簡便かつ正確に、共用車両200が設定された返却予定地に位置しているか否かを判定することができる。
【符号の説明】
【0069】
100…管理サーバ
110…制御装置
120…通信装置
130…データベース
200…共用車両
300…インターネット
400…ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5